平成19(ネ)10061 特許権譲渡対価請求控訴事件

裁判年月日・裁判所
平成20年2月21日 知的財産高等裁判所 3部 判決 控訴棄却 東京地方裁判所 平成17(ワ)2997
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判決文本文23,761 文字)

- 1 -平成20年2月21日判決言渡平成19年(ネ)第10061号特許権譲渡対価請求控訴事件(原審・東京地方裁判所平成17年(ワ)第2997号)平成19年12月12日口頭弁論終結判決控訴人・被控訴人(以下「1審原告」という。)X同訴訟代理人弁護士木下洋平控訴人・被控訴人(以下「1審被告」という。)株式会社東芝同訴訟代理人弁護士竹田稔同川田篤同補佐人弁理士玉城健主文 1審原告及び1審被告の各控訴をいずれも棄却する。 1審原告及び1審被告の各控訴に係る控訴費用は,各自の負担とする。 事実及び理由 第1当事者の求めた裁判 1審原告(1)原判決を次のとおり変更する。 1審被告は,1審原告に対し,金5000万円及びこれに対する平成17年2月24日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 (2)訴訟費用は第1,2審とも1審被告の負担とする。 1審被告(1)原判決中1審被告敗訴部分を取り消す。 (2)1審原告の請求を棄却する。 - 2 -(3)訴訟費用は第1,2審とも1審原告の負担とする。 第2事案の概要本件は,1審被告の従業員であった1審原告が,1審被告に対し,「光電面及びその形成方法」についての特許権(日本国特許権,米国特許権,ヨーロッパ(ドイツ,イギリス,フランス)特許権,中国特許権及び韓国特許権)に係る発明につき,1審被告在職中に単独で発明したものと主張して,特許法35条3項(平成16年法律第79号による改正前のもの。米国特許権,ヨーロッパ特許権,中国特許権及び韓国特許権については,同項の類推適用)に基づいて相当の対価の支払を受ける権利の一部請求として5000万円及びこれに対する訴状送達の日の翌日以降の遅延損害金の支払を求めた事案である。 原判決は 権及び韓国特許権については,同項の類推適用)に基づいて相当の対価の支払を受ける権利の一部請求として5000万円及びこれに対する訴状送達の日の翌日以降の遅延損害金の支払を求めた事案である。 原判決は,1審原告の請求を207万1574円及びこれに対する訴状送達の日の翌日以降の遅延損害金の支払を求める限度で認容し,その余を棄却したため,当事者双方が,これを不服として,各控訴を提起した。 当事者の主張は,次のとおり付加・訂正するほか,原判決の「事実及び理由」の「第2事案の概要」の「1前提となる事実等」,「2争点」及び「3争点に関する当事者の主張」のとおりであるから,これを引用する(ただし,原判決2頁24行目「被告」の直後に「(ただし当時の名称は「東京芝浦電機株式会社」である。)」を加え,同8頁18行目「登録保証」を「登録補償」に訂正する。)。 なお,略語については,当裁判所も原判決と同一のものを用いる。 1審原告の主張(当審における補足)(1)本件発明の発明者(争点1)について本件発明の本質的部分は,光電面の主成分であるアルカリ金属がCsI入力蛍光面側に移動するという技術課題を,下地膜で解決することであるところ,本件発明は,最初の下地膜の開発,発明の着想,発明の完成まで一貫して1審原告のみによって行われた1審原告の単独発明である。 - 3 -ア1審原告による下地膜の開発1審原告は,光電面の主成分であるアルカリ金属がCsI入力蛍光面側に移動するという技術課題を解決するため,昭和50年7月ころ,下地膜(アルミニウムの酸化物)の研究に着手した。また,1審原告は,光電面そのものと,光電面がCsI入力蛍光面に関係する文献の調査(甲41)を行い,透明導電膜と組み合わせてバイアルカリ光電面の開発に従事した。 そして,研究開発の結果,1審原告 た。また,1審原告は,光電面そのものと,光電面がCsI入力蛍光面に関係する文献の調査(甲41)を行い,透明導電膜と組み合わせてバイアルカリ光電面の開発に従事した。 そして,研究開発の結果,1審原告は,X線イメージ管の感度を大幅に改善させ,上記透明導電膜により上記技術課題の解決に成功した。 イ本件発明の経緯(ア)1審原告は,下地膜を開発し,技術課題を認識し,光電面の主成分であるアルカリ金属を導入した後に酸素を導入するという着想に基づき,Aに指示して,本件発明のOUP-1に相当する実験を行った。 しかし,1審原告は,Aから,実験の結果について,正確な報告を受けたわけでもなく,Aからのデータの提出を受けたわけでもなく,口頭で感度の伸びが違ったとの報告を受けただけである。1審原告は,Aに対し,失敗もデータである旨伝え,詳しく話すように促したが,それにもかかわらずAは,正確な報告をしなかった。このような報告の経緯に照らすならば,1審原告がAから試行錯誤の結果の選択について,適切な示唆を受けたものとはいえない。 (イ)1審原告は,酸素の効果を,Sb(アンチモン)に関連する効果を消す目的で,OUP-2とOUP-3の実験を企画した(甲9添付資料29「OUP-2,3に続く実験」57.7.13)。Aは,酸素の効果は,アンチモン(Sb)によるものではないから,OUP-2は不要であるとしてOUP-2の実験に反対したものの,1審原告の指示に従い,OUP-2の実験を実施したという経緯がある。OUP-2の実験は,他の可能性を明確に消すために行った実験として意義がある。 - 4 -OUP-3は,本件発明に関する実験であって,光電面の主成分であるアルカリ金属を酸化させ,アルカリ金属酸化膜を形成した効果を確認するための実験であり,これにより本件発明が事実上完成し 。 - 4 -OUP-3は,本件発明に関する実験であって,光電面の主成分であるアルカリ金属を酸化させ,アルカリ金属酸化膜を形成した効果を確認するための実験であり,これにより本件発明が事実上完成したといえる。 以上の経過に照らすならば,Aは,本件発明に至るまでの経緯を理解することなく,単に1審原告の指示を受けて,実験を実施しただけであるといえる。このことは,1審原告の個々の本件メモでも明らかであり,Aは,実験補助者にすぎない。 ウ本件発明におけるAの役割(ア)Aの陳述書(乙3)には,「光電面の開発は理屈や理論に頼ってもなかなか上手く行かず,経験や勘というものが重要な役割を果たす分野」であるとの記載があるが,Aにはこうした経験や勘はなく,本件発明のような概念を論理立てて実験を遂行していくことはできなかった。 (イ)原告は,昭和50年9月ころから光電面に関する試みである作業指示書(甲19ないし21)を出し,その他にも作業指示書を出したが,これらの作業指示書によれば,Aは「作業者」として関与しただけである。Aが,光電面の性能向上や製造工程の改良についても関心を持ち,研究を行っていたとみることはできない。 (ウ)Aは,電子技研に必要な実績において,有用な人材としての要件を満たさず,業務を担当できる資質もなく,光電面形成の「技能者」として電子技研に配属されたにすぎない。したがって,Aが,電子技研に必要な人材として,X線イメージ管の各種技術要素についての研究開発をするなど,中長期的な観点からの技術開発の一部を担当したことはない。 (2)本件発明による独占の利益(争点2-1)についてア「利益率」についてX線イメージ管の利益率は高率であるから,本件発明による超過売上げに占める利益率は,30~40パーセントとすべきである。 - 5 -もっ よる独占の利益(争点2-1)についてア「利益率」についてX線イメージ管の利益率は高率であるから,本件発明による超過売上げに占める利益率は,30~40パーセントとすべきである。 - 5 -もっとも,本件では仮想実施料率を用いるべきであり,その実施料率は20パーセントとすべきである。 イ本件発明のX線イメージ管の価格への寄与度について本件発明のX線イメージ管の価格への寄与度は,下記の評価方法によって算定された50パーセントとすべきである。 性能・品質技術実現難技術維持難相関係数技術評価点向上係数易度易度(百分比率)係数係数入力窓 1.010(9%)入力蛍光面 1.511(12%)下地膜 1.610(9%)光電面 1×1.5×1.652(50%)×1.2×1.4×1.0=4.03…電子レンズ 1.27(7%)出力蛍光面 1.49(9%)その他 1.04(4%)(ア)光電面についてaX線イメージ管の入力蛍光面の上に形成する光電面形成工程は,CsI入力蛍光面の構造と関係して,要素部品の品質や性能に影響し,種々の問題を発生する。光電面形成工程の直前に,すべての部品が組み込まれたX線イメージ管は高温にベークされながら,6~8時間,真空排気され,光電面形成工程では,アルカリ金属という極めて反応性の強い材料を高温下で導入する。この工程で,X線イメージ管の感- 6 -度が決まるが,他の部品性能や品質にも影響を与えるため,X線イメージ管が出荷できるか否かの存否も決まる。これらの特性も含めて評価されるべきである。 b最終工程で光電面が完成し,X線イメージ管を動作させ,光電面感度を測定する。光電面の評価項目は,光電面の感 メージ管が出荷できるか否かの存否も決まる。これらの特性も含めて評価されるべきである。 b最終工程で光電面が完成し,X線イメージ管を動作させ,光電面感度を測定する。光電面の評価項目は,光電面の感度と一様性(シェーディングの有無)である。光電面感度は,いろいろな要素が入った複合的な結果として測定される。X線イメージ管の場合,X線を発生して入力蛍光面の発光光が下地膜を透過した光を光源として,光電流が測定される。 cX線イメージ管を動作させて輝度を測定することができる。輝度は,光電面から出た電子が,出力蛍光面に加速,収束されて出力蛍光面で発光した光により測定される。輝度の一様性(分布)は,入力蛍光面発光輝度,下地膜透過率,光電面感度,出力蛍光面のなどの分布に加え,電子レンズの糸巻き歪み,点光源のX線管からX線イメージ管の周辺のX線量が低下する原理的な分布とX線イメージ管入力蛍光面の曲面の問題等,多くの要素が含まれた形で測定される。 d光電面の寿命には,本件発明の技術課題,入力蛍光面の構造,下地膜の性質,光電面形成法が関係する。耐電圧や入出力黒点などの不良品発生率を軽減するため,アルカリ金属の導入量を減らすと,光電面の寿命に係る問題が発生する。他に,光電面の寿命を決める要因として,X線イメージ管内に工程上発生し,又は,耐電圧不良放電で,放出されるガスなどがある。 e以上のとおり,光電面は,光電面形成時に,他の要素部品の性能や品質のみならず,X線イメージ管の性能や品質に,大きな影響を与えるので,光電面については,性能,品質向上係数:5,実現難易度係数:4,維持難易度係数:5と評価されるべきであり,他の特性,技- 7 -術への影響を配慮すると,光電面の技術評価点は52と評価されるべきである。 (イ)他の要素についての評価X線イメ 易度係数:4,維持難易度係数:5と評価されるべきであり,他の特性,技- 7 -術への影響を配慮すると,光電面の技術評価点は52と評価されるべきである。 (イ)他の要素についての評価X線イメージ管を構成する他の要素をすべて合わせたX線イメージ管の価格への寄与度は,50パーセントを超えることはないというべきである。 a入力窓入力窓については,性能品質向上係数:5,実現難易度係数:3,維持難易度係数:2の評価とされるべきであり,光電面との相関係数は,光電面と関連しないため,1.0と評価されるべきである。 b入力蛍光面入力蛍光面については,性能向上係数:4,実現難易度係数:3,維持難易度係数:4と評価されるべきであり,光電面との相関係数は1.5と評価されるべきである。 c下地膜下地膜については,性能品質向上係数:5,実現難易度係数:3,維持難易度係数:2と評価されるべきであり,光電面との相関係数は,1.6と評価されるべきである。 d電子レンズ電子レンズについては,性能品質向上係数:2,実現難易度係数:3,維持難易度係数:2と評価されるべきであり,光電面との相関係数は,1.2と評価されるべきである。 e出力蛍光面出力蛍光面については,性能品質向上係数:3,実現難易度係数:2,維持難易度係数:4と評価されるべきであり,光電面との相関係数は,1.4と評価されるべきである。 - 8 -fその他の技術その他,X線イメージ管の性能,品質に直接に関係する特別な技術要素は存在しないが,個々の部品を総合すると,品質性能向上係数:1,実現難易度係数:2,維持難易度係数:1と評価されるべきであり,光電面との相関係数は,1.0と評価されるべきである。 ウ1審被告の貢献度(争点2-2)について1審被告の貢献度は,以下の要素を考慮して評価 易度係数:2,維持難易度係数:1と評価されるべきであり,光電面との相関係数は,1.0と評価されるべきである。 ウ1審被告の貢献度(争点2-2)について1審被告の貢献度は,以下の要素を考慮して評価すべきである。 (ア)1審被告の技術の蓄積による貢献度1審被告の「X線イメージ管を含む真空管に関する長年にわたる技術の蓄積を背景にした研究環境」は,本件発明に係る研究環境のためだけに特別に設けられたものではない。1審被告の技術の蓄積は,同じように,技術課題を解決しなければならなかった同僚や上司たちにも平等に存在したはずである。技術の蓄積は,本件発明に必須なものではないから,このような技術の蓄積が,直ちに1審被告の格別の貢献度とすることはできない。1審被告に技術の蓄積の貢献があったとしても,1審被告が無償の通常実施権を得たことで,1審被告の貢献は十分償われたと考えるべきである。 (イ)1審被告の研究者育成についての貢献度a1審原告の自発的な研究,開発1審原告は,昭和45年ころから,光電面を,光電面が形成された一個の部品として扱い,他の電子管に移すことを目的とした研究をしていた。