平成7(ネ)4033

裁判年月日・裁判所
平成8年10月2日 東京高等裁判所
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判決文本文5,121 文字)

主文 本件控訴を棄却する。 控訴費用は控訴人らの負担とする。 事実 第一当事者の求めた裁判一控訴人ら 1 原判決を取り消す。 2 被控訴人は、原判決別紙目録記載(一)の標章をいちご及びいちごの包装に付し、又は同標章を付したいちごを譲渡し、引渡し、譲渡もしくは引渡しのために展示してはならない。 3 被控訴人は、控訴人らに対し、金一億三二七九万一八八〇円及びこれに対する平成五年七月一三日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。 4 訴訟費用は第一、二審とも被控訴人の負担とする。 5 第2項ないし第4項につき仮執行宣言。 二被控訴人主文と同旨第二当事者の主張当事者の主張の要点は、以下に訂正、付加するほかは、原判決「事実及び理由」の「第二事案の概要」記載のとおりであるから、これを引用する。 一控訴人ら 1 原判決六丁表四行目末尾の次に、行を改めて、以下のとおり加える。 「商標権が保護される理由が「商標の使用をする者の業務上の信用の維持を図り、・・・需要者の利益を保護することを目的とする」(商標法一条)ことから、商標が自他商品識別機能を有する態様で使用されているか否かの判断は、標章を使用する者の主観的意図に基づくのではなく、当該商標を付された商品の最終需要者である一般消費者が自他商品識別機能を有すると認識し、その出所を混同する可能性があるか否かに基づくべきである。そして、自他商品識別機能を有することを前提とする誤認混同のおそれというためには、抽象的なおそれがあれば足りるのであるから、一般消費者が自他商品識別機能以外の機能のみを有すると認識することが明らかである場合を除くほかは、自他商品識別機能を有するものとして商標法の保護を与えるべきである。」 2 同七丁裏七行目の「到底いえず、」を以下のとおりに改め 能以外の機能のみを有すると認識することが明らかである場合を除くほかは、自他商品識別機能を有するものとして商標法の保護を与えるべきである。」 2 同七丁裏七行目の「到底いえず、」を以下のとおりに改める。 「到底いえない。土壌改良剤であるカルゲンの販売量は、昭和五二年四月ころまでは高くなく、同年で約五五一九トン、また、ピークの昭和五四年でもせいぜい約一万一二〇三トンであり、昭和五四年以降はわずかな例外を除いて毎年減少している。これは、カルゲンと同じくカルシウムを含む肥料の一種である炭酸カルシウムの平成元年の生産量が一〇〇万トン以上であることからすると、肥料の販売量としては、カルゲンの販売量は微々たるものである。 また、カルゲンの製造元であるネオゲン株式会社は、昭和五二年以降「天然カルシウムカルゲン使用」と記載されたシールの作成を開始し、この時期以降、カルゲンを使用した生産品に右シールが付されることもあるようになった。 しかし、シールの貼付はなかなか思うように進まなかったのであり、カルゲンを使用して栽培された野菜等に右シールが一般に貼付されていたとはいえない。さらに、ネオゲン株式会社の規模、組織が資本金わずか五〇〇万円、従業員数はアルバイトや事務職員も含めて二四、五名程度、営業所は東京と大阪の二か所のみという程度の小さなものであったことからしても、カルゲンが周知性を獲得することはありえない。」 3 同八丁表九行目冒頭の「ある。」の次に、以下のとおり加える。 「右のとおり、一般消費者は「カルゲン」が土壌改良剤の名称であることを知らないのであるから、被控訴人標章中の「カルゲン」のみが目を引き、「カルゲン」の文字の表示態様と「天然カルシウム」「使用」の文字の表示態様とが大きく相違すること等からすると、「カルゲン」という言葉が「天然カルシウム」あるい 訴人標章中の「カルゲン」のみが目を引き、「カルゲン」の文字の表示態様と「天然カルシウム」「使用」の文字の表示態様とが大きく相違すること等からすると、「カルゲン」という言葉が「天然カルシウム」あるいは「使用」という上下の言葉とつながるものであることを認識するはずもなく、したがって、被控訴人標章が当該いちごに天然カルシウムカルゲンを使用していると理解することはおよそありえない。 