- 1 - 主文 1 被告A及び同Bは,原告に対し,連帯して11万円及びこれに対する平成27年10月9日から支払済みまで年5分の割合による金員(ただし,11万円及びこれに対する同月10日から支払済みまで年5分の割合による金員の限度で被告C及び同Dと連帯して)を支払え。 2 被告C及び同Dは,原告に対し,14万3000円及びこれに対する平成27年10月10日から支払済みまで年5分の割合による金員(ただし,11万円及びこれに対する同日から支払済みまで年5分の割合による金員の限度で被告A及び同Bと連帯して)を支払え。 3 原告の被告C,同A,同B及び同Dに対するその余の請求並びに被告市に対する請求をいずれも棄却する。 4 訴訟費用は,原告の負担とする。 5 この判決は,第1項及び第2項に限り,仮に執行することができる。 事実及び理由 第1 請求被告らは,原告に対し,連帯して9022万4820円並びに被告市,同A及び同Bにおいては上記金員に対する平成27年10月9日から,同C及び同Dにおいては上記金員に対する同月10日から各支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 第2 事案の要旨 1 事案の概要本件は,原告が,被告C,同A,同B及び同D(以下「被告Cら」という。)から,誹謗中傷される,清掃時間中わざと原告に机を運ばせなかったり,原告の机だけを運ばなかったりする,消しゴムのかすやシャープペンシルの芯を投げ付けられるなどのいじめを受け,これらによって精神的苦痛を受けるとともに統合失調症を発症したと主張して,被告Cらに対し,共同不法行為に基づく- 2 - 損害賠償請求権として,また,原告が通学していた中学校の教諭らが前記いじめに関して防止義務等を怠ったと主張して,被告市に対し,国家賠償法1条1 ,被告Cらに対し,共同不法行為に基づく- 2 - 損害賠償請求権として,また,原告が通学していた中学校の教諭らが前記いじめに関して防止義務等を怠ったと主張して,被告市に対し,国家賠償法1条1項に基づく損害賠償請求権として,9022万4820円及びこれに対する訴状送達の日の翌日(被告市,同A及び同Bについては平成27年10月9日,被告C及び同Dについては同月10日。)から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の連帯支払を請求する事案である。 2 前提となる事実(当事者間に争いのない事実並びに後掲の証拠及び弁論の全趣旨により容易に認定することができる事実)⑴ 当事者等ア原告は,平成24年度(同年4月から平成25年3月まで)当時,福知山市立南陵中学校(以下「本件中学校」という。)の2年生であり,被告Cらは,当時原告と同級生であった。なお,被告Aは,中学1年時及び2年時に原告と同クラスであり,被告C,同D及び同Bは中学2年時に原告と同クラスであった。 イ平成24年度当時の本件中学校の校長はE,原告及び被告Cらが在籍していた2年4組の担任はF(以下「F教諭」という。),2年生の学年主任はG(以下「G教諭」という。)であった。 ⑵ 原告は,平成25年1月24日から本件中学校へ登校しなくなった。 ⑶ 原告は,平成25年9月27日,幻聴や妄想を主訴として,社会医療法人財団大樹会総合病院回生病院(以下「回生病院」という。)精神科を受診し,統合失調症との診断を受けた(甲10,13,14)。 3 争点及びこれに関する当事者の主張⑴ 被告Cらによる原告に対するいじめの有無及び違法性(原告の主張)原告は,平成24年5月ないし6月頃から同年10月までの間,次のとおり被告Cらからいじめ(以 びこれに関する当事者の主張⑴ 被告Cらによる原告に対するいじめの有無及び違法性(原告の主張)原告は,平成24年5月ないし6月頃から同年10月までの間,次のとおり被告Cらからいじめ(以下「本件いじめ行為」という。)を受けた。被告C- 3 - らの原告に対する本件いじめ行為は,不法行為に該当する。 ア暴言被告Cらから「デブ」,「こいつ鼻の下長くない?」「きもい」「しっしっ」などと誹謗中傷を受けたほか,被告C及び同Dからは,「こいつ巨乳や」などの性的発言をされた。また,被告C及び同Dとその他数名で原告を囲み「何かしゃべれ」と要求されることがあった。 イ机運び拒否行為原告が掃除時間中に机を運んでいると,被告Cらが,原告に机を触られるのが汚いとの理由で「あっ」と大声を出して机を原告から奪う,あるいは後になって「(原告に)机運ばれとったで」などと被告Cらが報告し合い,他方,原告が汚いから原告の机に触りたくないという言い掛かりにより原告の机だけを運ばないまま放置するなどした。 ウ消しゴムのかす等投げ付け行為被告Cらから,授業中に,原告の頭部へ消しゴムのかすや切れ端,シャープペンシルの芯を繰り返し執拗に投げ付けられた。 エ大縄を引っ張る行為平成24年9月6日,クラス全体で行う大縄飛びの練習中に転倒した際,被告Dに強引に縄を引っ張られ,右足を負傷させられた。 (被告Cらの主張)被告Cが,同Dとの間で小さくちぎった消しゴムのかけらを投げ合い,原告に対し,この消しゴムのかけらを投げたこと(なお,被告A及び同Bは関与していない。),原告が掃除時間中に被告Cの机を運ぶ際に「あっ」と声を上げたこと,被告A及び同Bが,掃除時間中に原告に机を運ばれることを避けていたこと,被告Dが,誤って原告の足に大 A及び同Bは関与していない。),原告が掃除時間中に被告Cの机を運ぶ際に「あっ」と声を上げたこと,被告A及び同Bが,掃除時間中に原告に机を運ばれることを避けていたこと,被告Dが,誤って原告の足に大縄を引っ掛けてしまったことは認めるが,その余の事実については否認する。