昭和61(う)1108 業務上過失傷害、道路交通法違反、傷害、恐喝、恐喝未遂被告事件

裁判年月日・裁判所
昭和62年7月10日 大阪高等裁判所
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【DRY-RUN】主    文      原判決中被告人に関する部分を破棄する。      被告人を懲役一年二月に処する。      原審における未決勾留日数中一八〇日を右刑に算入する。      原審における訴訟費用

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判決文本文14,421 文字)

主文 原判決中被告人に関する部分を破棄する。 被告人を懲役一年二月に処する。 原審における未決勾留日数中一八〇日を右刑に算入する。 原審における訴訟費用は、原審相被告人Aとの連帯負担とする。 理由 本件控訴の趣意は、弁護人平山忠作成の控訴趣意書記載のとおりであるから、これを引用する。 一控訴趣意中原判示第四の事実の事実誤認及び法令適用の誤りをいう論旨について論旨は、要するに、原判決は、原判示第四の事実として、原審相被告人Aが、Bと共謀の上、被害者Cに対し、同人方及び同人を暴力団事務所へ連行するタクシー内でその顔面を殴打する暴行を加え、右事務所内では、Dとも共謀の上、更にその顔面、頭部を数回にわたつて手拳、木刀及びガラス製灰皿で殴打し、その下腿部を足蹴りにする暴行を加えたが、被告人においても、右事務所内での暴行の途中から右Aらと意思相通じ共謀の上、Cの顔面を二、三回殴打する暴行を加え、よつて、同人に対し、加療約八日間を要する顔面打撲、頭頂部挫創、右下腿打撲の傷害を負わせた旨の事実を認定した上、被告人についても、傷害罪の共同正犯の成立を認めた。しかし、(1)被告人は、他の者の暴行がすべて終了したのちに現場に現われて、Cの顎を二、三回突くように押しただけであつて、被告人が、同人に対する暴行を他の者と共謀したり、同人の顔面を二、三回殴打したことは全くなく、(2)かりに、被告人の右行為が暴行にあたるとしても、Cの原判示傷害は、被告人の右行為前にすでに生じていたものであるから、いわゆる承継的共同正犯の理論によつても、被告人に傷害罪の刑責を問うことはできない。従つて、原判決は、これらの点において、事実を誤認し、かつ、法令の適用を誤つたものである、というのである。 そこで わゆる承継的共同正犯の理論によつても、被告人に傷害罪の刑責を問うことはできない。従つて、原判決は、これらの点において、事実を誤認し、かつ、法令の適用を誤つたものである、というのである。 そこで、検討するのに、 1 まず、原判決は、判示第四の事実として、Aは、C(当時四四歳)が、Bと情交関係のあつたEにアパート代を支払わせたり、金三〇万円を更生資金名下に出捐させた旨をBから聞き及び、「Bと共謀の上、昭和六〇年二月二三日午前二時ころ、大阪市a区bc丁目d番e号fアパート内のC方で、Bにおいて、Cの顔面を一回殴打し、続いて暴力団F組G組事務所に連行するタクシーの中で二回ほど同人の顔面を殴打する暴行を加え、引き続いて同日午前四時三〇分ころまでの間、大阪市a区gc丁目h番i号G組事務所において、H組組員であるDとも共謀の上、Cに対し、こもごもその顔面、頭部を数回に亘つて手拳、木刀(昭和六〇年押第五三五号の1、2)及びガラス製灰皿(同号の3)で殴打し、或いは、その下腿部を足蹴りにする暴行を加え、更に、その途中から被告人Iも被告人A、Bらと意思を相通じ共謀の上、その顔面を二、三回殴打する暴行を加え、よつて、Cに対し、加療約八日間を要する顔面打撲、頭頂部挫創、右下腿打撲の傷害を負わせた」旨の事実を摘示した上、これが「刑法六〇条、二〇四条、罰金等臨時措置法三条一項一号」に該当するとしている。