平成23(行ウ)4 法人税更正処分等取消請求事件

裁判年月日・裁判所
平成25年1月15日 広島地方裁判所 棄却
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判決文本文18,500 文字)

主文 1 原告の請求をいずれも棄却する。 2 訴訟費用は原告の負担とする。事実及び理由第1 請求 1 処分行政庁が,平成21年7月3日付けで,原告に対してした平成16年9月1日から平成17年8月31日までの事業年度の法人税の更正処分のうち,翌期へ繰り越す欠損金4172万6298円を下回る部分及び所得税額等の還付金額57円を下回る部分を取り消す。 2 処分行政庁が,平成21年7月3日付けで,原告に対してした平成17年9月1日から平成18年8月31日までの事業年度の法人税の更正処分のうち,翌期へ繰り越す欠損金1157万7517円を下回る部分及び所得税額等の還付金額273円を下回る部分を取り消す。 3 処分行政庁が,平成21年7月3日付けで,原告に対してした平成18年9月1日から平成19年8月31日までの事業年度の法人税の更正処分のうち,欠損金額853万0999円,翌期へ繰り越す欠損金2010万8516円を下回る部分及び所得税額等の還付金額5422円を下回る部分並びに過少申告加算税の賦課決定処分を取り消す。 4 処分行政庁が,平成21年7月3日付けで,原告に対してした平成19年9月1日から平成20年6月30日までの事業年度の法人税の更正処分のうち,翌期へ繰り越す欠損金671万6997円を下回る部分及び所得税額等の還付金額3223円を下回る部分並びに過少申告加算税の賦課決定処分を取り消す。 第2 事案の概要 1 事案の要旨 処分行政庁は,平成21年7月3日付けで,原告に対し,平成16年9月から平成20年6月までの各事業年度における法人税の確定申告について,これを更正する処分を行い,また平成18年9月から平成19年8月にかか 成21年7月3日付けで,原告に対し,平成16年9月から平成20年6月までの各事業年度における法人税の確定申告について,これを更正する処分を行い,また平成18年9月から平成19年8月にかかる事業年度及び平成19年9月から平成20年6月にかかる事業年度については,過少申告加算税の賦課決定処分を行った。  これに対し,原告は,呉税務署長に対し,異議を申し立てたが,これを棄却され,国税不服審判所長に対し,審査請求をしたが,これも棄却されたため,上記の更正処分及び過少申告加算税の賦課決定処分の取消しを求め,本件訴訟を提起した。  本件訴訟の主要な争点は,原告の従業員による不法行為(民法709条。 以下同じ。)に基づく原告の同従業員に対する損害賠償請求権の益金算入の時期及び過少申告加算税の賦課決定処分に関して,国税通則法65条4項所定の正当な理由が認められるかという2点である。 2 前提事実(証拠等の掲記のない事実は当事者間に争いがない。) 当事者原告は,平成元年9月22日に設立されたパチンコ店の経営などを目的とする有限会社であり,「パーラーニューヨーク」という名称のパチンコ店を経営している(以下,この店を「本件店舗」という。)。  確定申告(法人税)ア原告は,平成17年8月期(平成16年9月1日から平成17年8月31日まで。以下同じ。)の事業年度について,所定の申告期限までに,青色申告書による確定申告を行った。 イ原告は,平成18年8月期(平成17年9月1日から平成18年8月31日まで。以下同じ。)の事業年度について,所定の申告期限までに,青色申告書による確定申告を行った。 ウ原告は,平成19年8月期(平成18年9月1日から平成19年8月31日まで。以下同じ。) 日まで。以下同じ。)の事業年度について,所定の申告期限までに,青色申告書による確定申告を行った。 ウ原告は,平成19年8月期(平成18年9月1日から平成19年8月31日まで。以下同じ。)の事業年度について,所定の申告期限までに,青色申告書による確定申告を行った。 エ原告は,平成20年6月期(平成19年9月1日から平成20年6月30日まで。以下同じ。)の事業年度について,所定の申告期限までに,青色申告書による確定申告を行った(以下,平成17年8月期ないし平成20年6月期の確定申告を「本件各確定申告」という。)。  本件に至る経緯ア原告は,本件店舗において,客のパチンコ玉等の出玉と交換するための景品として,景品交換所において現金と交換することができる景品(以下「特殊景品」という。)及びお菓子,たばこ等の一般景品を仕入れている(以下,特殊景品と一般景品を併せて「特殊景品等」という。)。 イパチンコ業における売上げは,客への貸玉代金であり,売上原価は,客がパチンコ等により得た出玉と交換する特殊景品等の仕入金額である。原告では,売上金額から売上原価の額を控除して売上総利益の金額を算出していたが,当該売上原価の額については,特殊景品等の期首棚卸高に当事業年度中の特殊景品等の仕入金額を加えた金額から,特殊景品等の期末棚卸高を控除して算出していた。 ウ原告は,日々の仕入金額について,前日の特殊景品の残数等を参考にして,当日の特殊景品の仕入数量を決定し,原告へ納品された特殊景品の数量に仕入単価を乗じた金額の合計額を特殊景品の仕入金額として計上している。 エ原告では,平成17年8月期から平成20年6月期当時,特殊景品の管理について,原告の従業員であったAに担当させていた。 