主文 1 処分行政庁が平成21年6月30日付けで原告に対してした市政情報非公開決定処分を取り消す。 2 訴訟費用は被告の負担とする。 事実及び理由 第1 請求主文のとおり第2 事案の概要本件は,原告が,平成21年6月18日,処分行政庁に対し,三鷹市情報公開条例(昭和62年三鷹市条例第28号。以下「本件条例」という。)に基づき,A(以下「本件建物」という。)の耐震性調査に関する資料(別紙1文書目録記載の市政情報であり,以下「本件各文書」という。本件条例にいう「市政情報」とは,実施機関の職員が職務上作成し,又は取得した文書等であるため(本件条例2条2号),このように定義する。)の公開の請求をしたところ,処分行政庁から,同月30日付けで本件各情報の全部を公開しない旨の市政情報非公開決定(以下「本件決定」という。)を受けたため,本件決定が違法であると主張して,その取消しを求めている事案である。 なお,原告は,本件訴えにおいて,本件決定の取消しを求めるとともに本件各情報についての公開決定の義務付け(以下「本件義務付けの訴え」という。)を併せて求めているが,当裁判所は,審理の状況その他の事情を考慮し,本件決定の取消しの訴えについてのみ終局判決をすることがより迅速な争訟の解決に資すると認め,本件から本件義務付けの訴えの弁論を分離した上,本件決定の取消しの訴えについてのみ終局判決をすることとしたものである(行政事件訴訟法37条の3第6項)。 1 本件条例の定め別紙2のとおり 2 前提事実(争いのない事実,顕著な事実並びに末尾記載の証拠及び弁論の全趣旨により容易に認められる事実)(1) 当事者等ア原告は,介護保険法に基づく居宅介護支援事業等を目的とする株式会社で (争いのない事実,顕著な事実並びに末尾記載の証拠及び弁論の全趣旨により容易に認められる事実)(1) 当事者等ア原告は,介護保険法に基づく居宅介護支援事業等を目的とする株式会社である。 イ B株式会社(平成20年10月1日商号変更までは,その商号はC株式会社であったが,以下,商号変更の前後を問わず,単に「B]という。)は,本件建物の建築主である。 (甲2)ウ財団法人D(以下「D」という。)は,建築の防災,維持管理に関する制度・技術の調査研究,普及活動及び技術の評価等を目的として,耐震診断・耐震改修判定業務等を行う財団法人であり,構造計算書が偽装されて建築された建築物について,特定行政庁の要請に基づいて耐震性判断等の助言を行う違反是正計画支援委員会(以下「是正支援委員会」という。)を設置している。 (乙4の1・2,6の1・2)(2) 本件公開請求から本件訴えに至る経緯ア原告は,平成21年6月18日,処分行政庁に対し,本件条例5条に基づき,請求する市政情報の内容を別紙1文書目録記載の文書(本件各文書)と特定して市政情報の公開の請求(以下「本件公開請求」という。)をした。 イ処分行政庁は,平成21年6月30日,本件公開請求について,公開することができない市政情報を本件各文書と特定し,公開することができない理由を「本件条例8条1項1号,3号,4号ア及びエに該当」として,本件各文書を公開しない旨の市政情報非公開決定(本件決定)をして原告に通知し,原告は,同年7月1日,本件決定を了知した。 (甲4)ウ原告は,平成21年8月27日,三鷹市長に対し,本件決定の取消しを求めて異議申立て(以下「本件異議申立て」という。)をした。 エ三鷹市長は,平成21年10 。 (甲4)ウ原告は,平成21年8月27日,三鷹市長に対し,本件決定の取消しを求めて異議申立て(以下「本件異議申立て」という。)をした。 エ三鷹市長は,平成21年10月14日,三鷹市情報公開審査会に対し,本件異議申立てについて諮問し,平成22年7月23日,同審査会から「処分行政庁が本件各文書を本件条例8条1項3号の規定により非公開とした処分は妥当である」との答申を受けた上,同年9月7日,本件条例8条1項3号に該当し,かつ,同号ただし書に該当しないことを理由として,上記異議申立てを棄却する旨の決定(以下「本件異議申立棄却決定」という。)をして原告に通知し,原告は,同月8日,本件異議申立棄却決定を了知した。 (乙1)オ原告は,平成22年11月10日,本件処分の取消しを求めるとともに,本件各文書の開示決定の義務付け(本件義務付けの訴え)を求めて本件訴訟を提起した。 (顕著な事実)(3) 本件各文書の内容等本件各文書の内容等は,次のとおりである。 ア本件文書1本件文書1は,Bが作成し,その後,耐震性再計算の過程で三鷹市長からの指摘に基づいて必要な修正を行った確定図(耐震性再計算用図面)であり,具体的には次のようなものである。 (ア) 用紙サイズ等A2サイズの原図をA3サイズにコピーしたものであって,A3横向きの片面印刷で89枚のもの(厚さ約1㎝)である。 (イ) 記載事項及び記載内容の概要 本件文書1は,(a) 各住戸部分の配置や間取り,各施設の配置や仕様,出入口・非常口,排水槽・汚水槽,配管の穴の場所の位置等が記載された意匠図(①配置図1枚,②各階平面図11枚,③立面図3枚,④断面図2枚,⑤プール廻り 各住戸部分の配置や間取り,各施設の配置や仕様,出入口・非常口,排水槽・汚水槽,配管の穴の場所の位置等が記載された意匠図(①配置図1枚,②各階平面図11枚,③立面図3枚,④断面図2枚,⑤プール廻り平面詳細図1枚,⑥プール仕様書1枚,⑦プール基礎伏図・据付図1枚,⑧大浴場・露天風呂廻り平面詳細図1枚,⑨屋上舗装・施設平面図2枚,⑩屋上植栽平面図2枚,⑪屋上ゴルフ練習場平面図1枚,⑫植栽平面図・断面図1枚,⑬カラオケルーム横平面図1枚,⑭カラオケルーム横断面図1枚),(b) 杭基礎の仕様,柱・梁といった構造的構成部材の材質・位置・配置等が記載された構造図(①杭伏図1枚,②基礎伏図1枚,③地下1階~屋上階床伏図12枚,④杭基礎断面詳細図4枚,⑤部材断面表13枚,⑥A棟基礎変更図(基礎関係伏図,軸組図,断面表)19枚,⑦軸組図8枚,⑧柱芯線図2枚)からなる。 イ本件文書2本件文書2は,本件建物の建築確認図書を構成する各図面間若しくは各項目間において,又は当該建築確認図書と竣工図との間において,三鷹市の職員において不整合があると思われるとして指摘した箇所を建築主ほか関係者において本件文書1上で確認した内容を取りまとめたものであり,具体的には次のようなものであって,本件文書1の一部となっている。 (ア) 用紙サイズ等A4サイズの用紙を縦向きで片面印刷したものである。 (イ) 様式及び記載項目等本件文書2は,東京都における様式(甲11参照)に倣って作成されており,①建築確認図書自体について各図面間又は各項目間において不整合があると思われる箇所,②建築確認図書と竣工図(施工写真等による確定構造図)との間において不整合があると思われる箇所が記載され ており,これを構造設計者 いて各図面間又は各項目間において不整合があると思われる箇所,②建築確認図書と竣工図(施工写真等による確定構造図)との間において不整合があると思われる箇所が記載され ており,これを構造設計者らに送付して,これらの各不整合があると思われる箇所について本当に不整合が生じているか,いずれかの記載に誤記があるにすぎないのか等の確認を求めて回答を得たものである。 ウ本件文書3本件文書3は,Dによる耐震性再検査方針に対する具体的助言を受けて,株式会社E(以下「E」という。)において6回にわたり繰り返された耐震性再計算の結果を記載した構造計算書であり,具体的には次のようなものである。 (ア) 用紙サイズ等Eが保管する構造計算書原本の2ページ分をA4サイズの用紙(横向き)の片面1枚に縮小割付コピーをしたもの1758枚(うち約1600枚が両面印刷)をファイル7冊に分けてまとめたもの(ファイル7冊で約30㎝以上,最も厚いファイル1冊が約7㎝)である。 (イ) 記載項目本件文書3は,次の書類により構成される。 a 建物概要これは,本件建物の概要を記載した一覧表である。 b 計算方針これは,Dの具体的な助言に基づき,基本とする構造計算方針や部位ごとの構造検討方針を記載したものである。 c 荷重表これは,本件建物の各室や各施設で使われる部材がどれだけの重量であるかなどを記載した一覧表である。 d 電算プログラム結果出力これは,①計算結果をまとめた一覧表,②グラフ(例えば,縦軸に本件建物に掛かる力の大きさを,横軸に本件建物が変形する度合いを とり,各階につき計算された数 算プログラム結果出力これは,①計算結果をまとめた一覧表,②グラフ(例えば,縦軸に本件建物に掛かる力の大きさを,横軸に本件建物が変形する度合いを とり,各階につき計算された数値を線で表したグラフや横軸に本件建物の階数を,横軸に保有水平耐力の数値をとり,本件建物の各階について必要とされる保有水平耐力の数値を表す線と実際に計算された保有水平耐力の数値を表す線とを併記したグラフ等),③電算プログラム結果出力である数値等(例えば,計算における数値のみが列記されている部分と,本件建物の平面図(伏図)及び立面図(軸組図)に各数値が落とし込んで記載され,本件建物の各階の各箇所にどれだけの力が掛かるものであるかが記載された部分等から構成される。)