令和1(行コ)241 一般乗合旅客自動車運送事業事業計画変更認可処分等取消請求控訴事件

裁判年月日・裁判所
令和2年2月6日 東京高等裁判所
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判決文本文12,690 文字)

令和2年2月6日判決言渡令和元年(行コ)第241号一般乗合旅客自動車運送事業事業計画変更認可処分等取消請求控訴事件(原審・東京地方裁判所平成30年(行ウ)第149号) 主文 1 本件各控訴をいずれも棄却する。 2 控訴費用は,控訴人らの負担とする。 事実及び理由 第1 控訴の趣旨 1 原判決を取り消す。 2 本件を東京地方裁判所に差し戻す。 第2 事案の概要(以下において略称を用いるときは,原判決に同じ。) 1 本件事案の概要は,原判決「事実及び理由」第2の柱書に記載のとおりであるから,これを引用する。 ただし,原判決2頁3行目末尾に行を改めて以下のとおり加える。 「 原審が控訴人らの訴えをいずれも却下したため,控訴人らがこれを不服として控訴した。」 2 「関係法令等の定め」,「前提事実」,「争点」及び「争点に関する当事者の主張の要旨」は,後記3を加えるほかは,原判決「事実及び理由」第2の1ない し4に記載のとおりであるから,これを引用する。 ただし,16頁21行目の「しかし,」の後に,以下のとおり加える。 「本件処分1は,同法15条1項に基づく一般旅客自動車運送事業の事業計画認可処分であるところ,同法30条4項は,そもそも,一般旅客自動車運送事業の許可や事業計画変更認可を受け,当該事業を営む者に対して,同条1 項ないし3項に規定する「行為」の停止又は変更を命じることができるとす る規定であって,本件処分1の根拠規定ではないから,控訴人らの上記主張は失当である。さらに,」 3 控訴人らの当審における主張⑴ 本件処分1の取消しの訴えの原告適格について以下に述べるとおり,社会経済情勢の変化に伴う関係法令の成立や,道路 運送法に基 張は失当である。さらに,」 3 控訴人らの当審における主張⑴ 本件処分1の取消しの訴えの原告適格について以下に述べるとおり,社会経済情勢の変化に伴う関係法令の成立や,道路 運送法に基づく各制度の存在に照らすと,道路運送法の趣旨・目的は,地域公共交通網を確保し,これを維持・発展させることであるところ,地域公共交通網は,事業者がなくては成立し得ないことから,同法は,単に利用者の利益を保護するだけではなく,事業者が運行する路線を安定的かつ継続的に維持することを内容とする個別具体的な営業上の利益を保護する趣旨を含む ものと解される。 したがって,控訴人らは,本件処分1の取消しの訴えの原告適格が認められる。 ア道路運送法15条1項の趣旨について道路運送法1条の目的規定には,平成12年改正後も「道路運送の総 合的な発達を図」るとの文言が残されているところ,道路運送の総合的な発達のためには,道路運送事業者の安定的な経営が確保されることが不可欠である。また,上記改正前の「道路運送事業の適正な運営及び公正な競争を確保するとともに」との文言は,上記改正により「道路運送事業の運営を適正かつ合理的なものとする」との文言に修正されたとこ ろ,同法1条の「道路運送事業の運営を適正かつ合理的なものとし(中略)道路運送の総合的な発達を図」ることには,公正な競争の確保と道路運送に関する秩序の確立を含むといえるから,同法15条1項は,道路運送事業者において運行する路線を存続するための安定的かつ継続的な事業を行うことを内容とする営業上の利益はなおも保護する趣旨であ る。 道路運送法が,旅客の利便を阻害していることを理由とする改善命令制度(同法31条)とは別に,事業者の行為である「競争」を対象として,同法 上の利益はなおも保護する趣旨であ る。 道路運送法が,旅客の利便を阻害していることを理由とする改善命令制度(同法31条)とは別に,事業者の行為である「競争」を対象として,同法30条2項において「一般旅客自動車運送事業の健全な発達を阻害する結果を生ずるような競争をしてはならない」と定めており,この文言が,平成12年改正及び平成18年改正を経ても,特段変更され ていないことからすれば,同法は,上記各改正後も,事業者の公正な競争の確保や道路運送の秩序の確立との趣旨を維持しているものと解されるから,既存事業者の営業上の利益を個別的に保護する趣旨を含むものである。 