- 1 -令和4年12月15日判決言渡同日原本領収裁判所書記官令和3年(ワ)第33428号損害賠償請求事件口頭弁論終結日令和4年11月10日判決主文 1 本件訴えをいずれも却下する。 2 訴訟費用は原告らの負担とする。 事実 及び理由第1 請求別紙請求目録記載のとおり 第2 事案の概要等 1 事案の概要本件は、東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会(以下「東京2020大会」という。)開催時にいわゆる選手村(東京2020大会に出場したスポーツ選手等の宿泊施設をいう。)として使用された後に、一般向け住 宅棟等を備えたものとして改築される施設建築物「HARUMIFLAG」内に所在する分譲マンション(以下「本件マンション」という。)の各物件(原告らが購入した各物件は、別紙原告ら物件等目録記載のとおりであり、「本件各物件」という。)について、これを購入する売買契約を締結した原告らが、売主である被告らが原告らに対し当該売買契約において約定されていた 引渡日である令和5年3月27日までに本件各物件を引き渡さないことが履行遅滞に当たると主張して、被告らに対し、債務不履行に基づく損害賠償として、別紙請求目録及び別紙損害一覧表記載のとおり、同月28日以降に発生する賃料相当損害金等の連帯支払を求める事案である。 2 前提事実(当事者間に争いのない事実並びに括弧内に記載した証拠及び弁論 の全趣旨により容易に認められる事実。以下、単に「前提事実」という。) - 2 -(1) 当事者等ア原告らは、それぞれ、令和元年8月10日から同年12月13日までの間に、被告らとの間で、本件各物件に係る売買契約を締結した者である(以下、原告らが締結した上記売買契約を総 -(1) 当事者等ア 原告らは、それぞれ、令和元年8月10日から同年12月13日までの間に、被告らとの間で、本件各物件に係る売買契約を締結した者である(以下、原告らが締結した上記売買契約を総称して、「本件各売買契約」という。)。本件各売買契約における引渡予定日(以下「当初引渡予定日」5という。)は、令和5年3月27日であった。(甲1の1ないし12,14ないし20)イ 被告ら及び三井不動産株式会社(以下「三井不動産」という。)は、東京都が個人施行する本再開発事業(後に定義する。)において、施行者である東京都が、都市再開発法(昭和44年法律第38号。以下、単に「法」10という。)に基づき、特定建築者とした会社である。また、被告らは、本再開発事業における東京都策定の権利変換計画に基づき、本件マンションを含む特定施設建築物に係る権利を取得する、売主兼販売代理人である。 (乙1の1及び2)(2) 晴海五丁目西地区第一種市街地再開発事業(以下「本再開発事業」とい15う。)の概要等ア 本再開発事業の概要本再開発事業は、法2条1号所定の第一種市街地再開発事業として、特定建築者により建築される特定施設建築物(法99条2の以下参照。本件においては、3街区(PORT VILLAGE)(賃貸街区)、420街区(SEA VILLAGE)、5街区(SUN VILLAGE)及び6街区(PARK VILLAGE)(4街区、5街区及び6街区につき分譲街区)並びに7街区(商業施設)で構成される「HARUMI FLAG」に相当する。以下「本件特定施設建築物」という。)を、特定建築者が東京都に対して貸し渡し、さらに東京都が公益財団法人東25京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会(以下「組織委員 - 3 -会」という 定施設建築物」という。)を、特定建築者が東京都に対して貸し渡し、さらに東京都が公益財団法人東25京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会(以下「組織委員 - 3 -会」という。)に対して貸し渡して、東京2020大会開催時に選手村として使用した上で、東京2020大会が終了した後に、住宅棟及び商業施設等を整備することを内容とするものである。