平成28年7月27日判決言渡同日原本交付裁判所書記官平成26年(ワ)第17021号損害賠償請求事件(甲事件)平成26年(ワ)第32223号損害賠償請求事件(乙事件)口頭弁論終結日平成28年4月28日判決 甲事件原告A(以下「原告A」という。) 乙事件原告有限会社ナビスポーツアカデミー(以下「原告ナビスポーツ」という。)上記二名訴訟代理人弁護士長尾愛女同宮口麻衣同黒石啓介 甲・乙事件被告B(以下「被告B」という。)神奈川県伊勢原市子易1234甲・乙事件被告C(以下「被告C」という。) 甲・乙事件被告D(以下「被告D」という。)上記三名訴訟代理人弁護士田中雅大 主文 1 原告らの請求をいずれも棄却する。 2 訴訟費用は,甲事件,乙事件を通じて,これを3分し,その2を原告Aの負担,その余を原告ナビスポーツの負担とする。 事実及び理由 第1 請求 1 甲事件(1) 被告らは,原告Aに対し,連帯して350万円及びこれに対する平成26年8月7日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。(2) 被告らは,原告Aに対し,連帯して100万円及びこれに対する平成26年8月7日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 びこれに対する平成26年8月7日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 (2) 被告らは,原告Aに対し,連帯して100万円及びこれに対する平成26年8月7日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 2 乙事件(1) 被告らは,原告ナビスポーツに対し,連帯して150万円及びこれに対する平成26年12月27日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 (2) 被告らは,原告ナビスポーツに対し,連帯して100万円及びこれに対する平成26年12月27日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 第2 事案の概要 1 甲事件は,原告Aが,(1) 被告Bが,その経営するサロンにおいて,平成26年1月から同年6月までの間,被告C及び被告Dとともに「脱がないリンパケア講座」と題する講座を提供した行為は,被告Bが原告A及び原告ナビスポーツ(以下,併せて「原告ら」という。)から示された原告らの営業秘密を不正の利益を得る目的で使用する不正競争行為(不正競争防止法〔以下「不競法」という。〕2条1項7号)に当たり,被告C及び被告Dも同不正競争行為を共同して行った者として連帯責任を負うほか,被告C及び被告Dの行為は,被告Bが不正の利益を得る目的で開示した上記営業秘密をそれと知りながら使用する不正競争行為(同項8号)に当たると主張して,不正競争行為の不法行為による損害賠償請求権(同法4条)に基づき,被告らに対し, 損害賠償金350万円及びこれに対する不法行為後の日である平成26年8月7日から支払済みまでの民法所定年5分の割合による遅延損害金の連帯支払を求め(前記第1の1(1)),(2) 被告Bが上記(1)のとおり「脱がないリンパケア講座」を提供した行為は,原告Aと被告Bとの間の準委任契約に付随して被 年5分の割合による遅延損害金の連帯支払を求め(前記第1の1(1)),(2) 被告Bが上記(1)のとおり「脱がないリンパケア講座」を提供した行為は,原告Aと被告Bとの間の準委任契約に付随して被告Bが負う秘密保持義務に違反する債務不履行行為に当たると主張して,債務不履行による損害賠償請求権(民法415条)に基づき,被告Bに対し,損害賠償金350万円及びこれに対する請求後の日である平成26年8月7日から支払済みまでの民法所定年5分の割合による遅延損害金の支払を求め(なお,この請求と,上記(1)の請求のうち被告Bに対する請求とは,選択的請求の関係にある。前記第1の1(1)),(3) 被告らが,被告Bの経営するサロンにおいて,平成26年1月から同年6月までの間,原告Aが原告ナビスポーツとともに保有する技術である「リンパコンディショニング技術」を他の技術と融合して顧客に提供する行為は,顧客にもみ返し等の悪影響を生じさせ,原告Aの「リンパコンディショニング技術」を低水準のものと誤認させるものであるから,原告Aに対する一般不法行為(民法709条)を構成すると主張して,共同不法行為による損害賠償請求権に基づき,被告らに対し,損害賠償金100万円及びこれに対する不法行為後の日である平成26年8月7日から支払済みまでの民法所定年5分の割合による遅延損害金の連帯支払を求め(前記第1の1(2)),(4) 被告Bが上記(3)のとおり「リンパコンディショニング技術」を他の技術と融合して顧客に提供する行為は,上記(2)の秘密保持義務に違反する債務不履行行為に当たると主張して,債務不履行による損害賠償請求権(民法415条)に基づき,被告Bに対し,損害賠償金100万円及びこれに対する請求後の日である平成26年8月7日から支払済みまでの民法所定年5分の割合 当たると主張して,債務不履行による損害賠償請求権(民法415条)に基づき,被告Bに対し,損害賠償金100万円及びこれに対する請求後の日である平成26年8月7日から支払済みまでの民法所定年5分の割合による遅延損害金の支払を求めた(なお,この請求と,上記(3)の請求のうち被告Bに対する請求とは,選択的請求の関係にある。前記第1の1(2))事案である。 2 乙事件は,原告ナビスポーツが,(1) 上記1(1)のとおり,被告らが,被告Bの経営するサロンにおいて,「脱がないリンパケア講座」を提供した行為は,被告Bが原告らから示された原告らの営業秘密を不正の利益を得る目的で使用する不正競争行為(不競法2条1項7号)に当たり,被告C及び被告Dも同不正競争行為を共同して行った者として連帯責任を負うほか,被告C及び被告Dの行為は,被告Bが不正の利益を得る目的で開示した上記営業秘密をそれと知りながら使用する不正競争行為(同項8号)に当たると主張して,不正競争行為の不法行為による損害賠償請求権(同法4条)に基づき,被告らに対し,損害賠償金150万円及びこれに対する不法行為後の日である平成26年12月27日から支払済みまでの民法所定年5分の割合による遅延損害金の連帯支払を求め(前記第1の2(1)),(2) 上記1(3)のとおり,被告らが,被告Bの経営するサロンにおいて,原告ナビスポーツが原告Aとともに保有する技術である「リンパコンディショニング技術」を他の技術と融合して顧客に提供する行為は,顧客にもみ返し等の悪影響を生じさせ,原告ナビスポーツの「リンパコンディショニング技術」を低水準のものと誤認させるものであるから,原告ナビスポーツに対する一般不法行為(民法709条)を構成すると主張して,共同不法行為による損害賠償請求権に基づき,被告らに リンパコンディショニング技術」を低水準のものと誤認させるものであるから,原告ナビスポーツに対する一般不法行為(民法709条)を構成すると主張して,共同不法行為による損害賠償請求権に基づき,被告らに対し,損害賠償金100万円及びこれに対する不法行為後の日である平成26年12月27日から支払済みまでの民法所定年5分の割合による遅延損害金の連帯支払を求めた(前記第1の2(2))事案である。 