その研究で求められる技術は,光電面に関する技術ではなく,超高真空技術である。1審原告は,光電面の形成された部品を,超高真空内で他の電子管に移し,真空機密封着し,別の電子管として完成させる研究をしていたのであって,光電面に関する研究はしていなかった。この点から,本件発明に対する1審被告による貢献はない。 - 9 -b1審原告の業務内容1審原告の業務は,製造課において,CsI入力蛍光面製造装置の開発と,CsI入力蛍光面の開発,高解像度化技術の開発をすることであった。また,技術課に異動した後の1審原告の主業務は,新しいX線イメージ管の開発であった。1審原告の本来 CsI入力蛍光面製造装置の開発と,CsI入力蛍光面の開発,高解像度化技術の開発をすることであった。また,技術課に異動した後の1審原告の主業務は,新しいX線イメージ管の開発であった。1審原告の本来業務は,1審被告X線イメージ管に関する実績に示されているとおり,Ⅹ線イメージ管による新製品を開発することであり,製品の拡販に結びつく応用技術を開発することである。 c1審被告の1審原告に対する育成の程度職制上,1審原告が,光電面の技術に関与する必然性はないので,1審被告の1審原告に対する育成はなかった。 仮に,1審被告の1審原告に対する育成があったとしても,他の技術者に対して,一般に与えたものと変わらないので,1審被告が得た無償の通常実施権で償われているというべきものである。 (ウ)研究開発テーマの選定a電子技研において,1審原告に与えられたテーマは,マルチアルカリ光電面であったが,1審原告は,同テーマについては完成させた。 当時,1審原告は,自らの裁量によって,自由にテーマを選定できたため,X線イメージ管に効果がないという結論が出ていた従来の酸素増感を,研究の課題に選んだ。本件発明は,1審原告の製造課,技術課において,下地膜の開発を行ってきた経験と,電子技研において行った着想に基づいて,得られたものである。 b電子技研では,1審原告の研究対象以外の課題解決のため,多くの人材と費用が投入され,本件発明への人材等の投入は少なかった。したがって,1審被告の本件発明に対する貢献度は小さく,1審原告の個人的な努力や精進によって,本件発明に至ったものといえる。 - 10 -(エ)研究環境乙2によれば,研究環境に対する費用は,電子技研の,原告及びAが所属した,医用電子管担当グループ内の,高変換効率X線I.I.グループでは,開発研究費として, いえる。 - 10 -(エ)研究環境乙2によれば,研究環境に対する費用は,電子技研の,原告及びAが所属した,医用電子管担当グループ内の,高変換効率X線I.I.グループでは,開発研究費として,昭和56年度下期850万円,昭和57年度上期2500万円,同年度下期3000万円,昭和58年度上期3200万円の合計9550万円が,また,研究設備投資額として,昭和57年度上期が2700万円,同年度下期が1300万円,昭和58年度上期が4200万円の合計8200万円が,それぞれ割り当てられ,これらの合計額は1億7750万円となるとする。 しかし,上記研究環境に対する費用から,本件発明と関係ない技術の開発費用,通称MBE(MolecularBeamEpitaxy)の装置やCsI入力蛍光面の成膜装置等の設備投資資金,1審原告及びAの給与を控除すべきである。 そうすると,1審被告の提供した研究環境費用は,無償の通常実施権で償われる範囲内の金額であるといえる。 (オ)実用化,事業化に当たっての1審被告の貢献度1審被告が,本件発明を含む,酸素増感バイアルカリ光電面及びその製造方法に関する研究開発の成果を事業化する過程で生じた問題点及び解決した点は大きいものではない。 排気装置への改造は,極めて廉価であり,数10万円から100万円程度である。本件発明は,光電面形成の連続した流れの中で,形成できるという特長を有しているので,品質の向上,自動化などの効果が大きい。また,形成時間は,従来の方法では3~4時間位かかっていたものが,本件発明においては5~7時間位になったので,形成時間が長くなったという短所も存在しない。 (カ)商業的に成功させるための1審被告の貢献度- 11 -本件発明の応用されるX線イメージ管は,販売体制が既に出来上がっていた。本件発 ったので,形成時間が長くなったという短所も存在しない。 (カ)商業的に成功させるための1審被告の貢献度- 11 -本件発明の応用されるX線イメージ管は,販売体制が既に出来上がっていた。本件発明は,他社のX線イメージ管に比べ,医療機にとって重要な信頼性,診断能向上などの特長があるため,従来の販売体制のままで,販売の拡大に貢献する。したがって,1審被告が,本件発明に係る研究を専門的に行う機会と場所及び設備を提供したこと,成果を実用化し,商業的に成功させるために人的,物的資源を投入したことが,過大に評価されるべきではない。 (キ)以上のとおり,本件発明に対する1審被告の貢献は,発明に対する通常の範囲内のものであり,本件発明は,1審原告の技術向上心が大きく寄与したことを考慮すれば,本件発明に対する1審被告の貢献度は,40パーセントを超えるものではない。 (3)相当の対価の額(争点2-4)についてア主位的請求(ア)本件日本特許権本件日本特許権が公開された平成元年から,本件日本特許権の存続期間が満了する平成20年までの日本におけるX線イメージ管の総売上高は,3922億9000万円であるから,本件発明の実施による独占の利益(第三者に実施させて実施料を取得した場合の利益)は,少なくとも,1審被告の売上高の2分の1である1961億4500万円に,仮想実施料率20パーセントを乗じた392億2900万円となる。 そして,本件発明のX線イメージ管の売上げに寄与する割合は,少なくとも50パーセント,1審被告の貢献度は40パーセント,1審原告の単独発明であることを前提として金額を算定すると,本件日本特許については,117億6870万円が相当の対価となる。なお,本件日本特許権に係る補償金等として,1審原告は,7万8000円の支払を受けているので であることを前提として金額を算定すると,本件日本特許については,117億6870万円が相当の対価となる。なお,本件日本特許権に係る補償金等として,1審原告は,7万8000円の支払を受けているので,残額は117億6862万2000円となる。 - 12 -392億2900万円×0.5×(1-0.4)=117億6870万円(イ)本件各外国特許権本件各外国特許権について,公開又は登録された時点から権利消滅時点までのX線イメージ管の外国における総売上高は,2244億9400万円であるから,上記(ア)と同様の割合で算定すると,本件各外国特許については,以下のとおり,67億3482万円が相当の対価となる。 2244億9400万円×0.5×0.2×0.5×(1-0.4)=67億3482万円(ウ)小括1審原告は,上記の合計額185億0344万2000円の一部として,5000万円の支払を求める。 