平成21(ワ)577 損害賠償等請求事件

裁判年月日・裁判所
平成22年6月25日 大分地方裁判所
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判決文本文11,256 文字)

平成22年6月25日判決言渡同日原本領収裁判所書記官平成21年(ワ)第577号損害賠償等請求事件口頭弁論終結日平成22年5月6日判決主文 被告は,原告に対し,1000万円及びこれに対する平成21年6月19日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 原告のその余の請求をいずれも棄却する。 訴訟費用はこれを10分し,その1を被告の負担とし,その余は原告の負担とする。 この判決は,第1項に限り,仮に執行することができる。 事実 及び理由第1請求被告は,原告に対し,9834万7240円及びこれに対する平成21年6月12日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 第2事案の概要本件は,原告が,情を知らないまま被告による脱税行為に加担させられたことにより逮捕・勾留されて損害を被り,また,被告に対して1000万円を期限の定めなく貸し付けたと主張して,被告に対し,不法行為による損害賠償請求権及び消費貸借契約による貸金返還請求権に基づき,損害合計8834万7240円及び貸付金1000万円の合計9834万7240円及びこれに対する訴状送達の日の翌日である平成21年6月12日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払をそれぞれ求めた事案である。 争いのない事実等以下の事実は,当事者間に争いがないか,括弧内に記載の証拠及び弁論の全趣旨により容易に認定することができる。 (1)原告は,昭和41年から平成16年3月の定年退職までの38年間にわたり,a県警察官として警察学校の教官及び柔道師範の立場で同県警の警察官に対し指導を行い,退職後の平成16年4月からは,かねてより知人の紹介で知り合っていた被告が経営する警備会社である株式会社Aに入社し,それ以降,同社において月給30万 柔道師範の立場で同県警の警察官に対し指導を行い,退職後の平成16年4月からは,かねてより知人の紹介で知り合っていた被告が経営する警備会社である株式会社Aに入社し,それ以降,同社において月給30万円で警備員の採用面接及び社員教育等の職務を行ってきた。 (2)被告による脱税行為(以下「本件脱税行為」という。)の枠組み被告は,被告が経営する会社(以下「被告の会社」という。)の所得を除外する等の方法により捻出した現金を,同社からBの経営する会社の銀行口座宛てに一旦振り込み,その後,Bは,その預金の払戻しを受けて現金化し,そのうちから手数料として振込金額の10パーセント程度を差し引き,その余の現金を被告に環流していた。被告は,環流の方法として,払い戻された現金をB,その関係者及び原告に運搬させた。 (3)ア被告は,原告に対し,bのBの事務所からcまで「荷物」を運搬することを依頼した(この「荷物」は上記(2)のとおり現金であったところ,原告は書類と思っていた旨主張しており,「荷物」が現金であること,その現金が被告の会社の所得の一部であること及び現金の運搬の目的が税金の申告を免れるためのものであることを,原告が当初から認識していたか否かについては,後記のとおり当事者間に争いがある。)。 イ平成17年5月ころ,原告は,被告の上記依頼により,bの駅頭でBの会社の社員であるCから「荷物」の入った旅行用カバンを預かり,被告から指示されたc駅まで運搬したところ,c駅では被告のグループ会社の一つである株式会社Dの社員のEが待ち受けていた。そこで,原告は,上記カバンをEに渡し,その足でaの自宅に戻った。 (4)原告は,被告から,次回はいつころcに行くのかと尋ねられたので,同年12月ころと答えたところ,再度,bからeの被告の事務所まで「荷物」を 運んで バンをEに渡し,その足でaの自宅に戻った。 (4)原告は,被告から,次回はいつころcに行くのかと尋ねられたので,同年12月ころと答えたところ,再度,bからeの被告の事務所まで「荷物」を 運んで欲しいと依頼され,同月5日,原告は二男宅を訪問した後,bのBの事務所に赴いて「荷物」の入った布袋を預かり,fの被告の事務所までこれを運び,被告の妹の夫であるFに渡すことになった。 (5)(4)と同様の経緯で,同月27日,原告はbのBの事務所でたばこのGのマークが入った紙袋(ビニールコーティングしたもの)を預かり,これをfの被告の事務所のFまで届けた。 (6)平成18年2月2日ころ,被告は,原告に対し,「荷物」の入った布製旅行カバンをfの被告の事務所に運ぶことを依頼した。 (7)原告は,平成18年2月2日の運搬の依頼を受けた際,被告から前回運んでもらった現金のうち二,三万円ほど足りなかったと言われたのが気になり,上記布製旅行カバンを預かる際,bのBの事務所にいたBに対してその旨を伝え,「中身を確認してくれ」と述べて中身を確認させた後に上記カバンを預かった。 (8)原告は,平成19年12月27日,Bに対して1000万円(以下「本件1000万円」という。)を交付した。 (9)平成21年1月23日,Hにおいて,少なくとも原告,被告及びBが参加した会合があった。 (10)同年2月10日,被告の甥であるIから原告に対し,2000万円(以下「本件2000万円」という。)の交付があった。 (11)被告は,同日,逮捕された。 (12)ア原告は,同月17日,Jに要旨以下の内容のKの被疑事実(以下「本件被疑事実」という。)で逮捕された。 「被疑者は,被告らと共謀の上,株式会社Lの業務に関し,売上の一部を除外するとともに架空の業務委託費等を計上するなどの方法 要旨以下の内容のKの被疑事実(以下「本件被疑事実」という。)で逮捕された。 「被疑者は,被告らと共謀の上,株式会社Lの業務に関し,売上の一部を除外するとともに架空の業務委託費等を計上するなどの方法により,平成17年5月期及び平成18年5月期の2事業年度の所得合計9億7600万円を秘匿し,法人税合計約2億9200万円を免れたものであ る(いずれも期限内過少申告ほ税犯)。」イ原告は,逮捕された後,平成21年3月10日に釈放されるまで,g拘置所に勾留された。 争点及びこれに関する当事者の主張(1)被告による不法行為の成否(「荷物」が現金であること,その現金が被告の会社の所得の一部であること及び現金の運搬の目的が税金の申告を免れるためのものであることを,原告が当初から認識していたか。)(原告の主張)ア被告は,Aの経営者として,同社に勤務する従業員の職務遂行行為が法律違反に問われることのないよう常日頃から職務を適法かつ妥当なものとして保持するとともに,正常な社会の一員として,自らは当然のこととして,第三者に対し,自らの故意又は過失により違法な行為をさせ,もしくは,犯罪に巻き込むことのないよう自らを律する注意義務を負っていたものというべきところ,被告は,情を知らない原告をして,適法かつ妥当な職務の遂行と誤信させて違法な現金の運搬をさせ,その結果,原告はKの共犯として逮捕・勾留されるに至り,甚大かつ多大な損害を被ったのであるから,被告は,原告の被った損害を賠償する責任を負う。 イ(ア)原告は,平成18年2月2日の4回目の運搬の依頼を受けた際,被告から前回運んでもらった現金のうち二,三万円ほど足りなかったと言われ,前回運搬させられた「荷物」が実は書類ではなく現金であることを初めて知った。原告は,極めて腹立たしく許し難いことと考え, 際,被告から前回運んでもらった現金のうち二,三万円ほど足りなかったと言われ,前回運搬させられた「荷物」が実は書類ではなく現金であることを初めて知った。原告は,極めて腹立たしく許し難いことと考え,被告に対し「何だ,わしに現金を運ばせたのか。」と詰問するとともに,「今後現金を運搬することなど一切断る。」と言ったところ,被告は,現金であることを黙って原告に運搬させたことについて陳謝し,「他に適当な者がいないので何とかお願いしたい。」と必死な形相で懇願した。原告としては,現金を運ぶなど全く意にそまず,断固拒否 したいと思ったのであるが,被告の余りにも真剣な依頼に対し,Aより給与として月額30万円の支給を受けていることから断り難かったこと及び被告が原告に依頼した動機は原告が柔道家であり少々の暴漢に遭遇してもその襲撃をかわすことができると考えたからであろうと推測し得たことから,意に反することではあったがやむなくこれを引き受けた。原告は,不承不承ではあったが,その後四,五回にわたり,現金入りカバンをbから主としてgまで運ぶ結果となった。 (イ)しかし,原告は,被告が原告をしてbからg等に運ばせていた現金がどのような性質のものであるか及びどのように使われるものであるかについては被告から何の説明も受けておらず,また,原告もこれを知ろうとも思わなかったので,被告に対し一切の質問をすることなく,ただ黙ってこれを運搬した。