3 前提事実等(当事者間に争いがないか,後掲の証拠〔本判決において,書証番号は,特に断りのない限り,甲事件の書証番号を表記し,枝番号を省略する。〕及び弁論の全趣旨により容易に認められる事実等)(1) 当事者原告Aは,リンパアクティベーション協会(平成25年7月1日以前の名称はリンパコンディショニング協会。以下,単に「協会」という。)と称する会員組織の 代表であり,セラピスト養成事業を営むほか,自らもセラピストとしてサロンを経営している。 原告ナビスポーツは,運動療法,健康療法に関する指導,スポーツマッサージに関する教育指導等を目的とするいわゆる特例有限会社(会社法の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律2条1項)である。原告ナビスポーツの代表者であるE(以下「E」という。)は,スポーツトレーナーであり,協会の顧問を務めている。 被告Bは,神奈川県厚木市内においてリンパケアサロン「木もれ陽サロン」(以下「本件店舗」という。)を経営している。被告Cは,平成25年9月頃から現在に至るまで,本件店舗の従業員として稼働しており,被告Dは,平成25年9月頃から平成27年3月まで,本件店舗の従業員として稼働していた。 (以上につき,甲16,23,40,乙1,13,14)(2) 小顔リンパアクティベーションセラピスト養成講座協会は, 年9月頃から平成27年3月まで,本件店舗の従業員として稼働していた。 (以上につき,甲16,23,40,乙1,13,14)(2) 小顔リンパアクティベーションセラピスト養成講座協会は,遅くとも平成22年までに,「小顔リンパアクティベーションセラピスト養成講座」と題する講座(以下「本件養成講座」という。)の提供を開始した。 本件養成講座は,全身の筋肉をほぐし,リンパの流れを促し,更に顔周辺をマッサージすることにより小顔効果を実現するという「小顔リンパアクティベーション」技術を習得することを目的とし,1回につき6時間の講義・実技を計5回,隔週受講することにより,2か月から3か月程度で講座を終えることが予定されていた。 被告Bは,平成22年12月5日,本件養成講座を受講するための受講申込書に必要事項を記入し,押印の上(甲3。以下,被告Bの記入・押印後の「受講申込書」を「本件受講申込書」という。),協会に差し入れ,同日から平成23年3月にかけて,本件養成講座を受講した。 (以上につき,甲2,3)(3) 本件店舗の開店被告Bは,平成23年4月頃,当時の自宅において,「リンパコンディショニングサロン木もれ陽」(本件店舗の前身)を開店した(乙12)。 (4) 被告Bの協会への入会と退会被告Bは,平成23年5月頃協会から送られてきた「リンパコンディショニング協会入会申込書」に同年6月21日付けで必要事項を記入し,押印の上(甲5。 以下,被告Bによる記入・押印後の「リンパコンディショニング協会入会申込書」を「本件入会申込書」という。),返送することにより,協会に入会した。 被告Bは,原告Aから送付された平成25年5月15日付け「退会届」に同年6月13日付けで署名・押印の上(甲7。以下,被告Bによる署名・押印後 込書」という。),返送することにより,協会に入会した。 被告Bは,原告Aから送付された平成25年5月15日付け「退会届」に同年6月13日付けで署名・押印の上(甲7。以下,被告Bによる署名・押印後の「退会届」を「本件退会届」という。),原告Aに返送した。本件退会届には,「私は,このたびリンパコンディショニング協会・・・を退会いたしますので,ここに通知します。」「私は,退会後において,協会から得た技術情報や協会の知的財産の使用等に関して,以下の事項を守ることを約束します。」「(1)協会から提供された技術情報又はこれを記録した媒体を第三者に開示し,又は複製することはしません。」「(2)(1)において,技術情報の開示には,その技術を第三者に使用すること及び教示することを含みます。」との文字が印刷されていた。 (以上につき,甲5,7,乙12)(5) 「脱がないリンパケア講座」の実施被告Bは,平成25年6月頃,「リンパコンディショニングサロン木もれ陽」の名称を「サロン木もれ陽」に改め,店舗を移転したところ(本件店舗),平成26年1月頃から,本件店舗において,「脱がないリンパケア講座」と題する講座の提供を始めた(甲10,乙1,12)。 4 争点(1) 不競法に基づく損害賠償請求に関する争点(争点1)ア被告Bが本件養成講座で取得したリンパコンディショニング技術は,原告らが共同管理する「営業秘密」(不競法2条6項)に当たるか(争点1-1)イ被告Bが「脱がないリンパケア講座」を提供する行為が,「不正の利益を得る目的で,又はその保有者に損害を加える目的で,その営業秘密を使用し,又は開 示する行為」(不競法2条1項7号)に当たるか(争点1-2)ウ被告C及び被告Dは,「不正開示行為であることを知って取得した営業秘 有者に損害を加える目的で,その営業秘密を使用し,又は開 示する行為」(不競法2条1項7号)に当たるか(争点1-2)ウ被告C及び被告Dは,「不正開示行為であることを知って取得した営業秘密を使用し,若しくは開示」(不競法2条1項8号)し,又は,被告Bとの共同不法行為による責任を負うか(争点1-3)(2) 債務不履行による損害賠償請求に関する争点(争点2)ア被告Bは,原告Aに対し,準委任契約に付随する義務として,リンパコンディショニング技術に関する情報を第三者に使用又は開示しない義務を負うか(争点2-1)イ被告Bが「脱がないリンパケア講座」を提供する行為は,リンパコンディショニング技術に関する情報を第三者に使用又は開示しない義務に違反するものか(争点2-2)ウ被告Bがリンパコンディショニング技術を他の技術と融合して本件店舗で提供する行為は,協会から提供された技術情報を第三者に使用又は開示しない義務に違反するものか(争点2-3)(3) 一般不法行為による損害賠償請求に関する争点(争点3)被告らがリンパコンディショニング技術を他の技術と融合して本件店舗で提供する行為が,原告らに対する一般不法行為を構成するか(4) 原告らの受けた損害の額(争点4) 5 争点に対する当事者の主張(1) 争点1-1(被告Bが本件養成講座で取得したリンパコンディショニング技術は,原告らが共同管理する「営業秘密」〔不競法2条6項〕に当たるか)について【原告らの主張】リンパコンディショニング技術は,スポーツトレーナーや大学講師の経歴を持つEが独自に開発した,全身の大きなリンパ節をつなぐ筋肉を柔軟にし,リンパの流れを促す技術であり,次のとおり,原告らが共同して有する「営業秘密」(不競法 2条 トレーナーや大学講師の経歴を持つEが独自に開発した,全身の大きなリンパ節をつなぐ筋肉を柔軟にし,リンパの流れを促す技術であり,次のとおり,原告らが共同して有する「営業秘密」(不競法 2条6項)である。