令和6年(わ)第170号、同第211号殺人、銃砲刀剣類所持等取締法違反被告事件令和7年12月5日宮崎地方裁判所刑事部宣告 主文 被告人を懲役28年に処する。 未決勾留日数中320日をその刑に算入する。 訴訟費用は被告人の負担とする。 理由 (罪となるべき事実)第1 被告人は、法定の除外事由がないのに、令和6年9月9日午後3時27分頃から同日午後3時28分頃までの間に、多数の者の用に供される場所である宮崎市(住所省略)指定暴力団A組B会事務所敷地内において、殺意をもって、多数の者の用に供される場所である同事務所内にいた同会幹事長C(当時52歳)に対し、回転弾倉式拳銃2丁を用いて弾丸5発を発射し、そのうち弾丸2発をCの胸部及び臀部に命中させ、よって、同日、同所において、Cを出血性ショックにより死亡させて殺害した。 第2 被告人は、法定の除外事由がないのに、令和6年9月9日午後3時27分頃、前記B会事務所敷地内において、回転弾倉式拳銃2丁を、それぞれに適合する実包7個と共に携帯して所持した。 (証拠の標目)省略(証拠能力に関する判断)当裁判所が採用したDの検察官調書(甲74)について、弁護人は、伝聞例外の要件該当性を争っている。しかし、検察官が提出した資料によれば、捜査機関は、相当期間にわたりDの関係先の現地確認を含む所要の捜査を実施したものの、その所在が確認できなかったことが認められる。また、当裁判所は、Dが所在する可能 性が高い2か所において、2日にわたり、証人として採用したDに対する勾引状の執行を試みたが、Dの発見には至らなかった。このような所在捜査の経過等に照らせば、Dの所在を把握するために相当な手段を尽くしてもなおその所 において、2日にわたり、証人として採用したDに対する勾引状の執行を試みたが、Dの発見には至らなかった。このような所在捜査の経過等に照らせば、Dの所在を把握するために相当な手段を尽くしてもなおその所在が判明しなかったと認められ、Dが「所在不明」のため公判期日において供述することができないとき(刑訴法321条1項2号前段)に当たる。 弁護人は、Dが証言拒絶の要件を満たさないのに出廷を拒んでいることを踏まえ、このような場合には「所在不明」に当たらないと解すべきであるなどと主張するが、刑訴法の文言等から導き得ない要件を前提とするものであり、採用することができない。 そこで、当裁判所は、弁護人の意見を踏まえ、取調べの必要性を認めた部分について、刑訴法321条1項2号前段該当書面としてDの検察官調書(甲74)を採用したものである。 (拳銃発射罪の成否について) 1 争点争点は、被告人が拳銃を発射した場所及び発射対象が、「多数の者の用に供される場所」に当たるといえるかである。 2 検討⑴ 現場の状況に関する統合捜査報告書によれば、B会事務所は、暴力団事務所であり、事務所内には、事務室、応接室、和室等があり、事務室には複数の大型のソファ等が、応接室には9個の一人掛けのソファ等が、和室には座椅子1個と座布団計14枚等があることが認められる。台所の食器棚には、多数の食器類が収納されており、勝手口付近の靴棚には、「来客」「会長」「理事長」等と記載されたシールが貼られていることも認められる。 また、E警察官及びF警察官の証言、B会会長であったDの供述等によれば、本件当時、B会事務所には15名程度のB会組員が出入りしており、ふだんから、1名から3名程度の組員が交替で「当番」として所在していたほか、月に1回、組員 が集まる定例会 ったDの供述等によれば、本件当時、B会事務所には15名程度のB会組員が出入りしており、ふだんから、1名から3名程度の組員が交替で「当番」として所在していたほか、月に1回、組員 が集まる定例会が開かれていたことが認められる。 これらの事実によれば、本件当時、B会事務所は、月に1回、15名程度の組員が集まって会合を行うことを想定した設備等があり、現にそのような利用がされる状態にあったといえる。