そして、右摘示事実と適条、更には原判決の「被告人両名につき有罪と認めた理由」欄の説示をも併せると、原判決は、被告人は、原判示G組事務所におけるBらの暴行現場にその途中から現われて、その場の状況等から事態の成行きを察知し、暗黙のうちに同人らと共謀を遂げた上、Cの顎を二、三回手拳で殴打した事実、及び、同人が被告人の共謀加担の前後にわたるB、Aらの一連の暴行により原 ら現われて、その場の状況等から事態の成行きを察知し、暗黙のうちに同人らと共謀を遂げた上、Cの顎を二、三回手拳で殴打した事実、及び、同人が被告人の共謀加担の前後にわたるB、Aらの一連の暴行により原判示各傷害を負つた事実を各認定し、被告人は、右のような経緯のもとにBらの暴行に途中から共謀加担したものであるから、Cの傷害が被告人の加担後の暴行によつて生じたものといえない場合でも、いわゆる承継的共同正犯として、右傷害全体についての刑責を免れないとの見解を採つたものと解される。 2 ところで、原認定の事実中、暴力団F組G組長の友人であるBが、自己と情交関係のあつたEがCからアパートの賃借料を立替え払いさせられた上金三〇万円の更生資金を要求されて支払つたことを知つて憤激し、同組員であるAと共謀の上、昭和六〇年二月二三日午前二時ころ、原判示Cの居室及び同人をG組事務所へ連行するタクシー内で、同人に対し、約三回顔面を殴打する暴行を加えたこと、右事務所内(一階応接間)においても、Bらは、居合わせた他の暴力団組員Dとも共謀の上、同日午前四時三〇分ころまでの間、Cに対し、こもごも、手拳、木刀及びガラス製灰皿でその顔面、頭部を数回にわたつて殴打したり、その下腿部を足蹴りにする暴行を加えたこと、G組幹部で、当夜、飲酒の上同組事務所三階で寝ていた被告人は、折からの階下の物音で目をさまして右応接間に現われたのち、Bらに殴打されてすでに頭部や顔面から血を流しているCの姿やEの説明などから、いち早く事態の成行きを察知し、BらかCに対し暴行を加えて同人を負傷させた事実を認識・認容しながら、Dの慫ように従い、自らもこれに共同して加担する意思で、同人の顎を手で二、三回突き上げる暴行を加え、その後更に、Aにおいても、Cの顔面を一回手拳で殴打したことが明らかであり、これによれ 認容しながら、Dの慫ように従い、自らもこれに共同して加担する意思で、同人の顎を手で二、三回突き上げる暴行を加え、その後更に、Aにおいても、Cの顔面を一回手拳で殴打したことが明らかであり、これによれば、被告人は、自らCの顎を手で突き上げる行為に出た時点では、B、Aらとの間で、暗黙のうちに、Cに対し不法な有形力を加える旨の共謀を遂げていたものと認めざるを得ない。 3 右事実のうち、被告人のCに対する有形力行使の態様につき、原判決は、「顔面を二、三回殴打」した旨認定しているが、右認定に副う被告人の昭和六〇年三月一八日付検察官調書、Aの同月一三日付及び二〇日付各検察官調書並びにCの各捜査官調書は、被告人のその余の各捜査官調書、Aの同月二五日付検察官調書、並びに同人及び被告人の各原審供述などと対比しその信用性に疑問があり、右各証拠を含む関連全証拠を総合して考察すると、被告人の有形力行使の態様に関する認定は、前示の限度に止めるのが相当であつて、原判決の右事実認定は、この点に関しては誤りであるといわなければならない。しかし、前示認定の「顎を手で二、三回突き上げる」という被告人の有形力行使も、その前後のいきさつ、被告人の意思及び突き上げの程度(決して軽いとはいえない。)などに照らし、これを暴行と認めるのに十分である。そして、前認定の経緯によれば被告人の右暴行は、前示のように、Bらとの共謀に基づくものと認めるべきである。そうすると、いわゆる承継的共同正犯の成立範囲につき原判決のような見解を採るならば、被告人の暴行の態様が右の程度に止まる場合でも、被告人につき原判示傷害の犯罪の共同正犯を肯定すべきことになる。しかし、当裁判所は右見解には賛同できない。 4 一般に、先行者の犯罪にその途中から共謀加担した後行者に対し加担前の先行者の行為及びこれによつて生じ 判示傷害の犯罪の共同正犯を肯定すべきことになる。しかし、当裁判所は右見解には賛同できない。 4 一般に、先行者の犯罪にその途中から共謀加担した後行者に対し加担前の先行者の行為及びこれによつて生じた結果(以下、「先行者の行為等」という。)をも含めた当該犯罪全体につき共同正犯の刑責を問い得るのかどうかについては、これをすべて否定する見解(所論及び弁護人の当審弁論は、この見解を採る。以下「全面否定説」という。)や、後行者において、先行者の行為等を認識・認容して一罪の一部に途中から共謀加担した以上常に全体につき共同正犯の刑責を免れないとする見解(検察官の当審弁論の見解であり、原判決もこれによると思われる。