平成13(ネ)310 更生債権確定請求控訴

裁判年月日・裁判所
平成13年12月21日 大阪高等裁判所
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判決文本文15,028 文字)

主文 1 原判決を,次のとおり変更する。 2 控訴人が,更生会社株式会社キョウデンプロダクツに対し,更生債権として,保証債権2億8838万1335円を有することを確認する。 3 控訴人のその余の請求を棄却する。 4 訴訟費用は,第1,2審を通じて,これを5分し,その3を控訴人の負担とし,その余を被控訴人らの負担とする。 事実及び理由 第1 控訴の趣旨 1 原判決を取り消す。 2 控訴人が,更生会社株式会社キョウデンプロダクツに対し,更生債権として,保証債権7億0152万6128円を有することを確認する。 第2 事案の概要本件は,会社更生手続における債権調査手続において,控訴人届出に係る保証債権7億0152万6128円について,更生会社管財人である被控訴人らが,更生会社の保証は,会社更生法(以下「法」という。)78条1項4号所定の会社更生手続申立て前6ヶ月以内になされた「無償行為」であるとして,否認し,全額異議を述べたため,控訴人が当該保証債権の確定を求めた事案である。 1 前提となる事実(1) 関係当事者ア控訴人オ-・ビ-・リ-シング,エイ・エスは,チェコ共和国法に基づき設立された大手リース会社である(甲18)。 更生会社の前身である昭和プラスチックス株式会社は,平成10年8月14日,大阪地方裁判所に会社更生手続開始の申立てをなし,同年10月29日,同裁判所において更生手続開始決定を受け,被控訴人らが管財人に選任され,平成12年3月29日,更生計画が認可され,商号を株式会社キョウデンプロダクツに変更した(以下において,特定の必要がない限り,更生会社の前身である昭和プラスチックス株式会社に関しても,単に「更生会社」と表記し,時期等の関係で,特 が認可され,商号を株式会社キョウデンプロダクツに変更した(以下において,特定の必要がない限り,更生会社の前身である昭和プラスチックス株式会社に関しても,単に「更生会社」と表記し,時期等の関係で,特定の必要がある場合は「昭和プラスチックス株式会社(更生会社)」と表記する。)。 後記本件リース契約締結当時である平成10年6月当時の昭和プラスチックス株式会社(控訴人会社)の代表取締役はDであった。 イ控訴人は,後記のとおり,Eとファイナンス・リース契約(以下「本件リース契約」という。)を締結し,このリース料の支払を更生会社が保証した。この保証債権につき前記のとおり債権調査手続において否認されたものである。 上記Eは,昭和プラスチックス株式会社(更生会社)とF株式会社が共同出資で設立したG(英国法人。持株は,昭和プラスチックス株式会社(更生会社)が55パーセント,G株式会社が残り45パーセントを保有)を唯一の株主とするチェコ共和国法人である。 すなわち,Gは,平成10年5月6日,営業譲渡契約により,平成7年6月2日に設立されたチェコ共和国法人のH社の全株式を取得し,同日,同社の商号を「E」に変更するとともに,その事業目的にプラスチックス製品の製造を加え,Iを取締役に選任した(甲8,11,33。なお,甲8によれば,同社は,株主・取締役の変更及び社名の変更について登記していないとのことである。)。Eの前身のH社は,法律事務所等の依頼者が会社の取得を希望したときに,いつでも取得できるよう予め登記された,いわゆるペーパーカンパニーで,事業経歴のない会社であった。 (2) リース契約の締結控訴人は,平成10年6月19日,Eとの間で,以下の約定のファイナンス・リース契約(本件リース契約) ーパーカンパニーで,事業経歴のない会社であった。 (2) リース契約の締結控訴人は,平成10年6月19日,Eとの間で,以下の約定のファイナンス・リース契約(本件リース契約)を締結し,リース物件を引き渡した(甲1の1及び2)。 ① リース物件原判決別紙物件目録記載のとおり(以下,同目録記載の物件を「本件リース物件」という。)② リース料月額640万8856.12チェコ・コルナ及びVAT(付加価値税)156万3031.70チェコ・コルナ③ リース料支払の予定 4半期毎④ 最短リース期間 72ヶ月⑤ リース物件の供給者 E(3) 更生会社の保証昭和プラスチックスス株式会社は,代表取締役であったDが保証人の宣言に署名して,平成10年6月19日,控訴人に対し,本件リース契約上のEの債務を保証した(甲2。