地域協議会及び地域公共交通会議の存在並びにコミュニティバスの導 入の際の留意事項に照らせば,道路運送法は,地域の公共交通網の維持を念頭に置いているといえるから,既存の一般旅客自動車運送事業者がその運行する路線を維持することを内容とする営業上の利益を具体的に保護する趣旨を含むものと解される。 イ関係法令について 道路運送法と目的を共通にする関係法令である交通政策基本法は,事業者がその事業の安定的な運営をすることによって,地域における公共交通網を確保し,これを維持することを趣旨・目的としている(同法16条,21条)から,同法は,公共交通事業者が安定的かつ継続的な事業を行う利益を保護する趣旨を含むものと解される。 道路運送法上に根拠のある地域協議会や地域公共交通会議は,いずれも生活交通の確保や地域交通ネットワークの構築を目的とするものであり,活性化法が定める地域公共交通網形成計画や同計画に定められる道路運送高度化事業や地域公共交通再編事業施策は,いずれも社会経済情勢を踏まえて,地域公共交通網を確保し,維持していく仕組みであって あり,活性化法が定める地域公共交通網形成計画や同計画に定められる道路運送高度化事業や地域公共交通再編事業施策は,いずれも社会経済情勢を踏まえて,地域公共交通網を確保し,維持していく仕組みであって, 目的において共通するから,活性化法は,道路運送法と目的を共通にす る関係法令として,その趣旨・目的を参酌しなければならないところ,活性化法の目的と同法が定める諸手続は,地域公共交通網の確保や維持のため,その担い手である公共交通事業者の重要性を認めるとともに,その意見を相当程度に重く尊重するものであることからすると,同法は,公共交通事業者が安定的かつ継続的な事業を行う利益を保護する趣旨を 含むものと解される。 ウ本件処分1の審査基準についてクリームスキミング的運行の規制には,事業の健全な発達を阻害する行為を排除する趣旨を含み,道路運送法6条2号の「当該事業の遂行上適切な計画を有するものであること」の判断に際しては,既存の一般旅客自動 車運送事業者がその運行する路線を維持することを内容とする営業上の利益が考慮されるといえるから,道路運送法は,このような事業者の利益を具体的に保護する趣旨を含むものと解される。 エ手続参加の機会の保障について一般乗合旅客運送事業者について,地域協議会及び地域公共交通会議に おける協議への関与が保障され,活性化法における手続保障がされていることに照らせば,道路運送法及びこれと目的を共通にする活性化法は,地域において公共交通網を構成する各路線を運行する既存の一般旅客自動車運送事業者がこれらの路線を維持することを内容とする営業上の利益を保護する趣旨を含むものといえる。 ⑵ 本件処分2の取消しの訴えの原告適格について以下に述べるとおり,適正原価及び適正利潤の 者がこれらの路線を維持することを内容とする営業上の利益を保護する趣旨を含むものといえる。 ⑵ 本件処分2の取消しの訴えの原告適格について以下に述べるとおり,適正原価及び適正利潤の審査基準の趣旨,不当な競争行為を排除する制度,運賃の上限の認可に関し競争関係にある事業者の手続への参加が保障されていることは,いずれも利用者の利益の保護と事業者の健全な経営の確保を目的とする点で整合し一貫しているものであり,一般 乗合旅客自動車運送事業を取り巻く現状とこれに伴って制度化された地域公 共交通網の確保や維持を目的とする地域公共交通会議や活性化法の仕組みを併せ考えると,道路運送法が,上限運賃認可処分に際し,地域公共交通網の担い手である一般乗合旅客自動車運送事業者の路線を安定的かつ継続的に運行する営業上の利益を具体的に保護していることは明らかである。 したがって,控訴人らは,本件処分2の取消しの訴えの原告適格が認めら れる。 ア道路運送法9条の運賃認可制度の趣旨について 道路運送法は,地域公共交通網の確保や維持を目的とし,利用者の利益の保護や利便の向上を図るだけではなく,地域公共交通網の担い手である一般乗合旅客自動車運送事業者による路線の安定的かつ継続的な事 業を脅かす競争行為を排除する手段を設けることで,一般乗合旅客自動車運送事業者の営業上の利益を保護しているものと解される。 