以下「全面肯定説」という。)もあるが、当裁判所としては、右いずれの見解にも賛同し難い。右のうち、全面否定説は、刑法における個人責任の原則を重視する見解として注目に値するが、後行者において、先行者の行為等を認識・認容するに止まらず、積極的にこれを自己の犯罪遂行の手段として利用したと認められる場合には、先行者の行為等を実質上後行者の行為と同視し得るというべきであるのに、このような場合まで承継的共同正犯の成立を否定する見解は、妥当でないと考えられる。他方、全面肯定説は、実体法上の一罪は、分割不可能な一個の犯罪であるから、このような犯罪に後行者が共謀加担したものである以上、加担前の先行者の行為等を含む不可分的全体につき当然に共同正犯の成立を認めるほかないとする点に論拠を有すると考えられる。右見解が、承継的共同正犯の成立を実体法上の一罪に限定する点は正当であり、また、実体法上の一罪の中に分割不可能なものの存することも明らかなところであるが、実体法上一罪とされるものの中にも、これを構成する個々の行為自体が、形式的にはそれぞれ一個の構成要件を充足するもの り、また、実体法上の一罪の中に分割不可能なものの存することも明らかなところであるが、実体法上一罪とされるものの中にも、これを構成する個々の行為自体が、形式的にはそれぞれ一個の構成要件を充足するものであるけれども、実質的にみてその全体を一個の構成要件により一回的に評価すれば足りるとして一罪とされるもの(接続犯、包括一罪等)かあることを考えると、実体法上の一罪のすべてが絶対に分割不可能であるということは、独断であるといわなければならない。しかも、右見解においては、たとえ分割不可能な狭義の単純一罪に加担した場合であつても、後行者が先行者の行為等を認識・認容していたに止まるのであれば、何故に、先行者の行為による結果についてまで後行者に刑責を問い得るのかについての納得し得る説明がなされていない。 <要旨>思うに、先行者の犯罪遂行の途中からこれに共謀加担した後行者に対し先行者の行為等を含む当該犯罪の全</要旨>体につき共同正犯の成立を認め得る実質的根拠は、後行者において、先行者の行為等を自己の犯罪遂行の手段として積極的に利用したということにあり、これ以外には根拠はないと考えられる。従つて、いわゆる承継的共同正犯が成立するのは、後行者において、先行者の行為及びこれによつて生じた結果を認識・認容するに止まらず、これを自己の犯罪遂行の手段として積極的に利用する意思のもとに、実体法上の一罪(狭義の単純一罪に限らない。)を構成する先行者の犯罪に途中から共謀加担し、右行為等を現にそのような手段として利用した場合に限られると解するのが相当である。 もつとも、例えば、「暴行又ハ脅迫」により被害者の反抗を抑圧した状態に置き、その所持する財物を「強取スル」ことによつて成立する強盗罪のように、一罪であつても一連の行為により一定の結果を発生させる犯罪(強姦、殺人等につ 「暴行又ハ脅迫」により被害者の反抗を抑圧した状態に置き、その所持する財物を「強取スル」ことによつて成立する強盗罪のように、一罪であつても一連の行為により一定の結果を発生させる犯罪(強姦、殺人等についても同様である。)については、後行者か、先行者の行為等を認識・認容して犯行に共謀加担すれば(例えば、先行者が強盗目的で暴行中、自らも同様の目的で右暴行に加わり、あるいは、反抗抑圧の結果を生じた段階でこれに加わつて、自ら金品を強取するなど)、多くの場合、先行者の行為等を自己の犯罪遂行の手段として積極的に利用したと認めるのか相当であるといい得るから、これらの犯罪については、当裁判所の見解によつても、全面肯定説によつた場合と(特異な場合を除き)おおむね結論を異にしないと考えられる。しかし、例えば、先行者が遂行中の一連の暴行に、後行者がやはり暴行の故意をもつて途中から共謀加担したような場合には、一個の暴行行為かもともと一個の犯罪を構成するもので、後行者は一個の暴行そのものに加担するのではない上に、後行者には、被害者に暴行を加えること以外の目的はないのであるから、後行者が先行者の行為等を認識・認容していても、他に特段の事情のない限り、先行者の暴行を、自己の犯罪遂行の手段として積極的に利用したものと認めることかできず、このような場合、当裁判所の見解によれば、共謀加担後の行為についてのみ共同正犯の成立を認めるべきこととなり、全面肯定説とは結論を異にすることになる。