令和6年3月13日判決言渡同日原本領収裁判所書記官令和4年(ワ)第24502号名誉毀損事件口頭弁論終結日令和5年12月25日判決当事者別紙当事者目録記載のとおり 主文 1 原告の請求をいずれも棄却する。 2 訴訟費用は原告の負担とする。 事実及び理由 第1 請求 1 被告らは、原告に対し、連帯して2200万円及びこれに対する令和4年7月20日から年3分の割合による金員を支払え。 2 被告讀賣テレビ放送株式会社(以下「被告会社」という。)は、原告に対し、被告会社が制作放送する「情報ライブミヤネ屋」の番組内において、別紙謝罪放送目録記載の謝罪放送を1回行え。 3 被告A(以下「被告A」という。)は、原告に対し、「B法律事務所」のホームページ(C)に別紙謝罪広告目録記載の謝罪広告を3か月間掲載せよ。 第2 事案の概要本件は、宗教法人である原告が、被告会社により制作・放送されたテレビ番組にコメンテーターとして出演していた被告Aの発言により、原告の名誉が毀 損されたとして、被告らに対し、民法719条に基づく損害賠償及び民法723条に基づく謝罪広告を求める事案である。 1 争いのない事実等(当事者間に争いがない事実並びに後掲各証拠(特に記載がない場合は枝番号を含む。以下同じ。)及び弁論の全趣旨により容易に認定することができる事実) ⑴ 当事者等 ア原告は、Dを教祖とし、「統一原理」を教義として宗教活動を行う宗教法人であり、従前は「世界基督教統一神霊協会」との名称を用いており、一般には「統一教会」などと呼称されていた者である。なお、Dを教祖とし、「統一原理」を教義とする宗教は韓国を発祥とするものであり、原告は我が国 従前は「世界基督教統一神霊協会」との名称を用いており、一般には「統一教会」などと呼称されていた者である。なお、Dを教祖とし、「統一原理」を教義とする宗教は韓国を発祥とするものであり、原告は我が国において上記宗教活動を行うために設立されたものである(以下では、 Dを教祖とし、「統一原理」を教義として同人が韓国で設立した宗教団体を「韓国教団」といい、韓国教団、原告のほか、後記のとおりこれらの団体から分裂して設立されたとされる宗教団体を総称して「本件各宗教団体」という。)(甲1、丙1)。 イ被告会社は、テレビ放送事業等を行う株式会社であり(甲2)、テレビ番 組である「情報ライブミヤネ屋」を制作・放送する者である。 ウ被告Aは、弁護士であり、宗教団体又は宗教的団体等による霊感商法等の被害の根絶及び被害者救済等の活動に携わってきた者である。 ⑵ 本件特集の内容被告会社は、令和4年7月20日に放送した「情報ライブミヤネ屋」に おいて、元内閣総理大臣襲撃事件と関連して、この当時社会的に大きな関心を集めていた原告や韓国教団に関する特集(以下「本件特集」という。)を放送し、被告Aは、本件特集にコメンテーターとして出演した。本件特集の内容は以下のとおりであった。 (甲3、乙1、2) ア本件特集では、その中盤から後半にかけて、画面右上に、「A解説妻×三男×七男“分裂のワケ”」や「旧統一教会「後継争い」教祖一族が分裂」とのテロップが表示され、原告の教祖であるDの死後、同人の元妻(以下「妻」という。)、両人の三男(以下「三男」という。)及び七男(以下「七男」という。)の3名の間で、韓国教団の総裁の地位をめぐって後継 争いが生じ、結果として、妻が原告の総裁の地位を引き継ぎ、三男と七男 は、原告 以下「三男」という。)及び七男(以下「七男」という。)の3名の間で、韓国教団の総裁の地位をめぐって後継 争いが生じ、結果として、妻が原告の総裁の地位を引き継ぎ、三男と七男 は、原告から分かれて、それぞれ原告とは異なる団体を創設し、活動しており(以下では、三男が創設した団体を「三男派」、七男が創設した団体を「七男派」という。)、原告と三男派との間及び原告と七男派との間では、互いに批判的な発言がされていること(以下では、これらの状況を「本件分裂騒動」という。)が報じられた。 