- 1 - 主文 1 被告は,原告Aに対し,100万円及びこれに対する平成26年12月25日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 2 被告は,原告Bに対し11万円,原告Cに対し17万円,原告Dに対し7万円,原告Eに対し5万円,原告Fに対し9万円,原告Gに対し7万円,原告Hに対し24万円,原告Iに対し5万円,原告Lに対し7万円,原告Mに対し11万円,原告Nに対し8万円,原告Oに対し8万円,原告Pに対し8万円,原告Qに対し9万円,原告Rに対し6万円,原告Sに対し10万円,原告Uに対し14万円,原告Vに対し5万円,原告Wに対し2万円及び原告Xに対し2万円並びにこれらに対するいずれも平成26年12月25日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 3 原告B,原告C,原告D,原告E,原告F,原告G,原告H,原告I,原告L,原告M,原告N,原告O,原告P,原告Q,原告R,原告S,原告U,原告V,原告W及び原告Xのその余の請求並びに原告J,原告K及び原告Tの請求をいずれも棄却する。 4 訴訟費用は,これを3分し,その2を原告Aを除く原告らの負担とし,その余を被告の負担とする。 事実及び理由 第1 請求 1 被告は,原告Aに対し,100万円及びこれに対する平成26年12月25日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 2 被告は,原告Aを除く原告らに対し,それぞれ30万円及びこれらに対する平成26年12月25日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 3 訴訟費用は被告の負担とする。 4 第1,2項につき,仮執行宣言 - 2 -第2 事案の概要原告Aは,被告が管理運営する刑事施設である東京拘置所に収容されている死刑確定者であり,その余の原告ら(以下「原告弁護士ら」という。) 項につき,仮執行宣言 - 2 -第2 事案の概要原告Aは,被告が管理運営する刑事施設である東京拘置所に収容されている死刑確定者であり,その余の原告ら(以下「原告弁護士ら」という。)は,いずれも弁護士である。 本件は,原告らが,原告Aと原告弁護士らとの再審請求ないし国家賠償請求訴訟(以下「国賠訴訟」という。)等の準備を目的とする別紙面会状況表記載の平成21年6月26日から平成26年1月22日までの計253回の各面会(以下「本件各面会」という。以下,同表記載の各面会について,同表記載の番号に従い,「本件面会1」のようにいう。ただし,156及び162は面会が実施されておらず,254のYは本件訴訟の原告となっていないので,欠番とする。)について,拘置所の職員の立会いのない面会(以下「秘密面会」という。)を許さず,また,面会時間を30分に制限した東京拘置所長の措置(以下,併せて「本件各措置」という。)が違法であると主張して,被告に対し,国家賠償法(以下「国賠法」という。)1条1項に基づき,慰謝料として,原告Aは100万円,原告弁護士らはそれぞれ30万円及びこれらに対する訴状送達の日の翌日である平成26年12月25日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による各遅延損害金の支払を求める事案である。 1 前提事実等(当事者間に争いがないか,後掲各証拠及び弁論の全趣旨によって容易に認定できる事実)(1) 当事者ア原告Aは,殺人罪等により起訴され,一審,控訴審,上告審とも無罪を主張していたが,後記(2)記載の経過を経て,現在は死刑確定者として東京拘置所に収容されている者である。 イ原告弁護士らのうち,原告B,原告C,原告D及び原告Eは,上記刑事事件の一審から上告審まで継続して原告Aの弁護を担当していた弁護人であり 死刑確定者として東京拘置所に収容されている者である。 イ原告弁護士らのうち,原告B,原告C,原告D及び原告Eは,上記刑事事件の一審から上告審まで継続して原告Aの弁護を担当していた弁護人であり,原告Fは,上告審から加わった弁護人である(以下,この5名の原 - 3 -告弁護士らを併せて「原告弁護士ら5名」という。)。原告Gは,原告Aの死刑判決が確定した後から,原告Aの弁護活動に加わった者(以下,原告弁護士ら5名と原告Gを併せて「原告弁護士ら6名」という。)である(乙4,5)。 原告弁護士らは,本件各面会当時,いずれも,原告Aの死刑判決に対する再審請求又は再審請求を棄却する決定に対する即時抗告(以下,再審請求と併せて「再審請求等」という。)のために選任された弁護人(以下「再審請求弁護人」という。)又はこの弁護人となろうとする者(以下,再審請求弁護人と併せて「再審請求弁護人等」という。)であった(甲2,18,乙1,6,弁論の全趣旨)。 (2) 原告Aに対する死刑判決の確定等アさいたま地方裁判所は,平成14年10月1日,原告Aについて,殺人罪等により死刑判決(以下「本件死刑判決」という。)を言い渡した。原告Aは控訴したが棄却され,その後上告したが,平成20年7月17日,最高裁判所は上告棄却決定をし,同年8月7日,本件死刑判決が確定した(乙4,5)。 イ原告Aは,平成15年1月8日,川越少年刑務所さいたま拘置支所から東京拘置所に控訴被告人として入所し,未決拘禁者として収容されていたが,本件死刑判決の確定を受け,平成20年8月27日,東京拘置所の職員から,本件死刑判決が確定した旨の告知を受け,以降,死刑確定者としての処遇を受けている(乙4,5)。 (3) 本件死刑判決に対する再審請求等ア原告Aは,平成21年1月19日 東京拘置所の職員から,本件死刑判決が確定した旨の告知を受け,以降,死刑確定者としての処遇を受けている(乙4,5)。 (3) 本件死刑判決に対する再審請求等ア原告Aは,平成21年1月19日,原告弁護士ら6名を再審請求弁護人に選任し(甲2),同月30日,さいたま地方裁判所に本件死刑判決に対する再審請求(以下「本件再審請求」という。)をした(甲3)。 イさいたま地方裁判所は,平成22年3月18日,本件再審請求を棄却す - 4 -る決定をし,原告Aは,同月23日,同決定に対して即時抗告(以下,本件再審請求と併せて「本件再審請求等」という。)をした(甲17,乙4,5)。 ウ本件再審請求等の抗告審である東京高等裁判所は,平成27年7月31日,上記即時抗告を棄却する決定をした(甲19)。 (4) 別件国賠訴訟の提起等ア原告A及び原告弁護士ら6名は,平成21年2月3日,原告Aと原告弁護士ら6名との本件再審請求及び後記別件国賠訴訟のいずれか一方又は双方の準備を目的とする平成20年9月1日から平成21年6月18日までの計32回の各面会について,秘密面会を許さず,また,面会時間を30分に制限した東京拘置所長の措置が違憲,違法であるなどと主張して,いずれも原告本人として,被告に対し,国賠法1条1項に基づく損害賠償を求める訴訟(平成21年(ワ)第291号。後に訴えの変更がされた。以下「別件国賠訴訟」という。)をさいたま地方裁判所に提起し,同訴状は,同年2月18日に法務省の担当部局に到達した(乙4,5)。 なお,原告Aは,別件国賠訴訟において,原告弁護士ら6名のほか,原告H,原告I,原告J,原告K,原告L,原告M,原告N,原告O,原告P,原告Q,原告Rを訴訟代理人弁護士に,原告Sを訴訟復代理人弁護士に,それぞれ選任していた(乙4,5 ,原告弁護士ら6名のほか,原告H,原告I,原告J,原告K,原告L,原告M,原告N,原告O,原告P,原告Q,原告Rを訴訟代理人弁護士に,原告Sを訴訟復代理人弁護士に,それぞれ選任していた(乙4,5)。 イさいたま地方裁判所は,平成25年11月27日,別件国賠訴訟について,原告A及び原告弁護士ら6名の請求をいずれも棄却する旨の判決をし,原告A及び原告弁護士ら6名は,同判決に対して控訴した(乙4,5)。 ウ別件国賠訴訟の控訴審である東京高等裁判所は,平成26年9月10日,原判決を変更して原告A及び原告弁護士ら6名の請求を一部認容する判決をした(乙4)。 - 5 -(5) 本件各面会及び本件各措置ア原告弁護士らは,平成21年6月26日から平成26年1月22日までの間,東京拘置所において,所定の面会申出書に記載する方法で原告Aとの面会を申し出て,別紙面会状況表記載のとおり,原告Aと面会した(本件各面会)。 イ原告弁護士らは,本件各面会を申し出るに当たり,別紙面会状況表の「面会申出書の面会目的」「再審打合せ」欄に「○」が記載されている各面会については,面会申出書の「面会の目的」及び「受刑者等との面会を申し込む親族以外の方の面会目的」欄(以下,両者を併せて「面会目的欄」という。)に「再審打合せ」と記載するなど,面会目的欄において同面会の目的が再審請求に向けた打合せであることが容易に推察される記載をし,同表「面会申出書の面会目的」「国賠打合せ」欄に「○」が記載されている各面会については,面会目的欄に「国賠打合せ」と記載するなど,同欄において同面会の目的が国賠訴訟に向けた打合せであることが容易に推察される記載をしたが,同表「面会申出書の面会目的」の各欄に「○」が記載されていない各面会については,「面会の目的」欄の「裁判 ,同欄において同面会の目的が国賠訴訟に向けた打合せであることが容易に推察される記載をしたが,同表「面会申出書の面会目的」の各欄に「○」が記載されていない各面会については,「面会の目的」欄の「裁判」に丸を付けるなどしたにとどまり,上記のような具体的記載をしなかった。 ウ東京拘置所長は,本件各面会のうち,別紙面会状況表の「立会」欄に「有」と記載されている面会については秘密面会を許さず,また,本件各面会のいずれについても面会時間を30分に制限した(本件各措置)。 (以上につき,乙1,6) 2 争点及びこれに関する当事者の主張(1) 秘密面会を許さない東京拘置所長の措置の違法性等(ただし,後記(3)の点を除く。)(原告らの主張) - 6 -ア東京拘置所長における面会目的の認定及び判断時点(ア) 面会目的の認定面会の目的は,原告弁護士らが記入した面会申出書の面会目的欄の記載のみならず,面会申出者の「関係」及び「職業」欄の記載のほか,従前の交渉経緯や面会内容,信書の内容等の事情を踏まえて認定されるべきである。 この点,再審請求弁護人が死刑確定者との面会を申し込む場合,死刑確定者の最大の関心事は再審請求にあるから,死刑確定者の面会目的には,再審請求の打合せが含まれており,これに対応して再審請求弁護人の面会目的にも再審請求の打合せが含まれるから,面会申出書の面会目的欄に「再審請求の打合せ」などと明記されていなくとも,再審請求弁護人からの面会申出があれば,その面会目的には再審請求に向けた打合せが含まれていると解すべきである。 実際にも,面会申出書の面会目的欄には「裁判打合わせ」としか記載されていないにもかかわらず,面会表の「出願要旨」欄には「再審の件」と記載されているなど,面会申出書の面会目的欄と面会表の「出願 。 実際にも,面会申出書の面会目的欄には「裁判打合わせ」としか記載されていないにもかかわらず,面会表の「出願要旨」欄には「再審の件」と記載されているなど,面会申出書の面会目的欄と面会表の「出願要旨」欄の記載に不一致が多数みられること(例えば,平成21年7月21日の本件面会4。乙1の10頁参照)からすれば,被告が,面会目的欄の記載以外の事情,具体的には,面会申出書の「関係」欄及び「職業」欄の記載のほか,事前に原告弁護士らから送付された文書やそれまでの面会内容をも総合して判断していることは明らかである。 したがって,東京拘置所長は,本件各面会の目的には,いずれも,再審請求に向けた打合せを含むと認定し,これを前提に秘密面会を許すか否かを判断すべきであった。 (イ) 判断時点また,秘密面会を許すか否かの判断時点は面会開始時に限定されず, - 7 -面会の途中であっても,被告において秘密面会の保障が及ぶと判断すれば,その時点で立会いを中止するなど柔軟に対応することは可能であり,かつ,そのようにすべきであった。 拘置所の立会職員は,面会表作成のために逐一メモまで取って,面会時の会話の内容を正確に把握しているのであるから,会話の内容自体から面会目的を判断することは容易である。また,立会職員に秘密面会を許すか否かを判断する権限がないとしても,面会を一時中断させて,判断権者の指示を仰げばよいのであり,このような場合に面会を一時停止させたとしても,死刑確定者の権利利益を保護するために定められた刑事収容施設及び被収容者等の処遇に関する法律(以下「刑事収容施設法」という。)122条が準用する同法113条に違反することはない。 イ本件再審請求等に向けた打合せを目的とする面会について(ア) 国賠法上の違法性死刑確定者又は (以下「刑事収容施設法」という。)122条が準用する同法113条に違反することはない。 イ本件再審請求等に向けた打合せを目的とする面会について(ア) 国賠法上の違法性死刑確定者又は再審請求弁護人が再審請求に向けた打合せをするために秘密面会の申出をした場合に,これを許さない刑事施設の長の措置は,秘密面会により刑事施設の規律及び秩序を害する結果を生ずるおそれがあると認められ,又は死刑確定者の面会についての意向を踏まえその心情の安定を把握する必要性が高いと認められるなど特段の事情がない限り,裁量権の範囲を逸脱し又はこれを濫用して死刑確定者の秘密面会をする利益を侵害するだけではなく,再審請求弁護人の固有の秘密面会をする利益も侵害するものとして,国賠法1条1項の適用上違法となる(最高裁平成25年12月10日第三小法廷判決・民集67巻9号1761頁(以下「平成25年最判」という。))