(乙1の1及び2)イ 本再開発事業に係る経緯(ア) 東京都は、平成27年12月、本再開発事業に係る都市計画につき5決定をし、平成28年4月、法7条の9に基づく事業施行認可及び法72条に基づく権利計画認可を得た。(弁論の全趣旨)(イ) 東京都都市整備局(以下「都市整備局」という。)は、平成28年5月13日、本再開発事業に係る特定建築者募集要領(以下「特建者募集要領」)を発出した。特建者募集要領は、本件特定施設建築物の一部10を東京2020大会開催時に選手村として使用すること、かかる使用目的のため、特定建築者が本件特定施設建築物の一部につき躯体工事等を完了した上で平成31年(令和元年)12月までに東京都オリンピック・パラリンピック準備局(以下「準備局」という。)に対して引渡しをすることなどを定める。(甲11、乙5)15(ウ) 東京都は、平成28年8月29日、本再開発事業の特定建築者を被告ら及び三井不動産として行う本件特定施設建築物の建築等に関する基本協定(以下「特建者業務協定」という。)を締結し、「晴海五丁目西地区第一種市街地再開発事業に係る特定建築者の業務に関する基本協定書」を作成した。特建者業務協定は、東京都並びに被告ら及び三井不動20産が選手村の整備等に係る協定等を締結すること(4条)、東京都がこれを締結した後、法99条の3第3項の承認を得て、被告ら 協定書」を作成した。特建者業務協定は、東京都並びに被告ら及び三井不動20産が選手村の整備等に係る協定等を締結すること(4条)、東京都がこれを締結した後、法99条の3第3項の承認を得て、被告ら及び三井不動産を特定建築者として決定すること(5条)、東京都の特定建築者決定に係る取消等の事由の1つが、法令、特建者募集要領、特建者業務協定又は特建者業務協定4条に規定する協定等に違反し、特建者業務協定25の目的を達成することができないと認められるときであること(16条 - 4 -1項(3))などを定める。(乙6)その後、東京都は、平成28年9月、被告ら及び三井不動産を本再開発事業に係る特定建築者とし、被告ら及び三井不動産は、平成29年1月より本件特定施設建築物に係る建築工事に着工した。(弁論の全趣旨)(エ) 準備局、都市整備局、組織委員会並びに被告ら及び三井不動産は、5平成29年7月7日に「第32回オリンピック競技大会及び東京2020パラリンピック競技大会の選手村における宿泊施設等の整備等に関する基本協定書」を、平成30年12月27日に「第32回オリンピック競技大会及び東京2020パラリンピック競技大会の選手村における宿泊施設等の整備等に関する変更基本協定書」をそれぞれ作成し、選手村10の整備等に関する協定を締結した(以下、上記両協定書によって締結された協定を「選手村整備等協定」という。)。選手村整備等協定は、被告ら及び三井不動産が、組織委員会と協議の上で、本件特定施設建築物のうち選手村として使用する部分(選手村整備等協定において「選手村一時使用部分」という。)を整備するとともに、組織委員会と結ぶ協定15等に基づき設計等及び施工等を受託すること(5条1項16号)、準備局並びに被告ら及び三井不動産が、準備局が 定において「選手村一時使用部分」という。)を整備するとともに、組織委員会と結ぶ協定15等に基づき設計等及び施工等を受託すること(5条1項16号)、準備局並びに被告ら及び三井不動産が、準備局が選手村一時使用部分を被告ら及び三井不動産から借り上げ、組織委員会に転貸し、選手村として使用するために契約を締結すること(8条1項)などを定める。(甲10、乙3)20(オ) 被告ら及び三井不動産は、選手村整備等協定その他協定等に基づき、平成31年4月26日、東京都に対し、賃料を毎月約3億5000万円、期間を平成32年(令和2年)1月1日から同年12月31日まで(更新なし)などと定めて本件特定施設建築物を貸し渡す旨の定期建物賃貸借契約を締結した。また、東京都は、平成31年4月26日、組織委員25会に対し、上記契約と同じ期間、本件特定施設建築物のうち一部を選手 - 5 -村として使用することを目的として、本件特定施設建築物を貸し渡す旨の使用貸借契約を締結した。(甲6、7、乙7)(3) 東京2020大会の延期決定等ア 東京2020大会は、本件各売買契約が締結された令和元年においては、令和2年7月24日から同年9月6日までの期間に開催されることが予定5されていた。