なお,リンパコンディショニング技術のうち,原告らが営業秘密として主張する具体的な内容は,別紙「本件営業秘密の具体的内容」に記載のとおりである。 ア有用性リンパコンディショニング技術は,リンパの流れの促進や基礎代謝の向上などの効果が即日現れ,かつ長期間持続するなど,心身のコンディショニングに効用の大きい技術であり,事業活動に有用な技術上の情報である。 イ秘密管理性原告A及びEは,本件養成講座を開講した当初から,受講生に対し,リンパコンディショニング技術の情報を第三者に使用,開示してはならない旨を繰り返し伝えていた。 本件養成講座のマニュアル(甲8の1)には,「この冊子のいかなる部分も,手法の如何によらず,著作権所有者の書面による許可を得ずに,いかなる形であれコピー・再生・複製・転写を禁じるものであり,日本国著作権法によって保護されています。」と記載されている。また,被告Bに交付したものではないが,小顔リンパアクティベーションセラピスト資格の規約(甲4)及び協会の会員規約(甲6)では,いずれも,協会から得た情報を無断で利用等する行為を禁じているところである。 以上のとおり,リンパコンディショニング技術の情報は,秘密として管理されていたものである。 ウ非公知性リンパコンディショニング技術の情報は,書籍やホームページ等では一切開示されておらず,原告A及びEから直接指導を受けなければ習得できないものであるから,公然と知られていない情報である。 なお,本件受講申込書に「受講終了後,各自が行う施術に関 ームページ等では一切開示されておらず,原告A及びEから直接指導を受けなければ習得できないものであるから,公然と知られていない情報である。 なお,本件受講申込書に「受講終了後,各自が行う施術に関する全ての事項は個々の責任で運営してください。本スクールサロンには一切の責任は負いません。」と あるのは,受講者が本件養成講座の受講後に行う施術の結果として被施術者の身体にトラブル等が生じても,原告ナビスポーツは責任を負わない旨を表明したにすぎず,秘密管理性や非公知性を左右するものではない。 【被告らの主張】原告らは,営業秘密と主張するところの「リンパコンディショニング技術」の内容を具体的に特定して主張しておらず,いかなる技術を指すか不明であるし,他の団体やサロンにおいて提供されているいわゆるリンパマッサージと区別することもできない。 そもそも,原告らは,リンパコンディショニング技術を広めるとの目的で,本件養成講座等を開講していたのであるし,本件受講申込書に記載されているように,本件養成講座の受講者は,各自のサロン等において習得した技術を自らの顧客に施術することが予定されていたものである。 したがって,原告らの主張するリンパコンディショニング技術に,営業秘密としての有用性,秘密管理性,非公知性は認められないというべきである。また,原告らが営業秘密を共同して有するとの点も,原告ナビスポーツが当初訴えを提起していなかったことからして信用できない。 (2) 争点1-2(被告Bが「脱がないリンパケア講座」を提供する行為が,「不正の利益を得る目的で,又はその保有者に損害を加える目的で,その営業秘密を使用し,又は開示する行為」〔不競法2条1項7号〕に当たるか)について【原告らの主張】ア被告Bが平成26年1月以降提供し 益を得る目的で,又はその保有者に損害を加える目的で,その営業秘密を使用し,又は開示する行為」〔不競法2条1項7号〕に当たるか)について【原告らの主張】ア被告Bが平成26年1月以降提供した「脱がないリンパケア講座」の具体的内容は,被告Bが平成24年頃自らインターネットに公開した動画(甲18。その一部を静止画として抜粋したものが甲13)のとおりであり,原告らの営業秘密であるリンパコンディショニング技術(甲8,12,17)と同一である(なお,別紙「本件営業秘密の具体的内容」内において,両技術の同一性を補足して説明する。)。 この点について,被告らは,「脱がないリンパケア講座」の内容として乙第8, 第9号証を提出するが,これらの証拠に現れている技術ではリンパが流れる効果が実現しないこと,証拠の提出が遅れたこと,分量が著しく少ないこと,被告らの技術の独自性は何ら主張,立証されていないことなどからして信用できず,被告らが本件店舗で提供している技術が変化したことをうかがわせるような事情が見あたらないことからすれば,平成24年にインターネットに公開した動画の内容が,「脱がないリンパケア講座」においても引き継がれていると考えるのが自然である。 なお,被告Bが本件店舗において原告らのリンパコンディショニング技術を用いていることは,被告Bが,協会のプレス資料で自ら説明していること(甲19),自身のブログにおいて,被告の技術はEから教えてもらったことを示唆する記載をしていること(甲15,28),原告Aに対して,リンパコンディショニング技術を指導することの許可を求めていたこと,被告Bが自らの技術の特徴,効果としてうたうものがリンパコンディショニング技術の特徴,効果と同一であること(甲1,10,19,22,23,27,33ないし37)な 指導することの許可を求めていたこと,被告Bが自らの技術の特徴,効果としてうたうものがリンパコンディショニング技術の特徴,効果と同一であること(甲1,10,19,22,23,27,33ないし37)などからもうかがい知ることができる。 イ被告Bは,原告らのリンパコンディショニング技術に魅力を感じ,これを自ら第三者に指導しようとしたが,原告A及びEが直ちにはこれに応じなかったことから,協会を退会し,原告らに無断で原告らの営業秘密であるリンパコンディショニング技術を第三者に教示し,これにより利益を得たのであるから,不正の利益を得る目的を持って,原告らの営業秘密を使用したものというべきである。 