なお、検察官の当審弁論の援用する各判例は、おおむね、後行者において、先行者の行為等を自己の犯罪遂行の手段として積極的に利用する意思で加担し、現にこれをそのようなものとして利用していると認め得る事案に関するものであり、当裁判所の見解と正面から対立するものではない。 5 ところで、前示の認定によれ 手段として積極的に利用する意思で加担し、現にこれをそのようなものとして利用していると認め得る事案に関するものであり、当裁判所の見解と正面から対立するものではない。 5 ところで、前示の認定によれば、被告人は、G組事務所一階応接室へ現われた段階で、同室内におけるBらの行動や被害者Cの受傷状況、更にはEの説明などにより、事態の成行きを理解し、同室内におけるBらのCへの暴行及びこれによる同人の受傷の事実を認識・認容しながら、これに途中から共謀加担したものといい得る。しかし、前示のような暴行罪そのものの性質、並びに被告人がCに対し現実にはその顎を二、三回突き上げる程度の暴行しか行つていないことからみて、被告人が先行者たるBらの行為等を自己の犯罪遂行の手段として利用する意思であつたとか、これを現実にそのようなものとして利用したと認めることは困難である。従つて、本件において、被告人に対しては、Bらとの共謀成立後の行為に対して共同正犯の成立を認め得るに止まり、右共謀成立前の先行者の行為等を含む犯罪全体につき、承継的共同正犯の刑責を問うことはできないといわざるを得ない。 しかして、本件においては、被害者Cの原判示各傷害は、同人方居室内、タクシー内及びG組事務所内におけるB、A、Dらによる一連の暴行によつて生じたものではあるが、一連の暴行のうち、被告人の共謀加担後に行われたと証拠上認定し得るものは、被告人による顎の突き上げ(二、三回)及びAによる顔面殴打(一回)のみであつて、Cの受傷の少なくとも大部分は、被告人の共謀加担前に生じていたことか明らかであり、右加担後の暴行(特にAの顔面殴打)によつて生じたと認め得る傷害は存在しない。そうすると、被告人に対しては、暴行罪の共同正犯が成立するに止まり、傷害罪の共同正犯の刑責を問うことはできない。 6 右のよ 担後の暴行(特にAの顔面殴打)によつて生じたと認め得る傷害は存在しない。そうすると、被告人に対しては、暴行罪の共同正犯が成立するに止まり、傷害罪の共同正犯の刑責を問うことはできない。 6 右のような当裁判所の結論に対しては、刑法二〇七条のいわゆる同時傷害罪の規定との関係で、異論があり得るかと思われるので、以下、若干の説明を補足する。 例えば、JのLに対する暴行の直後KがJと意思の連絡なくしてLに暴行を加え、LかJ、Kいずれかの暴行によつて受傷したが、傷害の結果を生じさせた行為者を特定できない場合には、刑法二〇七条の規定により、J、Kいずれも傷害罪の刑責を免れない。これに対し、Jの暴行終了後KがJと共謀の上暴行を加えた場合で、いずれの暴行による傷害か判明しないときには、前示のような当裁判所の見解によれば、Kの刑責が暴行罪の限度に止まることになり、Jとの意思連絡なくしてLに暴行を加え同様の結果を生じた場合と比べ、一見均衡を失する感のあることは、これを否定し難い。しかし、刑法二〇七条の規定は、二人以上で暴行を加え人を傷害した場合において、傷害を生じさせた行為者を特定できなかつたり、行為者を特定できても傷害の軽重を知ることができないときには、その傷害が右いずれかの暴行(又は双方)によつて生じたことが明らかであるのに、共謀の立証ができない限り、行為者のいずれに対しても傷害の刑責を負わせることができなくなるという著しい不合理を生ずることに着目し、かかる不合理を解消するために特に設けられた例外規定である。これに対し、後行者たるKが先行者Jとの共謀に基づき暴行を加えた場合は、傷害の結果を生じさせた行為者を特定できなくても、少なくともJに対しては傷害罪の刑責を問うことができるのであつて、刑法の右特則の適用によつて解消しなければならないような著しい不 暴行を加えた場合は、傷害の結果を生じさせた行為者を特定できなくても、少なくともJに対しては傷害罪の刑責を問うことができるのであつて、刑法の右特則の適用によつて解消しなければならないような著しい不合理は生じない。