を記載したものである。 e 設計資料等例えば,本件建物の土質柱状図,杭位置図,構造計算上のモデル平面図(伏図)やモデル立面図(軸組図)といった構造図等を記載したものである。 3 争点及び争点に関する当事者の主張の要旨本件の争点は,本件決定の違法性(①本件各文書に記録されている情報(以下「本件各情報」という。)が本件条例所定の非公開情報に該当し,その全部を非公開とすることができるか否か,②本件決定に理由付記の違法があるか否か)であり,これに関する当事者の主張の要旨は,次のとおりである。 (1) 争点①(本件各情報が本件条例所定の非公開情報に該当し,その全部を非公開とすることができるか否か)について(被告の主張の要旨)ア本件各情報は,次のとおり,本件条例所定の非公開情報に該当する。 (ア) 法令秘情報の該当性建築基準法93条の2は,「特定行政庁は,確認その他の建築基準法令の規定による処分並びに12条1項 次のとおり,本件条例所定の非公開情報に該当する。 (ア) 法令秘情報の該当性建築基準法93条の2は,「特定行政庁は,確認その他の建築基準法令の規定による処分並びに12条1項及び3項の規定による報告に関する書類のうち,当該処分若しくは報告に係る建築物若しくは建築物の敷 地の所有者,管理者若しくは占有者又は第三者の権利利益を不当に侵害するおそれがないものとして国土交通省令で定めるものについては,国土交通省令で定めるところにより,閲覧の請求があつた場合には,これを閲覧させなければならない。」と規定しているが,これを受けた建築基準法施行規則11条の4第1項は,対象となる書類を建築計画概要書等の概要書に限っている。その趣旨は,概要書の域を超えて建築物の確定図や構造計算書を公開することは,防犯上の観点等からして,建築物若しくは建築物の敷地の所有者,管理者若しくは占有者又は第三者の権利利益を侵害する(同法93条の2)という結果になるからである。 上記の建築基準法93条の2の趣旨等からすれば,本件各情報は,本件条例8条1項1号所定の「法令の定めるところにより,明らかに公開することができないと認められる情報(以下「法令秘情報」という。)」に該当する。 (イ) 法人等情報の該当性本件文書1及び本件文書2に記録された情報は,設計者の専門技能や創意工夫等が盛り込まれていて著作権の対象となるものであり,本件文書3に記録された情報は,本件建物の建物の仕様に関するものが包括的に含まれたものであるところ,Bが本件各情報の公開に反対している。 そこで,本件各情報は,本件条例8条1項3号所定の「法人その他の団体(国及び地方公共団体を除く。以下「法人等」という。)に関する情報であって,公開 Bが本件各情報の公開に反対している。 そこで,本件各情報は,本件条例8条1項3号所定の「法人その他の団体(国及び地方公共団体を除く。以下「法人等」という。)に関する情報であって,公開することにより,当該法人等の競争上又は事業活動上の地位その他正当な利益を著しく害すると認められるもの(以下「法人等情報」という。)」に該当する。 そして,本件建物については,三鷹市長が行った耐震性検証作業の結果,適法性(構造安全性)が確認されているから,本件文書1及び本件文書2に記録された情報は,同号イ所定の「違法若しくは不当な事業活 動によって生じ,又は生じるおそれがある支障から人の生活を保護するために,公開することが公益上必要であると認められる情報」には該当しない。 (ウ) 協力関係情報の該当性本件文書3に記録された情報は,三鷹市長が特定行政庁として本件建物の耐震性検証作業を行うに当たり,国土交通省の「違法行為若しくはその疑義に関する情報を把握した場合の初動対応と公表の在り方について(技術的助言)」と題する通知(乙2)に基づき,三鷹市と公共的団体であるDとの協議,依頼により,三鷹市が取得したものであるところ,Dが自ら提出した意見書の公開に明確に反対しているから,本件条例8条1項4号ア所定の「市と国等との間における協議,依頼,委任等により実施機関が取得した情報であって,公開することにより,市と国等との協力関係が著しく損なわれるおそれのあるもの(以下「協力関係情報」という。)」に該当する。 (エ) 事業執行情報の該当性本件各情報は,いずれもBやDがその公開に反対しているから,このような状況下でこれらを公開すると,三鷹市と協力要請に応じたBやDとの信頼関係を失墜させることが ) 事業執行情報の該当性本件各情報は,いずれもBやDがその公開に反対しているから,このような状況下でこれらを公開すると,三鷹市と協力要請に応じたBやDとの信頼関係を失墜させることが明らかであり,今後見込まれる同種の調査事務事業について,必要な関係者の協力を得ることを著しく困難にする。 したがって,本件各情報は,本件条例8条1項4号エ所定の「実施機関が行う事務事業に関する情報であって,公開することにより,当該事務事業又は将来の同種の事務事業の公正又は適正な執行が著しく妨げられるおそれのあるもの(以下「事業執行情報」という。)」に該当する。 イ部分開示義務違反の違法はないこと本件各情報は,本件条例8条2項の「市政情報が前項各号のいずれかに 該当する部分とその他の部分とからなる場合」に該当せず,「これらの部分を容易に,かつ,請求の趣旨を損なわない程度に合理的に分離できるとき」にも該当しないから,一部公開の対象となるものではない。 (原告の主張の要旨)ア非公開情報に該当しないこと(ア) 法令秘情報の非該当性本件各情報のうち建築物の確定図や構造計算書に記録された情報は,建築基準法において明文上開示を禁止されているものではなく,少なくとも本件のように本件建築物に関して建築確認図書と竣工図との間に多くの不整合箇所が存在していたという違法な状態を契機として作成されたものであるから,本件条例8条1項の法令秘情報に該当しない。 (イ) 法人等情報の非該当性a 本件文書1及び本件文書2に記録された情報は,建築基準法上違法な図面を建物の現況に即して取りまとめたものであって,単に不整合箇所をまとめた確定図や再計算を行った構造計算書という建物 a 本件文書1及び本件文書2に記録された情報は,建築基準法上違法な図面を建物の現況に即して取りまとめたものであって,単に不整合箇所をまとめた確定図や再計算を行った構造計算書という建物に関する客観的な情報にすぎず,設計者の専門技術や創意工夫等が盛り込まれているものではないから,これらの情報は,本件条例8条1項3号所定の法人等情報に該当しない。 b 仮に,本件文書1及び本件文書2に記録された情報が同項の法人等情報に該当するとしても,これらが本件建物に関して建築確認図書と竣工図との間において多くの不整合箇所が存在していたという違法状態を契機として作成されたものであること(Bは,三鷹市に対して行われた本件建物の建築確認申請に添付された構造計算書を意図的に改ざんして本件建物が違法であること(例えば,保有水平耐力を満たしていない。)を隠し,三鷹市においては,当該構造計算書を受領して検討していた経緯からすると,当該構造計算書において改ざんが行わ れていたことを当然知っていたはずなのにこれを秘して本件建物について建築基準法の基準に適合した適法な建築物である旨の判断を行うなどしていた。)から,同項ア又はイ所定の情報に該当し,公開の対象になるというべきである。 (ウ) 協力関係情報の非該当性本件文書3は,Bから三鷹市長に提出されたものであって,これに記録された情報は,Dと三鷹市長との間における協力関係情報(本件条例8条1項4号ア)に該当せず,むしろDが公共的団体なのであれば,その意見及び耐震性再計算に係る指針はなおさら公開されるべきである。 (エ) 事業執行情報の非該当性本件各情報は,そもそもDがその公開に反対していることの明確な証拠がない上,違法な建築物の建築主が反対 係る指針はなおさら公開されるべきである。 (エ) 事業執行情報の非該当性本件各情報は,そもそもDがその公開に反対していることの明確な証拠がない上,違法な建築物の建築主が反対していることを理由に開示しないとする合理的な根拠がないから,事業執行情報に該当するとは限らず,むしろDがチェック機能を果たしているとすれば,その意見及び耐震性再計算に係る指針が公開されるべきである。 イ部分開示義務違反の違法があること仮に本件各情報の一部に非公開情報が含まれていたとしても,本件決定は,本件各情報を全部非公開とするものであるが,例外的に非公開とする場合においても非公開部分をできるだけ限定すべきであるから(本件条例8条2項),同項に違反する。 (2) 争点②(本件決定に理由付記の違法があるか否か)について(被告の主張の要旨)本件決定に理由付記を欠く違法はない。 