判決平成14年8月8日神戸地方裁判所平成12年(ワ)第673号求償金請求事件 主文 一原告の請求を棄却する。 二訴訟費用のうち参加によって生じた部分は補助参加人の負担とし,その余は原告の負担とする。 事実及び争点第一申立一被告は原告に対し,金3349万6686円及び内金3152万4470円に対する平成11年3月20日から支払済みまで年14.6パーセントの割合(1年を365日とする日割計算)による金員を支払え。 二仮執行の宣言第二事案の概要本件は,原告が被告に対し,連帯保証債務の履行を求めた事件である。 一争いのない事実 1 原告は,信用保証協会法に基づき,中小企業者等が銀行その他の金融機関から貸付等を受けるについて,業者等の委託により,その貸付金等の債務を保証することを業務とする法人である。 2(1) 株式会社甲(以下,「甲」という。)は補助参加人株式会社乙(以下,「参加人」という。)から,平成7年3月20日,次のとおり,証書貸付による貸付を受けた。 ① 金額 2000万円② 利息年2.50パーセント③ 弁済期限平成17年2月25日④ 弁済方法平成10年3月から,毎月25日に23万8000円宛分割弁済し,弁済期限に残額を弁済する。 ⑤ 遅延損害金年14.5パーセント(年365日の日割計算)⑥ 特約分割金の支払を1回でも怠ったときは,期限の利益を失う。 (2) 原告は甲との間で,平成7年3月4日,(1)の貸付につき,原告が甲のために信用保証することに関して,信用保証委託契約(以下,「本件契約1」という。)を締結した。同契約には,甲が参加人に対 (2) 原告は甲との間で,平成7年3月4日,(1)の貸付につき,原告が甲のために信用保証することに関して,信用保証委託契約(以下,「本件契約1」という。)を締結した。同契約には,甲が参加人に対する借入金債務の全部又は一部の履行を怠り,原告が参加人に代位弁済したときは,甲は原告に対し,代位弁済額及びこれに対する代位弁済の翌日から支払済みまで年14.6パーセントの割合(年365日の日割計算)による遅延損害金を支払うことが合意された。 (3) 原告は参加人に対し,本件契約1に基づき,平成7年3月16日,甲のため連帯保証した。 (4) 甲は,(1)の借入金債務の履行を怠ったため,原告は参加人から保証債務の履行を求められ,平成11年3月19日,参加人に対し,元金残金1809万6000円及び利息金13万0177円の合計金1822万6177円を代位弁済した。 3(1) 甲は参加人から,平成10年7月15日,次のとおり,証書貸付による貸付を受けた。 ① 金額 2800万円② 利息年2.75パーセント③ 弁済期限平成17年6月25日④ 弁済方法平成10年7月から平成11年6月まで,毎月25日に5万円宛,平成11年7月から毎月25日に38万円宛分割弁済し,弁済期限に残額を弁済する。 ⑤ 遅延損害金年14.5パーセント(年365日の日割計算)⑥ 特約分割金の支払を1回でも怠ったときは,期限の利益を失う。 (2) 原告は甲との間で,平成10年6月30日,(1)の貸付につき,原告が甲のために信用保証することに関して,信用保証委託契約(以下,「本件契約2」という。)を締結した。同契約には,甲が参加人に対する借入金債務の全部又は一部の履行を 月30日,(1)の貸付につき,原告が甲のために信用保証することに関して,信用保証委託契約(以下,「本件契約2」という。)を締結した。同契約には,甲が参加人に対する借入金債務の全部又は一部の履行を怠り,原告が参加人に代位弁済したときは,甲は原告に対し,代位弁済額及びこれに対する代位弁済の翌日から支払済みまで年14.6パーセントの割合(年365日の日割計算)による遅延損害金を支払うことが合意された。 また,同契約によれば,甲は原告に信用保証料を支払う義務があるところ,65万3000円が未払である。 (3) 原告は参加人に対し,本件契約2に基づき,平成10年6月30日,甲のため連帯保証した。 (4) 甲は,(1)の借入金債務の履行を怠ったため,原告は参加人から保証債務の履行を求められ,平成11年3月19日,参加人に対し,元金残金2780万円及び利息金22万1693円の合計金2802万1693円を代位弁済した。 (5) 平成11年10月29日に1472万3400円の内入弁済があったので,原告の甲に対する求償金元本は1329万8293円となった。 二争点本件の争点は,被告が本件契約1,2(以下,併せて「本件各契約」という。)について甲のため連帯保証したか否かの点及び表見代理の成否にある。 (原告及び参加人)被告は原告に対し,平成7年3月4日頃,本件契約1上の甲の債務につき,平成10年6月30日頃,本件契約2上の甲の債務につき,それぞれ連帯保証(以下,併せて「本件各保証」という。)した。 (参加人) 1 甲1(本件契約1に係る契約書),2(平成7年3月20日付け参加人と甲間の金銭消費貸借契約証書),7(本件契約2に係る契約書)及び8(平成10年7月15日付け参加人と甲間の金銭消費貸借契約証書)の連帯保 (本件契約1に係る契約書),2(平成7年3月20日付け参加人と甲間の金銭消費貸借契約証書),7(本件契約2に係る契約書)及び8(平成10年7月15日付け参加人と甲間の金銭消費貸借契約証書)の連帯保証人欄には,いずれも,被告名義の署名がある上,被告の実印(甲3,9の印鑑登録証明書の印影)が押印されており,これらの署名押印は被告の意思に基づきなされたものである。 2 被告は甲のために使用させる目的で,自己の印章につき印鑑登録を行い,これを甲に預け,かつ,被告の夫で甲の代表取締役である丙に求められれば印鑑登録証明書を交付していた。このようなことから,本件各保証について,被告が行ったかのような外観が作出されたもので,被告には過失がある。 また,被告は,平成8年1月9日付けで参加人に対し,甲のため5500万円の限度額保証をしたものであるところ,この事実に,印鑑登録証明書の交付を受けていたこと,本件各保証につき顕出された印影が実印と同じであること等を総合すると,原告代理人である参加人職員に過失はない。 よって,民法110条が適用されるべきであり,少なくとも,民法109条,110条,112条の趣旨が類推適用されるべきである。 (被告) 1 甲1,2,7,8の被告名義の署名は,丙が被告に無断で甲のパート社員に記載させたものである。各署名下の印影は,甲の金庫に保管されていた印章(以下,「会社保管印」という。)によるもので,同印章は被告が保管していたものではない。同印章による印影は,被告の実印による印影とよく似てはいるが同一ではない。 2 参加人が表見代理の前提として主張する事実は,すべて否認する。 理由 一鑑定について鑑定人丁の鑑定(以下,「鑑定」という。)によれば,鑑定結果として,次のよ 2 参加人が表見代理の前提として主張する事実は,すべて否認する。 理由 一鑑定について鑑定人丁の鑑定(以下,「鑑定」という。)によれば,鑑定結果として,次のように述べている。 1 丙18(平成8年7月25日付け参加人に対する担保抹消に関する承諾証書)の被告名義の署名の筆跡は,対照文書(乙1)の被告の自署の筆跡と同一人筆跡の可能性を有するが,他の文書(甲1,2,7,8を含む。)中の被告名義の署名の筆跡と被告の自署の筆跡が同一人によるものとは認められない。 2 甲1,2,7,8の被告名義の署名の筆跡と丙14(平成8年1月9日付け参加人に対する保証約定書)のそれは,同一人筆跡の可能性を有する。 3 甲1,2,7,8の被告名義の署名の筆跡と丙15(平成8年1月5日付け参加人に対する保証照会回答書)のそれは,同一人筆跡の可能性を有する。 4 甲1,2,7,8の被告名義の署名の筆跡と丙16(平成8年1月8日発送の参加人に対する封書の裏面)のそれは,同一人筆跡の可能性を有する。 5 甲1,2,7,8等の被告名義署名下の青木の印影は,乙2上段の印影(会社保管印による印影)と同一印影である。 6 丙18の被告名義署名下の印影は,乙2下段の印影(被告の実印による印影)と同一印影の可能性が強い。 7 甲3,9の印鑑登録証明書の印影と乙2上段の印影は類似するが,差異点があり,同一印影と見るのは困難である。 二会社保管印について証拠(甲3,9,乙2,3,鑑定,証人丙,被告本人)によれば,被告の実印は従前から被告が自宅に保管していたが,丙は平成に入ってから,実印の印影によく似た印影を有する会社保管印を買い求め,これを甲で保管していたことが認められる。