しかしながら、新型コロナウイルス感染症の世界的な感染拡大に伴い、国際オリンピック委員会、国際パラリンピック委員会、組織委員会、東京都及び日本国政府は、同年3月30日、東京2020大会の開催時期を、令和3年7月23日から同年9月5日までの期間とする旨決定した。(乙4)10イ その後、被告ら及び三井不動産は、東京2020大会の上記延期決定を受けて、令和2年11月30日、平成31年4月26日付け定期建物賃貸借契約が終了することに伴い、東京都に対し、期間を令和3 10イ その後、被告ら及び三井不動産は、東京2020大会の上記延期決定を受けて、令和2年11月30日、平成31年4月26日付け定期建物賃貸借契約が終了することに伴い、東京都に対し、期間を令和3年1月1日から同年12月31日(更新なし)などと定めるほかは上記契約と同一の約定で、本件特定施設建築物を貸し渡す旨の定期建物賃貸借契約を締結した。 15(甲8)(4) 本件訴訟に至る経緯ア 被告らは、上記(3)アの延期決定以降、原告らを含む本件マンションの各物件の全購入者に対し、本件売買契約等において案内した内容に変更が生じるおそれがあるため、種々の案内を送付していた。このうち、令和220年10月7日付け「HARUMI FLAG引渡予定日及び今後の手続きに関するご連絡」(乙16)において、本件マンションの各物件の引渡日を、当初引渡予定日である令和5年3月27日から約1年後である令和6年3月25日に変更すること(以下「変更後引渡予定日」という。)などが通知された。(甲3、乙10ないし24(枝番含む))25イ 原告らは、令和2年7月14日以降、被告らに対して連絡書を送付し、 - 6 -本件各物件の引渡等に係る質問事項への回答を求め、被告らもこれに回答していた。(乙25ないし29)ウ その後、原告らは、令和3年1月29日、東京地方裁判所に対し、被告らを相手取って、本件各物件の引渡しに係る損害賠償を求める調停を申し立てた(同裁判所令和3年(メ)第30号ないし第53号損害賠償請求調停5申立事件)。被告らは、本件訴訟と同様に、原告らに対して本件各物件を当初引渡予定日に引き渡すことができないことについて被告らに帰責事由が存しないことなどを主張して、原告らの上記申立てに応じられない旨答弁していたところ、上記調停は、同年1 原告らに対して本件各物件を当初引渡予定日に引き渡すことができないことについて被告らに帰責事由が存しないことなどを主張して、原告らの上記申立てに応じられない旨答弁していたところ、上記調停は、同年10月13日調停不成立等の理由により終局した。(甲4、乙30、弁論の全趣旨)10エ 原告らは、令和3年12月24日、東京地方裁判所に対し、被告らを相手取って、本件訴訟を提起した。 3 本案前の争点及びこれに関する当事者の主張本件における本案前の争点は、原告らの被告らに対する各請求権が、将来の給付の訴えの基礎となる請求権として適格を有し、かつ、あらかじめその請求15をする必要があると認められるか否かである。 (原告らの主張)(1) 請求適格についてア 請求権の基礎となるべき事実関係及び法律関係について原告らは、被告らに対し、被告らが本件各物件の引渡しを当初引渡予20定日であり当審の口頭弁論終結後である令和5年3月27日までに行わないことが、被告らが本件各売買契約に基づき負うべき債務の履行遅滞に当たると主張し、債務不履行に基づく損害賠償として、別紙損害一覧表記載の各損害相当額の支払を求めている。 請求権の基礎となるべき事実関係及び法律関係とは、請求原因に関す25るものに限られるところ、被告らは、本件各物件の引渡しが当初引渡予 - 7 -定日から約1年遅延する旨を説明しているから、上記各事実関係が既に存在している。また、原告らに生じる損害は、いずれも当初引渡予定日から変更後引渡予定日までの期間に生じることが見込まれる損害に限定され、一義的に確定可能である。 よって、原告らの請求権の基礎となるべき事実関係及び法律関係が既5に存在し、その継続が予測されるといえる。 イ 事情の変動について本件において る損害に限定され、一義的に確定可能である。 