令和5年1月26日判決言渡同日原本交付裁判所書記官令和2年(ワ)第8168号損害賠償等請求事件口頭弁論終結の日令和4年12月5日判決 原告RitzCorporation 株式会社同代表者代表取締役 同訴訟代理人弁護士金英哲 被告P1 被告P2 被告P3 被告ら訴訟代理人弁護士齋藤靖之 主文 1 原告の請求をいずれも棄却する。 2 訴訟費用は原告の負担とする。 事実及び理由 第1 請求 1 被告らは、別紙営業秘密目録記載の営業秘密を使用してはならない。 2 被告らは、原告に対し、連帯して、1208万9921円及びこれに対する被告P1は令和2年9月14日から、被告P2は同月20日から、被告P3は同年10月6日から、各支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 第2 事案の概要 本件は、原告の元従業員である被告らが、原告から示された営業秘密を不正の利益を得る目的で使用した行為が不正競争行為に当たるとして、不正競争防止法3条に基づき、営業秘密の使用の差止を求めるとともに、被告らに対し、不正競争防止法4条に基づく損害賠償として、連帯して、1116万3881円及びこれに対する遅延損害金の支払を求め、同営業秘密を使用した行為が原告との「秘密保持及び 特許技術の漏洩禁止契約」(以下「本件秘密保持等契約」という。)上の義務の債務不履行に該当するとして、契約上の履行請求権に基づき、営業秘密の使用差止を求めるとともに、債務不履行に基づく損害賠償として、連帯して、同額の支払を求め(不正競争防止法に基づく主張との選択的主張)、被告らが原告と競業する店舗を営業している行為が原告との 業秘密の使用差止を求めるとともに、債務不履行に基づく損害賠償として、連帯して、同額の支払を求め(不正競争防止法に基づく主張との選択的主張)、被告らが原告と競業する店舗を営業している行為が原告との雇用契約に付随する競業避止義務の債務不履行に該 当するとして、債務不履行に基づく損害賠償として、連帯して、92万6040円及びこれに対する請求の日ないし各行為の後日(訴状送達日の翌日)から支払済みまでの遅延損害金の支払を求める事案である。 1 前提事実(争いのない事実及び証拠により容易に認定できる事実)(1) 当事者 ア原告原告は、美容院、ビューティーサロン、エステティックサロンの経営等を目的とする株式会社である(甲7)。原告は、松山市及び大阪市において、まつ毛エクステンションの施術を行う店舗(まつエクサロン)を複数経営している。 イ被告ら被告P1は、平成28年10月12日から令和元年5月31日まで、被告P2は、平成30年5月1日から令和元年5月31日まで、被告P3は、平成31年4月12日から令和元年7月31日まで、いずれも原告の従業員であった者である。 (2) 本件に至る経緯 ア被告P1及び被告P2は、大阪市(以下略)にあった原告のまつエクサロンP4にまつ毛エクステンションの施術担当者として勤務しており、被告P3は、P4の大通りを挟んだ向かい側にある原告のまつエクサロンP5にまつ毛エクステンションの施術担当者として勤務していた。 イ被告P1及び被告P2は、平成31年初旬頃から開業準備をし、令和元年 5月頃、原告のP4及びP5店の近隣に、まつエクサロンP6(以下「被告サロン」という。)を開業した。被告P3は、令和元年7月31日、原告を退職して被告サロンに加わった。 業準備をし、令和元年 5月頃、原告のP4及びP5店の近隣に、まつエクサロンP6(以下「被告サロン」という。)を開業した。被告P3は、令和元年7月31日、原告を退職して被告サロンに加わった。 (3) 原告関係者による特許出願(甲28、38~41、弁論の全趣旨)原告においては、原告所属のP7が発明した「ロングキープラッシュ」とい うまつ毛エクステンションの装着方法を主力商品としており、P7は、平成31年1月4日、当該方法に関し、発明の名称を「まつ毛エクステンション人工毛の装着方法」とする特許出願(特願2019-123)を行った(以下「本件特許出願」という。)。 本件特許出願は、令和2年7月16日、出願公開された(特開2020-1 09220)。本件特許出願に係る特許請求の範囲及び明細書の記載は、別紙「公開特許公報」(甲28)のとおりである(以下、本件特許出願の特許請求の範囲記載の発明を「本件出願発明」という。)。 P7は、本件特許出願について拒絶理由通知を受け、令和3年7月26日、特許請求の範囲を補正し、これを受けて、同年10月8日、以下の特許権の特 許登録が行われた(以下「本件特許」という。)。 特許番号特許第6957040号発明の名称まつ毛エクステンション人工毛の装着方法出願日平成31年1月4日登録日令和3年10月8日 特許権者 P7 特許請求の範囲別紙「特許公報」(令和3年12月21日付け訴状訂正の申立書の営業秘密目録添付の公報)の特許請求の範囲記載のとおり(以下、本件特許の特許請求の範囲記載の発明を「本件特許発明」という。)(4) 本件秘密保持等契約(甲29~31) ア本件秘密保持等契約に係る 目録添付の公報)の特許請求の範囲記載のとおり(以下、本件特許の特許請求の範囲記載の発明を「本件特許発明」という。)(4) 本件秘密保持等契約(甲29~31) ア本件秘密保持等契約に係る「秘密保持及び特許技術の漏洩禁止契約書」(甲29~31。以下「本件秘密保持等契約書」という。)の記載内容は以下のとおりである。なお、「甲」はP7及び原告であり、「乙」は被告らである。 「第1条(定義)「本件の商標・特許」とは、本件製品の名称及び施術に関して、甲が所有し ている次の商標及びこれについての特許技術をいう登録商標【ロングキープラッシュ/LongerKeepLash】役務の区分第3類及び第44類に属する 第2条(使用の範囲)●乙は甲の指定業務以外で、本件の商標・特許の使用は一切できないものとする●乙は甲の承諾なくして、退社後も本件の商標・特許について、【入社時の機密事項承諾書・私は、貴社就業規則および秘密管理規程に従い、業務上の 機密は在職中は勿論退職後といえども一切漏洩いたしません】に基づく技術漏洩を一切禁止する」イ被告P1及び被告P2は、平成30年11月28日、被告P3は、平成31年4月12日、それぞれ本件秘密保持等契約書に署名した。 