参加人は,被告が自己の印鑑登録した印章を甲に預けていたと主張するが 管していたが,丙は平成に入ってから,実印の印影によく似た印影を有する会社保管印を買い求め,これを甲で保管していたことが認められる。参加人は,被告が自己の印鑑登録した印章を甲に預けていたと主張するが,この事実を認めるに足りる証拠はない。また,参加人は,証人丙及び被告本人の供述が不自然であり,信用できないという趣旨の主張もしているが,的確な反対証拠がない以上,これらの供述を信用できないということもできない。 三本件各保証の成否 1 前記一,二の認定,説示によれば,甲1,2,7,8の被告作成名義部分について,その署名も被告の自署ではなく,印影も被告の印章により顕出されたものであるとは認められないから,これらの甲号各証の成立の真正を認めることはできない。 2 証人戊は,甲1,2に係る貸付を担当した際の平成7年2月28日,丙が自分の目前で,被告に電話して,「わしだけの保証では無理で,お前の署名・印鑑もいる。」とかいって保証の依頼をしていたと供述している。しかし,名川自身が電話に出たものでもなく,通話先についても同人の推測に過ぎないから,これをもって,被告が本件契約1に係る保証を承知していたことを認定することはできない。 丙4も以上の認定を左右するに足りるものではない。 弁論の全趣旨によれば,参加人の貸付担当者らが被告に対し,直接本件各保証について確認したことはないことが認められる。 3 証人丙及び被告本人とも,本件各保証について,丙が被告に依頼し,被告がこれを承諾したとは供述しておらず,他にこの事実を認めるに足りる直接証拠もない。 4 鑑定によれば,丙18は被告の自署の可能性があり,その名下の印影は被告の実印により顕出された可能性が強いものと認められるが,同号証は,参加人に対する平成8年7月25日付け担保抹消に関する承諾証書であり,被 よれば,丙18は被告の自署の可能性があり,その名下の印影は被告の実印により顕出された可能性が強いものと認められるが,同号証は,参加人に対する平成8年7月25日付け担保抹消に関する承諾証書であり,被告名義の署名押印は連帯保証人欄になされており,借主欄には丙個人の署名押印がある。そうすると,この書証から,被告が甲のために保証することを承知していたということはできないし,その記載からも,本件各保証に関係する内容を読み取ることはできない。 5 参加人は,被告が平成8年1月9日付けで甲のため5500万円の限度額保証をしたと主張するが,参加人がこの事実の証拠であると主張する丙14ないし16の被告名義の署名が被告の自筆であること及び丙14,15の印影が実印等被告の印鑑により顕出されたことを認めるに足りる証拠はない。鑑定によれば,丙14ないし16の署名と甲1,2,7,8の署名は同一人筆跡の可能性があることが認められるが,このことから,丙14ないし16が被告の意思に基づき作成されたことを推認できないのはいうまでもない。 参加人は,年末のさし迫った時期に参加人から届いた保証意思確認文書を丙が被告に無断で開封することは考えられないこと等から,丙14ないし16が真正文書であると主張するが,これらの主張内容を考慮しても,真正であるとは認めるに足りない。 6 以上のとおりであり,本件全証拠によるも,本件各保証に関する処分文書(甲1,7)の成立の真正は認められず,本件各保証について被告が承諾していた事実を認めることもできない。参加人は,証人丙及び被告本人の供述の信用性は低いこと等を主張するが,これらの供述を弾劾してみても,本件各保証に係る主要事実を推認することはできない。 四表見代理について以上の認定,説示によれば,参加人が表見代理の前提として主張 用性は低いこと等を主張するが,これらの供述を弾劾してみても,本件各保証に係る主要事実を推認することはできない。 四表見代理について以上の認定,説示によれば,参加人が表見代理の前提として主張する事実中の重要な事実はすべてこれを認めることができないし,金融機関である参加人の貸付担当者が被告の意思確認すらしていないことになるから,同主張は,その余の点を判断するまでもなく,理由がない。 五結論以上の次第で,原告の請求は理由がない。 神戸地方裁判所第5民事部裁判官前坂光雄
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