- 1 -主文本件控訴を棄却する。 控訴費用は控訴人の負担とする。 事実及び理由 第1控訴人の求めた裁判 原判決を取り消す。 大阪市α区長は,控訴人の外国人登録原票の居住地の記載及び外国人登録証明書の居住地の記載を以下のとおり変更せよ。 移転年月日平成20年6月15日変更前の居住地大阪市β×番3-×号変更後の居住地大阪市γ×番22-×号 控訴人が法定代理人を通じて平成20年6月20日付けでした外国人登録原票の居住地変更の登録申請及び外国人登録証明書の居住地の記載の変更申請に対し,大阪市α区長がこれを受理せず,拒絶したことが無効であることを確認する。 被控訴人は控訴人に対し,10万円及びこれに対する平成20年9月4日から支払済みまで年5分の割合による金銭を支払え。 第2事案の概要 経過等控訴人は大韓民国の国籍を有する者であるが,先天的に知的障害があり,Aが成年後見人に選任されている。 Aは,平成20年6月20日,控訴人を代理して,大阪市α区長に対し,外国人登録法(以下「法」という)8条2項に基づき,控訴人の外国人登録原票及び外。 (),国人登録証明書の居住地の記載の変更を求めたが内容は前記第1の2のとおり控訴人と同居していないAは代理申請できる者に当たらないとして同申請の受理を- 2 -拒絶された(本件却下。 )控訴人は被控訴人に対し,本件却下は違法・無効であると主張し,外国人登録原票及び外国人登録証明書の居住地の記載の変更の義務付け,外国人登録原票及び外国人登録証明書の居住地の記載変更申請拒絶の無効確認並びに外国人登録原票の居住地の記載の変更申請拒絶による精神的苦痛に対する国家賠償法1条1項に基づく慰謝料の支払を請求した。 原判決は,法8条2項に基づき申請により外国人登録原票の変更登録をすること及 に外国人登録原票の居住地の記載の変更申請拒絶による精神的苦痛に対する国家賠償法1条1項に基づく慰謝料の支払を請求した。 原判決は,法8条2項に基づき申請により外国人登録原票の変更登録をすること及び同申請の受理を拒絶する行為は行政庁の処分に該当し,同申請は「法令に基づく申請」に該当すると判断しつつ,控訴人本人と同居していないAには代理申請権,,はないと判断し外国人登録原票の居住地の記載の変更の義務付けを求める訴えは法令に基づく申請を却下した処分が取り消されるべきものとも無効であるともいえないから不適法であるとして却下し,本件却下の無効確認請求,慰謝料請求は理由がないとして棄却した。また,外国人登録証明書にかかる居住地の記載の変更の義務付けを求める訴え,申請拒絶の無効確認を求める訴えは不適法であるとして却下した。 控訴人は,外国人登録証明書にかかる居住地の記載の変更の義務付けを求める訴え,外国人登録証明書の申請拒絶の無効確認を求める訴えを却下した部分に対しては控訴せず,①外国人登録原票の居住地の記載の変更の義務付けを求める訴え,②外国人登録原票の居住地の記載の変更申請拒絶の無効確認請求,③外国人登録原票の居住地の記載の変更申請拒絶による精神的苦痛に対する慰謝料請求につき,控訴を提起した。 前提事実等原判決「事実及び理由」中の第2の1及び2に記載のとおりである。 争点及び当事者の主張- 3 -( )当審における争点は,法15条2項が本人と同居していない成年後見人に よる代理申請を認めているか否かでありこれに関する当事者の主張は原判決事,,「実及び理由」中の第2の4( )に記載のとおりである。 ( )控訴の理由は,原審の主張を繰り返して原判決を論難するものであり,そ の概要は次のとおりである。 ア法15条2項 決事,,「実及び理由」中の第2の4( )に記載のとおりである。 ( )控訴の理由は,原審の主張を繰り返して原判決を論難するものであり,そ の概要は次のとおりである。 ア法15条2項は,本人と同居していない成年後見人による代理申請を認めているものと解すべきである。仮にそのように解せないとしても,戸籍法31条又は民法697条(事務管理)の準用又は類推適用により,本人と同居していない成年後見人による代理申請が認められると解すべきである。 成年後見人は,包括的代理権を有する法定代理人であって,その代理権の範囲は広範に及び,外国人登録法が改正されていないことは法の不備にすぎず,成年後見人の代理権の範囲を限定解釈すべきではない。 法15条が本人出頭を求める唯一の目的は正確性の担保にある。しかし,控訴人本人は,単独での出頭ができず,出頭する場合には必ず介添え・援助が必要になる上,出頭しても公証内容であるべき「前住所地・現住所地・移転日」などは説明できないから,正確性の担保には何の意味もない。 