本件いじめ行為には不法行為に基づく損害賠償責任を強いるほどの違法性がない。 - 4 - (被告市の主張)被告C及び同Dが,消しゴムのかすを原告に向かって投げたことは認めるが,一過性のものにすぎない。また,被告Cらが,掃除時間中に原告に自分の机を運ばれるのを嫌がり,又は原告の机を運ぶのを嫌がるといった行為に同調していたことは認めるが,これらの行為は頻繁に発生していたわけではなく,原告が主張するように長期間続いたものではなかった。 ⑵ 教諭等の注意義務違反の有無(原告の主張)アいじめ調査・いじめ防止義務違反学校設置者は,いじめを予見し,又は認識した場合,そのいじめに迅速に対処し,生徒の心身に対する安全を守るとともに,いじめの発生を防止する義務を負い,また,いじめがあることが確認された場合,直ちにいじめを受けた生徒の安全を確保するとともに,いじめを行った生徒に対して事情を確認した上で,適切な調査をし,いじめを行った生徒に適切な指導監督をすべき義務を負っている。 しかしながら,本件では,次のような注意義務違反があった。 消しゴムのかすを投げるなどの行為は授業中に行われていたもので,遠くから見ても白い物が付いているのが分かるほど投げつけられていた上,机に関しては教師の監督下にある掃除時間中にされた行為であり,平成24年6月頃までに原告が前記いじめを受けていたことを認識することができた。そうであるところ,平成24年7月1日に本件中学校 た上,机に関しては教師の監督下にある掃除時間中にされた行為であり,平成24年6月頃までに原告が前記いじめを受けていたことを認識することができた。そうであるところ,平成24年7月1日に本件中学校で実施された学校生活に関するアンケートにおいて,原告は,「学校生活がいっぱいいっぱいである」の欄にチェックを入れており,また,他のアンケートでもいじめを窺わせる回答をしていたのであるから,原告やその友人及び原告の親に対し,原告に対するいじめの有無について聴取するなどの調査をすべき義務を負っていたにもかかわらず,これを怠っ- 5 - た。 平成24年9月頃,原告は,クラス担任であるF教諭に対し,被告Cらから消しゴムのかすを投げ付けられていることを報告したのであるから,F教諭は,校長やG教諭に報告した上,いじめを調査して原告の親に報告し,被告Cらに適切な指導監督をすべき義務を負っていたにもかかわらず,何ら対応することなく,これを怠った。 平成24年10月17日,19日,26日及び30日に原告が学校を飛び出すという出来事が発生した上,同月19日には,原告の母親がF教諭及びG教諭に対し,原告に対しいじめが行われているかもしれないので調査してほしい旨申し入れたのであるから,教諭らとしては,原告からの聴き取りを行うなどしてその原因やいじめの有無を調査し,いじめを発見した上で,被告Cらに対し指導監督すべき義務を負っていたにもかかわらず,これを怠った。 イ学習環境整備義務違反本件中学校には,いじめの被害を受けた生徒に静謐な環境の下で学習に集中し得る環境を構築する義務があり,いじめが発覚した後は,本件中学校の教諭らは,被告Cら加害生徒を図書室や校長室において分離して学習させる,出席停止等の措置を講じる,クラス替えを行 境の下で学習に集中し得る環境を構築する義務があり,いじめが発覚した後は,本件中学校の教諭らは,被告Cら加害生徒を図書室や校長室において分離して学習させる,出席停止等の措置を講じる,クラス替えを行うなどの学習環境を整備すべき義務を負っていたにもかかわらず,これを怠った。 (被告市の主張)外形的に原告が主張するような行為の一部が,被告Cらないしその他の生徒によってされたことはあるものの,本件中学校の教諭らが原告から消しゴムのかすの件について相談を受けたのは平成24年10月15日である。また,机運びの件について,教諭らが認識することができたのは原告の母親からの申入れがあった同年12月17日である。そして,本件中学校の教諭らは,前同日以降,原告に事情を確認したり,被告Cらに指導し,謝罪させた- 6 - りしており,いじめ調査義務,いじめ防止義務,学習環境整備義務を履行した。 ⑶ 被告Cらのいじめ行為と原告の統合失調症発症との相当因果関係の有無(原告の主張)原告は,被告Cらの本件いじめ行為による精神的苦痛及びストレスから,中学3年生の1学期に妄想型統合失調症を発症し,平成25年9月27日に精神科を受診し,統合失調症と診断され,投薬治療を受けるようになった。 これらのことからすると,被告Cらの本件いじめ行為と原告の統合失調症発症との間には相当因果関係がある。 (被告市の主張)原告が統合失調症であることは否認する。仮に原告が統合失調症であり,被告Cらが本件いじめ行為を行った事実があるとしても,いじめではなく他の要因によって発症したというべきであり,本件いじめ行為と原告の統合失調症発症との間には相当因果関係がない。 (被告Cらの主張)被告Cらによる本件いじめ行為が も,いじめではなく他の要因によって発症したというべきであり,本件いじめ行為と原告の統合失調症発症との間には相当因果関係がない。 (被告Cらの主張)被告Cらによる本件いじめ行為が終了した時期と原告が通院を開始した時期とは長い期間が空いていること,原告が本件いじめ行為の終了後に授業に参加した際,精神疾患を窺わせる症状が表れていなかったことからすると,本件いじめ行為と原告の統合失調症発症との間には事実的因果関係がない。 