イ予備的請求仮に,主位的請求に係る主張における基礎金額が採用されない場合には,原判決添付別表2「X線イメージ管推定売上高」の売上高に基づいて,相当の対価を,上記と同様の方法によって算定されるべきである。 (ア)本件日本特許権本件日本特許権が登録された平成2年から平成16年までの,日本におけるX線イメージ管の総売上高は,220億円であるから,本件発明の実施による独占の利益(第三者に実施させて実施料を取得した場合の利益)は,少なくとも,1審被告の売上高の2分の1である110億円に仮想実施料率20パーセントを乗じた22億円となる。 そして,本件発明の売上げに寄与する割合は,少なくとも50パーセント,1審被告の貢献度は40パーセント,1審原告の単独発明であることを前提に算定すると,本件日本特許権についての相当の対価は,6億6000万円となる。そして,既 与する割合は,少なくとも50パーセント,1審被告の貢献度は40パーセント,1審原告の単独発明であることを前提に算定すると,本件日本特許権についての相当の対価は,6億6000万円となる。そして,既払の7万8000円を控除した,6- 13 -億5992万2000円を請求することができる。 22億円×0.5×(1-0.4)=6億6000万円(イ)本件各外国特許権本件各外国特許権について,登録された時点から権利消滅時点までにおけるX線イメージ管の外国における各売上高は,米国12億円,ドイツ8500万円,イギリス8500万円,フランス8000万円,中国11億円,韓国11億円となる。 そして上記と同様に算定すると,以下のとおり,米国特許について3600万円,ドイツ特許について255万円,イギリス特許について255万円,フランス特許について240万円,中国特許について3300万円,韓国特許について3300万円がそれぞれ相当の対価となる。 (米国特許)12億円×0.5×0.2×0.5×(1-0.4)=3600万円(ドイツ特許)8500万円×0.5×0.2×0.5×(1-0.4)=255万円(イギリス特許)8500万円×0.5×0.2×0.5×(1-0.4)=255万円(フランス特許)8000万円×0.5×0.2×0.5×(1-0.4)=240万円(中国特許)11億円×0.5×0.2×0.5×(1-0.4)=3300万円(韓国特許)11億円×0.5×0.2×0.5×(1-0.4)=3300万円(ウ)小括1審原告は,上記(ア),(イ)の金額のうち,本件日本特許について4288万5000円,米国特許について234万円,ドイツ特許について- 14 -16万5000円,イギリス特許について16万5000円,フランス特許について15万50 うち,本件日本特許について4288万5000円,米国特許について234万円,ドイツ特許について- 14 -16万5000円,イギリス特許について16万5000円,フランス特許について15万5000円,中国特許について214万5000円,韓国特許について214万5000円の合計5000万円を相当の対価の一部として請求する。 (4)主位的請求に係る主張の提出時期について主位的請求に係る主張は,以下の理由により時機に遅れた攻撃方法には該当しない。すなわち,訴訟提起後の売上げに関する主張については,訴訟提起の段階では,その後の1審被告の売上げは確定していないのみならず,特許権がその後も維持されるか否かも不明である。1審原告は,1審被告に入社した昭和49年1月から昭和60年3月末まで,専ら技術・研究・開発部門であり,一貫してX線イメージ管の販売価格を知る立場にはなく,製造原価をもって売上高と理解していた。したがって,仮に主位的請求に係る主張が時機に遅れたとしても「重大な過失」はない。 1審被告の反論(当審における補足)(1)本件発明による独占の利益(争点2-1)についてア1審被告の技術によるX線イメージ管の超過売上全体に占める割合は,①1審被告のブランド力が高いこと(乙91,92の1ないし3),②1審被告が旧東芝メディカル株式会社の販売網を活用できたこと(乙93,94),③X線イメージ管の技術は既に成熟しており,各社の製品の性能差がほとんどない状況であること(乙95)を総合考慮すると,25パーセント程度とみるべきである。そうすると,1審被告のX線イメージ管の超過売上げの割合は,17.7パーセントが相当である。 (1審被告の超過シェア)×(超過シェア中技術による割合)=(X線イメージ管の超過売上げの割合)70.7%×25%=1 被告のX線イメージ管の超過売上げの割合は,17.7パーセントが相当である。 (1審被告の超過シェア)×(超過シェア中技術による割合)=(X線イメージ管の超過売上げの割合)70.7%×25%=17.7%- 15 -イ本件特許の1審被告のX線イメージ管技術全体に占める寄与度は,以下のとおり,5パーセントを超えることはない。 (ア)X線イメージ管の入力面に係る技術には,①基板,②入力面蛍光体,③透明導電膜,④光電面の4つの要素がある。本件発明の改良技術は,このうちの「光電面」に係る技術であり,入力面に係る技術を全体の「20パーセント」とし,入力面の技術の4つの要素により単純平均すれば,それぞれの要素について,全体の5パーセントとなる。また,「入力面蛍光体」の方が「光電面」よりも重要度が高く,「基板」及び「透明導電膜」も光電面に準じた重要性を有する(乙71)。そうすると,本件特許の1審被告のX線イメージ管技術全体に占める寄与度は5パーセントを超えない。 (イ)そして,当時,X線イメージ管に関する研究開発は,電子技研のみでされていたのではなく,電子事業本部の医用電子管技術部においても,20人前後の研究者が従事していたこと,本件特許に係る技術は光電面に関するにすぎず,光電面全体の比重は入力面の3分の1程度であること,本件特許に係る技術は光電面全体の技術の16分の1にすぎないこと等の事情を考慮すれば,本件特許の改良技術の比重は,多くとも光電面に係る技術の5分の1程度とみるべきである。 (ウ)以上により,本件特許のX線イメージ管の全技術に占める寄与度は,①入力面の全技術に占める割合が20パーセント,②光電面に係る技術が入力面全体に係る技術に占める割合が25パーセント,③本件特許が光電面全体に係る技術に占める割合を20パーセントと評価す 寄与度は,①入力面の全技術に占める割合が20パーセント,②光電面に係る技術が入力面全体に係る技術に占める割合が25パーセント,③本件特許が光電面全体に係る技術に占める割合を20パーセントと評価すると,1パーセントと評価されるべきである。 ウ本件発明による独占の利益の算定に当たっては,利益率ではなく相当の実施料率を用いるべきであり,その実施料率は5パーセントとすべきである。 - 16 -(2)1審被告の貢献度(争点2-2)について国外売上高における1審被告の貢献度は,国内売上高におけるそれよりもはるかに大きいものと評価すべきである。 外国特許において,特許料を納付して特許権を維持し,ライセンス交渉をし,特許権を行使するのは,国内特許における場合より過大な費用がかかる。 