- 1 -平成24年10月11日判決言渡平成20年(ネ)第1857号各雇用関係存在確認等請求控訴事件 主文 1 本件控訴を棄却する。 2 控訴人の当審における追加請求を棄却する。 3 当審における訴訟費用は全て控訴人の負担とする。 事実 及び理由第1 当事者の求めた裁判 1 控訴人(1) 原判決中控訴人に関する部分を取り消す。 (2) 主位的請求ア控訴人と被控訴人との間に雇用関係の存在することを確認する。 イ被控訴人は,控訴人に対し,6766万6300円及びうち各25万4900円に対する平成2年5月から平成17年12月までの毎月21日から各支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 ウ被控訴人は,控訴人に対し,平成18年1月から,毎月20日限り,25万4900円を支払え。 エ被控訴人は,控訴人に対し,原判決別紙1記載の謝罪文を交付するとともに,横1.5メートル,縦2メートルの用紙に見やすく記載して,被控訴人本部所在地入口の見やすい場所に1か月間掲示せよ。 オ被控訴人は,控訴人について,東京都渋谷区<以下略>所在のP1株式会社に対して,原判決別紙2記載の要請文を交付して,控訴人の採用を要請せよ。 (3) 予備的請求被控訴人は,控訴人に対し,1億5486万5082円及びこれに対する昭和62年4月1日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 - 2 -(4) 当審における追加請求控訴人と被控訴人との間で,日本国有鉄道が控訴人に対し昭和61年5月28日付けでした停職3か月の懲戒処分及び昭和62年1月24日付けでした停職5か月の懲戒処分がいずれも無効であることを 加請求控訴人と被控訴人との間で,日本国有鉄道が控訴人に対し昭和61年5月28日付けでした停職3か月の懲戒処分及び昭和62年1月24日付けでした停職5か月の懲戒処分がいずれも無効であることを確認する。 (5) 訴訟費用は第1,2審とも被控訴人の負担とする。 2 被控訴人(1) 控訴について主文第1項と同旨(2) 控訴人の当審における追加請求についてア本案前の答弁控訴人の当審における追加請求に係る訴えを却下する。 イ本案の答弁主文第2項と同旨第2 事案の概要 1 事案の要旨控訴人は,かつて日本国有鉄道(以下「国鉄」という。)に勤務し,P2労働組合(以下「P2」という。)に所属していた者であり,国鉄の分割民営化の際,P1株式会社(以下「P1」という。)への採用を希望したが,昭和62年4月1日,同社に採用されなかった。控訴人は,日本国有鉄道改革法(以下「改革法」という。)15条により国鉄から移行した日本国有鉄道清算事業団(以下「事業団」という。)の職員となった後,平成2年4月1日,日本国有鉄道退職希望職員及び日本国有鉄道清算事業団職員の再就職の促進に関する特別措置法(以下「再就職促進法」という。)附則2条により同法が失効した際,日本国有鉄道清算事業団就業規則(以下「事業団就業規則」という。)22条4号に基づき事業団から解雇された(以下「本件解雇」という。)。 本件は,控訴人が,国鉄及び事業団を承継した被控訴人に対し, - 3 -(1) 主位的請求として,ア事業団が行った本件解雇は無効であるとして,雇用契約に基づき,雇用関係存在確認と平成2年5月以降の賃金等の支払(前記第1の1(2)ア,イの一部,ウ)を,イ国鉄,事業団又は被控訴人は,控訴人に対し,P2に所属す 件解雇は無効であるとして,雇用契約に基づき,雇用関係存在確認と平成2年5月以降の賃金等の支払(前記第1の1(2)ア,イの一部,ウ)を,イ国鉄,事業団又は被控訴人は,控訴人に対し,P2に所属することを理由として,不当な処分をするなど不利益取扱いをし,P1の採用候補者名簿に記載しないことによって同社に採用させず,再就職を妨害し,本件解雇をし,今日まで放置するなどしたとして,不法行為による損害賠償請求権に基づき,慰謝料及び弁護士費用の支払(前記第1の1(2)イの一部),名誉回復のための謝罪文の交付及び掲示(同エ),P1に対する採用要請(同オ)を,(2) 予備的請求として,本件解雇が無効ではないとしても,国鉄は,控訴人について,P2に所属することを理由として,P1の採用候補者名簿に記載せず,これにより同社に採用させなかったとして,不法行為による損害賠償請求権に基づき,賃金相当額等の逸失利益,慰謝料及び弁護士費用(慰謝料及び弁護士費用の請求は主位的請求と共通である。)の支払(前記第1の1(3))を,求める事案である。 原審は,控訴人の請求のうち,判決確定の日の翌日以降の賃金の支払を求める部分の訴えを却下し,その余の請求をいずれも棄却したため,控訴人が前記第1の1(1)ないし(3)の裁判を求めて控訴し,当審において,国鉄が控訴人に対してした2度にわたる停職処分が無効であるとして,前記第1の1(4)の無効確認請求を追加した。 なお,本件は,控訴人と同様に,かつて国鉄に勤務し,国鉄の分割民営化の際,P1,P3株式会社(以下「P3」という。),P4株式会社(以下「P4」という。),P5株式会社(以下「P5」という。)への採用を希望したものの採 - 4 -用されず,事業団の職員となった後,平成2年4月1日,事業団から解雇され う。),P4株式会社(以下「P4」という。),P5株式会社(以下「P5」という。)への採用を希望したものの採 - 4 -用されず,事業団の職員となった後,平成2年4月1日,事業団から解雇された者及びその相続人らとともに提訴され,原判決を不服として控訴されたものであったが,控訴人を除く者は,別件の訴訟において成立した和解に利害関係人として参加し,同和解に従って,平成22年6月30日,本件訴えを取り下げた。 2 前提事実前提事実は,次のとおり原判決を補正するほか,原判決の「事実及び理由」第2の2に摘示されたとおりであるから,これを引用する(以下,原判決を引用する場合は,個別に補正するものを除いて,「原告ら」及び「原告等」を「控訴人」と,「被告」を「被控訴人」と読み替える。)。 (原判決の補正)(1) 原判決4頁5行目冒頭から同頁13行目の「事業団において,」までを次のとおり改め,同頁17行目の「同人らの再就職は」を「同人の再就職は」と改め,同頁21行目冒頭から同頁23行目末尾までを削る。 「 控訴人は,昭和42年5月,国鉄に採用され,昭和62年3月31日まで,国鉄との間で雇用関係にあった者であり,かつ,P2の組合員であって,昭和57年秋からP2P6本部(以下「P2P6」という。)P7分会書記長であったところ,国鉄の分割民営化に伴い,P1への採用を希望したものの採用されず,昭和62年4月1日,事業団の職員となり,平成2年4月1日,事業団を解雇されたものである。 控訴人は,事業団において,」(2) 原判決5頁24行目冒頭から同6頁4行目までを次のとおり改める。 「 国鉄には,P2のほか,P8労働組合(以下「P8」という。),P9労働組合(以下「P9」という。),P10労働組合(以下「P10」という。)等の労働組合が存在 頁4行目までを次のとおり改める。 「 国鉄には,P2のほか,P8労働組合(以下「P8」という。),P9労働組合(以下「P9」という。),P10労働組合(以下「P10」という。)等の労働組合が存在していたが,P8,P9,P10等は,昭和61年7月にP11協議会(以下「P11」という。)を組織するなどした後,昭 - 5 -和62年2月2日,全日本P12総連合会(以下「P12」という。)を結成した。」(3) 原判決7頁22行目の「再雇用促進法」を「再就職促進法及び日本国有鉄道法」と改める。 (4) 原判決8頁12行目末尾に,改行の上,次のとおり加える。 「事業等の引継ぎ並びに権利及び義務の承継等に関する計画「19条運輸大臣は,日本国有鉄道の事業等の承継法人への適正かつ円滑な引継ぎを図るため,閣議の決定を経て,その事業等の引継ぎ並びに権利及び義務の承継等に関する基本計画(以下「基本計画」という。)を定めなければならない。 同条2項基本計画は,次に掲げる事項について定めるものとする。 三日本国有鉄道の職員のうち承継法人の職員となるものの総数及び承継法人ごとの数」」(5) 原判決10頁22行目末尾に,改行の上,次のとおり加える。 「(エ) 日本国有鉄道法懲戒「31条1項職員が左の各号の一に該当する場合においては,総裁は,これに対し懲戒処分として免職,停職,減給又は戒告の処分をすることができる。 一この法律又は日本国有鉄道の定める業務上の規程に違反した場合二職務上の義務に違反し,又は職務を怠った場合同条2項停職の期間は,1月以上1年以下とする。」」(6) 原判決11頁9行目冒頭から同頁15行目末尾までを次のとおり改める。 「 P13各社が決定し,国鉄に通知した採用基準には,年齢,健康状態に関 項停職の期間は,1月以上1年以下とする。」」(6) 原判決11頁9行目冒頭から同頁15行目末尾までを次のとおり改める。 「 P13各社が決定し,国鉄に通知した採用基準には,年齢,健康状態に関するもののほか,「日本国有鉄道在職中の勤務の状況からみて,当社(判 - 6 -決注・P13各社)の業務にふさわしい者であること。なお,勤務の状況については,職務に関する知識技能及び適性,日常の勤務に関する実績等を,日本国有鉄道における既存の資料に基づき,総合的かつ公正に判断すること。」という基準(以下「本件採用基準」という。)が含まれていた。 (乙20,21)」(7) 原判決11頁18行目の「基本計画」」の次に「(以下「基本計画」という。)」を加える。 (8) 原判決12頁4行目冒頭から同頁7行目末尾までを次のとおり改める。 「 控訴人は,P1への採用を希望した。」(9) 原判決12頁15行目の「原告等の多くは,」を「控訴人は,」と改める。 (10) 原判決12頁16行目冒頭から同13頁1行目末尾までを次のとおり改める。 「(4) 控訴人に対する停職処分国鉄総裁代理秋田鉄道管理局長は,昭和61年5月28日付けで,控訴人に対し,「昭和60年12月10日から昭和61年4月25日までの間において,管理者の注意・指導にもかかわらず,遅刻事由の申告拒否,体操の拒否,勤務時間内の組合活動,職場離脱及び管理者に対する度重なる暴言行為を惹起する職員として著しく不都合な行為があった」として,日本国有鉄道法31条により3月間停職するとの懲戒処分をした(以下,この懲戒処分を「本件停職処分1」という。)。さらに,国鉄総裁代理秋田鉄道管理局長は,昭和62年1月24日付けで,控訴人に対し,「昭和61年8月28日から昭和61年12月12日までの間にお (以下,この懲戒処分を「本件停職処分1」という。)。さらに,国鉄総裁代理秋田鉄道管理局長は,昭和62年1月24日付けで,控訴人に対し,「昭和61年8月28日から昭和61年12月12日までの間において,昭和61年5月懲戒により反省を促したにもかかわらず,管理者の注意・指導を軽視し,度重なる体操の拒否,職場離脱及び管理者に対する暴言を継続するという職員として著しく不都合な行為があった」として,同条により5月間停職するとの懲戒処分をした(以下,この懲戒処分を - 7 -「本件停職処分2」といい,本件停職処分1と併せて「本件各停職処分」という。)。 (甲248,249)(5) 承継法人における職員の採用と控訴人の不採用ア国鉄は,本件採用基準の「P13各社の業務にふさわしい者」に関し,「(昭和)58年4月1日以降の行為に対する懲戒処分として停職6月以上の処分を受けた者及び停職処分を2回以上受けた者。ただし,勤務の状況や業務に対する取り組みにおいて特段のプラス要素がみられる等,新事業体(判決注・P13各社)に採用しても良いと判断される者を除く。」という基準(以下「本件運用基準」という。)に該当する者については,P13各社の業務にふさわしくない者として,採用候補者名簿に記載しないこととした。 その上で,国鉄は,P13各社の職員となるべき者の具体的な選定作業を行い,P13各社の採用候補者名簿を作成した。 (甲899の1及び2,968,974,乙20,71)イ国鉄は,昭和62年2月7日,P13各社の設立委員会に対し,それぞれ採用候補者名簿を提出したが,控訴人は,本件停職処分1及び本件停職処分2の2回の停職処分を受けていることから,本件運用基準に該当するとして,P1の採用候補者名簿に記載されなかった。」(11) れ採用候補者名簿を提出したが,控訴人は,本件停職処分1及び本件停職処分2の2回の停職処分を受けていることから,本件運用基準に該当するとして,P1の採用候補者名簿に記載されなかった。」(11) 原判決13頁18行目から19行目にかけての「原告等の中の相当数も」を「一審原告P14,同P15及び同P16を除く一審原告ら及び亡P17(以下,これらの者を併せて「一審原告等」という。なお,亡P17は,一審原告P14,同P15及び同P16の被相続人である。)の中の相当数も」と改める。 (12) 原判決13頁25行目及び同14頁4行目の「原告等」を「一審原告等」と改める。 - 8 -(13) 原判決14頁7行目の「(5)」を「(6)」と,同15頁3行目の「(6)」を「(7)」と,同18頁5行目の「(7)」を「(8)」と,それぞれ改める。 (14) 原判決15頁8行目の「原告27を除く原告等を含むP2組合員」を「控訴人を除く一審原告等を含むP2組合員」と,同頁18行目から19行目にかけての「原告27については,救済申立てがされなかった。」を「控訴人については,救済申立てがされなかった。」と,それぞれ改める。 (15) 原判決16頁3行目の「原告22を除く原告等(原告27を除く。)」から同頁5行目の「棄却された」までを「一審原告P18及び救済申立てがされなかった控訴人を除く一審原告等については,救済方法がいずれも採用取扱いから再選考手続の実施に変更され,一審原告P18の救済申立ては棄却された」と改める。 (16) 原判決16頁12行目から13行目にかけての「同東京地方裁判所平成7年」を「同平成7年」と改める。 (17) 原判決16頁23行目冒頭から同頁26行目末尾までを次のとおり改める。 「 一審原告P18に関する不当労働行為救済申立 にかけての「同東京地方裁判所平成7年」を「同平成7年」と改める。 (17) 原判決16頁23行目冒頭から同頁26行目末尾までを次のとおり改める。 「 一審原告P18に関する不当労働行為救済申立てを棄却した命令に対しても,同様に取消訴訟が提起されたが,東京地方裁判所及び東京高等裁判所は,いずれもP1には使用者性がないとして,請求を却下すべきものとした。」(18) 原判決18頁6行目の「原告番号1」から同頁10行目の「提起した。」までを「控訴人は,平成17年12月22日,本件訴訟を提起した。」と改める。 3 争点争点は,次のとおり原判決を補正するほか,原判決の「事実及び理由」第2の3に摘示されたとおりであるから,これを引用する。 (原判決の補正) - 9 -(1) 原判決19頁3行目冒頭から同頁5行目末尾までを次のとおり改める。 「(イ) 国鉄は,昭和62年,控訴人を,本件各停職処分,あるいはP2に所属していることを理由に,P1の採用候補者名簿に記載せず,事業団に振り分けた。」(2) 原判決19頁18行目冒頭から同頁20行目末尾までを次のとおり改める。 「ア国鉄は,昭和62年,控訴人を,本件各停職処分,あるいはP2に所属していることを理由に,P1の採用候補者名簿に記載せず,事業団に振り分けたか。また,その行為は不法行為に当たるか(主位的請求ウ(イ)と同じ。)。」(3) 原判決19頁26行目末尾に,改行の上,次のとおり加える。 「(3) 控訴人の当審における追加請求本件各停職処分の無効確認の訴えの追加的変更が許されるか。これが許されるとして,確認の利益が認められるか。これが認められるとして,本件各停職処分は無効か。」 4 争点に対する当事者の主張の要旨争点に対する当事者の主張の要旨は,次のとお が許されるか。これが許されるとして,確認の利益が認められるか。これが認められるとして,本件各停職処分は無効か。」 4 争点に対する当事者の主張の要旨争点に対する当事者の主張の要旨は,次のとおり原判決を補正するほか,原判決の「事実及び理由」第2の4に摘示されたとおりであるから,これを引用する。 (原判決の補正)(1) 原判決20頁12行目の「そのため,」から同頁15行目末尾までを次のとおり改め,同頁16行目の「改革法や再就職促進法は,」を「改革法を含む国鉄改革関連8法は,」と改める。 「中曽根元総理ら政府は,「国鉄赤字」を強調し,その解消のためには国鉄を分割・民営化する以外にないとしたが,国鉄赤字の真の原因は「余剰人員」にあったわけではなく,膨大な設備投資とそれによる巨額の利子負担にあ - 10 -ったのであり,また,現場においては業務に必要な「職場規律」は十分に保たれていたのに,政府とP19党は「職場規律の乱れが赤字を膨らませた」と言い立てて,攻撃の矛先をP2などの労働組合に向けて,国鉄赤字の責任の所在を隠蔽した。そして,政府とP19党は,P2などの闘う労働組合の組合員を排除するため,改革法19条2項3号によって,国鉄職員の身分保障を外して職員数を削減することを可能にし,また,同法23条によって,P13職員の採用手続を,国鉄による採用候補者名簿の作成と設立委員による採用者の決定という2段階に切断してP13に不当労働行為の責任を負わせないようにしつつ,本件採用基準,職員管理調書,本件運用基準を運用して控訴人らP2組合員を採用候補者名簿に記載せず,P2組合員を排除するという不当労働行為を貫徹したのであるから,改革法は,控訴人らP2組合員の勤労の権利,勤労の自由(憲法27条1項)を侵害し,憲法28条に反するものである。 候補者名簿に記載せず,P2組合員を排除するという不当労働行為を貫徹したのであるから,改革法は,控訴人らP2組合員の勤労の権利,勤労の自由(憲法27条1項)を侵害し,憲法28条に反するものである。さらに,このようにして採用候補者名簿に記載されなかったP2組合員は,事業団に収容され,同所で再就職斡旋を受けることもなく,結局,本件解雇に至ったのである。」(2) 原判決20頁18行目冒頭から同21頁17行目末尾までを次のとおり改める。 「ウ適用違憲等仮に,国鉄改革関連8法自体が法令違憲でないとしても,それを控訴人の採用候補者名簿不記載,清算事業団への振り分け,本件解雇へと適用することは,明らかに違憲である。 すなわち,既に述べたとおり,控訴人に対し,改革法を含む国鉄改革関連8法を適用し,本件解雇をすることは,控訴人の勤労の権利,勤労の自由(憲法27条1項)を侵害するものである。 そして,P13各社への採用・不採用の振り分けは,客観的かつ公正に行われなければならないし,国会の審議の過程で取り上げられたよう - 11 -に,所属組合を理由とする差別がされてはならなかった。ところが,国鉄は,組合所属や組合の指示に従って正当な組合活動をしたことを嫌悪して,控訴人らP2組合員を採用候補者名簿に記載せず,同名簿に記載されなかった者は,事業団理事長によりそのまま特別対策対象者に指定された。国鉄が控訴人らP2組合員を採用候補者名簿に記載しなかったことは不当労働行為であり,その違法性を承継した事業団理事長による特別対策対象者への指定も無効となり,解雇の前提となる特別対策対象者への指定の要件を欠くことになるから,本件解雇は無効である。国鉄は,P2などの闘う労働組合を敵視し,その組合員を排除することを一貫して目的とし,その手段として,控訴人 解雇の前提となる特別対策対象者への指定の要件を欠くことになるから,本件解雇は無効である。国鉄は,P2などの闘う労働組合を敵視し,その組合員を排除することを一貫して目的とし,その手段として,控訴人らP2組合員を採用候補者名簿に記載せず,事業団へ収容し,同所で再就職の斡旋をすることなく,本件解雇に至ったのであるから,違法性の承継が認められるのは明らかである。被控訴人は,不当労働行為をした張本人であるから,原状回復義務を果たすことなく,再就職促進事業も十分に行わないまま,再就職促進法附則2条が定める3年の期限が来たからといって,控訴人を解雇することができないのは当然である。 憲法27条1項,28条は,最高法規として,再就職促進法の時限立法性をも拘束しているのであるから,これを無視して再就職促進法附則2条を適用して行われた本件解雇は,違憲無効である。」(3) 原判決22頁12行目の「解雇権を濫用したものである。」を「社会通念上相当として是認することができない解雇権の濫用であるから,無効であることは明らかである。」と改める。 (4) 原判決23頁17行目の「主張するが,」の次に「控訴人については,労働委員会に対する救済申立てはされておらず,また,」を加え,同頁22行目から23行目にかけての「原告等特別対策対象者」を「控訴人を含む特別対策対象者」と改める。 - 12 -(5) 原判決24頁4行目冒頭から同頁18行目末尾までを次のとおり改める。 「 控訴人の毎月の賃金は,25万4900円であり,毎月末日締め,翌月20日払いとされていた。事業団がした本件解雇は無効であるから,事業団を承継した被控訴人は,雇用契約に基づき,控訴人に対し,解雇日以降の未払賃金を支払う義務を負う。控訴人の受け取るべき賃金の月額は,25万4900円であり, 業団がした本件解雇は無効であるから,事業団を承継した被控訴人は,雇用契約に基づき,控訴人に対し,解雇日以降の未払賃金を支払う義務を負う。控訴人の受け取るべき賃金の月額は,25万4900円であり,控訴人が本件訴訟を提起した平成17年12月までの未払賃金の総額は,4766万6300円である。 よって,控訴人は,被控訴人に対し,雇用契約に基づき,本件訴訟提起前の未払賃金として,4766万6300円及びうち毎月の賃金である25万4900円に対する毎月の支払日の翌日(毎月21日)から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を,また,本件訴訟提起後に支払われるべき賃金として,本件訴訟を提起した月の翌月である平成18年1月以降,毎月20日限り,25万4900円の支払を求める。」(6) 原判決24頁24行目の「これらの不法行為は,」から同頁26行目末尾までを次のとおり改める。 「これらの不法行為は,国鉄分割・民営化に至るまでの政治・行政の動き,国鉄当局の対応,P8の方針転換など労働組合の動き,改革法の制定,採用候補者名簿の作成の経緯,事業団における再就職斡旋の実態等から明らかなように,国鉄労働運動の壊滅を目的に強行された国鉄・分割民営化の中で生起した一体の不当労働行為であって,まさに計画的・一体的に行われたものであり,その中核を成すものこそ,採用候補者名簿への不記載と本件解雇なのである。すなわち,国鉄及び事業団は,不当労働行為意思に基づき,本件運用基準を策定し,控訴人をP1の採用候補者名簿から削除し,それを前提に控訴人を特別対策対象者に指定した上,更にそれを前提として本件解雇をしたのである。これら一連の不法行為から控訴人を救済 - 13 -する方法は,本件解雇を無効とすること以外にあり得ないが,仮に本件解雇が有効であ 者に指定した上,更にそれを前提として本件解雇をしたのである。これら一連の不法行為から控訴人を救済 - 13 -する方法は,本件解雇を無効とすること以外にあり得ないが,仮に本件解雇が有効であるとしても,上記不法行為の結果として控訴人はP1に不採用となったのであるから,P1に採用されたならば得られたはずの賃金相当損害金等の損害賠償請求は認容されるべきである。」(7) 原判決25頁9行目から10行目にかけての「原告等P2所属組合員」及び同頁12行目の「原告等P2組合員」を「控訴人を含むP2組合員」と改める。 (8) 原判決25頁22行目冒頭から同26頁18行目末尾までを次のとおり改める。 「(イ) 国鉄が控訴人をP1の採用候補者名簿に記載せず,事業団に振り分けた行為(以下「不法行為②」という。)国鉄は,P13各社の採用候補者名簿完成の日の僅か5日前である昭和62年2月2日頃,設立委員が示した抽象的な本件採用基準の運用基準と称して,本件運用基準を策定した。そして,控訴人は,本件運用基準を適用された結果,P1に採用されなかった。この本件運用基準の策定と適用は,国鉄と国鉄分割・民営化に翼賛する労働組合によって,国鉄分割・民営化に反対する労働組合員を排除するために合作されたものであり,不当労働行為にほかならない。 すなわち,国鉄は,昭和61年12月24日,職員に対し,承継法人の労働条件等を記載した書面とともに,承継法人の職員となる意思を確認するための意思確認書を,昭和62年1月7日を提出期限として配布した。国鉄は,同月10日前後に集約を行い,同月中旬には本州3社(P1,P20,P21)とP22が定員割れであることを認識した。そこで,国鉄は,上記4社について,全員を採用した上で,配属で差別するという方針を一旦は固めた 前後に集約を行い,同月中旬には本州3社(P1,P20,P21)とP22が定員割れであることを認識した。そこで,国鉄は,上記4社について,全員を採用した上で,配属で差別するという方針を一旦は固めた。ところが,国鉄分割・民営化に協力すべく路線転換をしたP8等から成るP11及びP12は,この方針に強く抗 - 14 -議して方針の変更を迫った。その結果,国鉄は,同年2月2日頃,急遽,本件運用基準を策定し,同基準に基づいて採用候補者名簿を作成した。 本件運用基準は,本件採用基準から当然に導かれるわけではなく,一定数の積極的な組合活動家だけを不採用とするために設けられた恣意的基準にほかならない。それゆえに,本件運用基準には,ただし書として,「勤務の状況や業務に対する取り組みにおいて特段のプラス要素がみられる等,新事業体に採用しても良いと判断される者を除く。」が入れられ,それを恣意的に運用することによって,P2などの積極的な組合活動家以外の職員は採用候補者名簿に記載できるようにされていた。また,P8は,当初,国鉄分割・民営化に反対していたが,昭和57年頃から方針転換が顕著となっていたところ,昭和58年4月以降の処分を対象とする本件運用基準は,P8組合員を採用し,P8の方針転換以降も国鉄・分割民営化に反対し,闘争を継続して労働処分を受けたP2等の組合員を排除するために策定された基準にほかならない。 控訴人には,本件停職処分1と本件停職処分2の処分歴があるが,これらの処分は,控訴人がP2P6P7分会書記長として組合活動を原則的に行い,強固な組織を誇っていたP2P6に対するすさまじい組織破壊攻撃に対して組合員の先頭で闘ったがゆえにかけられた報復的な処分であり,組織破壊攻撃の一環としてされたものであった。後述するとおり,いずれの処 固な組織を誇っていたP2P6に対するすさまじい組織破壊攻撃に対して組合員の先頭で闘ったがゆえにかけられた報復的な処分であり,組織破壊攻撃の一環としてされたものであった。後述するとおり,いずれの処分についても理由がなく,処分自体が不当労働行為に該当する違法・無効な処分であるから,その処分を理由に,本件運用基準を適用して,控訴人をP1の採用候補者名簿に記載しなかったことは,違法である。 