主文 1 原告の請求を棄却する。 2 訴訟費用は原告の負担とする。 事実及び理由 第1 請求被告は,原告に対し,485万0250円及びこれに対する平成16年2月25日から支払済みまで年7.3パーセントの割合による金員を支払え。 第2 事案の概要 1 本件は,函館市長による課税処分に基づき,別紙物件目録1記載の各土地(以下「本件土地1」という。)について特別土地保有税を納付した原告が,本件土地1を原告において取得し保有していた事実はないから,上記納付金は法律上納付すべき理由がないにもかかわらず納付された過誤納金であるとして,上記納付金の返還及びこれに対する訴状送達の日の翌日である平成16年2月25日から支払済みまで年7.3パーセントの割合による還付加算金の支払を求めた事案である(なお,明示の主張はないが,甲第11号証及び弁論の全趣旨によれば,原告は,地方税法17条の4所定の年7.3パーセントの割合による還付加算金の支払を求めているものと解される。)。 2 前提事実(証拠等の摘示のない事実は当事者間に争いがない。)(1) 本件土地1について,昭和57年11月4日,同年10月28日売買を原因として,泰邦興業株式会社(以下「泰邦興業」という。)から原告に対する所有権移転登記が経由された(甲1,2,4,弁論の全趣旨)。 (2)ア函館市長は,原告に対し,昭和58年7月11日付け通知により,昭和58年度取得分(昭和57年1月1日から同年12月31日までの取得分)の特別土地保有税として,本件土地1及び別紙物件目録2記載の各土地(以下「本件土地2」といい,また,本件土地1と本件土地2を併せて「本件各土地」という。)の取得について,原告の過少申告を理由と 分)の特別土地保有税として,本件土地1及び別紙物件目録2記載の各土地(以下「本件土地2」といい,また,本件土地1と本件土地2を併せて「本件各土地」という。)の取得について,原告の過少申告を理由として,納付すべき税額を379万9370円とする更正をした。その後,函館市長は,原告に対し,昭和60年3月19日付け通知により,取得価格の減を理由として,納付すべき税額を198万4800円とする再更正をした。 イ函館市長は,原告に対し,昭和58年7月11日付け通知により,本件各土地の昭和58年度保有分の特別土地保有税として納付すべき税額を192万3370円とする決定をした。その後,函館市長は,原告に対し,昭和60年3月19日付け通知により,取得価格の減を理由として,納付すべき税額を108万0310円とする更正をした。 ウ函館市長は,原告に対し,昭和59年8月13日付け通知により,本件各土地の昭和59年度保有分の特別土地保有税として納付すべき税額を187万8730円とする決定をした。その後,函館市長は,原告に対し,昭和60年3月19日付け通知により,取得価格の減を理由として,納付すべき税額を103万5660円とする更正をした。 エ函館市長は,原告に対し,昭和60年7月ころ,本件土地1並びに別紙物件目録2記載1,9及び11の各土地の昭和60年度保有分の特別土地保有税として納付すべき税額を74万9080円とする決定をした。 (以下,函館市長がした上記ア記載の再更正,イ記載の更正,ウ記載の更正及びエ記載の決定の合計4件の処分を併せて「本件課税処分」という。)(乙2,3,5ないし7,弁論の全趣旨)(3)ア原告は,昭和60年3月23日,本件各土地の特別土地保有税として,昭和58年度取得分198万4800円 せて「本件課税処分」という。)(乙2,3,5ないし7,弁論の全趣旨)(3)ア原告は,昭和60年3月23日,本件各土地の特別土地保有税として,昭和58年度取得分198万4800円,昭和58年度保有分108万0310円,昭和59年度保有分103万5660円の合計410万0770円を被告に納付した(弁論の全趣旨)。 イ原告は,平成3年3月29日,本件土地1並びに別紙物件目録2記載1,9及び11の各土地の昭和60年度保有分の特別土地保有税として,74万9080円を被告に納付した(弁論の全趣旨)。 (以下,上記ア及びイの各納付金を併せて「本件納付金」という。) 