本件条例6条4項は,非公開決定通知書はその理由を記載しなければならない旨を規定しているところ,① 原告主張の最高裁平成4年12月10日判決は,本件のように,三鷹市長が,原告の不服申立てに基づき,三鷹市情 報公開審査会の答申を受け,これに準拠して具体的な理由を付して異議申立てを棄却した事案や情報公開条例が非公開事由を極めて抽象的かつ漠然と規定しているとはいえない事案には適用がなく,むしろ,② 本件条例8条が非公開情報を整理して具体的に規定しており,その根拠条文を示すだけで開示請求者(原告)において非公開事由を了知することが可能であること,③原告が本件決定に対する異議申立てにおいて本件決定の違法性を反論しており,本件決定の理由を了知していること等に照らすと,本件決定に本件条例の根拠条文のみを記載したことをもって, 可能であること,③原告が本件決定に対する異議申立てにおいて本件決定の違法性を反論しており,本件決定の理由を了知していること等に照らすと,本件決定に本件条例の根拠条文のみを記載したことをもって,理由付記を欠く違法があるということはできない。 (原告の主張の要旨)本件決定には,理由付記の不備という違法がある。 すなわち,最高裁平成4年12月10日判決によれば,非公開決定を書面により通知し,しかも,その理由を付記しなければならない旨の規定は,実施機関の判断の慎重と公正妥当を担保してその恣意を抑制する趣旨のものであり,非公開決定に対する不服申立てがされ,これに対する決定において理由付記の不備が補足されたとしても,理由付記の不備が治癒されるものではなく,また,理由付記の程度は,開示請求者の主観に関わりがなく,本件各情報のどの情報が本件条例所定の非公開情報に該当するか客観的に区別されていなければならないところ,本件決定は,単に条文を列挙するのみで,本件各情報におけるどの部分の情報がどのような根拠により非公開情報に該当するかという個別具体的根拠が付記されていないから,本件条例6条4項に違反する。 第3 当裁判所の判断 1 認定事実前記前提事実並びに末尾掲記の証拠及び弁論の全趣旨によれば,次の事実を認めることができる。 (1) 国土交通省は,平成17年11月に発覚した耐震強度偽装事件を契機として,平成18年2月,都道府県建築主務部長に対し,「構造計算書偽装物件に係る違反是正等について(技術的助言)」として,特定行政庁が構造計算書偽装物件に係る違反是正等の手順(特に,建築確認時の構造計算書において偽装が発見された物件については,特定行政庁により所有者等に対して違反是正指導を行うとともに,違反 として,特定行政庁が構造計算書偽装物件に係る違反是正等の手順(特に,建築確認時の構造計算書において偽装が発見された物件については,特定行政庁により所有者等に対して違反是正指導を行うとともに,違反是正に係る報告書徴収を求めるほか,特定行政庁が耐震性の判断や違反是正計画の適法性の判断を行うに当たっては,Dに設置された是正支援委員会の助言を受けられるとされている。)を通知し(以下,この通知を「本件通知」という。乙6の2),これをそのホームページで公開し,さらに,同年5月には,都道府県建築行政担当部長に対し,「違法行為若しくはその疑義に関する情報を把握した場合の初動対応と公表のあり方について(技術的助言)」と題する通知(乙2)を発出した。 他方,Dは,平成18年2月,構造計算書が偽装されて建築された建築物について,当該建築物の適切な違反是正の実施に資することを目的として,当該建築物が所在する特定行政庁の要請に基づき,下記の違反是正計画の支援を行う旨を公表した。 記① 提出された違反是正方針の妥当性に関する助言その具体的方法としては,Dの設置した是正支援委員会が,提出された違反是正方針に基づき,耐震性の判断,違反是正の可能性及びその方法について助言を行うものとされている。 ② 所有者等が作成して特定行政庁に提出した違反是正計画の妥当性の判定(乙2,6の1~3)(2) 本件建物は,平成19年4月13日に新築された建物(種類老人ホーム,構造鉄筋コンクリート造陸屋根地下1階付き8階建て,延床面積2万9456.73㎡)であるが,その具体的な主要用途は共同住宅(介護付きシニ ア健常者向けマンション。178戸)であって,入居者用の運動施設(ジム,プール),医療施設(クリニック)及び娯楽施設(シ 56.73㎡)であるが,その具体的な主要用途は共同住宅(介護付きシニ ア健常者向けマンション。178戸)であって,入居者用の運動施設(ジム,プール),医療施設(クリニック)及び娯楽施設(シアタールーム,露天風呂,カラオケルーム)のほか,入居者以外の者も利用することができる飲食店等の設置も予定された大規模複合施設である。 本件建物は,その新築後,平成19年7月2日付けでB(変更前の商号C株式会社)を所有者とする所有権保存登記が経由され,平成22年5月10日,同日付け売買を原因とし,所有者を株式会社Fとする所有権移転登記が経由された。 なお,本件建物には,平成20年11月1日以降,入居者がいない状態である。 (甲2,7,乙5)(3) 株式会社G(なお,その代表取締役は原告の代表取締役と同一であった。)は,Bから,本件建物等を承継する旨の一連の契約を締結するなどしたと主張して,平成20年3月7日,東京都及び三鷹市に対し,「『C所有H』建物構造耐力に関する疑義について」と題する書面(甲7)を提出した。 なお,上記書面には,株式会社Gらが,Bから入手した本件建物の竣工図書を基に専門家に依頼して本件建物の構造計算を行うなどしたところ,本件建物には建築確認申請時の構造計算書と竣工図書中の構造図との齟齬や保有水平耐力比の最小値の不足等の問題がある旨が具体的に記載されている。 (甲7)(4) これに対し,Iに関しては,東京都が,平成20年3月28日,Bに対し,建築基準法12条5項に基づく報告を求めるなどし,その結果,同年11月12日,その耐震性に問題がある旨を①物件概要,②経緯,③耐震性の調査結果(この点については,不整合の具体的内容を記載した「Iにおける建築確認図書と建築物の現況との不整合等に関 その結果,同年11月12日,その耐震性に問題がある旨を①物件概要,②経緯,③耐震性の調査結果(この点については,不整合の具体的内容を記載した「Iにおける建築確認図書と建築物の現況との不整合等に関する事実関係」と題する文書が参考資料として添付されている。)及び④東京都の判断と対応を具体的に明ら かにしてホームページで公表した。 (甲8,10)(5)ア他方,本件建物に関しては,三鷹市長は,平成20年3月5日,国土交通省から,本件建物の耐震性に疑義があるとの情報の提供があったことから,本件建物に対する調査を開始し,その耐震性検証作業を行うため,同年5月28日,Bに対し,建築基準法12条5項に基づき,構造計算の再計算による検証とその報告を求めるなどし(甲9),次のとおり本件各文書を取得した。 (ア) 三鷹市長は,Bから,竣工した本件建物の現状を反映させるため,本件建物の竣工図を基に作成した本件建物の確定図(本件文書1)の提供を受けた。 (イ) 三鷹市長は,Bから提供を受けた本件建物の建築確認図書及び本件文書1を基に,①本件建物の建築確認図書を構成する各図面間若しくは各項目間又は②建築確認図書と本件文書1との間において,不整合があると思われる箇所を三鷹市職員において整理して取りまとめた(この取りまとめた資料が本件文書2である。)。 (ウ) 三鷹市長は,上記耐震性検証作業に当たり,Dに対し,本件通知に基づく支援を要請し,Dの助言を受けて,Bは,再計算者であるEに6回にわたり耐震性再計算を行わせて構造計算書(本件文書3)を作成した。 三鷹市長は,Bから,上記構造計算書(本件文書3)の提供を受けた。 なお,三鷹市長は,平成20年5月28日,Bに対し,本件建物の構造計算に関し,本件建物の竣工 (本件文書3)を作成した。 三鷹市長は,Bから,上記構造計算書(本件文書3)の提供を受けた。 なお,三鷹市長は,平成20年5月28日,Bに対し,本件建物の構造計算に関し,本件建物の竣工図及び施工図並びに現況に基づく原設計者以外の第三者による再計算結果の報告を求めたが,その際,上記再検証結果の妥当性については,三鷹市長の判断に先立ち,Dに設置された委員会(是正支援委員会)に諮問する予定である旨を告知した(甲9)。 イ三鷹市長は,上記アのとおり取得した書類を資料とし,また,構造計算 書の適法性の判断についてDの助言を受けて耐震性検証作業を行った結果,本件建物の構造耐力は建築基準法20条に定める基準に適合していると判断し,平成21年3月30日,上記耐震性検証作業により本件建物の適法性(構造安全性)が確認されたとして,その旨をホームページ上に公開した。 (以上につき,甲2,9,乙3)(6) Bは,三鷹市情報公開審査会に対し,平成22年2月19日,要旨下記の理由から本件各文書の開示に反対する旨の意見書(乙5)を提出した。 記本件各文書は,本件建物につき,平成20年5月28日付けで三鷹市長の建築基準法12条5項に基づく再計算と報告の要請に応じてBが提出したものであり,我が国有数の設備である建物の仕様に関する情報も多く含まれることから,これが公となって有料老人ホームに関する業務を営む競合他社に知れわたることになれば,B及びBから将来本件建物の所有権承継や運営を受託する事業者にとって,不利益が極めて大きい。