また,控訴人は,本件各停職処分の対象となった行為については,既に国鉄において処分を受けており,これをP13採用の際に不利益に取り扱うことは,二重処分にほかならない。 - 15 -国鉄は,本件運用基準をP2に対しても職員に対しても一切明らかにしてこなかった。これは,整理解雇の4要件における「説明義務」に違反するとともに,国鉄自身,本件運用基準自体に正当性・合理性がないことを自認していたことを推定させ,不当労働行為意思の存在を推認させる。 以上のとおり,国鉄が行った本件運用基準の策定及びその適用は,P2の組合活動家を排除するためにした不当労働行為であり,控訴人に対する適用もその一環であるから,国鉄は,控訴人をP1の採用候補者名簿に記載しなかった行為について,不法行為責任を免れない。」(9) 原判決26頁21行目冒頭から同27頁8行目末尾までを次のとおり改める。 「 事業団秋田雇用対策支部秋田雇用対策支所に配属された控訴人の「業務内容」は,毎週月曜日の朝に30分程度のビデオを見せられ,金曜日と土曜日の朝に30分程度の教養テストを受けさせられるか,感想文の作成を命じられるほかは,外出を禁じられたままただ一日中座り続けているだけというものであった。支所長との面談は,月1回にすぎず,「様子はどうですか。」という質問に,控訴人が「別に変 れるか,感想文の作成を命じられるほかは,外出を禁じられたままただ一日中座り続けているだけというものであった。支所長との面談は,月1回にすぎず,「様子はどうですか。」という質問に,控訴人が「別に変わりはありません。」と答えるだけであり,3年間に数度ほどあった雇用対策課長との面談は,「P13採用はない。」と伝えられるだけのもので,「いつまでこだわっているのか。 方向転換しろ。いつまでも未練たらしくするな。」と怒鳴られたことさえあった。また,控訴人が「危険物取扱資格の講習会に参加させてほしい。」と申し入れたところ,雇用対策課長らから「あなたはP13を希望しているからだめだ。」と断られた。事業団が債務保証をして銀行から融資を受け,自営を始めてはどうかなどという話にも,具体性は全くなかった。回覧された求人票は,給与等の労働条件が記載されていないなど,ずさんなものであった。なお,P1は,昭和62年6月以降本件解雇に至るまでの - 16 -間に,4次にわたり追加採用を行ったが,控訴人など本州においてP13不採用とされた者は募集の対象とされなかった。 事業団は,再就職の指導・斡旋をするはずでありながら,このような対応に終始したことについて,不法行為責任を免れない。」(10) 原判決27頁16行目の「原告等」を「一審原告等」と改める。 (11) 原判決28頁5行目冒頭から同頁16行目末尾までを次のとおり改める。 「イ不法行為②について国鉄は,P13各社の採用候補者名簿を作成するに際して,本件採用基準の運用に当たり,本件運用基準を設けた。控訴人は,本件各停職処分を受けたことにより,本件運用基準に該当するものとして,P1の採用候補者名簿に記載されなかった。このような措置は,以下に述べるとおり,不法行為を構成する余地はない。 すなわち 人は,本件各停職処分を受けたことにより,本件運用基準に該当するものとして,P1の採用候補者名簿に記載されなかった。このような措置は,以下に述べるとおり,不法行為を構成する余地はない。 すなわち,国鉄の分割・民営化によって設立されるP13においては,国鉄改革の趣旨を理解し,民間企業としての経営基盤を確立し得るよう,規律の維持に努めるとともに業務に意欲的に取り組む企業意識を持った社員が必要とされていたのであり,本件採用基準は,このような期待に沿う者を確保しようという趣旨のものである。国鉄は,本件採用基準を具体的に適用するに当たって,新たに設立されるP13においては,ことのほか職場規律の確立,維持が求められていることに鑑み,P13の採用予定人員枠に余裕があるか否かにかかわらず,職場規律の確立,維持の観点から明らかに不適当な者はP13各社の業務にふさわしくない者に当たるとし,客観的,合理的考慮の基準として,従前国鉄において重い懲戒処分を受けるような非違行為のあった者は,採用候補者名簿に記載しないことにしたのである。停職処分は,国鉄の懲戒処分の中では免職に次いで重いものであり,停職の期間は1月から1年とされているのであるから,停職6月以上に値する勤務成績不良は著しいものである - 17 -ことは明らかであるし,停職処分を2回以上受ける者はその成績不良の常習性が認められるのであるから,これらはP13の業務にふさわしい者といえず,本件運用基準の妥当性は明らかである。そして,控訴人の本件各停職処分の処分事由は,後述するとおり,いずれも業務命令違反及び職場規律紊乱に係るものであり,その非違性は明白であるから,これらの停職処分の効力が否定される余地はない。このように,停職処分を2回も受けた控訴人は,「P13各社の業務にふさわしい者」といえな 及び職場規律紊乱に係るものであり,その非違性は明白であるから,これらの停職処分の効力が否定される余地はない。このように,停職処分を2回も受けた控訴人は,「P13各社の業務にふさわしい者」といえないことは明白であり,国鉄が本件採用基準に従い控訴人をP1の採用候補者名簿に記載しなかったことは何ら不当ではなく,このような国鉄の措置が不法行為を構成する余地はない。」(12) 原判決29頁10行目の「各原告が」を「控訴人が」と,同頁12行目の「したがって,」から同頁15行目末尾までを「したがって,控訴人は,被控訴人に対し,不法行為に基づく損害賠償の内金請求として,2000万円の支払を求める。」と,それぞれ改める。 (13) 原判決29頁23行目から24行目にかけての「(原告28ないし30を除く。)」を削る。 (14) 原判決30頁11行目の「年金相当額」から同頁13行目末尾までを「年金相当額であり,その詳細は,原判決別紙原告別損害賠償請求額一覧表⑥及び同表添付の別表2ないし4の「原告番号27」の欄に記載されたとおりである。」と改める。 (15) 原判決30頁15行目の「慰謝料及び」から同頁17行目の「内金請求である。)」までを「慰謝料及び弁護士費用も含めて,2000万円(慰謝料及び弁護士費用は内金請求である。)」と改める。 (16) 原判決32頁10行目の「原告らは,」を「一審原告らは,」と改め,同頁13行目の「困難であった。」を次のとおり改める。 「困難であった(このことは,当然,控訴人においても同様である。)。 - 18 -控訴人は,労働委員会に対する救済申立ての対象者となっていなかったが,その所属するP2P6の執行部による妨害により,自ら望んだにもかかわらず,それが実現できなかったものである。すなわち,控訴人は,昭 訴人は,労働委員会に対する救済申立ての対象者となっていなかったが,その所属するP2P6の執行部による妨害により,自ら望んだにもかかわらず,それが実現できなかったものである。すなわち,控訴人は,昭和62年のP2全国大会でP13不採用問題に関して労働委員会闘争を取り組む方針が決定されたことから,その方針に従って,何度となくP2P23支部やP2P6に対し労働委員会への申立てを要望したが,実質的決定権を持っているP2P6の書記長は一向に動かなかった。控訴人は,個人申立ての道をとるべく出身分会のP2P6P7分会に相談したが,多くの組合員からの声を受けて,個人申立ての道は断念せざるを得なかった。 P2は,平成2年4月の本件解雇後,被解雇者の存在する地方本部ごとに「解雇撤回・P13復帰を求めるP2闘争団」を組織する決定をしたので,控訴人は,同年5月のP2P6・P23支部代表者会議において,組織決定どおりにお願いしたい旨要請したが,ここでも執行部は言を左右にして動かなかった。このように,一部幹部役員の妨害という事情のため実現できなかったが,控訴人としては,労働委員会への申立てを希望していたのであり,その場合の被申立人は飽くまでP1であって,それ以外に国鉄に対して責任を追及することはそれと矛盾するという認識であったし,他の組合員の闘争にマイナスになる行為をすることは組合員としてあり得ないことであった。なお,労働委員会に対する救済申立ての対象者でなかったとしても,労働委員会の救済命令が実行された場合,救済命令の前提となる事情を共通にする組合員についても,相応の不利益が回復されることになるものである。」(17) 原判決32頁24行目の「原告等が所属するP2の各地方本部は,前提事実(6)アのとおり,」を「一審原告等が所属するP2の各地方本部は,前提事 不利益が回復されることになるものである。」(17) 原判決32頁24行目の「原告等が所属するP2の各地方本部は,前提事実(6)アのとおり,」を「一審原告等が所属するP2の各地方本部は,前提事実(7)アのとおり」と,同33頁5行目及び同頁7行目の「原告等」を「一審原告等」と,それぞれ改める。 - 19 -(18) 原判決33頁12行目冒頭から同頁22行目末尾までを次のとおり改める。 「 仮に,控訴人の損害賠償請求権に係る消滅時効の起算点が,不法行為時とされるとしても,国鉄当局は改革法23条というP13各社の使用者責任を問うことを困難にする法律を意図的に作成し,P13各社に対する採用差別に係る責任追及を困難にしたこと,国鉄も事業団も控訴人の不採用の理由を一切明らかにしなかったことなどもあって,不当労働行為の責任を負う主体が判然とせず,控訴人が採用差別に係る責任追及先を判断することは困難であったこと,国営企業労働委員会では採用差別に係る国鉄の責任が否定される一方,労働委員会ではP13各社の責任が肯定されたため,控訴人の損害賠償請求権の行使は事実上制約されてきたこと,控訴人は,本件訴訟提起に至るまで一貫して不当労働行為救済を求めて闘争し続けており,権利の上に眠る者ではないこと,控訴人は憲法28条及び労働組合法が保障する労働者の団結権という重大な権利を侵害され,この不当労働行為は20万人の国鉄労働者から職場を奪い,200人を自殺に追い込むという戦後最大・最悪の労働組合攻撃であったこと,平成12月5月30日に調印されたP19党,P24党,P25党及びP26党間の「P13不採用問題の打開について」との合意(いわゆる「4党合意」)の成立過程において,鉄建公団は和解金を支払うこととされていたこと,平成22年4月9日のP27党,P26 ,P25党及びP26党間の「P13不採用問題の打開について」との合意(いわゆる「4党合意」)の成立過程において,鉄建公団は和解金を支払うこととされていたこと,平成22年4月9日のP27党,P26党,P28党及びP24党の4党から国土交通大臣に対する解決案の提案を契機として,同年6月28日に控訴人を除く一審原告らや関連事件の多数の原告と被控訴人との間で成立した和解は,政治和解といわれるものの,法的にいえば,被控訴人が損害賠償請求権が発生していることを前提に,その損害を塡補するために金銭の支払義務があることを認める「承認」に該当し,この承認行為は控訴人に対しても向けられたものであること,国策による国営企業である国鉄がし - 20 -た採用差別に係る救済は,国鉄や被控訴人の責務であり,単に時間が経過したとの一事をもって被控訴人がその責任を免れるとするのは著しく正義に反すること,国鉄や事業団がした不当労働行為に係る証拠も散逸していないこと,以上の事情に照らせば,被控訴人が消滅時効を援用することは,権利の濫用に当たり許されない。」(19) 原判決34頁19行目の「原告らが」を「一審原告らが」と改める。 (20) 原判決35頁5行目末尾に,改行の上,次のとおり加える。 「 特に,不法行為②については,控訴人は,自己がP1の採用候補者名簿に記載されなかったことを知った昭和62年2月16日頃の時点で,既に,P1に採用された者との間に,将来的には取得賃金,退職金,年金等の点で,格段の相違が存することになることは,明確に認識していたものである。そして,控訴人がP1に対する不当労働行為責任を追及することを望んでいたとしても,実際には,救済申立ての対象者とされず,1年の期間徒過により救済申立ての対象者として追加されることもあり得なくなり,その て,控訴人がP1に対する不当労働行為責任を追及することを望んでいたとしても,実際には,救済申立ての対象者とされず,1年の期間徒過により救済申立ての対象者として追加されることもあり得なくなり,その間,個人として申立てをすることもなかった以上,遅くともその時点までには,控訴人としては,事業団に対する損害賠償請求の方策しか残されていないことを明確に認識し得たはずである。控訴人が,P13の不当労働行為責任を認める救済命令が発出されるであろうことを想定ないし期待していたとしても,事業団に対する損害賠償請求を行うことについて何らの障害にもなり得ず,P2P6の執行部の妨害等のために控訴人が労働委員会への申立てができなかったという事情があったとしても,当該事情は,事業団及び被控訴人の何ら関知しないところである。」(21) 原判決35頁11行目の「原告等が」を「一審原告等が所属するP2の各地方本部が」と改める。 (22) 原判決36頁7行目末尾に,改行の上,次のとおり加える。 「 被控訴人は,平成22年6月28日,本件に先行する同種事案に係る最 - 21 -高裁判所第三小法廷における手続において,関係の一審原告らに対して一定の解決金を支払うことを内容とする和解に応じたが,この和解は,P27党,P26党,国鉄P28党及びP24党からの申入れを踏まえた国土交通大臣から,被控訴人に対して,高度の政治判断に基づく指示がされた結果であって,被控訴人に法的責任があることを前提としたものではない。 