。 そして,平成25年最判は,死刑確定者の心情の安定の把握を理由に立会いを付することができるかどうかという特段の事情の有無を判断す - 8 -るに際して,死刑確定者に対して面会を実施し,その意向を確認することを義務付けているから,死刑確定者本人の意向の聴取が行われていなければ,上記特段の事情を検討するまでもなく,秘密面会を許さない東京拘置所長の措置は違法となる。 これを本件についてみると,被告は,原告Aから立会いに関する意向を聴取しておらず,この点をおくとしても,原告Aは早期の段階から立会いに対する強い不満を述べており,原告弁護士ら5名は秘密面会を求める旨の文書を送付していたことや,原告A及び原告弁護士ら6名は,接見交通権侵害を理由とする別件国賠訴訟を提起していたことに加え,再審請求に向けた打合せを目的とする場合,実質的な打合せのため 会を求める旨の文書を送付していたことや,原告A及び原告弁護士ら6名は,接見交通権侵害を理由とする別件国賠訴訟を提起していたことに加え,再審請求に向けた打合せを目的とする場合,実質的な打合せのために,秘密面会を求める意向であることが強く推定されることなどからすれば,原告A及び原告弁護士らは,両者間の面会のすべてについて秘密面会を求める意向を示していたといえ,被告もこのことを認識していた。 そして,原告Aは,本件死刑判決の確定直後から再審の開始に向けて,非常に安定した心情を維持し,自殺の危険を感じさせるような言動をしたことはないことからすると,上記特段の事情があるとは認められず,秘密面会を許さない東京拘置所長の措置は国賠法1条1項の適用上違法である。 (イ) 過失同措置につき,東京拘置所長に過失があることは明らかである。 ウ別件国賠訴訟に向けた打合せを目的とする面会について(ア) 別件国賠訴訟は,再審請求弁護人の秘密接見交通権に対する侵害行為を違法と認定させて排除するためのものであるから,再審請求の準備活動にほかならず,再審請求と一体として評価されるべきであるし,仮にそうでないとしても,秘密接見交通権の侵害を理由とする別件国賠訴訟の打合せにおいては,被侵害利益である秘密接見交通権の内容に言 - 9 -及せざるを得ず,これに立ち会うときには,必然的に過去の再審請求の打合せの内容を聴取することになるから,結局,再審請求の打合せに立ち会うことと変わらないのであって,平成25年最判が示した基準により判断されるべきである。 (イ) 仮に別件国賠訴訟に向けた打合せが過去の再審請求の打合せ内容を含まないとしても,平成25年最判が示した基準よりも緩やかに判断する必要はない。 すなわち,別件国賠訴訟の打合せを目的とする面会に拘置 仮に別件国賠訴訟に向けた打合せが過去の再審請求の打合せ内容を含まないとしても,平成25年最判が示した基準よりも緩やかに判断する必要はない。 すなわち,別件国賠訴訟の打合せを目的とする面会に拘置所の職員による立会いが付された場合,別件国賠訴訟において損害賠償請求の対象としている拘置所職員の面会への立会いが,まさにその場で実施されていることになるから,死刑確定者にとって強力な萎縮効果が生じるのであって,このことは,死刑確定者が,普段,拘置所の職員から厳重な監督を受け,その指示に従うように厳しく指導されており,その命に反するときには,懲罰などの不利益を受ける立場にあること(刑事収容施設法150条1項)からすれば,なおさらである。 また,別件国賠訴訟は,拘置所の職員の立会いを不法行為とする訴訟の打合せであるから,同訴訟の打合せに立ち会う職員は,その担当した事務を対象とする訴訟の内容を予め聴取することができることになり,死刑確定者の側からみれば,これから訴えようとしている又は訴えている相手に手の内をすべて明かすことになる。 したがって,秘密面会の侵害を理由とする別件国賠訴訟の打合せに向けた面会については,平成25年最判が示した基準と同様に,特段の事情がある場合を除き,拘置所の職員の立会いは許されないと解すべきである。 そして,本件において,特段の事情があるとは認められないのは上記イ(ア)のとおりであるから,別件国賠訴訟に向けた打合せを目的とす - 10 -る面会について,秘密面会を許さなかった東京拘置所長の措置は国賠法1条1項の適用上違法である。 (ウ) また,原告弁護士らにも,別件国賠訴訟の打合せのための面会について固有の秘密面会の利益があるから,上記措置は,原告弁護士らとの関係でも国賠法1条1項の適用上違法である。 すな 法である。 (ウ) また,原告弁護士らにも,別件国賠訴訟の打合せのための面会について固有の秘密面会の利益があるから,上記措置は,原告弁護士らとの関係でも国賠法1条1項の適用上違法である。 すなわち,憲法32条の裁判を受ける権利を実質的に保障するためには,弁護士と依頼者とのコミュニケーションを実質的に確保する必要があり,これを実現するためには,依頼者と弁護士がその内容を第三者から聴取されることがないという保障がなければならず,その重要性は,刑事事件であろうが民事事件であろうが全く変わらないのであるから,刑事事件における弁護人に固有の秘密接見交通権を認めた最高裁昭和53年7月10日第一小法廷判決・民集32巻5号820頁(以下「昭和53年最判」という。)と同様に,民事事件の代理人弁護士にも固有の秘密接見交通権が保障されなければならない。 そもそも,秘密接見交通権は,刑事民事の区別なく,依頼者と弁護士の秘匿特権の内容としてコモンローの時代から認められてきた権利であって,単に一人の依頼人の利益のためにあるのではなく,弁護士という職業を守り,一般公衆のその職務への信頼を醸成し確保する基盤となるものであり,弁護士が自らの固有の権利として秘匿特権を主張できることが制度的に保障される必要があるのであって,実定法上も,刑法134条1項,刑事訴訟法(以下「刑訴法」という。)149条,民事訴訟法(以下「民訴法」という。)197条1項2号で,弁護士の固有権としての秘匿特権が規定されている。 さらに,別件国賠訴訟においては,死刑確定者である原告Aだけではなく,原告弁護士ら6名も原告本人として訴えを提起していたのであるから,原告弁護士ら6名と原告Aとの面会は,原告Aの係争案件に関す - 11 -る打合せという側面のほかに,原告弁護士ら6名自身の係 く,原告弁護士ら6名も原告本人として訴えを提起していたのであるから,原告弁護士ら6名と原告Aとの面会は,原告Aの係争案件に関す - 11 -る打合せという側面のほかに,原告弁護士ら6名自身の係争案件に関する打合せという側面もあった。 したがって,原告弁護士らにも,原告Aとの秘密面会につき,固有の利益が保障されるのであって,別件国賠訴訟の打合せのための面会についてなされた上記措置は,原告弁護士らとの関係でも,国賠法1条1項の適用上違法である。 (被告の主張)ア東京拘置所長における面会目的の認定及び判断時点(ア) 面会目的の認定国賠法1条1項は,国又は公共団体の公権力の行使に当たる公務員が個別の国民に対して負担する職務上の法的義務,すなわち行為規範に違反して当該国民に損害を与えたときに賠償責任を負わせる規定であるから,刑事施設の長の法的義務(行為規範)違背の有無は,当該行為時の事実関係に基づいて判断されるべきである。 そして,面会の目的は各回ごとに当然異なり得るのであり,刑事施設の長は,各面会ごとにその面会目的を判断すべきところ,そのためには面会申出者が各面会ごとに提出する面会申出書の面会目的欄に明示された面会目的を前提として判断するほかなく,かつ,それで足りるのであり,面会申出書に記載されていない面会目的まで推察した上で,立会いの要否を判断すべき職務上の法的義務を負うものではない。 なお,原告らは,面会表の「出願要旨」欄に,面会申出書の記載と異なる記載がされていることを指摘して,被告が,面会申出書の面会目的欄の記載以外の事情を考慮して面会目的を認定していると主張するが,東京拘置所における面会業務の実情は,12階建の中層階で勤務している同拘置所の外部交通区長が,1階にある面会受付から面会申出書の面会目的欄 載以外の事情を考慮して面会目的を認定していると主張するが,東京拘置所における面会業務の実情は,12階建の中層階で勤務している同拘置所の外部交通区長が,1階にある面会受付から面会申出書の面会目的欄の記載について電話報告を受けて当該面会に関する判断を行 - 12 -い,同判断の回付を受けた面会立会職員が面会表の「出願要旨」及び「談話の要旨」欄に記録を残すというものであり,外部交通区長が,面会に関する許否及び立会いを付すか否かを判断する際に,面会立会職員が作成した面会表を閲覧している事実はないから,原告らの主張は憶測にすぎない。 (イ) 判断時点原告らは,面会の途中であっても,会話の内容によって立会いを中止するなどの運用をすべきであったと主張するが,立会職員は,日々,配置上の都合やローテーションにより当該職務に就いている一般職員であり,面会途中に会話自体の内容から当該面会の真の目的なるものを洞察し,立会いを付すべきか否かという高度に専門的な内容について即時かつ的確に判断することなど困難である上,当該面会の立会継続の適否を判断する刑事収容施設法上の権限もない。 また,立会職員が,立会いの適否について判断権者の指示を仰ぐために,既に開始されている面会を一時停止することは,刑事収容施設法122条が準用する同法113条の定める面会の一時停止の要件を満たさない違法な措置であると評価される可能性がある上,上記のとおり,立会いを付すべきか否かは高度に専門的な内容であるから,一般職員である立会職員において,同法113条の要件以外の事由で,いかなる会話がされたときに一時停止して判断権者の指示を仰ぐかにつき,面会中の会話を聞きながら即時かつ的確に判断することは極めて困難である。 さらに,上記のとおり,刑事施設の長の職務上の法的義務(行為規 会話がされたときに一時停止して判断権者の指示を仰ぐかにつき,面会中の会話を聞きながら即時かつ的確に判断することは極めて困難である。 さらに,上記のとおり,刑事施設の長の職務上の法的義務(行為規範)違背の有無は,当該判断をした時点の事実関係に基づき判断されるべきであるから,再審請求の打合せ等の面会目的であることを知らないまま立会職員を付したところ,再審請求の打合せや準備についてのやり取りが始まったからといって,刑事施設の長の判断が国賠法1条1項の - 13 -適用上違法とされる余地はない。 イ本件再審請求等に向けた打合せを目的とする面会について(ア) 国賠法上の違法性平成25年最判は,「死刑確定者又は再審請求弁護人が再審請求に向けた打合せをするために秘密面会の申出をした場合」について,「これを許さない刑事施設の長の措置は…(中略)…特段の事情がない限り,…(中略)…国賠法1条1項の適用上違法となる」と判示し,同「特段の事情」の一つとして,「死刑確定者の面会についての意向を踏まえその心情の安定を把握する必要性が高いと認められる」場合を例示したにすぎないから,原告らが主張するように,個別の面会ごとに,刑事施設の長またはその職員に対し,当該死刑確定者への面談を実施して,その意向を確認しなかった場合に直ちに違法となるとしたものではないし,死刑確定者又は再審請求弁護人から秘密面会の申出がなかった場合にその判断枠組みが妥当しないことは明らかである。 そして,原告弁護士らが提出した面会申出書の中で,秘密面会の希望13件(本件面会173,174,182,185,190,196,197,199,213,222,249,253,256。ただし,本件再審請求等に向けた打合せを目的とする面会に限らない。この項において同じ)のみであ 73,174,182,185,190,196,197,199,213,222,249,253,256。ただし,本件再審請求等に向けた打合せを目的とする面会に限らない。この項において同じ)のみである。 したがって,原告らが秘密面会の申出をしたと認められない面会に職員を立ち会わせた東京拘置所長の措置(後記(4)のとおり,消滅時効が成立するものを除き,本件面会124,129,130,133,135,137,139,141ないし143,148,151,154,155,159,161,165,168,172,175,178,180,183,186,189,192,195,198,20 - 14 -1,204,207,210,211,214ないし220,224,226,227,230ないし232,237,239,241,243ないし246)は違法でない。 ただし,本件各面会のうち,原告Aとその再審請求弁護人等である原告弁護士らとの再審請求の打合せを目的とした面会であって,職員の立会いが付されているものに関して,平成25年最判が判示する「特段の事情」の有無については,特段主張しない。 (イ) 過失平成25年最判が出される前においては,被収容者と再審請求弁護人等との面会について,未決拘禁者と弁護人又は弁護人となろうとする者(以下「弁護人等」という。)との面会と同様に配慮すべき義務があるとの見解は一般的ではなく,本件の取扱いは,全国の刑事施設における当時の運用に照らしても格別異例なものではなかった。 そうすると,東京拘置所長は,職務上尽くすべき注意義務を尽くすことなく,漫然と行為をしたなどとはいえず,過失があるとはいえない。 ウ別件国賠訴訟に向けた打合せを目的とする面会について(ア) 平成25年最判は,刑訴法440条1項の くすべき注意義務を尽くすことなく,漫然と行為をしたなどとはいえず,過失があるとはいえない。 