【被告らの主張】甲第18号証の動画は,被告Bがまだ協会の会員であった平成24年7月頃,知人に頼んで撮影したもらったものであり,平成26年1月以降に提供した「脱がないリンパケア講座」とは関係がない。 「脱がないリンパケア講座」の内容は,乙第8,第9号証のとおりであり,原告らがいうところのリンパコンディショニング技術とは全く異なっているのであって,同技術を使用,指導,開示するものではない。 (3) 争点1-3(被告C及び被告Dは,「不正開示行為であることを知って取得した営業秘密を使用し,若しくは開示」〔不競法2条1項8号〕し,又は,被告Bとの共同不法行為による責任を負うか)について【原告らの主張】被告C及び被告Dは,被告Bから,「脱がないリンパケア講座」の技術内容が原告らの営業秘密であることを聞いていながら,同講座にアシスタントとして加わったのであるから,営業秘密の不正開示行為があったことを知って取得した営業秘密を使用したものといえるし,被告Bによる営業秘密の不正使用の不法行為に荷担したものとして,共同不法行為による トとして加わったのであるから,営業秘密の不正開示行為があったことを知って取得した営業秘密を使用したものといえるし,被告Bによる営業秘密の不正使用の不法行為に荷担したものとして,共同不法行為による責任を負うというべきである。 【被告らの主張】否認し,争う。 (4) 争点2-1(被告Bは,原告Aに対し,準委任契約に付随する義務として,リンパコンディショニング技術に関する情報を第三者に使用又は開示しない義務を負うか)について【原告Aの主張】被告Bは,平成23年6月21日,本件入会申込書により,原告Aに対して,協会への入会を申し込み,原告Aはこれを承諾した。これにより,原告Aと被告Bとの間には,原告Aが代表を務める協会が,ホームページ上でのサロンの紹介,会員用メーリングリストの提供,主催セミナーの受講料割引,化粧品等の割引,原告Aのサロンの施術料割引などの事実行為を提供し,被告Bがその対価を支払うことを内容とする準委任契約が成立した。 ところが,リンパコンディショニング技術を他者に指導したいと考えた被告Bは,原告AやEがこれに消極的であったことなどから,協会から退会しようとして,原告Aに申し出た。原告A及びEは,被告Bが誤った内容の指導をすることを危惧し,急遽,インストラクター養成講座を開講して被告Bに受講を勧めたが,被告Bはこれを拒否した。このため,原告A及びEは,被告Bがリンパコンディショニング技 術を誤って他者に指導し,これにより被施術者の身体に危害が及ぶことがないように,協会から提供された技術情報及びその媒体を第三者に開示(第三者に使用し,教示することも含む。)又は複製しないことを約する旨の記載のある退会届を作成して被告Bに送付した。 被告Bは,上記退会届に上記記載があることを確認し,理解した上 体を第三者に開示(第三者に使用し,教示することも含む。)又は複製しないことを約する旨の記載のある退会届を作成して被告Bに送付した。 被告Bは,上記退会届に上記記載があることを確認し,理解した上,署名押印して原告Aに返送したものである(本件退会届)。これをもって,原告Aと被告Bとの間の準委任契約は終了したが,被告Bは,同契約の終了後も,同契約に付随する義務として,リンパコンディショニング技術に関する情報を秘密として保持し,第三者に使用,開示,教示しない義務を負うに至ったものである。 【被告Bの主張】被告Bは,平成24年10月頃には,原告Aに対し,協会から退会したい旨の意思を伝えたところ,同告知により,原告Aと被告Bとの間の準委任契約は,既に解除されたというべきである(民法656条,651条1項)。したがって,その後に作成した本件退会届により,被告Bが原告Aに対して契約責任を負うことはない。 仮に,準委任契約の終了後も,同契約に付随する義務として,協会から提供された技術情報を第三者に使用又は開示しない義務を負うことがあるとしても,本件退会届には,「協会から提供された技術情報又はこれを記録した媒体を第三者に開示し,又は複製することはしません」と記載されるにとどまり,秘密として保持すべき情報の内容や範囲が特定されておらず曖昧である。このような不明確な文言により,被告Bに一方的に義務を課す合意は,公序良俗に反し,無効というべきである。 (5) 争点2-2(被告Bが「脱がないリンパケア講座」を提供する行為は,リンパコンディショニング技術に関する情報を第三者に使用又は開示しない義務に違反するものか)について【原告Aの主張】被告Bが本件店舗において提供した「脱がないリンパケア講座」の内容が,原告Aが保有するリンパコンディシ 関する情報を第三者に使用又は開示しない義務に違反するものか)について【原告Aの主張】被告Bが本件店舗において提供した「脱がないリンパケア講座」の内容が,原告Aが保有するリンパコンディショニング技術の内容と一致することは,前記(2)【原 告らの主張】のとおりである。 被告Bは,原告Aに対し,準委任契約の付随的義務として,リンパコンディショニング技術に関する情報を秘密として保持し,第三者に使用,開示,教示しない義務を負っていたにもかかわらず,上記のとおり,リンパコンディショニング技術と同一の内容である「脱がないリンパケア講座」を提供して,第三者に教示(開示)したのであるから,上記付随的義務に違反したものであり,債務不履行による損害賠償責任を免れないというべきである。 【被告Bの主張】「脱がないリンパケア講座」の内容が,原告が主張するところのリンパコンディショニング技術と一致しないことは,前記(2)【被告らの主張】のとおりである。 (6) 争点2-3(被告Bがリンパコンディショニング技術を他の技術と融合して本件店舗で提供する行為は,協会から提供された技術情報を第三者に使用又は開示しない義務に違反するものか)について【原告Aの主張】被告Bは,平成23年4月に本件店舗の前身である「リンパコンディショニングサロン木もれ陽」を開店したのち,少なくとも平成26年1月から同年6月までの間,原告らの技術であるところのリンパコンディショニング技術を他の技術と融合して顧客に提供した。 被告Bは,原告Aに対し,準委任契約の付随的義務として,リンパコンディショニング技術に関する情報を秘密として保持し,第三者に使用,開示,教示しない義務を負っていたにもかかわらず,上記のとおり,リンパコンディショニング技術を他の技術 の付随的義務として,リンパコンディショニング技術に関する情報を秘密として保持し,第三者に使用,開示,教示しない義務を負っていたにもかかわらず,上記のとおり,リンパコンディショニング技術を他の技術と融合して顧客に提供(使用)したのであるから,上記付随的義務に違反したものであり,債務不履行による損害賠償責任を免れないというべきである。 