3 原告の主張(1) 本件土地1の所有権の帰属については,原告への所有権移転登記がなされた当初から争いがあり,登記簿上,原告の前主である泰邦興業と,原告から所有権移転登記を経由したシーハイブ株式会社(以下「シーハイブ」という。)等との間で,遅くとも昭和60年以降,訴訟が係属していた。 上記訴訟の第一審及び控訴審の各裁判所は,いずれも原告が本件土地1を取得し所有していなかったことを認定して,泰邦興業勝訴の判決を言い渡し,これらの判決の確定により,原告が本件土地1を取得し所有していなかった事実が明確となった。 そうすると,特別土地保有税は,土地の所有又は取得を課税要件として賦課される租税であるから,原告が本件土地1を取得し所有していなかった以上,たとえ登記簿上の所有名義人であっても,函館市長による本件課税処分は,本件土地1の取得者ないし所有者ではない者に対して行われたものとして,法律上の根拠を欠くことが明らかであり,本件課税処分は無効というべきである。したがって,函館市長は本件納付金を法律上の原因なく徴収して原告に同額の損失を及ぼしたもの い者に対して行われたものとして,法律上の根拠を欠くことが明らかであり,本件課税処分は無効というべきである。したがって,函館市長は本件納付金を法律上の原因なく徴収して原告に同額の損失を及ぼしたものであるから,原告はこれを不当利得として被告に返還を求めることができる。このことは,最高裁昭和49年3月8日第二小法廷判決(民集28巻2号186頁)の判旨に照らしても明らかである。 (2) 被告は,本件納付金の返還請求権は時効消滅していると主張するが,本件土地1の所有権の帰属については,本件課税処分がされた当時から紛争が生じて訴訟が提起されるなどし,本件土地1の登記簿には所有権移転請求権仮登記抹消予告登記がなされていたこと,原告は函館市長や被告の担当部署に上記紛争の事実を指摘して徴収の猶予を求め,被告においても上記訴訟の推移を見守る姿勢を取って原告に対する滞納処分を差し控えた経緯があったことなどからすれば,被告は,本件土地1について原告の所有権が否定される可能性があることを十分に予測し得たのであるから,それにもかかわらず,被告が消滅時効を主張するのは不当である。 また,上記確定判決によって本件課税処分が法律上の根拠を欠くために無効であることが明確になった以上,被告は,原告による更正の請求を待つまでもなく,原告に対し,法律上の根拠なく納付された本件納付金を返還する義務を負うというべきである。したがって,被告は,消滅時効の規定によらずに過誤納付の被害者たる原告を救済すべきである。 4 被告の主張(1) 特別土地保有税は,一定面積以上の土地又はその取得について,その土地の取得者及び保有者を納税義務者として,その土地の所在する市町村が課する税であり(地方税法585条),その一定面積(免税点)は,被告のような都市計画区域を有する市町村の はその取得について,その土地の取得者及び保有者を納税義務者として,その土地の所在する市町村が課する税であり(地方税法585条),その一定面積(免税点)は,被告のような都市計画区域を有する市町村の区域については,5000平方メートルと定められている(同法595条)。 これによれば,本件土地2の合計面積は,1万453平方メートルであり,5000平方メートル以上であるから,仮に原告が主張するように本件土地1が課税客体とならなかったとしても,本件土地2が課税客体となって相応の特別土地保有税が課されるのであり,同税が全く課されないこととなるものではない。 したがって,本件納付金の全額を不当利得として返還を求める原告の請求は理由がない。 (2) 本件課税処分は,その課税客体である本件土地1についての昭和57年10月28日売買を原因とする同年11月4日付けの原告を所有者とする所有権移転登記等に基づいてなされたものである。そして,登記にはそれに沿う権利の帰属及び変動について推定力があることからすれば,原告が主張するような判決が確定したとしても,それは本件課税処分を無効とする事由にはならず,せいぜい取消事由となるにすぎないというべきである。 