乗じた金額の合計額を特殊景品の仕入金額として計上している。 エ原告では,平成17年8月期から平成20年6月期当時,特殊景品の管理について,原告の従業員であったAに担当させていた。 オ Aは,平成17年8月期から平成20年6月期当時,特殊景品のうち「E―5000」と呼ばれる物(以下,単に「E―5000」という。)の一部を抜き取り,景品交換所でこれを現金と交換していた(以下,このAの特殊景品の抜き取り行為を「本件不法行為」という。)。 カ原告は,法人税額算定の前提となる会計処理において,売上利益の算定につき,売上金から売上原価を控除する方式により算定しているところ,この売上原価の中には,特殊景品の仕入金額も含まれていた。 キ平成21年2月ころ,呉税務署による原告に対する税務調査の際,本件不法行為の存在が発覚した。  更正処分及び過少申告加算税賦課決定処分呉税務署長は,平成21年7月3日,原告に対し,上記ウの特殊景品の仕入金額の中には,本件不法行為により,実際には顧客に提供していない部分があり,売上原価が過大計上されていること,本件不法行為による損害相当額を損金とし,本件不法行為に基づく損害賠償請求権相当額を益金とすべきこと等を理由として,平成17年8月期の法人税の更正処分(以下「平成17年8月期更正処分」という。),平成18年8月期の法人税の更正処分(以下「平成18年8月期更正処分」という。),平成19年8月期の法人税の更正処分(以下「平成19年8月期更正処分」という。)及び過少申告加算税の賦課決定処分,平成20年6月期の法人税の更正処分(以下「平成20年6月期更正処分」といい,平成17年8月期更正処分,平成18年8月期更正処分及び平成19年8月期更正処分と併せて「本件各更正処分」 の賦課決定処分,平成20年6月期の法人税の更正処分(以下「平成20年6月期更正処分」といい,平成17年8月期更正処分,平成18年8月期更正処分及び平成19年8月期更正処分と併せて「本件各更正処分」という。)及び過少申告加算税の賦課決定処分(以下,平成19年8月期の過少申告加算税賦課決定処分と併せて「本件各過少申告加算税賦課決定処分」といい,本件各更正処分と併せて「本件各処分」という。)をした。  不服申立てア原告は,平成21年8月13日,呉税務署長に対し,本件各処分について,異議申立てをしたが,呉税務署長は,同年10月9日,これを棄却する決定をした。 イ原告は,平成21年11月6日,国税不服審判所長に対し,本件各処分について,審査請求をしたが,国税不服審判所長は,平成22年8月18日に,これを棄却する裁決をした。 ウ原告は,平成23年2月18日,本件各処分の取消しを求め,本訴を提起した(当裁判所に顕著)。 3 争点及び当事者の主張 本件不法行為に基づく損害賠償請求権の益金計上時期(被告の主張)ア不法行為に基づく損害賠償請求権の益金算入時期の判断基準 損害賠償請求権の益金算入時期の原則法人税法22条2項によれば,益金の額に算入すべき金額は,別段の定めがあるものを除き,資本等取引以外の取引に係る当該事業年度の収益の額とすると規定される。 そして,税法上,所得の帰属時期については,収入すべき権利が確定したときとする権利確定主義が採られているところ,法人税法においては,その収益の実現があったときに,収入すべき権利が確定したものとして,その額を当該事業年度の益金の額に算入すべきとされている。 この場合,権利の確定 られているところ,法人税法においては,その収益の実現があったときに,収入すべき権利が確定したものとして,その額を当該事業年度の益金の額に算入すべきとされている。 この場合,権利の確定とは,権利の発生と同一ではなく,権利発生後一定の事情が加わって権利実現の可能性が増大したことを客観的に認識することができるようになったときを意味するものと解される。  損害賠償請求権の益金算入時期の例外法人税基本通達2―1―43(以下「本件通達」という,)は,「他の者から支払を受ける損害賠償金(中略)の額は,その支払を受けるべきことが確定した日の属する事業年度の益金の額に算入するのであるが,法人がその損害賠償金の額について,実際に支払を受けた日の属する事業年度の益金の額に算入している場合には,これを認める。」としている。 これは,他の者の不法行為又は債務不履行などによって,受けた損害に係る損害賠償請求権については,そもそも相手方に損害賠償責任があるのかどうかについて当事者間に争いのあることが少なくないし,仮に相手方に損害賠償責任があることが明確であるとしても,具体的にいかなる金額の損害賠償を受け得るのかについては,当事者間の合意又は裁判の結果等を待たなければ確定しないのが普通であって,損害の発生と同時に損害賠償請求権を行使することが期待できないことから,そのような場合には,不法行為等により損害に係る損失の計上と同時に,これに対応する損害賠償請求権を益金に計上することの例外として,支払を受けることが確定した日の属する事業年度の益金に算入することを確認的に明らかにし,また,法人がその損害賠償請求権の額について実際に支払を受けた日の属する事業年度の益金の額に算入している場合には,これを認めること 定した日の属する事業年度の益金に算入することを確認的に明らかにし,また,法人がその損害賠償請求権の額について実際に支払を受けた日の属する事業年度の益金の額に算入している場合には,これを認めることとしたものである。 