2 争点 (1) 原告主張の情報の営業秘密該当性(争点1) (2) 被告らの行為の不正競争該当性(争点2)(3) 被告らに本件秘密保持契約上の債務不履行があるか(争点3)(4) 被告らが競業避止義務を負うか(争点4)(5) 原告の被った損害額(争点5)第3 争点に関する当事者の主張 1 争点1(原告主張の情報の営業秘密該当性)について【原告の主張】(1) 秘密管理性 を負うか(争点4)(5) 原告の被った損害額(争点5)第3 争点に関する当事者の主張 1 争点1(原告主張の情報の営業秘密該当性)について【原告の主張】(1) 秘密管理性原告は、原告所属のP7が発明した「ロングキープラッシュ」という名称の長持ちするまつ毛エクステンションを主力商品としており、本件特許出願以前 から「ロングキープラッシュ」を営業秘密と指定し、従業員との間で秘密保持契約を締結してきた。 「ロングキープラッシュ」の技術は、本件特許出願において文書化されているものだけで習得できるものではなく、実際に施術できるようになるためには、原告において講習を受けて手技をマスターしなければならないが、その手技は 非公開である。 (2) 有用性「ロングキープラッシュ」の技術は、従来のまつ毛エクステンション人工毛の装着方法における安定性の問題を解決しながらも、人工毛の装着にかかる時間を許容可能な範囲に抑えることができる点で、極めて有用である。 (3) 非公知性従来の「バインドロック」は、地まつ毛の下に根元がひょうたん型の人工毛(フラットラッシュ)を1本接着させ、地まつ毛の上に根元が丸い人工毛(ボリュームラッシュ)を2本接着させ、上下の人工毛で地まつ毛を平行に挟み込む技術であるが、「ロングキープラッシュ」は、ボリュームラッシュを使用せ ず、フラットラッシュ2本又は3本を、地まつ毛を包み込むように接着させる 技術であるから、「ロングキープラッシュ」の技術は周知ではない。 複数本のフラットラッシュで地まつ毛を囲い込むのは原告独自の発想によるものであり、その発想は公知ではない。 地まつ毛をグルーで囲い込む施術を行っている店舗は、大阪では現在も少なく、地まつ毛を 複数本のフラットラッシュで地まつ毛を囲い込むのは原告独自の発想によるものであり、その発想は公知ではない。 地まつ毛をグルーで囲い込む施術を行っている店舗は、大阪では現在も少なく、地まつ毛をグルーで囲い込む施術がまつ毛エクステンションの施術を習得 した者なら誰でもできるような公知の技術でないことは明らかである。 本件特許発明は、補正の上、意見書を提出したことで特許として認められたものであり、特許として認められたのはフラットラッシュを3本以上付ける技術であるが、「バインドロック」等の先行技術の範囲に属さないのは、フラットラッシュを2本付ける技術においても同様である。 【被告らの主張】(1) 秘密管理性がないこと秘密管理性が認められるためには、①当該情報へのアクセスが制限されていること、②当該情報にアクセスした者が当該情報が営業秘密であることを客観的に認識できるようにしていることが必要である。 原告は、「ロングキープラッシュ」なる技術を原告従業員の施術者皆に教示しておりアクセス制限はない。また、本件秘密保持等契約書に記載されている「業務上の機密」とは特許技術以外に何を指すのか不明確であり、本件出願発明は公開されているので、秘密として管理されていない。原告は、本件訴訟において次々に営業秘密目録の内容を訂正しており、営業秘密であることを客観 的に認識できるようにしていたとはいえない。 (2) 有用性がないこと「ロングキープラッシュ」は、2本又は3本のエクステンション人工毛(フラットラッシュ)をまつ毛の上部に接着させ、下部にエクステンション人工毛(フラットラッシュ)を接着させるものである。「バインドロック」は、平成3 0年に発表された技術であり、「ロングキープラッシュ」と同様にま をまつ毛の上部に接着させ、下部にエクステンション人工毛(フラットラッシュ)を接着させるものである。「バインドロック」は、平成3 0年に発表された技術であり、「ロングキープラッシュ」と同様にまつ毛の上 下をエクステンション人工毛で挟み込む技術であって、上部はボリュームラッシュ、下部はフラットラッシュである。「ロングキープラッシュ」は、公知の「バインドロック」の派生に過ぎず、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者からすれば、通常の創意工夫の範囲内で発明できるものである。 だからこそ、他店舗においても、本件発明の公開前から、地まつ毛の上下をフラットラッシュで挟み込む施術を行っている。 人工毛の根元にグルーがついていれば、その形状が玉状でなくても地まつ毛にはくっつくので、人工毛の根元に玉を作るようにグルーを取ることは重要ではない。 (3) 公知性「バインドロック」は、平成30年に発表され、まつ毛エクステンション業界で画期的技術とされ、多くのまつエクサロンで取り入れられた。そのため、エクステンション人工毛でまつ毛を上と下から挟み込む技術は、本件特許出願時点で公知であった。このことは、本件出願発明が出願公開される以前に、「バ インドラッシュ」等の手法がウェブサイト上に掲載されていることから明らかである。 原告は、地まつ毛をグルーで囲い込む施術が誰でもできるような公知の技術ではないと主張するが、地まつ毛をグルーで囲い込む施術は、決して難しい施術ではない。 フラットラッシュ、ボリュームラッシュに関わらず、地まつ毛を人工毛で挟み込めば接着面は360度となり、グルーが全体を囲い込むことになるので、これはまつエク施術者にとっては当然のことである。 人工毛の根元に シュ、ボリュームラッシュに関わらず、地まつ毛を人工毛で挟み込めば接着面は360度となり、グルーが全体を囲い込むことになるので、これはまつエク施術者にとっては当然のことである。 人工毛の根元に玉を作るようにグルーを取ることは、まつエク施術者ならば誰もがやっている技術であり、平成27年に発刊されたまつエクの教科書にも 記載されている。 