原告は,本件被疑事実で逮捕された際,身に覚えがなかった。また,平成20年2月8日午前9時ころに国税局の係官2名が原告宅に来るまでは,事実として本件脱税行為が被告により行われていたことすら知らなかった。 (被告の主張)ア被告が運搬を依頼した「荷物」の中身が現金であること,その現金が被告の会社の所得のうちの一部であること及び現金の として本件脱税行為が被告により行われていたことすら知らなかった。 (被告の主張)ア被告が運搬を依頼した「荷物」の中身が現金であること,その現金が被告の会社の所得のうちの一部であること及び現金の運搬の目的が税金の申告を免れるためのものであることを原告は十分承知していた。 イ(ア)現金運びの仕事は原告が当初から納得した上での作業であった。すなわち,そもそも,Bを被告に対して紹介したのは原告であって,その紹介の理由も,脱税の手段としての偽の領収書を作成してくれる協力者としてであったのだから,被告の依頼によりBの元から運ぶ「荷物」が所得隠しの現金であることは原告は十分承知していた。 (イ)Bは,被告との約束で,被告の脱税行為に協力する(協力の内容は偽の領収証の作成など)の見返りとして,隠蔽した所得の10パーセ ントを取得していたところ,原告がBから現金の運搬を頼まれる度ごとに,Bが金額の精算書(金額及びそのうちからBが手数料として受け取る金額等の明細を記載した書面)を原告に交付していたのであるから,原告は運搬している「荷物」が現金であること,その金額及びその性格が被告の所得隠しで得た現金であることは明確に認識していた。 (2)原告の被った損害及びその数額(原告の主張)ア積極損害合計934万7240円原告のJへの出頭,弁護人との打合せ及び原告の拘置所からの出所時の出迎えのために要した費用であり,その内訳は以下のとおりである。 (ア)平成21年2月17日分原告の飛行機代(a・g間片道)3万5700円(イ)平成21年2月18日及び同月19日分a原告の妻及び長女の飛行機代(a・g間往復)合計14万2800円b原告の妻及び長女のリムジンバス代(h空港・g駅間往復)合計3600円c原告の妻及び長女のタクシー代(g・拘 同月19日分a原告の妻及び長女の飛行機代(a・g間往復)合計14万2800円b原告の妻及び長女のリムジンバス代(h空港・g駅間往復)合計3600円c原告の妻及び長女のタクシー代(g・拘置所間往復)合計5690円d原告の妻及び長女の宿泊費合計1万4000円e原告の妻及び長女の食事代合計2800円fコーヒー店における会議費 合計4050円(ウ)平成21年3月10日及び同月11日分a原告の長男の飛行機代(g・a間往復)合計7万1400円b原告の飛行機代(g・a間片道)3万5700円c原告の長男の電車代(h空港・i間片道)890円d原告及び長男の電車代(i・j間片道)合計900円e原告及び長男の宿泊費合計1万4000円f食事代合計1万5710円(エ)弁護士費用(刑事弁護・損害賠償請求着手金)合計900万円イ逸失利益900万円原告が逮捕・勾留されたことを受けて,a医学技術専門学校柔道整復師科との顧問契約が解除されたため,原告は月額15万円で70歳までとして,900万円(15万円/月×12か月×5年)の損害を被った。 ウ名誉毀損による損害及び慰謝料7000万円(ア)原告が逮捕された当初,被告側が被告の脱税行為に関しあたかも原告が主導的役割を果たしていたかのごときデマを意図的に各マスメディアに対して流したために,各マスメディアはそのような論調の記事を書き,あるいは放映し,事情を知らない世間一般の人たちに対し,原告が極めて重大かつ悪質な犯罪の主犯であるかのごとき印象を植え つけた。その結果,原告本人のみならず,その家族にとっても筆舌に尽くし難く,かつ堪え難い屈辱と精神的苦痛を与えた。 (イ)原告は,被告の不法行為により,22日間にわたりg拘置所に拘置され,身体の自由を奪 。その結果,原告本人のみならず,その家族にとっても筆舌に尽くし難く,かつ堪え難い屈辱と精神的苦痛を与えた。 (イ)原告は,被告の不法行為により,22日間にわたりg拘置所に拘置され,身体の自由を奪われたばかりでなく,極めて重大な精神的苦痛を与えられるとともに,取り返すことのできない程に名誉の毀損を受けた。これらは原告にとって算定不能なほど甚大な損害であるが,あえて金銭に換算すると少なく見積もっても7000万円を下らない。 (被告の主張)アすべて否認し,争う。 イ被告が脱税行為で逮捕されたのは平成21年2月10日であり,被告はその逮捕前も逮捕後も,マスコミとの接触は一切していない。 ウ逮捕・勾留の必要性については捜査機関が判断することであって被告の関与することではないものの,原告は本件被疑事実に関しては幇助的立場にあり,少なくとも所得隠しに協力した立場にあったことは明らかであるから,逮捕・勾留されるだけの嫌疑を有していたことは明らかである。 (3)被告に対する貸金返還請求権の存否(原告の主張)平成19年12月25日,被告より電話があり,「Bに年末のモチ代を要求されたが,自分の銀行口座は国税に押さえられて手持ちがないので1000万円を貸して欲しい。」と頼まれ,原告は,自らの預金及び妻女の預貯金をかき集めて1000万円(本件1000万円)を工面し,同月27日,Bに交付してこれを被告に貸し付けた。なお,弁済期についてはその時特に定めることはしなかったが,原告としては,被告の状態が一段落したところで速やかに返してもらえるものと考えていた。被告は,2億円の保釈保証金を支払って保釈されたことからも明らかなように,上記借入金の返済能力は十分にあるものと認められるから,原告は本訴においてその返済を求めるもの である。 (被告の主張)ア被 ,2億円の保釈保証金を支払って保釈されたことからも明らかなように,上記借入金の返済能力は十分にあるものと認められるから,原告は本訴においてその返済を求めるもの である。 (被告の主張)ア被告の脱税行為が捜査機関の捜査の対象になってきたことを知ったBは,従前被告が脱税への協力の見返りとしてBに支払っていた金銭のほかに,さらに1000万円の金銭を要求してきた。被告としては,Bはそもそも原告が紹介してきた人物であって,毎回の脱税への協力に対する報酬を支払っていたので,さらにそのほかに1000万円もの多額の金銭を支払う必要はないし,少なくともそのような問題は原告とBで話し合って解決すべき事柄と考えて,原告にBから1000万円を要求されている旨を電話で話したのである。 イ被告としては,原告がいつBに本件1000万円を用立てたかは知らないが,この問題を解決するために,平成21年1月23日,原告,被告及びBの3人はk県l市mにあるHで会合をもった。そこでは,Bの求めた1000万円の問題のほか,原告からも,弁護士費用がかかるなど,被告に対して経済的負担を求める発言があり,最終的に誰がどのような負担をするかはともかく,その1月23日の時点で金銭的に余裕があり,金のやりくりができるのは被告しかいなかったため,ひとまず被告が原告に対して2000万円を預けるという話となり,平成21年2月10日(被告が逮捕された日),被告は原告に対し2000万円(本件2000万円)を交付した。 ウしたがって,仮に被告がBの要求した1000万円について負担することになっても,それは原告が被告から預託された本件2000万円から精算すればすむことであって,原告が被告に貸付金債権を有しているとの原告の主張には理由がない。逆に,被告としては,本件2000万円から本件10 も,それは原告が被告から預託された本件2000万円から精算すればすむことであって,原告が被告に貸付金債権を有しているとの原告の主張には理由がない。逆に,被告としては,本件2000万円から本件1000万円を差し引いた残余の1000万円を原告から返還してもらえる立場にある。 第3当裁判所の判断 争点(3)(被告に対する貸金返還請求権の存否)について(1)前記争いのない事実等((8)),証拠(甲5,原告本人尋問の結果(以下「原告本人」という。)及び被告本人尋問の結果(以下「被告本人」という。)によれば,平成19年の末ころにBから被告に対して1000万円の支払を要求する電話があったこと,被告は1000万円を用意することができなかったことから原告に立替えを依頼したこと,被告の依頼を受けた原告は妻女の預貯金をかき集めて1000万円を工面したこと,原告は同年12月27日に本件1000万円をBに支払ったこと,原告と被告との間では本件1000万円の精算については何らの取り決めもなされなかったことがそれぞれ認められ,これらの事実からすれば,そのころ,原告が被告に対して1000万円を期限の定めなく貸し付けたと認めるのが相当である。 (2)そして,期限の定めのない消費貸借契約の借主は,催告後相当期間が経過してから遅滞に陥るところ(民法412条3項,591条1項参照),原告が被告に対して上記貸金の返還を求める内容の本件訴訟の訴状が被告に送達されたのは,平成21年6月11日であるから,被告は同日から1週間経過後である同月19日から遅滞に陥るというべきである。したがって,原告は,被告に対し,上記貸金に対する同月19日から支払済みまでの遅延損害金を請求することができる。 (3)以上のことから,原告の被告に対する貸金返還請求は,1000万円及びこれ る。したがって,原告は,被告に対し,上記貸金に対する同月19日から支払済みまでの遅延損害金を請求することができる。 (3)以上のことから,原告の被告に対する貸金返還請求は,1000万円及びこれに対する平成21年6月19日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で理由がある。 争点(1)(被告による不法行為の成否(「荷物」が現金であること,その現金が被告の会社の所得の一部であること及び現金の運搬の目的が税金の申告を免れるためのものであることを,原告が当初から認識していたか。))について (1)ア原告は,「荷物」が現金であることを知った時期については,平成18年2月2日の4回目の運搬の依頼を受けた際に,被告からその前に運んだ現金が足りなかったことの指摘を受けた時であると主張し,その現金がどのような性質のものであるかを知った時期については,平成21年7月15日付け準備書面(原告(二))において,平成20年2月8日に国税局の係官が原告宅に来た時であると主張し,原告提出に係る平成21年10月26日付けの陳述書(甲5)にもこれらの主張に沿う記載がある。 イしかしながら,原告は,本件訴訟の主尋問では,平成18年11月に国税局の係官が来たときに本件脱税行為のことを初めて知ったと供述し(原告本人39項ないし46項),本件訴訟の反対尋問では,平成18年2月に現金を運んだ次の回くらい,具体的には平成18年2月中旬ころに被告を問いつめたところ,被告が脱税のことを漏らしたと供述し(原告本人130項ないし133項,253項ないし256項),さらに,原告が平成21年3月8日に本件被疑事実により検察官の取調べを受けた際に,検察官の面前における供述を録取した書面(以下「検察官面前調書」という。 乙6)によれば,原告が検 項ないし256項),さらに,原告が平成21年3月8日に本件被疑事実により検察官の取調べを受けた際に,検察官の面前における供述を録取した書面(以下「検察官面前調書」という。 乙6)によれば,原告が検察官に対し,平成16年11月ころ,被告から,被告の会社の儲けを公表上少なくするために,架空の取引を装って金を裏に回し,その金を被告に戻してくれる人を紹介してくれるように依頼されたことから,知人のBを被告に紹介したところ,本件脱税行為の枠組みができあがり,その後,平成17年に,被告が原告に対し,上記枠組みによりBが裏に回した現金を,Bから受け取って運搬することを依頼してきた旨供述していることが認められる。このように,「荷物」である現金の性質を原告が知った時期に関する原告の主張及び供述は,本件被疑事実による取調べの時点,本件訴訟において準備書面を作成した時点,本件訴訟の主尋問の時点,同訴訟の反対尋問の時点で変遷を繰り返しているところ, その理由について原告は,本件被疑事実による取調べの時点での供述については,勾留を延長されたくなかったことや,老眼鏡がなくて調書を読むことができず,気持ちが動転していたことから,真実ではないにもかかわらず言われるままに調書に署名・押印したと供述し(原告本人55項,56項,172項,173項),本件訴訟の反対尋問の時点での供述については,動揺しており,誘導されたためにそのような供述をしてしまった旨供述する(原告本人298項ないし302項)。しかしながら,原告本人(220項ないし226項)によれば,原告が本件被疑事実による取調べを受けていた際,原告には弁護人が選任されており,原告がその弁護人に対して取調べの状況を詳細に報告していたことが認められるから,原告が,真実に反する内容の検察官面前調書について,その内容に間 取調べを受けていた際,原告には弁護人が選任されており,原告がその弁護人に対して取調べの状況を詳細に報告していたことが認められるから,原告が,真実に反する内容の検察官面前調書について,その内容に間違いがないとして署名・押印せざるを得ない状況にあったと認めることは困難であるし,また,本件訴訟の反対尋問の際に,原告に対して誘導がなされたり,原告が特に動揺していたなどということを認めることもできないから,結局,上記の主張及び供述の変遷については,原告から何ら合理的な説明がなされていないというほかない。