そして,法人の役員及び使用人が横領等を行ったことにより当該法人に損害を与えていたことが事後的に発覚した場合においては,当該横領等が個人的なものなのか,法人の脱税行為なのか峻別しにくいケースが多いことから,税務行政の遂行に困難を来したり,収益計上時期の恣意的な操作を許して課税の公平を維持できないといった重大な弊害を防止するため,本件通達は,「他の者から支払を受ける損害賠償金の額」について定め,法人の役員及び使用人に対する損害賠償請求については本件通達の取扱いを適用せず,個々の事案の実態に基づいて処理することとされている。  法人の役員又は使用人に対する損害賠償請求権の益金算入時期上記のとおり,法人の役員及び使用人に対する損害賠償請求については,本件通達の適用はなく,個々の事案の実態に基づいて処理されることとなる。そして,この場合の損害賠償請求権の益金算入時期については,上記の損害賠償請求権の益金算入時期の原則,これを踏まえた本件通達の趣旨に照らして,個々の事案の実態を検討し,法人が横領等による損害の発生と同時に当該請求権を行使することが期待できる客観的状況にあったか否かにより,当該請求権の額の益金算入時期を検討するべきであり,法人が当該請求権の存在・内容等を把握し得ず,当該請求権を行使することが期待できないといえるような客観的状況にあったと認められる場合でない限り,原則どおり,法人の資産の減少となる損失の額をその発生の日である不法行為時の属する事業年度の損金の額に算入 権を行使することが期待できないといえるような客観的状況にあったと認められる場合でない限り,原則どおり,法人の資産の減少となる損失の額をその発生の日である不法行為時の属する事業年度の損金の額に算入し,法人の資産の増加となる損害賠償請求権の額も同一事業年度の益金の額に算入すべきである。 イ本件不法行為に基づく損害賠償請求権について本件不法行為に基づく損害賠償請求権は,以下のとおり,本件各更正処分に対応する各事業年度ごとに算入されるべきである。  本件不法行為の手口は,日計表の特殊景品の在庫数と客への提供数を書き換えるなどの単純なものであるところ,日計表と景品移動数リスト(本件店舗のカウンター係がPOSシステムを通じて行った景品の仕入れから客への提供までの一連の業務に係る景品の取扱数量が印字されたもの。以下同じ。)には,特殊景品「E―5000」の閉店後の実在庫数や客への提供数について不一致が存在した。また,日計表の出品欄に記載された各特殊景品の数量に各仕入単価を乗じて計算した額の合計金額と日計表に記載された特殊景品仕入原価の合計金額には,齟齬が生じていた。  日計表及び景品移動数リストは,本件店舗の事務所内に保管されており,原告代表者は,日計表からその種類の特殊景品がどのくらい出ているかなどを確認していたのであるから,原告代表者が,日計表や景品移動数リストの照合や特殊景品仕入原価の額の再計算さえ行えば,上記の不一致や齟齬に気付くことは容易だった。  よって,平成17年8月期から平成20年6月期までの各事業年度において,原告が本件不法行為に基づく損害賠償請求権の存在及び内容等を把握し得ず,権利行使が期待できないような客観的状況にあったということはできない。したがって,本件不法行為に基づく損害賠償請求権は おいて,原告が本件不法行為に基づく損害賠償請求権の存在及び内容等を把握し得ず,権利行使が期待できないような客観的状況にあったということはできない。したがって,本件不法行為に基づく損害賠償請求権は,それぞれ損害が発生した時に,発生し確定していたといえる。 ウ小括以上から,本件では,本件不法行為により客に提供されなかった特殊景品の仕入金額は,本件不法行為により生じた損失として損金の額に算入され,これと同時に,本件不法行為に基づく損害賠償請求権が益金の額に算入されることになる。その結果,原告の平成17年8月期から平成20年6月期までの原告の所得金額は,原告の確定申告よりも,客に提供されなかった特殊景品の仕入金額相当額分,増加することになる。 (原告の主張)本件不法行為に基づく損害賠償請求権の益金算入時期は,以下の理由から本件不法行為の発覚時とするべきである。 ア本件不法行為に基づく損害賠償請求権の益金算入時期に関して,本件通達の適用があること 本件通達にいう「他の者」には,法人の役員や使用人が含まれるものである。  本件のように法人代表者以外の法人役員や従業員が法人に対し,不法行為を行った本件のような場合,通常は税務申告を担当する中小企業の法人代表者が不法行為時に不法行為の存在を認識することはあり得ず,多くは不法行為が行われた事業年度が終わって以降の事業年度に不法行為の存在に気付くものである。それにもかかわらず,被告が主張するように,法人の役員又は使用人に対する損害賠償請求権の益金算入時期に関しては本件通達が適用されないとすると,法人の役員又は従業員によ って不法行為を行われ,損害が発生した法人は,その不法行為の存在に気付くまでは常に誤った申告をすることを前提にすることになり,本 ては本件通達が適用されないとすると,法人の役員又は従業員によ って不法行為を行われ,損害が発生した法人は,その不法行為の存在に気付くまでは常に誤った申告をすることを前提にすることになり,本件のように,本税のほかに過少申告加算税を追徴される結果となってしまい,納税者に不意打ちとなるから許されない。 