【DRY-RUN】主 文 本件控訴を棄却する。 当審における未決勾留日数中八〇日を原判決の本刑に算入する。 理 由 本件控訴の趣意並びにこれに対する答弁は、被告人本人
主文 本件控訴を棄却する。 当審における未決勾留日数中八〇日を原判決の本刑に算入する。 理由 本件控訴の趣意並びにこれに対する答弁は、被告人本人及び弁護人渡辺伝次郎提出の各控訴趣意書並びに検察官丸山源八提出の答弁書記載のとおりであるから、いずれも、これを引用する。そして、右控訴の趣意に対し、次のとおり判断する。 被告人本人の控訴趣意中事実誤認を主張する部分及び弁護人の控訴趣意第一点(事実誤認ないしは法律の解釈・適用の誤り)について所論は、いずれも、原判示第一の強盗致傷の事実に関するものであり、被告人の所論は、被告人が原判示A方よりあわてて逃げ出す際、原判示Aにぶつかり同女を転倒させた事実はあるが、同女に対し原判示のような暴行を加えた事実はないのであるから、その事実があるものとして強盗致傷罪の成立を認めた原判決には重大な事実の誤認があるというのであり、弁護人の所論は、被告人がAに対し原判示のとおりの暴行を加えた事実があつても、刑法二三八条が逮捕を免れるため暴行または脅迫を為したるときは強盗をもつて論ずるというのは、窃盗犯人がこれを直接に逮捕しようとする者に対し暴行等を加えた場合に限り強盗をもつて論ずるとする趣旨であると解すべきところ、本件の場合は、A自身は恐怖心のため専ら屋外に逃げ出すことを目的としていたものであつて、被告人を逮捕しようとしていたわけでもなければ屋外に出たうえ第三者をして被告人を逮捕させようとしたわけでもなく、被告人としても、被告人の方がAよりも先に表に出て逃げるために同女に対し暴行を加えたに過ぎないのであるから、強盗をもつて論ずることはできない場合である、従つて、準強盗致傷罪の成立を是認した原判決は、判決に影響を及ぼすことが明らかな事実を誤認したか、法律の解釈、適 対し暴行を加えたに過ぎないのであるから、強盗をもつて論ずることはできない場合である、従つて、準強盗致傷罪の成立を是認した原判決は、判決に影響を及ぼすことが明らかな事実を誤認したか、法律の解釈、適用を誤つた違法のあるものであるというのである。 しかし、原判決の掲げる関係証拠によれば、原判示Aは、自宅奥六畳間入口で被告人と出会い、被告人を盗窃犯人と知るとともに恐怖心にかられ、屋外に逃げ出そうとして土間を這い回わるなど必死の努力をしていたものであつて、被告人を逮捕しようとしたものではないには違いないが、同女が被告人よりも先に屋外に逃げ出せば、近隣の者に事情を話して助けを求め、近隣の者等が被告人を逮捕に来ることは、当然に予想されたことであり、被告人としても、そのことを予想しおそれたればこそ同女よりも先に逃げ出そうと考え、同女に対し原判示のとおりの暴行を加えたことを、これを要するに、原判示のとおり、「同女が屋外に出て隣人に騒ぎ立てることを防ぎ、自己の逮捕を免れるため、屋外に出ようとする同女に対し、その背中に抱きつき、その口を手で塞ぎ、土間に押し倒し馬乗りとなつて押えつけるなどの暴行を加え、」その結果として傷害を負わせたものであることを認めることができ、記録を検討しても、事実を誤認した点のあることは認めることができない。 <要旨>そして、刑法二三八条制定の趣旨にかんがみれば、原判示事実のように、他人の家屋内に入つて金品を物色</要旨>中、たまたま外出先から帰宅した家人に発見され、この家人が屋外に逃げ出そうとした場合に、この家人が屋外に出て騒ぎ立て、近隣の者等によつて自己が逮捕される事態を生ずるのを免れるために、その家人に対しその反抗を抑圧するに足りる程度の暴行を加えた所為は、右の者において自ら犯人を逮捕しようとする行為に出た事実がない場合にお 隣の者等によつて自己が逮捕される事態を生ずるのを免れるために、その家人に対しその反抗を抑圧するに足りる程度の暴行を加えた所為は、右の者において自ら犯人を逮捕しようとする行為に出た事実がない場合においても、前記法条にいう逮捕を免れるため暴行を為したる場合にあたるというべきであるから、刑法二四〇条前段の強盗致傷罪の成立を是認した原判決には、なんら法律の解釈適用を誤つた違法は存しない。 