2 争点2(被告らの行為の不正競争該当性)について【原告の主張】(1) 被告らの行為被告らは、被告サロンにおいて、「ロングキープラッシュ」と同一の施術をしている。 仮にそうでないとしても、被告らは、地まつ毛にボリュームラッシュではなく、フラットラッシュを複数接着させる施術をしている。また、玉を作るように人工毛でグルーを取る方法及び地まつ毛の下に付けるフラットラッシュの付け方は、「ロングキープラッシュ」と同じである。 被告らは、被告らの施術は、公知技術である「バインドロック」の派生にす ぎないと主張するが、フラットラッシュとボリュームラッシュは、仕上がりにおいて大きく異なり、グルーの取り方や付け方もそれぞれ異なり、技術を習得した者から講習を受けた者でなければ容易に行うことはできない。 (2) 不正競争該当性原告が営業秘密としていたのは、公開特許公報(甲28)に記載された「ロ ングキープラッシュ」そのものだけではなく、フラットラッシュによりまつ毛の上下を挟み込み、人工毛に付けたグルーが地まつげを包み込むことにより、人工毛の安定性を高める技術である。この技術を行うに当たって重要なことは、人工毛によるグルーの取り方であり、人工毛の根元に玉を作るようにグルーを取ることで、グルーがより新鮮かつ相互に引き合い易い状態になるのである。 被 この技術を行うに当たって重要なことは、人工毛によるグルーの取り方であり、人工毛の根元に玉を作るようにグルーを取ることで、グルーがより新鮮かつ相互に引き合い易い状態になるのである。 被告らの施術が、地まつ毛の上部に付ける人工毛が1本で軽量化されていないフラットラッシュであり、フラットラッシュを付ける際に玉をつぶしてスライドさせる点が「ロングキープラッシュ」と異なるとしても、玉を作るように人工毛でグルーを取る方法、地まつ毛の下に付けるフラットラッシュの付け方が同じであるから、人工毛とグルーで地まつ毛を包み込み、まつ毛のボリュー ムアップをしながら安定性を高める目的を達しており、被告らの施術は、原告 の営業秘密を使用しているものといえる。 原告は、軽量化したフラットラッシュを使用して、「ロングキープラッシュ」の技術を被告らに習得させたが、これにより、被告らは、複数のフラットラッシュで地まつげを囲い込む発想及び方法を知ることになったのであり、被告らの施術と「ロングキープラッシュ」との違いは、フラットラッシュを軽量化し ているかどうかだけであり、その発想及び接着方法は共通である。 (3) 図利加害目的被告らが原告店舗のすぐ近くで、原告の営業秘密たる技術を用いて施術を行っていることからして、被告らに図利加害目的がないなどとは到底いえない。 【被告らの主張】 (1) 被告らの行為被告らが用いている「バインドラッシュ」という技術は、地まつ毛1本の上にフラットラッシュを1本装着し、地まつ毛の下にフラットラッシュを1本付けて挟み込む技術であって、「ロングキープラッシュ」のようにまつ毛の上部に2本又は3本のエクステンション人工毛を用いることはない。原告は、「ロ ングキープラッシュ」のため ットラッシュを1本付けて挟み込む技術であって、「ロングキープラッシュ」のようにまつ毛の上部に2本又は3本のエクステンション人工毛を用いることはない。原告は、「ロ ングキープラッシュ」のために独自に開発したオリジナルのまつ毛エクステンションを使用しており、被告らが使用するフラットラッシュを地まつ毛の上に2本又は3本装着するとまつ毛上部が重すぎるため、被告らにおいて「ロングキープラッシュ」と同様の技術を用いることはできない。 被告らは、接着剤について、玉を付ける「ロングキープラッシュ」と異なり、 玉をつぶしてスライドさせる方法を用いている。「バインドラッシュ」は、地まつ毛の上部が1本であるからこそ、接着剤をスライドさせることによって接着を強固にすることができる。 まれに、顧客のまつ毛の状態によっては、地まつ毛1本の上にフラットラッシュを1本装着した上、ボリュームラッシュを1本加える場合もあり得るが、 「ロングキープラッシュ」のようにまつ毛の上部にフラットラッシュを2本又 は3本付けることはない。 (2) 不正競争該当性「ロングキープラッシュ」は、2本又は3本のフラットラッシュをまつ毛の上部に接着させ、下部にフラットラッシュを接着させるものであって、地まつ毛の上部に1本のフラットラッシュしか用いていない被告らの施術は「ロング キープラッシュ」ではないから、原告の営業秘密を侵害していない。その他のグルーの付け方や人工毛の接着方法等については、原告の営業秘密に当たらない。 (3) 図利加害目的がないこと被告P1及び被告P2は、平成31年3月に原告へ退職の意向を伝えた上で、 原告にまつ毛エクステンション施術経験者であるP8を紹介するなどしており、自らが退職後も原告に迷惑をかけない こと被告P1及び被告P2は、平成31年3月に原告へ退職の意向を伝えた上で、 原告にまつ毛エクステンション施術経験者であるP8を紹介するなどしており、自らが退職後も原告に迷惑をかけないよう配慮していた。 被告P1及び被告P2は、原告の就業規則に競業禁止規定がないことを確認した上で、新店舗をオープンしており、被告らにおいて、「不正の利益を得る目的で、又はその営業秘密保有者に損害を加える目的」は一切ない。 3 争点3(被告らに本件秘密保持契約上の債務不履行があるか)について【原告の主張】原告は、被告P1及び被告P2との間で、平成30年11月28日、本件秘密保持等契約書を締結し、被告P3との間でも、平成31年4月12日、本件秘密保持等契約書を締結した。これにより、被告らは、原告が特許出願した技術につ いて、原告を退社後も、出願公開後も、使用が禁止されている。 被告らは、「ロングキープラッシュ」と同様の技術を用いて「バインドロック」又は「バインドラッシュ」等として施術を行っており、本件秘密保持等契約書に違反している。 【被告らの主張】 本件秘密保持等契約書における「業務上の機密」とは、特許技術以外に何を指 すのか不明確である。 被告らは、本件出願発明の技術を用いた施術をしていないから、本件秘密保持等契約書に違反していない。 