イ仮に本件通達が適用されないとしても,原告において本件不法行為に基づく損害賠償請求権の存在・内容を把握することは容易ではなかったこと 仮に,不法行為に基づく損害賠償請求権の益金算入時期につき,法人が当該請求権の存在・内容等を把握し得ず,当該請求権を行使することが期待できないといえるような客観的状況にあったかという基準により判断するとしても,上記アのような弊害があることから,納税者の主観も考慮に入れた総合的な基準によるべきである。  特殊景品の管理は,本件不法行為当時,全面的にAに任されていたのであり,原告代表者がこれを再チェックする体制になっていなかった点に鑑みれば,これを再チェックして不正に気付くことは到底不可能である。実際に,本件不法行為の存在は,税務調査により発覚したものであり,原告代表者が発見したものではない。  国税通則法65条4項の正当な理由の有無(本件各過少申告加算税賦課決定処分に係る争点)(原告の主張)ア仮に,本件各更正処分が適法であるとしても,原告には,各事業年度の申告期限までに,被告主張の内容での確定申告を行うことは不可能であったから,国税通則法65条4項の正当な理由があった。 イ本件では,特殊景品の管理はAが行っており,原告の事務所において,平成21年1月23日に呉税務署による税務調査の際,本件不法行為が発覚したものであるが,原告は,それまでAによ があった。 イ本件では,特殊景品の管理はAが行っており,原告の事務所において,平成21年1月23日に呉税務署による税務調査の際,本件不法行為が発覚したものであるが,原告は,それまでAによる本件不法行為の存在を認識しておらず,これを是正することは不可能な状況にあり,確定申告後に 事情変更があった場合であるから,真に納税者の責めに帰することができない客観的な事情があり,過少申告加算税の趣旨に照らしても,なお納税者に過少申告加算税を賦課することが不当又は酷になる場合に該当する。 ウよって,本件各過少申告加算税賦課決定処分は違法である。 (被告の主張)上記(被告の主張)イのとおり,本件不法行為は,原告において,容易に発覚し得るものであったというべきであり,原告は,日計表や景品移動数リストの調査・確認を行うことを怠り,また,Aに対する監督上の注意義務を尽くさなかったものである。このような原告の落ち度は,まさに納税者側の主観的な事情というべきであり,真に納税者の責めに帰することができない客観的な事情に該当するものではない。よって,正当な理由があると認めることはできない。 第3 当裁判所の判断 1 本件不法行為に基づく損害賠償請求権の益金計上時期について 本件不法行為に基づく損害賠償請求権の益金計上時期について,本件通達の適用があるかア法人税法上,内国法人の各事業年度の所得の金額の計算上当該事業年度の益金の額に算入すべき金額は,別段の定めがあるものを除き,資本等取引以外の取引に係る収益の額とするものとされ(法人税法22条2項),当該事業年度の収益の額は,一般に公正妥当と認められる会計処理の基準に従って計算すべきものとされている(同条4項)。したがって,ある収益をどの事業年度に計上す するものとされ(法人税法22条2項),当該事業年度の収益の額は,一般に公正妥当と認められる会計処理の基準に従って計算すべきものとされている(同条4項)。したがって,ある収益をどの事業年度に計上すべきかは,一般に公正妥当と認められる会計処理の基準に従うべきであり,これによれば,収益は,その実現があった時,すなわち,その収入すべき権利が確定したときの属する年度の益金に計上すべきものというべきである(権利確定主義。最高裁平成5年11月25日第一小法廷判決・民集47巻9号5278頁参照)。イ本件通達は,「他の者から支払を受ける損害賠償金(中略)の額は,その支払を受けるべきことが確定した日の属する事業年度の益金の額に算入するのであるが,法人がその損害賠償金の額について実際に支払を受けた日の属する事業年度の益金の額に算入している場合には,これを認める。」と定めているから,本件通達は,上記アの権利確定主義によりつつ,他の者から支払を受ける損害賠償金の算入時期については,支払を受けた日をも基準として,一律に取り扱うことを明確にしたものというべきである。 ウこのように本件通達は,損害賠償金について,その支払を受けた時点を基準として,益金の算入時期を定める取扱いを許容しているが,これは,一般に不法行為に基づく損害賠償請求権は,突発的・偶発的に取得する債権であり,不法行為の相手方の身元や損害の金額その他権利の内容,範囲が明らかでないことが多いのが通常であるという点に基づくものと考えられる。 もっとも,法人の役員や従業員等内部の者(以下「法人内部の者」という。)により,法人に対する不法行為(典型的には法人資産の横領等が想定される)がなされた場合には,上記のような相手方の身元や損害の金額その他権利の内容,範囲が明らかでない (以下「法人内部の者」という。)により,法人に対する不法行為(典型的には法人資産の横領等が想定される)がなされた場合には,上記のような相手方の身元や損害の金額その他権利の内容,範囲が明らかでないのが一般的であるとはいえないから,上記不法行為に基づく損害賠償請求権の一般論は,必ずしも法人内部の者にも妥当するものではない。