ところで,地方税法17条の5第3項は,特別土地保有税に係る更正,決定若しくは加算金の決定は,法定納期限の翌日から起算して5年を経過した日以後においてはすることができないと定めているところ,本件課税処分に係る特別土地保有税の法定納期限から5年を経過していることは明らかであるから,たとえ上記のような取消事由があったとしても,もはや函館市長において取消しによる更正等を行うことはできない。 また,同法17条の6第1項3号は,地方税につきその課税標準の計算の基礎となった事実のうちに ような取消事由があったとしても,もはや函館市長において取消しによる更正等を行うことはできない。 また,同法17条の6第1項3号は,地方税につきその課税標準の計算の基礎となった事実のうちに含まれていた無効な行為により生じた経済的成果がその行為の無効であることに基因して失われたこと,当該事実のうちに含まれていた取り消しうべき行為が取り消されたことその他これらに準ずる政令で定める理由に基づいてする更正若しくは賦課決定又は当該更正に伴う当該地方税に係る加算金の決定は,当該理由が生じた日の翌日から起算して3年間は,上記17条の5の規定にかかわらずすることができる旨定めているところ,原告の主張に係る判決の確定がこの「当該理由」に当たると解するとしても,「当該理由の生じた日」,すなわち,判決確定の日の翌日から3年を経過していることは明らかであるから,同法17条の6第1項3号によっても,函館市長が本件課税処分について取消しによる更正等をすることはできない。 したがって,本件課税処分を取り消し得ない以上,原告には本件納付金の返還請求権は生じない。 (3) さらに,万が一,本件課税処分が無効であり,本件納付金が過誤納金に当たるとしても,地方自治体に対する過誤納金の返還請求権等は,その請求をすることができる日から5年を経過したときは,時効により消滅するところ(地方税法18条の3),上記時効の起算点,すなわち,同条の「その請求をすることができる日」とは,その納付の日であることが明らかである。 したがって,本件納付金についての返還請求権は,既にその納付の日から5年の経過によって時効消滅しており,存在しないというべきである。 5 争点以上によれば,本件の主たる争点は,(1)本件課税処分が無効となるか,(2)原告の被告 権は,既にその納付の日から5年の経過によって時効消滅しており,存在しないというべきである。 5 争点以上によれば,本件の主たる争点は,(1)本件課税処分が無効となるか,(2)原告の被告に対する本件納付金についての返還請求権が時効消滅しているか,の2点である。 第3 当裁判所の判断 1 認定事実証拠(甲1,2,4,7の1・2,8,9)及び弁論の全趣旨によれば,本件土地1について泰邦興業から原告に対する所有権移転登記が経由された経緯,本件土地1の所有権の帰属等について争われた訴訟の経過,帰趨等について,以下の各事実を認めることができる。 (1) 泰邦興業の代表取締役の地位にあり,同社を経営していたaは,昭和42年ころから,函館市所在の土地を別荘地として分譲しようと考え,本件土地1を含む合計約15万坪の山林(以下「本件分譲地」という。)を取得し,造成工事を行った上,昭和50年から,「α高級分譲地」として本件分譲地の分譲を開始していたが,昭和57年ころ,本件分譲地の開発及び維持管理を他の業者に任せて自らは現役を引退したいと考えるようになった。 原告は,昭和57年当時,創寿圏開発株式会社(当時の商号「ソーケン株式会社」。以下「創寿圏開発」という。)の代表取締役の地位にあった者であるが,そのころ,aから依頼されて本件分譲地の開発等を引き受けることとし,aとの間で引受けの具体的な条件等について話合いが行われ,昭和57年6月4日,泰邦興業,aと創寿圏開発,原告との間で,泰邦興業がその営業全部を創寿圏開発に譲渡すること,泰邦興業の有する本件分譲地を創寿圏開発が取得し承継すること,原告はaに対し営業譲渡の対価として1億円を分割で支払うこと等を内容とする合意が成立した(以下「本件第一営業譲渡契約」という。)。 有する本件分譲地を創寿圏開発が取得し承継すること,原告はaに対し営業譲渡の対価として1億円を分割で支払うこと等を内容とする合意が成立した(以下「本件第一営業譲渡契約」という。)。 