ウ別件国賠訴訟に向けた打合せを目的とする面会について(ア) 平成25年最判は,刑訴法440条1項の趣旨等に照らし,死刑確定者及びその再審請求弁護人に秘密面会の利益を認めた上で,「特段の事情」を用いた判断枠組みを示したにすぎず,死刑確定者とその民事事件の訴訟代理人弁護士との面会については,同判断枠組みは妥当しない。 なお,国賠訴訟は,飽くまで,ある公務員の過去の職務行為について職務上の法的義務に違背すると主張して損害賠償を請求するものであり,個別の面会ごとにその要否が判断されるべき現在又は将来の面会への職員の立会いを排除することを目的とするものではないから,かかる国賠訴訟について,再審請求の準備活動として,再審請求と一体として - 15 -評価されるべきものではない。また,国賠訴訟の代理人弁護士との打合せにおいて,過去の再審請求弁護人との面会における公務員の職務上の法的義務違背の有無等について打合せや検討をするからといって,それ自体が再審請求のための打合せと同視できるものではないから,秘密接見交通権の侵害を理由とする国賠訴訟の打合せをもって,直ちに再審請求のための打合せを包含するものとみることもできない。 (イ) 死刑確定者の国賠訴訟の打合せのための面会に立会いを付すことの判断基準は,刑事収容施設法121条が定めており,同条は,刑事施設の長に対し,原則として,死刑確定者の面会に職員を立ち会わせるなどの措置を執ることとし,例外的に,同条ただし書に定める要件を満たす場合,すなわち「死刑確定者の訴訟の準備その他の正当な利益の保護のため」,面会に職員を立ち会わせないことを「適当とする事情」があり,かつ,刑事施設の長が「相当と認めると ただし書に定める要件を満たす場合,すなわち「死刑確定者の訴訟の準備その他の正当な利益の保護のため」,面会に職員を立ち会わせないことを「適当とする事情」があり,かつ,刑事施設の長が「相当と認めるとき」に限って,職員の立会い並びに録音及び録画(以下「立会い等」という。)を省略することができるとしている。 そして,施設の処遇に関する国賠訴訟の打合せのための面会については,面会に立ち会う者が刑事施設の職員であることから,通常は,刑事収容施設法121条にいう面会に職員を立ち会わせないことを「適当とする事情」の要件が満たされるものと解される。 しかしながら,死刑確定者は,来たるべき死を待つという特殊な状況にあって,容易に極めて大きな精神的苦悩や動揺に陥ることがあると考えられるから,刑事施設の長としては,死刑確定者が心情の安定を得られるように留意して処遇を実施する上で,その心情やこれに影響を与える事情を把握する必要性が大きく,死刑確定者が面会する場合には,特に,その心情等を把握する必要性が高い。 そうすると,死刑確定者が面会する際に職員の立会いの措置を執らな - 16 -いことを「適当とする事情」がある場合であっても,他方で,面会の際に不適切な行為や発言がされることも想定され,これを制止する必要がある場合や,面会の際における死刑確定者の心情等を把握する必要がある場合においては,前者の利益(職員の立会いの措置を執らないことを適当とする事情)と後者の必要性とを比較衡量して,職員の立会いの措置を執らないことを「相当と認めるとき」に当たるか否かについて判断しなければならない。 そして,別件国賠訴訟の打合せのための面会について職員の立会いを付した面会が行われた当時,原告Aは,別紙原告Aの動静一覧のとおり,原告弁護士らとの面会等において,そ 判断 しなければならない。 そして,別件国賠訴訟の打合せのための面会について職員の立会いを付した面会が行われた当時,原告Aは,別紙原告Aの動静一覧のとおり,原告弁護士らとの面会等において,その訴訟方針をめぐって不満を述べるなど心情に不安定な面が具体的に見られ,面会の状況を把握し,その心情を把握すべき動静が見受けられたから,上記各面会については職員の立会いをさせないことが「相当と認めるとき」に当たらず,東京拘置所長の判断に裁量権の逸脱又は濫用があったとはいえない。 (ウ) なお,平成25年最判は,飽くまでも再審請求弁護人の秘密面会の利益について,国賠法上保護される固有の利益と認めたにとどまり,民事事件の訴訟代理人についてまで同様に固有の秘密面会の利益を認めたものではないから,別件国賠訴訟の打合せのための面会についての上記措置は,民事事件の訴訟代理人にすぎない原告弁護士らとの関係では国賠法上違法となる余地はない。 (2) 面会時間を制限する東京拘置所長の措置の違法性(ただし,後記(3)の点を除く。)(原告らの主張)ア平成25年最判が再審請求弁護人と死刑確定者の秘密面会の利益を厚く保障することで実質的に確保しようとした再審請求のための弁護活動は,立会いを排除するだけでは達せられない。重大事件である死刑事件を争う - 17 -再審請求の打合せには相当な時間の打合せが必要不可欠であり,平成25年最判の趣旨を達するには,立会い等の間接的制約だけではなく,面会時間の制限など直接的制約をも厳格に制限する必要がある。 また,死刑確定者の立場は様々であるものの,少なくとも,原告Aのように再審請求の準備活動をしている死刑確定者には,その心情の安定を図るためにも未決拘禁者と同様の防御権が保障されるべきである。 したがって,再 者の立場は様々であるものの,少なくとも,原告Aのように再審請求の準備活動をしている死刑確定者には,その心情の安定を図るためにも未決拘禁者と同様の防御権が保障されるべきである。 したがって,再審請求に向けた打合せのための面会は原則として無制限であり,面会時間を制限するためには,それを必要とする特段の事情が必要である。 しかし,被告には,本件各面会の面会時間を30分に制限しなければならない特段の事情はなかったのであるから,面会時間を30分に制限した東京拘置所長の措置は原告らの接見交通権を侵害するものとして,国賠法1条1項の適用上違法である。 イ被告は,面会時間を制限する根拠として人的物的な制限を挙げるが,平成25年最判によれば,特段の事情がない限り,死刑確定者と再審請求弁護人との面会について,立会いを付することはできず,その結果,立会職員が不要となることはもちろん,立会い時の記録やその後の報告事務もなくなるため,被告の業務負担は激減し,人的物的な制限から解放される。 その上,上記のとおり,原告Aのように再審請求の準備活動をしている死刑確定者には,未決拘禁者と同様の防御権が保障されるべきであるから,こうした死刑確定者と再審請求弁護人等との面会を後記一般面会室に限定して実施するという被告の前提自体に合理性がない。 (被告の主張)ア平成25年最判は,飽くまでも,死刑確定者又は再審請求弁護人が再審請求に向けた打合せをするために秘密面会の申出をした場合に,これを許さない刑事施設の長の措置が国賠法上違法となる場合について判示したも - 18 -のにすぎず,面会時間の制限については何ら判断を示していない。 そして,東京拘置所長は,本件各面会において,施設の人的,物的設備の制限の中で,多数の被収容者間における処遇の公平を図り, 18 -のにすぎず,面会時間の制限については何ら判断を示していない。 そして,東京拘置所長は,本件各面会において,施設の人的,物的設備の制限の中で,多数の被収容者間における処遇の公平を図り,施設内の規律及び秩序を確保するため,その面会時間を30分としたものであるから,違法でない。 イ死刑確定者は,再審請求をしていたとしても,未だ再審開始の決定が確定していない場合には,有罪判決が確定しているという点において,憲法及び刑訴法において防御権が保障されている未決拘禁者とその法的地位を決定的に異にすることからすれば,このような死刑確定者と再審請求弁護人等又は訴訟代理人弁護士との面会は,飽くまでも一般面会(未決拘禁者弁護人面会以外の面会)であって,未決拘禁者弁護人面会と異なる取扱いをすることには合理性がある。 そして,刑事収容施設法122条が準用する同法114条1項は,刑事施設の長が,死刑確定者の面会に関し,「法務省令で定めるところにより,面会の相手方の人数,面会の場所,日及び時間帯,面会の時間及び回数その他面会の態様について,刑事施設の規律及び秩序の維持その他管理運営上必要な制限をすることができる。」と規定し,この法務省令に当たる刑事施設及び被収容者の処遇に関する規則(以下「刑事収容施設規則」という。)73条は,面会の時間の制限につき「法第114条第1項の規定により被収容者の面会の時間について制限をするときは,その時間は,30分を下回ってはならない。ただし,面会の申出の状況,面会の場所として指定する室の数その他の事情に照らしてやむを得ないと認めるときは,5分を下回らない範囲内で,30分を下回る時間に制限することができる。」と定めており,上記のとおり,死刑確定者と再審請求弁護人等又は訴訟代理人弁護士との面会も一般面会であること ないと認めるときは,5分を下回らない範囲内で,30分を下回る時間に制限することができる。」と定めており,上記のとおり,死刑確定者と再審請求弁護人等又は訴訟代理人弁護士との面会も一般面会であることに変わりがない以上,「30分を下回」るものではない30分の時間制限が違法となる余地はな - 19 -い。 また,この点をおくとしても,東京拘置所においては,通常,面会室合計50室のうち,おおむね36室を未決拘禁者と弁護人等との面会(いわゆる弁護人面会。以下「未決拘禁者弁護人面会」という。)に割り当てた面会室(以下「弁護人面会室」という。)とし,残り14室(未決拘禁者弁護人面会の申出数又は立会職員の配置数等の事情により15室のときもある。)を未決拘禁者弁護人面会以外の面会(以下「一般面会」という。)に割り当てた面会室(以下「一般面会室」という。)としている。 そして,未決拘禁者が,飽くまでも捜査の対象である被疑者又は公訴を提起された被告人として刑訴法の規定に基づいて身柄を拘束されている者であり,有罪の裁判が確定した者ではなく,憲法及び刑訴法において保障されている防御権を尊重することが強く求められる(刑事収容施設法31条参照)ことからすれば,刑事施設においては,極力,常に未決拘禁者弁護人面会が可能な状態を確保する必要がある。そして,任意に抽出した未決拘禁者3名についての未決拘禁者弁護人面会時間のデータを見ても,相当長時間に及ぶ弁護人面会が存在することに加え,未決拘禁者各自の刑事公判を控えた時期ないし時間帯に弁護人面会が立て込むなど,弁護人面会の多寡は,あらかじめ予測することが困難であり,およそ単純な平均化になじむものとはいえないことに照らしても,一定数の弁護人面会室を確保しておくべき要請は高い。 そこで,東京拘置所においては,一般面会 多寡は,あらかじめ予測することが困難であり,およそ単純な平均化になじむものとはいえないことに照らしても,一定数の弁護人面会室を確保しておくべき要請は高い。 そこで,東京拘置所においては,一般面会室が満室であるがたまたまその時点で一時的に弁護人面会室には空室があるという場合に,一般面会の申出があったとしても,その後に未決拘禁者弁護人面会の申出がされた場合に速やかにその面会を実施できるようにするため,空室である弁護人面会室を一般面会に使用することはせず,空室のまま確保することとし,弁護人面会室が満室であるが,未決拘禁者弁護人面会の申出がされた場合に - 20 -は,一般面会室を未決拘禁者弁護人面会に使用している。 そうすると,上記のとおり,東京拘置所における一般面会室は最大でも15室であり,面会の実施時間は午前9時から午後零時まで及び午後1時から午後5時までの合計7時間,平成24年から平成26年の間における1日当たりの一般面会の申出件数は平均約176件であるから,これを前提に,面会者の時間を確保する利益に配慮して,面会室数を一般面会用に最大で確保できる15室として単純計算すると,一般面会1件当たりに割り当てることができる時間は約36分(計算式:7時間×60分×15室÷176件≒35.79分)となる。さらに,東京拘置所における一般面会の実施に当たっては,面会者の確認や被収容者の連行等により,面会の受付から面会開始まで平均して20分程度の時間を要しているのが実情であり,本件各面会においても,面会受付から面会開始まで30分以上を要している例も散見される。これは,上記の単純計算上の数値に含まれない要素であり,被収容者を連行するのに要する時間一つを取ってみても,当該被収容者の歩行速度等により左右され,あらかじめこれを予測することはできな 散見される。これは,上記の単純計算上の数値に含まれない要素であり,被収容者を連行するのに要する時間一つを取ってみても,当該被収容者の歩行速度等により左右され,あらかじめこれを予測することはできない。 以上の事情を踏まえれば,実際に一般面会に確保できる時間は上記約36分を大きく下回ることになり,一般面会について30分の時間制限を下回る時間に制限せざるを得ない実情が現に存在するのであって,東京拘置所長が,本件各面会につき,刑事収容施設規則73条の所定の30分の時間制限を課した措置は,このような実情を踏まえたもので,何ら裁量権の逸脱,濫用はなく,違法でない。 (3) 裁判を受ける権利の侵害(別件国賠訴訟に向けた打合せを目的とする面会について)(原告らの主張)憲法32条に規定された裁判を受ける権利を実質的に保障するためには, - 21 -法律の専門家である弁護士の援助が不可欠であり,弁護士と依頼者とのコミュニケーションを実質的に確保する必要がある。 そして,別件国賠訴訟に向けた打合せを目的とする面会に拘置所の職員の立会いが付されると,原告Aの攻撃防御方法のすべてが予め被告に知られることになる一方,原告らが,これを避けようとすれば,その事項について打合せができず,訴訟追行のための十分な準備をすることが不可能となる。また,同面会の時間が30分に制限されると,実質的な打合せができない。 