従つて、この場合には、右特則の適用がなく、加担後の行為と傷害との因果関係を認定し得ない後行者たるKについては、暴行罪の限度でその刑責が問われるべきこととなるのであつて、右結論が不当であるとは考えられない。 もつとも、本件のように、Jの暴行終了前にKがこれに共謀加担し、Lの傷害が、Kの共謀加担の前後にわたるJの暴行によつて生じたと認められる場合には、Kの共謀加担後のJ、Kの暴行とその加担前のJの暴行とを、あたかも意思連絡のない二名(J及びJ)の暴行と同視して、刑法二〇七条の適用を認める見解もあり得るかと思われ、もし右の見解を肯認し得るものとすれば、本件においても、同条の規定を媒介とすることにより、被告人に対し傷害罪の刑責を問う余地は残されていることになる。しかしながら、右のような見解に基づき被告人に傷害罪の刑責を負わせるためには、その旨の訴因変更(予備的変更を含む。)手続を履践して、事実上・法律上の論点につき被告人に防禦を尽くさせる必要のあることは当然であると解せられるところ、本件においては、検察官は、かかる訴因変更の請求をしていないし、また、本件が、訴因変更を促し又は命ずる義務があるとされるような事案でないことも明らかであると考えられる。従つて、本件においては、右訴因変更手続が履践されたことを前提として、被告人につき傷害罪か成立するか否かを論ずる実益はないから、これ以上立ち入らないこととする。 7 以上の検討によれば、本件につき被告人を傷害罪の共同正犯に問擬した原判決は、法令の解釈を誤りひいては事実を誤認したものといわなけれ 否かを論ずる実益はないから、これ以上立ち入らないこととする。 7 以上の検討によれば、本件につき被告人を傷害罪の共同正犯に問擬した原判決は、法令の解釈を誤りひいては事実を誤認したものといわなければならず、右法令解釈の誤り及び事実誤認は、判決に影響を及ぼすことが明らかである。論旨は、理由がある。 二控訴趣意中原判示第五の事実に関する事実誤認をいう論旨について論旨は、要するに、原判決は、判示第五の事実として、被告人がA及び同Mと共謀の上、被害者Nを脅迫して、同人から金三〇万円を喝取した旨の事実を認定したが、1 A及びMの両名は、Aの内妻OがNに強姦された件について示談交渉の末、金五〇万円の支払いを約束させ内金三〇万円を受け取つたに過ぎず、Nに対し何ら害悪の告知をしていないし、2 かりに、AらがNを畏怖させるような言動をしたとしても、内妻を同人に強姦されたAにとつては、正当な権利の行使として違法性が阻却されるべきであり、3 被告人は、Mに頼まれてNを犯行場所とされる組事務所に案内したのち直ちに外出していて、Aらの話合いの状況を知らず、後日Nから金三〇万円を受け取る際にも、AらがNを脅迫し同人を畏怖させているという認識がなかつたのであつて、恐喝の犯意を有せず、かつ、Aらと共謀を遂げたこともないから、原判決は、これらの点において事実を誤認したものである、というのである。 そこで、検討するのに、 1 原判決書によると、原判決は、判示第五の事実として、被告人及びAは、N(当時三一歳)がAの内妻O(当時一五歳)と情交したことを知り、右Nから金員を喝取しようと企て、「Mと共謀の上、昭和五九年一二月一一日午後七時ころから同日午後九時三〇分ころまでの間、前記G組事務所において、右Nに対し、こもごも『お前どないすんねや。よその女抱きやがつて。警察 喝取しようと企て、「Mと共謀の上、昭和五九年一二月一一日午後七時ころから同日午後九時三〇分ころまでの間、前記G組事務所において、右Nに対し、こもごも『お前どないすんねや。よその女抱きやがつて。警察問題にするんか。女は一六歳で未成年や。警察問題にしたら五、六年入らなあかんな。』、『俺の女に手を出してどないしてくれるんや。警察に行くか金で話するかどつちにするんや。』等と語気鋭く申し向け脅迫して、金員を要求し、もしその要求に応じなければ、同人の身体、名誉等にいかなる危害を加えるかも知れないとの気勢を示して同人を畏怖させ、よつて同月二八日同市k区lm丁目n番o号喫茶店『カーメル』店内において、被告人Iが同人から現金三〇万円の交付を受けてこれを喝取した」旨の事実を認定していることが明らかであるが、その「被告人両名につき有罪と認めた理由」欄の説示をも併せると、原判決は、被告人が、右恐喝の実行の着手前にAらと共謀の上これに加担した事実を肯認する趣旨と解せられる。 