平成19(行ウ)522 建築確認処分取消請求事件

裁判年月日・裁判所
平成20年3月14日 東京地方裁判所 警察関係
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判決文本文5,578 文字)

- 1 -主文 原告らの請求をいずれも棄却する。 訴訟費用は原告らの負担とする。 事実 及び理由第1請求被告が株式会社Aに対し平成19年1月15日付けでした建築確認処分を取り消す。 第2事案の概要本件は,共同住宅を建築するための建築確認申請に対し,指定確認検査機関である被告が建築確認処分を行ったところ,近隣住民である原告らが,接道義務を満たすための道路と容積率の基準となる道路は同一の道路でなければならないにもかかわらず,異なる道路によってこれらを判断した建築確認処分は違法であるとして,被告が行った建築確認処分の取消しを求めた事案である。 争いのない事実等(証拠により容易に認められる事実については,証拠を各項末尾に掲記した)。 ⑴当事者等ア原告らは,株式会社Aが共同住宅建築を計画している東京都港区α××番15号所在の土地(以下「本件敷地」という)の周辺に居住している。 住民である(原告適格を有することについても特に争いがない。 。)イ被告は,建築基準法(以下「法」という)77条の18の規定に基づ。 き国土交通大臣の指定を受けた指定確認検査機関である。 ウ本件敷地は,南側にある法42条1項3号の定める道路(幅員約4. 6メートル。以下「本件南側道路」という)に10メートル以上接し,。 また,南東角において法42条1項1号の定める道路(幅員12.09メートル。以下「本件都道」という)に2.59メートル接している。 。 (乙4)- 2 -⑵平成19年1月15日付け建築確認処分株式会社Aは,平成18年12月1日,本件敷地上に建築予定の地上15階地下1階の共同住宅建築につき建築確認申請をし,被告は,平成19年1月15日付けで,法6条の2第1項,6条1項に基づき,建築確認処分(以下「本件処分」という)を 日,本件敷地上に建築予定の地上15階地下1階の共同住宅建築につき建築確認申請をし,被告は,平成19年1月15日付けで,法6条の2第1項,6条1項に基づき,建築確認処分(以下「本件処分」という)をし,確認済証を交付した。被告は,本件処分に。 おいて,本件敷地が,本件南側道路に10メートル以上接しているから,法43条2項,東京都建築安全条例(以下「都条例」という)10条の3に。 定める接道義務を満たし,また,本件都道に2.59メートル接しているから,これを基準とすれば法52条1項に定める容積率規制を満たしていると判断した(乙1)。 ⑶建築審査会の裁決原告らは,平成19年3月16日,本件処分の取消しを求めて,港区建築審査会に対し審査請求をしたところ,同審査会は,同年6月6日,請求を棄却する旨の裁決をした(甲6)。 ⑷本訴の提起原告らは,平成19年8月15日,本訴を提起した。 関係法令の定め⑴接道義務についてア法43条1項柱書建築物の敷地は,道路に2メートル以上接しなければならない。ただし,その敷地の周辺に広い空地を有する建築物その他の国土交通省令で定める基準に適合する建築物で,特定行政庁が交通上,安全上,防火上及び衛生上支障がないと認めて建築審査会の同意を得て許可したものについては,この限りでない。 イ法43条2項地方公共団体は,特殊建築物(法2条2号により共同住宅を含む)の。 - 3 -敷地が接しなければならない道路の幅員,その敷地が道路に接する部分の長さその他その敷地又は建築物と道路との関係について,これらの建築物の用途又は規模の特殊性により前項の規定では避難又は通行の安全の目的を充分に達し難いと認める場合,条例で必要な制限を付加することができる。 ウ都条例10条の3特殊建築物(都条例9条1項2号により の用途又は規模の特殊性により前項の規定では避難又は通行の安全の目的を充分に達し難いと認める場合,条例で必要な制限を付加することができる。 ウ都条例10条の3特殊建築物(都条例9条1項2号により共同住宅を含む)の敷地は,。 その用途に供する部分の床面積の合計が2000平方メートルを超えるものにつき,10メートル以上道路に接しなければならない。ただし,建築物の周囲の空地の状況その他土地及び周囲の状況により知事が安全上支障がないと認める場合はこの限りでない。 (2)容積率(建築物の延べ面積の敷地面積に対する割合)についてア法52条1項柱書本文建築物の延べ面積の敷地面積に対する割合は,次の各号に掲げる区分に従い,当該各号に定める数値以下でなければならない。 イ法52条2項前項に定めるもののほか,前面道路(前面道路が2以上あるときは,その幅員の最大のもの)の幅員が12メートル未満である建築物の容積率。 は,当該前面道路の幅員のメートルの数値に,次の各号に掲げる区分に従い,当該各号に定める数値を乗じたもの以下でなければならない。 争点及び当事者の主張法52条2項は,容積率について「前面道路」の幅員が12メートル未満,の場合には,同条1項の基準をさらに制限する旨の規定を置いているところ,本件敷地は,幅員が12メートル以上ある本件都道に接しているものの,この道路は本件敷地の接道義務(法43条2項,都条例10条の3)を満たす道路と同じ道路ではない。そこで,法52条2項にいう「前面道路」は,接- 4 -道義務を満たすための道路と同一の道路でなければならないか否かが本件の争点である。 (被告の主張)法52条が容積率を「前面道路」の幅員によって制御することとした趣旨は,①道路交通等の負担を間接的に制御すること,②地域のグロス容積率(ある ければならないか否かが本件の争点である。 (被告の主張)法52条が容積率を「前面道路」の幅員によって制御することとした趣旨は,①道路交通等の負担を間接的に制御すること,②地域のグロス容積率(ある地域の延べ面積の合計の,道路を含むその地域の面積に対する割合)を間接的に制御することにより地域の環境の向上に寄与することの2点にある。そうすると,法52条2項にいう「前面道路」は,接道義務を満たすための道路と同一である必要はない。 本件敷地は,幅員12.09メートルの本件都道に,2.59メートル接しており,本件都道は交通処理能力が高い良好な状態であって「前面道路」によって容積率を制御することとした趣旨を満たすから,本件敷地上に建築する共同住宅(以下「本件建築物」という)の容積率は,法52条2項ではなく同。 条1項によるべきことになる。 (原告らの主張)法52条が容積率を「前面道路」の幅員によって制限した趣旨は,近隣環境の調和や美観保持にとどまらず,避難又は通行の安全の確保を含むものであり,法43条2項による制限の趣旨と共通するから,法52条2項にいう「前面道路」は,接道義務を満たす道路と同一でなければならない。 本件建築物に関して接道義務(法43条2項,都条例10条の3)を満たす道路は,本件南側道路のみであるから,これが法52条2項に規定する「前面道路」であるところ,この「前面道路」の幅員は12メートル未満であるから,本件建築物の容積率については,法52条2項の制限によることとなる。 被告は,本件都道が法52条2項にいう「前面道路」であると主張しているが,本件都道の南方向は行き止まりのため,災害時において,本件建築物の住民100ないし150人が本件都道の北方向に殺到し,道路の交通処理能力を- 5 -超えてしまうから,そのような主張は失当であ が,本件都道の南方向は行き止まりのため,災害時において,本件建築物の住民100ないし150人が本件都道の北方向に殺到し,道路の交通処理能力を- 5 -超えてしまうから,そのような主張は失当である。 第3当裁判所の判断 被告は,容積率と接道義務は,そもそも定めた趣旨,目的が異なるから,それぞれについて基準とする道路が異なってもかまわないと主張するのに対し,原告は,これらの趣旨,目的は共通するから,接道義務を満たす道路が容積率を算定する際の基準となる道路となるべきである旨主張する。 そこで検討するに,まず,法52条が容積率,すなわち建築物の延べ面積の敷地面積に対する割合を一定以下に制限した趣旨は,敷地面積に対する建築物の延べ面積に上限を設定して建築物の規模を規制することによって,一方で土地の合理的かつ高度な利用を可能としつつ,他方で道路,公園,上下水道等の公共施設の供給力,設備状況と建築物との均衡調和を図り,市街地の環境の悪化を防止することにあると解するのが相当であり,法52条2項により制限を加重した趣旨は,比較的狭い道路の沿道において,容積率の高い建築物が建築されることにより,局所的に公共施設の設備状況と建築物との均衡が害されて環境の悪化が生じることを防ぐことにあるものと解するのが相当である。 