以下「本件保証」という。)。 (4) 控訴人は,更生会社の債権調査手続において,本件保証債権として7億152万6128円(以下「本件保証債権」という。)の債権届出をしたが,被控訴人らは,平成11年9月14日の債権調査期日において,法78条1項4号による否認を理由として,本件保証債権全額につき異議を述べた。 2 本件争点と当事者の主張(1) 本件保証に対する無償否認(法78条1項4号)の可否について(以下「争点(1)」という。)。 本件保証につき,被控訴人らは,更生会社が,本件更生手続開始の申立て前6ヶ月以内に,義務なくして他人であるEのためになされたもので,法78条1項4号の「無償行為」に該当し否認の対象となる旨主張し,控訴人は,更生会社は本件保証の「対価として経済的利益」を受けており,「無償行為」には 義務なくして他人であるEのためになされたもので,法78条1項4号の「無償行為」に該当し否認の対象となる旨主張し,控訴人は,更生会社は本件保証の「対価として経済的利益」を受けており,「無償行為」には該当しない旨主張している。 本件保証の「対価として経済的利益」を受けたことについての,双方の主張は,次のとおりである。 ア控訴人の主張a 一般に,更生会社が義務なくして他人のためにした保証は,「対価として経済的利益」を受けていれば,法78条1項4号にいう「無償行為」に該当しないと解されるところ,「対価として経済的利益」を受けたか否かの判断は,本件のごときグループ企業間の保証の場合は,厳格に解されるべきではない。本件で,更生会社は本件保証をしたことにより,控訴人とEの間で本件リース契約(バックリース)が締結され,その結果,更生会社はEに対し,本件リース物件を仕入価格(合計2億5807万7150円)よりも合計1億7149万2850円高い転売価格(合計4億2957万円)で売却することが可能となった上,本件保証の契約書原本と引換に控訴人から直接,本件リース物件の購入代金(3億0926万9439円)が支払われ,この代金が上記転売代金に充てられ,そればかりか,更生会社が仕入先に代金を弁済しないうちに倒産したことから,上記3億超える現金がそのまま会社財産として保持されたのである。 b 以上によれば更生会社は,本件保証によって,①控訴人から子会社であるEに金融を得ることができ,自己の金融負担が軽減されるという消極的な経済的利益を受けたばかりか,②本件リース物件の転売利益という会計上の利益だけではなく,③その裏付けとなる現金収益も取得したほか,④上記転売に要した経費(現金支出)5000万円程度,及び更正債権に対する配当に伴う財 たばかりか,②本件リース物件の転売利益という会計上の利益だけではなく,③その裏付けとなる現金収益も取得したほか,④上記転売に要した経費(現金支出)5000万円程度,及び更正債権に対する配当に伴う財団減少約1000万円を控除に入れたとしても,上記会計上の転売利益をはるかに超える現金収益(2億4,5000万円程度)を得ており,更生会社は,子会社たるEを利用して,本件保証と引換に直接,上記①ないし④の各経済的利益を得たものと解され,控訴人は本件保証の「対価として経済的利益」を受けているものというべきである。 c よって,本件保証は,法78条1項4項の「無償行為」に該当せず,被控訴人は本件保証を否認することはできない。 なお法78条1項4項は,「無償行為」とともに「無償と同視すべき有償行為」も否認の対象としており,このことは,文理上も,一つの行為が部分的に否認の対象となったり,あるいは,ならなかったりするものではないことを示している。すなわち無償と同視できない有償行為であれば全体として有償行為となるのであって,その行為が部分的に有償行為,その残余の部分が無償行為となって否認の対象となるわけではない。また,仮に「対価としての経済的利益」の範囲でのみ無償性が否定されるとした場合,保証料を超える部分は無償行為として否認の対象とならざるを得ないが,そのような結論が不合理であることは明白である。よって,本件保証がその「対価として経済的利益」を受けており,「無償行為及びこれと同視すべき有償行為」に該当しないものとされる以上,その確定債権全額について被控訴人は無償否認をなすことはできないというべきである。 