-1-平成20年11月27日判決言渡東京簡易裁判所平成20年(少エ)第25号敷金返還請求事件少額異議判決主文 原告と被告間の東京簡易裁判所平成20年(少コ)第1420号敷金返還請求事件につき,同裁判所が平成20年6月30日言い渡した少額訴訟判決を次のとおり変更する。 被告は,原告に対し,11万0641円を支払え。 原告のその余の請求を棄却する。 訴訟費用は,異議申立ての前後を通じて,これを4分し,その3を被告の負担とし,その余を原告の負担とする。 事実及び理由 第1請求被告は,原告に対し,14万5000円を支払え。 第2事案の概要 請求原因の要旨原告は,被告との間で,平成14年11月25日,東京都文京区ab丁目c番d号所在Aマンションe号室(以下「本件物件」という。)の賃貸借契約(以下「本件契約」という。)にかかる敷金契約を締結したが,平成18年5月31日本件契約終了により本件物件を明け渡したので,原告が被告に差し入れた敷金29万円から平成18年5月分の未払賃料14万5000円を控除した14万5000円の支払を求める。 被告の異議申立ての理由及び主張の要旨(1)少額訴訟手続の違法被告は,異議申立ての理由として,本件少額訴訟判決は手続に違法があり全部不服であるとして,以下のとおり述べる。すなわち,上記判決は,被告-2-が少額訴訟判決には応じられない旨表明していたにもかかわらず,これを無視して言い渡されたものである。また,被告が第一回口頭弁論期日において,少額訴訟は希望しない旨繰り返し陳述していたが,裁判官や司法委員に翻意を促されたほか,書記官はこのことを調書に記載せず,さらに裁判官は,被告の真意を承知しながら,当事者(素人)の無知に乗じて少額訴訟判決を言い渡したものである。これらは民訴法31 判官や司法委員に翻意を促されたほか,書記官はこのことを調書に記載せず,さらに裁判官は,被告の真意を承知しながら,当事者(素人)の無知に乗じて少額訴訟判決を言い渡したものである。これらは民訴法312条2項1,2号に該当し,直ちに取消しを免れない。そこで,違法,不当な手続によってなされた本件少額訴訟判決については,すべて取り消した上,民訴法373条3項4号により通常の手続に移行する決定を求める。 (2)遅延利息請求権との相殺(抗弁)ア本件契約により原告が支払うべき本件賃料は,月額14万5000円で毎月末日に翌月分支払の約定で(本件契約書3条1項),約定遅延利息は日歩20銭(年73%)と規定されている(本件契約書7条)。 原告は平成17年11月分から賃料の支払をしなかったが,平成18年4月27日原告の親と思われる者から,平成17年11月分から平成18年4月分までの未払賃料の元本及び同年4月6日本件契約解除後の賃料相当損害金の合計87万円の支払がされた。 イそこで,前記未払期間の賃料(ただし,平成18年4月分は,本件契約解除日が平成18年4月6日であることから,同日までの日割計算により2万9000円)より生じた同月27日までの遅延利息は,上記約定遅延利息の利率により算出すると,別紙遅延利息計算書1のとおり合計17万1796円となる。したがって,原告が求める敷金残金14万5000円については,本件契約書8条3項第1文及び第2文に基づき,上記17万1796円をもって対当額で相殺する旨の意思表示をする。 (3)原状回復費用請求権との相殺(予備的抗弁)ア本件契約期間中,原告の居住・使用により,以下のとおり,本件物件が-3-著しく損耗・毀損した。それらは,通常の使用では到底生じ得ない程度のもので,原告が賃借人としての善管注意義務に違反して )ア本件契約期間中,原告の居住・使用により,以下のとおり,本件物件が-3-著しく損耗・毀損した。それらは,通常の使用では到底生じ得ない程度のもので,原告が賃借人としての善管注意義務に違反して生じさせたものであることは明らかである。 ①クロス(壁紙)及び床面フローリングに,家具の出入れの際に付いたと見られる大きな傷跡が残っていた。 ②畳が激しくささくれ,そのまま使用を継続することはできない状態であった。 ③襖が一カ所大きく破れていた。 ④ガス台及びその周辺が焦げ,非常に汚れていて,これらは専門業者による特殊な工具を使わないと除去できない状態であった。 ⑤敷居等のアルミサッシが黒ずみが激しく,非常に汚れており,通常の掃除では除去することは不可能で,専門業者に頼まないと除去できない状態であった。 ⑥その他,賃貸開始時には存在しなかった大小様々なキズが室内のいたるところに存在した。 イしたがって原告は,本件契約書18条1項なお書き第1号及び第2号により,上記について原状に復すべき義務があったにもかかわらず,明渡しの際一切原状回復をしなかったので,被告において,以下のとおり損耗・毀損箇所を修繕し原状回復費用を支出した。 ①クロス(壁紙)張替え工事9万8000円②CF(クッションフロア)工事1万8000円③畳表替え2万7000円④表具工事(襖の張替え)1万0000円⑤雑工事1万9000円⑥ハウスクリーニング(ガス台の汚れを特殊な工具を用いて除去,敷居のアルミサッシの汚れを専門業者により除去)-4-3万8000円⑦ハウスクリーニング(通常の室内清掃のほか,換気扇・玄関・窓サッシ・ガラス・照明器具・ベランダ・エアコン等全般のクリーニング)1万0000円⑧上記①ないし⑦の消費税1万1000円合計 円⑦ハウスクリーニング(通常の室内清掃のほか,換気扇・玄関・窓サッシ・ガラス・照明器具・ベランダ・エアコン等全般のクリーニング)1万0000円⑧上記①ないし⑦の消費税1万1000円合計23万1000円ウよって,被告は,前記原告が求める敷金残金14万5000円について,上記原状回復費用23万1000円をもって対当額で相殺する旨の意思表示をする。 