既に耐震性検査を完了し,その結果耐震性不足でないことが明らかになった建物については,営業上の秘密保持の必要性を無視してその資料を公開すべきではなく,第三者がその資料を入手し,公開することは,今後本 に耐震性検査を完了し,その結果耐震性不足でないことが明らかになった建物については,営業上の秘密保持の必要性を無視してその資料を公開すべきではなく,第三者がその資料を入手し,公開することは,今後本件建物に居住することになる入居者にも無用の不安を与えるおそれが大きい。 (乙5)(7)ア被告は,平成21年7月29日,東京弁護士会から,弁護士法23条の2に基づく照会として,本件建物の耐震性調査の結果につき,本件建物の構造計算に関するDの意見書の開示等を求める照会を受けたことから,Dに対し,意見を求めたところ,同年8月7日,Dから,要旨下記のとおりの回答を受けたため,同年9月25日,東京弁護士会に対し,「Dの意見書の開示については,特定行政庁がDに要請したことに対する意見書であ り,本件条例8条1項4号ア(協力関係情報)に該当し,市との協力関係が著しく損なわれるおそれがあるものとして,開示することはできない」旨回答した。 記Dの意見書の写しを提出することは,次の理由から拒否する。 すなわち,① Dの出した意見書は被告の依頼に基づいて是正支援委員会が被告に提出したものであり,② 意見書は被告が判断するに当たっての助言又は支援であって法的に判断する権限は被告にあり,意見書はその参考資料にすぎず,また,被告が法的判断をするに当たっての正式な鑑定等を依頼されてDが提出したものでなく,③ 弁護士会の求めに対してDの意見書を提出することは,是正支援委員会の活動で想定しているものではなく,Dの今後の活動に支障を来すと考えるからである。 (乙12~14)イなお,上記アのDの意見書は,上記(1),(5)及び(7)アの各事実を総合すれば,Dに設置された是正支援委員会が,Bが提出した本件建物の構造計算の再 えるからである。 (乙12~14)イなお,上記アのDの意見書は,上記(1),(5)及び(7)アの各事実を総合すれば,Dに設置された是正支援委員会が,Bが提出した本件建物の構造計算の再計算結果(本件文書3)の妥当性について三鷹市長から諮問を受け,本件建物の耐震性の判断及び違反是正の可能性等を検討した結果を記載したものであると推認することができる。 2 争点②(本件決定に理由付記の違法があるか否か)について所論に鑑み,まず争点②(本件決定に理由付記の違法があるか否か)について検討する。 (1) 本件条例6条4項は,実施機関は,非公開決定をするときは,通知書にその理由を記載しなければならない旨を規定している。一般に,法令が行政処分に理由を付記すべきものとしている場合に,どの程度の記載をすべきかは,処分の性質と理由付記を命じた各法令の趣旨・性質に照らしてこれを決定すべきである(最高裁昭和36年(オ)第84号同38年5月31日第二小法 廷判決・民集17巻4号617頁)。本件条例が上記のように非公開決定の通知書にその理由を付記すべきものとしているのは,本件条例に基づく市政情報の公開制度が,何人にも市政情報の公開を求める権利を保障することを趣旨とするものであって,実施機関においては,市政情報の公開を求める権利が適正に保障されるように本件条例を解釈し,運用するよう努めなければならないものとしていること(本件条例1条,3条参照)に鑑み,非公開決定の理由の有無について実施機関の判断の慎重と公正妥当を担保してその恣意を抑制するとともに,非公開決定の理由を開示請求者に知らせることによって,その不服申立てに便宜を与える趣旨に出たものというべきである。このような理由付記制度の趣旨に鑑みれば,非公開決定の通知書に付記すべき るとともに,非公開決定の理由を開示請求者に知らせることによって,その不服申立てに便宜を与える趣旨に出たものというべきである。このような理由付記制度の趣旨に鑑みれば,非公開決定の通知書に付記すべき理由としては,開示請求者において,本件条例8条1項各号所定の非公開事由のどれに該当するかをその根拠とともに了知し得るものでなければならず,単に非公開の根拠規定を示すだけでは,当該市政情報の種類,性質等とあいまって開示請求者がそれらを当然に知り得る場合は別として,本件条例6条4項の要求する理由付記としては十分ではないといわなければならない。 (2) 以上の見地に立って本件についてみると,前提事実によれば,本件決定に係る通知書は,公開することができない市政情報を本件各文書と特定し,公開することができない理由として本件条例8条1項1号,3号,4号ア及びエに該当する旨のみを記載している(以下,この理由記載を「本件付記理由」という。)から,上記各規定ごとに検討する。 ア本件条例8条1項1号について(ア) 本件条例8条1項1号は「法令の定めるところにより,明らかに公開することができないと認められる情報」を非公開情報とするものであり,ここでいう「明らかに公開することができないと認められる情報」とは,法令の規定,その趣旨,目的からみて,公開することができないと明らかに判断され得る情報であると解されるが(乙15の40頁参照),同 号所定の事由は抽象的であるといわざるを得ないところ,非公開決定の理由として,いかなる法令の規定,趣旨,目的からみて,公開することができないと明らかに判断され得る情報であるかという点の記載さえもなく,単に同号に該当する旨の記載があるだけでは,開示請求者において,非公開決定の理由がいかなる根拠により同号所 らみて,公開することができないと明らかに判断され得る情報であるかという点の記載さえもなく,単に同号に該当する旨の記載があるだけでは,開示請求者において,非公開決定の理由がいかなる根拠により同号所定の事由に該当するのかを知ることは困難であるのが通例であると考えられる。 (イ) これを本件についてみると,前提事実によれば,本件公開請求において請求をする市政情報の内容は,別紙1文書目録記載のとおり,本件建物の耐震性調査に関する資料であって,①不整合箇所をまとめた確定図面,②不整合箇所数をまとめた書面及び③再計算を行った構造計算書(検討段階のものを含む。)と特定されているが,これらの本件各文書の種類,性質等を考慮しても,本件付記理由によっては,いかなる根拠により本件条例8条1項1号所定の事由に該当するとして本件決定がされたのか(殊に,被告主張のような建築基準法93条の2及び建築基準法施行規則11条の4第1項の趣旨により本件条例8条1項1号所定の事由に該当するとして本件決定がされたこと)を,原告において知ることはできないものといわざるを得ない。 イ本件条例8条1項3号(ア) 本件条例8条1項3号は,同号本文において,「法人等に関する情報であって,公開することにより,当該法人等の競争上又は事業活動上の地位その他正当な利益を著しく害すると認められるもの」を非公開情報とした上,同号ただし書において,これから<ア>「事業活動によって生じ,又は生じるおそれのある危害から人の生命,身体及び健康を保護するために,公開することが公益上必要であると認められる情報」(同号ア),<イ>「違法若しくは不当な事業活動によって生じ,又は生じるおそれがある支障から人の生活を保護するために,公開することが公益上 必要であると認められ 必要であると認められる情報」(同号ア),<イ>「違法若しくは不当な事業活動によって生じ,又は生じるおそれがある支障から人の生活を保護するために,公開することが公益上 必要であると認められる情報」(同号イ)及び<ウ>「<ア>又は<イ>に掲げる情報に準じる情報であって,公開することが公益上特に必要であると認められる情報」を除くこととするものである。そして,ここでいう「当該法人等の競争上又は事業活動上の地位その他正当な利益を著しく害すると認められるもの」とは,被告作成の情報公開制度の手引(乙15)においても,<a> 生産活動等に関する情報や技術上のノウハウ等に関する情報,<b> 販売,営業活動の内容,計画等に関する情報その他販売,営業等の秘密に関する情報,<c> 経営状態,資産内容,負債内容等に関する情報その他信用に関する情報といったものが例示列挙されている上,公開請求に係る情報がこれらに該当するかどうかは,当該情報のみではなく,事業者の性格,規模,事業活動における当該情報の位置付け等にも十分配慮しつつ慎重に判断する必要があるとされている(乙15・43~44頁参照)。 これらの点に鑑みると,同号所定の事由は複数の要件で構成されるものであって,個々の要件自体も抽象的であり,規範的判断をも伴うものであるといわざるを得ないから,非公開決定の理由として同号に該当する旨の記載があるだけでは,開示請求者において,非公開決定の理由がいかなる根拠により同号本文所定の事由に該当し,かつ,いかなる根拠により同号ただし書所定の情報に該当しないのかを知ることは困難であるのが通例であると考えられる。 (イ) これを本件についてみると,この点,被告は,本件各情報が本件条例8条1項3号に該当する根拠として,「本件文書1及び本件文書2に かを知ることは困難であるのが通例であると考えられる。 (イ) これを本件についてみると,この点,被告は,本件各情報が本件条例8条1項3号に該当する根拠として,「本件文書1及び本件文書2に記録された情報は,設計者の専門技能や創意工夫等が盛り込まれていて著作権の対象となるものであり,本件文書3に記録された情報は,本件建物の建物の仕様に関するものが包括的に含まれたものである」などと主張する。 確かに,本件公開請求の対象である本件各文書は,前記ア(イ)で説示したとおり,本件建物の耐震性調査に関する資料であって,①不整合箇所をまとめた確定図面,②不整合箇所数をまとめた書面及び③再計算を行った構造計算書(検討段階のものを含む。)と特定されていたから,本件各文書に記録された本件各情報に本件建物の具体的構造・仕様等が含まれることやこれが本件建物を新築したBに関する情報に当たり得ることは,原告において当然に想定することができたといえる。 しかしながら,原告において本件各情報がBに関する情報であって本件建物の具体的構造・仕様等を含むものであることを当然に想定することができたとしても,<a> そのことから,本件建物の具体的構造・仕様等を公開することにより,どのような観点からみてBの競争上又は事業活動上の地位その他正当な利益を著しく害するのかは,必ずしも明らかであるとはいえないし,<b> 他方,本件各情報が本件建物の耐震性調査に関するものであることからすれば,Bが新築した本件建物の耐震性に問題があるとして本件条例8条1項3号所定の事由(上記(ア)<ア>~<ウ>)に該当すると判断する余地もあり得るところ,前記1(5)で認定したとおり,三鷹市長が,本件建物に対する調査として耐震性検証作業を行い,その結果本件建物 1項3号所定の事由(上記(ア)<ア>~<ウ>)に該当すると判断する余地もあり得るところ,前記1(5)で認定したとおり,三鷹市長が,本件建物に対する調査として耐震性検証作業を行い,その結果本件建物の適法性(構造安全性)が確認された旨をホームページ上に公開したことを考慮しても,いかなる根拠をもって当該事由に該当しないと判断されたのかは,原告において想定可能な上記事情から当然に推知することができるものではない。 そうであるとすれば,上記のような本件各情報の種類,性質等を考慮しても,本件付記理由によっては,いかなる根拠により本件条例8条1項3号本文所定の事由に該当し,かつ,いかなる根拠により同号ただし書所定の情報に該当しないとして本件決定がされたのか(殊に,被告の上記主張に係る根拠により同号本文に該当し,同号ア及びイに該当しな いこと)を,原告において知ることはできないものといわざるを得ない。 ウ本件条例8条1項4号ア(ア) 本件条例8条1項4号アは,「市と国等との間における協議,依頼,委任等により実施機関が作成し,又は取得した情報であって,公開することにより,市と国等との協力関係が著しく損なわれるおそれのあるもの」を非公開情報とするものであり,被告作成の情報公開制度の手引(乙15)においても,同号所定の事由として,① 事業計画,事業の実施・調整等に関する情報のうち,国等の協力関係を確保するため,非公開とする必要があるもの,② 国等から公開しない旨の依頼のあるもの又は非公開の取り決めのあるもの,③ 国等から提供を受けた情報のうち,国等との協力関係を確保するため,特に非公開とする必要があるもの,④ 国等からの依頼,委任等による調査等で,当該契約等の条項の中に,国等の承認なしに公にしてはならない旨の条 提供を受けた情報のうち,国等との協力関係を確保するため,特に非公開とする必要があるもの,④ 国等からの依頼,委任等による調査等で,当該契約等の条項の中に,国等の承認なしに公にしてはならない旨の条件があるもの又は国等において公表するまで公にしてはならない旨の指示があるもの,⑤国等の事務に関して市に協議が求められているもので,国等においても当該事務に関する情報を公にしないもの,⑥ 国等からの検査等に係るもので,国等においても公にしないもの,⑦ 全国を通じて統一的に公表を要するもの等が例示列挙されている(乙15・46頁)。 これらの点に鑑みると,同号ア所定の事由は抽象的であり,協力関係の相手方も特定されておらず,規範的判断をも伴うものであるといわざるを得ないから,非公開決定の理由として同号アに該当する旨の記載があるだけでは,開示請求者において,非公開決定の理由がいかなる根拠により同号所定の事由に該当するのかを知ることは困難であるのが通例であると考えられる。 (イ) これを本件についてみると,前記ア(イ)で説示したとおり特定された本件各文書の種類,性質等を考慮しても,本件付記理由によっては,い かなる根拠により本件条例8条1項4号ア所定の事由に該当するとして本件決定がされたのか(殊に,被告主張のような本件文書3が三鷹市とDとの協議,依頼により三鷹市が取得したもので,これを公開することにより,三鷹市とDとの協力関係が著しく損なわれること)を,原告において知ることはできないものといわざるを得ない。 エ本件条例8条1項4号エ(ア) 本件条例8条1項4号エは「工事等の起工書,用地の買収計画,交渉の方針,争訟の処理方針,監査又は検査の計画その他実施機関が行う事務事業に関する情報であって,公開する 8条1項4号エ(ア) 本件条例8条1項4号エは「工事等の起工書,用地の買収計画,交渉の方針,争訟の処理方針,監査又は検査の計画その他実施機関が行う事務事業に関する情報であって,公開することにより,当該事務事業の目的が著しく損なわれるおそれのあるもの,特定のものに不当な利益又は不利益が生じるおそれのあるもの,関係当事者間の信頼関係が著しく損なわれるおそれのあるものその他当該事務事業又は将来の同種の事務事業の公正又は適正な執行が著しく妨げられるおそれのあるもの」をそれぞれ非公開情報とするものであり,このような規定の文言に鑑みれば,同号エ所定の事由が複数の事由を定めるものであってしかも抽象的であり,規範的判断をも伴うものであることは明らかであるから,非公開決定の理由として同号エに該当する旨の記載があるだけでは,開示請求者において,非公開決定の理由がいかなる根拠により同号エ所定のどの事由に該当するのかを知ることは困難であるのが通例であると考えられる。 (イ) これを本件についてみると,前記ア(イ)で説示したとおり特定された本件各文書の種類,性質等を考慮しても,本件付記理由によっては,いかなる根拠により本件条例8条1項4号ア所定のどの事由に該当するとして本件決定がされたのかを,原告において知ることは困難であるといわざるを得ない。 (3) 以上によれば,本件付記理由は,本件条例8条2項の定める理由付記の要件を欠くものというほかない。 (4) これに対し,被告は,前記第2の3(被告の主張の要旨)(2)①~③のとおり主張する。 しかしながら,このうち,本件では,三鷹市長が,原告の不服申立てに基づき,三鷹市情報公開審査会の答申を受け,これに準拠して具体的な理由を付して異議申立てを棄却したことから,本 り主張する。 しかしながら,このうち,本件では,三鷹市長が,原告の不服申立てに基づき,三鷹市情報公開審査会の答申を受け,これに準拠して具体的な理由を付して異議申立てを棄却したことから,本件決定に理由付記の違法があるとはいえない旨を指摘する点(①)については,そもそも,本件条例8条2項が非公開決定の通知書に理由付記を命じた規定の趣旨が前記(1)のとおりであることからすれば,本件条例8条2項に違反した非公開決定の瑕疵は,後日これに対する審査請求についての裁決において当該非公開決定の具体的根拠が明らかにされたとしても,それにより治癒されるものではないと解すべきである(最高裁昭和43年(行ツ)第61号同47年12月5日第三小法廷判決・民集26巻10号1795頁参照)から,その前提を欠いており,採用することができない。また,原告が本件決定に対する異議申立てにおいて本件決定の違法性を反論しており,本件決定の理由を了知していることを指摘する点(③)については,<ア> そもそも,本件条例8条2項が非公開決定の通知書に理由付記を命じた規定の趣旨が前記(1)のとおりであることからすれば,これに記載することを要する非公開理由の程度は,原則として,相手方の知,不知にかかわりがないというべきである(最高裁昭和45年(行ツ)第36号同49年4月25日第一小法廷判決・民集28巻3号405頁参照)し,仮にこの点を置くとしても,<イ> 本件異議申立てに係る異議申立書(甲5)によれば,本件異議申立てにおける非公開情報該当性に関する原告の反論は,要するに,本件決定の理由が明らかでないとするか,本件決定の理由として指摘された各規定所定の非公開情報に該当しないとするものにすぎず,本件決定の違法性として,前記イで指摘した被告主張に係る具体的根拠に対して個別的・具体 由が明らかでないとするか,本件決定の理由として指摘された各規定所定の非公開情報に該当しないとするものにすぎず,本件決定の違法性として,前記イで指摘した被告主張に係る具体的根拠に対して個別的・具体的な反論をしたものとは認められないから,原告が本件決定の理由を当然に了知していたとはいえず,その前提を欠くか ら採用することができない。