上記合意の成立に伴い,泰邦興業は,同月15日,aが昭和56年6月30日に泰邦興業の代表取締役を退任し,原告が昭和57年6月1日に泰邦興業の代表取締役に就任した旨の登記をした。 ところが,原告が予定していた融資先からの融資が受けられないため,aと原告は,同年8月末ころ,合意により本件第一営業譲渡契約を解消し,これに伴い,泰邦興業は,同年9月4日,aが同月2日に泰邦興業の代表取締役に就任した旨の登記をした。 (2) aは,昭和57年10月ころ,東芝・ゼネラルエレクトリックファイナンス株式会社(以下「東芝GE」という。)から2億円の融資を受けることができるという話を聞き及び,再度,創寿圏開発との間で営業譲渡の話を進めることとした。 東芝GEは,同月21日ころまでには,①本件土地1及びその他の土地49筆について順位1番の抵当権を設定すること,②原告が個人保証をし,かつ,上記①の土地を原告名義に書き換えること等を条件として,第三者を通じて創寿圏開発に2億円の融資をすることを決め,これに伴い,aは東芝GEに対し本件分譲地の登記済権利証を提出し,東芝GEはこれを司法書士に預けた。 泰邦興業,aと創寿圏開発は,東芝GEによる融資が実行されることを前提にして,同月28日,改めて泰邦興業の営業を創寿圏開発に譲渡する旨の合意(以下「本件第二営業譲渡契約」という。)をした。上記合意について作成された「契約書」には,次のような内容の記載がある。 ア泰邦興業は,創寿圏開発に対し,泰邦興業の営業権全部を譲渡する。 イ泰邦興業及 営業譲渡契約」という。)をした。上記合意について作成された「契約書」には,次のような内容の記載がある。 ア泰邦興業は,創寿圏開発に対し,泰邦興業の営業権全部を譲渡する。 イ泰邦興業及びaの有する本件分譲地,泰邦興業名義の預金及び泰邦興業の負債を本契約日に創寿圏開発が取得し,承継する。 ウ創寿圏開発が東芝GEに担保提供するために,従来泰邦興業が設定した抵当権につき,創寿圏開発が資金調達しこれを抹消する。 エ東芝GEの抵当権設定完了と同時に創寿圏開発より泰邦興業に現金5000万円を支払う。 オ創寿圏開発より泰邦興業に残金5000万円を支払うと同時に,イの本件分譲地を瑕疵なきものとして泰邦興業より創寿圏開発に引き渡す。 (3) ところが,東芝GEからの融資は一旦中止されることとなり,原告は,そのことを同年11月2日ころまでに知ったが,本件土地1及びその他の土地の名義を原告名義にして融資の条件の一つを整えておくこととして,同年11月4日,前記のとおり司法書士が東芝GEから預かっていた登記済権利証を利用して,aの同意を得ることなく,本件土地1及びその他の土地につき同年10月28日売買を原因とする泰邦興業から原告に対する所有権移転登記を経由した。 (4) aは,本件土地1及びその他の土地につき泰邦興業から原告に対する所有権移転登記が経由されていることを知り,同年11月25日及び26日に原告と話合いの機会を持ち,原告に対し,創寿圏開発が融資を受けることができないのに所有権移転登記をすることは約束に反すると抗議し,直ちに本件土地1及びその他の土地の登記の名義を泰邦興業に戻すよう要求したが,これに対し原告は,本件土地1及びその他の土地を返還することに異存はないが,原告がそれまでに泰邦興業に融資した資金の支払の ちに本件土地1及びその他の土地の登記の名義を泰邦興業に戻すよう要求したが,これに対し原告は,本件土地1及びその他の土地を返還することに異存はないが,原告がそれまでに泰邦興業に融資した資金の支払のために手形を振り出すことなどを求めた。 そこで,aは,原告に対する所有権移転登記の抹消登記手続をしてもらうためには,原告の要求に応ずることもやむを得ないと考え,原告に対し,泰邦興業の振出しに係る約束手形4通(金額合計6857万円)を交付した。 しかし,泰邦興業は資金不足の状態にあって満期において上記手形を決済することができず,そのため,原告に対する所有権移転登記の抹消登記手続をしてもらう見込みがないことから,aは,弁護士に相談した上,同年12月8日,浦和地方裁判所に対し,泰邦興業及びaを原告,本件原告を被告として,本件土地1及びその他の土地につき経由された原告の所有権移転登記の抹消登記手続を求める訴えを提起した(以下「別件訴訟」という。)