4 争点4(被告らが競業避止義務を負うか)について【原告の主張】 原告の就業規則(甲1)9条によれば、退職後1年間、大阪府及びこれらの隣接都道府県内において原告と競業する事業を開業すること、競業する事業者の役員に就任すること等が禁止されている。 原告は、就業規則について、平成30年12月28日、原告代表者が各店舗の店長に対して、 道府県内において原告と競業する事業を開業すること、競業する事業者の役員に就任すること等が禁止されている。 原告は、就業規則について、平成30年12月28日、原告代表者が各店舗の店長に対して、一斉に労働条件についての主な改正点についてメールをして(乙 1)、その後、就業規則を各店舗に備え置いた。 甲1の就業規則は、全ての店舗に備え置かれているものであり、競業禁止を定める9条も記載されている。被告らもこの就業規則を確認していたのであるから、競業禁止規定を当然に知っていたというべきである。 被告P1は、必要なことを原告代表者に伝えることに何ら支障がない状態であ り、自分が計画している競業について、やっても構わないと思うのであれば、原告代表者に話を通しておくことも可能であった。それにもかかわらず、原告代表者に対し、競業行為の計画について一切伝えていないのは、原告代表者にこれを伝えたら許してくれないことをわかっていたからである。 【被告らの主張】 原告の就業規則には競業禁止規定は存在せず、仮に就業規則が変更されていたとしても、全く周知されておらず、被告P1及び被告P2は競業禁止規定の存在を知らない。 被告P1及び被告P2が原告に入社した時には、原告の就業規則に競業禁止規定は存在しなかった。平成30年12月28日、原告側から原告の就業規則が改 正されるとの連絡が来たが、競業禁止規定が加わるといった記載はなかった。平 成31年1月から3月にかけて、順次、原告と各従業員との間で、就業規則の改正に関してミーティングがあったが、被告P1及び被告P2は欠席した。同年4月3日、改正後の就業規則及びその説明として原告から提示されたものを同僚たちがLINEでやり取りしたものを入手したが、就業禁止規定は してミーティングがあったが、被告P1及び被告P2は欠席した。同年4月3日、改正後の就業規則及びその説明として原告から提示されたものを同僚たちがLINEでやり取りしたものを入手したが、就業禁止規定は存在しなかった。 原告代表者が平成30年12月28日に送信したメール(乙1)には、競業禁 止規定が加わったことの記載がない。 原告においては、各店舗に就業規則が備え置かれておらず、少なくとも、被告らが在籍していた店舗には備え置かれていなかった。仮に店舗に備え置かれていたならば、被告らは店舗の就業規則を見ればよいのであって、わざわざ同僚から就業規則を入手する必要はない。 仮に就業規則が甲1のとおり変更され、競業禁止規定が加わったとしても、労働者の同意を得ずに労働条件を不利益に変更したものとして許されない(労働契約法9条)。 被告らは、退職や新たな店舗の場所について、被告らの上司に当たり、原告の組織内において代表者に次ぐ立場にあったP9に伝えており、P9から原告代表 者に伝えると言われたので、原告代表者にも当然伝わっているはずである。P9は、原告の就業規則に競業禁止規定がなかったから、被告らを止めるようなことをせず、情報媒体(ホットペッパービューティー)の紹介までしたのである。 5 争点5(原告の被った損害額)について【原告の主張】 (1) 競業避止義務違反による損害被告らによる競業準備行為及び競業行為により、センタービル店の施術担当者がいなくなり、令和元年9月に閉店せざるを得なくなった。被告らが被告サロンにおいて競業行為を行ったことにより、少なくとも被告P1及び被告P2を指名していた顧客は、P5ではなく、被告サロンの顧客になっている。 したがって、原告は、被告らの競業行為によ 告サロンにおいて競業行為を行ったことにより、少なくとも被告P1及び被告P2を指名していた顧客は、P5ではなく、被告サロンの顧客になっている。 したがって、原告は、被告らの競業行為により、少なくともP4店で施術を 受けていた顧客のうち、被告P1及び被告P2を指名していた顧客を奪われ、本来得られるはずの営業利益を失った。 P4店において、平成31年2月から4月まで、被告P1が施術した顧客は366名おり、このうち被告P1を指名した顧客は98名いた。被告P1の売上をベースに計算すると、151万6300円(3か月合計売上)÷3(1か 月の売上)×98÷366=13万5333円が、1か月あたり被告P1を指名する顧客の売上となる。同時期に被告P2が施術した顧客は361名おり、このうち被告P2を指名した顧客は14名いた。被告P2の売上をベースに計算すると、147万0300円(3か月合計売上)÷3(1か月の売上)×14÷361=1万9006円が、1か月あたり被告P2を指名する顧客の売上 となる。これら指名客は、被告らが近くで別のサロンを開設すれば、その店舗の顧客になるといえるので、被告らの競業行為により、原告にとっては、少なくとも1か月に合計15万4340円の売上が減少しているといえる。 よって、原告が被告らの競業避止義務に違反した競業行為により被った損害は、1年間で185万2080円(15万4340円×12)を下らない。 (2) 不正競争行為及び秘密保持等契約違反による損害被告P1及び被告P2の平成31年2月から4月までの施術による売上の合計額は、298万6600円(151万6300円+147万0300円)であり、1か月平均99万5533円であった。このうち、「ロングキープラッシュ」による売上 年2月から4月までの施術による売上の合計額は、298万6600円(151万6300円+147万0300円)であり、1か月平均99万5533円であった。このうち、「ロングキープラッシュ」による売上は50%を下らないから、49万7766円(99万553 3円×0.5)が、原告の営業秘密を被告P1及び被告P2に教えて施術させることで原告が得ていた利益である。被告らがこれを不正に利用して被告サロンP6で施術したことにより、毎月同程度の不正な利益を得ており、原告は同程度の損害を被っていると推定される。したがって、被告P1及び被告P2の不正競争行為及び秘密保持等契約違反により原告が被った損害は、令和元年5 月から令和2年8月末日までの16か月で796万4256円を下らない。 