その余の点(①,②)についても,上記(1)・(2)で説示したところに照らし,採用することができない。 3 非公開情報の該当性以上に説示したところによれば,本件決定は,理由付記の要件を欠いた違法な処分であり,取消しを免れないものというべきであるが,所論に鑑み,更に被告主張に係る非公開情報の該当性についても,弁論終結時における当事者双方の主張立証を基に検討する。 (1) 法令秘情報(本件条例8条1項1号)の該当性被告は,本件各情報が,建築基準法93条の2及び建築基準法施行規則11条の4第1項の趣旨からすれば,法令秘情報(本件条例8条1項1号)に該当する旨主張する。 しかし,① 建築基準法93条の2は,特定行政庁は,確認その他の建築基準法令の規定による処分並びに建築基準法12条1項及び3項の規定による報告に関する書類のうち,当該処分若しくは報告に係る建築物若しくは建築物の敷地の所有者,管理者若しくは占有者又は第三者の権利利益を不当に侵害するおそれがないものとして国土交通省令で定めるものについては,閲覧の請求があった場合には,これを閲覧させなければならない旨を規定し,② 建築基準法施行規則11条の4は,上記国土交通省令で定めるものとして,建築計画概要書,築造計画概要書,定期調査報告概要書,定期検査報告概要書,処分等概要書,全体計画概要書,指定道路図及び指定道路調書を規定 法施行規則11条の4は,上記国土交通省令で定めるものとして,建築計画概要書,築造計画概要書,定期調査報告概要書,定期検査報告概要書,処分等概要書,全体計画概要書,指定道路図及び指定道路調書を規定しているが,これは,周辺住民等の協力によって建築基準法令に違反する建築物の建築を未然に防止することなどを目的とし,その目的との関係で,建築基準法令による処分又は報告に関する書類のうち一定の範囲のものに限って閲覧の権利を保障したものにすぎず,情報公開条例により上記の範囲を超える情報の公開をすることまでを禁止したものと解することはできない。 したがって,建築基準法93条の2及び建築基準法11条の4第1項の規 定の存在及びそれらの規定の趣旨をもって,本件各情報が「法令の定めるところにより,明らかに公開することができないと認められる情報」に該当するということはできず,被告の上記主張を採用することはできない。 (2) 法人等情報(本件条例8条1項3号)の該当性ア本件条例8条1項3号の解釈(ア) 本件条例8条1項3号本文は,実施機関は,「法人等に関する情報であって,公開することにより,当該法人等の競争上又は事業活動上の地位その他正当な利益を著しく害すると認められるもの」(法人等情報)が記録されている市政情報については,市政情報の公開をしないことができるを規定している。一方,本件条例3条1項は,実施機関は,市政情報の公開を求める権利が適正に保障されるようにこの条例を解釈し,運用しなければならない旨規定するとともに,同条2項において,個人に関する情報については,特定の個人が識別され,又は識別され得るもののうち,一般に他人に知られたくないと望むことが正当であると認められるものをみだりに公にすることのないように最大限の において,個人に関する情報については,特定の個人が識別され,又は識別され得るもののうち,一般に他人に知られたくないと望むことが正当であると認められるものをみだりに公にすることのないように最大限の配慮をしなければならない旨規定している。 これらの規定の趣旨に照らせば,本件条例8条1項3号本文所定の法人等情報に該当するためには,それが法人等に関する情報である以上,個人に関する情報とは異なり,単に「一般に他人に知られたくないと望むことが正当である」と認められるものであるというだけでは足りず,本件条例8条1項3号本文にいう「公開することにより,当該法人等の競争上又は事業活動上の地位その他正当な利益を著しく害すると認められるもの」であることが必要とされているのであるから,ここでいう「公開することにより,当該法人等の競争上又は事業活動上の地位その他正当な利益を著しく害すると認められるもの」に該当するというためには,当該情報が開示されることによって当該法人等の競争上又は事業 活動上の地位その他正当な利益を著しく害されることが客観的に明らかでなければならないと解される。 (イ) また,本件条例8条1項3号ただし書は,法人等情報であっても,①事業活動によって生じ,又は生じるおそれがある危害から人の生命,身体及び健康を保護するために,公開することが公益上必要である情報(同号ア),②違法若しくは不当な事業活動によって生じ,又は生じるおそれがある支障から人の生活を保護するために,公開することが公益上必要であると認められる情報(同号イ)に該当する情報は,非公開情報から除外する旨を規定しているところ,これは,当該法人等の競争上又は事業活動上の地位その他正当な利益を保護するために法人等情報を原則として非公開情報としつつも,人の イ)に該当する情報は,非公開情報から除外する旨を規定しているところ,これは,当該法人等の競争上又は事業活動上の地位その他正当な利益を保護するために法人等情報を原則として非公開情報としつつも,人の生命,身体,健康又は生活の保護という行政機関の基本的な責務との調整を図る趣旨であると解される。 そうすると,本件条例8条1項3号ア又は同イにいう「公開することが公益上必要であると認められる」というためには,事業活動による人の生命等に対する危害又は違法若しくは不当な事業活動による人の生活に対する支障が現実に発生しているか,将来これらの危害又は支障が発生する蓋然性が高く,かつ,法人等情報を公開することによってこれらの危害又は支障が除去される蓋然性がある場合であって,法人等情報を非公開とすることにより害されるおそれのある人の生命,身体,健康又は生活の保護の必要性と,これを公開することにより害されるおそれのある法人等の競争上又は事業活動上の地位その他正当な利益の保護の必要性とを比較衡量して,前者が後者に優越することが必要であると解するのが相当である。 イ本件各情報について(ア) 以上の解釈を踏まえて本件各情報を検討するに,被告は,<ア> 本件文書1及び本件文書2に記録された情報は,設計者の専門技能や創意工 夫等が盛り込まれていて著作権の対象となること,<イ> 本件文書3に記録された情報は,本件建物の建物の仕様に関するものが包括的に含まれたものであること,<ウ> Bが本件各情報の公開に反対していることをもって,本件各情報が法人等情報に該当する旨主張する。 この点,一般に意匠設計図や構造設計図等の設計図書に著作権の目的として保護される著作物に該当するものが含まれていることは否定し難いものの,そもそ 情報が法人等情報に該当する旨主張する。 この点,一般に意匠設計図や構造設計図等の設計図書に著作権の目的として保護される著作物に該当するものが含まれていることは否定し難いものの,そもそも原告が本件公開請求で公開を求めている市政情報は,前記2(2)ア(イ)で説示したとおり,本件建物の耐震性調査に関する資料であって,①不整合箇所をまとめた確定図面,②不整合箇所数をまとめた書面及び③再計算を行った構造計算書(検討段階のものを含む。)に限定されており,その趣旨は本件建物の耐震性調査に関する資料の公開にあることからすると,このうち上記①は本件建物の耐震性調査で判明した設計図書と現況建物との不整合箇所のみが明らかになるもの,上記②はその箇所数のみが明らかになるもの,上記③は構造計算の再計算結果のみが明らかになるものであれば足りると解される。 そうであるとすれば,たとえ本件各情報を記録した本件各文書が被告主張のとおり本件建物の設計図書を基に作成されたものであったとしても,上記のとおり限定された本件公開請求に係る市政情報部分(本件各文書)が設計図書と同様に著作物に該当するかどうかは必ずしも明らかではなく,むしろ上記②や上記③のように本件公開請求に係る市政情報部分(本件各文書)と設計図書中の著作物に該当する部分とを容易に,かつ,公開請求の趣旨を損なわない程度に合理的に分離できる可能性もあると考えられるから,本件各情報が法人等情報に該当するかどうかについては,本件条例8条2項の適用の有無を含めて個別具体的な検討が必要であるといわざるを得ない。 (イ) そして,仮に本件各情報が法人等情報に該当するとしても,本件各情 報が本件建物の耐震性調査に関する資料であることからすれば,本件条例8条1項3号ア又はイの適用の有 得ない。 (イ) そして,仮に本件各情報が法人等情報に該当するとしても,本件各情 報が本件建物の耐震性調査に関する資料であることからすれば,本件条例8条1項3号ア又はイの適用の有無を検討する必要がある。 