また,仮に事実的因果関係が認められるとしても,被告Cらが認識していた事情からすると,本件いじめ行為当時,原告が統合失調症を発症することまで予見することはできなかったから,相当因果関係がない。 ⑷ 原告の損害及びその額(原告の主張)原告は,本件いじめ行為が原因で精神的苦痛を被り,高校にも進学できず,統合失調症を発症したことにより,次の損害(合計9022万4820円)- 7 - を被った。 ア治療費合計60万9050円 回生病院(平成25年9月27日~平成27年4月9日)58万9140円(甲16) 医療法人福知会クリニックまほら(以下「クリニックまほら」という。)(平成27年4月~同年11月)1万9910円(甲17)イ逸失利益 6440万5770円(計算式)472万6500円(平成24年の賃金センサス・男女全学歴・全年齢計)×0.75(労働能力喪失率75%)×18.1687(就労可能年数49年のライプニッツ係数)ウ後遺障害慰謝料 1400万円エいじめによる精神的苦痛に対する慰謝料 300万円オ弁護士費用相当額 821万円(被告らの主張)否認ないし争う。 ウ後遺障害慰謝料 1400万円エいじめによる精神的苦痛に対する慰謝料 300万円オ弁護士費用相当額 821万円(被告らの主張)否認ないし争う。 第3 当裁判所の判断 1 認定事実前記前提となる事実,証拠(甲1,2,7,24,25,乙5,6,12~14,丙5,6のほか後掲各証拠,証人H,同F,同E,同I,被告A及び同C)及び弁論の全趣旨によると,次の事実が認められる。 ⑴ 小学校5,6年生時原告は,福知山市立昭和小学校(以下「昭和小学校」という。)に通学していたが,小学校5年生の3学期頃から小学校6年生にかけて,廊下を移動するときには,壁に顔を向けて歩き,他の人が視界に入ると走って逃げるよう- 8 - に物陰に隠れるなどの行動が見られるようになった。また,教室で他の生徒と一緒に授業を受けることができず,他の生徒がいない状態でないと教室への出入りができなくなったため,職員室や空き教室で,原告の周囲をパーテーションで区切った状態で個別指導を受けるようになった。 原告は,小学校6年生のときの修学旅行での集合写真の撮影では,下を向いた状態であった(乙16,17)。 原告は,平成23年3月,昭和小学校を卒業した。 ⑵ 中学1年生時原告は,平成23年4月,本件中学校に入学したが,中学1年生の間,原告がいじめに遭うことはなかった。なお,本件中学校が新入生の学級編成を検討するに当たって,昭和小学校からは,原告が行動面やコミュニケーション等において配慮を要する生徒である旨の情報提供があった。 ⑶ 中学2年生時アクラスにおける原告のふだんの様子原告は,平成24年4月,本件中学校の2年生に進級し,クラス分けにより2年4組となっ 慮を要する生徒である旨の情報提供があった。 ⑶ 中学2年生時アクラスにおける原告のふだんの様子原告は,平成24年4月,本件中学校の2年生に進級し,クラス分けにより2年4組となった。担任はF教諭であり,被告Cらと同じクラスとなった。 原告は,ふだん教室にいるとき,自分の席に座り,顔はずっとうつむいた状態であることが多かった。同じクラスの者と会話を楽しむようなことはなく,また,人と視線を合わせようとせず,人とは関わりたくない,話しかけないでほしいという雰囲気があった。授業中,前の席に座っていた被告Aからプリントを手渡された際も,手渡しでは受け取らないということがあった。 イ 1学期平成24年5月18日,原告を含む本件中学校2年生の生徒らに対し,「生活と健康についてのアンケート」(特別支援教育推進事業「中学校に- 9 - おける思春期スクリーニング実施要項」に基づくもの。)及び「教育相談アンケート」が実施された(甲26,乙1,2,19)。原告は,前記生活と健康についてのアンケートの「私は,他の子から,いじめられたり,からかわれたりする。」という質問項目において,「まああてはまる」と回答した(乙3)。同年6月4日には,本件中学校2年生の生徒らに対し,「生活振り返りアンケート」が実施された(甲26,乙10)。 被告Cは,授業中に,被告Dとの間で消しゴムを小さくちぎったもの(以下「消しゴムのかす」という。)を使ってキャッチボールのようなことを行っていた。そのような行為の中で,被告Cは,同年6月頃から同年10月までの間,少なくとも10回以上にわたり,原告の後ろ髪あたりに向かって,わざと消しゴムのかすを投げ付けた。 本件中学校の生徒らは,掃除時間中(昼休み後から午後の授業開始までの約15分間)に教室掃除をす 間,少なくとも10回以上にわたり,原告の後ろ髪あたりに向かって,わざと消しゴムのかすを投げ付けた。 本件中学校の生徒らは,掃除時間中(昼休み後から午後の授業開始までの約15分間)に教室掃除をする際,生徒が使用する机を移動させる作業を行っていたところ,同年6月頃から同年10月までの間,原告が掃除時間中に他の生徒の机を運んでいると,少なくとも被告Cらを含む11名の生徒は,原告に自分の机を運ばれるのを嫌がり,また,原告の机を運ぶのを嫌がって放置するなどしていた。実際,被告Cは,原告が被告Cの机を運ぶのを見て,「あっ。」と声をあげて嫌がる素振りをしていた。 同年7月1日頃,F教諭は,本件中学校のサポート教室担当のJ教諭(以下「J教諭」という。)とともに原告宅を家庭訪問し,原告の母と面談を実施して原告が人間関係の構築に対し不安を感じているようであると伝えた。