のみならず,法人内部の者による法人に対する不法行為として一般に想定される法人資産の横領行為があった場合には,それが法人自身による行為なのか,法人の役員等による個人的な行為なのか峻別しにくい場合があるものと考えられ,このような法人内部の者による不法行為も含めて,通達により,一律に支払を受けた時期を基準として益金算入日を決するという取扱いをすることは合理的でない。 そうすると,不法行為に基づく損害賠償請求権といっても,法人内部の者による不法行為とそれ以外の者による不法行為とでは,その一般的な状況が異なるというべきであり,本件通達は,このような観点から,「他の者」との限定を付して,上記の不法行為の相手方の身元や損害の金額その他権利の内容,範囲が明らかでないことが多いという一般論の妥当する法人内部の者以外の者に限り,一律に支払を受けた時期を基準として益金算入日を決することを許容することとしたものと考えられる。したがって,本件通達の「他の者」には,法人内部の者は含まれないものと考えるのが合理的である。 エこれを本件について見ると,本件不法行為の行為者であるAは,原告の当時の従業員であった者であるから,本件通達の「他の者」には当たらない。よって,本件において,本件通達が適用され,これに基づく取扱いがなされるべきとする原告の主張は採用することができない。  本件不法行為に基づく損害賠償請求権の 通達の「他の者」には当たらない。よって,本件において,本件通達が適用され,これに基づく取扱いがなされるべきとする原告の主張は採用することができない。  本件不法行為に基づく損害賠償請求権の益金算入時期はいつかア上記のとおり,本件においては,本件通達は適用されないから,本件不法行為に基づく損害賠償請求権の益金算入時期は,上記アの権利確定主義に基づいて,その権利の確定した時点となる。イもっとも,ここでいう権利の確定とは,権利の発生とは同一ではなく,権利発生後一定の事情が加わって権利実現の可能性を客観的に認識することができるようになることを意味するものと解すべきであり,これは各権利の内容や性質ごとに具体的な事情を考慮して個別に検討すべきものである。そして,本件不法行為のように法人内部の者による不法行為に基づく損害賠償請求権の場合も,一般的ではないにせよ,その具体的な状況によっては,権利発生の時点では,権利内容を把握することが困難なため,直ちには権利行使(権利の実現)を期待することができないような場合もあり得るところである。このような場合には,権利(損害賠償請求権)が法的には発生しているが,未だ権利実現の可能性を客観的に認識することができるとはいえないといえるから,当該事業年度の益金に計上すべきであるとはいえないというべきである。ただし,この判断は,税負担の公平や法的安定性の観点からして客観的にされるべきものであるから,課税対象となる立場にある法人の代表者に一般的に要求される能力・水準を基準にして,権利(損害賠償請求権)の存在・内容等を把握し得ず,権利行使が期待できないといえるような客観的状況にあったかどうかという観点から判断していくべきであり,不法行為が行われた時点が属する事業年度当時な 権利(損害賠償請求権)の存在・内容等を把握し得ず,権利行使が期待できないといえるような客観的状況にあったかどうかという観点から判断していくべきであり,不法行為が行われた時点が属する事業年度当時ないし納税申告時に納税者がどういう認識でいたか(納税者の主観)は問題とすべきでない。これに対し,原告は,通常は税務申告を担当する中小企業の法人代表者が不法行為時に不法行為の存在を認識することはあり得ず,多くは不法行為が行われた事業年度が終わって以降の事業年度に不法行為の存在に気付くものであるとして,納税者の主観をも考慮した総合的な基準によるべきと主張する。しかしながら,納税者の主観により益金の算入時期が左右されるとなると,納税者の恣意的判断により算入時期を遅らせる等の弊害を防止しようとした権利確定主義の趣旨に反するし,適切に確定申告を行ってきた他の納税者との公平性も害しかねず,原告が主張するような主観面をも考慮した基準によるべきと考えるべきではないし,納税者個人が具体的に認識していなくとも,上記のように納税者の通常の判断能力を前提に客観的に権利の存在を認識できる状況にあったかどうかという基準によれば,納税者に不可能を強いるものでもないといえる。よって,原告の主張は採用しない。 ウ上記イを前提に,以下,本件不法行為の益金算入時期を検討する。  掲記の証拠等によれば,以下の事実が認められる。 aAの本件店舗における地位Aは,平成17年8月期から平成20年6月期当時,本件店舗において,店長よりも上の地位にあった者であり,その上司は原告代表者であった(乙2,3,弁論の全趣旨)。 Aは,本件店舗において,現金を扱う以外の全般的な仕事をしていた(乙2,3,10,弁論の全趣旨)。 上の地位にあった者であり,その上司は原告代表者であった(乙2,3,弁論の全趣旨)。 Aは,本件店舗において,現金を扱う以外の全般的な仕事をしていた(乙2,3,10,弁論の全趣旨)。 b 本件不法行為の具体的内容⒜ 日計表について(当事者間に争いのない事実)Ⅰ 本件店舗の平成17年8月期から平成20年6月期当時の日々の業務においては,カウンター係の従業員は,本件店舗の閉店後,特殊景品等の実在庫数及びPOSシステム(販売時点情報管理システム)のデータ等を基に別紙1の様式の日計表を営業日ごとに作成していた(当事者間に争いのない事実)。 