論旨は、いずれも、理由がない。 弁護人の控訴趣意第二点(採証の法則違反及び法令の解釈、適用の誤り)について所論は、原判決が、前記Aに対し全治五日間の右大腿部、右膝部挫傷の傷害を負わせたと認定し、刑法二四〇条前段の規定を適用したのに対し、右は証拠価値のない診断書を証拠として、生理的、医学的には傷害といい得ても、刑法二四〇条前段の傷害にはあたらないものをこれにあたるとした違法があると主張するものである。 しかし、原判決が証拠として掲げる医師B作成の診断書は、その診断欄の用語に必ずしも適切ではない用語が使用されてはいるが、医師がその専門的知識に基づいて傷害と認められる積極的所見のあること等を記載したものであることは疑いがなく、これを信用できないというべき理由を発見することができない。そして、右診断書及びAの司法警察員に対する昭和四五年一一月一一日付供述調書を総合すれば、被害者Aは、一一月一一日B医師の診断を受けただけで、その後医師の治療を受けたことがなかつたには違いないが、その傷害というのは、右膝の表側の皮膚が黒ずみ、右大腿部の表裏二カ所には押えると筋肉から骨まで突くような痛みがあり、受傷当日は一日破をひいていたというのであつて、これが、暴行に当然に随伴する肉体的変化の程度を超えて生理的機能を不良に変化させたものであり、通常人ならば医師の手当、治療を受け 突くような痛みがあり、受傷当日は一日破をひいていたというのであつて、これが、暴行に当然に随伴する肉体的変化の程度を超えて生理的機能を不良に変化させたものであり、通常人ならば医師の手当、治療を受けてもなんら不思議とするに足りない程度のものであつたことを認めることができるのであるから、とく別に重大な傷害ではないとしても、これを刑法二四〇条前段の傷害にあたらないということはできない。 論旨は理由がない。 被告人本人の控訴趣意中量刑不当を主張する部分及び弁護人の控訴趣意第四点(第三点の誤記と認める、量刑不当)について所論は、いずれも、原判示第一の所為が強盗致傷罪ではなく、窃盗未遂罪と傷害罪もしくは暴行罪の併合罪として処断すべきものであることを前提として、原判決の懲役三年六月の刑は重きに過ぎて不当であるというにあるが、その前提の容れることのできないことは、前記のとおりであり、記録を精査して、これにあらわれた本件各犯行の動機、原因、具体的態様、被告人の年令、経歴、職業、家庭の事情、犯行後の事情、その他各罪の法定刑等にかんがみれば、前科等のないこと、被告人の実弟の尽力により各被害者との間に示談の成立していること、家庭の実情等有利な諸事情もあるにしても、原判決がとくに酌量減軽をして定めた懲役三年六月の刑は、やむを得ないものというのほかはなく、これを不当であるということはできないから、論旨は、いずれも、理由がない。 以上の次第で、本件控訴はその理由がないから、刑事訴訟法三九六条によりこれを棄却すべきものとし、刑法二一条により当審における未決勾留日数中八〇日を原判決の本刑に算入し、当審における訴訟費用は、刑事訴訟法一八一条一項但書を適用して被告人にこれを負担させないことと定め、主文のとおり判決する。 (裁判長判事江里口清雄判事上野敏判事中 を原判決の本刑に算入し、当審における訴訟費用は、刑事訴訟法一八一条一項但書を適用して被告人にこれを負担させないことと定め、主文のとおり判決する。 (裁判長判事江里口清雄判事上野敏判事中久喜俊世)
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