この和解により,被控訴人が関係の一審原告らに対して損害賠償義務を承認したなどという経緯は一切存しなかったのであり,まして,上記和解に応じない姿勢を明確に示していた控訴人に対しては,いかなる意味においても,時効利益の放棄と受け取られるような言動を執ったことはない 認したなどという経緯は一切存しなかったのであり,まして,上記和解に応じない姿勢を明確に示していた控訴人に対しては,いかなる意味においても,時効利益の放棄と受け取られるような言動を執ったことはない。」(23) 原判決36頁14行目末尾に,改行の上,次のとおり加える。 「(7) 本件各停職処分の無効確認請求(争点(3))について(被控訴人の主張)ア本件各停職処分の無効確認の訴えの追加的変更は,民訴法143条1項ただし書,4項により許されないものというべきである。 控訴人は,平成17年12月22日に本訴を提起し,原審で提出された平成18年4月24日付け準備書面(13)において,本件各停職処分が不当労働行為であり,違法不当である旨主張するとともに,原審で提出された同年11月24日付け陳述書(甲332)及び控訴人本人尋問(原審)において,本件各停職処分の不当性等について陳述していたのに,本件各停職処分の無効確認を求めて訴えの追加的変更をすることはなかった。ところが,本訴提起から約5年を経過し,本件控訴の提起から2年8か月余りを経過した時点になって,突如,平成22年12月2日付け準備書面(控訴審10)によって本件各停職処分の無効確認を求めるに至ったものである。このように,本件各停職処分の無効確認の訴えの追加的変更は,時機に後れたものであることが明らかであり,これを審理すれば,訴訟手続を遅滞させることとな - 22 -ることが明らかである。 イ本件各停職処分の無効確認の訴えは,単なる過去の事実の確認を求めるものであって,確認の利益を欠くものであるから,却下すべきである。 控訴人は,本件各停職処分が無効であることを確認することをもって,国鉄が控訴人をP1の採用候補者名簿に記載しなかったことの違法性を明らかにすることを を欠くものであるから,却下すべきである。 控訴人は,本件各停職処分が無効であることを確認することをもって,国鉄が控訴人をP1の採用候補者名簿に記載しなかったことの違法性を明らかにすることを目的としているようであるが,ここで本件各停職処分が無効であったか否かは,国鉄が控訴人をP1の採用候補者名簿に記載しなかったことが違法であったか否かを判断する過程における過去の前提事実にすぎず,仮に,本件各停職処分が無効であるために国鉄が控訴人をP1の採用候補者名簿に記載しなかったことが違法であったとしても,既に述べてきたとおり,本件解雇の効力が否定されるものではないし,また,不法行為に基づく損害賠償請求権については既に消滅時効が完成しているから,国鉄が控訴人をP1の採用候補者名簿に記載しなかったことの違法性を論じる法的意味はない。 そうすると,本件各停職処分が無効であることを確認したところで,控訴人と被控訴人との間に存する法的紛争の解決に資するところは何もなく,本件各停職処分の無効確認の訴えは確認の利益を欠くものである。 ウ本件各停職処分に係る処分事由は,その非違性が明白であるから,本件各停職処分の効力が否定される余地はない。 控訴人は,昭和60年12月10日から昭和61年4月25日までの間において,再三遅刻を繰り返しながら,管理者にその理由を申告しないために否認扱いとされることを拒否し,勤務時間中に行うことが指示されていた体操を繰り返し拒否して行わず,勤務時間中に組合情宣ビラ等の作成,鉄道電話による組合関係の連絡を行う等の組合活 - 23 -動を繰り返したのみならず,業務と関係なく職場を離脱し,これらを注意,指導した管理者に暴言を重ねる等の非違行為を行ったことを理由として,本件停職処分1が発令されたものである。また,控訴人 23 -動を繰り返したのみならず,業務と関係なく職場を離脱し,これらを注意,指導した管理者に暴言を重ねる等の非違行為を行ったことを理由として,本件停職処分1が発令されたものである。また,控訴人は,昭和61年8月28日から同年12月21日までの間において,管理者の再三にわたる注意,警告を無視して,本件停職処分1と同様の非違行為を繰り返したため,本件停職処分2が発令されたものである。 (控訴人の主張)ア本件各停職処分の無効確認の訴えの追加的変更は,許されるものである。 そもそも,本件運用基準は秘密裏に策定されたものであって,控訴人が本件運用基準を適用されてP1の採用候補者名簿から削除されたことが明らかになったのは,被控訴人が平成22年9月28日の当審第8回口頭弁論期日における更新意見においてその旨を認めた時であり,その後に控訴人が本件各停職処分の無効確認の訴えの追加的変更を行うことになったのは,被控訴人の訴訟態度に起因するものである。 また,本件各停職処分の効力に関する主要な証拠調べは,原審において終了しており,当審においては補充的な立証で足りるから,訴訟を著しく遅滞させるものではない。 イ本件各停職処分の無効確認の訴えには,確認の利益が認められる。 控訴人は,本件停職処分1及び本件停職処分2の各懲戒処分という事実が存在するか否かという事実の確認を求めているのではなく,この2回の停職処分が有効か無効かという現在の法律関係の確認を求めているものである。 控訴人は,この2回の停職処分が有効であることを前提として,P1の採用候補者名簿から削除され,P1に不採用とされ,事業団の職員となり,事業団から本件解雇を受けた。しかるに,この2回の停職 - 24 -処分が無効であれば,控訴人はP1の採用候補者名簿から削除されず, 名簿から削除され,P1に不採用とされ,事業団の職員となり,事業団から本件解雇を受けた。しかるに,この2回の停職 - 24 -処分が無効であれば,控訴人はP1の採用候補者名簿から削除されず,P1に採用されていたのであるから,違法に採用候補者名簿から削除した国鉄,次いで事業団,それを最終的に承継した被控訴人は,控訴人をP1に採用させる法的責任がある。それにもかかわらず,事業団がこの責任を怠って控訴人を解雇したことは極めて違法な行為であり,当然に本件解雇は無効である。仮に本件解雇が無効とはいえないとしても,控訴人は,2回の停職処分が無効であるにもかかわらず有効とされて,上記のような経緯をたどって事業団から本件解雇を受けた一連の国家的不当労働行為の不法行為による損害賠償を請求しているのである。 よって,本件各停職処分の無効確認の訴えの追加的変更は,控訴人の現在の法律関係の確認を求めるものであり,それは現在の種々の法律関係の大前提となる法律関係であるから,確認の利益が認められる。 ウ本件各停職処分は,違法・無効である。 国鉄が控訴人に対して行った本件停職処分1及び本件停職処分2の処分事由とされた事実は,いずれも存在しないか不当なものであり,本件各停職処分は違法・無効である。また,これらの事実を理由とする控訴人に対する停職処分は,処分事由の内容からして前例のない重い処分であり,強固な団結を維持していたP2P6P7分会の書記長として,その中心にいた控訴人を他の組合員に対する見せしめとして処分したものであって,処分権の濫用としても違法・無効である。」第3 当裁判所の判断 1 当裁判所も,控訴人の請求は,主位的請求のうち判決確定の日以降の賃金の支払を求める部分は訴えの利益を欠くから訴えを却下すべきであり,その余の主位的請求及び予備 ある。」第3 当裁判所の判断 1 当裁判所も,控訴人の請求は,主位的請求のうち判決確定の日以降の賃金の支払を求める部分は訴えの利益を欠くから訴えを却下すべきであり,その余の主位的請求及び予備的請求はいずれも理由がないから棄却すべきであり,当審における追加請求については訴えの追加的変更は許され,確認の利益も認めら - 25 -れるが,当該請求も理由がないから棄却すべきものと判断する。その理由は,次のとおり原判決を補正するほか,原判決の「事実及び理由」第3に説示されたとおりであるから,これを引用する。 (原判決の補正)(1) 原判決36頁26行目から同37頁1行目にかけての「本件解雇には合理性や相当性もないなどとして,」を「本件解雇はそれ自体が不当労働行為であり,また,解雇権を濫用するものであるなどとして,」と改める。 (2) 原判決37頁7行目から8行目にかけての「政治的義務を課したものにすぎないことに照らせば,」を「政治的義務を課したものであって,国民が具体的な勤労の場の提供を国家に対して請求することができるなど具体的権利を保障したものではないと解されることに照らせば,」と,同頁17行目の「このことは,」から同頁19行目の「左右されるものではない。」までを「このことは,特別対策対象者の労働条件がP13各社に採用された者と同等のものでなかったり,特別対策対象者に対する再就職先の斡旋が特別対策対象者の意向に沿うものばかりでなかったとしても,左右されるものではない。」と,それぞれ改める。 (3) 原判決38頁5行目の「これらの発言に照らせば,」から同頁6行目の「明らかである。」までを「これらの発言を文字どおりに理解すれば,中曽根元総理が,国鉄改革の当時において,国鉄改革がP2崩壊につながることを意識していたということがで に照らせば,」から同頁6行目の「明らかである。」までを「これらの発言を文字どおりに理解すれば,中曽根元総理が,国鉄改革の当時において,国鉄改革がP2崩壊につながることを意識していたということができる。」と,同頁22行目から23行目にかけての「附帯決議が」から同頁25行目の「明らかである。」までを「附帯決議がされていることが認められるのであって,国会審議や法案成立の段階においては,国鉄改革関連8法が,P2組合員を始め,いかなる労働組合員に対しても,所属組合等によって不利益取扱いをされることがないものとして制定されたことは明らかであるというべきである。」と,それぞれ改める。 (4) 原判決39頁7行目の「侵害する法律であると認めることはできない。」 - 26 -を「侵害する目的で制定された法律であると認めることはできない。なお,控訴人は,政府とP19党は,国鉄赤字の責任の所在を隠蔽するため,攻撃の矛先をP2などの労働組合に向けて国鉄改革を行った(国鉄改革関連8法を制定した)などとも主張するが,国鉄改革の経緯は既に説示したとおりであり,本件全証拠によっても,控訴人の当該主張を採用することはできない。」と改める。 (5) 原判決39頁14行目冒頭から同40頁22行目末尾までを次のとおり改める。 「ア控訴人は,国鉄が控訴人らP2組合員を採用候補者名簿に記載しなかったことは不当労働行為であり,その違法性を承継した事業団理事長による特別対策対象者への指定も無効となり,解雇の前提となる特別対策対象者への指定の要件を欠くことになるから,本件解雇は無効である(本件において違法性の承継が認められるのは明らかである。),また,被控訴人が原状回復義務を果たすことなく,再就職促進事業も十分に行わないまま,3年の期限が来たからといって,控訴人を解雇 無効である(本件において違法性の承継が認められるのは明らかである。),また,被控訴人が原状回復義務を果たすことなく,再就職促進事業も十分に行わないまま,3年の期限が来たからといって,控訴人を解雇することはできないなどとして,平成2年4月1日に再就職促進法が失効することを定める同法附則2条を控訴人に適用して行われた本件解雇は,憲法27条1項,28条に反し,適用違憲である旨主張する。 イしかしながら,国鉄改革関連8法につき憲法27条1項違反が問題となる余地がないことは既に説示のとおりである。 ウそして,再建監理委員会の最終答申及びこれを受けた改革法,事業団法,再就職促進法の各規定(前提事実(2)イないしエ)によれば,承継法人に採用されなかった者は,段階的な措置として,臨時に,国鉄から移行する事業団の職員となるが,この措置は国鉄改革の日から3年間とし,3年以内に再就職を図るものとして,その間は地位を保障した上で再就職の支援をすることにし,3年後に再就職促進法は失効するものとされ - 27 -たのであって,P13各社への採用を希望したものの採用候補者名簿に記載されずP13各社に採用されなかった者は,例外なく事業団の職員となって特別対策対象者に指定され,3年間にわたって再就職の支援を受け,それにもかかわらずその間に再就職が実現されなかった場合には,期限の到来により一律に再就職促進法が失効するというように,事業団の職員に移行して特別対策対象者に指定される段階,3年後に再就職促進法の効力が失われる段階という各段階で,個々の職員につき個別の要件充足性を吟味して特別対策対象者への指定や解雇が行われるという仕組みにはなっておらず,また,使用者である事業団側の恣意的な判断や行為が介入し得る余地はなく,したがって,上記各段階において所属組 件充足性を吟味して特別対策対象者への指定や解雇が行われるという仕組みにはなっておらず,また,使用者である事業団側の恣意的な判断や行為が介入し得る余地はなく,したがって,上記各段階において所属組合等によって差別的取扱いがされる可能性は考えられないといえる。すなわち,再就職促進法附則2条について,個別的な適用をもって適用違憲を論ずることは,性質上なじまず,それを論ずる前提に欠けるものというべきである。