。なお,泰邦興業は,上記訴えを提起するに当たり,同日,同月5日に原告を泰邦興業の代表取締役から解任した旨の登記をした。 東芝GEは,同月21日,第三者を通じた創寿圏開発に対する融資をしないことを正式に決定した。 (5) 原告は,昭和58年1月26日,本人及び泰邦興業の代表取締役として,bとの間で,泰邦興業がbに対し2807万円の債務を負担することを確認すること,原告は,本件土地1について,泰邦興業のbに対する上記債務を担保するために根抵当権を設定すること,泰邦興業が上記債務を弁済期までに弁済しないときは,bを予約権利者とし,その弁済に代えて本件土地1の所有権をbに移転するとともに,bを予約権利者とし,本件土地1をbに賃貸すること等を内容とする合意をし,この合意に基づ 弁済期までに弁済しないときは,bを予約権利者とし,その弁済に代えて本件土地1の所有権をbに移転するとともに,bを予約権利者とし,本件土地1をbに賃貸すること等を内容とする合意をし,この合意に基づき,本件土地1について,bを根抵当権者とする根抵当権設定登記,代物弁済予約を原因としbを権利者とする所有権移転請求権仮登記及びbを権利者とする停止条件付賃借権設定仮登記が経由された。 (6) シーハイブは,別紙物件目録1記載1ないし16の各土地(以下「本件土地1の1」という。)につき,昭和60年3月28日付けで所有権移転登記を経由した。泰邦興業は,同目録1記載17ないし20の各土地(以下「本件土地1の2」という。)につき,平成4年12月8日付けで所有権移転登記を経由した。cは,同目録1記載21ないし26の各土地(以下「本件土地1の3」という。)につき,昭和60年3月28日付けで所有権移転登記を経由した。dは,同目録1記載27ないし32の各土地(以下「本件土地1の4」という。)につき,昭和60年3月28日付けで所有権移転登記を経由した。 シーハイブ,c,d(以下「シーハイブら」という。)及びeは,bを権利者とする上記(5)記載の根抵当権設定登記について,昭和60年3月28日,昭和59年10月27日譲渡を原因とする根抵当権移転の付記登記をした。 なお,シーハイブは,別件訴訟が提起されて,本件土地1について原告に対し経由された所有権移転登記の抹消予告登記がなされた後の昭和59年12月20日に設立された会社であって,設立当初の代表取締役はeであるが,eは,原告からシーハイブ設立の話を持ちかけられ,絶対迷惑をかけないと言われて形式上シーハイブの代表取締役に就任したにすぎないこと,シーハイブの本店所在地は転々としており,一時 取締役はeであるが,eは,原告からシーハイブ設立の話を持ちかけられ,絶対迷惑をかけないと言われて形式上シーハイブの代表取締役に就任したにすぎないこと,シーハイブの本店所在地は転々としており,一時は原告の居住場所が本店所在地になったこともあること,平成14年当時のシーハイブの住所は原告の住所と同一であることなどに照らして,原告は,シーハイブの設立及び経営に深く関与していたものと推認される。 (7) シーハイブは,昭和60年,本件土地1の所有権を有することの確認を求めて,別件訴訟に独立当事者参加をした(以下「甲事件」という。)。これに対し,泰邦興業は,シーハイブに対し本件土地1の1につき,cに対し本件土地1の3につき,dに対し本件土地1の4につき,それぞれ真正な登記名義の回復を原因とする所有権移転登記手続を求める反訴を提起するとともに(以下「乙事件」という。),シーハイブら及びeに対し本件土地1についてされたbを根抵当権者とする根抵当権設定登記の,シーハイブに対し本件土地1の1についてされたbを権利者とする停止条件付賃借権設定仮登記の,cに対し本件土地1の3についてされた同登記の,dに対し本件土地1の4についてされた同登記の各抹消登記手続を求める訴えを提起した(以下「丙事件」という。)。また,シーハイブは,泰邦興業に対し,本件土地1の2につき,真正な登記名義の回復を原因とする所有権移転登記手続を求める訴えを提起した(以下「丁事件」という。)。なお,泰邦興業及びaを原告,本件原告を被告とする別件訴訟における当初の訴えは,取下げにより終了した。 (8) 原告は,函館市長や被告の担当部署に対し,本件土地1の所有権の帰属等が別件訴訟において争われていることを指摘して,特別土地保有税の納付の猶予を求めていたが,前記前提事実記載のとお 。 (8) 原告は,函館市長や被告の担当部署に対し,本件土地1の所有権の帰属等が別件訴訟において争われていることを指摘して,特別土地保有税の納付の猶予を求めていたが,前記前提事実記載のとおり,昭和60年3月23日及び平成3年3月29日に納付した。 (9) 別件訴訟の甲事件ないし丁事件は全て併合されて浦和地方裁判所において審理され,同裁判所は,平成6年3月25日,シーハイブが本件土地1の所有権を取得したとの主張を排斥して,シーハイブの甲事件及び丁事件の請求を棄却し,泰邦興業の乙事件及び丙事件の請求を認容する旨の判決を言い渡した。 (10) 上記判決に対し,シーハイブらが東京高等裁判所に控訴し,控訴審では,主にシーハイブが泰邦興業の所有していた本件土地1を取得したか否かに争点が絞られ,シーハイブらは,上記争点について,概ね以下のとおり主張を整理した。 ア原告及び創寿圏開発と泰邦興業は,昭和57年11月26日ころ,上記当事者間の権利義務関係の一切を精算することを目的として,泰邦興業が創寿圏開発に対し和解金として2807万円を支払い,これにより創寿圏開発及び原告は本件土地1の処分権を失うが,泰邦興業が上記和解金をその履行期までに支払わないときは,泰邦興業は本件土地1の返還を請求する権利を失う旨の合意をした。泰邦興業は,上記和解金の支払のため約束手形を振り出したが,同手形は満期に資金不足を理由にその支払が拒絶された。よって,創寿圏開発は,泰邦興業の債務不履行により,上記合意に基づき,本件土地1及びその他の土地の所有権を取得した。 イ原告は,泰邦興業の代表取締役として,昭和58年1月26日,bとの間で,泰邦興業がbに対して有する2807万円の貸付金債務の担保として,本件土地1及びその他の土地につき代 取得した。 イ原告は,泰邦興業の代表取締役として,昭和58年1月26日,bとの間で,泰邦興業がbに対して有する2807万円の貸付金債務の担保として,本件土地1及びその他の土地につき代物弁済予約をした。泰邦興業が期限に上記債務の弁済をしなかったので,bは,昭和59年10月25日,泰邦興業に対し,上記代物弁済予約の完結の意思表示をして,本件土地1及びその他の土地の所有権を取得した。 ウシーハイブは,昭和59年10月27日,bから,本件土地1及びその他の土地を代金合計6500万円で買い受けた。 なお,シーハイブは,別件訴訟の第一審において,上記アの事実を立証するため,原告が作成に関与した泰邦興業の取締役会議事録を証拠として提出したが,同議事録には,「議長は,今回都合により,後記記載の物件(本件土地1)を,当会社代表取締役である「f」に売り渡す事に至った事情を述べるとともに,その賛否を議場に諮ったところ満場一致,売り渡す事に可決確定した。」との記載がある。 (11) 東京高等裁判所は,平成10年12月3日,本件第二営業譲渡契約は,東芝GEによる融資の実行を停止条件として締結されたものと解されるところ,上記停止条件が成就しなかった以上,泰邦興業から創寿圏開発に対する本件土地1の所有権の移転はなく,したがって,原告が本件土地1の所有権を取得する余地はない,シーハイブらが主張する上記(10)ア記載の合意が成立したと認めることはできない等と判断し,原判決は相当であるとしてシーハイブらの控訴をいずれも棄却する旨の判決を言い渡し,同判決は確定した。 (12) 上記判決に基づき,平成11年1月29日,本件土地1の1,1の3及び1の4について,泰邦興業に対し,真正な登記名義の回復を原因とする所有権移転登 判決を言い渡し,同判決は確定した。 (12) 上記判決に基づき,平成11年1月29日,本件土地1の1,1の3及び1の4について,泰邦興業に対し,真正な登記名義の回復を原因とする所有権移転登記がされた。 2 争点(1)(本件課税処分が無効となるか)について(1) 原告の請求は,本件納付金が法律上の原因を欠く不当利得であるとして,被告に対しその返還を求めるものであるが,これは過誤納金の還付を求める請求に当たるものと解される。 