【被告Bの主張】否認し,争う。 (7) 争点3(被告らがリンパコンディショニング技術を他の技術と融合して本件 店舗で提供する行為が,原告らに対する不法行為を構成するか)について【原告らの主張】被告らは,被告Bが平成23年4月に本件店舗の前身である「リンパコンディショニングサロン木もれ陽」を開店したのち,少なくとも平成26年1月から同年6月までの間,原告らの技術であるところのリンパコンディショニング技術を他の技術と融合して顧客に提供し,これによって顧客にもみ返しを生じさせ,リンパコンディショニング技術が低水準の技術であるとの誤解を与えた。被告らの上記行為は,原告らの信用を毀損する行為であり,不法行為を構成するというべきである。 【被告らの主張】否認し,争う。 (8) 争点4(原告らの受けた損害の額)について【原告らの主張】ア被告らが「脱がないリンパケア講座」を提供したことによる原告らの損害(ア) 被告らが「脱がないリンパケア講座」を提供する行為は,原告らの営業秘密を使用,開示する不正競争行為であるところ,不競法5条2項の規定により,被告らが同行為により受けた利益の額は,同行為により営業上の利益を侵害された原告らが受けた損害の額と推定される。 被告Bは,「脱がないリンパケア講座」を提供することにより,平成26年1月から同年6月までの間に,500万円を 益の額は,同行為により営業上の利益を侵害された原告らが受けた損害の額と推定される。 被告Bは,「脱がないリンパケア講座」を提供することにより,平成26年1月から同年6月までの間に,500万円を超える受講料を得たと考えられ,同額が,原告らが受けた損害の額と推定される。そして,原告Aは,受講料収入の30パーセントを,原告ナビスポーツに分配する旨合意しているから,被告らの不正競争行為により原告Aが受けた損害の額は350万円,原告ナビスポーツが受けた損害の額は150万円である。 (イ) 被告Bが「脱がないリンパケア講座」を提供する行為は,原告Aに対する債務不履行にも当たるところ,同債務不履行により原告Aが受けた損害の額も,上記と同様に350万円を下ることはない。 イリンパコンディショニング技術を他の技術と融合して提供したことによる原告らの損害(ア) 被告Bがリンパコンディショニング技術を他の技術と融合して提供する行為は,原告Aに対する債務不履行に当たるところ,同債務不履行により原告Aが受けた損害は,原告Aの信用が毀損されたことによる損害であり,これを金銭に評価すると100万円を下らない。 (イ) 被告らがリンパコンディショニング技術を他の技術と融合して提供する行為は,原告らに対する一般不法行為を構成するところ,同行為により原告らが受けた損害は,原告らの信用がそれぞれ毀損されたことによる損害であり,これを金銭に評価すると,各100万円を下らない。 【被告らの主張】否認し,争う。 第3 当裁判所の判断 1 認定事実前記前提事実,各項目末尾掲記の証拠及び弁論の全趣旨によれば,次の事実が認められる。 (1) リンパコンディショニング技術と協会の設立等Eは,もともとスキー選手であったが,転倒し 定事実前記前提事実,各項目末尾掲記の証拠及び弁論の全趣旨によれば,次の事実が認められる。 (1) リンパコンディショニング技術と協会の設立等Eは,もともとスキー選手であったが,転倒して負傷したことを機に,米国で救急法のトレーナー技術を学び,自らが受けたリンパ節にアプローチするリハビリストレッチ技術や解剖学の知見も取り入れるなどして,スポーツ選手向けのストレッチ技術を考案し,自ら設立した原告ナビスポーツを通じるなどして,同技術を用いたスポーツトレーナーとしての活動を行っている。さらに,Eは,原告Aから要請を受け,上記ストレッチ技術を一般の女性向けに,かつ腕力のない女性であっても施術ができるように改良し,これを原告Aと共に「リンパコンディショニング技術」と名付けた。 原告Aは,平成22年頃,リンパコンディショニング技術を施術するセラピスト を育成し,また,セラピストの技術相談等や交流を深めることを主たる目的として「リンパコンディショニング協会」(協会)を設立してその代表となり,Eが顧問となった。協会の会員は,協会から技術の相談,サポート,会員間の交流の機会,オプションセミナー等の提供を受けることができ,その対価として年会費(1万5000円)を支払うこととなっている。 なお,協会の名称は,平成25年7月1日,「リンパアクティベーション協会」に改められた。 (以上につき,甲1,40ないし42,原告A本人,原告ナビスポーツ代表者)(2) 本件養成講座の開講等協会は,遅くとも平成22年までに,リンパコンディショニング技術を習得するための講座として,「小顔リンパアクティベーションセラピスト養成講座」と題する本件養成講座の提供を開始した。 本件養成講座の参加者に配布するマニュアル(甲12。以下「本件マニュア グ技術を習得するための講座として,「小顔リンパアクティベーションセラピスト養成講座」と題する本件養成講座の提供を開始した。 本件養成講座の参加者に配布するマニュアル(甲12。以下「本件マニュアル」という。)には,「この冊子のいかなる部分も,手法の如何によらず,著作権所有者の書面による許可を得ずに,いかなる形であれコピー・再生・複製・複写・転写を禁じるものであり,日本国著作権法によって保護されています。登録商標 NaviSportsAcademy(ナビスポーツアカデミー)通称NAVIの名称と関連ロゴマークはNAVIが所有する商標です。」との記載がある。 (以上につき,甲2,12,40ないし42,原告A本人,原告ナビスポーツ代表者)(3) 被告Bによる本件養成講座の受講と店舗の開店被告Bは,平成22年12月5日,本件受講申込書(甲3)を協会に差し入れ,同日から平成23年3月にかけて,本件養成講座を受講した。本件受講申込書に印刷された「受講約款」には,「入学決定者・・・は,ナビスポーツアカデミー・・・が定めたこの受講約款を承諾の上,受講申込みの締結となります。」「B.講習会場内の録音,撮影は禁止しております。」「H.受講終了後,各自が行う施術に関 する全ての事項は個々の責任で運営してください。本スクールサロンには一切の責任は負いません。」との各記載があった。 被告Bは,平成23年4月頃,当時の自宅において,「リンパコンディショニングサロン木もれ陽」(本件店舗の前身)を開店した。 (以上につき,甲3,乙12,被告B本人)(4) 被告Bの協会への入会被告Bは,平成23年6月頃,協会から送付されてきた「入会申込書」に記入・押印したもの(甲5。