Ⅱ 日計表の項目のうち,特殊景品に関するものの意味については,以下のとおりである(当事者間に争いのない事実)。 ⅰ 「品目」欄の「P」はパチンコを示し,「S」はスロットを示し,同各欄の「E―5000」「E―1000」「E―500」「E―100」の各項目は,特殊景品の種類を示す。 ⅱ 「前日繰越」欄は,前営業日終了時点の特殊景品の実在庫数を示し,その数は,前営業日の日計表の「残」欄記載の数と一致する。 ⅲ 「出品」欄は,当該営業日において客に提供した特殊景品の数量を示し,「残」欄は,当該営業日終了時点の特殊景品の実在庫数を示す。 ⅳ 「原価」欄は,特殊景品の原価の単価を示す。 ⅴ 日計表の右上にある「金額」欄の「合計」の項目は,「出品」欄記載の数量に「原価」欄記載の金額を掛けて算出した各特殊景品の原価を合計した金額を示す(以下,この合計金額を記載する箇所を,単に「合計」欄という。)。 ⒝ 景品移動リストについて(当事者間に争いのない事実)Ⅰ 景品移動リストとは,本件店舗のカウンター係の従業員がPOSシステムを通じて行った景品の仕入れから客へ 。)。 ⒝ 景品移動リストについて(当事者間に争いのない事実)Ⅰ 景品移動リストとは,本件店舗のカウンター係の従業員がPOSシステムを通じて行った景品の仕入れから客への提供までの一連の業務に係る景品の取扱数量が各営業日ごとに印字されたものであり,その様式は別紙2のとおりである。 Ⅱ 景品移動リストの項目の意味は以下のとおりである。 ⅰ 「特殊景品5000」,「特殊景品1000」,「特殊景品500」,「特殊景品100」の記載は,特殊景品の種類を示し,「特殊景品5000」とは「E―5000」を指す。 ⅱ 「繰越在庫」欄は,前営業日からの繰越在庫数を示し,前営業日の「実在庫」欄記載の数量及び前営業日の日計表の「残」欄記載の数量と一致する。 ⅲ 「入庫・返品」欄は,仕入れ・返品による合計の入庫数を示す。 ⅳ 「総出庫」欄は,客への提供数を示し,同営業日の日計表の「出品」欄記載の数量(ただし,同種類の特殊景品の「P」「S」欄各記載の数量を合計したもの)と一致する。 ⅴ 「予定在庫」欄は,当該営業日終了時点における計算上の在庫数を示し,「実在庫」欄は,当該営業日終了時点における実際の在庫数を示し,当該営業日分の日計表の「残」欄の数量と一致する。 ⅵ「誤差」欄は,計算上の在庫数と実際の在庫数の差を示す。 ⒞ 本件不法行為の方法について(当事者間に争いのない事実)Ⅰ 日計表の通常の作成手順ⅰ カウンター係の従業員は,日計表の「出品」欄に当該営業日において客に提供した特殊景品の数量を,「残」欄に閉店後の特殊景品の実在庫数を鉛筆で記載していた。この際,客に提供した特殊景品の数量については,パ ンター係の従業員は,日計表の「出品」欄に当該営業日において客に提供した特殊景品の数量を,「残」欄に閉店後の特殊景品の実在庫数を鉛筆で記載していた。この際,客に提供した特殊景品の数量については,パチンコ分とスロット分に分けて,それぞれ「P」「S」の「出品」欄に記載する一方,実在庫数はまとめて「P」の欄に記載していた。 ⅱ Aは,従業員が作成した日計表の「出品」欄に記載された客に提供した特殊景品等の数量に原価の単位を乗じて,原価の合計金額を求め,同額を日計表の「合計」欄に記載していた。 Ⅱ 本件不法行為ⅰ Aは,上記Ⅰⅱの原価の合計金額を日計表に記載した後,同表の「P」「E―5000」の「残」欄の数量を減らし,同「出品」欄の数量を増やすといった書き換えを行うという方法で本件不法行為を行っていたが,日計表の「合計」欄には手を加えなかった。 ⅱ Aは,上記ⅰの後,翌営業日の日計表の「P」「E―5000」の「前日繰越」欄の数量を減らす書き換えも行い,さらに翌営業日の景品移動リストの「特殊景品5000」の「繰越在庫」欄についても,その数量が,上記ⅰの書き換え後の日計表の「残」欄記載の数量と同じになるように,変更入力をしていたことがあった。 c 景品移動リスト及び日計表の保管確認状況等⒜ 景品移動リストは,本件店舗における原告代表者の席の近くに,1か月分程度をまとめて置いておき,その後,従業員が綴るなどして保管していた(乙2,弁論の全趣旨)。 ⒝ 日計表は,Aが毎日,ファイルに綴って,本件店舗の事務所に置いていた(乙2,10,弁論の全趣旨)。 ⒞ 原告代表者は,どの種類の特殊景品等がどれくらい出ているかなどを日計表を見て確認していた(当事者間に争いのない事実)。  上記認定の各事実を いていた(乙2,10,弁論の全趣旨)。 ⒞ 原告代表者は,どの種類の特殊景品等がどれくらい出ているかなどを日計表を見て確認していた(当事者間に争いのない事実)。  上記認定の各事実を前提に検討すると,本件不法行為は,Aが日計表の「P」「E―5000」の「残」欄の数量を減らし,同「出品」欄の数量を増やすといった書き換えを行うという方法でなされていたものの,Aは日計表の「合計」欄には手を加えていなかったのであるから,Aが書き換えた後の日計表の「出品」欄記載の数量に基づいて算出した特殊景品の原価の合計金額と日計表の「合計」欄の合計金額とが齟齬することになるのは明らかである。そうすると,本件不法行為の存在は,他の資料を参照するまでもなく,日計表の合計欄の金額を再計算するだけで容易に発覚するような状況にあったといえる。 