控訴人は,国鉄が控訴人をP1の採用候補者名簿に記載しなかったことが不当労働行為であるとし,その違法性が特別対策対象者への指定に承継される旨主張し,更には,本件解雇にまでその違法性が承継されていく旨主張するようにも解されるけれども,採用候補者名簿への不記載,特別対策対象者への指定,本件解雇は,順次行われたという意味で全く関連性がないとはいえないものの,採用候補者名簿への不記載が,特別対策対象者への指定,ひいては本件解雇を目的として行われたものとは本件全証拠によっても認めることができず,これらが互いに目的・手段,あるいは手段・結果の関係をもって連続して行われたものとはいえないから,上記主張を採用することはできず,これが認められることを前提として,再就職促進法附則2条の適用違憲をいう主張は,その前提を欠くものといわなければならない。控訴人の主張は,尽きるところ,国鉄が控訴人をP1の採用候補者名簿に記載しなかった - 28 -ことや事業団において再就職の斡旋が十分に行われなかったことが,いずれも控訴人がP2組合員であることを理由とする不当労働行為であるというものと解され,これについては,当該行為自体を直截に問題にして,労働委員会に対して救済申立てをして不当労働行為の是正措置を求めるなり,当該行為が不法行為であるとして損害賠償を請求するな であるというものと解され,これについては,当該行為自体を直截に問題にして,労働委員会に対して救済申立てをして不当労働行為の是正措置を求めるなり,当該行為が不法行為であるとして損害賠償を請求するなりするのが本筋というべきである。したがって,控訴人に対する関係で再就職促進法附則2条を適用することが憲法28条に違反し,適用違憲となると解する余地はない。」(6) 原判決41頁6行目冒頭から同頁10行目末尾まで及び同頁13行目冒頭から同頁18行目末尾までを削り,同頁19行目の「オ」を「エ」と改める。 (7) 原判決43頁3行目の「原告等に対する救済命令」を「労働委員会による救済命令」と改める。 (8) 原判決47頁3行目から4行目にかけての「主位的請求の請求の趣旨1項,2項(不法行為に基づく損害賠償請求を除く。),3項」を「前記第1の1(2)(主位的請求)のア,イ(不法行為に基づく損害賠償請求を除く。),ウ」と,同頁5行目から6行目にかけての「原告ら(原告28ないし30を除く。)は,請求の趣旨3項において,」を「控訴人は,前記第1の1(2)(主位的請求)のウにおいて,」と,それぞれ改める。 (9) 原判決47頁11行目冒頭から同頁12行目末尾までを次のとおり改める。 「2 不法行為の存否(争点(1)ウ,(2)ア),消滅時効(争点(1)オ,(2)ウ)及び本件各停職処分の効力(争点(3))について」(10) 原判決47頁23行目冒頭から同48頁11行目末尾までを次のとおり改める。 「(2) 不法行為②(国鉄による採用候補者名簿不記載等)について - 29 -ア本件運用基準の策定の不当労働行為性控訴人は,① 本件運用基準の策定自体が不当労働行為であり,また,② 本件各停職処分は無効であるから,この処分を理由に本件運用基 いて - 29 -ア本件運用基準の策定の不当労働行為性控訴人は,① 本件運用基準の策定自体が不当労働行為であり,また,② 本件各停職処分は無効であるから,この処分を理由に本件運用基準を適用して,控訴人をP1の採用候補者名簿に記載しなかったことは違法であるなどと主張する。そこで,まず,本件運用基準の策定自体の不当労働行為性について検討する。 前提事実並びに証拠(甲817,899の1及び2,968,974,乙20,21,71)及び弁論の全趣旨によれば,国鉄は,昭和61年12月24日,職員に対し,昭和62年1月7日を提出期限として,承継法人(P13各社)の職員となる意思を確認するための意思確認書の提出を求めたが,これを集計した結果,同月中旬頃までには,P1などにおいて,基本計画(前提事実(3)イ)における採用予定数に採用希望者が達しないという事態が現実化してきたこと,そうしたことから,昭和61年12月頃から漠然と想定されていた,そのような場合に「国鉄在職中の勤務の状況からみて,P13各社の業務にふさわしい者」という本件採用基準との関係をどのように考えるのかという点が本格的に検討されるべき課題として顕在化し,① 採用希望者が基本計画における採用予定数を下回る以上は全員を採用候補者名簿に記載するという案,② P1などについては基本計画における採用予定数が2割の余剰人員を含むものであることを理由に基本計画における採用予定数を2割下回る人数(鉄道事業の運営に最低限必要な人数)まで候補者の選定を行い,その人数での採用候補者名簿を作成するという案,③ 両者の中間的な案(一定の基準に該当する者だけは採用候補者名簿に記載しないこととする案)が選択肢として検討され,中間的な案となる本件運用基準が,昭和62年1月末から2月初め頃に最終的 という案,③ 両者の中間的な案(一定の基準に該当する者だけは採用候補者名簿に記載しないこととする案)が選択肢として検討され,中間的な案となる本件運用基準が,昭和62年1月末から2月初め頃に最終的に決定され,同月7日までに,本件運用基準に該当し - 30 -た者(合計117人)が抹消された上で採用候補者名簿が完成されるに至ったことが認められる。一方,証拠(甲156の1,960,乙20)及び弁論の全趣旨によれば,本件運用基準が策定された時期には,国鉄の分割民営化に協力する方針をとるP11が,「国鉄改革に敵対している者までも新事業体に移行せざるを得ない状況が生み出されている。」とし,国鉄当局に対し,「正直者が馬鹿を見ない対処方を要求して」申入れをすることとしたり,P12が,その結成大会において,「職員の採用にあたっては,改革に努力している職員と努力せず妨害している職員とを区別するのは当然であり,われわれはこのことを強く主張し,具体的な処置を求め,全力をあげて闘う。」などとする,「新会社の採用・配属に関する特別決議」をしたりするという動きがあったことが認められ,また,本件運用基準に該当する者の中には,国鉄の分割民営化に反対する方針を堅持していたP2に所属する組合員が多数含まれていたことがうかがわれる。このようなことからすれば,控訴人が,国鉄がP11やP12からの要求を受け入れるなどして,P2組合員の採用差別を行うために本件運用基準を策定したと考えることも無理からぬことといえなくもない。 しかしながら,そもそも,本件採用基準には,「国鉄在職中の勤務の状況からみて,P13各社の業務にふさわしい者」という基準が定められていたのであって,採用希望者が採用予定数を上回れば,候補者の選定が行われる過程でこの基準に該当しない者が採用候補者名簿 中の勤務の状況からみて,P13各社の業務にふさわしい者」という基準が定められていたのであって,採用希望者が採用予定数を上回れば,候補者の選定が行われる過程でこの基準に該当しない者が採用候補者名簿に記載されないこととなるべきところ,意思確認書を集計した結果,採用希望者が採用予定数を下回るといういわば想定外の事態が現実化したために,採用候補者名簿の確定までの間に,本件採用基準に明らかに該当しない者を除外するための具体的な基準を策定する必要性に迫られたことは,それ自体理解できなくはない。そして,本件運用基 - 31 -準の「(昭和)58年4月1日以降の行為に対する懲戒処分として停職6月以上の処分を受けた者及び停職処分を2回以上受けた者」という本文部分は基準として客観的かつ明確なものであるし,国鉄において停職処分は免職に次いで重い懲戒処分であり,停職の期間は1月以上1年以下とされていたことからすれば,停職6月というのは極めて重大な非違行為に対する処分であるということができ,また,停職処分を2回以上受けるということは重い非違行為を繰り返しているといえるのであるから,これらに該当する者を原則として採用に適さない者とする判断は常識にかなっており,この基準は,本件採用基準を具体化するものとして,合理性を有するということができる。対象となる懲戒処分を昭和58年4月1日以降の行為に対するものに限ったことについても,昭和57年3月から運輸大臣からの指示で行った職場規律の総点検の開始から1年を経て新しい職場管理体制が定着した時期以降の行為を対象とすることとし,3年間の勤務成績を勘案して物事を決めるという面をも考慮したと認められる(甲899の1及び2,968,974)ことからすれば相応の合理性があるといえ,その後も国鉄の分割民営化に反対する方針 ととし,3年間の勤務成績を勘案して物事を決めるという面をも考慮したと認められる(甲899の1及び2,968,974)ことからすれば相応の合理性があるといえ,その後も国鉄の分割民営化に反対する方針を堅持し,闘争を継続するなどしていたP2所属の組合員らが,結果的にその対象に多数含まれることになったことを考慮しても,この時期の限定の仕方をもって不相当なものということはできない。また,控訴人は,本件運用基準のただし書が恣意的に運用される可能性を指摘するけれども,懲戒処分を受けた後で,問題点を改め,勤務の状況や業務に対する取組み等の面で著しい向上が見られた者を新会社に採用する余地を残すという考え方自体は妥当なものといえ,これが適正かつ公平に運用される限りは,本件運用基準は全体として合理的な基準であるというべきである。そして,証拠(乙71)及び弁論の全趣旨によれば,本件運用基準の本文 - 32 -に該当しながらただし書の適用によってP1の採用候補者名簿に記載された者は,少なくとも9人いたが,そのうち3人はP2組合員であったことが認められ,このことからすれば,本件運用基準のただし書を適用することによって,P2組合員以外の者を例外扱いし,その反面としてP2組合員のみを殊更に採用候補者名簿から排除するような運用がされたとも認められない。 以上によれば,本件運用基準の策定自体が不当労働行為に該当するとまで認めることはできず,本件運用基準に該当した者を採用候補者名簿に記載しないことは,本件運用基準への該当性を検討するに当たって考慮された停職処分が無効又は取り消されたなどの特段の事情がない限り,適法なものというべきである。 イ本件各停職処分の無効確認の訴えの適否そこで,次に,本件各停職処分の適法性を検討することとなるが,その前提とし 又は取り消されたなどの特段の事情がない限り,適法なものというべきである。 イ本件各停職処分の無効確認の訴えの適否そこで,次に,本件各停職処分の適法性を検討することとなるが,その前提として,控訴人は,当審において,本件各停職処分の無効確認の訴えを追加し,これに対し,被控訴人は,第一次的に,民訴法143条1項ただし書,4項により訴えの追加的変更を許さない決定を求め,第二次的に,確認の利益を欠くとして訴え却下を求めるので,この点について検討する。 本件訴訟の経過をみると,控訴人は,原審段階から,本件解雇の無効又は不法行為の前提問題として,本件各停職処分の無効を主張し,それに沿う証拠も提出していたものであり,本件各停職処分の無効確認を独立の訴えとして定立したのは当審に至ってからであるものの,上記の経過からすれば,本件各停職処分の無効確認の訴えの追加的変更を行った時点で,その新請求のために新たに主張・立証を行わなくても判断が可能な状況にあったといえる。このように,訴えの変更を認めることによって著しく訴訟手続を遅滞させることとなるとは認め - 33 -られないことから,本件各停職処分の無効確認の訴えの追加的変更自体は許されるものである。 次に,本件各停職処分の無効確認の訴えは,過去の法律関係の効力の確認を求めるものではあるが,控訴人がP1の採用候補者名簿に記載されなかったのは,本件各停職処分が有効であることが前提となっているからであり,本件各停職処分の効力を確定することが,現在の控訴人と被控訴人との権利関係(不法行為責任の存否)の抜本的な解決に適切かつ有用であると認められるから,確認の利益を肯定することができる。なお,被控訴人が主張するように,不法行為②に基づく損害賠償請求権が時効消滅していれば,不法行為の成否自体を確定 抜本的な解決に適切かつ有用であると認められるから,確認の利益を肯定することができる。なお,被控訴人が主張するように,不法行為②に基づく損害賠償請求権が時効消滅していれば,不法行為の成否自体を確定する必要もなく,したがって,その前提となる本件各停職処分の効力の確定も不要であるということになるが,消滅時効の抗弁が成立し得る場合であるからといって,請求原因(不法行為の成否)を先に判断することが許されないわけではないから,不法行為の成否を先に判断する前提で,本件各停職処分の無効確認の訴えにつき訴えの利益を肯定することが妨げられることはないというべきである。よって,本件各停職処分の無効確認の訴え自体は適法なものと認められる。 ウ本件各停職処分の効力(ア) 前提事実並びに証拠(甲246,248ないし250,332,乙20,21,103,控訴人本人(原審・当審))及び弁論の全趣旨によれば,本件各停職処分に関して,次のとおりの事実が認められる。 a 国鉄に関しては,昭和56年11月頃から国会やマスコミ報道等によって職場規律の乱れが顕著であるとの問題が指摘されるようになり,職場規律の是正・確立に向けた注意喚起が行われていたが,昭和57年3月には運輸大臣の指示を受けて約60項目 - 34 -にわたる職場規律の総点検が実施され,これ以降も,昭和60年9月までに8回にわたって職場規律の総点検が実施されるなど,職場規律の是正・確立が繰り返し求められている状況にあった。 