また、B会事務所は、それ以外の日にも、組員が持ち回りで「当番」として所在し、これら組員により日常的に利用されていたといえる。弁護人は、本件当時、B会は抗争中であり、人が集まるのを避けていたと考えられると主張するが、実際に集まりを避けていたことをうかがわせる証拠はなく、B会事務所がこうした利用がされる状態にある場所といえることに変わりはない。市道からB会事務所に至る通り道等となっているB会事務所の敷地も、同様の利用がされる状態にある場所といえる。 ⑵ そして、15名という人数は、社会常識に照らしても「多数」といってよい。 弁護人は、B会事務所は「道路、公園、駅、劇場、百貨店」といった法律が列挙する場所と同様の場所とはいえないと主張するが、これらの場所はあくまで例示であるから、「多数の者の用に供される場所」というために、例示された場所と同視できることまでは要求されない。確かに、「多数の者の用に供される場所」というためには、「不特定の者の用に供される場所」と同視できることは必要であるが、そのような場所の中には、利用者が比較的少ない場所も存在する。そして、15名程度の者が前記⑴のように利用する場所であれば、「不特定の者の用に供される場所」のうち利用者が比較的少ない場所と同視できる。 ⑶ したがって、被告人が拳銃を発射した場所であるB会事務所敷地や 5名程度の者が前記⑴のように利用する場所であれば、「不特定の者の用に供される場所」のうち利用者が比較的少ない場所と同視できる。 ⑶ したがって、被告人が拳銃を発射した場所であるB会事務所敷地や発射対象であるB会事務所は、「多数の者の用に供される場所」に当たるといえる。 (法令の適用)省略(量刑の理由) 1 本件犯行は、殺傷能力の高い拳銃2丁を実包と共に用意した上、作業着等を着たり、段ボール箱を持ったりして配達員になりすまして、暴力団事務所のインタ ーフォンを押し、出てきた組員である被害者に対し、いきなり至近距離から段ボール箱越しに上半身に向けて1発の弾丸を発射し、さらに、被害者がいる事務所の勝手口や玄関のドアに向けて4発の弾丸を発射した、というものである。犯行の際の被告人の行動をみると、2発目以降について強い殺意までは認められず、追い打ちをかけるように犯行を続けたとはいえないが、1発目の犯行態様は、極めて危険なものであり、強い殺意が認められる。また、配達員になりすますなどして襲撃を成功させる可能性をかなり高めた、計画的犯行である。 証拠上、被告人の所属組織による指示や支援があったかは不明であるが、被告人に被害者に対する個人的な恨み等は認められないから、本件犯行は、暴力団抗争を背景とした動機によるものと認められる。このような反社会的な動機に基づく犯行は、到底容認することができない。また、本件犯行は住宅街にある事務所で行われており、周辺住民に大きな不安を与えるものである。 これらの事情を前提に、検察官や弁護人が提示する検索条件による、銃器類を使った殺人事件の量刑傾向を踏まえて検討すると、有期刑の上限付近から無期刑の幅の中で刑を定めるべきである。 2 そこで、そのほかの事情も検討すると、被告人は、2000万円を 索条件による、銃器類を使った殺人事件の量刑傾向を踏まえて検討すると、有期刑の上限付近から無期刑の幅の中で刑を定めるべきである。 2 そこで、そのほかの事情も検討すると、被告人は、2000万円を支払って遺族と示談し、遺族は寛大な処分を求めている。このように、遺族の気持ちが多少なりとも和らいだといえることは、相応に有利に考慮すべきである。そのほか、被告人に反省の態度がみられない一方で、被告人が現場にとどまり直ちに捕まったことで犯人の確保は容易になった面があることも踏まえると、被告人に対しては、主文の刑を科すのが相当である。 (求刑-懲役30年、弁護人の科刑意見-懲役20年)令和7年12月8日宮崎地方裁判所刑事部裁判長裁判官設樂大輔 裁判官古川翔 裁判官寺島大貴
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