したがって,別件国賠訴訟に向けた打合せを目的とする面会に係る本件各措置は,当事者武器対等の原則に反し,別件国賠訴訟の準備を妨害したものとして,裁判を受ける権利の侵害となる。 (被告の主張)憲法32条の保障する裁判を受ける権利は,民事事件についていえば,各人が裁判所に訴えを提起する権利であり,同権利の保障は,国家にとっては「裁判の拒絶 受ける権利の侵害となる。 (被告の主張)憲法32条の保障する裁判を受ける権利は,民事事件についていえば,各人が裁判所に訴えを提起する権利であり,同権利の保障は,国家にとっては「裁判の拒絶」の禁止を意味するものと解される。そして,憲法32条の文言が「裁判所において裁判を受ける権利」として,公権力に対する関係で認められる国務請求権としての権利を定めているという規定の仕方からしても,当該権利が,死刑確定者である被収容者とその民事事件の訴訟代理人弁護士との面会について,その秘密面会を確保する権利や,面会時間の制限なく面会することができる権利まで直接的に保障したものと解することはできない。 したがって,別件国賠訴訟に向けた打合せを目的とする面会に係る本件各措置が,裁判を受ける権利の侵害となる余地はない。 (4) 消滅時効の成否(被告の主張)ア不法行為に基づく損害賠償請求権の消滅時効は,被害者又はその法定代理人が損害及び加害者を知った時から3年で完成する。 - 22 -原告らが主張する面会利益の侵害による主観的損害(精神的苦痛)なるものが観念できるとしても,原告らの面会は各回ごとに終了しており,その都度,同損害が発生し,原告らにおいても,その都度,職員の立会いによる同損害の発生を認識していたものと解されるのであるから,各回の面会ごとに,各損害に係る損害賠償請求権について別個に消滅時効が進行する。 したがって,本件各措置のうち,本件の訴え提起時である平成26年10月7日から3年以上前である平成23年10月6日以前の面会(本件面会1ないし121)における各措置については,既に消滅時効が完成しているから,被告はその時効を援用する。 イ原告らは,被告が追加の提訴を躊躇させてこれを妨害したなどとして,信義則上 面会(本件面会1ないし121)における各措置については,既に消滅時効が完成しているから,被告はその時効を援用する。 イ原告らは,被告が追加の提訴を躊躇させてこれを妨害したなどとして,信義則上,時効を援用できないと主張するが,被告が原告らの権利行使(追加の提訴)を違法に妨げるなどした事実は一切存在せず,被告が信義則上,その時効援用権を制限されるべき事情は皆無である。 (原告らの主張)ア死刑確定者と再審請求弁護人等とが再審請求事件等に関して面会する場合,その打合せ内容は,当該事件に関する弁護活動が中心となるから,当該面会の利益は個別に独立,完結したものではなく,再審請求事件単位で死刑確定者と再審請求弁護人等とが共有する秘密に関するものでもある。 例えば,面会の際に立会いがなければ協議できたはずの事項が,立会いがあるためにできない場合,再審請求弁護人等は,当該事項については打ち合わせをすることなく弁護活動を進めるか,あるいは次回に立会いの付されないことを期待して先送りにするほかないが,これによる不都合は再審請求事件に対して継続して増大していくから,これによる精神的苦痛は同じように継続して発生し,増大していく。 このように,施設の職員が,死刑確定者と再審請求弁護人等との個々の - 23 -接見に立ち会って秘密面会を妨害した結果や損害は,各面会日ごとに完結,終了するものではなく,弁護活動を進める上でますます蓄積し,増大していくものであるから,損害は確定しておらず,消滅時効は進行していない。 イまた,原告Aは,別件国賠訴訟を提起してもなお面会に立会いを付され続けたことで,被告に対して訴訟を提起してもその打ち合わせを被告に把握され,さらに,国賠訴訟を提起した事実を東京拘置所の職員に知られると,衣服を損傷されるなどの様 提起してもなお面会に立会いを付され続けたことで,被告に対して訴訟を提起してもその打ち合わせを被告に把握され,さらに,国賠訴訟を提起した事実を東京拘置所の職員に知られると,衣服を損傷されるなどの様々な嫌がらせを受けると考え,追加の国賠訴訟の提起を躊躇していた。 このように,被告は,別件国賠訴訟を提起された後も,違法な立会いを継続して原告Aの心情を害し,追加の提訴を躊躇させてこれを妨害していたのであるから,これによって消滅時効という利益を得ることは信義則上許されない。 また,依頼者である原告Aの同意がなければ,原告弁護士らが本訴を提起することは事実上不可能であったから,上記の事情は原告弁護士らとの関係でも同様に妥当する。 (5) 損害額(原告らの主張)本件各措置により,原告らは再審のための準備活動をしているにもかかわらず,その内容を相手方の被告にすべて聞かれるという屈辱的な状況を甘受しなければならなかっただけでなく,被告の立会いに配慮した打合せしかすることができず,原告Aと原告弁護士らとの間の信頼関係にも影響が生じた。 その損害は原告Aが100万円,原告弁護士らが各30万円を下ることはない。 (被告の主張) - 24 -争う。 第3 争点に対する判断 1 認定事実前記前提事実等に加え,後掲各証拠及び弁論の全趣旨によると,以下の事実が認められる。 (1) 東京拘置所の面会業務の概要ア面会室数及び割当て等東京拘置所には,合計50室の面会室が設置されており,そのうち,おおむね36室が未決拘禁者弁護人面会に割り当てられる弁護人面会室であり,残り14室(未決拘禁者弁護人面会申出数又は立会職員の配置数等の事情により15室のときもある。)がその余の面会(一般面会)に割り当てられる一般面会室 者弁護人面会に割り当てられる弁護人面会室であり,残り14室(未決拘禁者弁護人面会申出数又は立会職員の配置数等の事情により15室のときもある。)がその余の面会(一般面会)に割り当てられる一般面会室である(乙9,15)。 もっとも,弁護人面会室が満室であるが,未決拘禁者弁護人面会の申出がされた場合には,一般面会室を未決拘禁者弁護人面会に使用する一方,一般面会室が満室であるが弁護人面会室には空室があるという場合に,一般面会の申出があったとしても,その後に未決拘禁者弁護人面会の申出がされた場合に速やかにその面会を実施することができるようにするため,弁護人面会室を一般面会に使用することはせず,空室のまま確保することとしている(乙15,17)。 イ面会実施時間東京拘置所における一般面会は,受付時間が午前8時30分から午前11時30分まで及び午後零時30分から午後4時まで,面会の実施時間が午前9時から午後零時まで及び午後1時から午後5時までの合計7時間である(乙9)。 未決拘禁者弁護人面会について,刑事収容施設法118条に「日曜日その他政令で定める日以外の日の刑事施設の執務時間内」とある以外に時間 - 25 -的制限はなく,東京拘置所においても,平日の執務時間内に加えて一定の条件を満たす場合には,夜間,土曜日においても面会を実施している(乙15)。 ウ面会申出件数東京拘置所における1日当たりの面会申出件数は,平成24年から平成26年までの3年間の平均で,未決拘禁者弁護人面会が約92件,一般面会が約176件であった(乙9,15)。 エ収容人数等東京拘置所の収容定員は3000名で,平成24年から平成26年までの平均収容人員は約1792名,うち死刑確定者収容数は約68名であった(乙22)。 オ面会受付から面 5)。 エ収容人数等東京拘置所の収容定員は3000名で,平成24年から平成26年までの平均収容人員は約1792名,うち死刑確定者収容数は約68名であった(乙22)。 オ面会受付から面会実施までの事務手続等東京拘置所における面会の実施に当たっては,12階建の建物の1階にある総合面会受付所において,面会希望者から面会申出書により面会の申込みがされると,被収容者の収容状況を確認し,外部交通区長に電話で報告して,面会の許否,立会いの有無及び面会時間の制限について決済を得た上,面会を実施するフロアへ面会表を回付し,当該被収容者の同拘置所内での移動状況の把握等を行い,指示を受けた連行職員が,当該被収容者が収容されている居室等に赴き,当該被収容者に面会を告知して面会室まで連行している(乙9)。 なお,平成28年4月18日時点で,面会業務に配置されている職員の合計数は37名(総合面会受付4名,各面会所受付5名,立会職員14名,連行職員14名)であった(乙9,15)。 カ面会申出書の形式東京拘置所に備え付けられている面会申出書には,面会を希望する被収容者の氏名並びに面会申出者の氏名,生年月日,住所,職業及び被収容者 - 26 -との関係を記入するほか,「面会の目的」欄の「安否・仕事・子供・家庭・裁判その他( )」のいずれかに丸を付けることが求められ,「受刑者等との面会を申し込む親族以外の方の面会目的」欄には「(具体的に記載願います)」と記載され,具体的な面会目的を記入することが求められていたが,秘密面会の申出をするか否かを記載する欄はなかった(乙1,6)。 (2) 事実経過ア本件死刑判決の確定等平成20年7月17日,最高裁判所において,本件死刑判決を維持する旨の上告審決定がされた。原告Aは,同日,弁 を記載する欄はなかった(乙1,6)。 (2) 事実経過ア本件死刑判決の確定等平成20年7月17日,最高裁判所において,本件死刑判決を維持する旨の上告審決定がされた。原告Aは,同日,弁護人と面会したが,面会を終えて退室する際に拘置所職員に対し,「食欲がなくなりました。これでもう死刑囚の仲間入りです。」などと述べた。 原告Aは,同年8月27日,拘置所職員から本件死刑判決が確定した旨の告知を受け,以降死刑確定者の処遇を受けることとなったが,その際,「無罪を勝ち取るために頑張っていきます。」などと述べた。(以上につき,乙4)イ同年9月から同年12月までの面会(ア) 同年9月1日の再審請求に向けた打合せを目的とする面会の際,原告Fは,再審の件で弁護士と話すのに拘置所職員が立ち会うのはおかしい,やりにくいと述べ,原告Aは,もう内緒話ができないと応じ,司法はおかしい,自分が死んでも知人に再審の件は頼むと言ってあると述べた。 (イ) 同月5日の再審請求に向けた打合せを目的とする面会の際,原告Aは,立会いがいると密な話ができないと述べ,原告Cは,その件に関しては国賠をしようかと話し合っていると報告した。 (ウ) 同年11月26日の再審請求に向けた打合せを目的とする面会の - 27 -際,原告Bは,法務省に弁護団の手の内が知られると困るが,再審の弁護人と決まれば,立会職員も付かなくなると思うと述べた。原告Aは,この意見に疑問を呈したが,原告Bは,再審請求の申立てをすれば立会いは付かなくなるとの見通しを示した。 (エ) 同年12月3日の再審請求に向けた打合せを目的とする面会の際,原告Dは,年明け早々には再審請求をする,職員の立会いがあることにも疑問があり,対応が必要であると述べた。 (以上につき,乙7)ウ原告 12月3日の再審請求に向けた打合せを目的とする面会の際,原告Dは,年明け早々には再審請求をする,職員の立会いがあることにも疑問があり,対応が必要であると述べた。 (以上につき,乙7)ウ原告弁護士ら5名による申入れ原告弁護士ら5名は,同年12月29日,東京拘置所長に対し,原告Aとの面会は,再審請求の準備のためのものであるとして,職員を立ち会わせず,面会時間の制限もしないことを求める申入書を送付し,同申入書は,同月30日に同拘置所に到達した(甲4,乙4,5)。 エ本件再審請求原告Aは,平成21年1月19日,原告弁護士ら6名を再審請求弁護人に選任し,同月30日,さいたま地方裁判所に本件再審請求をした(甲2,3)。 オ同年2月2日の面会同日の面会の際,原告Fは,原告Aに対し,再審請求をしたことを報告し,職員の立会いを付すことが違法である旨の国賠訴訟を本日提起する予定であることを伝えた(乙7)。 カ別件訴訟の提起等原告A及び原告弁護士ら6名は,同月3日,別件国賠訴訟を提起した(乙4,5)。 キ原告弁護士ら6名による申入れ原告弁護士ら6名は,同月23日,東京拘置所長に対し,面会時間の制 - 28 -限と職員の立会いにより接見交通が妨げられたことを理由とする国賠訴訟(別件国賠訴訟)を同月3日に提起したこと,その内容は別便で送付する訴状写しのとおりであることを伝えるとともに,少なくとも別件国賠訴訟の提起後においては,原告Aとの面会は別件国賠訴訟の準備のためであることが明らかであるから,職員を立ち会わせないことを求める旨の申入書を送付し,同申入書及び別件国賠訴訟の訴状の写しは,その頃,同拘置所に到達した(甲5,弁論の全趣旨)。 ク本件各面会における原告らの発言等(ア) 同年10月14日の本 いことを求める旨の申入書を送付し,同申入書及び別件国賠訴訟の訴状の写しは,その頃,同拘置所に到達した(甲5,弁論の全趣旨)。 ク本件各面会における原告らの発言等(ア) 同年10月14日の本件面会11(面会申出書の面会目的欄において同面会の目的が再審請求及び国賠訴訟に向けた打合せを目的とすることが容易に推察される記載がされたもの。以下,認定事実においては,「再審請求及び国賠訴訟に向けた打合せを目的とする面会」のようにいう。)の際,原告Lは,立会職員に対し,まだ面会時に職員の立会いがあるのかと問いかけ,同職員はそうであると回答した(乙1の31ないし33頁)。 (イ) 同年11月27日の再審請求及び国賠訴訟に向けた打合せを目的とする本件面会17の前,原告Hは,拘置所職員に対し,立会いを付す理由を書面で回答してほしいと申し出たが,同職員は,立会いを付すのは本人の心情の把握のためであるが,書面では回答しない,必要であれば拘置所宛てに書面で照会するように,その場合は回答の可否を含めて検討すると述べた。 