イまた、本件特集では、上記アの内容と前後して、原告の元幹部が「日本の教団は、献金を作り出す経済部隊だった」と表現したこと、原告の献金システムが多くの信者を苦しめていること、原告がいわゆる霊感商法により巨額の利益を生み出し、同時に膨大な被害者を発生させていること、原告が献金等で得られた資金を基に莫大な総工費のかかる建物を建設して いること等も報じられた。 ウその上で、本件特集の司会者(以下「本件司会者」という。)が、最後に、「お互いが権力闘争をして、3つに分かれ、そしてお互いがお互いの主張をぶつけ合うんですけども、例えば合同結婚式がガンチャーチにもあったりとか、そのあたりが、一方、三男のほうはアメリカで裁判中であっ たりとか、これが完全に分かれてるのか、絡み合ってるのか、まだ権力闘争が続いているのかって、非常に難しいですね、A先生、これ。」と発言した。 エ被告Aは、上記ウの本件司会者の発言を受けて、以下の発言(以下「本件発言」という。)をした。 「そうですね、ですけど、それぞれが一部真実を語っているところがありますので、我々はこの3派、日本の統一教会も含めて、この分裂騒動についてはですね、中立的に見てます という。)をした。 「そうですね、ですけど、それぞれが一部真実を語っているところがありますので、我々はこの3派、日本の統一教会も含めて、この分裂騒動についてはですね、中立的に見てますし、実は日本では、2012年にD氏が亡くなって以降、大きく分けるとこの3派に分かれているんですけれども、日本国内では、もっと細かく実は信者が分かれてるんです。ですから、 4派とか5派とか、6派とか、そのぐらいの分かれ方をしていて、一番ひ どい事案は、責任者と自分の部下である信者が数人で分かれて、そしてなんていうかな、お金がないものだから、信者に対して売春させてたっていう事件まであるんですよ。非常に深刻な事件まであって、お金集めのためには何でもするっていう発想が、今、分裂含みで問題が生じてると思います。」 2 争点及び当事者の主張本件の争点は、①本件発言による原告の社会的評価の低下の有無、②本件発言に係る違法性阻却事由等の存否、③被告会社の不法行為責任の有無並びに④原告が受けた損害額及び謝罪広告の要否である。 ⑴ 争点①(本件発言による原告の社会的評価の低下の有無)について (原告の主張)ア本件発言において、4派ないし6派については、詳細な説明がされていない。そのため、原告の分裂問題について前提知識を持たない一般視聴者は、このような団体を原告の内部派閥であると考えるのが自然である。 これに加えて、本件発言の直前にされた本件司会者の発言や、本件特集 の視聴者の実際の反応等を考慮すれば、本件発言は、原告が「お金を集めるためには何でもする」という発想を持っており、信者に売春という反道徳的な犯罪までさせて資金集めをしているという事実を摘示するものというべきである。 イそして、かかる事実の摘示によ 「お金を集めるためには何でもする」という発想を持っており、信者に売春という反道徳的な犯罪までさせて資金集めをしているという事実を摘示するものというべきである。 イそして、かかる事実の摘示によって、原告の社会的評価が低下するのは 明らかである。 (被告らの主張)ア被告Aは、本件発言において、原告から分かれ出た原告とは別個の集団又は団体において、信者に売春をさせていた事件が存在するという事実を摘示したにすぎない。 イしたがって、本件発言によって原告の社会的評価が低下することはない。 ⑵ 争点②(本件発言に係る違法性阻却事由等の存否)について(被告らの主張)仮に、本件発言が原告の社会的評価を低下させるものであるとしても、以下のとおり、その違法性が阻却されるか、故意又は過失が否定される。 ア本件発言の性質 本件発言は、原告が霊感商法又は献金により信者に多額の金銭を拠出させ、又は原告から分かれ出た集団ないし団体において、信者がいわゆるソープランドで売春をさせられ、多額の金銭を拠出させられていた事実等を前提として、原告が「お金のためなら何でもするという発想」を有している旨を述べたものであり、いわゆる意見ないし論評の表現として理解され るものということができる。 イ本件発言の公共性及び目的の公益性本件発言は、社会的な関心事となっていた韓国教団や原告に関わる問題について、社会に警鐘を鳴らす目的で行われたものであるから、これが公共の利害に関する事項に関わり、かつ、その目的に公益性が認められるこ とは明らかである。 