国外の市場において売上げを伸ばすことは,商慣習の相違などの面で困難があり,多額の費用を要する。 これらの事情を考慮すると,国外売上高における1審被告の貢献度は,「97から99パーセント」程度とみるべきである。 (3)共同発明者間の貢献割合(争点2-3)について本件発明に係る技術報告書(乙7,8)はAが作成したものであり,1審原告は検印を押したにすぎない。また,移管説明書(乙55)には1審原告とAとの正味人員割合が0.1対0.4とされていることからすると,1審原告とAとの間の貢献割合は20対80とするのが相当である。 (4)相当の対価の額(争点2-4)についてア国内売上高に係る相当の対価の算定①(220億円)に,②(17.7パーセント:70.7パーセント×25パーセント),③(5パーセント),④(1パーセント),⑤(5パーセント),⑥(20パーセント)を乗じると,1万9470円となる。 一方で,1審被告は,1審原告に対し,国内売上高に係る相当の対価として,7万8 ),③(5パーセント),④(1パーセント),⑤(5パーセント),⑥(20パーセント)を乗じると,1万9470円となる。 一方で,1審被告は,1審原告に対し,国内売上高に係る相当の対価として,7万8000円を支払っているから,5万8530円(7万8000円-1万9470円)の支払が過払いとなっている。したがって,少なくとも,国内売上高に相当する部分については,1審被告が1審原告に対し支払うべき相当の対価は存在しないから,1審原告の請求のうちの国内売上高に係る相当の対価の支払請求部分は,棄却すべきである。 - 17 -イ国外売上高に係る相当の対価の算定①(36億5000万円)に,②(11.1パーセント:44.4パーセント×25パーセント),③(5パーセント),④(1パーセント),⑤(1パーセントから3パーセント),⑥(20パーセント)を乗じると,405円~1215円となる。 ウ上記アのとおり国内売上高についての過払額5万8530円は,結局,法律上の原因がないのに支払われたことになるので,平成19年10月17日の本件口頭弁論期日において,その不当利得返還請求権を国外売上高に係る相当の対価の請求権と対当額において相殺する旨の意思表示をした。 したがって,1審原告の請求のうちの国外売上高に係る相当の対価の支払請求部分は,棄却すべきである。 第3当裁判所の判断当裁判所も,1審原告の1審被告に対する本訴請求は,原判決が認容した限度で理由があり,その余は理由がないものと判断する。その理由は,次のとおり付加訂正するほかは,原判決の「事実及び理由」欄の「争点に対する当裁判所の判断」(原判決53頁11行から81頁6行)記載のとおりであるから,これを引用する。 原判決の付加訂正(1)原判決53頁11行目中「第4」を「第3」に改め,同57頁11行 点に対する当裁判所の判断」(原判決53頁11行から81頁6行)記載のとおりであるから,これを引用する。 原判決の付加訂正(1)原判決53頁11行目中「第4」を「第3」に改め,同57頁11行目中「抱いていたこともあり」の次に「(乙3ないし5)」を加える。 (2)原判決58頁1行から15行までを次のとおり改める。 「エSbプリエバポレーションの実験1審原告及びAは,昭和57年6月ころから,同年11月ころまで,X線イメージ管に対する光電面形成としては新しい試みを実施し,「Sbプリエバポレーション法」(省略)を行なった(本件メモ19ないし27)。そして,1審原告は,この実験を「SBOシリーズ」と命名し- 18 -た(甲9,26,弁論の全趣旨)。 オOUPシリーズの実験Aは,1審原告と相談の下,酸素増感法による実験を実施してきたが,昭和57年6月末ころ,酸素を入れるタイミングを変えた実験を実施した際,光電面形成前に酸素を導入したところ,試作管は測定不能な状態となったが,光電面の感度が異なることを見出し,これを1審原告に報告した(甲9,乙53)。1審原告は,Aからの報告に基づいて,光電面形成前に酸素を導入する方法の実験を行うこととし,1審原告は,これを,それまで行っていた光電面形成後に酸素を作用させ感度を向上させる酸素増感法と区別するために,「OUPシリーズ」と命名した。そして,1審原告とAとの意見交換を踏まえて,Aにおいて,酸素が光電面材料のうちアルカリ金属とSbのいずれの材料に作用したかを確認し,酸素を作用させる条件等の最適化を追求する実験を進めた(本件メモ28~42。甲9,乙53,弁論の全趣旨)。」(3)原判決60頁24行目から26行目までを,次のとおり改める。 「本件発明の内容を含む,酸素増感バイアルカリ光電面及びその する実験を進めた(本件メモ28~42。甲9,乙53,弁論の全趣旨)。」(3)原判決60頁24行目から26行目までを,次のとおり改める。 「本件発明の内容を含む,酸素増感バイアルカリ光電面及びその製造方法に関する研究開発の成果は,昭和58年2月,1審被告の医用電子管技術部に移管されたが,「X線イメージインテンシファイア用酸素増感(K-Cs)バイアルカリ光電面移管説明書」の「注入人員」欄には,「総人員 人(X主査,A技長)」,「正味人員0.5(0.1+0.4)人・年」と記載された(乙55)。」(4)原判決63頁4行目の末尾に次のとおり加える。 「なお,1審被告の電子事業本部では,電子特許課が特許出願等の管理にを担当していたが,提案書に記載されている発明者について,誰が実質的に発明をしたかについての実質的な確認は行わず,提案書に記載された発明者の氏名をそのまま転記する取扱いをしていた(乙54)。」- 19 -(5)原判決63頁7行目の「しかし,」から15行目末尾までを次のとおり改める。 「これに対し,1審原告は,1審被告に対して昭和61年12月10日,「+OPat.出願取り下げ可否検討依頼」と題し,「①登録できる可能 性;大,②分解調査により+O光電面は他の光電面と区別できる;Aug er分析,③他社は未実施;可能性大,④長寿命化には他の方法では実現困難;⑤多結晶入力面,及び保護膜付き入力面に対して特に有効,⑥極めて有効なPRポイントになる,⑦MachlettPat.公開の中で他社が15年或は,20年も気付かないとは考えられない。」と記載した書面を提出して,本件発明につき特許取得をするよう要望した(乙24)。昭和62年3月31日,関係者間で協議して,X線イメージ管を輸出する場合,輸出先の国において,先発明の事実や先使用 。」と記載した書面を提出して,本件発明につき特許取得をするよう要望した(乙24)。昭和62年3月31日,関係者間で協議して,X線イメージ管を輸出する場合,輸出先の国において,先発明の事実や先使用権を立証することは困難であることが予想されたため,外国出願を行うこととし,第6の出願の見直しをした上で,新たな国内出願を行い(第7の出願),それを基礎とした外国出願を行うこと,新たな国内出願を行った後に第6の出願を取り下げる方針を決定した(乙25)。