もっとも,この家庭訪問の際には,原告に対するいじめの訴えはなかった。 ウ 2学期平成24年9月3日頃,本件中学校において,文部科学省からの依頼- 10 - に基づき,全校生徒を対象にした無記名によるいじめ問題に関するアンケートが実施された(乙4)。F教諭は,当該アンケートの結果,原告が嫌な思いをしているのではないかという回答があったため,原告や他の生徒から事情聴取を行ったが,具体的ないじめの訴えはなかった。 被告Dは,同月6日,クラス全体で行う体育祭の大縄飛びの練習中,原告が大縄の上に転倒した際に故意に大縄を引っ張り,それが原告の足に強く当たるということがあった。F教諭は,その様子を目撃したことから,その場で被告Dに対して注意し,原告に対して謝罪をさせた。 原告は,同年10月15日,F教諭に対し,被告Cから消しゴムのかすを投げられている った。F教諭は,その様子を目撃したことから,その場で被告Dに対して注意し,原告に対して謝罪をさせた。 原告は,同年10月15日,F教諭に対し,被告Cから消しゴムのかすを投げられているということを相談した。F教諭は,同日中に被告Cから事情聴取をしたところ,被告Cが消しゴムのかすを投げ付けたことを認めたため,原告に対して謝罪をさせた。 原告は,同月17日,掃除時間中に本件中学校を飛び出し,同日午後7時頃帰宅した。同日頃,F教諭は,原告の母から原告が7名の生徒から嫌なことを言われている旨の訴えを受けた。 また,原告は,同月19日の4時限目の授業終了後,再び本件中学校から無断で外出し,午後5時半頃に帰宅した。F教諭は,G教諭らとともに,原告の母から訴えのあった7名の生徒に対し,事実関係の確認を行った。 F教諭は,同月22日,被告C及び同Aを含む7名の生徒らから原告に対し,消しゴムのかすを投げ付けた行為等に関して謝罪をさせた。 同月26日,原告がまたも本件中学校から無断で外出したことから,F教諭は,G教諭及びJ教諭とともに,原告の父と原告の教育相談を行った。 原告は,同月30日にも本件中学校から無断で外出したが,6時限目には戻ってきた。F教諭が原告から事情を聞くと,原告は,「何かあった- 11 - わけではなく,学校にいるのが嫌。」などと答えた。 原告は,同年11月2日以降,サポート教室を中心に学校生活を送るようになった。 F教諭は,同年12月17日,原告の母から,原告が掃除時間中に原告に机を運ばれるのを嫌がる,原告の机を運ぶのを嫌がるという行為を受けており,これには11名の生徒が関与している旨の申出があった。 同月1 2月17日,原告の母から,原告が掃除時間中に原告に机を運ばれるのを嫌がる,原告の机を運ぶのを嫌がるという行為を受けており,これには11名の生徒が関与している旨の申出があった。 同月18日,F教諭らは,前記11名の生徒から事情聴取を行い,翌19日の終礼にはF教諭とG教諭が学級指導を行うとともに,同月21日にもいじめに関する学級指導を行った。同月20日には,G教諭が原告宅の家庭訪問を行った。 エ 3学期本件中学校の校長らは,原告の母からの申出を受け,平成25年1月6日,本件中学校において,原告の両親とともに,原告の学習環境整備に関する協議を行い,3学期から,授業中に原告のそばに教員1名を配置することにし,原告の母には校内の別室にて待機してもらうという措置を執ることにした。 しかし,原告が,3学期の始業式当日である同月8日,授業開始する段階になって,母親と一緒でなければ教室に入れない旨述べたため,校長は,しばらくの間,母親が教室に入ることを許可し,翌9日には学級保護者会を行い,原告に対する措置について説明を行った。 その後,原告は,母親の付添いのもと登校し,授業を受けていたが,同月21日,校長は,原告の母に対し,次の日からは教室に入ることを認めない旨伝え,翌22日,原告は1人で登校することとなった。 同月23日,被告C,同A及び同Bを含む5名の生徒らは,原告に対し,掃除時間中の机運び拒否行為(5名全員)や消しゴムのかすの投げ付け行為(被告C)等について謝罪した。 - 12 - 原告は,翌24日以降,本件中学校への登校ができなくなり,訪宅指導を受けるようになった。なお,原告は,中学3年生に進級してからも不登校のままであった。 本件中学校は,平成25年1月 原告は,翌24日以降,本件中学校への登校ができなくなり,訪宅指導を受けるようになった。なお,原告は,中学3年生に進級してからも不登校のままであった。 本件中学校は,平成25年1月中旬頃,「いじめ問題に関する第2回児童生徒アンケート」を実施し,福知山市教育委員会に対して,同アンケート調査の集計結果とともに,原告の所属する学年において,掃除時間に特定の生徒に机を運ばれることを嫌がられる,授業中や休み時間に特定の生徒から消しゴムのかすを投げ付けられる,これらのことが1学期後半から2学期の10月頃まで続いていたことを報告した。福知山市教育委員会は,同年2月8日,京都府中丹教育局長に対し,前記内容の報告を行った。 (以上につき乙7~9)⑷ いじめの定義の変遷文部科学省の「児童生徒の問題行動等生徒指導上の諸問題に関する調査」におけるいじめの定義は,平成18年度以前は,「自分より弱い者に対して,一方的に身体的・心理的な攻撃を継続的に加え,相手が深刻な苦痛を感じているもの」をいうとされていたが,同年度以降は,「当該児童生徒が,一定の人間関係のある者から,心理的・物理的な攻撃を受けたことにより,精神的な苦痛を感じているもの」をいうとされた。