2 ところで、原判決挙示の対応関係証拠及び当審における事実取調べの結果によれば、原判示第五の犯行に至る経緯及びその態様は、次のとおりであつたと認められる。すなわち、(1) Aは、昭和五九年夏以来、喫茶店「Q」のウエイトレスO(昭和△年△月×日生)とその両親方で同棲していたが、同六〇年一二月八日夜、自己の不在中に、同女が、会社員N(当時三一歳)から誘われるまま、ともに飲酒した上同人のアパートで情交関係を持つたことを知り、これを奇貨として、同人から金員を喝取しようと企て、翌九日、同人の勤務先であるR株式会社へ赴き、不在中の同人に対し、女が無理矢理犯された件で話があるので連絡して欲しい旨言い置き、G組事務所の電話番号を教えて立ち去つた。 (2) その後、Aは、いとこのMに助力を求めるため、 R株式会社へ赴き、不在中の同人に対し、女が無理矢理犯された件で話があるので連絡して欲しい旨言い置き、G組事務所の電話番号を教えて立ち去つた。 (2) その後、Aは、いとこのMに助力を求めるため、組事務所に電話したが、同人が不在であつたため、たまたま電話に出た被告人に対し、OがNに酒を飲まされて犯されたので、その旨Mに伝えて欲しい旨伝言を依頼するとともに、何かあつたら頼むとして被告人にも助力方を求め、これを承諾した被告人において右伝言をMに伝えた結果、同人も前記Aの計画に同調し、右両名間において、Nからの金員喝取に関する共謀か成立した。 (3) 同月一一日午後七時ころ、被告人は、ようやく連絡の取れたNを、Mに依頼されて、大阪環状線天王寺駅まで迎えに出、G組事務所へ案内したところ、Mは、同所において同人に対し、同日午後九時三〇分ころまでの間、途中から加わつたAとともに、原判示のような脅迫文言をこもごも申し向けて金員を要求し、Nを畏怖させた上、同月二八日に金三〇万円を支払う旨同人に約束させた。なお、被告人は、Nを組事務所へ案内したのち間もなく所用で外出したため、その後のMらの言動を直接見聞していない。 (4) 同月一四日、Mは覚せい剤取締法違反の容疑で逮捕された。しかし、Aにおいては、Nに対し、あくまで前記約束の履行を求めるつもりで、被告人に対し、「明日金ができるというので会おうと思つている。」旨伝えると、被告人においても、その分け前に与りたいとの気持から、これに同行することとし、翌二八日、落ち合つた同人から、喝取金のうち五万円の借用を受ける旨の約束を取りつけた。 (5) 被告人は、R付近で、Aとともに、Nが帰社するのを見届けたのち、様子を見てくると称して単身Rへ赴いてNと会い、同人とともに、Aを待たせているところとは別の原判示喫茶 の約束を取りつけた。 (5) 被告人は、R付近で、Aとともに、Nが帰社するのを見届けたのち、様子を見てくると称して単身Rへ赴いてNと会い、同人とともに、Aを待たせているところとは別の原判示喫茶店「P」へ入り、同店内で、Nに対し、「金できたか。」などと申し向け、同人かAらの前記脅迫により畏怖しているのに乗じて金三〇万円を交付させた。 (6) 被告人は、右金三〇万円の受領後、Aに電話で連絡し、いつたん三名で店外へ出たが、被告人及びAの両名は、Nの畏怖に乗じ更に金二〇万円を喝取しようと考え、共謀の上、原判示下水処理場西側路上において、被告人がNに対し原判示のとおりなおも金二〇万円の交付を要求し、一〇万円づつの月賦払いの約束をさせたが、同人が警察へ届け出たため、右金員喝取の目的を遂げなかつた(この部分は原判示第六の点であるが、便宜ここで認定しておく。)。 (7) 被告人は、Nから受領した三〇万円をAに渡したが、その際、同人と交渉の上、借用名下に金一〇万円を受け取つた。 以上のとおり認められる。 3 これによると、被告人は、一二月一一日に、Mの意を体してNをG組事務所へ案内した段階では、せいぜい、A及びMの恐喝の計画を知つてこれに助力を与える程度の意思であつたに過ぎず、同人らと恐喝の共謀を遂げていたとまでは認められないから、右の段階において、被告人とAらとの共謀の成立を認めた原判決は、この点において事実を誤認したものといわなければならない。