上限運賃等について適正原価及び適正利潤の審査基準をもって審査する趣旨は,適正な原価計算をせず又は適正な利潤を加えずに不当に低額な運賃設定をすることを防止して事業者の健全な経営を確保することを 含むものと解される。 上限運賃等認可処分を地域ごとに審査するのも,当該地域における公共交 を加えずに不当に低額な運賃設定をすることを防止して事業者の健全な経営を確保することを 含むものと解される。 上限運賃等認可処分を地域ごとに審査するのも,当該地域における公共交通網への影響を考慮するものである。 実施運賃を対象とする変更命令制度においては,その要件として,「社会的経済的事情に照らして著しく不適切であり,旅客の利益を阻害する おそれがあるものであるとき」とは別に「他の一般旅客自動車運送事業者との間に不当な競争を引き起こすおそれがあるものであるとき」が定められていることからすると,既存の一般旅客自動車運送事業者にとっては,不当に低額な運賃設定による運行は許されないという意味でその安定的かつ継続的な事業活動を行う利益が保障されているといえるから, 道路運送法は,既存の一般旅客自動車運送事業者の営業上の利益を具体 的に保護する趣旨を含むものといえる。 イ本件処理方針について 本件処理方針は,運賃の制定形態は自由としながら,既存事業者が運行する路線に競合参入する場合に,例外的に既存事業者と同一の運賃制定形態としているから,既存の一般旅客自動車運送事業者への影響に一 定の配慮をする趣旨であり,その営業上の利益を保護する趣旨を含むものと解される。 本件処理方針は,参入事業者の上限運賃の水準について,「原則として,既存事業者と同一の制定形態による場合は,運賃の適用方法を含め当該上限運賃と同一」とするものとされているところ,既存事業者と同一の 運賃水準とすることは,差し当たっては不当な競争を引き起こすおそれがないことをも根拠とするものであるから,本件処理方針は,既存の一般旅客自動車運送事業者の営業上の利益を保護する趣旨を含むものと解さ 運賃水準とすることは,差し当たっては不当な競争を引き起こすおそれがないことをも根拠とするものであるから,本件処理方針は,既存の一般旅客自動車運送事業者の営業上の利益を保護する趣旨を含むものと解される。 ウ道路運送法89条に基づく利害関係人の意見聴取の手続について 道路運送法89条1項1号に基づく意見聴取手続は,不当な競争を引き起こすおそれのある低額の運賃等を排除するための手続であって,事業者の健全な経営を確保するための手続であるから,道路運送法は,既存の一般旅客自動車運送事業者の安定的かつ継続的な事業活動を行う営業上の利益を具体的に保護する趣旨を含むものと解される。 地域公共交通会議や活性化法に基づく地域公共交通網形成計画が,運賃等を協議事項の対象としていることを併せ考えても,本件処分2において,地域公共交通網の担い手である一般旅客自動車運送事業者の営業上の利益が考慮されるべきことは疑いがない。 第3 当裁判所の判断 1 当裁判所も,控訴人らの本件訴えをいずれも却下すべきものと判断する。そ の理由は,以下のとおり補正し,後記2を加えるほかは,原判決「事実及び理由」第3の1及び2に記載のとおりであるから,これを引用する。 ⑴ 42頁10行目の「保障されているということができる」を「保障されているということができるため,道路運送法は既存事業者の利益を保護する趣旨を含むものと解される」と改める。 ⑵ 43頁16行目から17行目の「保護する趣旨の」を「保護する趣旨を含むものと解すべき根拠となる」と改める。 ⑶ 49頁15行目の「弁論の全趣旨によれば,これは」を「これは,本件処理方針(運賃等上限認可。乙20の別紙2第1,第7.⑴)において,上限運賃等の 含むものと解すべき根拠となる」と改める。 ⑶ 49頁15行目の「弁論の全趣旨によれば,これは」を「これは,本件処理方針(運賃等上限認可。乙20の別紙2第1,第7.⑴)において,上限運賃等の設定・変更に係る運賃原価及び収入の算定に際しての運送収入の算 定が原価計算期間中の輸送人員を基礎に行うものとされているところ,」と,同20行目の「認められ」を「解され」とそれぞれ改める。 ⑷ 51頁6行目の「保障されているということができる」を「保障されているということができるため,道路運送法は既存事業者の利益を保護する趣旨を含むものと解される」と改める 2 控訴人らの当審における主張に対する判断⑴ 控訴人らは,前記第2の3⑴のとおり,同アないしエの理由を挙げて,控訴人らには本件処分1の取消しを求める訴えの原告適格が認められる旨主張する。 しかし,上記アないしエは,次のとおり,いずれも理由がないから,控訴 人らの上記主張を採用することはできない。 ア上記アについて 同について平成18年改正後の道路運送法1条は,「道路運送事業の運営を適正かつ合理的なものとすることにより,道路運送の利用者の利益を保護す るとともに,道路運送の総合的な発達を図り,もって公共の福祉を増進 することを目的とする」旨定めており,道路運送事業の適正かつ合理的な運営を,道路運送の利用者の利益を保護するとともに,道路運送の総合的な発達を図り,もって公共の福祉を増進するとの目的を達成するための手段として位置づけていることからすれば,同条の規定をもって直ちに同法が道路運送事業者の安定的な経営の確保を保護しているものと 解するのは困難である。 また,「道路運送の総合的な発達を図る」ことに,公正な競争の ていることからすれば,同条の規定をもって直ちに同法が道路運送事業者の安定的な経営の確保を保護しているものと 解するのは困難である。 また,「道路運送の総合的な発達を図る」ことに,公正な競争の確保と道路運送に関する秩序の確立が含まれるかどうかはともかくとして,上記定めをもって,事業者が運行する路線を存続するための安定的かつ継続的な事業を行うことを内容とする営業上の利益が,一般的公益の中に 吸収解消されないで個別的利益として保護されているものと解することも困難である。 したがって,同法1条の規定を根拠にして,既存事業者が運行する路線を存続するための安定的かつ継続的な事業を行うことを内容とする営業上の利益を保護する趣旨が同法15条1項に含まれるものと解するこ とはできない。 同について道路運送法30条2項の規定をもって,同法が既存事業者の営業上の利益を個別的に保護する趣旨を含むものと解することができないことは,引用に係る原判決「事実及び理由」第3の1⑵ウaにおいて説示する とおりであり,このことは,同項の表題が「公衆の利便を阻害する行為の禁止等」とされていることからも明らかである。 同についてa 地域協議会は,平成12年改正により乗合バス事業の需給調整規制が廃止されたことに伴い,衆参両院の附帯決議を受けて,地域住民の 生活交通の確保に関する協議をするための機関としての整備が図られ たものであり(甲77),道路運送法に設置の根拠を置く組織とはいえないし,その整備は,平成12年改正による規制緩和に伴う弊害に配慮したものと解されるのであって,もとより平成12年改正による道路運送法の基本理念自体を変更するものではないから,そのような地域協議会の存在をもって,既存 平成12年改正による規制緩和に伴う弊害に配慮したものと解されるのであって,もとより平成12年改正による道路運送法の基本理念自体を変更するものではないから,そのような地域協議会の存在をもって,既存の一般旅客運送事業者が運行する路線 を維持することを内容とする営業上の利益を個別的利益として保護する趣旨が同法に含まれるものと解することはできない。 b 地域公共交通会議は,平成18年改正の際の衆参両院の附帯決議を受けて整備が図られた機関であり,道路運送法に設置の根拠を置く組織とはいえないし,その目的は,地域の需要に即した乗合運送サービ スが提供されることにより地域住民の交通利便の確保・向上に寄与することにある(甲29)から,そのような地域公共交通会議の存在をもって,既存の一般旅客運送事業者が運行する路線を維持することを内容とする営業上の利益を個別的利益として保護する趣旨が道路運送法に含まれるものと解することはできない。 c コミュニティバスの導入に関するガイドラインは,地域公共交通会議におけるコミュニティバスの導入に関する協議に当たって留意すべき事項として国土交通省の考え方を示したものである(甲80)から,上記bと同様の目的の下にあるものと解される。 