イ被控訴人らの反論a 経済的利益に関する控訴人主張はいずれも失当である。すなわち,本件保証によって控訴人からEに 全額について被控訴人は無償否認をなすことはできないというべきである。 イ被控訴人らの反論a 経済的利益に関する控訴人主張はいずれも失当である。すなわち,本件保証によって控訴人からEに金融が得られたことをもって「対価としての経済的利益」に該当するとの主張は,このような間接的かつ消極的な利益は「保証の対価としての経済的利益」には当たらず,失当である。 次に,更生会社がEとの間の売買によって得た転売利益(仕入価格と転売価格の差額分に関する計数上の利益)が本件保証の「対価としての経済的利益」に該当するとの主張は,仮に,本件一連の取引にそのような因果の連鎖が認められるとしても,本件保証のほかに,その行為がなければ本件一連の取引全体の取引が成立し得なかったであろうといえる行為は多数存在しているはずで,本件保証だけを殊更強調するのは相当ではなく,控訴人の主張する上記転売利益は,あくまで更生会社が自らEとの間で締結した売買契約という本件保証とは全く別個の法律行為の結果として生じたもので,これをもって「保証の対価としての経済的利益」ということはできないので,やはり理由がない。 また,本件取引により2億円を超える額の資産を増加させており,この資産増加をもって「保証の対価としての経済的利益」に該当するとの主張も,更生会社とその仕入先であるJとの間で締結された本件リース物件(射出成形機)売買契約は所有権留保特約付き割賦販売契約で,割賦代金が完済されるまで当該機械の所有権はJに留保され,更生会社は無断で当該機械を譲渡してはならない約定が付されている。したがって,この約定に従いEへの転売の前提として,更生会社がJへの仕入代金全額の支払いを完済していたならば,更生会社に上記のような資産増加は生じなかったことは明かであ ならない約定が付されている。したがって,この約定に従いEへの転売の前提として,更生会社がJへの仕入代金全額の支払いを完済していたならば,更生会社に上記のような資産増加は生じなかったことは明かである。このように更生会社がJとの間の上記約定を遵守するか否かにより,その有無に変化が生じるような資産増加は,「保証の対価としての経済的利益」には当たらないというべきである。 b なお,控訴人の主張する上記経済的利益が本件保証の「対価としての経済的利益」に該当するとしても,被控訴人ら(管財人)の法78条1項4項に基づく無償否認が全面的に否定されるのではなく,その対価たる「経済的利益」の額の限度で無償否認が否定されるにすぎない。したがって,被控訴人らは上記「経済的利益」の額を超える部分については,これを同号に基づき否認することができる。 (2) 本件リース料残金から本件リース物件の評価相当額を控除・清算することの可否と控除相当額(以下「争点(2)」という。)ア控訴人は,本件リース物件をリース期間中にEから引き揚げたか否か(以下「争点(2)・ア」という。)。 a 被控訴人らの主張控訴人は,本件リース物件をEの占有下から引き揚げた。 b 控訴人の主張控訴人は,Eが自己の工場敷地内に本件リース物件の設置を続けることができなくなったため,Eの要望を受けて,本件リース物件を他の施設へ移転し,保管しているが,これはEから寄託を受けて保管しているものであり,本件リース物件を引き揚げたものではない。 イ上記アが肯定されるとして,本件リース契約に基づくEの控訴人に対する債務のリース料残額から本件リース物件の評価相当額を控除することができるか(以下「争点(2)・イ」という。)。 a 被控訴人らの主 肯定されるとして,本件リース契約に基づくEの控訴人に対する債務のリース料残額から本件リース物件の評価相当額を控除することができるか(以下「争点(2)・イ」という。)。 a 被控訴人らの主張リース期間の途中で債権者がリース物件の返還を受けた場合,返還によって得た利益を清算する義務を負うとの法理は,普遍性を有し,当然,チェコ共和国法にも妥当する。したがって,本件リース契約の準拠法がチェコ共和国法であるとしても,控訴人は,本件リース残料金から本件リース物件の評価相当額を控除すべきである。 仮に,チェコ共和国法上,控訴人は本件リース物件の返還に伴う清算義務を負わないものと解されるとしても,本件は強度の内国関連性を有する事案である上,そのような結論はわが国の「公序」に反するものであり,したがって,法例33条により上記チェコ共和国法の適用は排除されるべきである。 