平成13(ワ)2658 損害賠償請求

裁判年月日・裁判所
平成14年9月4日 神戸地方裁判所
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判決文本文7,700 文字)

判決平成14年9月4日神戸地方裁判所平成13年(ワ)第2658号損害賠償請求事件 主文 1 被告は原告に対し,201万0241円及びこれに対する平成13年7月28日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 2 訴訟費用は被告の負担とする。 3 この判決は仮に執行することができる。 事実及び理由 第1 請求主文同旨第2 事案の概要本件は,別紙動産目録記載の機械(以下「本件機械」という)を詐欺によって奪われた原告が,これを詐欺者から購入した被告に対し,原告が占有を喪失したことによって被った損害について,主位的には不法行為に基づく損害賠償として,予備的には,民法189条2項の悪意の占有者に対する果実返還請求として,支払いを求める事案である。 1 争いのない事実及び以下に掲げる証拠によって容易に認定できる事実(1) 当事者原告は建設機械等の販売,修理及びリース等を業とする株式会社である(弁論の全趣旨)。 被告は,建設機械の販売,輸出等を業とする株式会社である。 (2) 本件機械についてA株式会社は,B株式会社から,平成11年12月20日付リース契約によって,本件機械を借り受けた(甲1の1・2,5)。 原告は,A株式会社から,平成12年3月30日付リース契約によって,本件機械を借り受けた(甲2)。 その後原告は,本件機械をリース物件として第三者に賃貸するなどして収益を上げていた(弁論の全趣旨)。 (3) 本件機械に対する詐欺,被告の本件機械の 械を借り受けた(甲2)。 その後原告は,本件機械をリース物件として第三者に賃貸するなどして収益を上げていた(弁論の全趣旨)。 (3) 本件機械に対する詐欺,被告の本件機械の購入(甲5,8,9,乙1ないし4)原告は,Cに,平成12年5月9日ころ,本件機械を詐欺によってだまし取られた。 Cは,本件機械を被告に売却しようと考え,被告に本件機械の写真を送付するなどして,被告と売買交渉をした。その際,Cは,本件機械には残債務があるかもしれず,そうであれば被告が購入しないであろうと考え,本件機械と同社製ではあるが,年式が少し古く,残債務がないことを知っている別の機械の製造番号(86321)を被告に告げた。 Cと被告との間で,平成12年5月25日,本件機械を441万円(消費税5パーセントを含む)で売買する旨の売買契約(以下「本件売買」という)が成立した。 被告はD有限会社に本件機械の引取運搬を依頼し,D有限会社はE有限会社に同業務を下請に出した。 D有限会社は,E有限会社に対して,送状(搬送する機械,受取りの日時,引渡しの日時などが記載された書面)及び受領書(送状と同様の内容に加えて,引き渡した際にもらう受領印の欄,荷を受ける場所・者,その連絡先が記載された書面)を送付した(以下,送状と受領書を合わせて「送状等」という)。送状等には,搬送する機械として,「機種PC200-5」,「号機86321」と記載されていた(なお,PCとは,F製作所の製造であることを示す記号であり,号機とは製造番号のことである。送状等の号機が誤って記載された理由は,上記のとおり,Cが被告に対して虚偽の製造番号を告げたからであるが,機種が誤って記載された理由は,D有限会社の記載 す記号であり,号機とは製造番号のことである。送状等の号機が誤って記載された理由は,上記のとおり,Cが被告に対して虚偽の製造番号を告げたからであるが,機種が誤って記載された理由は,D有限会社の記載誤りと推認される)。 E有限会社の従業員Gは,平成12年5月25日,本件機械の引渡しを受けるために,広島県三次市のCの元に赴いた。 引渡現場に到着したGは,機種と製造番号が違えば他人の物を運び出すことになるため,本件機械の機種と製造番号を確認したところ,送状等に記載されたもの(機種PC200-5,製造番号86321)と異なり,機種はEX200-5,製造番号は91447であった。また,本件機械の運転席に乗り込み,総走行距離を示すアワーメーターを見ると,まだ480時間余りしか運転されていないことも分かった。Gはそれまでに何度か被告の元に重機を運搬したことがあり,被告が扱う中古の建設機械を知っていたが,これらと比べると本件機械はあまりにも新しいものであった。そこで,GがCを問いつめると,Cから,送状等の記載間違いであると言われた。