【DRY-RUN】主 文 原決定(決定書五〇通)を取消す。 相手方の本件文書提出命令の申立を却下する。 理 由 一、 抗告の趣旨 主文同旨。 二、 抗告の理由
主文 原決定(決定書五〇通)を取消す。 相手方の本件文書提出命令の申立を却下する。 理由 一、 抗告の趣旨主文同旨。 二、 抗告の理由別紙目録(二)記載のとおり。 三、 当裁判所の判断(一) 本件文書提出命令の申立は、製薬会社である相手方が民事訴訟法三一二条三号に基づき、本案訴訟につき第三者である別紙目録(三)記載の各病院等に対しその所持する抗告人ら(患者)の診療録(別紙目録(四)記載の文書)の提出命令を求め、原決定はこれを容認したものである。 (二) 診療録は、患者を診療した医師が、医師法二四条、同法施行規則二三条などに基づき、その診療後遅滞なく診療を受けた者の任所、氏名、性別及び年令、病名、主要症状、治療方法(処方及び措置)、診療年月日、その他診療に関する必要事項を記載して医師又はその所属の病院でこれを五年間保存すべき文書であつて、それは元来、医師が自己の行なつた治療行為についての思考活動を補助、軽減するための一種のメモないし備忘録たる性質を有する。 <要旨>(三) そこで、診療録が本件において民訴法三一二条三号の文書に該るか否かにつき次に同条三号前段、後段</要旨>にわけて順次検討する。 1. 民訴法三一二条三号前段の「挙証者ノ利益ノ為ニ作成セラレ」た文書とは、挙証者の法的地位や権限を直接証明し、又はこれを基礎づける目的で作成された文書を指し、それは必ずしも挙証者の利益だけのために作成されたものである必要はなく、同時に他人の利益のためにも併せて作成されたものであつても差支えないと考える。 そして、前示のとおり診療録は、医師が専ら自己の利益のためその思考活動を軽減補助し、適正な診療をはかる目的で作成したものであつて、それは患者自身の社会的権利義務の確認のために、 えないと考える。 そして、前示のとおり診療録は、医師が専ら自己の利益のためその思考活動を軽減補助し、適正な診療をはかる目的で作成したものであつて、それは患者自身の社会的権利義務の確認のために、例えば出生、死亡時の確定や各種の手当金請求などに使用される診断書その他の証明書作成にあたつて患者の健康状態を知る資料として利用されることはあるが、患者自身に対する関係においてさえ、その法的地位や権限を直接証明し、これを基礎づける目的で作成されたものと断定するには若干の疑問が残るのである。しかしその点はしばらく措くとして、少くとも本件のように、診療録所持者たる医師ないし病院と、診療録中に投与の量、方法、被投与者の氏名等が記載されているとみられる医薬品を製造した製薬会社即ち挙証者たる相手方との関係においては、診療録が相手方の法的地位ないし権限を直接証明し、これを基礎づける目的で作成されたものといいえないことは明らかである。したがつて、本件文書(診療録)はいずれも同条同号前段所定の文書に該ると認めることができない。 2. 民訴法三一二条三号後段の「挙証者ト文書ノ所持者トノ間ノ法律関係ニ付」き作成された文書とは、挙証者と文書所持者との間に成立する法律関係自体、及びその法律関係の構成要件事実の全部又は一部が記載された文書をいうのであるところ、診療録は1に述べたとおり医師ないし病院と患者との間の法律関係を記載した書面といえる場合があるのは格別、挙証者たる製薬会社と所持着たる医師ないし病院との間においては、その間の法律関係ないしその構成要件事実を記載した文書であるということができない。けだし、診療録は前述のとおり医師が自己の思考活動軽減のため作成するものではあるが、法令により患者の氏名、年令、主要症状、治療方法等(投与医薬品、その投与量等を含む)を記載す るということができない。けだし、診療録は前述のとおり医師が自己の思考活動軽減のため作成するものではあるが、法令により患者の氏名、年令、主要症状、治療方法等(投与医薬品、その投与量等を含む)を記載することとされているのであるから、患者自身が診療録の提出を求める場合には診療契約関係等の構成要件事実を記載した書面として本条三号後段の法律関係文書に該るといい得る余地があるが、製薬会社と患者との間で争われているいわゆる薬害訴訟について、製薬会社が医師ないし病院に対し診療録の提出を求める本件の場合には、製薬会社と医師ないし病院との間における契約関係事項はもとより、不法行為関係等をも含めていかなる意味においてもその相互間の法律関係ないしその構成要件事実を記載した書面であるとは認められないからである。 3. なお、第三者に対し文書の提出を命ずる決定に対しても、本件抗告人ら(相手方たる当事者)はこれについて利害関係を有しているところ、民訴法三一五条は即時抗告権者につき何らの限定を付していないから、抗告人らは同条により即時抗告をなし得る。 四、 結論以上のとおりであるから、本件診療録はいずれも民事訴訟法三一二条三号前段及び後段の文書に該当しないことが明らかである。よつて、相手方の申立により所持人たる病院ないし病院長に対し、本件診療録の提出を命じた原決定(五〇通)は不当であるからこれを取消し、相手方の本件文書提出命令の申立を却下することとし、主文のとおり決定する。 (裁判長裁判官下出義明裁判官村上博巳裁判官吉川義春)別紙目録<記載内容は末尾1添付>別紙目録 (三)所持者の目録(3) 別紙目録第三相生市ab-c山口医院院長 A(4) 以 尾1添付>別紙目録 (三)所持者の目録(3) 別紙目録第三相生市ab-c山口医院院長 A(4) 以下(79)まで省略<記載内容は末尾2添付>
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