被告P3は、令和元年5月と6月の施術による売上額は98万4500円であり、平均の売上は1か月49万2250円である。このうち「ロングキープラッシュ」による売上は50%を下らない。したがって、被告P3の不正競争行為及び秘密保持等契約違反により原告が被った損害は、令和元年8月から令和2年8月末日までの13か月で319万9625円を下らない。 よって、被告らの不正競争行為及び秘密保持等契約違反により原告が被った損害は、合計1116万3881円を下らない。 (3) 両損害の関係競業避止義務違反による損害額は、被告らの指名客の割合から計算した金額であるが、その中には「ロングキープラッシュ」の施術を受けたくて指名して いる顧客も一定数おり、その割合は多くても50%程度であるから、営業秘密によらない競業避止義務違反による損害は92万6040円を下らない。 これを不正競争行為及び秘密保持等契約違反による損害と合わせると、原告の損害額 の割合は多くても50%程度であるから、営業秘密によらない競業避止義務違反による損害は92万6040円を下らない。 これを不正競争行為及び秘密保持等契約違反による損害と合わせると、原告の損害額は1208万9921円を下らない。 (4) 被告らの主張への反論 被告らは、P4店の閉鎖は被告らの退職が原因ではないと主張するが、近くで店舗をオープンすることを考えていたのであれば、原告代表者に話を通した上で、お互いの業務に支障が及ばないよう調整しておく必要があるが、このようなことを全くしなかったことがP4店の閉鎖につながったことは明らかである。 【被告らの主張】被告P1及び被告P2は、平成31年3月中に、P9に退職する旨伝え、P9から原告代表者に伝えられたのであり、原告において、人員補充等のしかるべき対処ができたはずである。被告P1及び被告P2は、まつ毛エクステンションの施術経験者であるP8を原告に紹介し、P8はP4店の副店長となっており、セ ンタービル店は被告P1及び被告P2の退職後も令和元年9月まで営業してい たのであるから、センタービル店の閉鎖は、被告P1及び被告P2の退職が原因とはいえない。 第4 判断 1 争点1(原告主張の情報の営業秘密該当性)及び争点2(被告らの行為の不正競争該当性)について (1) 当事者間に争いのない事実、証拠(甲1~5、甲15、16、27~31、33、39、40、乙3、6~8、17、18、原告代表者本人のうち下記認定に沿う部分、被告P1本人、被告P2本人)及び弁論の全趣旨によれば、以下の事実が認められる(枝番号のある証拠は、特に示さない限り、全ての枝番号を含む。以下同じ。)。 ア別紙営業秘密目録記載の情報の分説別紙営業秘密目録記載 び弁論の全趣旨によれば、以下の事実が認められる(枝番号のある証拠は、特に示さない限り、全ての枝番号を含む。以下同じ。)。 ア別紙営業秘密目録記載の情報の分説別紙営業秘密目録記載の情報は、「別紙日本国特許庁公開特許公報(B2)において、特許番号特許第6957040号、出願番号特願2019-123、出願日平成31年1月4日、特許権者P7、発明の名称「まつ毛エクステンション人工毛の装着方法」として掲載されている、まつ毛エクステンション の人工毛を安定的に装着する技術」(以下「本件特許情報」という。)と、「同技術による施術を行うために不可欠な、付け根に凹みのある人工毛(フラットラッシュ)の付け根でグルー(接着剤)を球状にすくい、その人工毛の付け根を地まつ毛の付け根に置いて、さらに同じ形状の人工毛の付け根を地まつ毛の付け根に接着させ、人工毛2本で地まつ毛を挟み込むか、又は人工毛 3本以上で地まつ毛を囲い込む事で接合外れを防止する手技」(以下「本件手技情報」という。)からなる。 イ本件特許情報及び本件手技情報の性質本件特許情報は、本件特許発明に係る別紙「特許公報」記載のまつ毛エクステンション人工毛の装着方法であり、主に美容目的でまつ毛のボリューム 感を増大させ目を大きく見せるためにまつ毛に装着されるまつ毛エクステ ンション人工毛の装着方法であって、人工毛を装着する位置や順序(請求項1~4)、使用する人工毛の形状(請求項2)、接着剤の付け方(請求項1、2、5、6)などの情報からなる。 本件手技情報は、本件特許情報を実施するために必要とされる手技であり、使用する人工毛の形状、接着剤の付け方及び人工毛を装着する位置や順序に 係る情報である。 本件特許情報と本件手技情報を対比すると 情報は、本件特許情報を実施するために必要とされる手技であり、使用する人工毛の形状、接着剤の付け方及び人工毛を装着する位置や順序に 係る情報である。 本件特許情報と本件手技情報を対比すると、別紙対応表のとおりであり、本件手技情報が本件特許情報と異なるのは、①別紙対応表のA欄のうち、本件特許情報では接着剤を「球状に付ける」とされているところ、本件手技情報では「球状にすくい」とされること、②B欄の人工毛(フラットラッシュ) 2本で地まつ毛を挟み込む手技については、本件特許情報にはなく、本件手技情報のみにあることであり(以下、この本件手技情報において付加されている情報を「本件付加情報」という。)、その余については、本件手技情報は本件特許情報に包含される関係にある。 なお、被告らの原告在職期間中は、本件特許出願の特許請求の範囲は、本 件特許発明に補正する前の本件出願発明であったが、特許請求の範囲を一部限定する補正であって、「ロングキープラッシュ」の施術に利用する情報は本件特許情報と異ならない。 ウ本件特許情報及び本件手技情報の利用態様原告は、被告らの原告在職中、本件特許情報を利用した「ロングキープラ ッシュ」と称するまつ毛エクステンションの装着方法をまつ毛エクステンションの施術を担当する従業員に教示し、原告の経営する各店舗において、一般顧客に対し施術をする際に利用していた。この際、原告は、被告らに対し、本件手技情報のうち、本件付加情報を教示したことはなかった。 当該時期の「ロングキープラッシュ」においては、地まつ毛(施術対象者 自身のまつ毛)の上部に2本又は3本の断面が扁平で付け根に凹みのある人 工毛を(以下、この形状の人工毛を「フラットラッシュ」という。)