原告Hは,本件面会17の際,なぜ,本日の面会に拘置所職員の立会いが付くのかと疑問を呈し,原告Aは,分からない,余計なことを話すと処遇が変わると述べた。 (以上につき,乙1の39ないし41頁)(ウ) 平成22年8月9日の再審請求及び国賠訴訟に向けた打合せを目 - 29 -的とする本件面会53の際,原告Hは,前の面会の続きを話したいが,本日は立会いが付されているので,あまり話はできないと述べた(乙1の90ないし91頁)。 (エ) 同月16日の再審請求及び国賠訴訟に向けた打合せを目的とする本件面会54の際,原告Bは,立会いが付されているので,あまり詳しく話せないが,再審の件に関し,裁判所に話をしようと思っていると述べた(乙1の 16日の再審請求及び国賠訴訟に向けた打合せを目的とする本件面会54の際,原告Bは,立会いが付されているので,あまり詳しく話せないが,再審の件に関し,裁判所に話をしようと思っていると述べた(乙1の92ないし95頁)。 (オ) 同年9月9日の再審請求及び国賠訴訟に向けた打合せを目的とする本件面会57の際,原告Lは,立会職員に対し,立会いを付する理由を尋ねたが,分からないと回答された(乙1の98ないし100頁)。 (カ) 同年10月8日の再審請求に向けた打合せを目的とする本件面会60の際,原告Aは,本日も立会いが付くので,大事な話があったが次回に話すと述べた(乙1の104ないし105頁)。 (キ) 同月20日午前9時13分頃から開始された再審請求及び国賠訴訟に向けた打合せを目的とする本件面会63の際,原告Iは,立会職員に対し,なぜ立会いが付くのかと尋ねたが,分からないと回答された(乙1の108ないし109頁)。 (ク) 同日午後4時22分頃から開始された再審請求に向けた打合せを目的とする本件面会64の際,原告Cは,立会職員に対し,なぜまた立会いが付くのかと尋ねたが,分からないと回答された(乙1の110ないし111頁)。 (ケ) 同月21日の再審請求及び国賠訴訟に向けた打合せを目的とする本件面会65の際,原告Bは,立会職員に対し,本日もなぜ立会いが付くのかと述べたが,分からないと回答された(乙1の112ないし113頁)。 (コ) 同年12月2日の再審請求及び国賠訴訟に向けた打合せを目的と - 30 -する本件面会71の際,原告Bは,自分が面会する際は,必ず職員の立会いが付くと述べ,原告Aは,主任だからなどと答えた(乙1の122ないし123頁)。 (サ) 平成23年2月9日の再審請求及び国賠訴訟に向けた打合せを目的とする本件面 が面会する際は,必ず職員の立会いが付くと述べ,原告Aは,主任だからなどと答えた(乙1の122ないし123頁)。 (サ) 平成23年2月9日の再審請求及び国賠訴訟に向けた打合せを目的とする本件面会82の際,原告Bは,なぜ自分が来ると立会いが付されるのかと疑問を呈し,原告Aは,主任弁護人だからなどと答えた(乙1の139ないし141頁)。 (シ) 平成24年6月4日の再審請求及び国賠訴訟に向けた打合せを目的とする本件面会155の際,原告Aが,面会には立会いが付くからもう来なくていい,立会いが付くので原告Cが話をしない,自分が話したことも検事などに言われるから密談もできないなどと述べたのに対し,原告Mは話しづらいと応じ,原告Aは,原告Cに一番重要なことを伝えられないから今後は面会はいらない,原告弁護士らが面会に来ても密談ができないから,手紙のやり取りだけでいいと述べた(乙1の262ないし264頁)。 (ス) 同年10月15日の再審請求及び国賠訴訟に向けた打合せを目的とする本件面会180の際,原告Fが国賠訴訟の件で来たと述べると,原告Aは,受付で言えば良かった,そうすれば立会職員が付かなかったと述べた(乙1の300ないし302頁)。 (セ) 同年11月7日の国賠訴訟に向けた打合せを目的とする本件面会186の際,原告Eは,国賠訴訟の話は立会いが付いているのでやめると述べた(乙1の310ないし312頁)。 (ソ) 同月20日の国賠訴訟に向けた打合せを目的とする本件面会189の際,原告Fから,立会いの希望は聞かれるのかと尋ねられ,原告Aは,希望なんか聞かれない,本日も面会だと言われ,立会が付くのかいと言うと,そうだよと言われると答えた(乙1の315ないし316 - 31 -頁)。 (タ) 平成25年1月24日の再審請求及び国賠訴訟に んか聞かれない,本日も面会だと言われ,立会が付くのかいと言うと,そうだよと言われると答えた(乙1の315ないし316 - 31 -頁)。 (タ) 平成25年1月24日の再審請求及び国賠訴訟に向けた打合せを目的とする本件面会198の際,原告Uは,立会いがないときに国賠訴訟のことも話すと述べた(乙1の325ないし326頁)。 (チ) 同年4月2日の再審請求に向けた打合せを目的とする本件面会211の際,原告Cは,前回来たときに,拘置所職員に対し,立会いなしで面会時間を1時間にしてくれと言ったら,事前に書面で出してくれと言われたので,書面を出したが,本日も立会いが付き,面会時間も30分と言われたのでがっかりしたと述べた(乙1の344ないし345頁)。 2 争点(4)(消滅時効の成否)について(1) 事案に鑑み,消滅時効の成否から先に判断する。 本件各措置によって原告らが被った損害(慰謝料)は,各面会の都度,発生し,原告らもこれと同時に損害及び加害者を知ったということができるから,同損害に係る国賠法1条1項に基づく損害賠償請求権は,各回の面会ごとに,別個に消滅時効が進行するというべきである。 そして,原告らが本件訴えを提起したのは平成26年10月7日であり,その3年以上前である平成23年10月6日以前の面会(本件面会1ないし121)に係る本件各措置について,被告が消滅時効を援用する意思表示をしたことは,当裁判所に顕著な事実であるから,同面会に係る本件各措置の違法を理由とする国家賠償請求権は,時効によって消滅したというべきである(国賠法4条,民法724条前段)。 (2) 原告らは,死刑確定者と弁護人との個々の面会を妨害した結果や損害は,各面会日ごとに完結,終了するものではなく,弁護活動を進める上で蓄積し,増大していくもの 国賠法4条,民法724条前段)。 (2) 原告らは,死刑確定者と弁護人との個々の面会を妨害した結果や損害は,各面会日ごとに完結,終了するものではなく,弁護活動を進める上で蓄積し,増大していくものであるから,損害は確定しておらず,また,被告が,別件国賠訴訟を提起された後も,違法な立会いを継続して原告Aの心情 - 32 -を害し,追加の提訴を躊躇させてこれを妨害していたのであるから,これによって消滅時効という利益を得ることは信義則上許されないなどと主張する。 しかしながら,東京拘置所長の本件各措置は,個別の面会ごとになされるものであるから,原告らの損害も,個別の面会ごとに発生し,その都度,消滅時効が進行するものといわざるを得ず,また,被告が,別件国賠訴訟の提起後も,本件各面会について立会いを付したことで,原告Aの心情を害することがあったとしても,それによって直ちに原告Aが追加の提訴を躊躇したなどと認めることはできず,被告による消滅時効の援用が信義則に反するとまではいえない。 (3) そうすると,平成23年10月6日以前の面会(本件面会1ないし121)における本件各措置の違法を理由とする損害賠償請求権は時効によって消滅したから,以下では,平成23年10月7日以降の面会(本件面会122ないし256。ただし,欠番である156,162及び254は除く。)における東京拘置所長の本件各措置について検討する。 3 争点(1)(秘密面会を許さない東京拘置所長の措置の違法性等)について(1) 東京拘置所長における面会目的の認定及び判断時点ア面会目的の認定原告らは,面会目的は,面会申出書の面会目的欄の記載のみならず,面会申出者の「関係」及び「職業」欄の記載のほか,従前の交渉経緯や面会内容,信書の内容等の事情を踏まえて認定されるべ 会目的の認定原告らは,面会目的は,面会申出書の面会目的欄の記載のみならず,面会申出者の「関係」及び「職業」欄の記載のほか,従前の交渉経緯や面会内容,信書の内容等の事情を踏まえて認定されるべきであり,再審請求弁護人が死刑確定者との面会を申し込む場合,死刑確定者の最大の関心事は再審請求にあるから,死刑確定者の面会目的には,再審請求の打合せが含まれており,これに対応して再審請求弁護人の面会目的にも再審請求の打合せが含まれるから,再審請求弁護人からの面会申出があれば,その面会目的は再審請求に向けた打合せが含まれていると解すべきである,実際に - 33 -も,面会申出書の面会目的欄には,「裁判打合わせ」としか記載されていないにもかかわらず,面会表の「出願要旨」欄には「再審の件」と記載されているなど,面会申出書の面会目的欄と面会表の「出願要旨」欄に記載の不一致が多数みられることからすると,被告が,面会申出書の面会目的欄の記載以外の事情を総合して判断していることは明らかであるなどと主張する。 しかしながら,東京拘置所においては,同拘置所の外部交通区長が,1階の総合面会受付所から面会申出書の面会目的欄の記載について電話報告を受け,当該面会に関する判断を電話で伝え,その後に面会表を各階の面会受付所に回付をし,面会立会職員が面会表の「出願要旨」及び「談話の要旨」欄に記録を残すという取扱いをしている(東京拘置所処遇部処遇部門法務事務官作成。乙9)というのであるところ,多数の面会申出に係る事務を迅速に処理する観点からすれば,上記取扱いはそれなりに合理的で自然であって,直ちに虚偽であるなどとはいえないから,面会申出書の面会目的欄と面会表の「出願要旨」欄の記載が必ずしも一致していない(乙1,6)としても,このことをもって,被告が,面会目的欄以 理的で自然であって,直ちに虚偽であるなどとはいえないから,面会申出書の面会目的欄と面会表の「出願要旨」欄の記載が必ずしも一致していない(乙1,6)としても,このことをもって,被告が,面会目的欄以外の事情を総合して面会目的を認定しているとは認められない。 そして,面会の目的は各面会ごとに異なり得るから,再審請求弁護人等と死刑確定者の間の面会の目的に当然に,再審請求に向けた打合せが含まれると解することはできず,上記認定事実1(1)カのとおり,原告弁護士らが本件各面会を申し込むに当たり記載した面会申出書には,「面会の目的」欄の安否・仕事・子供・家庭・裁判その他( )」のいずれかに丸を付け,「受刑者等との面会を申し込む親族以外の方の面会目的」欄には「(具体的に記載願います)」として,具体的な面会目的を記載することが求められているところ,原告弁護士らにおいて,面会目的欄に面会目的を明示することに支障があったことをうかがわせる事情はないことに加 - 34 -え,多数の面会申出に係る事務を迅速に処理する必要があることなどからすれば,刑事施設の長は,面会目的欄に記載された面会目的を前提として,同欄に記載された民事訴訟等の具体的内容を把握するのに必要な限りで,事前に送付された申入書や訴状の写し等を斟酌した上で,面会目的を認定して立会いの適否等(面会時間の制限を含む。以下同じ)を判断すれば足り,それ以上に,面会申出書に記載された面会申出者の「関係」及び「職業」欄のほか,従前の交渉経緯や面会内容,信書の内容等を踏まえて,面会目的欄に記載されていない面会目的までを推察すべき職務上の法的義務を負うものとはいえない。 イ判断時点また,原告らは,秘密面会を許すか否かの判断時点は面会開始時に限定されず,面会の途中であっても,被告において秘密 会目的までを推察すべき職務上の法的義務を負うものとはいえない。 イ判断時点また,原告らは,秘密面会を許すか否かの判断時点は面会開始時に限定されず,面会の途中であっても,被告において秘密面会の保障が及ぶと判断すれば,その時点で立会いを中止するなどの措置を講ずべきであったとして,面会開始後に,面会目的欄に記載された面会目的とは異なる目的の打合せがされた場合には,その時点で改めて立会いの適否等を検討すべきであったと主張するようである。 しかしながら,各面会に立会うことを命じられた立会職員は,何ら予備知識を有しない一般職員である(乙9)ことからすると,同職員が,会話の内容自体から面会の目的を推察し,いかなる場合に立会いを付すべきか,また,判断権者の指示を仰ぐかについて,即時的確に判断することは困難であるといわざるを得ないことに加え,そもそも,上記のとおり,原告弁護士らが,本件各面会を申し出るに当たり,面会申出書の面会目的欄にその面会目的を明示することに支障があったことをうかがわせる事情もないことからすると,刑事施設の長は,面会目的欄に記載された面会目的を前提に立会いの適否等を判断すれば足り,面会開始後に,面会目的欄に記載された面会目的とは異なる目的の打合せがされたとしても,その時点 - 35 -で改めて,死刑確定者又は面会の相手方から,秘密面会の申出がされるなどの事情がない限り,面会の途中で立会いの適否等を検討すべき法的義務を負うものではなく,本件各面会の途中で,原告らが,面会目的欄に記載の面会目的とは異なる目的の打合せをするとして秘密面会の申出をしたなどの事情は何らうかがうことはできない。 (2) 本件再審請求等に向けた打合せを目的とする面会についてア面会目的上記認定,説示したところによれば,別紙面会状況表 て秘密面会の申出をしたなどの事情は何らうかがうことはできない。 (2) 本件再審請求等に向けた打合せを目的とする面会についてア面会目的上記認定,説示したところによれば,別紙面会状況表の「面会申出書の面会目的」「再審打合せ」欄に「○」が記載されている各面会については,面会申出書の面会目的欄の記載(乙1,6)及び弁論の全趣旨により,本件再審請求等に向けた打合せを目的とする面会であったと認められる。 