b 控訴人の主張本件リース契約の準拠法はチェコ共和国法である。チェコ共和国法上,債権者はリース物件を引き揚げた場合でも,リース残料金の全額を請求することが認められており,本件リース物件の評価相当額との清算義務は負っていない。したがって,控訴人は,Eに対し,残リース料全額の支払を求めることができ,逆に,本件リース物件の評価相当額を控除することはできない。 ちなみに,本件リース契約の当事者はいずれもチェコ共和国法人であり,リース目的物の使用も,そのリース料の支払いも同国内で行われており,したがって,わが国との十分な内国関連性が認められない。しかもリース物件を引き揚げた場合の清算義務は当事者の合意で排除できる任意的・補充規定的性格を有するにとどまり,わが国の「公序」をなすものではない。よって,法例33条によりチ 国関連性が認められない。しかもリース物件を引き揚げた場合の清算義務は当事者の合意で排除できる任意的・補充規定的性格を有するにとどまり,わが国の「公序」をなすものではない。よって,法例33条によりチェコ共和国法の適用を排除することはできない。 仮にチェコ共和国法の適用が排除された場合でも,本件リース物件は,更生会社に対する前売主に所有権留保がなされていたこと,更生会社が倒産したことにより,本件リース物件の保守・修理等のサービスが受けられない状態にあることに照らせば,被控訴人らが本件リース物件の評価額相当額の控除を主張することは権利濫用あるいは信義則違反となり許されない。 ウ上記イが肯定されるとして,本件リース残料金から控除されるべき本件リース物件の評価相当額はいくらか(以下「争点(2)・ウ」という。)。 a 被控訴人らの主張本件リース物件の取得価格は,Eと控訴人との間における売買代金額は127,513,825チェコ・クローネであり,これを本件更生手続開始決定時のレート(1チェコ・クローネ=4円)で換算すると5億1005万5300円となる。他方,本件リース物件の取得日を売買契約締結日とすると平成10年9月9日であるところ,その僅か1カ月余り後の同年10月23日には本件リース物件の引き揚げに関する合意が成立しており,その減価償却を考慮する必要はない。そうすると,本件リース物件の引揚時における評価額は上記取得額と同額の5億1005万5300円であるところ,わが国の通例によると,その10パーセント相当額の5100万5530円が残存価値となる。したがって,本件リース物件残料金から控除清算されるべき利益は,4億5904万9770円となり,本件リース残料金は同額だけ減少し,これに伴い本件保証の確定債権額も同 00万5530円が残存価値となる。したがって,本件リース物件残料金から控除清算されるべき利益は,4億5904万9770円となり,本件リース残料金は同額だけ減少し,これに伴い本件保証の確定債権額も同額,すなわち4億5904万9770円だけ減少する。よって,本件保証の履行請求権額7億0152万6128円から4億5904万9770円を控除した2億4247万6358円を超える部分について控訴人の本件請求は理由はない。 b 控訴人の主張否認ないし争う。本件リース物件の大半は所有権留保物件である上,設置,保守・修理等のサービスを受けられない状態にある。したがって,本件リース物件の評価に当たっては,その引揚時における目的リース物件の評価相当額から所有権留保による担保価値のほか,設置,保守・修理等に関する上記サービスを受けられないことによる価値低下分を控除すべきである。また,清算義務の存在を主張するのは権利濫用ないしは信義則違反である。 第3 当裁判所の判断 1 当裁判所は,控訴人の本件請求は上記主文第2項の限度で理由があるものと判断する。 以下その理由を詳述する。 2 認定事実前記前提となる事実に加え,甲1ないし6(枝番を含む。),8ないし10,12ないし14,16ないし23(枝番を含む。),31,32の1と2,34ないし36,乙1ないし3及び弁論の全趣旨を総合すれば(ただし,前記各証拠のうち後記認定に反する部分を除く。),以下の事実が認められる。 (1) 上記のとおり,昭和プラスチックス株式会社(更生会社)と出光石油化学株式会社が共同出資で設立したGが,営業譲渡契約によりチェコ共和国法人のH社の全株式を取得し,同社の商号を「E」に変更し,その事業目的にプラスチックス製品の製造を加え,昭和プラス 社)と出光石油化学株式会社が共同出資で設立したGが,営業譲渡契約によりチェコ共和国法人のH社の全株式を取得し,同社の商号を「E」に変更し,その事業目的にプラスチックス製品の製造を加え,昭和プラスチックス株式会社の「I」を取締役に選任したのは,平成10年5月6日である。 Eの設立に先立ち,平成10年2月,昭和プラスチックス株式会社(更生会社)の「I」は,後日新設されるチェコ法人の経営者として,控訴人を訪問し,購入機械の融資を申し入れ,これに対し,控訴人は,同年3月17日ころ,更生会社に対し,「Eに対するフィナンシャル・リーシングの契約を伴わない提案」と題する書面(甲9)を送付し,本件リース物件に関するファイナンス・リース契約の締結を提案した上,控訴人の債権の保全方法として更生会社の保証を求めた。 また,昭和プラスチックス株式会社(更生会社)は,「弊社チェコ向け現地法人新設に伴い射出成形機の見積りを依頼する」旨の平成10年3月20日付け書面(乙3の添付別紙1)をK株式会社等に対し依頼したが,その際の支払条件は,見積業者に対する支払は更生会社との国内取引とすることとされていた(乙3)。 (更生会社の本件リース物件の購入に関与したLは,その陳述書である乙3において,昭和プラスチックス株式会社(更生会社)は,平成9年末ころ,射出成形機等を購入し,これをチェコ共和国の新設する子会社である後のEに転売し更生会社が利益を上げる構想を立て,代表取締役Dの指揮の下で,その計画を進めた旨陳述しているが,未だ設立していない子会社に転売して利益を上げるという構想自体,採用しがたいものいうほかない。)(2) 同年5月5日の会議で,更生会社の「I」との間で,更生会社がその保証契約書原本を控訴人に引き渡すのと引換に,控訴 社に転売して利益を上げるという構想自体,採用しがたいものいうほかない。)(2) 同年5月5日の会議で,更生会社の「I」との間で,更生会社がその保証契約書原本を控訴人に引き渡すのと引換に,控訴人は本件リース物件の代金を直接,更生会社の口座に送金することなどの合意が成立した(甲18)。 (3) 上記のとおり,同年5月6日,昭和プラスチックス株式会社(更生会社)の関連会社であるGは,いわゆるペーパーカンパニーであるH社の株式を100パーセント取得し,同社は,即日,商号をEに変更した上,事業目的の中にプラスチックス製品の製造を加えたが,このE新設直後の同月13日ころ,昭和プラスチックス株式会社(更生会社)は,自ら本件リース物件のシッパー(輸出者)となることとし,本件リース物件の債務者並びに「最終荷受人」を新設されたEとする「予告的送り状」(PROFORMAINVOICE=契約の申込み又はその誘引)を作成し,これを同社に送付した(甲12,18,35,36)。 他方,リース物件の仕入れ先に予定されていたKが,自らがサプライアーとなることに難色を示したことから,更生会社は,J株式会社を仕入先とすることに決め,同月20日,同社との間で,所有権留保特約付きの機械割賦販売契約を締結し,同社から本件リース物件のうち射出成形機と周辺機器(以下「射出成形機等」という。なお必要に応じてその前に「本件」を付加し,他の物件についてもこの例による。)を仕入代金2億2714万1000円で購入した(甲3,13,14,18,31,32,乙3)。 (4) 同年6月19日,控訴人は,Eとの間で,本件リース物件に関する将来購入契約を締結した(以下「本件将来購入契約」という)。 本件と関連する約定の要旨は以下のとおりである(甲5)。 ア将来売主であ 19日,控訴人は,Eとの間で,本件リース物件に関する将来購入契約を締結した(以下「本件将来購入契約」という)。 本件と関連する約定の要旨は以下のとおりである(甲5)。 ア将来売主であるEは,本件リース物件のうち射出成形機6台の代金の完済時にその所有者となる。 イ控訴人とEは,Eが後に上記機械を将来買主である控訴人に売却し,それを本件リース契約に従い,ファイナンス・リースの目的物とすることを合意する。 ウ Eは,上記機械の所有権を取得したときから5日以内に,控訴人との売買契約を締結する義務を負う。 エ控訴人は,Eに対し,以下の約定に従い売買代金を先払いする。 ① 本契約締結後5日以内に,更生会社の署名済みの保証書の写しが添付されたE発行の頭金の請求書に基づき1670万チェコ・コルナを支払う(但し,本件リース契約に基づく第1回のリース料金と相殺することを合意)。 ② VATを除く取得価額の残額は,更生会社のための信用状によってカバーされる。信用状の記載は以下のものとされなければならない。 α 控訴人は,平成10年7月10日に,本件リース物件の完全な引渡しを証する引渡書,Eの代表者による物件の引渡しの確認,更生会社発行の保証書原本と引き換えに6600万チェコ・コルナを支払う。 β 取得価格の残額は,リース目的物の適合性の宣言の引渡し等がなされたときに支払う。 オ上記エ,②,αの支払は,株式会社M銀行N支店の更生会社名義の預金口座に送金してなされ,上記支払は,控訴人のEに対する義務の履行とみなされる。 (5) 他方,本件将来購入契約の締結を受け,控訴人は,前同日,Eとの間で,要旨以下の約定で本件リース契約を締結し,本件リース物件を引き渡した(甲1の1及び2)。 る義務の履行とみなされる。 (5) 他方,本件将来購入契約の締結を受け,控訴人は,前同日,Eとの間で,要旨以下の約定で本件リース契約を締結し,本件リース物件を引き渡した(甲1の1及び2)。 アリース料月額640万8856.12チェコ・コルナ及びVAT(付加価値税)156万3031.70チェコ・コルナイリース物件の供給者 E(6) 更生会社は,同日,控訴人に対し,本件リース契約から生じる一切の債務について,これを保証する旨宣言して,本件保証をし(甲2),翌7月31日までに,プラハのEに本件リース物件をすべて引渡した(甲21)。 これと並行して,更生会社は,Eに対し,「送り状」(INVOICE)を送付し,本件リース物件の転売代金の支払いを請求した。なお,本件リース物件のうち射出成形機等の転売代金は3億7467万円,窒素ガス発生器等の転売代金は4300万円,AGI機具のそれは1190万円で,上記「送り状」では,上記転売代金の支払いは,撤回不可能信用状によりなされるものとされていた(甲4,22,23)。 (7) 控訴人は,同年7月31日(金曜日),本件将来購入契約の約定((5)のエ,②,α及びオ)に基づき,M銀行N支店の更生会社名義の預金口座に65,994,375.07チェコ・コルナを送金した(甲16,18)。 もっとも,更生会社は,転売代金の支払いについては撤回不可能信用状によるものとされていたことから,母体行から信用状を入手し,これにより,同年6月29日付けで,M銀行N支店から2億7252万円の融資を受けた。そして,同年8月4日,差額872万6005円が上記預金口座に入金された。 結局,更生会社は,日本円に換算すると,控訴人から合計で2億8124万6005円の送金を受け,これを受領し を受けた。そして,同年8月4日,差額872万6005円が上記預金口座に入金された。 結局,更生会社は,日本円に換算すると,控訴人から合計で2億8124万6005円の送金を受け,これを受領した(乙1,2,弁論の全趣旨)。 (8) 控訴人はEから,同年9月9日までに本件リース物件を1億2751万3825チェコ・コルナ(VAT2299万4289チェコ・コルナを含む。)で購入する契約を締結した(甲19の1及び2,20)。 3 争点(1)-本件保証の無償否認の可否について(1) 原判決「事実及び理由」の「第三争点に対する判断」の「一争点1(本件保証の無償性)について」の1記載のとおり,本件保証が法78条1項4号の「無償行為」として否認できるか否かは,更生会社に本件保証の「対価として経済的利益」が帰属したかにかかる(最高裁昭和62年7月3日第2小法廷判決・民集41巻5号1068頁)。 この「保証の対価として経済的利益」が帰属した否かは具体的事案に即して実質的に考察されるべきである一方,事業会社の法律行為は,事業の展開としてなされるのであるから,当然,なんらかの見返りを伴うものである。にもかかわらず,無償否認制度の趣旨に照らすと,義務なくしてなされた保証は,債権者の主たる債務者に対する直接の原因であっても,直ちに有償行為と認めがたいのであって,その見返りが対価といえるだけの直接かつ現実的な形で更生会社に帰属することが必要であると解される。 (2) 上記のとおり本件保証と引換えに,控訴人のEに対する本件リース物件のバックリース代金が直接,更生会社の預金口座に入金され,これは控訴人のEに対する上記バックリース代金の履行とみなされると共に,更生会社のEに対する転売代金(利益)が現実に確保される関係が成立している。 