そうすると,原告の主張及びこれに沿う内容の陳述書の記載を容易に信用することはできないというべきである。 (2)原告は,本件訴訟の反対尋問において,「荷物」である現金の性質を知ったのは,平成18年2月中旬ころに被告を問いつめた際に,被告が脱税のことを漏らしたからであると供述し(上記(1)イ参照),さらに,その後も断ることができずに,悪いことと分かりながらも現金の運搬を続けていたと供述する(原告本人135項ないし138項)。しかしながら,通常の規範意識を有する者であれば,犯罪行為に加担させられていることに気付いたのであれば,脅迫されたなどの特段の事情のない限り,気付いた時点で犯罪行為への加担をやめるのが通常である。この点について,原告は,会社の顧問をしていたので断ることができなかったと説明するところ(原 告本人137項),この説明が被告の会社から顧問料をもらっていたから被告の依頼を断ることができなかったという趣旨であれば(原告本人37項参照),原告は当時被告の会社以外に少なくとも4社の顧問を務めて月額70万円の顧問料をもらっており(原告本人230項),特に金銭的に困窮していたという事情も認められないから,説得的でないと言わざるを得ない。結 は当時被告の会社以外に少なくとも4社の顧問を務めて月額70万円の顧問料をもらっており(原告本人230項),特に金銭的に困窮していたという事情も認められないから,説得的でないと言わざるを得ない。結局,原告は,上記特段の事情について何ら合理的な説明をすることができていないのであって,このような原告の供述内容からすれば,当初は脱税に加担させられているとは知らなかったが途中から気付いた旨の原告の供述は信用することができないというべきである。 (3)そして,前記争いのない事実等((1))記載のとおり,原告が38年間にわたり警察官であったことからすれば,例えその職務の大半が警察学校の教官や柔道師範であったとしても,検察官面前調書が刑事裁判において重要な意味をもつことは十分に理解できていたはずであるから,原告が,検察官面前調書に真実に反する内容が記載されているにもかかわらず,その内容に間違いがないとして署名・押印するなどということはおよそ考えられず(なお,原告が署名・押印せざるを得ない状況にあったとは認められないことは上記(1)イ記載のとおりである。),これに反する内容の原告の供述を信用することはできない。したがって,原告の検察官面前調書の信用性は高いというべきである。 (4)また,前記認定事実(第3の1(1))のとおり,原告が被告のために妻女の預貯金をかき集めてまでBに支払う1000万円を用立てて立替払をしたことが認められるが,原告と被告とBとの間の本件脱税行為に関する共犯関係を抜きにして,原告が被告のためにそこまでして1000万円を用立てる理由は考えられないというべきである。したがって,原告が被告のためにBに支払う1000万円を用立てて立替払したことからも,原告と被告とBとの共犯関係を推認することができるというべきである。 (5) 考えられないというべきである。したがって,原告が被告のためにBに支払う1000万円を用立てて立替払したことからも,原告と被告とBとの共犯関係を推認することができるというべきである。 (5)以上のことから,原告の主張を採用することはできず,逆に,検察官面前調書記載のとおり,原告は当初から被告の脱税行為を十分に認識し,これに加担していたと認めるのが相当である。 そうすると,原告の被告に対する不法行為による損害賠償請求は,その前提を欠くから理由がないというべきである。 結論 以上によれば,原告の請求は,被告に対し,貸付金1000万円及びこれに対する平成21年6月19日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で理由があるから,その限度でこれを認容し,その余の請求は理由がないからこれをいずれも棄却することとし,訴訟費用の負担につき民事訴訟法64条本文,61条を,仮執行の宣言につき同法259条1項を適用して,主文のとおり判決する。 大分地方裁判所民事第2部裁判官児玉禎治

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