なお,平成25年度以降には,「児童生徒に対して,当該児童生徒が在籍する学校に在籍している等当該児童生徒と一定の人的関係のある他の児童生徒が行う心理的又は物理的な影響を与える行為(インターネットを通じて行われるものも含む。)であって,当該行為の対象となった児童生徒が心身の苦痛を感じているもの」と定義されている。 (以上につき丙1)⑸ 原告の受診状況等(甲12~15)- 13 - ア回生病院(甲14)原告は,香川県善通寺市内の祖母宅で生活していた もの」と定義されている。 (以上につき丙1)⑸ 原告の受診状況等(甲12~15)- 13 - ア回生病院(甲14)原告は,香川県善通寺市内の祖母宅で生活していたところ,平成25年9月27日,同年7月頃から勉強等をしていると誰かに見られているような気がするという注察妄想が表れたこと,悪口が聞こえるといった幻聴があることを主訴として,回生病院精神科を受診した。同病院のK医師(以下「K医師」という。)は,原告を統合失調症と診断し,投薬治療(エビリファイ等)を実施した。 原告は,同年10月4日及び同月18日,回生病院精神科を受診し,投薬治療が継続されたものの,同日以降は通院を中断した。 原告は,平成26年7月24日,同月頃から幻聴が表れたほか,自分が両親以外の子であるというような妄想傾向が強まったとして,再び回生病院を受診し,同日から同年9月18日まで,幻覚妄想状態との病名で,同病院の閉鎖病棟へ入院した。同年7月25日には,病室内で自分の首を絞めるという自殺企図があったため,同日から同年9月3日までは,閉鎖病棟内で両上肢を拘束されていた。 原告は,退院後,同年10月2日から回生病院精神科に通院していたが,平成27年3月19日の受診の際,京都府福知山市内の病院への転院を希望し,平成27年4月9日にはクリニックまほらへの紹介を受けた。 イクリニックまほら(甲15)原告は,平成27年4月13日,母親とともにクリニックまほらを受診し,問診を受けた。クリニックまほらのL医師(以下「L医師」という。)は,投薬治療(リスペリドン等)を実施した。 同年5月以降は,原告の母のみが月1回程度クリニックまほらに来院し,薬を受け取っていた。 L医師は,同年9月9 「L医師」という。)は,投薬治療(リスペリドン等)を実施した。 同年5月以降は,原告の母のみが月1回程度クリニックまほらに来院し,薬を受け取っていた。 L医師は,同年9月9日,原告の病状について,統合失調症である旨の診断書を発行した。L医師は,同月14日,原告の母及び弁護士らに対し,- 14 - いじめが統合失調症の誘因であるが原因とは言えない旨説明した。 L医師は,同年11月9日,原告の病状について,統合失調症の状態は軽快しておらず,症状固定の状態にある旨診断した。 ⑹ 統合失調症に関する医学的知見等(甲21~23,乙18)ア統合失調症の診断基準統合失調症の診断を行うに当たっては,次のような診断基準(DSM-Ⅳ)がある。 ①妄想,②幻覚,③解体した会話,④ひどく解体した又は緊張病性の行動,⑤陰性症状(感情の平板化,思考の貧困又は意欲の欠如)のうち,2つ以上がそれぞれ1か月の期間ほとんどいつも存在している。ただし,妄想が奇異なものであったり,幻聴がその者の行動や思考を逐一説明するか,又は2つ以上の声が互いに会話しているものである時には,前記①~⑤の症状1つを満たすだけでよい。 障害の始まり以降の期間の大部分で,仕事,対人関係,自己管理などの面で1つ以上の機能が病前に獲得していた水準より著しく低下している。又は,小児期や青年期の発症の場合,期待される対人的,学業的,職業的水準にまで達しない。 病状が6か月以上持続している。 うつ病,躁病の合併がない。 障害が,物質乱用や他の身体疾患によって生じたものでない。 自閉性障害の既往がある場合には,幻覚や妄想が1か月以上続いた場合であること。 うつ病,躁病の合併がない。 障害が,物質乱用や他の身体疾患によって生じたものでない。 自閉性障害の既往がある場合には,幻覚や妄想が1か月以上続いた場合であること。 イ統合失調症の病態仮説統合失調症の病態に関しては複数の仮説があり,その1つがストレス脆弱性仮説である。ストレス脆弱性仮説は,ある脆弱性(素因)を持った人がストレス状況下に置かれたときに統合失調症が発症すると考えるもので- 15 - ある。この仮説において統合失調症は,統合失調症の生物学的要因,心理社会的要因及び環境要因を統合するものであるが,その実態は明らかになっていない。脆弱性としては,遺伝的要因,周産期障害,胎児期のウイルス感染などの生物学的なものがあり,ストレス要因としては,家族の高い感情表出,ストレスフルなライフイベント等が挙げられている。 ウ K医師の意見書(甲23) 統合失調症とは,思考や行動,感情を一つの目的に沿ってまとめていく能力,すなわち統合する能力が長期間にわたって低下し,その経過中にある種の幻覚,妄想,ひどくまとまりのない行動が見られる病態である。好発年齢は思春期から20歳代半ばである。 統合失調症は,何らかの遺伝的な脆弱性と環境的な負荷,特に対人的な緊張が重なって発病に至ると考えられ,疲労,ストレス,不安,身体疾患の時などに見られる精神的不安定な状態が長引くと,経過中に幻覚や妄想が出現するようになる。 一般的に,いじめは精神的ストレス等の統合失調症発症における環境的な負荷と考えられており,本件においては,遺伝的な脆弱性を持った原告に対して,いじめという環境的な負荷が重なって統合失調症が発症したといえ,統合失調症自体は自然発生的に生じる可能性があるもの 環境的な負荷と考えられており,本件においては,遺伝的な脆弱性を持った原告に対して,いじめという環境的な負荷が重なって統合失調症が発症したといえ,統合失調症自体は自然発生的に生じる可能性があるものの,少なくともいじめがその発症時期を早めたといえる。 