ところで,租税債務の内容を確定する課税処分が無効であった場合には,納税者は,その無効な処分により徴収された税額について,直ちに不当利得としてその還付を求めることができるが,当該課税処分が当然に無効であるとまではいえず,取り消しうるにすぎない場合は,納税者は,その課税処分が取り消され,公定力が排除されない限り,不当利得としてその還付を求めることができないものである。 そして,課税処分が当然に無効であるといえるためには,原則として,当該処分の瑕疵が重大であり,かつ,明白な場合であることを要するが,瑕疵が明白でなくとも,その瑕疵が課税要件の根幹についての過誤であって,徴税行政の安定とその円滑な運営の要請をしんしゃくしても,なお,不服申立期間の徒過による不可争的効果の発生を理由として被課税者に当該処分による不利益を甘受させることが,著しく不当と認められるような例外的事情がある場合には,当該処分は当然無効になるものと解するのが相当である(最高裁昭和42年(行ツ)第57号昭和48年4月26日第一小法廷判決・民集27巻3号629頁参照)。 なお,原告がその主張の根拠として引用する判例(最高裁昭和43年(オ)第314号昭和49年3月8日第二小法廷判決・民集28巻2号186頁)は,所得税 廷判決・民集27巻3号629頁参照)。 なお,原告がその主張の根拠として引用する判例(最高裁昭和43年(オ)第314号昭和49年3月8日第二小法廷判決・民集28巻2号186頁)は,所得税の課税の対象とされた金銭債権が後日貸倒れという後発的事情によって回収不能となった場合に,納税者に更正の請求という救済手段が認められていなかった昭和37年法律第44号による改正前の旧所得税法の下において,その救済方法が問題となった事案に関するものであって,本件とは事案を異にしており,本件に適切でないから,上記の判断を左右するものではない。 (2)ア前記認定事実によれば,本件土地1については,昭和57年11月4日,同年10月28日売買を原因として,泰邦興業から原告に対する所有権移転登記が経由されているが,これは,原告が,司法書士に預けられていた本件土地1の登記済権利証を利用して,所有者である泰邦興業の同意を得ることなく所有権移転登記手続をしたものであり,泰邦興業と原告ないし創寿圏開発との間で,泰邦興業から原告へ本件土地1の所有権を移転する旨の合意や,別件訴訟においてシーハイブらが主張した前記1(10)ア記載の合意がされたと認めることはできず,したがって,原告が本件土地1の所有権を取得し保有していたとは認められない。 そうすると,原告が本件土地1につき所有権を取得し,保有していたとしてされた本件課税処分は,結果としては,本件土地1の所有権の移転及び帰属についての誤認に基づいてなされたものであって,客観的瑕疵があったものといわざるを得ない。 イしかしながら,原告は,本件土地1について,昭和57年11月に泰邦興業から所有権移転登記を受けてから,昭和60年3月にシーハイブらにこの登記を移転するまでの間(すなわち,本件課 い。 イしかしながら,原告は,本件土地1について,昭和57年11月に泰邦興業から所有権移転登記を受けてから,昭和60年3月にシーハイブらにこの登記を移転するまでの間(すなわち,本件課税処分に対応する課税年度の期間内)において,登記簿上の所有名義人であったところ,登記はその記載事項につき事実上の推定力を有するから,これにより,当時の原告は,本件土地1の所有者であることが推定されていたものである。 加えて,前記認定事実によれば,原告ないし創寿圏開発とaないし泰邦興業との間では,創寿圏開発が泰邦興業から本件土地1を含む本件分譲地の開発等を引き受けることが計画され,本件分譲地を創寿圏開発が取得し承継すること等を内容とする本件第二営業譲渡契約が成立し,また,本件土地1及びその他の土地(以下「本件土地1等」という。)