代金が直接,更生会社の預金口座に入金され,これは控訴人のEに対する上記バックリース代金の履行とみなされると共に,更生会社のEに対する転売代金(利益)が現実に確保される関係が成立している。 この転売利益(控訴人主張の上記経済的利益②及び③)それ自体は,更生会社のEに対する本件リース物件の転売の対価として更生会社の財産に帰属するもので,本件保証の対価であると認め難い。しかし,上記認定の本件保証に関する契約関係,すなわち,更生会社がJ等仕入先から本件リース物件を購入し,これをEに転売し,Eは,本件リース物件をさらに,控訴人に転売した後,バックリースを受け,これを資本に操業を開始して,それにより本件リース物件のリース代金を支払う,他方,更生会社は,控訴人に対し,Eのリース代金債務を保証し,これと引換に,控訴人から直接,本件リース物件のバックリース代金を取得するという各契約関係は,更生会社がE設立前から立案し,その計画を進め,且つ達成されたものである。 そして,この各契約関係から,結局のところ,昭和プラスチックス株式会社(更生会社)は,Eに対する転売代金を現実に確保するという形式をとりながら,その実質は,更生会社が自己の運転資金及びE設立及びその事業資金を控訴人から直接融資を受けたのである。さらにEが更生会社の子会社であったことは,この各契約関係締結に関して作成された関係書類(前記乙3添付の別紙1等)から明らかである。 (更生会社が資金繰りに窮していたであろうことは,その後の更生手続開始の申立時期から明らかであるといえる。)(3) そうすると,そもそも,義務なくして本件保証がなされたとは認められず,この点から否認の対象とならないともいえるところであるが,いずれにしろ,本件保証は,昭和プラスチックス株式会社(更生会 (3) そうすると,そもそも,義務なくして本件保証がなされたとは認められず,この点から否認の対象とならないともいえるところであるが,いずれにしろ,本件保証は,昭和プラスチックス株式会社(更生会社)自身が融資を得るためのものであって,本件保証と引換に控訴人から更生会社の預金口座に直送された金員(控訴人主張の上記経済的利益④)を本件保証の対価と見なしうることは明らかである。 よって,本件保証は,法78条1項4号の「無償行為」には該当せず,被控訴人は本件保証を否認することはできない。 4 争点(2)-本件リース料残金から本件リース物件の評価相当額を控除・清算することの可否と控除相当額について(1) まず争点(2)・アについて検討する。 甲27及び弁論の全趣旨によれば,更生会社の倒産に伴い,その子会社のEが操業不能に陥ったことから,控訴人は,平成10年10月23日,Eから本件リース物件を他の施設へ移転することの依頼を受け,これに応じたことが認められる。この事実からすると,控訴人は,本件リース期間中に,Eが実質的に倒産したことから,本件リース物件をEから引き揚げたものと認めるのが相当である。 控訴人は,Eから寄託を受けて保管しているにすぎない旨主張するが,甲27によれば,本件リース物件の移転施設は何ら特定されていない上,Eが上記依頼をなすに至った経緯等に照らすと,控訴人は単に寄託を受ける趣旨で本件リース物件の引き渡しを受けたとは認め難く,控訴人の上記主張は採用できない。 (2) 次に争点(2)・イについて検討する。 上記のとおり,控訴人は,本件リース期間の途中で,Eの親会社が倒産し操業不能に陥ったことから,本件リース物件を引き揚げたものであるから,控訴人は本件リース物件の返還によ ついて検討する。 上記のとおり,控訴人は,本件リース期間の途中で,Eの親会社が倒産し操業不能に陥ったことから,本件リース物件を引き揚げたものであるから,控訴人は本件リース物件の返還によって得た利益を清算する義務を負っているものと解するのが相当である(最高裁昭和57年10月19日第3小法廷判決・民集36巻10号2130頁)。 もっとも,本件リース物件の当事者はいずれもチェコ共和国法人であるから,控訴人が上記清算義務を負うか否かの準拠法は,法例7条2項によりチェコ共和国法であると解されるところ,本件全証拠を検討しても,同国法上,本件リース物件につき控訴人が清算義務を負っているかは明らかではない。 チェコ共和国法では控訴人は上記清算義務を負わない根拠として,控訴人が提出しているチェコ国裁判所の判例(甲37)は,リース物件が盗まれた場合で且つ当事者間に清算義務を負わない旨の合意があった事例であって,上記判断を左右するものではない。 