イ判断基準刑事施設の長は,被収容者と外部の者との面会に関する許否の権限を有しているところ,当該施設の規律及び秩序の維持,被収容者の矯正処遇の適切な実施等の観点からその権限を適切に行使するよう職務上義務付けられている(刑事収容施設法第2編第2章第11節第2款)。そして,死刑確定者については,同法121条本文において,その指名する職員が面会に立ち会うか,又はその面会の状況の録音若しくは録画をすることを原則としつつ,同条ただし書は,死刑確定者の訴訟の準備その他の正当な利益の保護のため秘密面会を許すか否かの措置を刑事施設の長の裁量に委ね,当該正当な利益を一定の範囲で尊重するよう刑事施設の長に職務上義務付けている。 ところで,刑訴法440条1項は,検察官以外の者が再審請求をする場合には,弁護人を選任することができる旨規定しているところ,死刑確定者が再審請求等をするためには,再審請求弁護人等から援助を受ける機会 - 36 -を実質的に保障する必要があるから,死刑確定者は,刑事収容施設法121条ただし書にいう「正当な利益」として,再審請求弁護人等と秘密面会をする利益を有する。 また,上記の秘密面会の利益が保護されることは,面会の相手方である再審請求弁護人等にとってもその十分な活動を保障するために不可欠なものであって,死刑 審請求弁護人等と秘密面会をする利益を有する。 また,上記の秘密面会の利益が保護されることは,面会の相手方である再審請求弁護人等にとってもその十分な活動を保障するために不可欠なものであって,死刑確定者の弁護人による弁護権の行使においても重要なものである。のみならず,刑訴法39条1項によって被告人又は被疑者に保障される秘密交通権が,弁護人等にとってはその固有権の重要なものの一つであるとされていることに鑑みれば(昭和53年最判),秘密面会の利益も,上記のような刑訴法440条1項の趣旨に照らし,再審請求弁護人等からいえばその固有の利益であると解するのが相当である。 上記のとおり,秘密面会の利益は,死刑確定者だけではなく,再審請求弁護人等にとっても重要なものであることからすれば,刑事施設の長は,死刑確定者の面会に関する許否の権限を行使するに当たり,その規律及び秩序の維持等の観点からその権限を適切に行使するとともに,死刑確定者と再審請求弁護人等との秘密面会の利益をも十分に尊重しなければならないというべきである。 したがって,死刑確定者又は再審請求弁護人等が再審請求等に向けた打合せをするために秘密面会の申出をした場合に,これを許さない刑事施設の長の措置は,秘密面会により刑事施設の規律及び秩序を害する結果を生ずるおそれがあると認められ,又は死刑確定者の面会についての意向を踏まえその心情の安定を把握する必要性が高いと認められるなど特段の事情がない限り,裁量権の範囲を逸脱し又はこれを濫用して死刑確定者の秘密面会をする利益を侵害するだけではなく,再審請求弁護人等の固有の秘密面会をする利益も侵害するものとして,国賠法1条1項の適用上違法となると解するのが相当である(以上につき,平成25年最判参照)。 - 37 -ウ秘密面会の申出被告は 護人等の固有の秘密面会をする利益も侵害するものとして,国賠法1条1項の適用上違法となると解するのが相当である(以上につき,平成25年最判参照)。 - 37 -ウ秘密面会の申出被告は,原告弁護士らが提出した面会申出書に秘密面会の希望について記載がなく,原告らが秘密面会の申出をしたと認められない面会について,職員を立ち会わせた東京拘置所長の措置は違法でないと主張するところ,証拠(乙1,6)によると,別紙面会状況表の「面会申出書の面会目的」「再審打合せ」欄に「○」が記載されており,職員の立会いが付された各面会(消滅時効が成立するものを除く。)のうち,本件面会213のほかは,面会申出書に秘密面会の希望についての記載はない。 しかしながら,上記認定のとおり,そもそも,東京拘置所に備え付けられた面会申出書には,秘密面会の申出をするか否かを記載する欄はなく,本件死刑判決の確定前から原告Aの弁護を担当し,その再審請求活動をしていた原告弁護士ら5名は,平成20年12月29日,東京拘置所長に対し,原告Aとの面会が再審請求の準備のためのものであるとして,職員を立ち会わせず,面会時間の制限もしないことを求める申入書を送付し,その後に原告Aの再審請求活動に加わった他の原告弁護士らも,平成22年8月9日の本件面会53の際,原告Hにおいて,前の面会の続きを話したいが,本日は立会いが付されているので,あまり話はできないと述べるなど,立会いに否定的な意向を示すことはあっても,原告弁護士ら5名と異なる見解を表明したことはなく,原告弁護士ら5名と同様の意向を有していたとみられること,原告Aも,本件各面会以前の平成20年9月1日の面会の際,もう内緒話ができない,平成22年10月8日の本件面会60の際,本日も立会いが付くので,大事な話があったが次回に話すと ていたとみられること,原告Aも,本件各面会以前の平成20年9月1日の面会の際,もう内緒話ができない,平成22年10月8日の本件面会60の際,本日も立会いが付くので,大事な話があったが次回に話すと述べるなど,再審請求の準備のために秘密面会を求める意向を示していたことからすれば,原告らは,上記申入書が送付された後になされた再審請求に向けた打合せを目的とする面会のすべてについて,少なくとも黙示的に秘密面会の申出をしていたというべきであり,そうでないとしても,上記の事 - 38 -情に照らせば,原告らは秘密面会を求める意向を有しており,刑事施設の長においてもそのことは十分認識し得たというべきであるから,かかる面会につき,秘密面会を許さない刑事施設の長の措置は,明示的に秘密面会の申出があった場合と同様に,前記特段の事情がない限り,裁量権の範囲を逸脱し又はこれを濫用して死刑確定者及び再審請求弁護人等の秘密面会をする利益を侵害したものとして,国賠法1条1項の適用上違法となると解するのが相当である。 エ小括そして,被告は,前記特段の事情について何ら主張立証しないから,上記各面会について,秘密面会を許さなかった東京拘置所長の措置(消滅時効が成立するものを除き,本件面会124,129,130,133,135,137,139,141ないし143,148,151,154,155,159,161,165,168,175,178,180,192,195,198,201,204,207,210,211,213ないし220,226,227,231,232,237,239,241,243ないし246)は,その裁量権の範囲を逸脱し又はこれを濫用して上記各面会をした原告A及び原告弁護士らの秘密面会の利益をいずれも侵害したものとして,国賠法1条1項の適 ,237,239,241,243ないし246)は,その裁量権の範囲を逸脱し又はこれを濫用して上記各面会をした原告A及び原告弁護士らの秘密面会の利益をいずれも侵害したものとして,国賠法1条1項の適用上違法となる。 また,以上によれば,東京拘置所長が,上記各面会に関して秘密面会を許さなかったことにつき,職務上通常尽くすべき注意義務を尽くさなかったものとして,過失があったことは明らかである。 (3) 別件国賠訴訟に向けた打合せを目的とする面会についてア面会目的上記認定,説示したところによれば,別紙面会状況表の「面会申出書の面会目的」「国賠打合せ」欄に「○」が記載されている各面会については,面会申出書の面会目的欄の記載(乙1,6)及び弁論の全趣旨に加 - 39 -え,上記1(2)キのとおり,原告弁護士ら6名が,本件各面会の前である平成21年2月23日に,東京拘置所長に対し,別件国賠訴訟を同月3日に提起したことを伝え,少なくとも同訴訟提起後においては,原告Aとの面会は同訴訟の準備のためであり,職員を立ち会わせないことを求める旨の申入書を送付していたのであるから,上記事情を斟酌し,その目的は別件国賠訴訟に向けた打合せと認定すべきである。 イ判断基準(ア) 原告らは,別件国賠訴訟は,再審請求弁護人等の秘密接見交通権に対する侵害行為を違法と認定させて排除するためのものであるから,再審請求の準備活動にほかならず,再審請求と一体として評価されるべきである,仮に再審請求と一体として評価することができないとしても,秘密接見交通権の侵害を理由とする別件国賠訴訟の打合せにおいては,被侵害利益である秘密接見交通権の内容に言及せざるを得ず,これに立ち会うときには,必然的に過去の再審請求の打合せの内容を聴取することになるから 通権の侵害を理由とする別件国賠訴訟の打合せにおいては,被侵害利益である秘密接見交通権の内容に言及せざるを得ず,これに立ち会うときには,必然的に過去の再審請求の打合せの内容を聴取することになるから,結局,再審請求の打合せに立ち会うことと変わらないなどと主張する。 しかしながら,別件国賠訴訟は,原告A及び原告弁護士ら6名が,原告Aと原告弁護士ら6名との再審請求及び別件国賠訴訟のいずれか一方又は双方の準備を目的とする平成20年9月1日から平成21年6月18日までの計32回の各面会について,秘密面会を許さず,かつ面会時間を30分に制限した東京拘置所長の措置が違憲,違法であるなどと主張して,被告に対し,国賠法1条1項に基づく損害賠償を求めたものであり,現在又は将来になされる面会への立会い等の排除を目的とするものではないから,当然に再審請求の準備活動などと評価することはできず,別件国賠訴訟の打合せに向けた面会において,被侵害利益の内容について言及することがあるとしても,これをもって,再審請求の具体的 - 40 -な打合せと同視することもできないから,同面会に立会いを付すことが,再審請求の打合せに立会いを付すことと変わらないなどということはできない。 (イ) 死刑確定者との関係もっとも,死刑確定者の外部の者との面会について,刑事収容施設法は,121条本文において,その指名する職員が面会に立ち会うことなどを原則としつつ,同条ただし書において,死刑確定者の訴訟の準備その他の正当な利益の保護のため秘密面会を許すか否かの措置を刑事施設の長の裁量に委ね,当該正当な利益を一定の範囲で尊重するよう刑事施設の長に職務上義務付けていることは上記(2)イのとおりである。 そして,別件国賠訴訟のように,死刑確定者が,自己に対する刑事施設の長の の裁量に委ね,当該正当な利益を一定の範囲で尊重するよう刑事施設の長に職務上義務付けていることは上記(2)イのとおりである。 そして,別件国賠訴訟のように,死刑確定者が,自己に対する刑事施設の長の措置その他自己が受けた処遇に関して損害賠償を求める国賠訴訟(以下「処遇国賠訴訟」という。)に向けた打合せをするために,その代理人弁護士と面会する場合には,当該刑事施設はその処遇に関する紛争の実質的な相手方であるから,その職員が面会に立会い,発言の内容を知ることができるとすれば,死刑確定者は,率直な発言を控え,打合せを十分に行えないおそれがあり,他方,面会の相手方は,基本的人権を擁護し,社会正義を実現することを使命とする弁護士(弁護士法1条1項参照)であるから,面会の際に不適切な言動に及ぶおそれは一般に低いということができるところ,刑事収容施設法112条ただし書及び同法116条2項が,受刑者及び未決拘禁者が自己に対する刑事施設の長の措置その他自己が受けた処遇に関し弁護士法3条1項に規定する職務(当事者その他関係人の依頼又は官公署の委嘱によって訴訟事件その他一般の法律事務を行うこと)を遂行する弁護士と面会する場合には,刑事施設の規律及び秩序を害する結果を生ずるおそれがあると認めるべき特別の事情がある場合を除き,原則として立会い等の措置を許さ - 41 -ないとしているのも,上記と同様の事情を考慮したものと解される。 そうすると,死刑確定者は,刑事収容施設法121条ただし書にいう「正当な利益」として,訴訟代理人弁護士と秘密面会をする利益を有するというべきであり,上記3(2)イで述べたところの死刑確定者の秘密面会の利益の重要性を考慮すれば,死刑確定者又はその訴訟代理人弁護士が処遇国賠訴訟に向けた打合せをするために秘密面会の申出をした場合に いうべきであり,上記3(2)イで述べたところの死刑確定者の秘密面会の利益の重要性を考慮すれば,死刑確定者又はその訴訟代理人弁護士が処遇国賠訴訟に向けた打合せをするために秘密面会の申出をした場合に,これを許さない刑事施設の長の措置は,秘密面会により刑事施設の規律及び秩序を害する結果を生ずるおそれがあると認められ,又は死刑確定者の面会についての意向を踏まえその心情の安定を把握する必要性が高いと認められるなど特段の事情がない限り,裁量権の範囲を逸脱し又はこれを濫用して死刑確定者の秘密面会をする利益を侵害するものとして,国賠法1条1項の適用上違法となると解するのが相当である。 (ウ) 原告弁護士らとの関係原告らは,裁判を受ける権利を実質的に保障するためには,弁護士と依頼者とのコミュニケーションを実質的に確保する必要があり,これを実現するためには,依頼者と弁護士がその内容を第三者から聴取されることがないという保障がなければならず,実定法上も,刑法134条1項,刑訴法149条,民訴法197条1項2号で,弁護士の固有権としての秘匿特権が規定されており,民事事件の代理人弁護士にも固有の秘密面会の利益が保障されると主張する。 しかしながら,民事事件においては,刑事事件における弁護人選任権(憲法34条前段,37条3項前段,刑訴法30条,440条1項)のような権利や,国選弁護(憲法37条3項後段,刑訴法36条等),必要的弁護(同法289条)のような制度はなく,どのような事件であっても,制度的には,当事者本人のみで訴訟活動を行うことができ,訴訟 - 42 -代理人弁護士の選任は当事者の意思に完全に委ねられている(民訴法第3章第1節,第4節参照)。