なお,上記ガイドラインにおいては,コミュニティバスの導入に当 たって,路線バスとの競合や他の旅客自動車運送事業者との間の不当競争を回避する旨が定められているが,コミュニティバスが公的資金によって支えられているものであって,自立運営を原則とする路線バスを補完するものとの位置づけがされていることによるものであると解される(甲80別添2)から,上記定めの趣旨が当然に民間の運送 事業者間の関係にまで及ぶものではない。 したがって,上記ガイドラ のとの位置づけがされていることによるものであると解される(甲80別添2)から,上記定めの趣旨が当然に民間の運送 事業者間の関係にまで及ぶものではない。 したがって,上記ガイドラインの存在をもって,既存の一般旅客運送事業者が運行する路線を維持することを内容とする営業上の利益を個別的利益として保護する趣旨が道路運送法に含まれるものと解することはできない。 イ上記イについて 同について交通政策基本法は,1条に「この法律は,交通に関する施策について,基本理念及びその実現を図るのに基本となる事項を定め,並びに国及び地方公共団体の責務等を明らかにすることにより,交通安全対策基本法と相まって,交通に関する施策を総合的かつ計画的に推進し,もって国 民生活の安定向上及び国民経済の健全な発展を図ることを目的とする。」と定めているから,交通政策基本法は,国民生活の安定向上及び国民経済の健全な発展を図ることを目的として,交通に関する施策について,その基本理念等を定めるとともに,国及び地方公共団体の責務等を明らかにするものといえる。 また,控訴人の指摘する同法16条及び21条も,国民生活の安定向上及び国民経済の健全な発展を図るために,交通手段の確保等に必要な施策や運送事業等の基盤強化等の施策を講ずることを国に義務付けているにすぎない。 したがって,同法が公共交通事業者において安定的かつ継続的な事業 を行う利益を個別的利益として保護する趣旨を含むものとは解されない。 同について道路運送法は,平成12年改正及び平成18年改正を経た1条において,「貨物自動車運送事業法と相まって,道路運送事業の運営を適正かつ合理的なものとし,並びに道路運送の分野にお 同について道路運送法は,平成12年改正及び平成18年改正を経た1条において,「貨物自動車運送事業法と相まって,道路運送事業の運営を適正かつ合理的なものとし,並びに道路運送の分野における利用者の需要の多様 化及び高度化に的確に対応したサービスの円滑かつ確実な提供を促進す ることにより,輸送の安全を確保し,道路運送の利用者の利益の保護及びその利便の増進を図るとともに,道路運送の総合的な発達を図り,もって公共の福祉を増進することを目的とする。」と定めるとともに,平成12年改正により,一般乗合旅客自動車運送事業についての需給調整規制を廃止している。 これに対し,活性化法1条は,「近年における急速な少子高齢化の進展,移動のための交通手段に関する利用者の選好の変化により地域公共交通の維持に困難を生じていること等の社会経済情勢の変化に対応し,地域住民の自立した日常生活及び社会生活の確保,活力ある都市活動の実現,観光その他の地域間の交流の促進並びに交通に係る環境への負荷の低減 を図るための基盤となる地域における公共交通網(以下「公共交通網」という。)の形成の促進の観点から地域公共交通の活性化及び再生を推進することが重要となっていることに鑑み,交通政策基本法(平成二十五年法律第九十二号)の基本理念にのっとり,地方公共団体による地域公共交通網形成計画の作成及び地域公共交通特定事業の実施に関する措置 並びに新地域旅客運送事業の円滑化を図るための措置について定めることにより,持続可能な地域公共交通網の形成に資するよう地域公共交通の活性化及び再生のための地域における主体的な取組及び創意工夫を推進し,もって個性豊かで活力に満ちた地域社会の実現に寄与することを目的とする。」と定めている。 そうする るよう地域公共交通の活性化及び再生のための地域における主体的な取組及び創意工夫を推進し,もって個性豊かで活力に満ちた地域社会の実現に寄与することを目的とする。」と定めている。 