一般消費者が被控訴人標章中でひときわ目立つ「カルゲン」の文字及び頂部のいちごの図形を目にした場合、被控訴人標章をもって当該いちごの商品商標であると認識するのが最も自然であり、そうでないとしても、当該いちごの販売業者の営業商標であると認識するものと解される。」 4 同一六丁裏六行目の「されている。」の次に、行を改めて、以下のとおり加える。 「本件における被控訴人標章の使用態様において重要なのは、①「博多とよのか」をはじめとする他の表示は(「天然カルシウム」「使用」を含め)透明な皮膜に白色で印刷され、②唯一「カルゲン」のみが緑地を背景に白色で印刷されていること、③「カルゲン」の表示の位置は中央部やや右下の要部にいちごのイラストと共にあること、④その書体はデザイン化された書体であること、⑤「天然カルシウム」「使用」の語は「カルゲン」の記載の上下にあるものの、緑地の外に置かれ、かつ通常のゴシック活字体が用いられ、カルゲンに較べ数段に小さく扱われていること、である。 したがって、被控訴人標章は、商品の要部にあり、かつ、特に目を引く「カルゲン」の文字によって、商標としての差別化を意図しているのに比し、「天然カルシウム」「使用」の語は看取されにくい存在にすぎないから、商品の生産方法を「普通に用いられる方法により表示する」ものでないことは明らかである。」二被控訴人1 を意図しているのに比し、「天然カルシウム」「使用」の語は看取されにくい存在にすぎないから、商品の生産方法を「普通に用いられる方法により表示する」ものでないことは明らかである。」二被控訴人 1 原判決一一丁表七行目末尾の次に、以下のとおり加える。 「本件訴訟で問題とされるべきは、本件登録商標が登録された平成二年八月三〇日を基準日とし、それ以降、事実審の口頭弁論終結時までの間におけるカルゲンの使用、販売状況がどのようなものであったかである。その意味で、昭和五一、二年ころからカルゲンが多量に販売され、途中、一度も中断することなく、現在に至るまで二〇年近くの長きにわたり、販売使用されて、その生産物が出荷されている事実は重要である。 なお、控訴人らが販売量を比較して主張する炭酸カルシウムは、元来、汎用性の高い肥料であり、カルゲンとはその成分、用途、性質などカテゴリーを全く異にするものであるし、ネオゲン株式会社の営業規模も、カルゲンの周知性の有無とは関係がない。」 2 原判決一二丁表五行目の「気付く筈であり、」を以下のとおりに改める。 「気付く筈である。また、「天然カルシウム」「使用」と「カルゲン」とでは、文字の大きさ、デザインに差異が存するが、三段組みの場合には、一般に上段、中段、下段と順次称呼されるのが自然であり、本件の場合も、「天然カルシウムカルゲン使用」と、一連のものとして理解されるものである。」第三証拠(省略) 理由 一当裁判所も、控訴人らの本訴請求は理由がないものと判断する。 その理由は、以下に訂正、付加するほかは、原判決の「事実及び理由」の「第三争点に対する判断」と同一であるから、その記載を引用する。 1 原判決二五丁裏七行目末尾の次に、行を改めて、以下のとおり加える。 「さらに、成立に争いのない乙第三七な 原判決の「事実及び理由」の「第三争点に対する判断」と同一であるから、その記載を引用する。 1 原判決二五丁裏七行目末尾の次に、行を改めて、以下のとおり加える。 「さらに、成立に争いのない乙第三七ないし四〇号証によれば、本件商標の設定登録に先立つ昭和五六年二月ころ、既に九州を中心とする一般紙において、土壌改良剤カルゲンを使用した「カルゲン農業」という用語が使われていたこと、昭和六〇年六月ころには、カルゲン栽培が市場、小売業界で評価を得ていたこと、昭和六三年六月ころには、北陸金沢を中心とする一般紙においても、消費者に対して、天然カルシウム入りの土壌改良剤カルゲンを使用した作物の良さについてのPRがされていること等の事実が認められる。」 