ウ前提事実に真実性・真実相当性が認められること原告が過去に霊感商法や高額献金等により甚大な被害を生じさせてきたことは、いずれも真実である。 認められるこ とは明らかである。 ウ前提事実に真実性・真実相当性が認められること原告が過去に霊感商法や高額献金等により甚大な被害を生じさせてきたことは、いずれも真実である。 また、売春に係る事実についても、少なくともその重要部分は真実であ るし、仮にこれが真実であると認められないとしても、被告Aは、確実な資料、根拠に基づいてこれを真実であると信じたものであり、これについて相当な理由がある。 エ本件発言が意見ないし論評としての域を逸脱しないこと本件発言は、何ら人身攻撃等に及ぶものではなく、韓国教団や原告に関 わる問題が社会的な関心事である上に、確実な資料、根拠に基づくもので あるから、これが意見ないし論評としての域を逸脱しないことは明らかである。 (原告の主張)否認ないし争う。 前記⑴(原告の主張)のとおり、本件発言から理解される摘示事実は、原 告が「お金を集めるためには何でもする」という発想を持っており、信者に売春という反道徳的な犯罪までさせて資金集めをさせているというものであるから、被告らはかかる事実の真実性ないし真実相当性を立証しなければならない。 しかしながら、被告らは前記事実については何ら立証活動を行っていない のであるから、本件発言につき、違法性が阻却され、又は故意若しくは過失が否定されることはない。 ⑶ 争点③(被告会社の不法行為責任の有無)について(原告の主張)被告会社は、被告Aがこれまで行ってきた原告に対する批判的な言動を前 提とすれば、被告Aが本件特集において原告への名誉毀損又は侮辱に該当する発言をしかねないことを容易に予見し得た。 それにもかかわらず、被告会社は、被告Aがそのような発言をしないように注意をする 提とすれば、被告Aが本件特集において原告への名誉毀損又は侮辱に該当する発言をしかねないことを容易に予見し得た。 それにもかかわらず、被告会社は、被告Aがそのような発言をしないように注意をすることなく、漫然と被告Aをして、前記⑴(原告の主張)記載のとおり、原告に対する名誉毀損に当たる本件発言をさせたのであるから、被 告会社も共同不法行為責任を負うというべきである。 (被告会社の主張)否認ないし争う。 本件発言につき不法行為が成立しないことは、前記⑴(被告らの主張)及び⑵(被告らの主張)のとおりである。 ⑷ 争点④(原告が受けた損害額及び謝罪広告の要否)について (原告の主張)ア本件特集は、全国放送で高い視聴率を誇るテレビ番組内で放映されたものである。また、被告Aは、法律専門家という立場で本件発言に及んだのであり、視聴者においても、他のコメンテーター以上にその発言を信用するのが通常である。そして、本件発言は、純潔を何よりも重視する原告の 教義に反する虚偽事実の指摘である。 したがって、かかる名誉毀損による原告の社会的評価の低下は甚だしく、これを償うべき慰謝料は2000万円を下らない。 また、原告は、弁護士に依頼して本件訴訟提起を余儀なくされたのであり、その弁護士費用相当額としては200万円が相当である。 イさらに、本件発言による原告の社会的評価の低下の程度は甚だしく、単なる金銭賠償のみでは不十分であるから、前記第1の2及び3の方法による、名誉回復措置がとられる必要がある。 (被告らの主張)否認ないし争う。 第3 当裁判所の判断 1 争点①(本件発言による原告の社会的評価の低下の有無)について⑴ 一般に、テレビ放送をされた番組の内容が人の社会的評 (被告らの主張)否認ないし争う。 第3 当裁判所の判断 1 争点①(本件発言による原告の社会的評価の低下の有無)について⑴ 一般に、テレビ放送をされた番組の内容が人の社会的評価を低下させるものであるか否か、あるいは、同番組によって摘示された事実がどのようなものであるかという点については、一般の視聴者の普通の注意と視聴の仕方と を基準として判断するのが相当であり、当該番組の全体的な構成、これに登場した者の発言の内容や、画面に表示されたフリップやテロップ等の文字情報の内容を重視しつつ、映像の内容、効果音、ナレーション等の映像及び音声に係る情報の内容並びに放送内容全体から受ける印象等を総合的に考慮して判断すべきものと解する(最高裁平成15年10月16日第一小法廷判決・ 民集57巻9号1075頁等参照)。 