本件入会申込書)を返送し,協会に入会した。本件入会申込書には 人)(4) 被告Bの協会への入会被告Bは,平成23年6月頃,協会から送付されてきた「入会申込書」に記入・押印したもの(甲5。本件入会申込書)を返送し,協会に入会した。本件入会申込書には,「私は,リンパコンディショニング協会の規約に同意し,会員になることを申し込みいたします。」と印刷されているが,被告Bに送付された当時の協会の規約は,本件に証拠として提出されていない(甲第6号証として提出されている規約は,「リンパアクティベーション協会(旧リンパコンディショニング協会)会員規約」と記載されており,協会の名称が変更された平成25年7月1日以降に作成されたものであることが明らかである。)。 (5) 被告Bによる施術動画のアップロード等被告Bは,平成24年8月頃,自らによるリンパマッサージの施術の様子を撮影し,その動画(以下「本件施術動画」という。)をインターネット上のウェブサイトにアップロードして公開した(なお,原告らは,被告らが実施した「脱がないリンパケア講座」の具体的内容は,本件施術動画のとおりであり,原告らのリンパコンディショニング技術と同一であると主張している。)。 本件施術動画を見た協会の会員が,原告Aに対し,本件施術動画の施術手法は正しいのか,施術動画を公開しても問題ないのかとの趣旨の指摘をし,被告Bに対しても批判する趣旨のメールを送信したことなどから,被告Bが原告Aに電話して本件施術動画がおかしいと言われたなどと告げ,両名の間で話合いがもたれたことがあったが,このとき,原告Aが,リンパコンディショニング技術を公開することを禁じたり,本件施術動画の削除を求めたりすることはなかった。 (以上につき,甲13,18,41,乙12,原告A本人,被告B本人)(6) 被告Bの協会からの退会被告Bは, ことを禁じたり,本件施術動画の削除を求めたりすることはなかった。 (以上につき,甲13,18,41,乙12,原告A本人,被告B本人)(6) 被告Bの協会からの退会被告Bは,遅くとも平成25年初頭頃までには,原告Aに対し,協会から退会したい旨を話していたところ,原告Aは,同年5月15日頃,被告Bに対して「退会届」(Eが司法書士に相談するなどしてその文面を作成したもの。)を送付し,被告Bは,同年6月13日頃,これに署名・押印したもの(本件退会届)を返送した。 本件退会届には,「私は,このたびリンパコンディショニング協会・・・を退会いたしますので,ここに通知します。」「私は,退会後において,協会から得た技術情報や協会の知的財産の使用等に関して,以下の事項を守ることを約束します。」「(1)協会から提供された技術情報又はこれを記録した媒体を第三者に開示し,又は複製することはしません。」「(2)(1)において,技術情報の開示には,その技術を第三者に使用すること及び教示することを含みます。」と印刷されているが,「協会から提供された技術情報」が具体的にいかなる情報を指すのかを定義又は例示する記載はなく,また,原告A又はEが,被告Bに対し,本件退会届の差入れにより同被告が負うべき義務の具体的内容について説明したこともなかった。 被告Bは,同月頃,本件店舗の名称を「リンパコンディショニングサロン木もれ陽」から「木もれ陽サロン」に変更し,店舗の場所も移転した。 (以上につき,甲7,26,41,乙12,原告A本人,原告ナビスポーツ代表者,被告B本人)(7) 「脱がないリンパケア講座」の実施等被告Bは,平成24年頃から,本件店舗において「黄土よもぎ蒸し」「腸楽セラピー」などと題する施術の提供を始め,また,同施術のセラピス ,被告B本人)(7) 「脱がないリンパケア講座」の実施等被告Bは,平成24年頃から,本件店舗において「黄土よもぎ蒸し」「腸楽セラピー」などと題する施術の提供を始め,また,同施術のセラピスト養成講座を開講するなどしていたところ,平成25年12月,上記講座の受講生に対して,LINEメッセージを通じて,平成26年から「脱がないリンパケア講座」と題する講座を提供する旨を告知した。同告知には,「脱がないリンパケア講座は,私が積み上げてきた技術の集大成となります!お洋服を着たまま・・・効果は,肩こり,腰痛, 骨盤調整,むくみ等等。深リンパを流すため効果が続き,お客様の満足度が高いのが特徴です。」との記載があった。 被告Bが「脱がないリンパケア講座」を提供しようとしていることを知った協会の会員は,被告Bによる上記LINEメッセージを原告Aに転送した。 また,協会の別の会員は,平成26年1月頃,原告Aに対し,要旨,被告Bの講座を受講した人物が開店したサロンでリンパマッサージが提供されており,写真や説明文だけみると誰が見てもリンパコンディショニング技術であった,被告Bの講座の説明を見た自分の顧客からは,リンパコンディショニング技術について「ずいぶん簡単に覚えられるのね。」と言われたとの趣旨のメールを送信した。 (以上につき,甲10,41,乙12,15) 2 不競法に基づく損害賠償請求について(争点1)(1) 争点1-1(被告Bが本件養成講座で取得したリンパコンディショニング技術は,原告らが共同管理する「営業秘密」〔不競法2条6項〕に当たるか)についてア原告らは,別紙「本件営業秘密の具体的内容」に記載の「リンパコンディショニング技術」は,原告らが共同で管理する営業秘密(不競法2条6項)に当たると主張する。 し 〕に当たるか)についてア原告らは,別紙「本件営業秘密の具体的内容」に記載の「リンパコンディショニング技術」は,原告らが共同で管理する営業秘密(不競法2条6項)に当たると主張する。 しかしながら,前記認定事実によれば,原告Aは,リンパコンディショニング技術を施術するセラピストを育成するなどの目的で協会を設立し,同技術を習得するための講座として本件養成講座等を提供しているところ,本件養成講座の参加者に配布する本件マニュアルには,本件マニュアルが著作権及び商標権により保護されている旨及び複製等を禁ずる旨が記載されているにとどまり,その内容を第三者に使用又は開示してはならない旨は記載されていないし,本件受講申込書に印刷された「受講約款」にも,講習の録音,撮影を禁ずる旨の記載はあるが,受講により習得した技術を第三者に使用又は開示してはならない旨の記載はない。 また,原告らは,被告Bによるリンパマッサージの施術の様子を撮影した本件施 術動画について,原告らの営業秘密たるリンパコンディショニング技術と同一である旨主張しているところ,原告Aは,平成24年8月頃,被告Bが本件施術動画をインターネット上のウェブサイトにアップロードしていることを協会の会員から指摘され,これを機に被告Bと話合いをもっているところ,(原告らの主張を前提とすれば)リンパコンディショニング技術が公開されていることを十分に認識していながら,同技術の公開を禁止したり,本件施術動画の削除を求めたりしなかったというのである。 