令和4(行ク)7 執行停止申立事件

裁判年月日・裁判所
令和4年10月20日 津地方裁判所
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判決文本文4,321 文字)

主文 1 鈴鹿市社会福祉事務所長が令和4年9月27日付けで申立人に対してした生活保護停止決定は、本案事件の第1審判決に至るまでその効力を停止する。 2 申立費用は相手方の負担とする。 理由 第1 申立ての趣旨主文同旨第2 事案の概要 1 申立人は、三重県鈴鹿市内に居住して世帯主として生活保護法に基づく生活保護を受けている者であるが、申立人の二男であるa(本案事件の原告である。以 下申立人及びaを併せて「申立人ら」という。)が所有し使用する普通乗用自動車(以下「本件車両」という。)に関し、処分行政庁は、申立人らに対して同車両の運転記録票を提出するよう複数回にわたり求めたにもかかわらず、申立人らが提出しなかったことなどから、令和4年9月27日付けで、申立人に対して生活保護の支給を停止する処分をした(以下「本件停止処分」という。)。 本件は、申立人が、本件停止処分は違法であるとして、本件停止処分の取消し等を求める訴え(本案事件)を提起するとともに、本件停止処分により生ずる重大な損害を避けるため緊急の必要があるとして、行政事件訴訟法25条2項に基づき、本案事件の第1審の判決に至るまで、本件停止処分の効力の停止を求める事案である。 2 前提事実一件記録によれば、以下のとおり認められる。 ⑴ 申立人は、令和元年7月、三重県亀山市から肩書住所に転居し、申立人の二男であるaと共に生活をしていた。 ⑵ aは、汎下垂体機能低下症、視床下部障害及び糖尿病の治療を要する状態 にある。(疎甲A2、25) ⑶ 処分行政庁は、令和元年8月9日、申立人ら世帯に対し、生活保護の支給を開始した。令和3年及び令和4年の申立人らへの支給額は、概ね月額 要する状態 にある。(疎甲A2、25) ⑶ 処分行政庁は、令和元年8月9日、申立人ら世帯に対し、生活保護の支給を開始した。令和3年及び令和4年の申立人らへの支給額は、概ね月額3万円~5万円程度であった。(疎乙1、5)処分行政庁は、令和3年7月9日、aが上記⑶の生活保護が開始される以前より所有する本件車両(初度登録平成19年11月)について、aの通院に限 って保有及び利用を容認する旨の「保護申請(自動車の使用)決定通知書」を申立人らに対して交付した。処分行政庁は、その上で、申立人らに対し、自動車の利用に係る誓約書の提出を求め、また、運転記録票の書式を交付し、必要な事項を記入して、毎月提出することを求めた。(疎甲A1、3、4)⑸ 申立人らは、上記⑷の運転記録票を処分行政庁に一度も提出しなかったため、 処分行政庁は、令和3年11月25日、申立人らに対し、本件車両の運転記録票を提出するよう書面で指示をした。同年12月13日、申立人らから処分行政庁に対して運転記録票の提出があったものの、一部の提出にとどまり、又は内容が不正確であったことから、処分行政庁は、令和4年1月5日、申立人らに対し、再度、運転記録票を提出するよう書面で指示をした。(疎甲A6の1・ 2、疎甲A8、22)⑹ 申立人らは、上記⑸の後も運転記録票を提出しなかったことから、処分行政庁は、令和4年5月17日、申立人らに対し、以下の内容の指導又は指示(以下「本件指導」という。)をした。(疎甲A13、22)ア自動車を利用する度に、運転記録票に必要事項を正確に記録すること。 イ aの通院で利用する以外の目的だけで自動車の利用をしないこと。 ウ当月分の運転記録票を翌月10日までに毎月福祉事務所に提出する 、運転記録票に必要事項を正確に記録すること。 イ aの通院で利用する以外の目的だけで自動車の利用をしないこと。 ウ当月分の運転記録票を翌月10日までに毎月福祉事務所に提出すること。 (令和4年5月分提出期限同年6月10日)⑺ 処分行政庁は、上記⑸で提出された運転記録票について一部未提出であり、また、提出された運転記録票によると、申立人らが通院以外にも本件車両を使 用していたことがうかがわれ、申立人らが更に運転記録票を提出しないことか ら、令和4年6月20日、申立人ら宛に、生活保護の廃止の処分を行うことを予定とし、その弁明の機会の付与として、同年7月8日に聴聞会を行うとの通知書を交付した。(疎甲A14の1、22)⑻ 申立人代理人らは、令和4年7月1日付けで、処分行政庁に対して上記聴聞会の日程の再調整を求める通知書を送付した。(疎甲A14の2・3) ⑼ 処分行政庁は、令和4年8月23日、申立人らに対し、同年9月14日に聴聞会を開くと通知した。(疎甲A19)⑽ 申立人代理人らは、上記⑼の聴聞会について日程を再調整するよう求めたが、処分行政庁は、これに応じず、申立人らは、上記聴聞会に出席しなかった。(疎甲A20の1・2) ⑾ 処分行政庁は、令和4年9月27日、申立人に対し、申立人らが本件指導に従わなかったことを理由として、申立人の生活保護(生活扶助、住宅扶助、介護扶助、医療扶助)を停止する処分(本件停止処分)をした。