そして,原告らが指摘する刑訴法149条も,その本文で,弁護士又は弁護士であった者が,「業務上委 42 -代理人弁護士の選任は当事者の意思に完全に委ねられている(民訴法第3章第1節,第4節参照)。そして,原告らが指摘する刑訴法149条も,その本文で,弁護士又は弁護士であった者が,「業務上委託を受けたため知り得た事実で他人の秘密に関するものについては,証言を拒むことができる。」として証言拒絶権を規定する一方,そのただし書で,本人が承諾した場合はこの限りではないと定めているから,民事事件の代理人弁護士に,依頼者本人の利益とは別に,その固有権として秘密交通権を認めたものとは解されず,このことは,刑法134条1項,民訴法197条1項2号についても同様である。そして,他に処遇国賠訴訟の代理人弁護士がその固有権として秘密交通権を有することをうかがわせる法令上の規定は存しないことからすると,処遇国賠訴訟の訴訟代理人弁護士は,死刑確定者の代理人として,死刑確定者が求める限度で,死刑確定者の民事上の利益のために活動する地位を有するにとどまり,死刑確定者と秘密面会する固有の利益を有するとまではいえない。 また,原告らは,別件国賠訴訟において,死刑確定者である原告Aだけではなく,原告弁護士ら6名も原告本人として訴えを提起していたから,原告Aとの面会は,原告弁護士ら6名自身の係争案件に関する打合せという側面もあったとし,その意味でも固有の利益があると主張する。 しかしながら,原告弁護士ら6名が,別件国賠訴訟の原告本人としての地位に基づき,死刑確定者である原告Aの利益を離れて,原告Aと秘密面会をする固有の利益を有しているとしても,刑事収容施設法121条ただし書は,死刑確定者の面会の利益と施設内の規律及び秩序の確保等の要請との調整を図るもので,死刑確定者との面会を求める者の固有の利益と施設内の規律及び秩序の確保等の要請との調整を図る趣旨を 条ただし書は,死刑確定者の面会の利益と施設内の規律及び秩序の確保等の要請との調整を図るもので,死刑確定者との面会を求める者の固有の利益と施設内の規律及び秩序の確保等の要請との調整を図る趣旨を含むものと解することはできず(平成17年法律第50号による改正前の - 43 -監獄法45条2項に関する最高裁平成20年4月15日第三小法廷判決・民集62巻5号1005頁参照),また,別件国賠訴訟の原告本人としての地位に基づく原告弁護士ら6名の固有の利益が,刑事収容施設法121条ただし書にいう「正当な利益」に準ずるほどに重要なものともいえないから,刑事施設の長は,刑事収容施設法121条ただし書はもとより,刑事収容施設法第2編第2章第11節第2款の規定の趣旨に基づいても,同利益に配慮すべき法的義務を負うものとはいえない。 したがって,死刑確定者又はその訴訟代理人弁護士が処遇国賠訴訟に向けた打合せを目的とする面会について,秘密面会を許さない刑事施設の長の措置は,原告弁護士らとの関係では,国賠法1条1項の適用上違法となる余地はないというべきである。 ウ秘密面会の申出上記認定のとおり,東京拘置所に備え付けられた面会申出書には,秘密面会の申出をするか否かを記載する欄が存しない一方,原告Aとともに原告本人として別件国賠訴訟を提起した原告弁護士ら6名は,平成21年2月23日,東京拘置所長に対し,別件国賠訴訟を提起したとして,原告Aとの面会は別件国賠訴訟の準備のためであり,秘密面会を求める旨の申入書を送付し,他の原告弁護士らも,平成25年1月24日の本件面会198の際,原告Uにおいて,立会いがないときに国賠訴訟のことも話すと述べるなど,立会いに否定的な意向を示すことがあっても,原告弁護士ら6名と異なる見解を表明したことはなく,原告弁護士 日の本件面会198の際,原告Uにおいて,立会いがないときに国賠訴訟のことも話すと述べるなど,立会いに否定的な意向を示すことがあっても,原告弁護士ら6名と異なる見解を表明したことはなく,原告弁護士ら6名と同様の意向を有していたとみられること,原告Aも,平成24年10月15日の本件面会180の際,国賠の件で来たと述べる原告Fに対し,受付で言えば良かった,そうすれば立会職員が付かなかったと述べるなど,別件国賠訴訟の準備のために秘密面会を求める意向を示していたことからすれば,原告らは,上記申入書が送付された後になされた別件国賠訴訟に向けた打合せを - 44 -目的とする面会のすべてについて,少なくとも黙示的に秘密面会の申出をしていたというべきであり,仮にそうでないとしても,上記の事情に照らせば,原告らは秘密面会を求める意向を有しており,刑事施設の長においてもそのことは十分認識し得たというべきであるから,かかる面会につき,秘密面会を許さない刑事施設の長の措置は,明示的に秘密面会の申出があった場合と同様に,前記特段の事情がない限り,裁量権の範囲を逸脱し又はこれを濫用して死刑確定者の秘密面会をする利益を侵害するものとして,国賠法1条1項の適用上違法となると解するのが相当である。 エ特段の事情の有無被告は,別件国賠訴訟の打合せのための面会について職員の立会いを付した面会が行われた当時,原告Aは,別紙原告Aの動静一覧のとおり,原告弁護士らとの面会等において,その訴訟方針をめぐって不満を述べるなど心情に不安定な面が具体的に見られ,面会の状況を把握し,その心情を把握すべき動静が見受けられたから,その心情の安定を把握する必要性が高いと認められる特段の事情があると主張し,確かに,証拠(乙1)によれば,原告Aが,別紙原告Aの動静一覧のとおりの発言 ,その心情を把握すべき動静が見受けられたから,その心情の安定を把握する必要性が高いと認められる特段の事情があると主張し,確かに,証拠(乙1)によれば,原告Aが,別紙原告Aの動静一覧のとおりの発言をし,原告弁護士らとの面会等において,その訴訟方針をめぐって不満を述べるなどしていたことが認められる。 しかしながら,このような心情の安定は個々人の主観に関わる内心の問題であるから,その者の面会についての意向を踏まえずに,これを理由として本来保障されるべき権利利益を制約するのは相当でなく,刑事収容施設法が,死刑確定者による自弁の書籍等の閲覧を禁止し,又は信書の発受を差し止める根拠として,その心情の安定を掲げていない(同法70条1項,141条,129条1項参照)のも上記の事情を考慮したものと解される。 したがって,心情の安定を把握する必要性の観点から秘密面会を許さな - 45 -い措置が許容されるのは,「死刑確定者の面会についての意向を踏まえ」た場合に限られ,死刑確定者が秘密面会あるいは訴訟代理人弁護士との面会自体に否定的な意向を示している場合は格別,少なくとも死刑確定者が訴訟代理人弁護士との秘密面会を求めている場合には,心情の安定を把握する必要性が高いと認められる特段の事情があるとはいえないというべきである。 そして,上記認定のとおり,平成24年11月20日の本件面会189の際,原告Aは,原告Fから,立会いの希望は聞かれるのかと尋ねられ,希望なんか聞かれないなどと答えており,本件各面会において,東京拘置所長が,死刑確定者である原告Aの面会についての意向を踏まえた上で秘密面会を許さない措置を執ったことはうかがわれないのみならず,原告Aは,本件各面会全体を通して立会い等を求める意向を示したことはなく,むしろ,平成24年10月15日の についての意向を踏まえた上で秘密面会を許さない措置を執ったことはうかがわれないのみならず,原告Aは,本件各面会全体を通して立会い等を求める意向を示したことはなく,むしろ,平成24年10月15日の本件面会180の際には,国賠訴訟の件で来たと述べる原告Fに対し,受付で言えば良かった,そうすれば立会職員が付かなかったと述べるなど,別件国賠訴訟の準備のために秘密面会を求める意向を示していたのであるから,被告の主張を踏まえても,前記特段の事情があるということはできない。 オ小括したがって,上記各面会について,秘密面会を許さなかった東京拘置所長の措置(消滅時効が成立するものを除き,本件面会124,129,130,133,139,141,143,148,151,154,155,159,161,165,168,172,175,180,183,186,189,192,195,198,207,210,213,215,216,218ないし220,226,227,231,232,239,241,246)は,その裁量権の範囲を逸脱し又はこれを濫用して原告Aの秘密面会の利益を侵害したものとして,原告Aとの関 - 46 -係で,国賠法1条1項の適用上違法となるというべきである(ただし,上記のとおり,原告弁護士らとの関係では,国賠法1条1項の適用上違法であるとはいえない。)。 また,以上によれば,東京拘置所長が,上記各面会に関して秘密面会を許さなかったことにつき,職務上通常尽くすべき注意義務を尽くさなかったものとして,過失があったことは明らかである。 (4) その余の面会(本件面会224,230)について証拠(乙1の366頁及び375頁)によれば,本件面会224及び230については,いずれも,面会申出書の「面会の目的」欄の「裁判」に丸が (4) その余の面会(本件面会224,230)について証拠(乙1の366頁及び375頁)によれば,本件面会224及び230については,いずれも,面会申出書の「面会の目的」欄の「裁判」に丸が付けられ,「受刑者等との面会を申し込む親族以外の方の面会目的」欄には,本件面会224では「弁護人選任届提出」とのみ記載され,本件面会230では何ら記載されていないことが認められるから,いずれも,刑事収容施設法121条ただし書にいう立会い等をさせないことを「適当とする事情」があったということはできない。 したがって,本件面会224及び230につき,秘密面会を許さなかった東京拘置所長の措置は,裁量権の範囲を逸脱し又はこれを濫用して死刑確定者又はその面会の相手方の秘密面会をする利益を侵害するものとして,国賠法1条1項の適用上違法となるとはいえない。 4 争点(2)(面会時間を制限した東京拘置所長の措置の違法性)について(1) 本件再審請求等に向けた打合せを目的とする面会についてア刑事施設の長は,被収容者と外部の者との面会に関する許否の権限を有しているところ,当該施設の規律及び秩序の維持,被収容者の矯正処遇の適切な実施等の観点からその権限を適切に行使するよう職務上義務付けられている(刑事収容施設法第2編第2章第11節第2款)。そして,死刑確定者については,同法120条1項において,死刑確定者の法律上の重大な利害に係る用務の処理のため面会することが必要な者など,同項各号 - 47 -に掲げる者から面会の申出があったときは,通訳費用を負担しない場合などを除き,面会を許すものとしつつ,同法122条が準用する同法114条1項は,法務省令で定めるところにより,面会の時間について,「刑事施設の規律及び秩序の維持その他管理運営上必要な制限をする 場合などを除き,面会を許すものとしつつ,同法122条が準用する同法114条1項は,法務省令で定めるところにより,面会の時間について,「刑事施設の規律及び秩序の維持その他管理運営上必要な制限をすることができる。」と規定し,この法務省令に当たる刑事収容施設規則73条は,「法第114条第1項の規定により被収容者の面会の時間について制限をするときは,その時間は,30分を下回ってはならない。ただし,面会の申出の状況,面会の場所として指定する室の数その他の事情に照らしてやむを得ないと認めるときは,5分を下回らない範囲内で,30分を下回る時間に制限することができる。」と規定して,面会の時間を制限するか否か,制限するとしてどの程度制限するかの措置を刑事施設内の実情に通暁した刑事施設の長の裁量に委ね,死刑確定者が同法120条1項各号に掲げる者と面会する利益を一定の範囲で尊重するよう刑事施設の長に職務上義務付けている。 そして,再審請求弁護人等は,同法120条1項2号に掲げる者に当たるのみならず,上記3(2)イで説示したとおり,死刑確定者及び再審請求弁護人等が面会する利益は,死刑確定者だけではなく,再審請求弁護人等にとっても重要なものであり,その固有の利益でもあることからすれば,刑事施設の長は,死刑確定者の面会に関する許否の権限を行使するに当たり,その規律及び秩序の維持等の観点からその権限を適切に行使するとともに,死刑確定者と再審請求弁護人等との面会の利益をも十分に尊重しなければならないというべきであり,このことは,秘密面会を許さない措置のみならず,面会時間を制限する措置についても,同様に妥当するというべきである。 したがって,死刑確定者又は再審請求弁護人等が再審請求等に向けた打合せをするために面会の申出をした場合に,面会時間を制限する刑事 面会時間を制限する措置についても,同様に妥当するというべきである。 したがって,死刑確定者又は再審請求弁護人等が再審請求等に向けた打合せをするために面会の申出をした場合に,面会時間を制限する刑事施設 - 48 -の長の措置が許されるのは,刑事施設の規律及び秩序を害するなどその管理運営に支障を生ずる具体的なおそれがあると認められる場合に限られ,そうでない場合には,同措置は,裁量権の範囲を逸脱し又はこれを濫用して死刑確定者の面会の利益を侵害するだけではなく,再審請求弁護人等の固有の面会の利益も侵害するものとして,国賠法1条1項の適用上違法となると解するのが相当である。 