そして,第7の出願である本件日本特許権に係る出願及び本件各外国特許権に係る各出願がされた(甲2~6)。1審原告は,上記各出願において明細書を起案したり,拒絶理由通知に対する反論を検討するなどの作業に関与した(甲28,29)。」(6)原判決64頁8行目の「解される。」の後に,次のとおり加える。 「そして,当該発明の課題解決に係る技術思想に至った者は,当該発明に係る技術的思想の創作をした者,すなわち発明者ということができる。もっとも,本件発明のように,課題解決に係る技術が化学分野に関する場合は,その作用効果を事前に予測することは困難であるから,課題解決に係る技術思想を直接発見した者のみならず,課題解決に至るまでの予測を立てたり手法を提供した者や,課題解決に係る技術思想の具体化に寄与した者も発明者- 20 -と解するのが相当である。 本件発明に係る明細書の「発明者」の欄には,1審原告の氏名のみが記載されている。しかし,上記(1)で認定した事実によると,当時の本件特許出願を担当した電子特許課では,願書における発明者の記載は,提案書の発明者欄の記載をそのまま転記していたこと,本件特許出願に先立つ第1ないし第4の出願では,その内容が本件発明とほぼ同一のものであるにもかかわらず,その発明者欄には1審原告及 発明者の記載は,提案書の発明者欄の記載をそのまま転記していたこと,本件特許出願に先立つ第1ないし第4の出願では,その内容が本件発明とほぼ同一のものであるにもかかわらず,その発明者欄には1審原告及びAを共同発明者と記載されていたこと,本件発明に係る出願も,1審原告のみを発明者とする社内提案の記載に基づいて行なわれたこと等の経緯に照らすと,本件発明に係る明細書の記載のみによって,1審原告を単独の発明者を認定することはできない。結局,上記(1)で認定した本件発明に至る関与の経緯に即して,本件発明に係る発明者を認定するのが相当である。」(7)原判決69頁11行から70頁19行までを次のとおり改める。 「ア改正前特許法35条4項に規定する「その発明により使用者等が受けるべき利益の額」とは,使用者等が当該職務発明に係る特許権について無償の通常実施権を取得する(同条1項)ことから,使用者等が,従業者等から特許を受ける権利を承継して特許を受けた場合には,特許発明の実施を排他的に独占することによって得られる利益をいう。そして,使用者等は,特許を受ける権利を承継しない場合であっても無償の通常実施権を取得することの対比からすれば,使用者等が特許を受ける権利を承継して特許発明を自ら実施している場合は,これにより実際に上げた利益のうち,当該特許の排他的効力により第三者の実施を排除して独占的に実施することにより得られた利益,すなわち,使用者等が実際に受ける利益の額から通常実施権を実施することにより得られる利益の額を控除した額をもって「その発明により使用者等が受けるべき利益」というべきである(外国の特許を受ける権利の承継による相当の対価の請- 21 -求についても,改正前特許法35条4項が類推適用される以上,同様に解すべきものといえる。)。 イ上記第 るべき利益」というべきである(外国の特許を受ける権利の承継による相当の対価の請- 21 -求についても,改正前特許法35条4項が類推適用される以上,同様に解すべきものといえる。)。 イ上記第2,1⑺のとおり,本件において,1審被告は,本件発明について,専ら自ら実施し,第三者に実施許諾をしたことはない。 このように,発明が自社でのみ実施されている場合における独占の利益を算定する方法としては,①本件発明を第三者に実施許諾した場合に得られるであろう実施料収入を想定して算定するという方法や②使用者等が超過売上高から得るであろう利益を算定する方法などが考えられるところである。 この点,1審原告は,上記①の算定方法に基づいて,第三者に実施させた場合の当該第三者の売上げを1審被告の売上げの2分の1として,その10パーセントとすべきである旨主張する(判決注:当審においては,20パーセントと主張する。)。しかし,本件において,1審原告は,本件発明を第三者に実施させて実施料を取得した場合を想定した場合に,当該第三者が取得し得る売上げの多寡に影響を与える諸事情,すなわち,例えば市場全体の規模,動向,実施品であるX線イメージ管の性質,内容,市場における優位性等の諸事情について,具体的な主張,立証をしていない。実施許諾を受けた第三者が,1審被告の売上げの2分の1の売上げを得ることを推認させるような事情も認められない。したがって,1審原告の主張に係る上記①の算定方法を採用することはできない。 ところで,1審被告は,1審被告の市場シェアを算定し,それに基づいて1審被告の超過シェアを算定する方法を前提として,1審被告の主張に係る市場シェアについては,1審被告におけるX線イメージ管の製造本数及び競業他社の推定製造本数から,1審被告の国内シェアを推測する算定方 被告の超過シェアを算定する方法を前提として,1審被告の主張に係る市場シェアについては,1審被告におけるX線イメージ管の製造本数及び競業他社の推定製造本数から,1審被告の国内シェアを推測する算定方法によるべきであると主張し,1審被告社内の調査に基づい- 22 -て1審被告の国外シェアを推測した1審被告従業員の報告書(乙81)を提出している。1審原告の主張に係る算定方法に合理性がない本件においては,1審被告の主張に係る上記②の算定方法によるのが相当であるというべきである。 そうすると,独占の利益は,1審被告の売上高に,上記によって計算した超過シェアを乗じて超過部分の売上高を算定し,これに利益率を乗じて超過利益を算定した上で,売上高がX線イメージ管に関するものであることから,さらに,X線イメージ管の売上げに対する本件発明の寄与割合を乗じて算定することとする。」(8)原判決71頁19行目から20行目の「あるといわざるを得ず,時機に後れた攻撃防御方法として,却下されるべきものである。」を「あるといわざるを得ない。そうすると,1審原告の上記主張は,故意又は重大な過失により時機に後れて提出した攻撃の方法であり,この主張の追加により,本件各特許の出願公開時から設定登録までの間の売上高及び本件日本特許権の存続期間満了までの将来分を含む売上高に関して,1審被告の主張立証が予想され,これにより訴訟の完結を遅延させることとなる。したがって,1審原告の上記主張は,民訴法157条1項によりこれを却下することとする。」と改める。 (9)原判決77頁2行目末尾に,行を改めて次のとおり加える。 「(1)改正前特許法35条4項には,「その発明がされるについて使用者等が貢献した程度」を考慮すべきである旨規定されているが,前記のとおり,特許を受ける権利の承継後に 行を改めて次のとおり加える。 