(疎甲A23) 3 当事者の主張申立人の主張は、別紙「執行停止申立書」(写し)記載のとおりであり、相手方 の主張は、別紙「答弁書」(写し)記載のとおりである。 第3 当裁判所の判断 1 重大な損害を避けるため緊急の必要があるか は、別紙「執行停止申立書」(写し)記載のとおりであり、相手方 の主張は、別紙「答弁書」(写し)記載のとおりである。 第3 当裁判所の判断 1 重大な損害を避けるため緊急の必要があるか⑴ 前記前提事実⑵及び疎明資料(疎甲A21の1~3)によれば、申立人は、膀胱がんのため、定期的にストーマ(人工膀胱)の購入費用として、毎月1万 8100円を要することが認められ、また、aについては、汎下垂体機能低下症、視床下部障害及び糖尿病のため、通院していることが認められる。加えて、疎明資料(疎甲26の1・2)によれば、申立人の普通預金口座の残高は2920円であり、aの普通預金口座の残高は7万4820円となっていることが認められる。これらの事実からすれば、申立人らは自立できるほどの収入が得 られる就労をすることが十分に期待できない一方で、医療扶助を含む生活保護 が停止されれば、同人らの衣食住の問題が生じるだけではなく、持病に関する医療費等の支出も難しくなることから、生命身体に対する危険にも直ちに直面する。 したがって、申立人らは、本件停止処分により、健康で文化的な最低限度の生活を直ちに維持できなくなることは明らかであるから、本件停止処分により 生ずる重大な損害を避けるため緊急の必要があるということができる。 相手方は、申立人らにはそれぞれの常用収入及び年金等で毎月約12万円ないし14万円の収入があり、医療費については鈴鹿市福祉医療制度による全額助成も受けられる状況にあるから、本件停止処分を継続することで申立人らに重大な損害は生じないと主張する。たしかに、aに関する医療費については、 相手方が指摘するとおり、他施策を利用できる。しかし、申立人のストーマに関しては、自己負担額として毎月1万8100円を 重大な損害は生じないと主張する。たしかに、aに関する医療費については、 相手方が指摘するとおり、他施策を利用できる。しかし、申立人のストーマに関しては、自己負担額として毎月1万8100円を支出しなければならないこと及び生活保護の目的が要保護者の最低限度の生活保障にある(生活保護法1条)ことからすれば、本件停止処分によって、申立人らに直ちに重大な損害が生じることが想定されることは上記⑴で述べたとおりであり、相手方の主張は 採用しない。 2 執行停止により公共の福祉に重大な影響を及ぼすおそれがあるか本件において、本件停止処分の効力を停止することによって公共の福祉に重大な影響を及ぼすおそれがあるとの事情は、一件記録を精査しても見当たらない。 3 本案事件について理由がないとみえるか ⑴ 生活保護法によると、保護の実施機関は、被保護者に対して、生活の維持、向上その他保護の目的達成に必要な指導又は指示をすることができ(生活保護法27条1項)、被保護者はこれに従わなければならない(同法62条1項)。 また、保護の実施機関は、被保護者が上記指導又は指示に違反したときは、保護の変更、停止又は廃止(以下「保護停止処分等」という。)をすることができ る(同法62条3項)。 もっとも、保護の実施機関による指導又は指示は、被保護者の意に反して強制し得るものではなく、被保護者の自由を尊重し、必要最小限度に止めなければならない(同法27条2、3項)から、これを逸脱してされた場合には、上記指導又は指示が違法無効となる余地があり、その場合には、被保護者がこれに違反した場合であっても、保護停止処分等をすることは許されないと解すべ きである。また、仮に、被保護者が、上記指導又は指示に違反したとしても、生 となる余地があり、その場合には、被保護者がこれに違反した場合であっても、保護停止処分等をすることは許されないと解すべ きである。また、仮に、被保護者が、上記指導又は指示に違反したとしても、生活保護法の趣旨等に照らし、保護停止処分等を被保護者に課すことが合理性等を欠く場合には、裁量権を逸脱又は濫用するものとして違法となるというべきである。 ⑵ 本件についてみると、処分行政庁が、本件車両をaの通院以外に使用するこ とを全て制限させる必要があるかは、生活保護法等の規定から一義的に明らかではない。このことから、本件では、そもそも処分行政庁の本件指導が必要最小限度を超えるものでなかったことや、仮に必要最小限度を超えていなかったとしても、そのことにより、申立人に対して本件停止処分を課すことに合理性が認められるかについては、審理が尽くされていない現時点において明らかで あるとはいえない。 したがって、本件では、本案事件について理由がないとはいえない。 4 結論以上によれば、本件申立ては理由があるからこれを認容することとして、主文のとおり決定する。 令和4年10月20日津地方裁判所民事部 裁判長裁判官竹内浩史 裁判官山口貴央 裁判官山 﨑 次矩 ※ 別紙「執行停止申立書(写し)」及び「答弁書(写し)」の掲載省略 ※ 別紙「執行停止申立書(写し)」及び「答弁書(写し)」の掲載省略

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