なお,K医師の意見は,原告が,前記原告主張のとおりのいじめを受けていたことを前提にしたものである。 エ鑑定意見書(乙18)獨協医科大学精神神経医学講座主任教授であるM医師(以下「M医師」という。)は,原告の病態等について次のとおりの意見を述べている。 原告には,注察妄想や被害妄想,悪口が聞こえるという幻聴があり,登校の困難さや自己管理の困難さについて問診されているが,その発現期間- 16 - や持続期間,双極性障害等の除外の点が明確でないことから,前記統合失調症の診断基準に照らすと,診療記録(甲12~15)から,統合失調症と判断することは必ずしも容易ではない。 統合失調症の病態についてのストレス脆弱性仮説は多数ある仮説の一つにすぎず,統合失調症は,あくまで生物学基盤を持つ疾病であり,薬物,特に抗精神病薬でコントロールされ得る病態と考えるのが精神科臨床での一般的な考え方である。原告が統合失調症であることを前提として,仮にストレス脆弱性仮説に拠るとしても,いじめに相当するエピソード自体が乏しく,ストレスとしての強度が脆弱である。また,原告の主張するいじめ行為を前提としても,統合失調症の要因として一般的に想定されている例と比べて,その態様はいずれも軽微なものであり,いじめ行為が原告の統合失調症発症の要因となったものと断定することは困難である。いじめを受けたことが原因となって統合失調症を発症したというのであれば,いじめを受けていた時期に発症するのが自 であり,いじめ行為が原告の統合失調症発症の要因となったものと断定することは困難である。いじめを受けたことが原因となって統合失調症を発症したというのであれば,いじめを受けていた時期に発症するのが自然であり,いじめ終了の時期と原告の発症時期が約6か月空いていることからすると,いじめは統合失調症発症の要因ではなく,学校生活への不適合やその他のストレスが要因となって発症しやすいとされる思春期(中学3年生)に発症したとみることも可能である。 統合失調症の発症時期については,原告の小学校高学年の時期に,既に統合失調症の前駆的なエピソードが見られていることからすると,この時点で統合失調症の発症プロセスにあったとしても矛盾しない。 2 争点⑴(被告Cらによる原告に対するいじめの有無及び違法性)について⑴ 机運び拒否行為前記1⑶イ認定のとおり,被告Cらを含む11名の生徒は,平成24年6月頃から同年10月までの間,掃除時間中に教室掃除をする際,原告が机を運んでいると,原告に自分の机を運ばれるのを嫌がったり,原告の机を運- 17 - ぶのを嫌がって放置したりするなどしていたことが認められる。 平成24年当時,いじめとは,「当該児童生徒が,一定の人間関係のある者から,心理的・物理的な攻撃を受けたことにより,精神的な苦痛を感じているもの」とされていたことに照らすと,上記認定の机運び拒否行為は,いじめに該当するものといえる。しかしながら,子供らの未成熟性や学校における教育的側面等を考慮すると,このようないじめが当然に不法行為に該当するとは言い難く,いじめのうちでも,それが専ら特定の生徒に向けられたものであって,長期にわたり繰り返し実行され,当該生徒に多大な精神的苦痛を与えるものと認められる場合には,当該生徒の人格的利益を侵 るとは言い難く,いじめのうちでも,それが専ら特定の生徒に向けられたものであって,長期にわたり繰り返し実行され,当該生徒に多大な精神的苦痛を与えるものと認められる場合には,当該生徒の人格的利益を侵害する違法な行為として,不法行為に該当するものというべきである。前記認定の机運び拒否行為は,被告Cらを含む同じクラスの11名の生徒らが,原告を標的として,長期間にわたり繰り返し実行され,集団生活を行うべきクラスから疎外しようとするものであって,標的とされた原告に対して多大な精神的苦痛を与えるものといえる。したがって,被告Cらの前記机運び拒否行為は,不法行為に当たるというべきである。 ⑵ 消しゴムのかすの投げ付け行為前記1⑶イのとおり,被告Cは,授業中に,被告Dとの間で消しゴムのかすを使ってキャッチボールのようなことを行っていたところ,平成24年6月頃から同年10月までの間,少なくとも10回以上にわたって,原告の後ろ髪あたりに向かって,わざと消しゴムのかすを投げ付けていたことが認められる。 このような行為は,それ自体は軽微な行為ではあるものの,前記⑴の行為と並行して,その行為者のうちの一人が,さらに原告を標的とし,長期間にわたり,繰り返し行っているという事情を考慮すると,原告に対し多大な精神的苦痛を与えるものといえるから,不法行為に当たるというべきである。 ⑶ 大縄を引っ掛ける行為- 18 - 前記1⑶ウのとおり,被告Dは,平成24年9月6日,クラス全体で行う大縄飛びの練習中,原告が大縄の上に転倒した際,故意に大縄を引っ張り,それが原告の足に強く当たったことが認められる。 この行為自体は,単発的な出来事であるものの,原告の身体を直接的に攻撃するものであることに加え,前記⑴の行為の期間中に,その行為者のうちの一人が り,それが原告の足に強く当たったことが認められる。 この行為自体は,単発的な出来事であるものの,原告の身体を直接的に攻撃するものであることに加え,前記⑴の行為の期間中に,その行為者のうちの一人が,さらに原告に対し実行したことを考慮すると,同様に不法行為に当たるというべきである。 ⑷ なお,前記各いじめ行為のほか,原告は,被告Cらから「デブ」,「こいつ鼻の下長くない?」「きもい」「しっしっ」などと言われたほか,被告C及び同Dからは,「こいつ巨乳や」「何かしゃべれ」などと言われたと主張するが,これらの暴言があったことを認めるに足りる証拠はない。 3 争点⑵(教諭等の注意義務違反の有無)について⑴ いじめ調査・防止義務違反ア本件中学校の設置者である被告市や教諭らは,本件中学校に在学する生徒に対し,在学関係に付随する信義則上の義務として安全配慮義務を負う。 そして,かかる安全配慮義務の一環として,学校内において,生徒の心身に対するいじめがないように適切な配慮をすべき注意義務を負い,また,いじめの存在が確認された場合は,いじめを受けた生徒の安全を確保するとともに再発を防止するために,いじめを行った生徒に対する事情聴取等適切な調査をすべき注意義務を負うものというべきである。 イ前記1⑶イ認定のとおり,平成24年5月18日,原告を含む本件中学校2年生の生徒らに対してアンケートが実施された際,原告は,「私は,他の子から,いじめられたり,からかわれたりする」という質問項目において,「まああてはまる」と回答したものの,その後の家庭訪問においてはいじめの訴えはなかったことが認められる。また,消しゴムのかすを投げ付ける行為は,教師らに隠れて実行されていたものといえること,机運び拒- 19 - 否行為も,掃除時間中の机運びに においてはいじめの訴えはなかったことが認められる。また,消しゴムのかすを投げ付ける行為は,教師らに隠れて実行されていたものといえること,机運び拒- 19 - 否行為も,掃除時間中の机運びに関するものである上,掃除時間中,教諭が始終生徒らの動きを仔細に観察し続けることは困難であることからすると,いずれのいじめ行為も,教諭らにとっては把握しづらい態様のものであったといえる。 これらの事実によると,本件中学校の教諭らが,原告に対する消しゴムのかすの投げ付け行為を認識することができたのは,原告から相談のあった平成24年10月15日であったといえ,机運び拒否行為を認識することができたのは,原告の母から調査を依頼された同年12月17日であったというべきである。 原告は,同年7月1日に本件中学校で実施されたアンケートにおいて,原告がいじめを窺わせる回答をしていた,同年9月頃,原告は,F教諭に対し,被告Cから消しゴムのかすを投げ付けられていることを報告したと主張するが,これらを認めるに足りる証拠はないから,それを前提とする原告の主張は採用することができない。 ウそして,F教諭らは,消しゴムのかすの投げ付け行為について,原告からの相談を受け,当該行為に関係する生徒から事情を聴取し,謝罪の場を設けるなどしており,いじめの事実を認識してから謝罪に至るまでの経緯,いじめの態様や原告からの相談があった日以降,消しゴムのかすの投げ付け行為が終息していることなどを考慮すると,本件中学校の教諭らは,適切に事実関係の調査を行い,生徒らに対し適切な指導を行ったものというべきである。 また,大縄を引っ掛ける行為については,F教諭が当該行為直後に,被告Dに対して謝罪をするよう指導しており,適切な措置が執られたといえる。 さらに,机運び拒否行 のというべきである。 また,大縄を引っ掛ける行為については,F教諭が当該行為直後に,被告Dに対して謝罪をするよう指導しており,適切な措置が執られたといえる。 さらに,机運び拒否行為についても,当該事実が発覚してから,関与した生徒からの聞き取り調査を行った上で,学級指導を複数回にわたって実- 20 - 施し,事実発覚から約1か月後には,原告に対する謝罪の機会を設けていることが認められる。 エこれらの事実によると,本件中学校の教諭らは,原告に対するいじめ行為を認識してから,比較的速やかに対応を開始しており,いじめ調査義務を怠ったということはできない。また,教諭らが原告に対するいじめを認識してから,謝罪の機会を設けるなどし,原告に対するいじめは終息したことが認められるから,いじめ防止義務についても怠ったということはできない。 したがって,本件中学校の教諭らについて,いじめについての防止義務違反及び調査義務違反を認めることはできない。 ⑵ 学習環境整備義務違反本件中学校の設置者である被告市や教諭らは,いじめの被害を受けた生徒に対する配慮の一環として,いじめのない環境の下で学習できる環境を整備する義務があるというべきところ,本件中学校の教諭らは,原告に対するいじめの発覚後,原告がサポート教室を利用できるようにしたほか,中学2年生の3学期からは,授業中に原告のそばに教員1名を配置した上,原告の母の付添いも相当な範囲で認めるなど,原告の学習環境に配慮した措置を執っていたというべきであるから,前記義務を怠ったということはできない。 原告は,平成24年12月17日のいじめ発覚後は,本件中学校の教諭らは,被告Cら加害生徒を図書室や校長室において分離して学習させる,出席停止等の措置を講じる,クラス替えを行うなどの とはできない。 原告は,平成24年12月17日のいじめ発覚後は,本件中学校の教諭らは,被告Cら加害生徒を図書室や校長室において分離して学習させる,出席停止等の措置を講じる,クラス替えを行うなどの環境整備を行うべきである旨主張する。