令和6年7月11日宣告令和6年(わ)第122号業務上失火被告事件判決 主文 被告人を禁錮2年に処する。 この裁判が確定した日から4年間その刑の執行を猶予する。 理由 (罪となるべき事実)被告人は、北九州市a区b町c丁目d番e号の木造亜鉛メッキ鋼板葺2階建建物で飲食店「A」を経営し、火気を使用して調理等を行う業務に従事していたものであるが、令和4年8月10日午後8時25分頃、同店1階厨房において、使用済みの食用油を処理するため、食用油が入ったフライパンに油処理剤を入れてガスコンロの火で加熱するに当たり、これを放置すれば食用油の温度が上昇して発火し、周囲の壁等に燃え移って火災が発生するおそれがあったのであるから、その場を離れずに食用油の状態を注視しながらガスコンロの火を調節し、火災の発生を未然に防止すべき業務上の注意義務があるのにこれを怠り、他の作業に気を取られ、食用油が入ったフライパンをガスコンロの火で加熱し続けたまま放置して同所を離れた過失により、同日午後8時40分頃、フライパンに入れた食用油を発火させて燃え上がらせた上、その火を同店の壁等に燃え移らせ、さらに、その火を同建物に隣接する建物合計28棟に順次燃え移らせ、よって、現に人が住居に使用し又は現に人がいる建造物及び他人の所有に係る現に人が住居に使用せず、かつ、現に人がいない建造物である建物合計29棟をそれぞれ全焼又は一部焼損(焼損床面積合計約3324平方メートル)させたものである。 (量刑の理由)本件は、飲食店を経営する被告人が、使用済みの食用油を処理するに当たり、食 用油及び油処理剤が入ったフライパンを加熱し続けたままその場を離れたため、食用油を発火させて同飲食店 刑の理由)本件は、飲食店を経営する被告人が、使用済みの食用油を処理するに当たり、食 用油及び油処理剤が入ったフライパンを加熱し続けたままその場を離れたため、食用油を発火させて同飲食店の壁等に燃え移らせ、同飲食店及び隣接建物28棟を焼損させた業務上失火の事案である。幸いにして死傷者こそ出なかったものの、本件の火災によって、出火元飲食店の周囲に所在する店舗や家屋が軒並み焼損して多数の住民の生命、身体、財産に対する危険を発生させたほか、被害に遭った多数の店舗が廃業又は移転を余儀なくされるなど、甚大な被害が生じた。点けた火を放置してその場を離れるがごとき行為は、業として火気を取り扱う者の基本的な注意義務に違反するものであり、その過失の程度は重い。早期にごみを出して帰宅するため使用済み食用油の処理を急いでいたという本件の経緯にも酌むべき点はない。 なお、本件当時、出火元飲食店の周囲は木造建物が密集するなど火災が広がりやすい状況にあり、これが本件の被害の拡大に影響した可能性は否定し難い。もっとも、そうであれば、被告人には、木造建物の密集地区で飲食店を営む者として、火気の使用に当たり一層の注意が求められていたというべきであるから、出火元飲食店の周囲の状況が被告人の刑事責任を大幅に減じる事情に当たるとはいえない。 以上によれば、被告人の刑事責任は相応に重いといわざるを得ない。 他方で、被告人には、前科前歴がなく、事実を認めて反省の弁を述べていること、内縁の夫と共に出火元飲食店の所在地の復旧対策会議に100万円を寄付したことなど、酌むべき事情もあるので、被告人に対しては主文の刑を科すとともに、その刑の執行を猶予するのが相当である。 (求刑禁錮2年)令和6年7月11日福岡地方裁判所小倉支部第1刑事部 裁判長裁判 主文 あるので、被告人に対しては主文の刑を科すとともに、その刑の執行を猶予するのが相当である。 (求刑禁錮2年)令和6年7月11日福岡地方裁判所小倉支部第1刑事部 裁判長裁判官渡部五郎 裁判官安陪遵哉 裁判官大野志明
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