「(1)改正前特許法35条4項には,「その発明がされるについて使用者等が貢献した程度」を考慮すべきである旨規定されているが,前記のとおり,特許を受ける権利の承継後に使用者が実施した超過売上高をもって「その発明により使用者等が受けるべき利益の額」として「相当の対価」を算定する場合において考慮されるべき「使用者等が貢献した程度」には,使用者等が「その発明がされるについて」貢献した程度のほか,使用者等がその発明により利益を受けるについて貢献した程度も含まれるものと解するのが相- 23 -当である。すなわち,「使用者等が貢献した程度」には,その発明がされるについての貢献度のみならず,その発明を出願し権利化し,特許を維持するについての貢献度,実施製品の開発及びその売上げの原因となった販売契約を締結するについての貢献度,発明者の処遇その他諸般の事情等が含まれるものと解するのが相当である。発明者の使用者等に対する「相当の対価」の請求権はその特許を受ける権利の譲渡時に発生するものであるが,「相当の対価」の算定の基礎となる「その発明により使用者等が受けるべき利益の額」は特許を受ける権利の承継後に使用者が実施した超過売上高によるものとする以上,その超過売上高が発生するに至った一切の事情を考慮しないとするのは衡平の理念に反するというべきである。」 当審における当事者の主張に対する判断(1)本件発明の発明者(争点1)について1審原告は,本件発明の本質的部分は,光電面の主成分であるアルカリ金属がCsI入力蛍光面に移動するという技術課題をアルカリ金属酸化膜という下地膜により解決することにあり,最初の下地膜の開発,発明の着想,発明の完成に至るまで一貫して関与したのは,1審原告のみであると主張する。 しかし,原判決の第3の1 技術課題をアルカリ金属酸化膜という下地膜により解決することにあり,最初の下地膜の開発,発明の着想,発明の完成に至るまで一貫して関与したのは,1審原告のみであると主張する。 しかし,原判決の第3の1(1)で認定した本件発明に至る過程によれば,本件発明は,光電面形成完了前に酸素を加えたことが特徴であるが,下地膜を形成することを目的としていたわけではなく,酸素の導入による増感をX線イメージ管に適用することを模索していた過程で完成したものである。本件メモ及び技術報告書(乙7,8)にも「酸素増感」の用語が用いられており,「下地膜」の記載はなく,「アルカリ金属酸化膜」を「下地膜」として用いることで増感するものであるとの認識の下で実験を重ねて本件発明に至ったものではない。よって,1審原告の上記主張は採用できない。そして,本件発明の発明者が1審原告及びAであることは,原判決(当審が訂正した後のもの)第3,1(2)記載のとおりである。 - 24 -(2)本件発明による独占の利益(争点2-1)についてア利益率について(ア)1審原告は,超過売上げに占める利益を算定する際の利益率を30~40パーセントと認定すべきであると主張するが,上記利益率を裏付ける証拠はなく採用することはできない。 (イ)1審被告は,本件発明による独占の利益の算定に当たって利益率ではなく相当の実施料を用いるべきと主張するが,原判決(当審が訂正した後のもの)第3,2(1)において説示するとおり,本件においては超過売上高に基づいて利益を算定する手法を採る以上,利益率によることになるから,上記主張は採用できない。 イ超過実施割合超過シェアの獲得には,確かに,1審被告の主張するように,技術力以外に,規模,資金力,人的資源,ブランド,営業力などの諸要素が貢献しているといえるが,1審 上記主張は採用できない。 イ超過実施割合超過シェアの獲得には,確かに,1審被告の主張するように,技術力以外に,規模,資金力,人的資源,ブランド,営業力などの諸要素が貢献しているといえるが,1審被告のブランド力,販売網の利用及びX線イメージ管の技術の成熟性を考慮してもなお,それらの要素による影響は,技術力による影響と等しいというべきである。この点の1審被告の主張は採用できない。 ウ本件発明のX線イメージ管の売上額への寄与度(ア)1審原告は,本件発明のX線イメージ管の価格への寄与度を50パーセントとすべきであると主張する。しかし,同主張は,これを裏付ける証拠はなく,これを採用することはできない。 (イ)1審被告は,本件発明による独占の利益の算定に当たって,本件特許に係る光電面に関する改良技術の割合を入力面に関する技術全体の2分の1より少なく評価されるべきである旨主張する。 しかし,1審被告の主張も,以下のとおり採用できない。 a1審被告は,入力面を構成する技術要素のうち,「入力蛍光面」が- 25 -最も重要であり,他の入力基板及び透明導電膜も光電面と同程度に重要であるから,光電面は入力面の4分の1と評価すべきであると主張する。 証拠(乙68)によると,入力蛍光面に関する1審被告の独自の技術は,入射したX線を可視光に変換する役割を担う技術であり,X線イメージ管の感度に影響するものではあるが,CsI柱状結晶を蛍光膜として用いることを前提として,①当該CsI柱状結晶に当然求められる性能,品質を向上させるための条件や製造装置の配置等のノウハウであるか,②X線イメージ管を製造する上での必須の技術というものではない,その製造に当たっての条件を決定するためのシュミレーション技術等にすぎないものである。 そして,証拠(乙3,4,6,7,32 ウであるか,②X線イメージ管を製造する上での必須の技術というものではない,その製造に当たっての条件を決定するためのシュミレーション技術等にすぎないものである。 そして,証拠(乙3,4,6,7,32,33)によると,X線イメージ管の「蛍光膜」としてCsI柱状結晶を用いることが,本件発明時において周知であったことからすれば,入力蛍光面がその入力感度を決める上で重要なものであるといえても,上記の入力蛍光面に関する1審被告独自の技術が本件発明の価値を上回るものということはできない。また,入力基板及び透明導電膜についても,光電面と同等の価値があると認定するに足りる証拠はない。なお,技術報告書(乙69。報告日は1986年(昭和61年)3月20日である。)によると,透明導電膜の改良により入力感度が66パーセント向上したことが認められるが,本件発明後の改良によって入力感度が向上したとしても,それをもって本件発明の価値を減ずるものとはいえない。 b1審被告は,光電面を構成する技術が16件であることから,本件発明は光電面の技術の16分の1にすぎず,多くとも光電面の技術の5分の1程度とみるべきものと主張する。 証拠(乙27,43,67,68)によると,光電面を構成する技- 26 -術としては,①Sb蒸着量制御技術,②蒸着量制御技術,③光電面形成前の特定アルカリ金属の導入量,④アルカリ金属導入後,Sb蒸着前の酸素導入(本件発明),⑤感度特性の安定化(酸素導入量一定化のための装置改良),⑥短時間での光電面形成法,⑦安定的な蒸着のための自動光電面形成装置とスケジュール,⑧均一的な光電面を得るためのアルカリ導入技術,⑨安定したアルカリゼネレーターの製造技術,⑩アルカリゼネレーターのガス低減法,⑪光電面形成温度条件,⑫光電面形成温度条件,⑬シャッターによる不 ール,⑧均一的な光電面を得るためのアルカリ導入技術,⑨安定したアルカリゼネレーターの製造技術,⑩アルカリゼネレーターのガス低減法,⑪光電面形成温度条件,⑫光電面形成温度条件,⑬シャッターによる不要部分への光電面形成制御,⑭電極処理による安定な光電面形成,⑮Sb飛ばしきり技術,⑯入力に均一にアルカリを飛ばすための電極構造があることが認められるが,上記①,②,⑥ないし⑯は,CsI蛍光面を用いるX線イメージ管に限らない従来技術の延長線上にあるものといえるし,③,⑤は本件発明の実施に付随するノウハウであるといえる。