しかし,被告Cらによる謝罪の後は,原告に対するいじめが終息しており,原告の学習環境が侵害された状況が解消していたといえることを踏まえると,被告Cらを教室から分離したり出席停止にしたりする措置が必要であったとは認められないから,このような措置を講じなかったとしても前記義務に違反するとはいえず,原告の前記主張は採用することができな- 21 - い。 4 争点⑶(被告Cらのいじめ行為と原告の統合失調症発症との相当因果関係の有無)について⑴ 原告の発症時期原告は,平成25年1月24日以降不登校となり,同年7月頃から注察妄想や幻聴が表れるようになったこと,同年9月27日,回生病院精神科を受診し,統合失調症との診断を受けたことが認められ,この頃には統合失調症を発症していたものということができる。原告は,中学3年生の1学期に統合失調症を発症した旨主張するが,それを認めるに足りる証拠はない。 ⑵ 相当因果関係の有無ア原告は,小学5年生の3学期頃から,他者と接することを避けるようになったこと,中学1年生時は特に問題なく過ごしていたものの,中学2年生時には平成24年6月頃から同年10月までの間,前記認定のとおりいじめ行為を受けていたこと,原告は,その頃も人を避ける態度が続いていたこと,原告は,平成25年1月24日以降不登校となり,その約半年後に幻聴や妄想が表れるようになったこと,その後,受診した回生病院において統合失調症という診断のもと一定期間投薬治療がされていたことが認められる。このように 年1月24日以降不登校となり,その約半年後に幻聴や妄想が表れるようになったこと,その後,受診した回生病院において統合失調症という診断のもと一定期間投薬治療がされていたことが認められる。このように,前記認定のいじめ行為が終息してから,原告に統合失調症の具体的な症状が表れるまで半年以上の期間があることに加え,被告Cらから受けたいじめ行為の程度や,原告の他者との関わり方が小学5年生時から中学2年生時まで大きくは変わっていないことを併せ考慮すると,前記認定のいじめ行為が原告の精神に重大な影響を及ぼすものであったとは認めることができない。 イ以上によると,統合失調症の病態につき,ストレス脆弱性仮説に依ったとしても,被告Cらによる前記いじめ行為と原告の統合失調症発症との間に相当因果関係を認めることはできない。このことは,M医師が,原告の- 22 - 主張するいじめ行為を前提としても,その態様はいずれも軽微なものであり,いじめ行為が原告の統合失調症発症の要因となったものと断定することは困難であり,また,いじめ行為を受けたことが原因となって統合失調症を発症したというのであれば,いじめ行為を受けていた時期に発症するのが自然である旨の意見を述べていることとも整合するものである。 ウこの点,K医師は,原告が主張するとおりのいじめ行為を受けていたことを前提として,当該いじめ行為が統合失調症発症の環境的な負荷となり,少なくともいじめ行為が統合失調症の発症時期を早めたといえる旨の意見を述べる。しかし,そもそも判断の前提となるいじめ行為の内容が異なっていること,被告Cらのいじめ行為が終息してから原告に統合失調症の具体的な症状が表れるまで半年以上の期間があることを合理的に説明するものではないことからすると,同医師の意見をもとに相当因果関係 なっていること,被告Cらのいじめ行為が終息してから原告に統合失調症の具体的な症状が表れるまで半年以上の期間があることを合理的に説明するものではないことからすると,同医師の意見をもとに相当因果関係を認めることはできない。 5 争点⑷(原告の損害及びその額)について原告が受けた前記いじめ行為についての慰謝料は,被告Cらが行ったそれぞれの行為内容及びその他本件に顕れた事情を総合して考慮すると,被告C及び同Dについては各13万円,被告A及び同Bについては各10万円と認めるのが相当であり,弁護士費用相当損害金については,被告C及び同Dについては各1万3000円,被告A及び同Bについては各1万円を本件と相当因果関係のある損害と認める。原告の主張する治療費(合計60万9050円),逸失利益(6440万5770円)及び後遺障害慰謝料(1400万円)については,被告Cらによる前記いじめ行為と原告の統合失調症発症との間に相当因果関係が認められないから,上記いじめ行為による損害とは認めることができない。 第4 結論以上によると,原告の被告A及び同Bに対する請求は,11万円及びこれに対する平成27年10月9日から支払済みまで年5分の割合による遅延損害- 23 - 金(ただし,11万円及び同月10日から支払済みまで年5分の割合による遅延損害金の限度で被告C及び同Dと連帯して)の連帯支払を請求する限度で理由があり,原告の被告C及び同Dに対する請求は,14万3000円及びこれに対する同日から支払済みまで年5分の割合による遅延損害金(ただし,11万円及びこれに対する同日から支払済みまで年5分の割合による遅延損害金限度で被告A及び同Bと連帯して)の連帯支払を請求する限度で理由があるから認容し,原告の被告C,同A,同B及び同Dに対するその余の請 円及びこれに対する同日から支払済みまで年5分の割合による遅延損害金限度で被告A及び同Bと連帯して)の連帯支払を請求する限度で理由があるから認容し,原告の被告C,同A,同B及び同Dに対するその余の請求並びに被告市に対する請求はいずれも理由がないから棄却することとして,主文のとおり判決する。 京都地方裁判所第1民事部 裁判長裁判官井上一成 裁判官加藤優治 裁判官友延裕美
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