また,Gが,勤務先であるE有限会社に電話をすると,Cの指示に従うよう言われた。Gは,送状等の記載が間違っているのかを確認するために,携帯電話でD有限会社に電話して,Cに,同社の代表者と直接話をさせた。Cは電話口で「書き間違えとるので運転手さんが困っとる。間違いないよ。書き直しときゃええんじゃの」などと言い,電話を終えてすぐ,「電話しといたのでええよ。これを積んでくれ。伝票を書き直してくれれば済むことじゃけえ」と言った。 Gは,CとD有限会社との間の電話のやり取りから,送状等の機種の記載が誤っていたものと判断されたこと,その場にいた本件機械の所有者らしきHが何も言わなかったこと,本件機械を搬出し ゃけえ」と言った。 Gは,CとD有限会社との間の電話のやり取りから,送状等の機種の記載が誤っていたものと判断されたこと,その場にいた本件機械の所有者らしきHが何も言わなかったこと,本件機械を搬出してもいいのか何度かCに確認しても間違いないと言われたことなどから,本件機械を運び出すことに決めた。Gは,Cに送状等の記載を書き直させ,本件機械をトレーラーに積み込み,被告大阪支店に向けて出発した。しばらくして,Gは,送状等の機種の部分はCによって書き直されているものの,製造番号は書き直されていないことを発見した。Gは,機種が異なる以上,製造番号も異なるのが当然と考え,自ら,送状等の製造番号を本件機械のものに書き直し,被告大阪支店まで搬送した。 翌26日,Gから本件機械の引渡しを受けた被告大阪支店の従業員は,機種,製造番号が違うため,間違いではないかとGにクレームを述べたが,Gから,Cが積み込みに立ち会ったこと,機種の違いはD有限会社に確認したことなどの説明を受けて納得し,本件機械を受領した。この際,同従業員はGに対して,「90000台の相場は600万円だ。86000台の相場は450万円だ。うちは黙っていても150万円儲けれる。せやけどそんなもんじゃないけどな」と述べた。 (4) 原告及びB株式会社と被告の間の紛争原告及びB株式会社は,本件機械が被告の元にあることを突き止めて,被告に本件機械の返還を求めたが,被告から,善意取得を理由に返還を拒絶された。 B株式会社は,平成12年8月7日,被告に対する動産引渡等請求訴訟を大阪地裁に提起した。 B株式会社は,平成12年10月5日,本件機械について占有移転禁止の仮処分の申立てを行い,翌6日,同仮処分命令がなされ,これに基づいて,同月1 産引渡等請求訴訟を大阪地裁に提起した。 B株式会社は,平成12年10月5日,本件機械について占有移転禁止の仮処分の申立てを行い,翌6日,同仮処分命令がなされ,これに基づいて,同月11日,保全執行がなされた。 大阪地裁は,平成13年7月18日,被告の代理人であるGが,Cに本件機械の所有権があると信じたことにつき過失があると認定した上で,被告の善意取得の成立を否定し,本件機械の所有権がB株式会社にあることを理由に,被告に対し,本件機械をB株式会社に引き渡すこと等を命じる内容の判決(以下「前訴判決」という)を言い渡し,同判決は確定した。 前訴判決がGに上記過失があると認定した理由は概ね次のとおりであった。すなわち,Gは,搬送する機械を識別特定する上で機種と製造番号が非常に重要であり,これらが異なる場合,所有者も異なることを認識していたのであるから,送状等の製造番号と本件機械の製造番号が異なることが判明した以上,本件機械がCの所有する機械であることを確認するために,少なくとも製造番号の相違が生じた理由を確認すべき注意義務があった。また,Gが同注意義務を尽くすために,D有限会社に確認をとること,Cに対して説明を求めることは容易であった。 ところが,Gは,送状等の機種の記載がD有限会社のミスであることをD有限会社代表者とCとの会話から認識したのみで,送状等と全く類似性のない製造番号が本件機械に記載されていたにもかかわらず,製造番号については,D有限会社の記載ミスであるかをD有限会社に確認することなく,また,Cに製造番号の相違について何ら説明を求めることもなく,機種が異なっていれば製造番号も異なるのは当然であると軽信し,本件機械を受領したのであるから,Gが,本件機械の占有取得時において,Cに本件機械の所 製造番号の相違について何ら説明を求めることもなく,機種が異なっていれば製造番号も異なるのは当然であると軽信し,本件機械を受領したのであるから,Gが,本件機械の占有取得時において,Cに本件機械の所有権があると信じたことについては過失がある。 B株式会社は,平成13年7月27日,前訴判決に基づいて強制執行を行い,本件機械の占有を回復した。 