しかしながら、右(1)ないし(7)の各事実を総合すると、被告人は、その後Aから、同月二八日に予定されたNとの会見を知らされるに及び、自らも喝取金の分配に与りたいという気持になり、同人からの金員の受領役を買つて出、同人が、Aらの脅迫により畏怖していることを知りながら、これを積極的に利用して、自らも金員喝 の会見を知らされるに及び、自らも喝取金の分配に与りたいという気持になり、同人からの金員の受領役を買つて出、同人が、Aらの脅迫により畏怖していることを知りながら、これを積極的に利用して、自らも金員喝取の犯行に共謀加担したものと認められるから、前記一4に説示の当裁判所の見解によつても、被告人につき恐喝の共同正犯(いわゆる承継的共同正犯)が成立することが明らかである。従つて、被告人が、Aらとの共謀によりNから金三〇万円を喝取したものと認めた原判決の結論は、結局正当であつて、前記事実の誤認の部分は、いまだ判決に影響を及ぼすことが明らかであるとはいえない。論旨は、結局、理由なきに帰する。 4 所論は、更に、(ア)A及びMのNに対する行為は、民事上の示談交渉であつて、正当な権利の行使であるとか、(イ)被告人は、Aらの脅迫行為を認識していなかつたとか、(ウ)G組事務所において、Nは、金五〇万円の支払いに応ずる旨約束していたなどとして、原認定をるる争つている。しかし、まず、右(ア)についていうと、原審において同意の上取り調べられた右Oの捜査官に対する各供述調書によれば、同女は、飲酒の上とはいえ、Nの誘いに乗つて合意の上同人と情交関係を持つたにすぎず、Aの追及にもその旨告げている事実が認められ、同女がNに強姦されたとか、Aが同女からそのように聞いていたことを前提として違法性の阻却をいう所論は、まずこの点で失当であるのみならず、かりに同女がNに強姦された場合であつても、その内縁の夫やその仲間が、Nを暴力団事務所に呼びつけた上原判示のような脅迫文言により金員の交付を迫ることが、所論のような民事上の示談交渉の名に値するものであるといえないことは明らかであり、いわゆる権利の行使として違法性を阻却されると考えることはできない。次に、(イ)についていうと、被告 付を迫ることが、所論のような民事上の示談交渉の名に値するものであるといえないことは明らかであり、いわゆる権利の行使として違法性を阻却されると考えることはできない。次に、(イ)についていうと、被告人が、当初NをG組事務所へ案内したのち、間もなく所用で外出し、M及びAらの事務所における言動を直接見聞していないことは、前認定のとおりと認められるが、そのことの故に、被告人かMらの言動を全く知り得なかつたとか、恐喝の犯意かなかつたなどといえないことは、前説示の諸点に照らし、明らかであると認められる。更に、(ウ)についていうと、被害者Nは、原審証人として、Mらから五〇万円の支払いを要求されたが、とうてい金策ができないと訴えて、三〇万円にまけてもらつた旨明言しているところ、右供述は、原審証人Sの供述によつても支えられており、所論指摘の点を考慮に容れても、右各供述の信用性に疑いがあるとは認められない。所論及び弁護人の当審弁論援用の各証拠のうち、Aの原審供述は、右各証拠と対比して措信することができず、O及びMの各検察官調書は、前記2(3)の認定の妨げになるものではなく、他に、右認定を左右するに足りる証拠はない。以上のとおりであつて、前記2(1)ないし(7)と異なる事実関係を主張する所論は、すべて採用することができない。 三控訴趣意中原判示第六の事実の事実誤認をいう論旨について論旨は、要するに、原判決は、被告人かAと共謀の上、Nが原判示第五の脅迫行為により畏怖しているのに乗じ、同人を脅迫して更に金二〇万円を喝取しようとしてその目的を遂げなかつた旨の事実を認定し、これを独立の恐喝未遂罪に問擬しているが、原判示第五の交渉において、Nは、金五〇万円の支払いに応ずる旨合意していたのであり、被告人は、同人から金三〇万円を受領したのちに、残りの二〇万円の支払 定し、これを独立の恐喝未遂罪に問擬しているが、原判示第五の交渉において、Nは、金五〇万円の支払いに応ずる旨合意していたのであり、被告人は、同人から金三〇万円を受領したのちに、残りの二〇万円の支払い方法を確認したに過ぎず、新たに金員の支払いを要求したものではない上、被告人には恐喝の故意もなかつたのであるから、恐喝未遂罪の成立するいわれはない。