以上の事情からすれば,原告らが,原告らが主張するところのリンパコンディショニング技術を,情報の利用者である(被告Bを含む)講座受講者において秘密であると認識し得る程度に管理していたと認めることは困難というほかはないし,同技術は,平成24 張するところのリンパコンディショニング技術を,情報の利用者である(被告Bを含む)講座受講者において秘密であると認識し得る程度に管理していたと認めることは困難というほかはないし,同技術は,平成24年8月頃には非公知性を喪失しており,原告らが損害賠償の対象とする被告らの行為が行われた時点(平成26年1月から同年6月まで)では,およそ営業秘密たり得ないものであったことが明らかである。 イこの点について,原告らは,原告A及びEは,本件養成講座を開講した当初から,リンパコンディショニング技術の情報を第三者に使用,開示してはならない旨を繰り返し伝えていたと主張し,Eは,その尋問において,「口頭で,これを人に伝えることはやめてくださいということを授業中,24時間の授業中でしたか,何度も,まねしちゃ駄目よというふうには伝えてあります。」(本人調書〔原告ナビスポーツ代表者〕別紙速記録5頁)などと同旨の供述をする。 しかしながら,そもそも本件養成講座は,リンパコンディショニング技術を施術するセラピストを養成するため,同技術を習得するための講座として提供されているものであるから,リンパコンディショニング技術の情報を第三者に「使用」することを禁じていたというのは,本件養成講座の目的からして考え難いというべきであるし,第三者への「開示」の点についても,既に述べたとおり,本件養成講座への申込みに際して受講者が負担すべき義務等が記載された本件受講申込書中の「受講約款」には,習得した技術を第三者に開示してはならない旨が記載されていない のであるから,仮に,原告らの主張するように口頭で第三者への開示を禁ずるように伝えていたとしても,そのことをもって,原告らが,リンパコンディショニング技術について,情報の利用者である講座受講者において第三者に開示するこ 原告らの主張するように口頭で第三者への開示を禁ずるように伝えていたとしても,そのことをもって,原告らが,リンパコンディショニング技術について,情報の利用者である講座受講者において第三者に開示することにより法律上の責任を負い得ることを認識し得る程度に管理していたと認めることはできない。 ウしたがって,「リンパコンディショニング技術」が原告らの営業秘密に当たるとの原告らの主張は採用することができない。 (2) 不競法に基づく損害賠償請求に関する小括以上のとおり,リンパコンディショニング技術が原告らの営業秘密に当たるとは認められないから,リンパコンディショニング技術が営業秘密に当たることを前提とした不競法に基づく原告らの被告らに対する損害賠償請求は,その余の争点(争点1-2及び同1-3)について検討するまでもなく,全て理由がない。 3 債務不履行による損害賠償請求について(争点2)(1) 原告Aは,原告Aと被告Bとの間には準委任契約が成立していたところ,その後,被告Bが本件退会届を原告Aに送付したことにより,同準委任契約は終了したものの,本件退会届には,協会から提供された技術情報及びその媒体を第三者に開示(第三者に使用し,教示することも含む。)又は複製しないことを約する旨の記載があるから,被告Bは,原告Aに対し,上記準委任契約の終了後にも存続する付随的義務として,リンパコンディショニング技術に関する情報を秘密として保持し,第三者に使用,開示,教示しない義務を負うに至ったと主張し,これを前提に,被告Bが本件店舗において「脱がないリンパケア講座」を第三者に提供すること及びリンパコンディショニング技術を他の技術と融合して顧客に提供することは,いずれも上記義務に違反するものと主張する。 (2)ア前記認定事実によれば,協会の ンパケア講座」を第三者に提供すること及びリンパコンディショニング技術を他の技術と融合して顧客に提供することは,いずれも上記義務に違反するものと主張する。 (2)ア前記認定事実によれば,協会の会員となった者は,協会から技術の相談,サポート,会員間の交流の機会,オプションセミナー等の提供を受けることができ,その対価として年会費を支払うというのであるから,協会の会員であった被告Bと, 協会こと原告Aとの法律関係は,準委任契約としての性質を有していたとみることができる(以下,単に「本件契約」という。)。そして,本件契約は,平成25年6月13日頃,被告Bの原告Aに対する本件退会届による解除の意思表示により終了したというべきである(この点について,被告Bは,同人が,平成24年10月頃,原告Aに対し,協会から退会したい意思を伝えたから,この頃に契約が解除されたと主張するが,本件退会届の送付より前に,被告Bが,原告Aとの法律関係を確定的に解消する旨を表示したとまでは認め難い。)。 イところで,一般に,継続的な契約関係の終了に伴い,契約期間中に一方当事者が知り得た他方当事者の秘密情報(必ずしも不競法上の「営業秘密」に限られない。)につき,これを保有する者の正当な利益を保護するため,契約終了後にその使用や開示等を禁ずる旨の個別の契約を締結することが全く許されないというものではない。もっとも,本件契約は,協会こと原告Aが,原告らが提供した本件養成講座を受講して本件店舗を開店し,セラピストとして営業を開始した被告Bに対して技術のサポート等を提供することを内容とするものであるから,同契約期間中に知り得た情報の使用等を過度に広範に制限することは,被告Bの職業選択の自由及び営業の自由をおびやかすことともなりかねない。そこで,本件契約の終了後も, ることを内容とするものであるから,同契約期間中に知り得た情報の使用等を過度に広範に制限することは,被告Bの職業選択の自由及び営業の自由をおびやかすことともなりかねない。そこで,本件契約の終了後も,個別の合意により同契約期間中に知り得た情報を秘密として保持すべき義務を課することができるとしても,その義務の範囲については,対象となる情報の性質や範囲等に照らして合理性が認められる内容に限定して解釈するのが相当である。 しかるところ,前記認定事実によれば,本件退会届には,確かに「私は,退会後において,協会から得た技術情報や協会の知的財産の使用等に関して,以下の事項を守ることを約束します。」「(1)協会から提供された技術情報又はこれを記録した媒体を第三者に開示し,又は複製することはしません。」