主文 被告人を禁錮3年に処する。 未決勾留日数中100日をその刑に算入する。 理由 (罪となるべき事実) 被告人は、令和6年11月12日午前8時34分頃、大型貨物自動車を運転し、広島市a区bc丁目d番e号先の、道路標識により最高速度30キロメートル毎時と指定された片側1車線の道路を、f区g町h方面からbi丁目方面に向かい進行するに当たり、同所付近は下り勾配が続き、その先はj橋に向かい大きく左方に湾曲していたのであるから、同最高速度を遵守するはもとより、ブレーキ等を的確に操作して進 路を適正に保持しながら進行すべき自動車運転上の注意義務があるのにこれを怠り、同最高速度を遵守せず、ブレーキを的確に操作することなく、時速約50ないし60キロメートルで進行した過失により、前記の湾曲部分において、自車を右に横滑りさせながら対向車線に進出させ、対向車線を進行中のA(当時80歳)運転の普通乗用自動車に自車を衝突させた上、前記A運転車両を路外の前記j橋下にある歩行者用階 段に転覆した状態で転落させ、よって、同人に重症頭部外傷の傷害を負わせ、同日午前10時31分頃、同所において、同人を同傷害により死亡させ、同車同乗者B(当時76歳)に外傷性くも膜下出血等の傷害を負わせ、同日午前9時頃、同所において、同傷害により死亡させ、同車同乗者C(当時49歳)に加療約6か月間を要し、意識障害、上下肢体幹に運動麻痺の後遺障害を伴うびまん性脳損傷等の傷害を負わせた。 (証拠の標目)省略(事実認定の補足説明)弁護人は、最高速度が遵守されず、ブレーキが的確に操作されなかった原因は被告人の突発的な体調不良である可能性があるから被告人は無罪である旨主張する。 しかし、被告人運転車両が 足説明)弁護人は、最高速度が遵守されず、ブレーキが的確に操作されなかった原因は被告人の突発的な体調不良である可能性があるから被告人は無罪である旨主張する。 しかし、被告人運転車両が衝突の直前まで車体を対向車線側に大きく傾けながらも 湾曲した自車の走行車線内を走行していた事実(甲10等)からすると、被告人は、衝突の直前まで、道路状況を認識し、その認識に即してハンドル操作をすることができる状態であったと認められる。また、本件当日朝の被告人の健康状態に異常はなかったこと(甲19)、被告人が、当公判廷において、車線からはみ出さないようにブレーキを踏もうとしたが、間違えてアクセルを踏んだと思う、ギアチェンジができずに 焦っていた旨述べていることなどからすると、被告人は、衝突の直前頃まで、フットブレーキを操作することもできる状態であったと認められる。 これらを併せて考えると、現場のカーブに入る手前でギアチェンジをしようとしたが体が思うように動かなくなった、フットブレーキを踏もうとしたが踏めなかった、カーブに入った後の記憶はないなどの被告人の供述や、弁護人の指摘する事情を踏ま えても、最高速度が遵守されず、ブレーキが的確に操作されなかった原因が被告人の体調不良にあるという合理的疑いはないといえる。 (法令の適用)罰条被害者ごとに、それぞれ自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律5条本文 科刑上一罪の処理刑法54条1項前段、10条(1個の行為が3個の罪名に触れる。犯情の最も重い過失運転致死罪の刑で処断。なお、各過失運転致死罪の犯情の軽重は決することができない。)刑種の選択禁錮刑を選択未決勾留日数の算入刑法21条 訴訟費用 も重い過失運転致死罪の刑で処断。なお、各過失運転致死罪の犯情の軽重は決することができない。)刑種の選択禁錮刑を選択未決勾留日数の算入刑法21条 訴訟費用刑事訴訟法181条1項ただし書(不負担)(量刑の理由)被告人は、指定最高速度時速30キロメートルの片側一車線の一般道路において、大きく湾曲しているなどの進路前方の道路状況を認識していながら、下り勾配が続く中、土を積載した車両重量10780キログラムの大型トラックを走行させ、排気ブ レーキを作動させていたとはいうものの、同車が時速約50キロメートルまで徐々に 加速していた、衝突地点の約130メートル手前辺りまで、減速しようとしておらず、速度超過運転の危険性を軽視している。この速度超過運転が事故の一因となったことからすると、被告人の過失の悪質性は高いといわざるを得ない。被告人運転車両に衝突された対向車は路外に落下して転覆し、2名の尊い命が失われ、命を取り留めた1名も重い後遺障害を伴う重傷を負った。結果は重大かつ悲惨である。被害者らには全 く落ち度がなく、被害者らの親族が被告人の厳罰を求めるのも当然である。被告人が前記大型トラックを運転するのは約5回目であり、同車の運転に慣れていなかったなどの事情があったにせよ、そうであれば、そうした事情を踏まえて慎重に運転すべきであったのに、被告人は前記のとおり最高速度を遵守していなかったのであるから、被告人への非難が弱まるものではない。被告人の刑事責任は重く、禁錮刑の実刑を科 すべきである。 そこで、刑期を定めるに当たり、被告人の当時の勤務先が加入していた任意保険により相応の賠償がされる見込みがあること、被告人が、事故を起こした責任自体は認め、被告人なりに反省と謝罪の言葉を述べ 。 そこで、刑期を定めるに当たり、被告人の当時の勤務先が加入していた任意保険により相応の賠償がされる見込みがあること、被告人が、事故を起こした責任自体は認め、被告人なりに反省と謝罪の言葉を述べていることなども考慮し、主文の刑を科すのが相当であると判断した。 (求刑禁錮5年)令和7年5月29日広島地方裁判所刑事第2部 裁判官櫻井真理子
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