イ日本国民であれば,住居に変更が生じた場合,住民基本台帳法の規定(同法27条3項)により,成年後見人による転出及び転入の届出をすることができると,,解されるところ外国人については成年後見人による代理申請ができないとなれば国籍及び人種による差別を禁止した憲法14条に反する。 ,。 ウ控訴人は重度の知的障害者であり人前で発作的な奇声を発する習性があるかかる控訴人に対して自ら区役所に出頭するよう強制することは「みせしめ」的行為であり,憲法11条及び13条に反する。 第3 判断 当裁判所も,法15条2項は,本人と同居していない成年後見人による代理- 4 -申請を認めていると解することはできず,同項所定に係る控訴人の親族でもなく同居者でもないA に反する。 第3 判断 当裁判所も,法15条2項は,本人と同居していない成年後見人による代理- 4 -申請を認めていると解することはできず,同項所定に係る控訴人の親族でもなく同居者でもないAについては,成年後見人の資格による代理申請を認められていないと判断する。その理由は,次の2以下に補足するほかは,原判決「事実及び理由」中の第3の2( )の説示のとおりである。 法15条は,法所定の申請等について,当該外国人自らが出頭することを要求し(1項,本人が16歳に満たない場合又は疾病その他身体の故障により自ら)申請できない場合に限り明示的に列挙した者について代理申請者を認めている2,(項。これは,本邦に在留する外国人の居住関係及び身分関係を明確ならしめ、も)って在留外国人の公正な管理に資するため(法1条,戸籍制度等のない外国人の)住居等を正確に把握する必要から,本人又は本人の事情を正確に把握しているであろう同居者の出頭を要求して申請等の内容の正確性を担保しようとしたものである。上記限定列挙された代理申請者には,親族でなく同居者でもない者は含まれておらず,親族でなく同居者でもないAは,法15条2項所定の代理申請者に該当しない。 控訴人(代理人A)は,当該本人の成年後見人であることを根拠に,Aは代理申請ができる者に該当すると主張するが,法15条2項が本人申請の例外として代理申請を認める趣旨は,行為無能力者制度とは別次元のもので(本人が16歳以上であれば原則として代理申請の要件を欠くのもこのことを裏付ける,行為無能力。)者制度に基礎を置く成年後見人だからといって,直ちに同条項のこの趣旨に合致する者に該当するものではなく,法15条2項の上記趣旨に照らしてそこに規定する者に該当するかが判断される必要がある。したがって,成年後見 礎を置く成年後見人だからといって,直ちに同条項のこの趣旨に合致する者に該当するものではなく,法15条2項の上記趣旨に照らしてそこに規定する者に該当するかが判断される必要がある。したがって,成年後見人であることだけ,。 からAについて法15条2項の代理申請者に該当するものとすることはできない控訴人本人が,仮に主張されるとおり前住所地・現住所地・移転日などをその口から説明できないとしても,本人の出頭自体が,戸籍制度等のない外国人の公正な管理に資するものである。 - 5 -戸籍法31条又は民法697条(事務管理)の準用又は類推適用で同居していない成年後見人の代理申請を認めるべきとの主張も,本人申請を原則とし,代理人申請者を所定の者と定めた法15条の趣旨に沿うものでなく,採用することはできない。 憲法14条違反の主張,憲法11条ないし13条違反の主張がいずれも理由がないことは,原判決説示(11頁3行目から22行目まで)のとおりである。 控訴人は,平成14年9月10日及び同16年6月22日の2回にわたり,α区内で転居している(甲6)ところ,その際はB学園の担当者がα区役所に出頭して控訴人の居住地変更登録の申請をしており,控訴人本人は出頭していないが申請は拒絶されていないとして,養護施設職員が出頭した場合には申請を認め,法定代理人である成年後見人が出頭した場合には申請を認めないとの対応は場当たり的なものであるとか,法15条2項を厳格に解することは実際には柔軟に運用されている実務との乖離が生じると主張する。しかし,同居要件についての解釈問題あるいは法10条の2による職権登録変更があり得るのは別として,これらの主張はいずれも前記判断を左右するものではない。 第4 結論 よって,原判決は相当であり,本件控訴は理由がないから,主文のとおり判決す は法10条の2による職権登録変更があり得るのは別として,これらの主張はいずれも前記判断を左右するものではない。 主文 よって,原判決は相当であり,本件控訴は理由がないから,主文のとおり判決する。 理由 大阪高等裁判所第11民事部裁判長裁判官塩月秀平 裁判官菊池徹 裁判官鈴木陽一郎
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