令和3年8月31日判決言渡令和2年(行ケ)第10132号審決取消請求事件口頭弁論終結日令和3年6月8日判決 原告沢井製薬株式会社 同訴訟代理人弁護士森本純 被告旭化成ファーマ株式会社 同訴訟代理人弁理士細田芳徳同亀ヶ谷薫子 主文 1 特許庁が無効2018-800077号事件について令和2年10 月9日にした審決のうち,特許第6275900号の請求項1に係る部分を取り消す。 2 訴訟費用は被告の負担とする。 事実及び理由 第1 請求 主文同旨第2 事案の概要本件は,特許無効審判請求を不成立とした審決の取消訴訟である。 1 特許庁における手続の経緯等(当事者間に争いがない。)⑴ 被告は,平成29年3月27日,その名称を「骨粗鬆症治療剤ないし予防 剤」とする発明について特許出願(特願2017-61091号。平成22 年9月8日(優先権主張平成21年9月9日・特願2009-208039号)を国際出願日とする特願2011-530844号の一部を平成27年5月25日に新たな特許出願とした特願2015-105265号の一部を,さらに平成28年4月18日に新たな特許出願とした特願2016―082589号の一部を,またさらに平成28年11月10日に新た 年5月25日に新たな特許出願とした特願2015-105265号の一部を,さらに平成28年4月18日に新たな特許出願とした特願2016―082589号の一部を,またさらに平成28年11月10日に新たな特許出 願とした特願2016―219323号の一部を,その上さらに新たな特許出願として行われたもの。以下「本件出願」という。)をし,平成30年1月19日,その設定登録(特許第6275900号,請求項の数4)を受けた(以下,この登録に係る特許を「本件特許」という。)。 ⑵ 原告は,平成30年6月12日,本件特許の請求項1ないし4に係る発明 について特許無効審判請求(無効2018-800077号)をした。 特許庁が令和元年8月6日に本件特許の請求項1ないし4に係る発明についての特許を無効にするとの審決の予告をしたところ,被告は,同年10月11日付けで本件特許の請求項1ないし4に係る特許請求の範囲を訂正する訂正請求を行った(請求項4については削除)。さらに,特許庁が令和2年3 月31日に上記訂正を認め,本件特許の請求項1ないし3に係る発明についての特許を無効にするとの審決の予告をしたところ,被告は,同年6月4日付けで本件特許の請求項1ないし4に係る特許請求の範囲を訂正する訂正請求(請求項2ないし4については削除)を行った(以下,この訂正を「本件訂正」という。)。 特許庁は,令和2年10月9日,「特許第6275900号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された特許請求の範囲のとおり,訂正後の請求項[1~4]について訂正することを認める。特許第6275900号の請求項1に係る発明についての審判請求は成り立たない。特許第6275900号の請求項2~4についての審判請求を却下する。」との審決(以下「本件審決」 いて訂正することを認める。特許第6275900号の請求項1に係る発明についての審判請求は成り立たない。特許第6275900号の請求項2~4についての審判請求を却下する。」との審決(以下「本件審決」 という。)をし,その謄本は,同月20日,原告に送達された。 ⑶ 原告は,令和2年11月9日,本件審決の取消しを求めて本件訴えを提起した。 2 特許請求の範囲の記載本件訂正後の本件特許の請求項1の発明(以下「本件発明」という。)に係る特許請求の範囲の記載は,次のとおりである。 1回当たり200単位のPTH(1-34)酢酸塩が週1回投与されることを特徴とする,PTH(1-34)酢酸塩を有効成分として含有する,骨粗鬆症治療剤ないし予防剤であって,下記(1)~(4)の全ての条件を満たす骨粗鬆症患者を対象とする,骨折抑制のための骨粗鬆症治療剤ないし予防剤;(1)年齢が65歳以上である (2)既存の骨折がある(3)骨密度が若年成人平均値の80%未満である,および/または,骨萎縮度が萎縮度I度以上である(4)クレアチニンクリアランスが30以上50未満ml/minである腎機能障害を有する。 