さらに、当該番組の内容が事実を摘示するものであるか意見ないし論評の表明であるかによって、名誉毀損に係る不法行為責任の成否に関する要件が異なるため、当該表現がいずれの範ちゅうに属するかを判別することが必要となるところ、その区別をするに当たっても、当該番組の一般の視聴者の普通の注意と視聴の仕方とを基準として判断すべきものであり、その内容が、 証拠等をもってその存否を決することが可能な他人に関する特定の事項を明示的又は黙示的に主張するものと理解されるときは、その内容は上記特定の事項についての事実を摘示するものと解するのが相当であり、上記のような証拠等による証明になじまない物事の価値、善悪、優劣についての批評や論議などは、意見ないし論評の表明に属するものというべきである(最高裁平 成9年9月9日第三小法廷判決等参照)。 ⑵ 以上の理解を前提として、本件発言に対する一般の視聴者の受け止め方 評や論議などは、意見ないし論評の表明に属するものというべきである(最高裁平 成9年9月9日第三小法廷判決等参照)。 ⑵ 以上の理解を前提として、本件発言に対する一般の視聴者の受け止め方等について検討する。 ア本件発言のうち、「4派とか5派とか、6派とか、そのぐらいの分かれ方をしていて、」という部分の一般の視聴者の受け止め方については当事者 間に争いがあるので、まずこの点について検討する。 被告Aは、上記発言部分の直前で「大きく分けるとこの3派に分かれているんですけれども、」という発言をしているところ、この「3派」が原告、三男派及び七男派を意味していることは前後の文脈から明らかである。また、本件特集では、韓国教団の創始者であるDの死後、妻、三男及び七男 の3名の間で、韓国教団の総裁の地位をめぐる後継争いが生じ、最終的には妻が韓国教団の総裁の地位を引き継いだこと、これに伴い、三男及び七男は、いずれも妻に追われるように韓国教団を去り、これとは異なる団体を創立して活動をしている旨の説明がされているのであるから(争いのない事実等⑵ア)、一般の視聴者にとって、この「3派」がそれぞれ別の団 体であることは容易に理解することができるものと考えられる。 他方で、上記発言部分の「4派」、「5派」及び「6派」が原告、三男派及び七男派とは別個独立の団体を意味するのか、それとも、原告、三男派及び七男派の中に更に派閥のようなものが存在することを意味するのかについては、本件発言の全体を見てもその趣旨が明瞭であるとはいい難い面がある。特に、本件発言のうち、「大きく分けるとこの3派に分かれて いる」という部分だけに着目すると、一般視聴者が後者の意味であると受け止める余地が十分にあると考えられる。前者の意味である場合に がある。特に、本件発言のうち、「大きく分けるとこの3派に分かれて いる」という部分だけに着目すると、一般視聴者が後者の意味であると受け止める余地が十分にあると考えられる。前者の意味である場合に、「大きく分けるとこの3派に分かれている」という表現を用いることはあまりないものと考えられるからである。 もっとも、前記認定のとおり、本件特集においては、本件発言に先だっ て、三男派や七男派が原告から分かれて、原告と異なる団体を創設したことが報じられており、本件発言においては、それと同じ文脈で「4派とか5派とか、6派とか、そのぐらいの分かれ方をしていて、」との表現が用いられていた上、本件発言がされた際も、画面右上には、「旧統一教会「後継争い」教祖一族が分裂」とのテロップが表示されていたことや、本件発 言の中でも、上記事態を指して「分裂騒動」と表現され、「責任者と自分の部下である信者が数人で分かれて」といった表現がされていることなど、本件発言や本件特集の内容等を総合的に考慮すれば、一般には、前者の意味であると受け止められるものと考えられる。 