「(2)(1)において,技術情報の開示には,その技術を第三者に使用すること及び教示することを含みます。」と印刷されているが,「協会から提供された技術情報」が具体的にいかなる情報を指すのかを定義又は例示する記載はなく,本件退会届の記載上,保護 の対象となる情報がいかなる情報であるのかは判然としない。 また,仮に,原告Aにおいて,本件退会届にいう「協会から提供された技術情報」は,原告らが本件訴訟において営業秘密であるとして特定した別紙「本件営業秘密の具体的内容」に記載された具体的施術方法を指すものと認識していたとして,併せて,本件退会届が作成された具体的状況を斟酌するとしても,原告A及びEは被告Bに対して本件退会届により負う義務の具体的内容について説明していないほか,前記2において認定説示したとおり,原告らが営業秘密として主張する「リンパコンディショニング技術」は,情報の利用者である講座受講者において,第三者に開示することにより法律上の責任を負 ていないほか,前記2において認定説示したとおり,原告らが営業秘密として主張する「リンパコンディショニング技術」は,情報の利用者である講座受講者において,第三者に開示することにより法律上の責任を負い得ることを認識し得る程度に管理されていたとは認め難いこと,そもそも,原告らですら,本件訴訟において営業秘密として保護の対象とされるべき情報を特定して主張するのに数回の期日を要していたことなどからすれば,ましてや被告Bにおいて本件退会届により保護の対象となる情報がいかなる情報であるかを認識することは困難であったといわざるを得ない。 ウ以上の事情からすれば,単に「(1)協会から提供された技術情報又はこれを記録した媒体を第三者に開示し,又は複製することはしません。」「(2)(1)において,技術情報の開示には,その技術を第三者に使用すること及び教示することを含みます。」との抽象的かつ広範な文言が印刷されているにとどまり,これが作成された具体的状況を考慮しても,被告Bにおいて,保護の対象とされる情報がいかなる情報であるかを認識できない「退会届」に署名押印し,本件退会届を完成させたことをもって,被告Bに,協会こと原告Aから提供された何らかの具体的な情報について秘密として保持し,第三者に使用又は開示を禁ずる法的義務を負わせることは困難というべきであるから,同義務の存在を前提に債務不履行をいう原告Aの主張を採用することはできない。 (3) なお,上記の点をひとまず措くとしても,原告Aは,被告Bが本件店舗で提供した「脱がないリンパケア講座」の具体的内容について立証できていないというほかはないし(原告Aは,被告Bによるブログの記載等を縷々挙げた上,本件施術 動画の内容が「脱がないリンパケア講座」に引き継がれているなどと主張するが,被告Bが協会 立証できていないというほかはないし(原告Aは,被告Bによるブログの記載等を縷々挙げた上,本件施術 動画の内容が「脱がないリンパケア講座」に引き継がれているなどと主張するが,被告Bが協会の会員であった平成24年8月頃に撮影された本件施術動画の内容をもって,平成26年1月に実施された「脱がないリンパケア講座」の内容までもを推認することは困難である。),「リンパコンディショニング技術を他の技術と融合して顧客に提供すること」に至っては,それが具体的にいかなる行為を指すかすら,特定して主張できていない。さらに,「脱がないリンパケア講座」と「リンパコンディショニング技術」(そもそも「リンパコンディショニング技術」という語により特定される技術が具体的に何を指すのかは判然としないから,結局は原告が特定した別紙「本件営業秘密の具体的内容」に記載された具体的施術方法をいうものと解するほかはない。)とが一致することを認めるに足りる的確な証拠もない。 これらの点からしても,債務不履行による損害賠償請求に理由がないことは明らかである。 加えて,原告Aは,被告Bが「脱がないリンパケア講座」を提供した行為により350万円の損害を受けたと主張し,同額の根拠は被告Bが受領した受講料の70パーセント相当額というのであるから,逸失利益の損害を主張するものと解されるが,「被告Bが『脱がないリンパケア講座』を提供しなければ,原告Aが350万円を得る蓋然性があった」などという因果関係は立証されていない。また,原告Aは,被告Bがリンパコンディショニング技術を他の技術と融合して顧客に提供した行為により信用を毀損され,同信用の毀損を金銭に評価すると100万円に相当するとも主張するが,前記のとおり「リンパコンディショニング技術を他の技術と融合して顧客に提供した行為」が具体 顧客に提供した行為により信用を毀損され,同信用の毀損を金銭に評価すると100万円に相当するとも主張するが,前記のとおり「リンパコンディショニング技術を他の技術と融合して顧客に提供した行為」が具体的にいかなる行為を指すのか判然としない以上,これにより原告Aの信用が毀損されることになるとの相当因果関係を見いだすことは困難というほかはない。これらの点からしても,債務不履行による損害賠償請求に理由がないことは明らかである。 (4) 債務不履行による損害賠償請求に関する小括以上の次第であるから,被告Bの債務不履行を原因とする,原告Aの被告Bに対 する損害賠償請求はいずれも理由がない。 4 一般不法行為による損害賠償請求について(争点3)原告らは,被告らがリンパコンディショニング技術を他の技術と融合して本件店舗で提供する行為が,原告らに対する一般不法行為を構成すると主張するが,既に述べたとおり,「リンパコンディショニング技術を他の技術と融合して本件店舗で提供する行為」が具体的にいかなる行為を指すかは判然としないし,原告らは,同行為を被告らが行った事実も何ら立証できていない。また,そのような何らかの行為があったとして,これをもって直ちに原告らの主張するところのリンパコンディショニング技術が低水準のものと誤解されるものと即断できるものでもなく,原告らに対する一般不法行為を構成するような違法性ある行為と認めることは困難というほかない。 したがって,一般不法行為を原因とする,原告らの被告らに対する損害賠償請求は,全て理由がない。 5 結論以上のとおり,原告らの請求はいずれも理由がないから,これらを棄却することとし,主文のとおり判決する。 東京地方裁判所民事第29部 裁判長裁判官 主文 以上のとおり,原告らの請求はいずれも理由がないから,これらを棄却することとし,主文のとおり判決する。 東京地方裁判所民事第29部 裁判長裁判官 嶋末和秀 裁判官 鈴木千帆 裁判官 天野研司 (別紙省略)
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