について登記上の所有名義を原告に移転した上,東芝GEに対する抵当権を設定することが東芝GEからの融資の条件とされていたのであり,東芝GEによる融資が実行されることを前提として本件土地1等の所有権が泰邦興業から創寿圏開発を経由して原告へと移転することが予定されていたこと,原告は,本件土地1について,真実の所有者であった泰邦興業の了承を得ることなく原告名義への所有権移転登記手続をした上,bに対する根抵当権設定登記,代物弁済予約を原因とする所有権移転請求権仮登記及び停止条件付賃借権設定仮登記を経由したり,「泰邦興業が原告に対して本件土地1を売り渡すことの承認決議がなされた」旨の泰邦興業の取締役会議事録を作成することに関与するなどしており,自ら進んで,本件土地1の真実の所有者が原告であるかのような外観を作出するような行動をとっていたこと,別件訴訟においても,泰邦興業が本件土地1の所有権を主張したのに対して,相手 与するなどしており,自ら進んで,本件土地1の真実の所有者が原告であるかのような外観を作出するような行動をとっていたこと,別件訴訟においても,泰邦興業が本件土地1の所有権を主張したのに対して,相手方であるシーハイブらは,本件土地1の所有権は泰邦興業から原告に移転したと主張して激しく争っており,最初の訴えが提起されてから第一審判決が出るまでに10年以上かかっていること(なお,原告がシーハイブの設立及び経営に深くかかわっていたと推認されることは前記のとおりである。)など,本件土地1の所有者が原告であることを窺わせるような客観的事情があったことが認められるのである。 これらの事情に照らすと,原告への所有権移転登記がされた直後から本件土地1の所有権の帰属をめぐって別件訴訟が提起され,原告が函館市長や被告の担当部署に対し特別土地保有税の納付の猶予を求めていたこと等の事情を考慮しても,原告が本件土地1の所有権を取得し保有しているとの認定のもとになされた本件課税処分は(結果としては,誤った認定に基づくものであったとはいえ),その当時にしてみれば,一定の合理的な根拠に基づいてされたものと評価することができ,その認定の誤りが本件課税処分のされた当時から外形上,客観的に明白であったということはできない。したがって,本件課税処分の瑕疵が重大であったとしても,瑕疵が明白であったとはいえない。 ウまた,前記認定事実によれば,原告は,所有者である泰邦興業の同意を得ることなく,本件土地1について原告への所有権移転登記を経由し,同登記の抹消登記手続等を求める別件訴訟を提起された後も,bとの間で,泰邦興業がbに対して2807万円の債務を負担することを確認し,その債務を担保するために本件土地1について根抵当権を設定するとともに代物弁済予約を原 続等を求める別件訴訟を提起された後も,bとの間で,泰邦興業がbに対して2807万円の債務を負担することを確認し,その債務を担保するために本件土地1について根抵当権を設定するとともに代物弁済予約を原因とする所有権移転請求権仮登記及び停止条件付賃借権設定仮登記を経由したというのであり,本件土地1の所有権が原告に帰属することが推定されるような外形の作出に自ら主体的に関与していることに照らすと,仮に本件課税処分に課税要件の根幹についての過誤があるとしても,原告に本件課税処分による不利益を甘受させることが著しく不当と認められるような例外的事情があるということはできないから(原告は,過誤納付の被害者であるなどと主張するが,原告自らが過誤納付の原因を作出しているのであって,そのような原告を被害者と評価する余地はない。),本件課税処分が無効であるとはいえない。 (3) 以上の次第で,本件課税処分には瑕疵があるものの,その瑕疵は本件課税処分を当然に無効にするものとはいえないところ,本件課税処分は取り消されてはいないし,これを取り消す旨の確定判決も存しないことは明らかであって,本件課税処分は有効に存在しているから,原告が本件課税処分に基づき納付した本件納付金について不当利得として還付を求めることはできない。 3 結論以上によれば,その余の点について判断するまでもなく,原告の請求は理由がないからこれを棄却することとし,主文のとおり判決する。 函館地方裁判所民事部裁判長裁判官大久保正道 裁判官柵木澄子 裁判官柵木澄子 裁判官寺尾亮
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