そうすると,道路運送法が,道路運送事業者の自由な競争により,道路運送利用者の需要の多様化及び高度化に的確に対応したサービスの提供を通じてその利益保護等を図ることを基本理念とするものであるのに対し,活性化法は,社会経済情勢の変化を踏まえ,道路運送事業者の自由な競争に委ねるだけでは道路運送利用者の利便が図られないことにな る事態に配慮し,地方公共団体が中心となって地域公共交通の在り方に ついての調整を図ることを基本理念とするものと解されるから,少なくとも目的の主要部分が共通するものとは解し難いことは,引用に係る原判決「事実及び理由」第3の1⑵ウb⒞において説示するとおりであり,むしろ,活性化法は,道路運送法の下での運送事業者間の自由な競争を前提として,これに伴う弊害に対する対策を定めるものと位置づけ られるから,このような活性化法の存在をもって,道路運送法が,既存の道路運送事業者において運行する路線を存続するための安定的かつ継続的な事業を行うことを内容とする営業上の利益を個別的利益として保護する趣旨を含むものと解することはできない。 活性化法に基づき作成された地域公共交通網形成計画に道路運送高度 化事業又は地域公共交通再編事業に関する事項が定められたときに,所定の要件を満たせば,道路運送法の特例を認めるとの活性化法の規定の仕方も,上記理解と整合するものである。 ウ同ウについてクリームスキミングは,系統の競合を排除するものではなく,当該系統 における不当な競争を排除するものであり,その趣旨は,特定 上記理解と整合するものである。 ウ同ウについてクリームスキミングは,系統の競合を排除するものではなく,当該系統 における不当な競争を排除するものであり,その趣旨は,特定の時間帯又は曜日に運行回数を集中させたクリームスキミング的運行で参入がなされた場合に,既存運行事業者はオフピーク時間帯等の運行の打切りや減便を余儀なくされるなど,多数のバス利用者に輸送サービスレベルの低下を招くおそれがあるからとされている(甲51)から,既存の一般旅客自動車 運送事業者がその運行する路線を維持することを内容とする営業上の利益を個別的利益として保護する趣旨を含むものと解することはできない(乙28・4頁参照)。 エ同エについて地域協議会及び地域公共交通会議の趣旨・目的,活性化法の目的と道路 運送法との関係は,前記アa,b及びイのとおりであって,これらに おいて一般乗合旅客運送事業者に対する一定の手続保障がされていることをもって,道路運送法が,既存の一般旅客自動車運送事業者がその運行する路線を維持することを内容とする営業上の利益を個別的利益として保護する趣旨を含むものと解することはできない。 ⑵ 控訴人らは,前記第2の3⑵のとおり,同アないしウの理由を挙げて,控 訴人らには本件処分2の取消しを求める訴えの原告適格が認められる旨主張する。 しかし,上記アないしウは,次のとおり,いずれも理由がないから,控訴人らの上記主張を採用することはできない。 ア上記アについて 同について道路運送法の趣旨・目的は,前記⑴イにおいて説示するとおりであって,同法が,地域公共交通網の確保や維持を目的とし,地域公共交通網の担い手である一般乗合旅客自動車運送事業者による路線の安定的 て道路運送法の趣旨・目的は,前記⑴イにおいて説示するとおりであって,同法が,地域公共交通網の確保や維持を目的とし,地域公共交通網の担い手である一般乗合旅客自動車運送事業者による路線の安定的かつ継続的な事業が脅かされない営業上の利益を個別的利益として保護し ているものと解すべき根拠はない。 同について上限運賃等設定認可の制度の趣旨は,引用に係る原判決「事実及び理由」第3の2⑴アにおいて説示するとおり,一般乗合旅客自動車運送事業者が不当に高い運賃等を設定して過剰な利潤を得ることを防止し, 当該事業の利用者の利益を保護することにあると解されるから,上限運賃等の審査の趣旨に不当に低額な運賃設定を防止して事業者の健全な経営を確保する趣旨を含むと解することはできない。 また,上限運賃等設定認可の審査が地域ごとに行われるのは,地域により適正な原価が異なる場合があるためであることも,同イにおいて 説示するとおりであって,これをもって,上記審査において地域公共交 通網に対する影響が考慮されていると解することもできない。 