これらに対し,本件発明は,X線イメージ管に用いられる入力蛍光面に化学量論的な組成比をなす半金属とアルカリ金属から成る光電面を形成するために,アルカリ金属酸化膜を備えるようにするものであるから,X線イメージ管特有の課題を解決する技術ということができる。そして,証拠(乙61,62)によると,本件発明により光電面感度が15パーセントないし20パーセント向上したことが認められ,他の1審被告独自の技術等と同列に評価すべきものではない。 本件発明がされた当時,電子技研におけるX線イメージ管に関する研究開発は,主に光電面に関するものであったこと,本件発明につきノウハウとして秘匿することなく特許を取得し,維持したことに照らすと,たとえ1審被告が指摘するとおりX線イメージ管の研究開発が電子技研以外でも行われ,また光電面において多数の技術が存するとしても,本件発明の価値を減ずるものとはいえない。以上のとおりで- 27 -あり,1審被告の主張は理由がない。 (3)1審被告の貢献度(争点2-2)についてア1審原告は,1審被告の貢献度を95パーセントより低く評価されるべきであると主張するが,原判決において認定した諸事情を考慮すると,1審被告の貢 。 (3)1審被告の貢献度(争点2-2)についてア1審原告は,1審被告の貢献度を95パーセントより低く評価されるべきであると主張するが,原判決において認定した諸事情を考慮すると,1審被告の貢献度は95パーセントと評価されるべきである。 また,1審原告は1審被告に関する事情は無償の通常実施権の範囲内のものであると主張するが,1審被告の貢献度を検討するに当たっては1審被告が無償の通常実施権を取得していることを考慮すべきものとしても,上記事情はいずれも1審被告が通常実施権を有することを超える事情ということができるので,採用できない。 イ1審被告は,その貢献度を国外売上高については97から99パーセントとすべきと主張するが,国外売上高についても国内売上高と同じく95パーセントとした原判決の認定に誤りはなく,採用の限りではない。 (4)共同発明者間の貢献割合(争点2-3)について1審被告は,共同発明者間の貢献割合について,1審原告とAとの貢献割合を20対80とすべきであると主張する。 しかし,以下のとおり,1審被告のこの点の主張は採用できない。 ア1審原告は,X線イメージ管に関する研究開発のグループの責任者として,光電面に酸素を作用させて感度を向上させる酸素増感法をテーマとして選択し,その実験の際に必要となる酸素導入機構を考案,改良したり,実験管を用いた実験を行うなどして準備を進め,「酸素増感実験計画」を作成した。1審原告は,具体的な研究についても,一連の実験にシリーズ名を付したり,Aとのミーティングやその報告から実験結果や実験予定のメモを作成して,Aに示しながら実験の予定ないし計画の方針を指示,説明した。1審原告は,光電面作成前に酸素を加えることで増感が得られる可能性があるとのAからの報告を受けて,その有用性を認識し,Aと共に- して,Aに示しながら実験の予定ないし計画の方針を指示,説明した。1審原告は,光電面作成前に酸素を加えることで増感が得られる可能性があるとのAからの報告を受けて,その有用性を認識し,Aと共に- 28 -従前の方法との比較実験を実施することによって酸素の作用の効果を確認し,本件発明を完成させた。なお,1審原告は,本件発明の完成後の権利化の過程においても,1審被告が前記各出願を放棄ないし取り下げた後に,本件発明を権利化すべきとの意見書を1審被告に提出したり,発明者として明細書を起案したり,拒絶理由通知に対して反論の意見書を起案する等の作業に従事した。 他方,Aは,X線イメージ管の中で,光電面に関する開発を担当し,実際に酸素増感光電面の実験を行い,光電面の形成前に酸素を入れると増感し得るとの可能性を見出し,1審原告に報告し,その後の比較実験を実施することによって酸素による作用効果を確認し,本件発明を完成させた。 Aは,その後の過程においては,本件発明に関与しなかった。 以上の諸事情を総合すれば,1審原告とAとの貢献割合は,一方が他方を上回ると評価することはできず,結局,いずれも同等であると解するのが相当である。 イ1審被告は,本件技術報告書①の報告書欄にAの氏名が筆頭に記載され,1審原告の氏名がAの氏名の下に記載されていること,移管説明書中に1審原告とAとの人員割合が1対4とされていることを考慮すべきと主張する。 しかし,1審被告の上記主張は,証拠(乙45)によると,技術報告書は基本的に当該研究や実験を行った技術者本人が作成するものであるから,実際に実験を行なったAが筆頭者となっているものと考えられるし,移管説明書の記載内容は,客観的な裏付けに乏しいものであって,上記認定した本件発明に対する寄与割合を左右する事情とはいえない。 よって,1 際に実験を行なったAが筆頭者となっているものと考えられるし,移管説明書の記載内容は,客観的な裏付けに乏しいものであって,上記認定した本件発明に対する寄与割合を左右する事情とはいえない。 よって,1審被告の主張は採用することができない。 (5)相当の対価の額(争点2-4)についてア以上のとおり,1審原告の主位的請求は,その請求に関する主張が時機- 29 -に遅れて提出した攻撃方法に当たり却下されたものであるから,理由がない。そして,1審原告の予備的請求については,原判決の認定するとおり,本件日本特許の特許を受ける権利の承継に係る相当の対価の額は,194万7000円から既払金7万8000円を控除した186万9000円であり,本件各外国特許の特許を受ける権利の承継に係る相当の対価の額は20万2574円であり,その合計額は207万1574円となるから,その限度で1審原告の請求を認容した原判決は相当である。 イなお,1審被告が主張する国内売上高についての過払額の不当利得返還請求権を自働債権として,国外売上高に係る相当の対価請求権を受働債権とする相殺の主張は,上記アのとおり自働債権が存在しないから失当である。 結論 以上によれば,1審原告及び1審被告の本件各控訴は理由がないから,いずれも棄却することとし,主文のとおり判決する。 知的財産高等裁判所第3部裁判長裁判官飯村敏明裁判官大鷹一郎裁判官上田洋幸- 30 -

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