2 同二七丁表九行目の「ところで」から二八丁表二行目末尾までを以下のとおりに改める。 「控訴人らは、土壌改良剤「カルゲン」の販売量及び評判に関して主張し、カルゲンが周知性を獲得することはあり得ない旨主張したうえ、一般消費者は「カルゲン」が土壌改良剤の名称であることを知らないのであるから、被控訴人標章中の「カルゲン」のみが目を引き、「カルゲン」の文字の表示態様と「天然カルシウム」「使用」の文字の表示態様とが大きく相違すること等からすると、被控訴人標章が当該いちごに天然カルシウムカルゲンを使用していると理解することはおよそありえない旨主張する。 しかし、本件透明樹脂フィルムであることに争いのない甲第四号証及び本件透明樹脂フィルムをいちごのパック詰め容器に付した状況を撮影した写真であると認められる乙第三〇号証によれば、本件透明樹脂フィルムにおいてひときわ目立つのは、まず、上部に印刷されたいちごの品種を表す「博多とよのか」の文字であり、次に、一群として、下部上段に印刷された被控訴人標章、下部下段に印刷された販売者 件透明樹脂フィルムにおいてひときわ目立つのは、まず、上部に印刷されたいちごの品種を表す「博多とよのか」の文字であり、次に、一群として、下部上段に印刷された被控訴人標章、下部下段に印刷された販売者の表示である丸に囲まれた「糸」、デザイン化された「JA」及び「JA糸島」の文字、並びに産地を表す「福岡」の文字を図案化し字抜きしてある図形であることは明らかであって、被控訴人標章中において「カルゲン」の文字が「天然カルシウム」「使用」の文字より目だつとしても、本件透明樹脂フィルム全体のなかで、「カルゲン」の文字が被控訴人の販売するいちごの商品商標であると一般消費者が認識する態様で表示されているとは認め難いところである。 仮に、一般消費者が、カルゲンの表示に接した場合、カルゲンが土壌改良剤であることを知らないため、その記載の意味内容を直ちに理解できない場合が相当あるとしても、右各証拠によれば、そのような場合でも、被控訴人標章以外の印刷部分の記載、すなわち、「博多とよのか」「福岡」「JA糸島」などの品種、産地、生産者の名前などの記載との対比において、三段に並んだ中段の「カルゲン」の文字と、上段にある「天然カルシウム」、下段にある「使用」の記載を一連のものと理解し、被控訴人標章は、いちごについて「天然カルシウムであるカルゲンを使用したものである」との商品情報を得ることができるものと認められる。 控訴人らは、一般消費者が自他商品識別機能以外の機能のみを有すると認識することが明らかである場合を除くほかは、自他商品識別機能を有するものとして商標法の保護を与えるべきであると主張するが、自他商品識別機能の有無は具体的な事実関係の下に判断されるものであって、本件においては、前示のような具体的な事実関係の下で被控訴人標章の使用は自他商品識別機能を有するものと認め きであると主張するが、自他商品識別機能の有無は具体的な事実関係の下に判断されるものであって、本件においては、前示のような具体的な事実関係の下で被控訴人標章の使用は自他商品識別機能を有するものと認められないのであるから、控訴人らの主張を前提としても、被控訴人標章の使用をもって本件商標権の侵害ということはできない。控訴人らの主張に沿う甲第二二号証(「『カルゲン』表示と商標権侵害成否」と題する意見書)も、一つの意見を述べたものに止まり、上記認定判断を揺るがすものではなく、その他上記認定判断を覆すに足りる証拠はない。」二以上のとおり、被控訴人標章が被控訴人商品であることを識別させるための商標として商品に付されているとすることはできない、とした原判決の認定判断は正当であり、控訴人らの主張は理由がない。 よって、控訴人らの請求は理由がなく、これを棄却した原判決は正当であるから、本件控訴を棄却することとし、控訴費用の負担につき、民事訴訟法九五条、八九条、九三条を適用して、主文のとおり判決する。 (裁判官牧野利秋芝田俊文清水節)

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