昭和41(オ)1385 損害賠償請求

裁判年月日・裁判所
昭和43年7月11日 最高裁判所第一小法廷 判決 破棄差戻 東京高等裁判所 昭和40(ネ)2651
ファイル
hanrei-pdf-55030.txt
🤖 AI生成要約2026/3/13

【DRY-RUN】主    文      原判決を破棄する。      本件を東京高等裁判所に差し戻す。          理    由  上告代理人神田洋司の上告理由第三点について。  論旨は、原審が、その認定した原

タグ

キーワード(AI生成)

判決文本文3,674 文字)

主    文      原判決を破棄する。      本件を東京高等裁判所に差し戻す。          理    由  上告代理人神田洋司の上告理由第三点について。  論旨は、原審が、その認定した原判示の事実関係だけから、訴外D株式会社(以 下単に訴外会社と略称する。)は昭和三八年四月一三日被上告人に本件研磨機の運 送を委託した際、被上告人に対し、右研磨機の運送中の事故によつて発生すること のあるべき一切の損害の賠償請求権を予め放棄する旨の意思表示をしたと解釈判断 した点には、採証法則ないし経験則の違背があり、または、理由不備の違法がある と主張する。  そこで、検討するに、まず原審の認定した事実関係は、原判示によれば、トラツ ク等による機械類の運送を主たる目的とする会社である被上告人は、運送する機械 類が高価品であるのに対し、会社の資本金が少なく、運送中の事故によつて発生す る損害の賠償能力に欠けるものであつたところから、従来、とくに遠隔地への運送 の委託を引き受けるに際しては、荷送人の承諾を得たうえ、被上告人が訴外E保険 株式会社(以下単に訴外保険会社と略称する。)との間に、荷送人を被保険者(保 険金受取人)とし、その申し出た運送品の価額を保険価額および保険金額とする運 送保険契約(損害保険契約)を締結し、運送品の運送中の事故によつて発生するこ とのあるべき損害については、右保険契約にもとづき訴外保険会社から支払われる 保険金のみをもつて填補することとし、被上告人においては、右保険契約の保険料 を支払う以外には全く責任を負わないことにしていたものであるところ、訴外会社 も昭和三八年四月一三日被上告人に本件研磨機の運送を委託するに当たり、右の趣 旨を了承したうえ、被上告人に対し、右研磨機の価額が金四〇〇万円であるとして、 - 1 - その価額を保険価額および保険金額とす 昭和三八年四月一三日被上告人に本件研磨機の運送を委託するに当たり、右の趣 旨を了承したうえ、被上告人に対し、右研磨機の価額が金四〇〇万円であるとして、 - 1 - その価額を保険価額および保険金額とする運送保険契約を締結するよう申し出で、 その保険契約の利益に与かる旨の意思表示をしたというのであり、そして、原審は、 以上の事実関係のもとにおいて、訴外会社は被上告人に対し、右研磨機の運送中の 事故によつて発生することのあるべき一切の損害の賠償請求権を予め放棄する旨の 意思表示をしたと解釈判断したものである。  しかしながら、仮に、原審の右認定のごとく、訴外会社が被上告人に本件研磨機 の運送を委託するに当たり、原判示のような趣旨を了承したうえ、被上告人に対し、 原判示のような運送保険契約を締結するよう申し出で、その保険契約の利益に与か る旨の意思表示をしたものであるとしても、そのことだけから、直ちに、訴外会社 が被上告人に対し、右研磨機の運送中の事故によつて発生することのあるべき一切 の損害の賠償請求権を予め放棄する旨の意思表示をしたものと解釈することは困難 である。けだし、運送保険契約の被保険者は、その保険者から保険金の支払を受け る前においては、商法六六二条に規定するいわゆる保険者代位の対象となる被保険 者の運送人に対する損害賠償請求権を放棄することも可能であり、かつ、自由であ るが、もし右被保険者が右保険者から保険金の支払を受ける前に右損害賠償請求権 を放棄した場合には、保険者は、右放棄がなければ商法の右規定により被保険者に 代位して運送人に対して取得することのできた右損害賠償請求権の金額の限度にお いて、保険金の支払の義務を免れるものと解するのが相当であるところ、もし、原 判示のように、訴外会社が被上告人に右研磨機の運送を委託した際、被上告人に対 し、右研磨機の運送中の 償請求権の金額の限度にお いて、保険金の支払の義務を免れるものと解するのが相当であるところ、もし、原 判示のように、訴外会社が被上告人に右研磨機の運送を委託した際、被上告人に対 し、右研磨機の運送中の事故によつて発生することのあるべき一切の損害の賠償請 