よって、原告らの請求権の基礎となるべき事実関係及び法律関係が既5に存在し、その継続が予測されるといえる。 イ 事情の変動について本件において被告らに有利な影響を生ずるような将来における事情の変動としては、被告らが変更後引渡予定日の属する令和6年3月より前に本件各物件を引き渡すことといった事由に限られる。 10また、原告らの主張する損害は、賃料相場や経済事情等の変動等により変更があり得る性質のものであるものの、かかる変更は、将来の給付の訴えの基礎となる請求権としての適格性の問題として取り上げるべき事情ではない。 よって、原告らの請求権の成否及びその内容にかかる事情の変動が、15あらかじめ明確に予測しうる事由に限られているといえる。 ウ 被告らに請求異議の訴えによって執行を阻止するという負担を課すことが不当でないことについて上記イのとおり、賃料相場や経済事情等の変動といった事情については、将来の給付の訴えの基礎となる請求権としての適格性の問題として20取り上げるべきものではない。また、仮にかかる事情につき検討する必要があるとしても、当初引渡予定日の属する令和5年3月から変更後引渡予定日の属する令和6年3月までの間に、原告らが引越しをするなどして賃料額が変更となることは考え難く、このような抽象的な可能性を過大視すべきではない。 25その他に、被告らが損害額の変更を認識し得る契機としては、被告ら - 8 -が変更後引渡予定日よりも早期に本件各物件を引き渡す場合が想定されるところ、かかる場合には、被告らは当然に損害額の変更を認識することができる。 よって、本件訴えにおいて、被告らが事情の変更を主張立証して請求異議の訴えにより執行を阻止しなければならないと 定されるところ、かかる場合には、被告らは当然に損害額の変更を認識することができる。 よって、本件訴えにおいて、被告らが事情の変更を主張立証して請求異議の訴えにより執行を阻止しなければならないとしても、格別不当と5はいえない。 (2) あらかじめ請求をする必要性について被告らの説明、態度等からすれば、履行期である当初引渡予定日に被告らが本件各物件の引渡義務を履行しないことは明らかであって、そのような場合において、履行期の到来を待ってから給付の訴えを起こすこと10を原告らに強制させることが原告らの保護に欠けることは明らかである。 また、本件においては、東京2020大会の延期決定後、当初引渡予定日までに内装工事を行った上で本件各物件を引き渡すことがなぜ不可能なのか、また、そのような事態を回避するために被告らがどのような措置を講じたのかといった観点から、被告らに帰責事由が存在しないとい15えるか否かが争点であるところ、これは、東京2020大会の延期決定前における当初の施工計画と、延期決定後において策定された施工計画を比較すれば足りるのであって、改装工事が現在進行していることは、被告らの帰責事由の判断を左右しない。 (3) 小括20したがって、原告らの被告らに対する各請求権は、将来の給付の訴えの基礎となる請求権として適格を有し、かつ、あらかじめその請求をする必要がある。 (被告らの主張)(1) 請求適格について25ア 請求権の基礎となるべき事実関係及び法律関係について - 9 -まず、被告らの引渡義務の履行期限は未到来であるから、現時点において、原告らの請求権の内容を一義的に決定することができない。 また、原告らは、当初引渡予定日から変更後引渡予定日までの間に発生すると見込まれる損害を主張 務の履行期限は未到来であるから、現時点において、原告らの請求権の内容を一義的に決定することができない。 また、原告らは、当初引渡予定日から変更後引渡予定日までの間に発生すると見込まれる損害を主張する。しかしながら、かかる損害は、将来の事情の変動に伴っていかように変更されるかは全く不明であり、被5告らの引渡義務の履行期が到来した場合であっても、原告らの請求権の内容は一義的に決定されるものではない。 さらに、原告らの請求の可否を判断するにあたっては、被告らが本件各物件を引き渡す義務の履行を遅滞することが、東京2020大会の開催が1年延期されたことに伴う不可抗力によるか否かの審理が必要であ10るところ、この点については、実際の引渡日を踏まえた施工スケジュール等を踏まえて審理されるべきものである。 