また,臨時行政調査会は,昭和57年7月30日の第三次答申において,国鉄を分割民営化するまでの間,緊急にとるべき措置として,職場規律の確立を図るため,職場におけるヤミ協定及び悪慣行を全面的に是正し,現場協議制度は本来の趣旨にのっとった制度に改めること,また,違法行為に対しての 化するまでの間,緊急にとるべき措置として,職場規律の確立を図るため,職場におけるヤミ協定及び悪慣行を全面的に是正し,現場協議制度は本来の趣旨にのっとった制度に改めること,また,違法行為に対しての厳正な処分,職務専念義務の徹底等人事管理の強化を図ること等を提言し,政府は,これを受けて,同年9月24日,「日本国有鉄道の事業の再建を図るために当面緊急に講ずべき対策について」を閣議決定し,職場規律の確立等に関しては,現場におけるヤミ協定及び悪慣行については,総点検等によりその実体を把握し,直ちに是正措置を講ずる,職員の信賞必罰体制を確立し,人事管理の一層の強化を図るなどとした。 そうした中,控訴人が勤務する国鉄P7でも,従前は自主参加であった始業時の体操が勤務時間内に義務として実施されるようになるなど職場規律の是正・確立に向けた対応がとられていた。 b 控訴人は,昭和60年12月10日に19分,同月17日に12分,同月27日に14分,同月29日に2分の遅刻をしたが,いずれも雪による渋滞以外の理由を申告しなかった。なお,控訴人は,原則的に自動車では通勤しないこと,自動車で通勤する場合には時間に十分な余裕を持つことといった注意を事前に受けていた。 c 控訴人は,体操は勤務時間内に行うものであり,参加するようにとの注意を受けていたにもかかわらず,以前は自主参加であっ - 35 -たこと,出勤前に子供とラジオ体操をしていることなどを理由に,参加しなかった。 d 控訴人は,「点検・摘発メモ」という小冊子を制服の胸の外のポケットに差していたところ,同冊子の上の部分がポケットからはみ出すことが勤務時間中の組合活動になるからやめるよう上司から注意されていたにもかかわらず,これをやめなかった。また,勤務時間中に,鉄道電話を使っ 差していたところ,同冊子の上の部分がポケットからはみ出すことが勤務時間中の組合活動になるからやめるよう上司から注意されていたにもかかわらず,これをやめなかった。また,勤務時間中に,鉄道電話を使って組合関係の連絡をしたり,組合の機関紙を読んだりした。 e 控訴人は,昭和61年3月31日午後0時45分から午後2時45分までの間,職場を離れ,仕事以外の打合せを行うなどした。 そして,控訴人は,帰室後,上司にどこに行っていたのか尋ねられたが,理由を言っても同じである旨述べて,これに回答しなかった(この点について,控訴人は本人尋問(原審)においては上司に具体的に説明をした旨述べているが,甲332(資料5の③)の記載によれば,上記のとおり認められる。)。 f 控訴人は,上司が組合関係の掲示物をはがしたことに対し,「盗んだ物は組合財産であり,すぐに返せ」などと激しく要求した。 また,朝の点呼(朝礼)において,上司が国鉄の分割民営化の方針が決まったので,意識改革をしなければ新会社に残れないなどと発言したことに対し,激しく抗議した。 g 控訴人は,昭和61年5月7日,処分通告を受け,弁明・弁護を経た上,同月28日付けで,「昭和60年12月10日から昭和61年4月25日までの間において,管理者の注意・指導にもかかわらず,遅刻事由の申告拒否,体操の拒否,勤務時間内の組合活動,職場離脱及び管理者に対する度重なる暴言行為を惹起する職員として著しく不都合な行為があった」として,3月間停職す - 36 -るという本件停職処分1を受けた。 h 控訴人は,同年8月28日,本件停職処分1が解けて出勤したところ,停職中の同年7月1日に人材活用センターへの異動が発令されたため,以前の職場から机が撤去されていたことについて,上司に対して激しく抗 控訴人は,同年8月28日,本件停職処分1が解けて出勤したところ,停職中の同年7月1日に人材活用センターへの異動が発令されたため,以前の職場から机が撤去されていたことについて,上司に対して激しく抗議した。その間に,点呼後の体操の時間が経過したため,体操もしなかった。 i 控訴人は,同年9月9日,上司がロッカーや机を勝手に物色し,組合関係の掲示物を無断で持ち去ったとした上,それが不当労働行為であるとして,事前に不当労働行為に対する抗議方法として決めていた方針に従って,点呼後の体操を拒否し,上司に対して激しく抗議した。 j 控訴人は,同月10日,上司の不当労働行為に抗議するとして,上記iと同様に,事前に決めていた方針に従って,体操を拒否し,上司に対して激しく抗議した。 k 控訴人は,同月12日,上司が朝の点呼(朝礼)の際にした発言に対し,激しく抗議した。 l 控訴人は,同年10月4日午前10時から午前10時15分までの間,同日午前10時23分から午前10時40分までの間及び同月21日午後2時40分から午後3時20分までの間,職場を離脱した(控訴人は,公衆電話や自動販売機を利用するためであったというが(甲332,控訴人本人(原審)),緊急の用件があったことなどは認められない。)。 m 控訴人は,同年11月17日,P2組合員が,上司からP2脱退用紙を配布され,勤務時間中に持参することについても許可を得たとして,人材活用センター所属の組合役員にこれを持参するという出来事があったことから,勤務終了時の点呼の際に,上司 - 37 -に対して激しく抗議した。 n 控訴人は,同月21日,机の引出しにワッペンが貼ってあると注意されたが,身に覚えがなかったため,「何でも自分のせいにするな」などと抗議した。 37 -に対して激しく抗議した。 n 控訴人は,同月21日,机の引出しにワッペンが貼ってあると注意されたが,身に覚えがなかったため,「何でも自分のせいにするな」などと抗議した。 o 控訴人は,同年12月12日,人材活用センター所属の職員全員が年末手当をカットされたことについて,勤務終了時の点呼の際に,激しく抗議した。 p 控訴人は,昭和62年1月9日,処分通告を受け,弁明・弁護を経た上,同月24日付けで,「昭和61年8月28日から昭和61年12月12日までの間において,昭和61年5月懲戒により反省を促したにもかかわらず,管理者の注意・指導を軽視し,度重なる体操の拒否,職場離脱及び管理者に対する暴言を継続するという職員として著しく不都合な行為があった」として,5月間停職するという本件停職処分2を受けた。 q 控訴人の本件停職処分1以前の懲戒処分歴は,昭和59年7月28日付け戒告,昭和60年9月4日付け戒告(2回),昭和61年3月28日付け戒告であった。 (イ) 日本国有鉄道法31条1項に定める懲戒処分の選択については,懲戒処分権者たる国鉄総裁に裁量が認められるのであって,当該懲戒処分が,その原因となった行為との対比において甚だしく均衡を失し,社会通念に照らして合理性を欠く等裁量の範囲を超えてされたものでない限り,その効力を否定することができないものである(最高裁昭和45年(オ)第1196号同49年2月28日第一小法廷判決・民集28巻1号66頁参照)。そこで,以上の事実関係に基づき,上記判断枠組みに従って,本件各停職処分の効力を検討する。 - 38 -まず,本件停職処分1は,前記2(2)ウ(ア)bないしfの事実を処分事由としてされたものである。これらの処分事由を個別に分断して見れば,一見比較的 処分の効力を検討する。 - 38 -まず,本件停職処分1は,前記2(2)ウ(ア)bないしfの事実を処分事由としてされたものである。これらの処分事由を個別に分断して見れば,一見比較的軽微な非違行為と見られなくもないけれども,これらの非違行為が行われた当時の国鉄及びその職場を取り巻く状況をみると,職場規律の乱れがつとに指摘され,その是正を図るために数次にわたる職場規律の総点検が実施されるようになってから相当の期間が経ち,その間,臨時行政調査会の答申や閣議決定においても職場規律の確立等が強く求められており,国鉄改革の方向性が示されるなど,規律の遵守が厳しく求められる状況にあったといえる。控訴人は,このような中で,合理的な理由もないのに遅刻を繰り返し(雪による渋滞は当然予測されるものであり,そうであるからこそ事前に注意がされていたのであって,こうした中での雪による渋滞を理由とする遅刻は合理的な理由があるものとはいえない。),勤務時間内に行うこととなった体操を独自の見解に立って拒否し,勤務時間内に組合活動を繰り返し行い(しかも公用の鉄道電話まで使用している。),長時間にわたって職場を離れ,その理由の申告すらしない(理由を言っても同じである旨の発言は居直りと見られても仕方がない。)という職場規律を公然と乱す行為を行ったものである(なお,これらの行為は,P2の上部機関の具体的な闘争方針に従って行われたとは認められないものがほとんどである。)。しかも,控訴人は,これら様々な非違行為を繰り返し行ったばかりでなく,上司が組合関係の掲示物をはがした行為をもって「盗んだ」と言い立て,見解の相違が背景にあるにせよ,上司が朝の点呼(朝礼)の際にした発言(その内容自体は当時の国鉄等を取り巻く客観的情勢からして不適切なものとまではいい切れない がした行為をもって「盗んだ」と言い立て,見解の相違が背景にあるにせよ,上司が朝の点呼(朝礼)の際にした発言(その内容自体は当時の国鉄等を取り巻く客観的情勢からして不適切なものとまではいい切れない。)に対して激しく抗議するなどしているのであって,控訴人の職場規 - 39 -律軽視の態度は相当に根深いものといわざるを得ず,非違行為を反省して態度を改めることや上司の指導に素直に従うことは容易に期待し難い状況にあったといわざるを得ない。他方,臨時行政調査会の答申や閣議決定など国鉄外部からも,職員の非違行為に対しては,厳正な処分が求められている状況にあった。このような状況の中で,繰り返し行われた非違行為やそれに対する控訴人の対応を総合的にみれば,控訴人の過去の処分歴や,当該非違行為によって列車の運行に支障が生じたことは認められないことなどを考慮してもなお,控訴人を停職3月としたことが,処分事由との対比において甚だしく均衡を失し,社会通念に照らして合理性を欠くなど,処分権者の裁量の範囲を逸脱したものであるとまでいうことはできない。 この点に関し,控訴人は,前例のない重い処分である旨主張するけれども,他の処分例などを具体的に立証するものではないから,採用の限りではない。また,控訴人は,本件各停職処分が見せしめとして行われた旨主張するけれども,個々の処分事由の存在等は前記認定のとおりであり,既に説示した当時の国鉄及びその職場を取り巻く状況等からすれば,厳しく対処することとされてもやむを得ないものというべきであって,他にこれを上回る非違行為をしながら処分を免れた者がいるなどの事情が認められるわけでもないから,単なる見せしめの意図で不当な処分が行われたとまで認めることはできない。 なお,控訴人は,遅刻(前記b)や職場離脱(前記e) ながら処分を免れた者がいるなどの事情が認められるわけでもないから,単なる見せしめの意図で不当な処分が行われたとまで認めることはできない。 なお,控訴人は,遅刻(前記b)や職場離脱(前記e)については賃金カットとの二重処分であり不当である旨述べ,また,本件各停職処分の対象となった行為をP13採用の際に不利益に取り扱うことは二重処分にほかならない旨主張するなどしているけれど - 40 -も,賃金の減額は勤務を欠いたことに対応する措置であって制裁を目的とするものではなく,これを受けたからといって,遅刻や職場離脱等の非違行為性が解消されるわけでもないから,これを処分事由として懲戒処分を行うことが許されないわけではないし,P13各社の採用候補者名簿への記載の可否を決定する際に懲戒処分歴を考慮することは,当該職員がP13各社の業務にふさわしい者といえるかを徴表する要素として取り上げるものであって,対象となった行為に対して重ねて制裁を加えようとするものではないから,それが許されないわけではない。また,控訴人は,国鉄が本件運用基準をP2や職員に明らかにしなかったことを問題にするけれども,本件解雇が整理解雇に該当しないことは既に説示したとおりであるから,整理解雇の4要件との関係をいう論旨は前提を欠くものというべきであるし,国鉄が本件運用基準を明らかにしなかったことから本件運用基準に正当性や合理性がないことを自認していたと推定したり,不当労働行為意思が存在したことを推認することもできない。 次に,本件停職処分2は,前記2(2)ウ(ア)hないしo の事実を処分事由としてされたものである(証拠(甲250)によれば,上記のほか,昭和61年11月28日の体操拒否,同年9月4日及び同年10月31日の管理者に対する暴言も処分事由として考慮 ないしo の事実を処分事由としてされたものである(証拠(甲250)によれば,上記のほか,昭和61年11月28日の体操拒否,同年9月4日及び同年10月31日の管理者に対する暴言も処分事由として考慮されたことが認められるが,処分事由たり得るほどの事実を認めるに足る証拠はない。)。これらの処分事由も,個別に分断して見れば,一見比較的軽微なものと見られなくはないけれども,控訴人は,昭和61年5月28日付けで停職3月という重い懲戒処分(本件停職処分1)を受けたにもかかわらず,その停職処分が解けた初日から,異動のため机がなくなったことについて上司に激しい抗議をし,そ - 41 -の間に勤務時間内に行われた体操を行わないままに時間を経過するという行為に及んでいるものであり,その後も,上司の言動を不当労働行為であると決め付け,これに対する抗議と称して,意図的に体操を拒否し,激しい抗議を繰り返すなどしたものであり(ただし,上記m,nについては前提となる事実関係が真実であるならば,控訴人の対応を正当化することまではできないにしても,非難の程度は低下するものとはいえる。),合理的な理由のない職場離脱も繰り返しているものである(これらの行為についても,P2の上部機関の闘争方針に従ったものとは認められない。)