これに対し,法43条が接道義務を規定した趣旨は,建築物の利用者について,平常時における通行を確保する必要があるとともに,災害時における安全な避難経路を確保し,また,迅速かつ適切な消火及び救助活動を可能にし,さらに衛生上,防火上の安全を確保するなどの観点から,建築物の敷地は一定の幅員を持った道路に一定の長さ接していなければならないという規制をしたものであると解するのが相当である。 そうすると,容積率と接道義務は,同じく建築物の敷地が接する道路 観点から,建築物の敷地は一定の幅員を持った道路に一定の長さ接していなければならないという規制をしたものであると解するのが相当である。 そうすると,容積率と接道義務は,同じく建築物の敷地が接する道路との関係において建築物に制約を加えるものであっても,容積率に関する規制はその地域における公共施設との均衡調和を図り,市街地の環境を整えることにその趣旨,目的があるのに対し,接道義務に関する規制は,敷地上の建物利用者の通行,避難,衛生・防火上の安全等の要請から設けられたものであって,その- 6 -趣旨,目的が異なるものであり,接道義務を満たすための道路と容積率規制の基準とされる道路が異なるとしても,それぞれの道路によってそれぞれの規制の趣旨,目的が全うされるのであれば,それで十分に法の趣旨,目的が満足されるということができる。 したがって,本件において,容積率算定の基準となるべき法52条2項にいう「前面道路」と,法43条2項,都条例10条の3による接道義務を満たす道路が同一である必要はないものと解するのが相当である。 また,原告は,本件都道は南西方向が行き止まりになっており,災害時において,本件建築物の住民100ないし150人が殺到すれば道路の交通処理能力を超えてしまうから,本件都道を法52条2項にいう「前面道路」と解するのは相当ではないと主張する。 しかしながら,そもそも容積率規制の趣旨は,前記のとおり,道路,公園,上下水道等の公共施設の供給力,設備状況と建築物との均衡調和を図り,市街地の環境の悪化を防止することにあるのであって,仮に,ある道路がその延長線上において行き止まりになっているからといって,直ちに容積率算定の基準となる「前面道路」となり得ないと解すべきではないことはもとより,前記争いのない事実等及び証拠(甲3,乙6,7)によれ その延長線上において行き止まりになっているからといって,直ちに容積率算定の基準となる「前面道路」となり得ないと解すべきではないことはもとより,前記争いのない事実等及び証拠(甲3,乙6,7)によれば,本件都道は,幅員が12.09メートルと広く,北東方向においてβ通りと交わっており,また,南西方向を延長した先において自動車の通行はできない状態にあるものの,自転車用スロープ及び歩行者用階段によりγ方面に連絡されており,本件建築物と公共施設との均衡調和,あるいは市街地環境の悪化防止という見地から,十分にその趣旨,目的を果たすものであるということができる。 したがって,この点に関する原告の主張は,採用することができない。 そして,前記争いのない事実等及び証拠(甲1,2,乙1,4)によれば,本件敷地は,本件建築物の南側入口に近接する南東部分において,本件敷地が接する幅員最大の道路である,幅員12.09メートルの本件都道に2.59- 7 -メートル接していることが認められるのであって,他に,本件都道を容積率算定の基準とする「前面道路」と解することを妨げるべき事情は何ら見受けられないから,本件建築物の容積率については,法52条2項ではなく同条1項の制限によるべきこととなる。 したがって,本件処分が,接道義務については,本件南側道路が法43条2項,都条例10条の3の要件を満たし,容積率については,本件都道が,法52条1項の要件を満たすとして処分を行ったことは適法であるということができる。 そして,他に本件処分について,違法であることを窺わせる事情は何ら認めることができないのであって,本件処分は適法である。 第4 結論 よって,原告の請求は理由がないから,これを棄却することとし,訴訟費用の負担について行政事件訴訟法7条,民事訴訟法61条を適用して 認めることができないのであって,本件処分は適法である。 第4 結論 よって,原告の請求は理由がないから,これを棄却することとし,訴訟費用の負担について行政事件訴訟法7条,民事訴訟法61条を適用して,主文のとおり判決する。 東京地方裁判所民事第3部定塚誠裁判長裁判官進藤壮一郎裁判官- 8 -古市文孝裁判官

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