イまた、本件発言のうち、「一番ひどい事案は、責任者と自分の部下であ る信者が数人で分かれて、そしてなんていうかな、お金がないものだから、信者に対して売春させてたっていう事件まであるんですよ。非常に深刻な事件まであって、お金集めのためには何でもするっていう発想が、今、分裂含みで問題が生じてると思います。」との部分は、本件各宗教団体又はその信者が起こした事例のうち、特にひどい事例として、本件各宗教団体 の信者の中には、「責任者と自分の部下である信者」の数人のみで構成さ れる非常に小規模な団体を作って活動しているものがあり、資金がないため、信者に売春をさせていた事例もある 教団体 の信者の中には、「責任者と自分の部下である信者」の数人のみで構成さ れる非常に小規模な団体を作って活動しているものがあり、資金がないため、信者に売春をさせていた事例もあるという事実を摘示したものと理解することができる。 他方で、「非常に深刻な事件まであって、お金集めのためには何でもするっていう発想が、今、分裂含みで問題が生じてると思います。」との部 分は、その内容に照らし、上記小規模な団体のことのみを念頭に置いた発言でないことは明らかであり、本件各宗教団体に共通する問題として述べられたものと理解することができる。 このように、信者に売春をさせた事例は、「非常に深刻な事件」の例示として挙げたものであり、これらの事例を踏まえて、被告Aは、原告を含 め、本件各宗教団体には、「お金集めのためには何でもする」という共通の体質があり、こうした体質が様々な問題を生じさせているとの見解を表明したものと理解することができ、一般の視聴者も通常このような受け止め方をするものと考えられる。 また、本件発言のうち、原告を含む本件各宗教団体に共通の体質として 「お金集めのためには何でもするっていう発想」があり、こうした体質が様々な問題を生じさせているとの見解を述べている部分は、これを一体のものとして評価すべきであって、これを更に細分化するのは相当でない。 そして、同発言部分は、表現者による評価・価値判断的な要素を含み、証拠等による証明になじまないものであるから、意見ないし論評の表明に当 たるというべきである。 ⑵ 以上まとめると、被告Aは、本件発言の中で、原告を含む本件各宗教団体に共通の体質として「お金集めのためには何でもするっていう発想」があり、こうした体質が様々な問題を生じさせているとの論評をし( ⑵ 以上まとめると、被告Aは、本件発言の中で、原告を含む本件各宗教団体に共通の体質として「お金集めのためには何でもするっていう発想」があり、こうした体質が様々な問題を生じさせているとの論評をし(以下では、この部分に関する発言を「本件発言①」という。)、また、上記体質を象徴するも のとして、信者に売春をさせた事例を紹介したもの(以下では、この部分に 関する発言を「本件発言②」という。)と認められる。 本件発言①が原告の社会的評価を低下させるものであることは、その内容に照らし明らかであるが、本件発言②についても、これが原告とは異なる団体の信者が起こしたものであることを前提とするものであるにせよ、原告を含む本件各宗教団体に共通の体質を象徴するものとして挙げられて いる以上、本件発言①と併せ全体として原告の社会的評価を低下させるものというべきである。 2 争点②(本件発言に係る違法性阻却事由等の存否)について⑴ 一般に、特定の事実を基礎として意見ないし論評の表明がされた場合における名誉毀損にあっては、その行為が公共の利害に関する事実に係り、か つ、その目的が専ら公益を図ることにあった場合に、上記意見ないし論評の前提としている事実が重要な部分について真実であることの証明があったときには、人身攻撃に及ぶなど意見ないし論評としての域を逸脱したものでない限り、上記行為は違法性を欠くものというべきであり、仮に上記証明がないときにも、行為者において上記事実を真実と信ずるについて相当の理由が あれば、その故意又は過失は否定されるものと解される(前掲最高裁平成9年9月9日第三小法廷判決等)。 ⑵ 以上の理解を前提として、本件発言①及び②の違法性又は被告Aの責任の有無について検討する。 