。これらの事実は,それ自体が非違行為性を有するものであるばかりでなく,本件停職処分1において処分事由とされたのと同種の行為を停職処分が解けた初日から反復するものであるから,重い懲戒処分を課されたことを真摯に受け止め,改善をする意識が皆無であることを示すものと評価されてもやむを得ないものであり,処分権者が厳しい処分をもって臨むほかないと判断することも当然のことというべきである。したがって,前記のとおりの国鉄及びその職場を取り巻く状況等や,個 すものと評価されてもやむを得ないものであり,処分権者が厳しい処分をもって臨むほかないと判断することも当然のことというべきである。したがって,前記のとおりの国鉄及びその職場を取り巻く状況等や,個々の処分事由の内容,それが停職3月の処分が解けた直後から反復して行われたことなどを総合的に考慮すれば,処分事由として考慮することが相当でないものが一部あること(上記昭和61年11月28日の体操拒否,同年9月4日及び同年10月31日の管理者に対する暴言)を差し引くなどしても,控訴人を停職5月としたことが,社会通念に照らして合理性を欠くなど,処分権者の裁量の範囲を逸脱した違法なものであるとまではいえない。 (ウ) 以上のとおり,本件停職処分1及び本件停職処分2は,いずれも処分権者の裁量の範囲を超えてされたものとは認められないから,その効力を否定することができないものというべきであり,本 - 42 -件各停職処分の無効確認を求める控訴人の請求は理由がない。 そして,本件各停職処分が有効であることを前提として,本件運用基準に該当するものとして,控訴人をP1の採用候補者名簿に記載しなかった国鉄の措置には違法な点は存在せず(なお,控訴人は,本件停職処分2による停職期間中に,昭和62年4月1日のP1の発足及び事業団への移行を迎えているから,停職後の事情を考慮する本件運用基準のただし書の適用の余地はなかったものである。そもそも,控訴人も,同ただし書が適用されるべきであったと主張するものではないと解される。),不法行為②はその成立が認められないものといわなければならない。 エ不法行為②の時効期間の経過(ア) このように,不法行為②はそもそも成立が認められないものであるが,以下に述べるとおり,これに基づく損害賠償請求権は時効により消滅した わなければならない。 エ不法行為②の時効期間の経過(ア) このように,不法行為②はそもそも成立が認められないものであるが,以下に述べるとおり,これに基づく損害賠償請求権は時効により消滅したともいえるものである。 (イ) まず,時効期間の経過についてみると,民法724条にいう「損害及び加害者を知った時」とは,被害者において,加害者に対する賠償請求が事実上可能な状況の下に,その可能な程度においてこれらを知った時を意味するものと解するのが相当である(最高裁昭和45年(オ)第628号同48年11月16日第二小法廷判決・民集27巻10号1374頁参照)。そして,同条にいう被害者が損害を知った時とは,被害者が損害の発生を現実に認識した時をいうと解すべきである(最高裁平成8年(オ)第2607号同14年1月29日第三小法廷判決・民集56巻1号218頁参照)。 証拠(甲332,控訴人本人(当審))及び弁論の全趣旨によれば,控訴人は,昭和62年2月14日頃,同日付けの新聞記事によって,国鉄秋田鉄道管理局管内ではP1に採用を希望しながら不採 - 43 -用となった者がただ1人であり,それが停職処分を2回受けた者であることを知り,自分のことではないかと思ったこと,控訴人は,そのことに非常にショックを受けるとともに,本件各停職処分をした国鉄に対する怒りの気持ちを持ったことが認められる。こうしたことからすれば,控訴人は,同日頃以降遅くとも同年4月1日までにP1に採用される旨の通知がなかったことによって,控訴人が本件各停職処分を受けたことを理由にP1の採用候補者名簿に記載されず,P1に採用されなかったことを認識し,そのことによって,精神的苦痛による損害はもちろん,正確な金額まではともかくとして,賃金相当額,退職金相当額,年金相当額等の財産的損 採用候補者名簿に記載されず,P1に採用されなかったことを認識し,そのことによって,精神的苦痛による損害はもちろん,正確な金額まではともかくとして,賃金相当額,退職金相当額,年金相当額等の財産的損害についても,その発生を現実に認識したものというべきであり,また,控訴人をP1の採用候補者名簿に記載しなかったことについての責任の主体は国鉄であることを認識したものと認めることができ,更に改革法15条により「承継法人に承継されない資産,債務等」の一切を承継した事業団が加害者の承継人として損害賠償責任を負うことについても認識したものと認めることができる。 (ウ) この点,控訴人は,改革法の規定上,不当労働行為の責任主体が明確でなく,労働委員会や裁判所の判断も分かれていたから,本件最高裁判決までは,国鉄とP13各社のいずれが採用差別の責任を負うのかが不明であり,また,事業団への配属自体が無効であるなどと本件とは両立困難な主張をしていたのであるから,事業団や被控訴人に対して責任追及をするのは困難であったとして,控訴人が損害及び加害者を認識し,被控訴人に対して損害賠償を求めることが可能となったのは,本件最高裁判決時(平成15年12月22日)であるなどと主張する。 確かに,P2においては,P2組合員のP13各社への不採用問 - 44 -題に対する対応策として,労働委員会に対する救済申立てによることを選択し,それに従って,労働委員会における手続や,それに引き続く裁判所における手続がとられていたものであり,労働委員会においては多くの救済申立ての対象者について救済命令が発せられていたこと,これが維持されればその救済申立ての対象者はP13各社に採用される可能性があったこと,労働委員会が設けられた趣旨やその権限等に鑑みれば,その救済申立ての対象者 について救済命令が発せられていたこと,これが維持されればその救済申立ての対象者はP13各社に採用される可能性があったこと,労働委員会が設けられた趣旨やその権限等に鑑みれば,その救済申立ての対象者となっていた者については,労働委員会やそれに引き続く裁判所における手続の係属中は,国鉄を承継した事業団に対する損害賠償請求が事実上可能な状況の下に,その可能な程度に損害及び加害者を知ったものとはいえないなどとして,本件最高裁判決時まで消滅時効の進行が制限されると解する余地もある。しかしながら,控訴人は,P2が労働委員会に対して申し立てた救済申立ての対象者となっておらず,個人申立ても含めて何らの手続(訴訟も含む。)もとっていなかったのであって,本件と両立困難な主張をしていたとはいえないものであり,労働委員会に対する救済申立ての対象者となっていた控訴人を除く一審原告等とは前提が大きく異なるから,同様に取り扱うことはできないといわざるを得ない。控訴人は,他のP2組合員を救済申立ての対象者とする救済命令が発令されれば,団体交渉によって,救済申立ての対象者とされていなかった控訴人についても救済が得られるものと期待していたことが認められる(甲332,控訴人本人(原審))けれども,そうした形で救済が得られるのは飽くまでも事実上の可能性にすぎないのであり,そうした期待をもって,法的効力を有する者の場合と同等に取り扱うことはできない。 また,控訴人は,その陳述書(甲332)及び本人尋問(原審・当審)において,控訴人はP2P6などに対しP2本部の決定に沿っ - 45 -て労働委員会への救済申立てをするよう何度も申入れをしたものの,結局取り上げてもらえず,個人申立てをすることについて,出身分会であるP2P6P7分会に相談した際にも,その組合員から「組 -て労働委員会への救済申立てをするよう何度も申入れをしたものの,結局取り上げてもらえず,個人申立てをすることについて,出身分会であるP2P6P7分会に相談した際にも,その組合員から「組織として取り組むのが当然だ,個人でというのはおかしい。」,「1人で申立てするということだけはやめてくれ,これは団結の問題なのだ。」,「もし最悪,地本が動かなくても俺たちが何とかする。」,「闘って必ず職場に取り戻すから。」などと言われて結局断念した旨供述し,このように,控訴人がP2の関係者の支援を得られず,あるいは組合員らの上記のような発言を受けて,労働委員会に対する救済申立てを断念したという経緯は,P2内部での混乱や意見対立等をうかがわせるものではあるけれども(なお,昭和62年7月22日付けP2P23支部執行委員長名義の「回答」文書においては,本件各停職処分があったことにも言及しつつ,控訴人の「「不採用」問題に関する支部,地本全体としての闘いについては,全組合員の支援体制が必要不可欠である関係からすると無理がある。」などとされている(甲332(資料5の⑱))。),そうした中で,控訴人が,P2の支援等にこだわらないことも含めて他の対応策をとることが困難であったとまでは認められないから,上記の経緯をもって,権利行使の障害事由と認めることはできない。そして,控訴人が上記のように労働委員会に対する救済申立ての可能性を探っていた期間は,実際に救済申立ての対象者となった者と同様の状況にあったものとみなして,損害及び加害者を知ったとはいえないと認めるとしても,不当労働行為から1年を経過した時点では労働委員会に対する救済申立てが不可能となり(労働組合法27条2項),その他にP1等に対して解雇撤回や復職を求めるなどの権利行使を具体的に行っていたわけでも ,不当労働行為から1年を経過した時点では労働委員会に対する救済申立てが不可能となり(労働組合法27条2項),その他にP1等に対して解雇撤回や復職を求めるなどの権利行使を具体的に行っていたわけでもないから,控訴人がP1の採用候補 - 46 -者名簿に記載されなかったことによって受けた権利侵害に対する救済(権利行使)の手段は,不法行為②に基づく損害賠償請求にほぼ絞られたといえ,控訴人は,前記のとおり,昭和62年4月1日頃までに不法行為②による損害及び加害者を正しく認識していたと認められる(なお,控訴人は,本件最高裁判決までは,P1が責任主体であると認識していた旨主張するようでもあるけれども,当審における本人尋問の結果や結局P1に対して何らの権利行使をしていないことに照らして採用することはできない。)のであるから,控訴人に最も有利になるように考えてみても,控訴人は,昭和63年4月1日までには,損害の発生を現実に認識し,国鉄を承継した事業団に対する損害賠償請求が事実上可能な状況の下に,その可能な程度に損害及び加害者を知ったものといわなければならない。 (エ) 以上によれば,遅くとも昭和63年4月1日には,不法行為②に基づく損害賠償請求権の消滅時効の進行が開始し,平成3年4月までには,消滅時効期間が経過したものといわなければならない。 (3) 不法行為①及び③の時効期間の経過不法行為①(国鉄による不当処分等)については,その行為の完了時は遅くとも昭和62年3月31日であり,不法行為③(事業団による就職妨害等)については,その行為の完了時は遅くとも平成2年4月1日であるから,本件訴訟提起時に既に3年以上が経過している。被控訴人は,これらの不法行為について消滅時効を援用しているので,以下,不法行為①及び③についても時効期間が経過 時は遅くとも平成2年4月1日であるから,本件訴訟提起時に既に3年以上が経過している。被控訴人は,これらの不法行為について消滅時効を援用しているので,以下,不法行為①及び③についても時効期間が経過したといえるか検討する。なお,控訴人は,不法行為①ないし⑤は,国鉄労働運動の壊滅を目的に強行された国鉄・分割民営化の中で生起した一体の不当労働行為であって,計画的・一体的になされた不法行為である旨主張し,消滅時効も一括し - 47 -て進行する旨主張するものと解されるけれども,これらの不法行為は,加害行為の時期や態様が異なる上,加害者も異なっているのであって,これらが統一された方針に従うなどして計画的・一体的に行われたものと認めるに足る証拠もないから,当該主張を採用することはできない。」(11) 原判決49頁6行目の「原告らは,」から同頁16行目の「とおりである。」まで及び同頁20行目冒頭から同57頁11行目末尾までを削る。 (12) 原判決57頁14行目の「原告等が」を「一審原告等が」と改める。 (13) 原判決57頁21行目の「不法行為①」から同頁22行目の「ともいえない。」までを「不法行為①ないし③に基づく損害賠償請求権の消滅時効は,不法行為①については遅くとも昭和62年3月31日から,不法行為②については遅くとも昭和63年4月1日から,不法行為③については遅くとも平成2年4月1日から,それぞれ進行し,時効が中断したともいえない。」と改める。 (14) 原判決57頁26行目冒頭から同63頁5行目末尾までを次のとおり改める。 