争点 (1)本件未払賃料から生じた遅延利息について,約定利率を適用することの当否(2)本件物件の原状回復に要した費用との相殺の当否第3当裁判所の判断 先ず,少額訴訟手続が違法であるとの異議理由については,本件少額訴訟の第一回口頭弁論期日において,冒頭裁判官が少額訴訟手続についての説明をし,それに対し被告から,少額訴訟手続は希望しない旨の意思表明もなく,通常訴訟手続へ移行する旨の申述がなかったため,少額訴訟手続で審理・裁判されたことは,当裁判所に顕著な事実である。したがって,本件少額訴訟手続が不当・違法であるとする被告の主張は当を得ず,その他の異議理由も相当とは認められない。 なお,少額訴訟における異議審は,少額訴訟の手続の特質を斟酌しつつ進められる最終審であり,民訴法379条2項が同373条3項4号を準用していないことからも,異議審においては,原則として,通常手続への移行決定はできないものと解される。 争点(1) について-5-(1)原告が被告との間で締結した本件契約に基づく賃料(月額14万5000円)について,平成17年11月分から平成18年4月分までの支払をせず,原告の父親が被告に対し,原告に代わって,前記期間の未払賃料及び賃料相当損害金計87万円を支払ったこと,及び本件契約書(第7条)には,約定遅延利息として日歩20銭と規定されていることは,当事者 ず,原告の父親が被告に対し,原告に代わって,前記期間の未払賃料及び賃料相当損害金計87万円を支払ったこと,及び本件契約書(第7条)には,約定遅延利息として日歩20銭と規定されていることは,当事者間に争いがない。 (2)被告は,本件契約書第7条に規定する遅延利息は,本件契約に基づく賃料不払の場合のペナルティーであることなどから,本件未払賃料に対する遅延利息の算出について同条の日歩20銭の利率を適用している。これに対し,原告は,本件約定利率は,不当に高く公序良俗(民法90条)に違反していること,消費者契約法10条の趣旨に反し原告に一方的に不利益な規定であり有効とは認められない,と主張している。 (3)そこで判断するに,本件契約書(甲1)7条の遅延損害金の規定は,本件契約における消費者ともいうべき賃借人が,同契約に基づく賃料債務の支払を遅延した場合における損害賠償額の予定又は違約金の定めと解せられるところ,その場合は,遅延損害金の率の上限は年14.6パーセントとし,それより高率の遅延損害金が定められている場合には,民法420条の規定にかかわらず,年14.6パーセントを超える額の支払を請求することができず,その超過部分は無効と判断されるものである。それを前提に検討すると,被告本人尋問の結果によると,被告は原告を含め複数の者に少なくともある程度反復・継続的に居住物件を賃貸していることが認められ,消費者契約法にいういわゆる事業者とみることができる。そうすると,本件契約書7条に基づく日歩20銭(年73%)の遅延利息を求めるのは,通常の場合と比較して著しく高額で賃借人の予測をはるかに超える負担義務を課し,一方的に原告に不利益を強制することになるといえる。したがって,原告は,本件遅延利息として消費者契約法の規定する範囲で責任を負うものと解するのが しく高額で賃借人の予測をはるかに超える負担義務を課し,一方的に原告に不利益を強制することになるといえる。したがって,原告は,本件遅延利息として消費者契約法の規定する範囲で責任を負うものと解するのが相当であり,これに反する被告の主張は採用できない。 -6-(4)以上によれば,原告が支払義務を負う遅延利息は,別紙遅延利息計算書2のとおり年14.6%で計算した3万4359円となり,それを超える部分については無効であって,同額を原告の請求する敷金残額14万5000円と相殺すると11万0641円が敷金残額ということになる。 争点(2) について(1)被告は,予備的な抗弁として,本件物件には前記第2の2(3) で主張する損耗・毀損があり,それらの原状回復は,本件契約書18条1項に基づき原告が自らの費用でなすべきものであると主張し,それに沿う供述をする。 (2)しかしながら,前記各項目について,原告が賃借人としての善管注意義務に違反して生じさせた損耗・毀損であることについて,写真等を含めそれらを認めるに足りる具体的証拠はない。 また,証拠(甲1,2,乙2ないし5,9,10,原告本人,被告本人)によれば,①本件物件は築25年くらいで,原告は妻と二人で本件物件に居住し,賃借期間中通常の用法で使用し特に問題となる点はなかったこと,②被告は,本件物件の仲介業者であるB商事に任せており,本件物件明渡しの際,B商事の担当者が原告と共に本件物件を点検・確認したが,担当者からは綺麗に使っていると言われ,特に問題箇所の指摘はなかったこと,③原告が本件物件を退去した後,被告から敷金の精算についての説明はなく,その後の話合いも行われなかったこと,が認められ,これに反する被告本人の供述は採用できず,結局,被告が主張する原状回復費用を原告負担とすることは相当では 後,被告から敷金の精算についての説明はなく,その後の話合いも行われなかったこと,が認められ,これに反する被告本人の供述は採用できず,結局,被告が主張する原状回復費用を原告負担とすることは相当ではない。 以上によれば,被告の前記争点(1)については前記第3の2で認定の範囲で認められ,同争点(2)の予備的抗弁は認められない。 よって,原告の請求は,11万0641円の限度で認容しその余は棄却することとし,主文掲記の少額訴訟判決を変更し,主文のとおり判決する。 東京簡易裁判所民事第9室-7-中島寛裁判官(別紙添付省略)
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