従つて、同罪の成立を認めた原判決は、事実を誤認したものである、というのである。 しかしながら、原判決挙示の対応関係証拠及び当審における事実取調べの結果によれば、原判示第六の犯行に至る経緯は前項(原判示第五の事実に関する事実誤認の論旨に対する判断の項)2(1)ないし(5)において、その態様は同じく(6)において認定したとおりであり、これによれば、被告人が金二〇万円の支払い要求をしていないとか、被告人に恐喝の犯意がなかつたなどとする所論の採り得ないことは、明らかなところである。なお、弁護人は当審弁論において、原判示第五の犯行の際Nが支払いの合意をした金額等につき、前記2(3)ないし(7)と異なる事実関係を前提として、原判示第五の恐喝既遂罪のほかに同第六の恐喝未遂罪の成立を認めることはできないとも主張するが、これが採用できないことは、すでに述べたところから明らかである。 原判決に、所論の事実誤認(及び、弁護人の当審弁論の指摘する法令の解釈・適用の誤り)は存せず、論旨は、理由がない。 四結論以上のとおりであつて、控訴趣意中原判示第五の事実に関する論旨は理由なきに帰し、同第六の事実に関する論旨は理由がないが、同第四の事実に関する論旨は理由があるので、その余の論旨(量刑不当の主張)について判断するまでもなく、原判決は、破棄を免れないところ、原判決は、右第四の事実をその余の事実と併合罪の関係に立つもの 、同第四の事実に関する論旨は理由があるので、その余の論旨(量刑不当の主張)について判断するまでもなく、原判決は、破棄を免れないところ、原判決は、右第四の事実をその余の事実と併合罪の関係に立つものとして被告人に対し一個の刑を科しているから、原判決は、結局、全部破棄を免れない。 よつて、刑事訴訟法三九七条一項、三八〇条、三八二条により原判決を破棄した上、同法四〇〇条但書に則り、当審において、直ちに次のとおり自判する。 (罪となるべき事実)原判決認定の各事実中、第四の末尾から四行目「その顔面を二、三回殴打す」とあるのを、「その顎を二、三回手で突き上げ」と改め、同じく末尾から三行目「よつて、……」以降同二行目「……負わせ」までを削除するほか、原判決認定の各事実と同一(ただし、第五の事実に被告人が共謀加担したのは、昭和五九年一二月二八日の段階からである。)であるから、右のとおり訂正した上、これらを引用する。 (証拠の標目)(省略)(法令の適用)原判決挙示の法条中、第四の所為に関し「刑法六〇条、二〇四条、罰金等臨時措置法三条一項一号」とあるのを、「刑法六〇条、二〇八条、罰金等臨時措置法三条一項一号」と改めるほか、原判決挙示の各法条を適用(刑種の選択を含む。)する。 (量刑の理由)本件は、当裁判所が右に認定したように、1無免許・酒酔い運転中、前方注視義務違反等の過失により対向車との衝突事故を惹起し、同車の運転者に加療約三か月間の原判示傷害を負わせながら、被害者の救護等法定の義務を尽くさず逃走したという、悪質な道路交通法違反を伴う交通人身事故、2仲間の暴力団員が激しい暴行を加えた被害者に対し、自らは何ら暴行を加える理由がなく、かつ、同人かすでに負傷しているのを知りながら、いとも簡単に仲間に同調して暴行を加えたという暴力事犯、及び 事故、2仲間の暴力団員が激しい暴行を加えた被害者に対し、自らは何ら暴行を加える理由がなく、かつ、同人かすでに負傷しているのを知りながら、いとも簡単に仲間に同調して暴行を加えたという暴力事犯、及び、3仲間の暴力団員が、内妻と情交を持つた被害者から金員を喝取しようとして同人を脅迫したのち、事情を知つて自らも喝取金の分配に与るべく仲間と共謀の上、その脅迫により畏怖している被害者から、金三〇万円を喝取し、更に二〇万円を喝取しようとして未遂に終つたという恐喝、同未遂の各事案であつて、いずれの犯行も、その手口・態様が悪質であるといわなければならない。従つて、被告人の刑責は、とうていこれを軽視することができず、被告人のこれまでの生活歴、前科前歴等記録上明らかな諸般の情状に照らすと、相当期間の実刑はやむを得ないが、記録及び当審における事実取調べの結果によつて明らかにされた共犯者との刑の権衡等の点を考慮し、主文の刑を量定した。 (裁判長裁判官野間禮二裁判官木谷明裁判官生田暉雄)

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