アまず、本件発言①及び② 定されるものと解される(前掲最高裁平成9年9月9日第三小法廷判決等)。 ⑵ 以上の理解を前提として、本件発言①及び②の違法性又は被告Aの責任の有無について検討する。 アまず、本件発言①及び②は、前記第2の1⑵アのとおり、当時、社会的 に大きな関心を集めていた原告又は韓国教団等を特集した番組において、原告を含む本件各宗教団体の組織的体質を批判的に表現したものであるといえるから、これが公共の利害に関する事実に係り、かつ、その目的は専ら公益を図ることにあると認められる。 イそこで、次に、本件発言①の基礎とされた前提事実の真実性について検 討する。 証拠(丙5~13、15~32、42、43、46、54)及び弁論の全趣旨によれば、原告ないしその信者による霊感商法等により多くの被害が生じているとして、全国の多数の弁護士がその被害の救済のための活動を展開し、その活動の一環として、全国各地の裁判所で、原告を相手方(被告)とする多数の損害賠償請求訴訟が提起されたこと、これらの訴訟の判 決において、原告ないしその信者の霊感商法等による物品販売勧誘行為や高額な献金の勧誘行為が不法行為を構成するとして、原告に対する損害賠償請求が認容され、判決理由中においても、原告の行為やその組織体質が厳しく糾弾されていること、被告Aは、上記訴訟において被害者と認定された一部の者(同訴訟の原告)の訴訟代理人として活動するなど、これら の活動に長年携わってきたことがそれぞれ認められる。 以上の認定事実に加えて弁論の全趣旨を併せ考慮すれば、被告Aは、原告に対して不法行為に基づく損害賠償を命じたこれら多数の裁判例や被告Aが自ら行ってきた活動で得られた経験を前提として、原告を含む本件各宗教団体について、「お金集めのためには何でも れば、被告Aは、原告に対して不法行為に基づく損害賠償を命じたこれら多数の裁判例や被告Aが自ら行ってきた活動で得られた経験を前提として、原告を含む本件各宗教団体について、「お金集めのためには何でもする」という発想を持って いるとの論評をしたものと認められる。これによれば、同論評の基礎となる前提事実の真実性に欠けるところはなく(少なくとも、前記多数の裁判例の存在について十分な立証がされている以上、その重要な部分について真実であることの証明があったものといえる。)、かつ、これが論評としての域を逸脱したものとは認められない。なお、被告らは、本件発言①の基 礎となる前提事実について、原告が過去に霊感商法や高額献金等により甚大な被害を生じさせてきたことを挙げるが、弁論の全趣旨(被告らによる書証の提出状況等)に照らせば、被告らは、書証として提出した多数の裁判例等から上記事実(原告が過去に霊感商法や高額献金等により甚大な被害を生じさせてきたこと)そのものを認定することができるとの判断の下 でこのような主張をしているものと解される。その意味では、被告ら主張 の事実は、当裁判所が上記論評の基礎となる前提事実として認定したもの(上記各裁判例の存在等)を包含する関係にあるというべきであるから、当裁判所の同判断が弁論主義に反するものとはいえない。 ウまた、被告Aは、本件各宗教団体の信者が売春をさせられた事例を紹介した上で、上記論評をしたものであり、その意味では、同事例も本件発言 ①の基礎となる前提事実に含まれるものである。前記イで既に説示したとおり、本件発言①については、この点の立証がされなくても、上記論評の基礎となる前提事実のうち重要な部分について真実性の証明がされたものとみるべきであるが、他方で、本件発言②は、事実の 既に説示したとおり、本件発言①については、この点の立証がされなくても、上記論評の基礎となる前提事実のうち重要な部分について真実性の証明がされたものとみるべきであるが、他方で、本件発言②は、事実の摘示によって原告の社会的評価を低下させるものであるから、この点については別途名誉棄損 による不法行為が成立し得るものと考えられる。 そこで、次に、前記事例の真実性(これが認められない場合には、被告Aの故意又は過失の有無)について判断する。 