2 争点(1) 原告の主張ア被告の不法行為被告は,本件機械の占有を適法ならしめる権原がないことを知り又は過失によって知らずに(本件機械を正当に占有する権原を有している者の権利を侵害することを知り又は過失によって知らずに)本件機械の占有を開始したのであるから,これは不法行為に当たる。 イ原告の損害原告は,被告が平成12年5月25日から平成13年7月27日までの間(以下「被告占有期間」という)本件機械を不法に占有したため,下記の損害を受けた。 (ア) 本件機械の,被告占有期間中における賃料相当損害金189万4741円原告は,被告占有期間中も,A株式会社に対して本件機械のリース料を支払った。被告占有期間中に相当するリース料は以下のとおりである。 a 平成12年5月25日から同月末日までの日割計算分賃料相当額10万5000円(平成12年5月分の月額賃料)×7/31=2万3709円b 平成12年6月1日から同年9月末日まで賃料相当額10万5000円(平成12年6月分から9月分までの月額賃料)×4=42万円c 平成12年10月1日から平成13年6月末日まで 年9月末日まで賃料相当額10万5000円(平成12年6月分から9月分までの月額賃料)×4=42万円c 平成12年10月1日から平成13年6月末日まで賃料相当額14万7000円(平成12年10月分から平成13年6月分までの月額賃料)×9=132万3000円d 平成13年7月1日から同月27日までの日割計算分賃料相当額14万7000円(平成13年7月分の月額賃料)×27/31=12万8032円(イ) 運搬費用実費11万5500円平成13年7月27日,I株式会社関西支社から原告庄原営業所までの運搬費用11万5500円ウよって,原告は,被告に対し,主位的には不法行為に基づく損害賠償請求として,予備的には民法189条2項の悪意の占有者に対する果実返還請求として,201万0241円及びこれに対する平成13年7月28日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払いを求める。 (2) 被告の認否原告の主張を否認する。 ア被告の過失について原告は,被告が本件機械を買い受けた時点で不法行為の過失が存在すると張しているが,当時,被告は,原告の存在すら知らないのであって,原告に対する何らかの注意義務違反自体を観念し得ないのであって,この時点において被告に過失が存在しないことは明らかである。 イ原告の損害について原告は,A株式会社に支払ったリース料を賃料相当損害金として主張するが,かかる主張は,原告が全期間において本件機械をレンタルする取引先があることを前提としたものであ 損害について原告は,A株式会社に支払ったリース料を賃料相当損害金として主張するが,かかる主張は,原告が全期間において本件機械をレンタルする取引先があることを前提としたものであって,明らかに過大な請求である。 ウ原告の予備的請求は争う。 第3 争点に対する判断 1 不法行為の成否前記争いのない事実及び証拠によって容易に認定できる事実を総合すると,Gは,送状等に記載された機種・製造番号と本件機械の機種・製造番号が異なる場合,他人の物を運搬することになるため,本件機械の引渡現場において,送状等に記載された機種・製造番号と,本件機械の機種・製造番号を照合したところ,異なることを発見したこと,本件機械は,稼働時間が480時間程度のまだ新しい機械であり,中古建設機械業者である被告の扱う商品としてはあまりにも新しいものであると認識したことが認められる。また,被告大阪支店の従業員も,本件売買の目的物と本件機械の機種・製造番号が相違すること,本件機械の製造番号から推定される相場は,本件売買の代金より150万円も高いことを認識したことが認められる。そして,これらの事実に鑑みれば,被告としては,Cが本件機械の所有権を有することを疑い,真の権利者が他に存在する可能性があることを認識すべきであったと認められる。にもかかわらず,本件機械の引渡しを受け,その占有を取得すれば,真の権利者の使用収益を妨げることになるのは必定であるから,被告としては,本件機械の占有の取得が,真の権利者の使用収益を妨げる可能性があることもまた予見すべきであったと考えられる。 そうすると,被告は,本件機械にはCと異なる真の権利者が存在する可能性があり,本件機械の占有を開始すれば,真の権利者の使用収益権を侵害することになるこ た予見すべきであったと考えられる。 