「 これに対し,控訴人は,① 国鉄当局が改革法23条を作成し,P13各社に対する採用差別に係る責任追及を困難にした,② 控訴人が採用差別に係る責任追及先を判断することは困難であった,③ 国営企業労 これに対し,控訴人は,① 国鉄当局が改革法23条を作成し,P13各社に対する採用差別に係る責任追及を困難にした,② 控訴人が採用差別に係る責任追及先を判断することは困難であった,③ 国営企業労働委員会では採用差別に係る国鉄の責任が否定される一方,労働委員会ではP13各社の責任が肯定されたため,控訴人の損害賠償請求権の行使は事実上制約されてきた,④ 控訴人は,本件訴訟提起に至るまで一貫して不当労働行為救済を求めて闘争し続けており,権利の上に眠る者ではない,⑤ 控訴人らの受けた被害は極めて大きい,⑥ いわゆる「4党合意」の成立過程において鉄建公団は和解金を支払うこととされていた,⑦ 平成22年6月28日に控訴人を除く一審原告らや関連事件の多数の原告と被控訴人との間で和解が成立 - 48 -した際,控訴人は損害賠償請求権について承認をしている,⑧ 国策による国営企業である国鉄がした採用差別に係る救済は,国鉄や被控訴人の責務であり,単に時間が経過したとの一事をもって被控訴人がその責任を免れるとするのは著しく正義に反する,⑨ 国鉄や事業団がした不当労働行為に係る証拠も散逸していないなどとして,被控訴人による消滅時効の援用は権利の濫用に当たり許されない旨主張する。 そこで,以下,被控訴人による消滅時効の援用が権利の濫用に当たるかについて検討する。 イまず,上記①ないし③は,要するに,控訴人が事業団や被控訴人に対して,損害賠償請求権を行使することが困難であった旨主張するものである。しかしながら,既に説示したとおり,不法行為①及び不法行為③については,損害の発生やその加害責任主体は明確であり,この認識が困難であったとはいえない。不法行為②についても,控訴人に関する限りは,損害の発生もその加害責任主体も不法行為の直後に認識するこ 為③については,損害の発生やその加害責任主体は明確であり,この認識が困難であったとはいえない。不法行為②についても,控訴人に関する限りは,損害の発生もその加害責任主体も不法行為の直後に認識することができていたと認められるのであって,他の一審原告等のように労働委員会に対する救済申立ての対象者となっていたわけではなく,この手続やそれに続く裁判所における手続の係属が,事実上,事業団や被控訴人に対する権利行使を困難にしていたとも認め難いものである。したがって,これらの事情を,被控訴人による消滅時効の援用を権利の濫用であると評価すべき事情として考慮することはできない。 次に,上記④については,P2及びP2が労働委員会に申し立てた救済申立ての対象者となっていた者に関しては,不法行為に基づく損害賠償請求権を直接行使していなかった場合でも,それに準ずる方法によって権利を行使していたと評価する余地があるとしても,控訴人は,労働委員会に対する救済申立ての対象者になっていなかった者で - 49 -あり,何らかの方法でP2ないしP2組合員を支援していたことがあったとしても,それをもって自らの権利を行使していたと評価することはできない。なお,既に説示したとおり,控訴人は,自ら希望したにもかかわらず,P2の関係者の支援が得られず,あるいは組合員らの発言を受けて,労働委員会への救済申立てを断念したという事情がうかがわれ,また,控訴人は,平成2年4月の本件解雇後も,P2P6などに対し,P2本部の方針どおり,「解雇撤回・P13復帰を求めるP2P23闘争団」を組織することなどを求めたのに,これに応じてもらえなかったこともうかがわれる(甲332,973,控訴人本人(原審・当審))ものの,これらのことは控訴人とP2の間での問題であるから,このことをもって 組織することなどを求めたのに,これに応じてもらえなかったこともうかがわれる(甲332,973,控訴人本人(原審・当審))ものの,これらのことは控訴人とP2の間での問題であるから,このことをもって,被控訴人に何らかの責めを負わせることはできないし,このような経緯を考慮しても,控訴人が,本件訴訟に至るまで,訴えの提起はもちろん,労働委員会に対する救済申立てその他の権利行使をしなかったことが,やむを得ないということは困難である。したがって,この点も,被控訴人による消滅時効の援用を権利の濫用であると評価すべき事情として考慮することはできない。 そして,上記⑥及び⑦は,鉄建公団及び被控訴人が,いわゆる4党合意及び平成22年6月28日の和解に関連して,損害賠償請求権の存在を認めたことを前提とする主張である。しかしながら,まず,上記⑥については,証拠(甲24,84)及び弁論の全趣旨によれば,平成12年5月30日調印の「P13不採用問題の打開について」(いわゆる4党合意。甲84)の成立過程において,P2がP13不採用問題についてP13各社に法的責任がないことを認め,P13各社発足時における国鉄改革関連の訴訟を取り下げることなどを前提として,別途,P2と鉄建公団との間の裁判上の金銭和解も考えるとする「P2とP13各社の話合い開始について」と題する書面(甲24)が作 - 50 -成されたことが認められるけれども,同文書は作成名義人の記載もなく,明確な合意文書として作成されたものではない上,鉄建公団が行うとされる金銭和解も,上記の前提条件が整った場合に検討すべきものとして記載されているものにすぎないのであり,最終的に調印された4党合意においては,「与党とP26党の間で,和解金の位置づけ,額,支払手法等について検討を行う。」とされ,和解金の 合に検討すべきものとして記載されているものにすぎないのであり,最終的に調印された4党合意においては,「与党とP26党の間で,和解金の位置づけ,額,支払手法等について検討を行う。」とされ,和解金の支払主体すら明示されておらず,和解金支払に関する内容も何ら確定していないものであるから,これによって,鉄建公団が,国鉄が行った何らかの不当労働行為等について法的な損害賠償義務があることを認めたとみることは困難である。また,上記⑦についても,証拠(乙180)及び弁論の全趣旨によれば,平成22年6月28日の和解は,同年4月9日,P27党,P26党,P28党及びP24党の4党からの提案を受けて,政府が,本件訴訟を含む関連訴訟の原告団が「裁判上の和解を行い,すべての訴訟を取り下げること」,「不当労働行為や雇用の存在を二度と争わないこと。」とする一方で,「政府はP13への雇用について努力する。」などとの条件を付した上で受入れを決め,被控訴人に和解を指示したものであることが認められ,和解成立に至るまでの間に,被控訴人が,国鉄が行った何らかの不当労働行為等について損害賠償義務があることを認めたことはもちろん,これを認めたと見られるような対応をとったことすら認められず,かえって,証拠(乙181)によれば,被控訴人は,同年6月28日,最高裁判所第三小法廷に対し,「この和解は,P27党,P26党,P28党及びP24党からの「国鉄改革1047名問題の政治的解決に向けて(申し入れ)」を踏まえた政府から,一審被告(判決注・被控訴人)に対し,高度の政治的判断に基づく指示がなされた結果であります。もとより,一審被告は,既に貴裁判所に提出した上告理由書及び上告受理申立書にお - 51 -ける従前の主張を撤回する意思のないことはいうまでもありません。」などと記載 なされた結果であります。もとより,一審被告は,既に貴裁判所に提出した上告理由書及び上告受理申立書にお - 51 -ける従前の主張を撤回する意思のないことはいうまでもありません。」などと記載した上申書を提出し,上記のような損害賠償義務があることを認めたものでないことを明確にする対応をとっているものである。 したがって,鉄建公団及び被控訴人が,4党合意及び平成22年6月28日の和解に関連して,損害賠償請求権の存在を認めたとはいえないから,これを認めたことを前提とする上記⑥及び⑦も,被控訴人による消滅時効の援用を権利の濫用であると評価すべき事情として考慮することはできない。 さらに,上記⑨については,不法行為①ないし③は,遅くとも平成2年4月までには完了しているところ,証拠(乙94)によれば,事業団における再就職促進業務に係る雇用対策関係資料は,人事関係,経理関係の永久保存の書類を除き,既に保存期間を経過して廃棄されていることが認められ,本件解雇が平成2年4月に行われたことも併せ考えると,控訴人の請求に関連する客観的資料の多くが廃棄されるなどして散逸している可能性が高いものと推認され,特に控訴人については,平成17年12月に本件訴訟を提起するまでの間は,司法手続はもちろん,それに準ずる手続もとっていなかったのであるから,その間に客観的資料が処分されてしまったとしてもやむを得ないことといわざるを得ない。よって,証拠資料が散逸していないといい切ることもできないから,これが散逸していないことを前提とする上記⑨も,被控訴人による消滅時効の援用を権利の濫用であると評価すべき事情として考慮することはできない。 ウ以上によれば,控訴人が本件訴訟に至るまで損害賠償請求権あるいはそれに準ずる権利を行使しなかったことをやむを得ないとする事 用を権利の濫用であると評価すべき事情として考慮することはできない。 ウ以上によれば,控訴人が本件訴訟に至るまで損害賠償請求権あるいはそれに準ずる権利を行使しなかったことをやむを得ないとする事情は認められず,他方,被控訴人が,損害賠償請求権の存在を承認するような行為をしたことや,被控訴人において,控訴人の権利行使を妨 - 52 -げたような事情も認められない(控訴人は,P2P6の執行部等が控訴人の権利行使を妨害したなどと主張し,それに沿う供述もしているけれども,既に説示したとおり,そのようなことがあったとしても,P2P6の執行部等の対応についての責任を被控訴人が問われるべきものではない。)。それに加えて,証拠の散逸も否定できないことを考慮すると,控訴人らが受けた被害が極めて大きいと控訴人が認識していること(上記⑤)や,国鉄や被控訴人の社会的地位やそれに伴う社会的責任(上記⑧)を考慮しても,被控訴人が消滅時効を援用することが権利の濫用に当たるということはできないものといわなければならない。 (6) 以上のとおり,不法行為④及び⑤については不法行為が成立する余地はなく,不法行為②については不法行為の成立は認められず,かつ消滅時効期間も経過しており,不法行為①及び③については不法行為の成否にかかわらず消滅時効期間が経過しており,不法行為①ないし③につき,被控訴人が消滅時効を援用することが権利の濫用に当たるとは認められないから,控訴人の不法行為に基づく損害賠償請求は,いずれも理由がない。 控訴人は,不法行為に基づく損害賠償請求とともに損害回復措置として,謝罪文の交付及び掲示やP1への採用の要請も求めている。しかしながら,そもそも本件のような不法行為に基づいてこのような請求をすることができるかについては多大な疑問がある上 ともに損害回復措置として,謝罪文の交付及び掲示やP1への採用の要請も求めている。しかしながら,そもそも本件のような不法行為に基づいてこのような請求をすることができるかについては多大な疑問がある上,その点は措くとしても,前記のとおり,不法行為の成立自体が認められないか,時効により消滅しているのであるから,いずれにしても,理由がないものというべきである。」 2 結論以上のとおり,本件において,控訴人は,事業団が平成2年4月1日付けで - 53 -控訴人を事業団就業規則22条4号によって解雇した本件解雇について,法令違憲,適用違憲,不当労働行為,解雇権濫用等により無効である旨主張するけれども,法令違憲,適用違憲の主張は認められず,本件解雇自体が不当労働行為や解雇権濫用等に当たるともいえないから,本件解雇は有効であり,本件解雇が無効であることを前提とする控訴人の請求は理由がない(なお,将来請求部分については,訴えの利益を欠く。)といわなければならない。また,国鉄が控訴人をP1の採用候補者名簿に記載しなかったことについては,昭和58年4月1日以降の行為に対する懲戒処分として停職処分を2回以上受けた者などを採用候補者名簿に記載しないこととする本件運用基準に,本件各停職処分を受けた控訴人が該当することを理由とするものであるところ,本件運用基準の策定自体が不当労働行為に該当するとまではいえず,また,控訴人が受けた本件各停職処分は,いずれも処分権者の裁量の範囲を超えて行われたものとは認められず,その効力は否定されないから,控訴人をP1の採用候補者名簿に記載しなかったことは違法とはいえないし,これを不法行為とする損害賠償請求権の消滅時効も完成しており,消滅時効の援用が権利の濫用に当たるとは認められないものであり,控訴人が主張するその他の不 名簿に記載しなかったことは違法とはいえないし,これを不法行為とする損害賠償請求権の消滅時効も完成しており,消滅時効の援用が権利の濫用に当たるとは認められないものであり,控訴人が主張するその他の不法行為も,その成立自体が認められないか,消滅時効が完成しており,消滅時効の援用が権利の濫用に当たるとは認められないから,本件各停職処分の無効確認請求や,不法行為に基づく損害賠償請求等も理由がないといわなければならない。 したがって,その余の点について判断するまでもなく,控訴人の被控訴人に対する請求は,主位的請求のうち判決確定の日以降の賃金の支払を求める部分は訴えの利益を欠くから訴えを却下すべきであり,その余の主位的請求,予備的請求及び当審における追加請求はいずれも理由がないから棄却すべきである。 よって,これと結論を同じくする原判決は相当であり,本件控訴は理由がないから棄却し,控訴人の当審における追加請求もこれを棄却することとして,主文のとおり判決する。 - 54 - 東京高等裁判所第14民事部 裁判長裁判官設樂隆一 裁判官門田友昌 裁判官島村典男
▼ クリックして全文を表示