求権を予め放棄する旨の意思表示をしたものとすれば、訴外保険会社は被上告人と の間に締結した右研磨機の運送中の事故に関する運送保険契約にもとづく保険金の 支払の義務を全く免れることになり、したがつて、訴外会社は被上告人から右損害 の賠償を受けることができなくなるのはもちろん、訴外保険会社からも右損害を填 - 2 - 補すべき保険金の支払を受けることができず、また、仮に訴外会社がその後すでに 訴外保険会社から保険金の支払を受けているとしても、これを返還しなければなら ないことになり、結局、右損害はその全部を、最終的に、訴外会社自身において負 担しなければならないという、訴外会社にとつては、極めて不利益かつ不都合な結 果が生じることになるわけであつて、訴外会社がそのような不利益かつ不都合な結 果を甘受して、右損害の賠償請求権を予め放棄する旨の意思表示をするということ は、経験則上、極めて特殊異例の事象に属し、よほど特段の事情のないかぎり、生 起しえないことといわなければならないからである。  そして、原判決においても、訴外会社が右のような不利益かつ不都合な結果が生 じるのを甘受して、右損害の賠償請求権を予め放棄したと認めるべき特段の事情の 存在したことは何ら判示していないし、また、原判決挙示の証拠関係に徴しても、 そのような特段の事情の存在したことは窺うことができない。むしろ、原判示によ れば、本件研磨機はその時価が金五〇〇万円もする高価品であり、しかも、訴外会 社は、右研磨機の運送中の事故に関する保険につき、被上告人が訴外保険会 の存在したことは窺うことができない。むしろ、原判示によ れば、本件研磨機はその時価が金五〇〇万円もする高価品であり、しかも、訴外会 社は、右研磨機の運送中の事故に関する保険につき、被上告人が訴外保険会社との 間に締結した保険金額金四〇〇万円の前記運送保険契約だけでは不充分であるとし て、さらに上告人との間に、保険金額金一〇〇万円の本件運送保険契約を締結して いることが認められるというのであるから、これらの事実関係からすれば、右のよ うな特段の事情が存在したとは到底考えられない。  もつとも、原判決においては、訴外会社が被上告人に本件研磨機の運送を委託し た当時、もし訴外会社が被上告人に対し、右研磨機の運送中の事故によつて発生す ることのあるべき一切の損害の賠償請求権を予め放棄するとすれば、前記のように、 訴外会社にとつて極めて不利益かつ不都合な結果が生じることを知つていたとの事 実は認定判示されていない。しかし、仮に訴外会社が右のような事情を知らないで、 被上告人に対し、右研磨機の運送中の事故によつて発生することのあるべき損害に - 3 - ついては、被上告人が訴外保険会社との間に締結する運送保険契約にもとづいて支 払われる保険金のみをもつて填補する旨の意思表示をしたとしても、それは、たか だか、訴外会社が少なくとも訴外保険会社からの右保険契約にもとづく保険金の支 払だけは確定的に受けうることを条件にして、右保険金の金額を超える損害部分の 賠償請求権のみを放棄する旨の意思表示をした趣旨にすぎないと解すべきであろう。  してみれば、何ら特段の事情が認められないのにかかわらず、原審の認定した前 記の事実関係だけから、にわかに、訴外会社は被上告人に本件研磨機の運送を委託 した際に、被上告人に対し、右研磨機の運送中の事故によつて発生することのある べき一切の損害の賠償請求権を予め放 の認定した前 記の事実関係だけから、にわかに、訴外会社は被上告人に本件研磨機の運送を委託 した際に、被上告人に対し、右研磨機の運送中の事故によつて発生することのある べき一切の損害の賠償請求権を予め放棄する旨の意思表示をしたとした原審の前記 解釈判断は、明らかに経験則に違背する不合理な判断であつて、原判決には理由不 備の違法があるといわざるをえない。したがつて、原判決の右違法を主張する本論 旨は理由があり、その余の論旨について判断するまでもなく、原判決は破棄を免れ ない。  よつて、民訴法四〇七条一項に従い、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判 決する。      最高裁判所第一小法廷          裁判長裁判官    松   田   二   郎             裁判官    長   部   謹   吾             裁判官    大   隅   健 一 郎  裁判官入江俊郎は海外出張のため署名押印することができない。          裁判長裁判官    松   田   二   郎 - 4 -

▼ クリックして全文を表示

🔍 類似判例を検索𝕏 でシェア← 一覧に戻る