そうすると,被告は,本件機械にはCと異なる真の権利者が存在する可能性があり,本件機械の占有を開始すれば,真の権利者の使用収益権を侵害することになることを認識,予見すべきであるにもかかわらず,これをしないまま,漫然と本件機械の占有を開始し,真の権利者の一人である原告の使用収益を妨げたのであるから,かかる被告の行為は過失の不法行為に当たるというべきである。以上の次第で,被告の本件機械の占有の取得は,原告に対する不法行為と認定することができる。 これに対して,被告は,本件機械の占有を開始した段階では,被告は原告の存在すら知らなかったのであるから,注意義務を観念し得ないと主張する。たしかに,被告が占有を開始した時点では,所有者以外にも賃借権などの使用収益権の設定を受けた権利者がいるのか,また,所有者やこれらの権利者が誰であるのかを具体的に認識することは困難であるから,被告が,真の権利者の存在する可能性を認識すべきであるといっても,その存在は抽象的なものにとどまるものである。しかしながら,認識すべき権利者の存在が抽象的なものにとどまるということは,過失の成立を妨げる事情には必ずしもならないというべきである。このことは,同様の事例で,過失ではなく故意の場合(真の権利者が誰かは分からないものの,譲渡人に権利がないことは認識しつつ,その物を譲り受ける場合)について,不法行為が問題なく成立することを想起すれば明らかである。 2 原告の損害被告が,Cから,平成12年5月25日に本件機械の引渡しを受けたこと,また,B株式会社が,平成13年7月27日,前訴判決に基づいて強制執行を行い,本件機械の占有を回復したことは争いがない。 そうすると,被告は,本件売買という不法行為に 引渡しを受けたこと,また,B株式会社が,平成13年7月27日,前訴判決に基づいて強制執行を行い,本件機械の占有を回復したことは争いがない。 そうすると,被告は,本件売買という不法行為に基づいて,被告占有期間,本件機械を占有したことによって,原告に対し,以下のとおりの積極,消極の損害を与えたと認めることができる。 (1) 積極損害についてア本件機械のリース料証拠(甲2)及び弁論の全趣旨によれば,原告は,被告占有期間中,本件機械の使用収益(第三者に転貸して利益を得ること)ができなかったにもかかわらず,A株式会社との間のリース契約の定め上,同社に対して本件機械のリース料を支払わなければならなかったことが認められる。これは,被告の不法行為と相当因果関係のある積極損害と認められる。被告占有期間に相当するリース料は,以下のとおり,合計189万4741円となる。 (ア) 平成12年5月25日から同月末日までのリース料賃料相当額10万5000円(平成12年5月分の月額賃料)×7/31=2万3709円(イ) 平成12年6月1日から同年9月末日までのリース料賃料相当額10万5000円(平成12年6月分から9月分までの月額賃料)×4=42万円(ウ) 平成12年10月1日から平成13年6月末日までのリース料賃料相当額14万7000円(平成12年10月分から平成13年6月分までの月額賃料)×9=132万3000円(エ) 平成13年7月1日から同月27日までのリース料賃料相当額14万7000円(平成13年7月分の月額賃料)×27/31=12万8032円 32万3000円(エ) 平成13年7月1日から同月27日までのリース料賃料相当額14万7000円(平成13年7月分の月額賃料)×27/31=12万8032円イ本件機械の運送費用また,証拠(甲6)及び弁論の全趣旨によれば,原告は,前訴判決でB株式会社の請求が認容されたことを受けて,平成13年7月27日,運送費用11万5500円を支払って,I株式会社関西支社から原告の庄原営業所まで本件機械を運搬した事実が認められる。 被告が本件売買という不法行為に及ばなければ,原告が上記運搬費用を出費する必要はなかったと認められるから,これは,被告の不法行為と相当因果関係を有する損害と認められる。 (2) 消極損害(得べかりし利益)についてさらに,被告占有期間中,原告が本件機械を第三者に賃貸すれば得られたであろう逸失利益(売上高から経費を控除した金額)についても,被告の不法行為と相当因果関係を有する損害と認めることができる。しかしながら,上記認定のリース料及び運送費用という積極損害の合計額をもって既に原告の請求額の総額に達する以上,消極損害(逸失利益)については判断するまでもなく,原告の請求を認めることができる。 3 結論以上の次第で,原告の主位的請求は理由があるから認容する。 神戸地方裁判所第4民事部裁判官太田敬司

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