イこの点,被告は,死刑確定者は,有罪判決が確定しているという点において,憲法及び刑訴法において防御権が保障されている未決拘禁者とその法的地位を決定的に異にすることからすれば,未決拘禁者弁護人面会と異なる取扱いをすることには合理性があり,死刑確定者と再審請求弁護人等との面会は,飽くまでも一般面会であって,刑事収容施設規則73条が「法114条第1項の規定により被収容者の面会の時間について制限をするときは,その時間は,30分を下回ってはならない。」と定めていることを理由に,30分の時間制限が違法となる余地がないと主張する。 確かに,死刑確定者と未決拘禁者はその法的地位を異にし,未決拘禁者と弁護人との接見交通権は,憲法34条前段及び37条3項前段により保障された弁護人選任権に由来し,刑訴法39条1項により直接に保障されたものであることからすると,死刑確定者と再審請求弁護人等が面会する利益が,未決拘禁者と弁護人との接見交通権には一定程度劣後することは否定できず,死刑確定者と再審請求弁護人等との面会について,未決拘禁者弁護人面会と異なる取扱いをすることが一概に不合理である 会する利益が,未決拘禁者と弁護人との接見交通権には一定程度劣後することは否定できず,死刑確定者と再審請求弁護人等との面会について,未決拘禁者弁護人面会と異なる取扱いをすることが一概に不合理であるとまではいえないけれども,上記のとおり,死刑確定者と再審請求弁護人等が面会する利益も,刑訴法440条1項により保障された弁護人選任権に由来する重要なものであることからすると,未決拘禁者弁護人面会と異なる取扱いをするからといって,直ちに他の通常の一般面会と同様に取り扱うことに合理性があるともいえない。 - 49 -そして,死刑確定者と再審請求弁護人等との面会の利益の重要性や性質等にかんがみれば,その制限は,刑事施設の規律及び秩序を害するなどその管理運営に支障を生ずる具体的なおそれがあると認められる場合に限られるべきことは上記のとおりであり,上記規則は,刑事収容施設法114条1項の委任を受けて,面会時間を制限する場合の原則的下限を定めたものにすぎず,同法114条1項の「必要な」範囲を超えれば,国賠法1条1項の適用上違法となることは明らかであるから,被告の主張は採用できない。 また,被告は,未決拘禁者について,憲法及び刑訴法において保障されている防御権を尊重することが強く求められることから,未決拘禁者弁護人面会の申出がされた場合に速やかにその面会を実施できるようにするため,一定数の弁護人面会室を空室として確保しておくべき要請は高く,一般面会1件当たりに割り当てることができる時間は単純計算で約36分となる(計算式:7時間×60分×15室÷176件≒35.79分)ことなどから,30分の時間制限をせざるを得ない実情が現に存在するとも主張する。 しかしながら,本件再審請求等に向けた打合せを目的とする本件各面会について,秘密面会を許すべきであ ≒35.79分)ことなどから,30分の時間制限をせざるを得ない実情が現に存在するとも主張する。 しかしながら,本件再審請求等に向けた打合せを目的とする本件各面会について,秘密面会を許すべきであることは,上記3(2)で説示したとおりであるから,刑事施設の物的設備の観点からいえば,これらの面会については,一般面会室のみならず,弁護人面会室を使用することも可能である。そして,上記1(1)アで認定したとおり,弁護人面会室がおおむね36室,1日当たりの未決拘禁者弁護人面会数が約92件であるから,一般面会の一日当たりの実施時間(7時間)を基に(未決拘禁者弁護人面会の実施時間はそれよりも長いと解される。),未決拘禁者弁護人面会1件当たりに割り当てることができる時間を計算しても約2時間44分(36室×7時間×60分÷92件)となることからすれば,被告が提出した - 50 -「平成28年5月から同年12月までの間において,当所収容中の未決拘禁者の長時間にわたる弁護人面会実施状況について,任意の3名を抽出調査した」とする報告書(東京拘置所処遇部処遇部門法務事務官作成。乙20)を踏まえても,弁護人面会室においては,相当数の空室が存在する場合も多いことがうかがわれ(同報告書記載の未決拘禁者弁護人面会の時間は最大でも2時間50分,多くは1時間以上2時間以内であり,その他,同報告書で抽出調査されなかった「長時間にわた」らない面会も相当数あると考えられる。),死刑確定者と再審請求弁護人等との面会について,空室の弁護人面会室を使用させたとしても,直ちに刑事施設の管理運営に支障を生ずる具体的なおそれがあるとはいえないし,仮にそうした事態が生じた場合であっても,一般面会室を使用して未決拘禁者弁護人面会を実施することで対処可能であり,上記1(1)アで認定したと 理運営に支障を生ずる具体的なおそれがあるとはいえないし,仮にそうした事態が生じた場合であっても,一般面会室を使用して未決拘禁者弁護人面会を実施することで対処可能であり,上記1(1)アで認定したとおり,東京拘置所においても,現にそれと同様の運用がされている(仮に同時点で一般面会室が満室であったとしても,それほど間をおかずに14室ある一般面会室のいずれかが利用可能となるものと考えられる。)。 もとより,死刑確定者と再審請求弁護人等との面会の利益を十分に尊重した上で,具体的にどのような方策を実施するかは,刑事施設内の実情に通暁した刑事施設の長の裁量に委ねられるところであるが,上記のとおり,死刑確定者及び再審請求弁護人等が面会する利益が,刑訴法440条1項により保障された弁護人選任権に由来する重要なものであることに鑑みれば,本件各面会当時の弁護人面会室の使用状況等,個別具体的な事情を踏まえずに,被告が主張するような一般的抽象的なおそれのみで,一律に面会時間を30分に制限する必要性があるということはできないし,一律に面会時間を30分に制限しなければ,その管理運営に支障を生ずる具体的なおそれがあるということもできないのであって,本件においては,少なくとも死刑確定者と再審請求弁護人等との面会の利益の重要性を十分 - 51 -に考慮することなく,その結果,刑事施設の規律及び秩序を害するなどその管理運営に支障を生ずる具体的なおそれがあるとはいえないにもかかわらず,面会時間を一律に30分に制限した点において,東京拘置所長の措置は,裁量権の範囲を逸脱し又はこれを濫用したものというべきである。 ウしたがって,本件再審請求等に向けた打合せを目的とする面会につき,面会時間を一律に30分に制限した東京拘置所長の措置(消滅時効が成立するものを除き,本件 はこれを濫用したものというべきである。 ウしたがって,本件再審請求等に向けた打合せを目的とする面会につき,面会時間を一律に30分に制限した東京拘置所長の措置(消滅時効が成立するものを除き,本件面会122ないし155,157ないし161,163ないし169,174,175,177ないし180,182,184,185,188,190,192ないし196,198,200ないし223,225ないし229,231ないし253,255,256)は,裁量権の範囲を逸脱し又はこれを濫用して上記各面会をした原告A及び原告弁護士らの面会の利益をいずれも侵害したものとして,国賠法1条1項の適用上違法となる。 また,以上によれば,東京拘置所長が,上記各面会に関して面会時間を一律に30分に制限したことにつき,職務上通常尽くすべき注意義務を尽くさなかったものとして,過失があったことは明らかである。 (2) 別件国賠訴訟を目的とする面会について上記3(3)イ(ウ)で説示したとおり,民事事件においては,刑事事件における弁護人選任権(憲法34条前段,37条3項前段,刑訴法30条,440条1項)のような権利や,国選弁護(憲法37条3項後段,刑訴法36条等),必要的弁護(同法289条)のような制度はなく,どのような事件であっても,訴訟能力を有する限り,当事者本人のみで訴訟活動を行うことができ,訴訟代理人弁護士の選任は当事者の意思に完全に委ねられている(民訴法第3章第1節,第4節参照)。 そして,処遇国賠訴訟に向けた打合せをするために,その代理人弁護士と面会する場合は,当該刑事施設がその処遇に関する紛争の実質的な相手方で - 52 -あることなどから,面会の際の発言の内容を職員に知られないことについて正当な利益(秘密面会の利益)を有するとしても,刑事事 合は,当該刑事施設がその処遇に関する紛争の実質的な相手方で - 52 -あることなどから,面会の際の発言の内容を職員に知られないことについて正当な利益(秘密面会の利益)を有するとしても,刑事事件との上記相違を踏まえれば,代理人弁護士と面会する利益自体が,再審請求弁護人等と面会する利益ほど重要であるとはいえないから,処遇国賠訴訟に向けた打合せを目的とする面会について,他の通常の一般面会と同様に取り扱うことが直ちに合理性を欠くということはできない。 そして,上記1(1)で認定した東京拘置所の面会業務の運営状況等に照らせば,面会室数を一般面会用に最大で確保できる15室として単純計算しても,一般面会1件当たりに割り当てることができる時間は約36分となり(計算式:7時間×60分×15室÷176件≒35.79分),さらに,被収容者の連行時間等,上記計算に含まれない要素も存することからすると,被収容者間の処遇の公平を保ち,刑事施設の規律及び秩序を維持するため,通常の一般面会の時間を30分に制限することは相当というべきである。 したがって,別件国賠訴訟に向けた打合せを目的とする面会について,面会時間を30分に制限する東京拘置所長の措置は,裁量権の範囲を逸脱し,又はこれを濫用したものとして,国賠法1条1項の適用上違法となるとはいえない。 (3) その余の面会(本件面会224,230)その余の面会については,長時間の面会を必要とする事情は何らうかがわれず,上記説示したところに照らせば,面会時間を30分に制限した東京拘置所長の措置が,裁量権の範囲を逸脱し,又はこれを濫用したものとして,国賠法1条1項の適用上違法となるとはいえない。 5 争点(3)(裁判を受ける権利の侵害)について原告らは,憲法32条に規定された裁判を受ける権利を実質 逸脱し,又はこれを濫用したものとして,国賠法1条1項の適用上違法となるとはいえない。 5 争点(3)(裁判を受ける権利の侵害)について原告らは,憲法32条に規定された裁判を受ける権利を実質的に保障するためには,法律の専門家である弁護士の援助が不可欠であり,弁護士と依頼者と - 53 -のコミュニケーションを実質的に確保する必要があるとして,別件国賠訴訟に向けた打合せを目的とする面会に係る本件各措置は,別件国賠訴訟の準備を妨害したものとして,裁判を受ける権利の侵害となると主張する。 しかしながら,憲法32条は,「何人も,裁判所において裁判を受ける権利を奪はれない。」と規定しており,これは,飽くまでも,民事事件においては,すべての人が裁判所に訴えを提起する権利を保障するもので,憲法34条前段及び37条3項前段が刑事手続において弁護人依頼権を保障しているのとは異なるものであるから,死刑確定者である被収容者が,民事事件を依頼した代理人弁護士と,拘置所職員の立会いなく,また,時間の制限なく面会する権利までを保障したものとは解されない。 したがって,本件各措置が,裁判を受ける権利を侵害し,国賠法1条1項の適用上違法であるとはいえない。 6 争点(5)(損害額)について上記のとおり,死刑確定者である原告Aは,本件再審請求等又は別件国賠訴訟に向けた打合せを目的とする面会につき,秘密面会を許されなかったことにより,再審請求弁護人等又は別件国賠訴訟の訴訟代理人弁護士と秘密面会をする利益を違法に侵害されたのみならず,再審請求等に向けた打合せを目的とする面会につき,再審請求弁護人等と面会する利益を面会時間を一律に30分に制限されることにより違法に侵害された。 また,原告J,原告K及び原告Tを除く原告弁護士らは,本件再審請求等に向 せを目的とする面会につき,再審請求弁護人等と面会する利益を面会時間を一律に30分に制限されることにより違法に侵害された。 また,原告J,原告K及び原告Tを除く原告弁護士らは,本件再審請求等に向けた打合せを目的とする面会につき,秘密面会を許されなかったことにより,死刑確定者である原告Aと秘密面会をする利益を違法に侵害されたものである。 そこで,その面会の回数,本件各措置の態様その他本件に現れた一切の事情を考慮すると,その慰謝料は,原告Aは100万円,原告Bは11万円,原告Cは17万円,原告Dは7万円,原告Eは5万円,原告Fは9万円,原告Gは - 54 -7万円,原告Hは24万円,原告Iは5万円,原告Lは7万円,原告Mは11万円,原告Nは8万円,原告Oは8万円,原告Pは8万円,原告Qは9万円,原告Rは6万円,原告Sは10万円,原告Uは14万円,原告Vは5万円,原告Wは2万円,原告Xは2万円をもって相当と認める。 第4 結論よって,原告Aの請求は理由があるから認容し,原告B,原告C,原告D,原告E,原告F,原告G,原告H,原告I,原告L,原告M,原告N,原告O,原告P,原告Q,原告R,原告S,原告U,原告V,原告W及び原告Xの請求は主文2項の限度で理由があるからその限度で認容し,上記原告弁護士らのその余の請求並びに原告J,原告K及び原告Tの請求はいずれも理由がないから棄却することとし,仮執行宣言は相当でないから付さないこととして,主文のとおり判決する。 さいたま地方裁判所第2民事部 裁判官塚原洋一 裁判長裁判官脇由紀は転勤のため署名押印することができない。 裁判官 裁判官塚原洋一 裁判長裁判官脇由紀は転勤のため署名押印することができない。 裁判官山田悠一郎は転勤のため署名押印することができない。 裁判官塚原洋一
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