装着し、地まつ毛の下部 、地まつ毛(施術対象者 自身のまつ毛)の上部に2本又は3本の断面が扁平で付け根に凹みのある人 工毛を(以下、この形状の人工毛を「フラットラッシュ」という。)装着し、地まつ毛の下部に1本のフラットラッシュを装着するものであった。また、その施術に際し、本件手技情報のうち、「付け根に凹みのある人工毛(フラットラッシュ)の付け根でグルー(接着剤)を球状にすくい、その人工毛の付け根を地まつ毛の付け根に置いて、さらに同じ形状の人工毛の付け根を地ま つ毛の付け根に接着させ、人工毛3本以上で地まつ毛を囲い込む事で接合外れを防止する手技」を利用していた。 他方、一般顧客に対しフラットラッシュ2本のみで地まつ毛を挟み込む施術を「ロングキープラッシュ」と称して行ってはいなかった。 エ本件特許情報及び本件手技情報の管理方法 本件特許情報は、令和3年7月26日に補正されたものであり、補正前の本件出願発明は、令和2年7月16日に公開された。 被告P1及び被告P2が原告に入社した時点では、本件特許情報は、P7による本件特許出願前であり、被告P3が原告に入社した時点では、本件特許出願中であったが、原告から被告らへの教示に際して、本件特許出願に係 る願書や明細書その他の添付書類等が示されることはなかった。 本件特許情報及び本件手技情報は、原告の各店舗において、「ロングキープラッシュ」の施術に際して、一般顧客に対し、公然と利用されていた。 オ雇用契約(本件秘密保持契約を含む。)上の扱い原告は、被告らとの間で、本件秘密保持等契約書を作成したが、漏洩禁止 の対象は、原告が所有している「ロングキープラッシュ」に係る商標及びこれについての特許技術と規定されている。 原告において、就業規則に秘密保持に関 秘密保持等契約書を作成したが、漏洩禁止 の対象は、原告が所有している「ロングキープラッシュ」に係る商標及びこれについての特許技術と規定されている。 原告において、就業規則に秘密保持に関する規定はなく、被告らが署名押印して提出した入社誓約書や秘密保持に関する誓約書にも、本件特許情報や本件手技情報に関連する記載はない。 カまつ毛エクステンションの施術技術の一般的な管理状況 まつ毛エクステンションの一般的な装着方法については、施術者(アイリスト)を養成する学校等において教授されており、公刊物にも記載されている。平成30年7月頃、株式会社LASHDOLLJAPANにより、地まつ毛を断面が円形の人工毛(以下「ボリュームラッシュ」という。)とフラットラッシュで挟んで固定する「バインドロック」と称する新たな装着方法 が開発、発表されたが、その内容はウェブサイト上で具体的に公開されており、講習会等で積極的にアイリストに教授され、各地のまつエクサロンで施術されている。 (2) 検討ア 「営業秘密」(不正競争防止法2条6項)といえるためには、客観的に秘密 として管理していると認識できる状態にあることが必要であり、管理方法が適切であって、管理の事実が認識可能であることを要すると解される。 イ前記(1)によると、本件では、本件秘密保持等契約書以外に営業秘密を具体的に明示した文書はなく、原告が被告らに対し「ロングキープラッシュ」の施術方法を教示するに際して本件特許出願の願書や明細書その他の添付 書類等を示しておらず、まつ毛エクステンションの装着方法に関して具体的にいかなる範囲が秘密とされるのかを明らかにした書面もない。しかも、「ロングキープラッシュ」は、被告らの原告在職当時、原告の各店舗にお を示しておらず、まつ毛エクステンションの装着方法に関して具体的にいかなる範囲が秘密とされるのかを明らかにした書面もない。しかも、「ロングキープラッシュ」は、被告らの原告在職当時、原告の各店舗において、不特定多数人に対して何らの制限もなく公然と施術されていた。また、まつ毛エクステンションの業界においては、まつ毛エクステンションの装着方法 が全て秘密にされるわけではなく、新規の装着方法であっても、公開され、他のアイリストに教授されることもあり、装着方法を秘密とするか否かや装着方法のうち具体的にどこまで秘密にするかは、自明なものではない。 そうすると、本件秘密保持等契約書に規定された「特許技術」以外の本件特許情報及び本件手技情報は、原告において適切に秘密として管理されてい たとはいえず、秘密として管理されているとは認識できない状態であったと いわざるを得ない。また、原告は、被告らに対し、「ロングキープラッシュ」を教示したのであって、本件特許出願に係る願書等を示したわけではないから、本件秘密保持等契約書の「特許技術」は、その文言どおり、「ロングキープラッシュ」についての本件特許情報、すなわち、本件特許情報のうち、地まつ毛の上部に2本又は3本のフラットラッシュを装着し、地まつ毛の下部 に1本のフラットラッシュを装着する実施例に係る情報を意味するものと解される。 そして、当該情報は、不特定多数の顧客に対して公然と施術される装着方法であり、施術を受ければ視覚的に認識できるものであるから、やはり秘密として管理されていたとはいえず、秘密として管理されているとは認識でき ない状態であったということになり、結局、本件秘密保持等契約書上の「特許技術」も、不正競争防止法上の営業秘密とはいえない。 ウ原告は、「ロ とはいえず、秘密として管理されているとは認識でき ない状態であったということになり、結局、本件秘密保持等契約書上の「特許技術」も、不正競争防止法上の営業秘密とはいえない。 ウ原告は、「ロングキープラッシュ」の技術は本件特許情報だけではなく、文書化されていない非公開の手技があり、それを含めて営業秘密と指定し、秘密保持契約を締結したので秘密管理性があると主張する。 しかしながら、原告の主張する文書化されていない非公開の手技については何ら具体的な主張立証がなく、前記イのとおり、本件秘密保持等契約書の対象は、本件特許情報のうち、地まつ毛の上部に2本又は3本のフラットラッシュを装着し、地まつ毛の下部に1本のフラットラッシュを装着する実施例に係る情報であって、文書化されていない非公開の手技や本件付加情報は 含まれないから、採用できない。 