よって、原告らの請求は、請求権の基礎となるべき事実関係及び法律関係が既に存在し、その継続が予測されるとはいえない。 イ 事情の変動について15被告らの履行遅滞が不可抗力によることについては、本件各物件を引き渡す前提条件の当否や東京2020大会延期決定後のスケジュールとった複合的な事情が問題となる。また、原告らの請求権の成否や原告らの主張する損害は、施工状況や原告らの生活環境、被告らと第三者との契約内容等の変更などによって変動する。 20よって、原告らの請求権の成否及びその内容にかかる事情の変動が、あらかじめ明確に予測しうる事由に限られているとはいえない。 ウ 被告らに請求異議の訴えによって執行を阻止するという負担を課すことが不当であることについて原告らの主張する賃料相当損害額に変更があった場合にも、被告らは25具体的な賃料額を認識し得ない。また、上記イのとおり、被告らに有利 - 10 -な影響を生じるよ であることについて原告らの主張する賃料相当損害額に変更があった場合にも、被告らは25具体的な賃料額を認識し得ない。また、上記イのとおり、被告らに有利 - 10 -な影響を生じるような事情の変動は、明確に予測しうる事由に限定されていないところ、被告らは、その事由の発生につき関与できないのであって、適時かつ容易に事情の変動を認識することも、その根拠資料を収集することもできない。 よって、本件訴えにおいて、被告らが事情の変更を主張立証して請求5異議の訴えにより執行を阻止しなければならないとするのは極めて酷であり、不当である。 (2) あらかじめ請求をする必要性について本件における原告らの請求は、被告らの本件各物件の引渡義務の履行遅滞を理由とする被告らに対する損害賠償請求権という単純な金銭債権で10あって、適時に履行を受けなければ目的が達成できなくなったり、原告らが著しい損害を被ったりするという性質のものではない。 また、原告らの請求が認められるためには、被告らの履行遅滞につき帰責事由が存在しないとはいえないと認められる必要があるところ、この点については、本件各物件を引き渡す前提条件の当否や東京2020大15会延期決定後のスケジュールの見直しの妥当性が問題となる。そして、被告らが主張する施工スケジュールは、現時点において未だ計画の部分を含んでおり、現実の引渡しがあるまで確定しないのであるから、被告らは、引渡以前においては、履行遅滞が不可抗力によることについて主張立証を尽くすことができず、被告らの防御権は大きく後退する。 20(3) 小括したがって、原告らの被告らに対する各請求権は、将来の給付の訴えの基礎となる請求権として適格を有さず、あらかじめその請求をする必要があるともいえない。 第3 当裁 する。 20(3) 小括したがって、原告らの被告らに対する各請求権は、将来の給付の訴えの基礎となる請求権として適格を有さず、あらかじめその請求をする必要があるともいえない。 第3 当裁判所の判断251 将来の給付を求める訴えは、現在すなわち事実審の口頭弁論終結の時点では - 11 -即時履行を求めることのできない請求権についてあらかじめ給付判決を求める訴えであって、あらかじめその請求をする必要があるときに限り提起することが許されるものであり(民訴法135条)、既に権利発生の基礎をなす事実関係及び法律関係が存在し、ただこれに基づく具体的な給付義務の成立が将来における一定の時期の到来や債権者において立証を必要としないか又は容易に立5証し得る別の一定の事実の発生にかかっているにすぎない期限付債権や条件付債権のほか、将来発生すべき債権についても、その基礎となるべき事実関係及び法律関係が既に存在し、その継続が予測されるとともに、上記債権の発生・消滅及びその内容につき債務者に有利な将来における事情の変動があらかじめ明確に予測し得る事由に限られ、しかもこれについて請求異議の訴えによりそ10の発生を証明してのみ強制執行を阻止し得るという負担を債務者に課しても、当事者間の衡平を害することがなく、格別不当とはいえない場合には、これにつき将来の給付を求める訴えを提起することができるものと解するのが相当である(最高裁昭和51年(オ)第395号同昭和56年12月16日大法廷判決・民集35巻10号1369頁、最高裁昭和59年(オ)第1293号同昭和1563年3月31日第一小法廷判決・裁判集民事153号627頁参照)。 