証拠(丙1、5から13、16)及び弁論の全趣旨によれば、被告Aは、平成28年2月に、自らの弁護士業務ないし上記イで認定した被害者救済 活動の一環として相談を受けた際、同相談者から、同人の元妻が、ソロモンと名乗り、自らをDの代理であるとする者(以下「ソロモン」という。)が率いる団体に傾倒するようになり、ソロモンから命じられて風俗で働かされ、一日に4万円以上の献金をすることをノルマとされ、毎月100万円前後の献金をさせられたこと等について相談を受けたこと、被告Aは、 その際、同相談者から、上記団体が構成員15名の少数の団体であることを示す名簿(丙8)や、ソロモンが原告の経典である「原理講論」を基にしつつも、これに修正を加えてその教えを説いていることを示す資料(丙9)のほか、ソロモンが相談者の妻に対して送信した複数のメール(丙10、11)を受領したこと、同メールには、原告の教義である「統一原理」 に含まれる「復帰原理」や「堕落論」(「悪の血統」等)の考え方が記載さ れており、ソロモンは、このような考え方を用いて、相談者の妻に罪の意識を植え付け、ソープランドで働いて得た金銭を献金するよう脅迫していたこと、他方で、同メールには、原告を批判し、原告につながる教会に相談しても意味 ンは、このような考え方を用いて、相談者の妻に罪の意識を植え付け、ソープランドで働いて得た金銭を献金するよう脅迫していたこと、他方で、同メールには、原告を批判し、原告につながる教会に相談しても意味がない旨の記載がされたものも含まれていたこと、被告Aはこれらの資料等を基に本件発言②の摘示事実が真実であると信じて同発 言をしたことがそれぞれ認められる。 被告Aが上記相談を受けた際に同相談者から受領した資料(丙8~11)は、被告Aが弁護士業務等の一環として受領したものであり、その内容も極めて詳細かつ迫真性に富むものであるから、その信用性は高いといえる。 そうすると、上記認定事実にとどまらず、ソロモンが原告の元信者であり、 同人が原告から分裂した少人数の団体において、多額の献金をさせるためにその信者に性行為までさせていたとの事実そのものが真実である蓋然性が高いといえる。 もっとも、被告らは、同相談者について、その氏名等を明らかにせず、証人尋問の申請等もしない結果(なお、これは、同相談者その他関係者の プライバシー等に配慮したものであると推察される。)、原告としては、この点に関する被告らの主張に反論ないし反証をする機会が十分に与えられていないものといえる。そうすると、上記各証拠の信用性の高さを考慮しても、これらの証拠から、上記事実が真実であると認定することまではできないというべきである。 以上のとおり、本件発言②については、その摘示事実が真実であると認めることはできないが、これまでに説示したところに照らせば、被告Aがこれを真実であると信じたことについては相当な理由があるというべきである。 よって、本件発言②についても、被告Aに過失があったとは認められな い。 ⑶ 以上のとおり、被告Aが本件発言 真実であると信じたことについては相当な理由があるというべきである。 よって、本件発言②についても、被告Aに過失があったとは認められな い。 ⑶ 以上のとおり、被告Aが本件発言①をしたことについて違法性はなく、また、本件発言②についても、被告Aに故意又は過失が認められないから、いずれについても名誉毀損による不法行為は成立しない。 3 争点⑶(被告会社の不法行為責任の有無)について被告会社の不法行為責任に関する原告の主張は、本件特集の番組内において、 被告Aが不法行為に当たる発言をすることを予見し得たことを前提とするものであるが、被告会社においてこれを予見し得たことを認めるに足りる証拠はない(前記2で説示したとおり、そもそも、本件発言をしたことについて被告Aに不法行為は成立しない。)。 よって、この点に関する原告の主張を採用することはできない。 4 結論以上の次第で、原告の請求は、その余の点を判断するまでもなく理由がないから、これらをいずれも棄却することとして、主文のとおり判決する。 東京地方裁判所民事第18部 裁判長裁判官堂薗幹一郎 裁判官古賀大督 裁判官袖山佳人
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