同について上限運賃等認可の制度と,これとは異なり実施運賃等を対象とする変更命令制度を一体のものとして捉えて,上限運賃等認可の制度が不当に低額な運賃設定による運行を許さないという意味で既存の一般旅客自動 車運送事業者の事業上の利益を保護する趣旨を含むものと解することが困難であることは,引用に係る原判決「事実及び理由」第3の2⑴イにおいて説示するとおりである。 イ同イについて 同について 本件処理方針において,参入事業者が既存事業者の運行する路線に参入する場合に例外的に既存事業者と同一の運賃制定形態とされているのは,その例外要 同イについて 同について 本件処理方針において,参入事業者が既存事業者の運行する路線に参入する場合に例外的に既存事業者と同一の運賃制定形態とされているのは,その例外要件の定め方からすれば,利用者の混乱の回避や,利用者の安全及び周辺道路の交通安全の確保にあるものと解されることは,引用に係る原判決「事実及び理由」第3の2⑴イ(補正後のもの)にお いて説示するとおりである。 なお,当該地域の路線について運賃の上限の賃率の認可を受けている事業者については,既存事業者と同一の運賃制定形態による必要はないとされているが,そのような事業者については改めて運賃制定形態を定める必要がないことによるものと解されるから,この点は上記判断を左 右するものではない。 同について本件処理方針において,参入事業者の上限運賃の水準について「原則として,既存事業者と同一の制定形態による場合は,運賃の適用方法を含め当該上限運賃と同一」とするものと定められているのは,引用に係 る原判決「理由」第3の2⑴イ(補正後のもの)に説示するとおり, 参入事業者についてはその性質上輸送人員の人員数の予測が困難であるために,差し当たり既存事業者の上限運賃と同一とすることが相当との趣旨であると解される。 控訴人らは,上記定めが差し当たっての不当な競争を引き起こすおそれがないことをも根拠とするものである旨主張するが,そのように解す べき根拠はない。 ウ同ウについて 同について道路運送法89条1項に基づく意見聴取手続は,上限運賃の認可に関して,意見聴取の手続を定めるものであり,これをもって低額運賃等を 排除するための手続であると解することはできないから,上記手続をも 路運送法89条1項に基づく意見聴取手続は,上限運賃の認可に関して,意見聴取の手続を定めるものであり,これをもって低額運賃等を 排除するための手続であると解することはできないから,上記手続をもって,同法が,既存の一般旅客自動車運送事業者の安定的かつ継続的な事業活動を行う営業上の利益を個別的利益として保護する趣旨を含むものと解することはできない。 同について 地域公共交通会議の目的は,前記2⑴アbのとおり,地域住民の交通利便の確保・向上に寄与することにあるから,同会議における協議事項に「運賃及び料金」が含まれており,その会議の構成員に一般旅客自動車運送事業者等が含まれていることをもって,本件処分2において,一般旅客自動車運送事業者の営業上の個別的利益の保護が考慮されるべ きものとはいえない。 また,活性化法に基づく地域公共交通網形成計画の作成に当たり活用が望ましいとされる協議会においては,運賃・料金等についての具体的協議がされることが予定されており(乙46・21,23頁),活性化法においては,道路運送法9条1項の認可の特例が定められているが,活 性化法と道路運送法の関係は,前記2⑴イのとおりと解されるから, 地域公共交通網形成計画において運賃等が協議事項の対象となっていることをもって,本件処分2において,一般旅客自動車運送事業者の営業上の個別的利益の保護が考慮されるべきものとはいえない。 3 よって,控訴人らの訴えをいずれも却下した原判決は相当であって,本件控訴は理由がないからいずれも棄却することとし,主文のとおり判決する。 東京高等裁判所第4民事部 裁判長裁判官菅野雅之 裁判官今岡健 主文 からいずれも棄却することとし,主文のとおり判決する。 理由 東京高等裁判所第4民事部 裁判長裁判官菅野雅之 裁判官今岡健 裁判官大澤知子

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