エそうすると、その余の要件について検討するまでもなく、本件特許情報及び本件手技情報は、営業秘密に該当しない。 (3) 小括以上によれば、原告の不正競争防止法に基づく請求には理由がない。 2 争点3(被告らに本件秘密保持契約上の債務不履行があるか)について (1) 認定事実証拠(甲6、34、乙21、22、原告代表者本人、被告P1本人、被告P2本人)によれば、被告らは、被告店舗において、「バインドラッシュ」と称して、地まつ毛の上部に原告の「ロングキープラッシュ」において使用するものとは形状の異なるフラットラッシュ1本を装着し、地まつ毛の下部にフラット ラッシュ1本を装着して地まつ毛を挟んで固定するまつ毛エクステンションの装着方法を実施していることが認められる。また、被告らは、顧客の要望があれば、地まつ毛の上部にフラットラッシュ1本を装着した後にボ ッシュ1本を装着して地まつ毛を挟んで固定するまつ毛エクステンションの装着方法を実施していることが認められる。また、被告らは、顧客の要望があれば、地まつ毛の上部にフラットラッシュ1本を装着した後にボリュームラッシュ1本を追加して装着することもあると認められる。 他方で、被告らは、原告を退職後に、地まつ毛の上にフラットラッシュを2 本以上装着することは、原告の扱う軽量のまつ毛エクステンションが必要になることからできないと考えていたのであり、被告らがこのような施術をしたとは認められない。 (2) 検討ア本件秘密保持等契約の対象 これまでに説示したところによると、本件秘密保持等契約において、被告らが使用を禁止される対象は、原告の登録商標(ロングキープラッシュ/LongerKeepLash)及び本件特許情報のうち、地まつ毛の上部に2本又は3本のフラットラッシュを装着し、地まつ毛の下部に1本のフラットラッシュを装着する実施例に係る情報である。 この点原告は、「ロングキープラッシュ」と同様の技術も本件秘密保持等契約による使用禁止の対象となると主張するが、本件秘密保持等契約書において、「ロングキープラッシュ」の「特許技術」そのものではない同様の技術を含むことの記載はなく、「ロングキープラッシュ」の「特許技術」と異なる技術を含むとすることは本件秘密保持等契約書の文言に反するし、その旨が 当事者間で別途合意されていたものとも認められない。 イ被告らの義務違反について前記(1)のとおり、被告らは、被告店舗において、地まつ毛の上部に2本又は3本のフラットラッシュを装着する施術をしていないから、被告らに本件秘密保持契約上の義務違反があるとは認められない。 (3) 小括 以 告らは、被告店舗において、地まつ毛の上部に2本又は3本のフラットラッシュを装着する施術をしていないから、被告らに本件秘密保持契約上の義務違反があるとは認められない。 (3) 小括 以上によれば、原告の本件秘密保持等契約に基づく請求には理由がない。 3 争点4(被告らが競業避止義務を負うか)について(1) 認定事実証拠(甲1、32、乙1~3、13、14、21、22、被告P1本人、被告P2本人)によれば、以下の事実が認められる。 ア原告代表者は、平成30年12月28日、被告P1を含む当時の原告の各店舗の店長に対し、来年から、「給与体制改革」を行うとともに、「社内規定」において、年間の休日及び有休休暇の付与基準を変更して定める予定であり、変更内容をP9から説明する旨の告知をした(甲32と乙1は同一のメッセージと認められる。)。 イ原告は、平成31年1月から同年3月頃までの間に、原告の従業員の一部に対し、就業規則の改正について、説明会を実施した。原告は、その際、説明会に参加した従業員に対し、競業避止義務の定めのない就業規則(乙2、3の1。以下「乙2就業規則」という。)及び競業避止義務に関する記載のない「雇用改正 31年1月より施行」と題する書面(乙2、3の2。以下「本 件改正説明書」という。)を示した。 被告P1及び被告P2は、当該説明会に参加しなかった。 ウ被告P1及び被告P2は、平成31年4月3日、前記イの説明会に参加した従業員から、乙2就業規則及び本件改正説明書を撮影した写真を入手した。 エ乙2就業規則には、前記アの告知及び本件改正説明書の内容に沿う規定が あり、「付則」には、「本規程は、平成27年11月1日から実施する。/平 成31年4月1日改定施行」と た。 エ乙2就業規則には、前記アの告知及び本件改正説明書の内容に沿う規定が あり、「付則」には、「本規程は、平成27年11月1日から実施する。/平 成31年4月1日改定施行」と記載されている。 原告が就業規則であると称する書面(甲1。以下「甲1就業規則」という。)は、「(競業禁止)」と題する競業避止義務に係る「第9条」が加えられているほかは、乙2就業規則とほぼ同一であり、「付則」には、「本規程は、平成31年1月1日から実施する。/平成34年12月31日改定施行」と記載さ れている。 (2) 競業避止義務を含む就業規則が存在したか前記(1)の認定によれば、原告においては、もともと就業規則に競業避止義務に関する規定がなく、原告は、平成31年3月頃までの間に、競業避止義務の定めのない乙2就業規則を新たな就業規則として従業員に説明しており、被 告らが退職するまでの間に、原告の就業規則において競業避止義務に関する規定が新設されて従業員に周知されたとは認められない。 原告は、平成31年1月1日に甲1就業規則を定めて、原告の各店舗に備えおいたと主張し、原告代表者もこれに沿う供述をする(甲42、原告代表者)が、乙2就業規則にも本件改正説明書にも前記(1)アの原告代表者の告知にも 競業避止義務に関する記載がない上、被告P1は、遅くとも同年3月頃にはP9に対し原告を退職する意向を表明しており、退職に当たり、もめごとを避けるために就業規則上の競業禁止の有無には関心を払っていたものであるところ、同年1月1日以降、原告の各店舗で甲1就業規則が閲覧可能であったのであれば、被告らが同年4月に他の従業員から就業規則の写真を入手する必要は ないから、採用できない。 したがって、甲1就業規則は被告ら在職中 原告の各店舗で甲1就業規則が閲覧可能であったのであれば、被告らが同年4月に他の従業員から就業規則の写真を入手する必要は ないから、採用できない。 