のみならず,Aは,日計表の「出品」欄と「残」欄の記載を書き換えつつ,①当該営業日分の景品移動リストの「実在庫」欄や②当該営業日分の景品移動リストの「総出庫」欄には,何ら手を加えていなかったのであるから,①の「実在庫」欄記載の数量については,これと本来一致するはずの同営業日分の日計表の「残」欄及び翌営業日分の景品移動リストの「繰越在庫」欄記載の各数量とが一致しなくなり,また,②の「総出庫」欄についても,これと本来一致するはずの,同営業日分の日計表の「出品」欄記載の数量(ただし,同種類の特殊景品の「P」「S」欄各記載の数量を合計したもの)とが一致しなくなることも明らかである。 このような状況は,日計表と景品移動リストを比較対照すれば容易に発覚したものである。 そして,日計表及び景品移動リストのいずれも,上記認定の保管状況からして,原告代表者において,容易に確認することができたものといえるから トを比較対照すれば容易に発覚したものである。 そして,日計表及び景品移動リストのいずれも,上記認定の保管状況からして,原告代表者において,容易に確認することができたものといえるから,法人の代表者に一般的に要求される能力・水準を基準にして 考えれば,日計表及び景品移動リストの記載を書き換えることができるような立場にあった者であるAが本件不法行為を行っており,その損害額についても日計表により書き換えられた特殊景品の数量から容易に算出できるといえるから,本件不法行為当時には,原告代表者において,これに基づく損害賠償請求権の存在・内容等を把握し,権利行使が期待できるような客観的状況にあったものと認めることができる。 なお,原告代表者は,日計表とPOSのデータのチェックは行っておらず,本件不法行為の存在を認識していなかったことがうかがわれるが,このような原告代表者自身の個人的な認識は,上記判断に影響するものではない。 エよって,本件不法行為に基づく損害賠償請求権は,これがなされた時点の属する年度の益金に算入すべきことになる。  また,原告が本件各確定申告当時に,特殊景品の仕入高として申告していた金額のうち,本件不法行為によりAが横領した特殊景品分については,実際には顧客に提供されていないから,仕入高ではなく,当該事業年度の損失の額で資本等取引以外の取引に係るもの(法人税法22条3項3号)として,その額を損失が発生した年度の損金に計上すべきものと解される(最高裁昭和43年10月17日第一小法廷判決・裁判集民事92号607頁参照)。 以上を前提に,本件各更正処分の適法性について検討する。ア平成17年8月期更正処分について証拠(甲3・別表10―1)及び弁論の全趣旨によれば 事92号607頁参照)。 以上を前提に,本件各更正処分の適法性について検討する。ア平成17年8月期更正処分について証拠(甲3・別表10―1)及び弁論の全趣旨によれば,平成17年8月期における本件不法行為による損失額は,213万4881円と認められるから,これを損金として計上すべきであり,同額の特殊景品の仕入金は売上原価の過大計上として確定申告時の売上原価から差し引くこととなる。そして,同額の損害賠償請求権が益金として計上されることとなる。 そうすると,確定申告時より213万4881円多く繰越欠損金の当期控除額が増加することとなるから,その分翌期へ繰り越す欠損金は,確定申告(甲4の1・1頁)の際の翌期へ繰り越す欠損金4172万6298円から213万4881円をさらに差し引くこととなり,その金額は3959万1417円となるところ,平成17年8月期更正処分の翌期へ繰り越す欠損金3963万1793円の方が上記よりも高額であるから,平成17年8月期更正処分は適法である。なお,原告は所得税額等の還付金額57円を下回る部分の取消も求めているが,平成17年8月期更正処分において還付金額57円を下回る部分は存在しない(甲1の1)。 イ平成18年8月期更正処分について証拠(甲3・別表10―2)及び弁論の全趣旨によれば,平成18年8月期における本件不法行為による損失額は,921万5822円と認められるから,これを損金として計上すべきであり,同額の特殊景品の仕入金は売上原価の過大計上として確定申告時の売上原価から差し引くこととなる。そして,同額の損害賠償請求権が益金として計上されることとなる。 そうすると,当期確定申告時より921万5822円多く繰越欠損金の当期控除額が増加することとなり,上記アで認められ 差し引くこととなる。そして,同額の損害賠償請求権が益金として計上されることとなる。 そうすると,当期確定申告時より921万5822円多く繰越欠損金の当期控除額が増加することとなり,上記アで認められる翌期へ繰り越す欠損金3959万1417円から確定申告時の繰越欠損金の当期控除額である3014万8781円(甲4の2・別表7)に上記921万5822円を加算した後の繰越欠損金の当期控除額3936万4603円を差し引くことになるから,その金額は22万6814円となるところ,平成18年8月期更正処分の翌期へ繰り越す欠損金29万7472円の方が上記よりも高額であるから,平成18年8月期更正処分は適法である。なお,原告は所得税額等の還付金額273円を下回る部分の取消も求めているが,平成18年8月期更正処分において還付金額273円を下回る部分は存在しない(甲1の2)。 