2 前提事実(1)ア、(2)イ及び(3)並びに証拠(甲6ないし8、10、11、乙1の1及び2、乙3ないし7 93号同昭和1563年3月31日第一小法廷判決・裁判集民事153号627頁参照)。 2 前提事実(1)ア、(2)イ及び(3)並びに証拠(甲6ないし8、10、11、乙1の1及び2、乙3ないし7)及び弁論の全趣旨によれば、オリンピック・パラリンピック競技大会が当初予定された期間から1年程度延期された前例はなく、事業計画書や各協定等においても東京2020大会が延期される可能性を20予定した定めがないこと、被告らが本件各売買契約に基づき、原告らに対して本件各物件を引き渡すべき当初引渡予定日が令和5年3月27日であったものの、東京2020大会の延期決定に伴い、本件各物件の変更後引渡予定日が令和6年3月25日と通知されたこと、東京2020大会終了後に組織委員会及び東京都から本件特定施設建築物の引渡しを受けた被告ら及び三井不動産は、25現在において、本件特定施設建築物のうち3街区(「SEA VILLAG - 12 -E」、「SUN VILLAGE」及び「PARK VILLAGE」)につき、選手村として使用するために付加された内装、設備等を撤去し、居住用マンションとして使用するための内装、外装、外構等の新築工事を実施している最中であること、本件マンション内の各物件を各買主に対して引き渡すためには、同街区内の全棟につき工事を完成させて検査済証を取得し、特定施設建築5物について工事の完了の公告等(法100条)がされた上で、施設建築物に関する登記(法101条)による敷地権付建物表題登記及び売主名義での所有権保存登記の経由が必要であることが認められる。 被告らは、上記事実をも踏まえて、原告らに対する本件各物件の引渡しを遅滞することについて帰責事由がないとして、原告らの各請求権の発生を障害す10る抗弁を主張するところ、この が認められる。 被告らは、上記事実をも踏まえて、原告らに対する本件各物件の引渡しを遅滞することについて帰責事由がないとして、原告らの各請求権の発生を障害す る抗弁を主張するところ、この抗弁の成否及びその範囲の判断、すなわち、原告らの各請求権の成否及びその範囲の判断には、被告ら及び三井不動産と東京都等との間の各種合意や現時点までの上記新築工事の進捗状況等の当審の口頭弁論終結時までの事情のほか、工期の変更に伴う作業人員や資材の手配の具体的可能性を踏まえた今後の上記新築工事の進捗や、検査済証の取得、工事完了 の公告等、施設建築物に係る登記手続等の事務処理に要する日数、負担等の将来発生する事情も少なからず影響し得るものと解されるから、将来発生すべき債権である原告らの各請求権の基礎となるべき事実関係及び法律関係が既に存在しているものとは認められない。 なお、原告は、請求権の基礎となるべき事実関係及び法律関係は請求原因に 関するものに限られると主張するが、事実審の口頭弁論終結前に生じた抗弁は請求異議の訴えにおいて異議事由とすることができない上、事実審の口頭弁論終結時に発生していない債権に限って、請求原因に関する事実関係のみによって債務名義を与えるべき理由もないから、原告の主張は理由がない。 3 原告A1、同A20、同A21、同A25、同A26、同A27及び同A2 8以外の原告らについては、いずれも別紙損害一覧表記載の当初引渡予定日に - 13 -本件各物件に入居できなかったことによって発生すべき精神的苦痛に係る慰謝料を請求するところ、財産的給付の履行遅滞に基づく慰謝料は、履行遅滞が生じれば直ちに遅滞期間に応じて比例的に認められるものではなく、その存否及び額は、現実の遅滞期間の長短に加え、その間の当該原 慰謝料を請求するところ、財産的給付の履行遅滞に基づく慰謝料は、履行遅滞が生じれば直ちに遅滞期間に応じて比例的に認められるものではなく、その存否及び額は、現実の遅滞期間の長短に加え、その間の当該原告らの生活状況、当該原告らと被告らとの折衝状況等の将来発生する事情をも踏まえて、財産的損害5を填補してもなお填補することができない精神的苦痛の有無及び程度を検討する必要があると解されるから、この点においても、将来発生すべき債権である原告らの各請求権の基礎となるべき事実関係及び法律関係が既に存在しているものとは認められない。 