この点,前記1の認定事実によれば,① Iについては,東京都が,その耐震性調査を実施し,その結果としての当該建物の耐震強度を不整合の具体的内容を含めてホームページで公開しているところ,② 本件建物については,株式会社Gが,Bから入手したその竣工図書を基に専門家に依頼して構造計算を行うなどして,建築確認申請時の構造計算書と竣工図書中の構造図との齟齬や保有水平耐力比の最小値の不足等を具体的に指摘していたものの,三鷹市長においては,本件建物の耐震性検証作業を実施しながら,単に耐震性検証作業により本件建物の適法性(構造安全性)が確認された旨をホームページ上に公開するにとどまっていることが認められ,これらの事情も併せ考慮すれば,<ア> 三鷹市長が本件建物の適法性(構造安全性)を確認したことを公表したことのみをもって,事業活動による人の生命等に対する危害又は違法若しくは不当な事業活動による人の生活に対する支障が現実に発生しているか,将来これらの危害又は支障が発生する蓋然性が高く,かつ,本件各情報を公開することによってこれらの危害又は支障が除去される蓋然性がある場合に該当しないことが明らかであるということはできないし,<イ>本件各情報を非公開とすることにより害されるおそれのある人の生命,身体,健康又は生活の保護の必要性と,これを公開することにより害されるおそれのある法人等の競争上又は事業活動上の地位その他正当な利益の保護の必要性とを比較衡量して,後者が前者に優越するかどうか(すなわち,本件各情報を利益考量の結果非 これを公開することにより害されるおそれのある法人等の競争上又は事業活動上の地位その他正当な利益の保護の必要性とを比較衡量して,後者が前者に優越するかどうか(すなわち,本件各情報を利益考量の結果非公開とすべきかどうか)も一見して明らかであるとはいえない。 (ウ) 以上によれば,本件各情報を法人等情報として非公開とすべきかどうかについては,被告主張の諸事情から必ずしも明らかであるとはいえず, なお慎重な検討が必要であるといわざるを得ない。 (3) 協力関係情報(本件条例8条1項4号ア)の該当性被告は,本件文書3に記録された情報は,三鷹市長が特定行政庁として本件建物の耐震性検証作業を行うに当たり,国土交通省が発出した通知(乙2)に基づき,三鷹市と公共的団体であるDとの協議,依頼により,三鷹市が取得したものであるところ,Dが自ら提出した意見書の公開に明確に反対しているから,協力関係情報(本件条例8条1項4号ア)に該当する旨主張する。 しかしながら,① 前提事実及び前記1の認定事実によれば,本件文書3は,Bが,再計算者であるEに6回にわたり耐震性再計算を行わせて作成させ,三鷹市長に提出した構造計算書であり,Dは,三鷹市長がBに対して建築基準法12条5項に基づき構造計算の再計算による検証とその報告を求めるに当たり,三鷹市長に対して上記耐震性再計算に関する助言をしたにすぎないものと推認することができるところ,そうであるとすれば,本件文書3は,三鷹市と公共的団体であるDとの間における協議,依頼,委任等により三鷹市長が取得したものとはいえない。また,この点を置くとしても,②被告の主張によっても,本件文書3の記載内容からは,保有水平耐力の検討方法等に係るDの助言内容を読み取ることができるにすぎないというので 長が取得したものとはいえない。また,この点を置くとしても,②被告の主張によっても,本件文書3の記載内容からは,保有水平耐力の検討方法等に係るDの助言内容を読み取ることができるにすぎないというのであるから,このような助言内容は,D(具体的には,Dの設置した是正支援委員会)が自ら建物の耐震性等を判定したもの等とは異なり,保有水平耐力の検討方法等という客観的な事項を内容とするものにとどまると考えられることに鑑みると,このような助言内容をもって前記1(7)のとおりDが弁護士会照会に対する写しの提出を拒否したDの意見書と同視することはできず,しかも,前記1(1)の認定事実によれば,Dが特定行政庁の要請に基づいて違反是正計画の支援を行うことは一般に公表されており,本件全証拠によっても,Dが本件文書3の公開を拒否していると認めるに足りる証拠はないこ とをも併せ考慮すると,本件文書3に記録された情報を公開することにより,三鷹市とDとの協力関係が著しく損なわれるおそれのあるということもできない。 したがって,本件文書3に記録された情報が本件条例8条1項4号アに該当するとはいえず,被告の上記主張を採用することはできない。 (4) 事業執行情報(本件条例8条1項4号エ)の該当性被告は,本件各情報が,いずれもBやDのいずれもこれに反対しているから,このような状況下でこれらを公開すると,三鷹市と協力要請に応じたBやDとの信頼関係を失墜させることが明らかであり,今後見込まれる同種の調査事務事業について,必要な関係者の協力を得ることを著しく困難にするとして,事業執行情報(本件条例8条1項4号エ)に該当する旨主張する。 しかしながら,まずBとの関係についてみると,前記1の認定事実及び証拠(乙2,6の2)によれば,① 違法 しく困難にするとして,事業執行情報(本件条例8条1項4号エ)に該当する旨主張する。 しかしながら,まずBとの関係についてみると,前記1の認定事実及び証拠(乙2,6の2)によれば,① 違法行為又は違法行為の疑義に関する情報の提供を受けた特定行政庁は,建築基準法12条5項に基づく所有者等に対する報告聴取,同条6項に基づく建築物への立入検査等により違反事実の把握に務め,違反事実が確認された場合には,是正指導を行い,指導に従わない場合は,建築基準法9条に基づく是正命令を発するとともに,同法9条の3に基づく関係機関への通知をしなければならないとされており(乙2の1(1),(2)),② 建築確認時の構造計算書において偽装が発見された物件については,特定行政庁が,所有者等に対して違反是正指導を行うとともに,同法12条5項に基づき,違反是正に係る報告徴収を求め,限界耐力計算等により安全性の検証をした構造計算書が提出された場合には,提出された構造計算書について,特定行政庁において審査し(なお,特定行政庁が構造計算書の適法性の判断を行う際には,必要に応じて,Dに設置された是正支援委員会の助言を受けることができる。),建築基準法令の規定に適合するか否かを確認した場合には,その確認内容を所有者等に通知するが,当該物件 の所有者等が限界耐力計算等による安全性の検証をした構造計算書の提出に応じない場合等にあっては,特定行政庁は,その所有者等に対して同法9条に基づく違反是正命令を行うものとされていること(乙6の2),③ 三鷹市長は,国土交通省から,本件建物の耐震性に疑義があるとの情報の提供を受けたことから,本件建物に対する調査を開始し,特定行政庁として,Bに対し,建築基準法12条5項に基づき,本件建物の構造計算の再計算による検証とその報告を求 建物の耐震性に疑義があるとの情報の提供を受けたことから,本件建物に対する調査を開始し,特定行政庁として,Bに対し,建築基準法12条5項に基づき,本件建物の構造計算の再計算による検証とその報告を求めるなどして本件各文書を取得したことが認められる。 以上の事実に加え,建築基準法12条5項に基づく報告をせず,又は虚偽の報告をした者や同条6項の規定による検査又は試験を拒み,妨げ又は忌避した者に対する罰則規定(同法102条4号,5号)もあることに照らすと,違法行為又は違法行為の疑義に関する情報の提供があった建築物に対する特定行政庁の上記調査は,国民の生命,健康及び財産の保護を図り,もって公共の福祉の増進に資することを目的として,建築物の敷地,構造,設備及び用途に関する最低基準を定めた建築基準法(同法1条参照)に違反する疑いのある建築物を対象として,建築基準法により罰則によって間接的に強制されている同法12条5項の報告徴収や同条6項の建築物への立入検査等により行われるものであるから,当該建築物の所有者等が上記調査のために同条5項の報告を拒むなどした場合には,そのこと自体によって,その社会的信用が大きく失墜することは容易に予想することができるところ,そのような信用失墜の危険に加え,上記罰則が適用される危険すら顧みず,飽くまで同条5項の報告等を拒む者が現れることは直ちに想定し難いというべきである。 そうであるとすれば,上記調査のために取得した同項に基づく報告である本件各情報を公開したとしても,以後,同項に基づく報告を求められた相手方があくまでこれを拒否するおそれは具体的に認められず,まして,同項に基づく報告を拒否する者が多数現れることは到底認め難い。 次にDとの関係についてみると,上記①及び②の事実並びに上記ウ②で説 示したところに それは具体的に認められず,まして,同項に基づく報告を拒否する者が多数現れることは到底認め難い。 次にDとの関係についてみると,上記①及び②の事実並びに上記ウ②で説 示したところに鑑みれば,本件各情報を公開したとしても,以後,Dが特定行政庁の上記調査に対する協力(具体的にはDが設置した是正支援委員会の助言)を拒否するおそれは具体的に認められない。 