したがって、甲1就業規則は被告ら在職中には存在しておらず、被告らが、甲1就業規則第9条に基づく競業避止義務を負う余地はない(なお、原告の主張する競業避止義務は、1年間大阪府と愛媛県及びその隣接都道府県という広い地域において会社と競合する事業を自ら開業すること等を禁止するもので あって、まつ毛エクステンションとの業種の性質等に照らすと過剰な規制であ って、それ自体の有効性にも疑義がある。)。 (3) 小括以上によれば、原告の甲1就業規則第9条の競業避止義務に基づく請求には理由がない。 第5 結論 以上の次第で、その余の点を判断するまでもなく、原告の被告らに対する請求はいずれも理由がない。 大阪地方裁判所第26民事部 裁判長裁判官 松阿彌隆 裁判官 杉浦一輝 裁判官 布目真利子 別紙営業秘密目録別紙日本国特許庁特許公報(B2)において、特許番号特許第6957040号、出願番号特願2019-123、出願日平成31年1月4日、特許権者P7、発明の名称「まつ毛エクステンション人工毛の装着方法」として掲載されている、まつ毛 エクステンションの人工毛を安定的に装着する技術、及び同技術による施 3、出願日平成31年1月4日、特許権者P7、発明の名称「まつ毛エクステンション人工毛の装着方法」として掲載されている、まつ毛 エクステンションの人工毛を安定的に装着する技術、及び同技術による施術を行うために不可欠な、付け根に凹みのある人工毛(フラットラッシュ)の付け根でグルー(接着剤)を球状にすくい、その人工毛の付け根を地まつ毛の付け根に置いて、さらに同じ形状の人工毛の付け根を地まつ毛の付け根に接着させ、人工毛2本で地まつ毛を挟み込むか、又は人工毛3本以上で地まつ毛を囲い込む事で接合外れを防 止する手技。 別紙「公開特許公報」(甲28)省略 別紙「特許公報」(令和3年12月21日付け訴状訂正の申立書の営業秘密目録添付の公報)省略別紙本件特許情報本件手技情報A二本又は三本のエクステンション用人工毛と一本の支持用人工毛を用意する第一のステップと、前記二本又は三本のエクステンション用人工毛のうちの第一のエクステンション用人工毛の付け根に球状に接着剤を付ける第二のステップと、前記第一のエクステンション用人工毛の付け根をまつ毛の上方からまつ毛の付け根の左右いずれか寄りに固定する第三のステップと、前記二本又は三本のエクステンション用人工毛のうちの第二のエクステンション用人工毛の付け根を前記まつ毛の上方から前記第一のエクステンション用人工毛が固定されていない左右いずれか寄りに固定する第四のステップと、前記一本の支持用人工毛の付け根に球状に接着剤を付ける第五のステップと、前記第一のエクステンション用人工毛と前記第二のエクステンション用人工毛が固定された前記まつ毛の上方から、前記まつ毛の付け根に一回接着剤を付ける第六のステップと、前記まつ毛の略真下に前記一本の支持用人工毛を回り込ませ、前記支 用人工毛と前記第二のエクステンション用人工毛が固定された前記まつ毛の上方から、前記まつ毛の付け根に一回接着剤を付ける第六のステップと、前記まつ毛の略真下に前記一本の支持用人工毛を回り込ませ、前記支持用人工毛の水平面との角度を前記まつ毛の水平面との角度に略一致させた状態にて、前記まつ毛の下方から前記まつ毛の付け根のみに前記支持用人工毛の付け根のみを固定する第七のステップを含む、まつ毛エクステンション人工毛の装着方法。(請求項1)前記二本又は三本のエクステンション用人工毛は、その最大径がまつ毛より細径に形成されており、前記一本の支持用人工毛はまつ毛と略同一の幅を備えており、前記一本の支持用人工毛の付け根の付近にはまつ毛に接着させるための凹面が設けられており、前記第一のステップにおいてはまつ毛の付け根の左寄りに前記第一のエクステンション用人工毛が固定され、前記第二のステップにおいてはまつ毛の付け根の右寄りに前記第二のエクステンション用人工毛が固定され、前記第四のステップは前記第二のエクステンション用人工毛の付け根に新たに接着剤を球状に付けることなく行われる、請求項1に記載のまつ毛エクステンション人工毛の装着方法。(請求項2)前記二本又は三本のエクステンション用人工毛は前記支持用人工毛と同様の扁平な断面を有し、その付け根付近には、凹面が設けられている。(発明の詳細な説明【0014】、【0015】、【図1】~【図5】)付け根に凹みのある人工毛(フラットラッシュ)の付け根でグルー(接着剤)を球状にすくい、その人工毛の付け根を地まつ毛の付け根に置いて、さらに同じ形状の人工毛の付け根を地まつ毛の付け根に接着させ、B(該当する記載なし。)人工毛2本で地まつ毛を挟み込むか、C前記支持用人工毛の中央から先端寄りの部分を引き上げることにより、前記支持用人 同じ形状の人工毛の付け根を地まつ毛の付け根に接着させ、B(該当する記載なし。)人工毛2本で地まつ毛を挟み込むか、C前記支持用人工毛の中央から先端寄りの部分を引き上げることにより、前記支持用人工毛を前記まつ毛に略密着させる第八のステップをさらに含む、請求項1又は2に記載のまつ毛エクステンション人工毛の装着方法。(請求項3)前記第八のステップが完了した際に、前記まつ毛を上方から見ると、第一のエクステンション用人工毛の先端と第二のエクステンション用人工毛の先端の間に前記まつ毛及び前記支持用人工毛が存在する、請求項3に記載のまつ毛エクステンション人工毛の装着方法。(請求項4)前記第六のステップにおける前記まつ毛の付け根への接着剤の付加は、真上ではなく右上方又は左上方から行われる、請求項1乃至4のいずれかに記載のまつ毛エクステンション人工毛の装着方法。(請求項5)(該当する記載なし。)D前記第一のステップ乃至前記第八のステップの結果、接着剤が前記まつ毛の付け根の周囲を覆い、前記第一のエクステンション用人工毛、前記第二のエクステンション用人工毛及び前記支持用人工毛の全ての付け根に前記接着剤が接触している、請求項1乃至5のいずれかに記載のまつ毛エクステンション人工毛の装着方法。(請求項6)又は人工毛3本以上で地まつ毛を囲い込む事で接合外れを防止する手技。
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