また、原告A20、同A21、同A25、同A26、同A27及び同A2810については、いずれも別紙損害一覧表記載の令和5年4月以降に本件各物件を第三者に対して賃貸していたならば得られたであろう賃料収入相当額を請求するところ、本件各物件は、東京2020大会開催時に選手村として使用されたとの希少性を有し、未だ一度も賃貸物件として貸し出されたことのないものであって、将来における賃料収入相当額を正確に算定すること自体が容易ではな15いことに加え、その算定の際に参考とすべき本件各物件の周辺地域の賃料相場は、新型コロナウイルス感染症、ロシアによるウクライナに対する軍事侵攻、為替相場等の流動的な社会経済情勢の変化を背景とする周辺地域の需要の変動や、他の賃貸物件の供給状況の変化、周辺地域の公共交通機関の変動等の諸要素に左右されるのであるから、この点においても、将来発生すべき債権である20原告らの各請求権の基礎となるべき事実関係及び法律関係が既に存在し、その継続が予測されるものとは認め難く、債務者である被告らに有利な将来における事情の変動があらかじめ明確に予測し得る事由に限られるとも認められない。 4 以上のとおり、原 及び法律関係が既に存在し、その継続が予測されるものとは認め難く、債務者である被告らに有利な将来における事情の変動があらかじめ明確に予測し得る事由に限られるとも認められない。 4 以上のとおり、原告らの被告らに対する各請求権は、その性質上、将来の給付の訴えを提起することのできる請求として適格を有しないから、本件訴えは25いずれも権利保護の要件を欠き、不適法である。 - 14 -なお、原告らが、令和4年8月2日付けで申し立てた、被告らに対して「東京2020大会の延期決定前・後に策定された内外装等工事の施工計画、工程表並びにそれぞれの協力会社数及び作業人員数を示す文書」の提出を求める文書提出命令の申立ては、被告らの原告らに対する本件各物件の引渡しが遅延することについての被告らの帰責事由に関連するものであると解されるところ、5本件訴えはいずれも不適法なものとして却下すべきであるから、上記申立てについても必要性を欠くものとして、却下することとする。 第4 結論以上によれば、本件訴えはいずれも不適法であるからこれらを却下することとして、主文のとおり判決する。 10 東京地方裁判所民事第43部 裁判長裁判官 古 庄 研 15 裁判官 伊 藤 康 博 裁判官 石 原 拓20 - 15 -(別紙) 請求目録 1 被告らは、原告A1に対し、連帯して、令和5年3月28日から別紙原告ら5物件等目録「購入物件」記載の物件の引渡済みまで1か月33万3333円の割合による金員を支払え。 2 被告らは、原告A2及び原告A3に対し、連帯して、令和5年3月28日から別紙原告ら物件 ら 物件等目録「購入物件」記載の物件の引渡済みまで1か月33万3333円の割合による金員を支払え。 2 被告らは、原告A2及び原告A3に対し、連帯して、令和5年3月28日から別紙原告ら物件等目録中「購入物件」記載の物件の引渡済みまで1か月33万3333円の割合による金員を支払え。 3 被告らは、原告A4に対し、連帯して、令和5年3月28日から別紙原告ら物件等目録「購入物件」記載の物件の引渡済みまで1か月15万5000円の割合による金員を、同年10月31日を経過したときは214万円を支払え。 4 被告らは、原告A5に対し、連帯して、令和5年3月28日から別紙原告ら物件等目録中「購入物件」記載の物件の引渡済みまで1か月33万3333円 の割合による金員を支払え。 5 被告らは、原告A6に対し、連帯して、令和5年3月28日から別紙原告ら物件等目録中「購入物件」記載の物件の引渡済みまで1か月31万4583円の割合による金員を、令和6年2月27日を経過したときは22万5000円を支払え。 