そして,控訴人が上記清算義務を負うか否かは,日本国の内国法人を債務者とする本件保証債権の存否及び額に直接かつ重大な影響を与えるものであること(附従性),清算義務を負わないとすると控訴人に過大な利益を付与する結果を招来することになることに鑑みると,上記判断が相当であって,これを左右する事由はない。 (3) そこで,さらに争点(2)・ウについて検討する。 上記のとおり,控訴人は本件リース物件の引き揚げ返還によって取得した利益を清算すべきであるところ,その対象は,本件リース物件が返還時に有した価値と本来リース期間満了時において有すべき残存価値との差額であると解される(前掲最高裁昭和57年10月19日第3小法廷判決)。 前記認定事実(8)によれば 本件リース物件が返還時に有した価値と本来リース期間満了時において有すべき残存価値との差額であると解される(前掲最高裁昭和57年10月19日第3小法廷判決)。 前記認定事実(8)によれば,平成10年10月23日,本件リース物件の引き揚げに関する上記合意が成立しているところ,同年7月31日までにEに本件リース物件が引き渡され操業に供されていることからみて,本件リース物件の上記引揚時までに約3ヶ月間が経過している。そうすると,やはりその間の減価償却を考慮する必要があり,その償却率としては1割が相当である。 ところで本件リース物件の取得価格,すなわちEと控訴人との間における売買代金額は127,513,825チェコ・クローネで,これを本件更生手続開始決定時のレート(1チェコ・クローネ=4円)で換算すると5億1005万5300円となるところ,そのころ控訴人は本件リース物件の返還を受けている。そうすると,本件リース物件の返還時における価値は,少なくとも上記取得価格(5億1005万5300円)からその減価償却分相当額(5100万5530円)を控除した額の4億5904万9770円を下らないものと認められる。 他方,わが国の通例によると,本件リース期間終了後の残存価値は10パーセント相当額の4590万4977円であると認められるから,結局,本件リース物件の返還によって清算すべき利益は,4億1314万4793円(4億5904万9770円-4590万4977円)となり,本件リース残料金は同額減少し,これに伴い本件保証の確定債権額も同額,すなわち4億1314万4793円減少する。 よって,本件保証の確定債権額は,本件保証の履行請求権額7億0152万6128円から4億1314万4793円を控除した2億8838万1335 ,すなわち4億1314万4793円減少する。 よって,本件保証の確定債権額は,本件保証の履行請求権額7億0152万6128円から4億1314万4793円を控除した2億8838万1335円を下らないものと認めるのが相当である。 なお,本件リース物件につきJ等が所有権留保をしているが,その後に,所有権留保による担保価値を求めた様子はなく,そうすると,控訴人が上記のとおり本件リース物件の返還を受け,その時点で同物件の占有を取得していることをもって,本件リース物件につき即時取得が成立したものと扱って相当である。 また,清算の対象となるのは上記のとおり本件リース物件が返還時に有した価値と本来リース期間満了時において有すべき残存価値との差額であって,返還時からリース期間満了時までの利用価値ではない(前掲最高裁昭和57年10月19日第3小法廷判決)。したがって,仮に,控訴人が本件リース物件の設置,保守等のサービスを受けられないとしても,それは上記結論を左右しない。さらに,更生会社が本件リース物件の清算を主張することが権利濫用又は信義則に違反すると認めるに足る事情も存在しない。よって,これらの点に関する控訴人の主張はいずれも理由がない。 5 小括以上のとおり,控訴人の本件請求は,更生会社株式会社キョウデンプロダクツに対する更生債権として,保証債権2億8838万1335円を有することの確認を求める限度で理由がある。 第4 結語以上のとおり,上記結論と異なる原判決はその限度で変更を免れず,よって,主文のとおり判決する。 大阪高等裁判所第3民事部 裁判長裁判官岡部崇明裁判官白井博文裁判官 決する。 大阪高等裁判所第3民事部 裁判長裁判官 岡部崇明 裁判官 白井博文 裁判官 伊良原恵吾

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