ウ平成19年8月期更正処分について 証拠(甲3・別表10―3)及び弁論の全趣旨によれば,平成19年8月期における本件不法行為による損失額は,1289万0038円と認められるから,これを損金として計上すべきであり,同額の特殊景品の仕入金は売上原価の過大計上として確定申告時の売上原価から差し引くこととなる。そして,同額の損害賠償請求権が益金として計上されることとなる。 また,平成19年8月期に繰り越される欠損金額は,上記イで認定した22万6814円となる。 そうすると,別紙3の表の「平成19年8月期」欄のとおり,差引納付すべき法人税額は90万9000円となり,同額は,平成19年8月期更正処分の差引納付すべき法人税額75万4500円を上回るものであり,翌期へ繰り越す欠損金も0円であるから,平成19年8月期更正処分は適法である。 エ平成20年6月期更正処分について 証拠 期更正処分の差引納付すべき法人税額75万4500円を上回るものであり,翌期へ繰り越す欠損金も0円であるから,平成19年8月期更正処分は適法である。 エ平成20年6月期更正処分について証拠(甲3・別表10―4)及び弁論の全趣旨によれば,平成20年6月期における本件不法行為による損失額は,1049万7760円と認められるから,これを損金として計上すべきであり,同額の特殊景品の仕入金は売上原価の過大計上として確定申告時の売上原価から差し引くこととなる。そして,同額の損害賠償請求権が益金として計上されることとなる。 また,平成20年6月期に繰り越される欠損金額は,上記ウで認定したとおり0円となるから,原告が確定申告において繰り越し欠損金からの当期控除額とした1339万1519円はこれを加算すべきこととなる。 そうすると,別紙3の表の「平成20年6月期」欄のとおり,差引納付すべき法人税額は658万1700円となり,同額は,平成20年6月期更正処分の差引納付すべき法人税額632万4300円を上回るものであり,翌期へ繰り越す欠損金も0円であるから,平成20年6月期更正処分は適法である。  2 国税通則法65条4項の正当な理由の有無について 上記1の検討をふまえると,平成19年8月期の過少申告加算税の額は,別紙4の表の「平成19年8月期」欄記載のとおり,11万円であり,同額は平成19年8月期の過少申告加算税賦課決定処分の納付すべき過少申告加算税の金額8万7500円を超えている。  上記1の検討をふまえると,平成20年6月期の過少申告加算税の額は,別紙4の表の「平成20年6月期」欄記載のとおり,96万2000円であり,同額は平成20年6月期の過少申告加算税賦課決定処分の納付すべき過少申告加算税の金額92万3000円を 過少申告加算税の額は,別紙4の表の「平成20年6月期」欄記載のとおり,96万2000円であり,同額は平成20年6月期の過少申告加算税賦課決定処分の納付すべき過少申告加算税の金額92万3000円を超えている。  そこで,原告が主張する平成19年8月期及び平成20年6月期の確定申告において,本件不法行為に基づく損害賠償請求権を益金として算入していなかったことについて,国税通則法65条4項所定の正当な理由が認められるかを,以下検討する。 アこの点,過少申告加算税は,過少申告による納税義務違反の事実があれば,原則としてその違反者に対し課されるものであり,これによって,当初から適法に申告し納税した納税者との間の客観的不公平の実質的な是正を図るとともに,過少申告による納税義務違反の発生を防止し,適正な申告納税の実現を図り,もって納税の実を挙げようとする行政上の措置であり,主観的責任の追及という意味での制裁的な要素は重加算税に比して少ないものである。したがって,国税通則法65条4項にいう「正当な理由があると認められる」場合とは,真に納税者の責めに帰することのできない客観的な事情があり,過少申告加算税の上記趣旨に照らしても,なお,納税者に過少申告加算税を賦課することが不当又は酷になる場合をいうものと解するのが相当である(最高裁判所平成18年4月20日第1小法廷判決・民集60巻4号1611頁参照)。イこれを本件についてみると,原告は,本件不法行為の存在を認識しておらず,確定申告後にこれが発覚したものであるから事情変更があった場合であると主張するが,上記1ウで判断したとおり,本件不法行為に基づく損害賠償請求権の存在は客観的に把握できる状況にあったのであり,これを妨げるような具体的事情は何ら認められない。 あった場合であると主張するが,上記1ウで判断したとおり,本件不法行為に基づく損害賠償請求権の存在は客観的に把握できる状況にあったのであり,これを妨げるような具体的事情は何ら認められない。ウしたがって,原告の主張は単に原告が本件不法行為を認識していなかったというものにすぎず,真に納税者の責めに帰することのできない客観的な事情は認められないから,原告が主張する平成19年8月期及び平成20年6月期の確定申告において,本件不法行為に基づく損害賠償請求権を益金として算入していなかったことについて,国税通則法65条4項所定の正当な理由は認められない。 よって,本件各過少申告加算税賦課決定処分は適法である。 3 結論以上から本件各処分は全て適法であって,原告の請求にはいずれも理由がないから,これらを棄却することとして主文のとおり判決する。 広島地方裁判所民事第3部裁判長裁判官梅本圭一郎裁判官岩井一真裁判官増子由一

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