6 被告らは、原告A7及び原告A8に対し、連帯して、令和5年3月28日から別紙原告ら物件等目録中「購入物件」記載の物件の引渡済みまで1か月33万3333円の割合による金員を支払え。 7 被告らは、原告A9に対し、連帯して、令和5年3月28日から別紙原告ら物件等目録中「購入物件」記載の物件の引渡済みまで1か月33万3333円 の割合による金員を支払え。 - 16 - 8 被告らは、原告A10及び原告A11に対し、連帯して、令和5年3月28日から別紙原告ら物件等目録中「購入物件」記載の物件の引渡済みまで1か月16万4072円の割合による金員を、同年12月31日を経過したときは11万7300円を、令和6年1月31日 、令和5年3月28日から別紙原告ら物件等目録中「購入物件」記載の物件の引渡済みまで1か月16万4072円の割合による金員を、同年12月31日を経過したときは11万7300円を、令和6年1月31日を経過したときは191万3836円を支払え。 9 被告らは、原告A12に対し、連帯して、令和5年3月28日から別紙原告ら物件等目録中「購入物件」記載の物件の引渡済みまで1か月46万5000円の割合による金員を、同年12月31日を経過したときは42万円を支払え。 10 被告らは、原告A13に対し、連帯して、令和5年3月28日から別紙原告ら物件等目録中「購入物件」記載の物件の引渡済みまで1か月12万500 0円の割合による金員を、同年12月31日を経過したときは50万円を支払え。 11 被告らは、原告A14に対し、連帯して、令和5年3月28日から別紙原告ら物件等目録中「購入物件」記載の物件の引渡済みまで1か月33万3333円の割合による金員を支払え。 12 被告らは、原告A15に対し、連帯して、令和5年3月28日から別紙原告ら物件等目録中「購入物件」記載の物件の引渡済みまで1か月31万8408円の割合による金員を、同年12月31日を経過したときは17万9100円を支払え。 13 被告らは、原告A16に対し、連帯して、令和5年3月28日から別紙原 告ら物件等目録中「購入物件」記載の物件の引渡済みまで1か月30万8404円の割合による金員を、同年12月15日を経過したときは29万9145円を支払え。 14 被告らは、原告A17及び原告A18に対し、連帯して、令和5年3月28日から別紙原告ら物件等目録中「購入物件」記載の物件の引渡済みまで1か 月9万7717円の割合による金員を、同月31日を経過したときは282万 7及び原告A18に対し、連帯して、令和5年3月28日から別紙原告ら物件等目録中「購入物件」記載の物件の引渡済みまで1か25月9万7717円の割合による金員を、同月31日を経過したときは282万 - 17 -7396円を支払え。 15 被告らは、原告A19に対し、連帯して、令和5年3月28日から別紙原告ら物件等目録中「購入物件」記載の物件の引渡済みまで1か月22万円の割合による金員を、同月31日を経過したときは100万円を、同年8月10日を経過したときは36万円を支払え。 516 被告らは、原告A20及び原告A21に対し、連帯して、令和5年3月28日から別紙原告ら物件等目録中「購入物件」記載の物件の引渡済みまで1か月33万3333円の割合による金員を支払え。 17 被告らは、原告A22、原告A23及び原告A24に対し、連帯して、令和5年3月28日から別紙原告ら物件等目録中「購入物件」記載の物件の引渡10済みまで1か月33万3333円の割合による金員を支払え。 18 被告らは、原告A25及び原告A26に対し、連帯して、令和5年3月28日から別紙原告ら物件等目録中「購入物件」記載の物件の引渡済みまで1か月33万3333円の割合による金員を支払え。 19 被告らは、原告A27及び原告A28に対し、連帯して、令和5年3月2158日から別紙原告ら物件等目録中「購入物件」記載の物件の引渡済みまで1か月33万3333円の割合による金員を支払え。 以 上 - 18 -(別紙)当事者目録、同原告ら物件等目録、及び同損害一覧表については記載を省略。 一覧表については記載を省略。
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