以上によれば,本件各情報が事業執行情報(本件条例8条1項4号エ)に該当するとはいうことはできず,被告の上記主張を採用することはできない。 (5) 上記(1)~(4)に説示したところに鑑みれば,本件公開請求については,処分行政庁において,本件各情報が非公開情報に該当するかどうかを部分開示の可否を含めて慎重に検討すべきであり,仮に本件各情報が非公開情報に該当するとしても,本件条例8条1項は同項の適用がある市政情報につき実施機関の公開義務(本件条例5条1項)を免除するものにすぎないと解されるから,本件各情報が本件建物の耐震性を判断する基礎資料であること等に照らすと,処分行政庁の裁量により本件各情報の公開をすることの当否をも併せて検討すべきである。 4 結語よって,前記2において説示したとおり,原告の請求は理由があるから認容することとし,訴訟費用の負担について行政事件訴訟法7条,民事訴訟法61条を適用して,主文のとおり判決する。 東京地方裁判所民事第2部 裁判長裁判官川神裕 裁判官林史高 裁判官菅野昌彦 (別紙1)文書目録東京都三鷹市α×番27所在のAの耐震性調査に関する資料 1 不整合箇所をまとめた確定図面 2 不整合箇所数をまとめた書面 3 再計算を行った 昌彦 (別紙1)文書目録東京都三鷹市α×番27所在のAの耐震性調査に関する資料 1 不整合箇所をまとめた確定図面 2 不整合箇所数をまとめた書面 3 再計算を行った構造計算書(検討段階のものを含む。) (別紙2)本件条例の定め 1 趣旨(1条)この条例は,何人にも市政情報の公開を求める権利を保障するとともに,情報公開の総合的推進に関し必要な事項を定めるものとする。 2 定義(2条)この条例において,次の各号に掲げる用語の意義は,当該各号に定めるところによる。 1号実施機関市長,教育委員会,選挙管理委員会,監査委員,公平委員会,農業委員会,固定資産評価審査委員会及び議会をいう。 2号市政情報実施機関の職員が職務上作成し,又は取得した文書,図画,写真,フィルム及び電磁的記録(電子的方式,磁気的方式その他人の知覚によっては認識することができない方式で記録されたものをいう。以下同じ。)であって,当該実施機関の職員が組織的に用いるものとして,当該実施機関が保有しているものをいう。 3号市政情報の公開実施機関が次章に定めるところにより,市政情報を閲覧若しくは視聴に供し,又はその写しを交付することをいう。 3 実施機関の責務(3条)1項実施機関は,市政情報の公開を求める権利が適正に保障されるようにこの条例を解釈し,運用するとともに,市政情報の適切な管理体制の整備及び検索体制の確立に努めなければならない。 2項実施機関は,この条例の解釈及び運用に当たっては,個人に関する情報であって,特定の個人が識別され,又は識別され得るもののうち,一般に他人に知られたくないと望むことが正当であると認められるものをみだりに公にすることのないように最大限 に当たっては,個人に関する情報であって,特定の個人が識別され,又は識別され得るもののうち,一般に他人に知られたくないと望むことが正当であると認められるものをみだりに公にすることのないように最大限の配慮をしなければならない。 4 公開請求(5条1項) 何人も,実施機関に対して,市政情報の公開の請求(以下「公開請求」という。)をすることができる。 5 公開請求に対する決定等(6条)1項実施機関は,公開請求があったときは,速やかに(相当の理由がある場合にあっては,当該請求があった日から起算して15日以内に)当該請求に係る市政情報の公開をするかどうかの決定(以下「公開決定等」という。)をしなければならない。ただし,前条第3項の規定により補正を求めた場合にあっては,当該補正に要した日数は,当該期間に算入しない。 2項実施機関は,前項に規定する期間内に公開決定等をすることができないことにつき正当な理由があるときは,公開請求があった日から起算して60日を限度として,その期間を延長することができる。この場合において,実施機関は,速やかに延長の理由及び決定をすることができる時期を請求者に通知しなければならない。 3項実施機関は,公開決定等をしたときは,速やかに当該決定の内容を請求者に対して,書面により通知しなければならない。 4項実施機関は,第1項の規定により市政情報の公開をしない旨の決定をするとき(8条2項の規定により市政情報の一部を公開しない旨の決定をするとき,8条の2第1項の規定により公開請求を拒否するとき,及び公開請求に係る市政情報を保有していないときを含む。以下「非公開決定」という。)は,前項の規定による通知書にその理由を記載しなければならない。 この場合において,非公開決定した市政情報が るとき,及び公開請求に係る市政情報を保有していないときを含む。以下「非公開決定」という。)は,前項の規定による通知書にその理由を記載しなければならない。 この場合において,非公開決定した市政情報が,期間の経過により8条1項各号に掲げる情報に該当しなくなることが明らかであるときは,その期日を記載しなければならない。 6 第三者に対する意見書提出の機会の付与等(6条の2)1項公開請求に係る市政情報に,国,他の地方公共団体及び請求者以外の者(以下この条,10条の2及び10条の3において「第三者」という。)に 関する情報が含まれているときは,実施機関は,公開決定等をするに当たって,当該情報に係る第三者に対し,公開請求がなされた事実その他の事項を通知して,意見書を提出する機会を与えることができる。 2項実施機関は,前項の規定により意見書の提出の機会を与えられた第三者が当該市政情報の公開に反対の意思を表示した意見書を提出した場合において,公開をする旨の決定をするときは,当該決定の日と公開を実施する日との間に少なくとも2週間を置かなければならない。この場合において,実施機関は,公開の決定後直ちに当該意見書(10条及び10条の2において「反対意見書」という。)を提出した第三者に対し,公開の決定をした旨及びその理由並びに公開を実施する日を書面により通知しなければならない。 7 公開しないことができる市政情報(8条)1項実施機関は,次の各号のいずれかに該当する情報が記録されている市政情報については,市政情報の公開をしないことができる。 1号法令の定めるところにより,明らかに公開することができないと認められる情報3号法人その他の団体(国及び地方公共団体を除く。以下「法人等」という。)に関する情報又 ができる。 1号法令の定めるところにより,明らかに公開することができないと認められる情報3号法人その他の団体(国及び地方公共団体を除く。以下「法人等」という。)に関する情報又は事業を営む個人の当該事業に関する情報であって,公開することにより,当該法人等又は当該事業を営む個人の競争上又は事業活動上の地位その他正当な利益を著しく害すると認められるもの。ただし,次に掲げる情報を除く。 (ア) 事業活動によって生じ,又は生じるおそれがある危害から人の生命,身体及び健康を保護するために,公開することが公益上必要であると認められる情報(3号ア)(イ) 違法若しくは不当な事業活動によって生じ,又は生じるおそれがある支障から人の生活を保護するために,公開することが公益上必要であると認められる情報(3号イ) (ウ) (ア)又は(イ)に掲げる情報に準じる情報であって,公開することが公益上特に必要であると認められる情報(3号ウ)4号市政運営に関する情報であって,次に掲げるもの(ア) 市と国,他の地方公共団体又は公共的団体(以下「国等」という。)との間における協議,依頼,委任等により実施機関が作成し,又は取得した情報であって,公開することにより,市と国等との協力関係が著しく損なわれるおそれのあるもの(4号ア)(イ) 工事等の起工書,用地の買収計画,交渉の方針,争訟の処理方針,監査又は検査の計画その他実施機関が行う事務事業に関する情報であって,公開することにより,当該事務事業の目的が著しく損なわれるおそれのあるもの,特定のものに不当な利益又は不利益が生じるおそれのあるもの,関係当事者間の信頼関係が著しく損なわれるおそれのあるものその他当該事務事業又は将来の同種の事務 の目的が著しく損なわれるおそれのあるもの,特定のものに不当な利益又は不利益が生じるおそれのあるもの,関係当事者間の信頼関係が著しく損なわれるおそれのあるものその他当該事務事業又は将来の同種の事務事業の公正又は適正な執行が著しく妨げられるおそれのあるもの(4号エ)2項実施機関は,市政情報が前項各号のいずれかに該当する部分とその他の部分とからなる場合において,これらの部分を容易に,かつ,請求の趣旨を損なわない程度に合理的に分離できるときは,同項各号のいずれかに該当する部分を除いて,市政情報の公開をしなければならない。
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