3 本件審決の理由の要旨本件審決は,①本件発明の「200単位のPTH(1-34)酢酸塩」は明確であるから,本件発明は明確性要件に違反しない,②当業者は本件特許に係る明細書(以下,図面を含めて「本件明細書」という。)の記載及び出願時の技術常識に基づいて本件発明を実施することができるから,本件発明の発明の詳 細な説明の記載は実施可能要件に違反しない,③本件発明は,甲第7号証「ヒト副甲状腺ホルモン(1-34)の骨粗鬆症に対する間欠週1回投与の効果:3種類の投与量を用い るから,本件発明の発明の詳 細な説明の記載は実施可能要件に違反しない,③本件発明は,甲第7号証「ヒト副甲状腺ホルモン(1-34)の骨粗鬆症に対する間欠週1回投与の効果:3種類の投与量を用いた無作為化二重盲検前向き試験」(OsteoporosisInternational,Vol.9 p.296-306,1999)(以下「甲7文献」という。)に記載された発明(以下「甲7発明」という。)及び本件発明の特許要件判断の基準日(平 成22年9月8日。以下「本件基準日」という。)当時の技術常識を踏まえても 当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない旨判断した。 それぞれの論点に関する本件審決の理由の要旨は,以下のとおりである。 ⑴ 明確性要件(無効理由1)の有無について本件明細書の段落【0034】に「非特許文献9」を引用して記載されているPTHの単位の測定法は,PTHの生物活性の測定法としてごく一般的 なラット腎アデニルシクラーゼ法である。上記「非特許文献9」である甲第4号証「ラット腎臓からのアデニルシクラーゼの安定な調製による,inVitroの副甲状腺ホルモンのバイオアッセイ」(Endocrinology,Vol.85p.801-810,1969)(以下「甲4文献」という。)では,ラット腎皮質をホモジナイズ,精製等して得られたアデニルシクラーゼ酵素調製物(以下「本 件酵素調製物」という。)とAT32Pを添加した酵素反応用液に,測定目的のPTH試料と,生物活性既知の標準品であるMRC67/342(以下「本件標準品」という。)をそれぞれ添加し,両者のcAM32P産生量を比較することにより,PTH試料の生物活性の結果を得ている(以下,甲4文献に記載された測定方法を「甲4方法」という /342(以下「本件標準品」という。)をそれぞれ添加し,両者のcAM32P産生量を比較することにより,PTH試料の生物活性の結果を得ている(以下,甲4文献に記載された測定方法を「甲4方法」という。)。したがって,PTH試料とし て,本件発明のPTH(1-34)酢酸塩を用いたときにも,甲4方法又はこれと同じ結果を再現できる同等の方法を用いることにより,「200単位のPTH(1-34)酢酸塩」の量を当業者は特定できる。 ⑵ 実施可能要件(無効理由2)の有無について「200単位のPTH(1-34)酢酸塩」は当業者が明確に理解できる ものであり,また,本件標準品が入手できないようなことがあった場合にも,例えば「ヒトPTH注(東洋)」や「テリパラチド酢酸塩静注用100「旭化成」」(以下,この「テリパラチド酢酸塩静注用100「旭化成」」を「本件代替品」という。)を標準品として用いることにより,200単位量のPTH(1-34)酢酸塩を測定することができる。 ⑶ 進歩性欠如(無効理由3)の有無について ア甲7発明の認定ヒトPTH(1-34)酢酸塩の200単位を毎週皮下注射する,ヒトPTH(1-34)酢酸塩を有効成分として含有する骨粗鬆症治療剤であって,厚生省による委員会が提唱した診断基準で骨粗鬆症と定義された,年齢範囲が45歳から95歳の被験者のうち,複数の因子をスコア化する ことによって評価して骨粗鬆症を定義し,スコアの合計が4以上の場合の患者であって,2mg/dlより高い血清クレアチニン又は30mg/dlより高いBUNによって示される腎機能が低下している患者は除外された患者に投与される,骨粗鬆症治療剤。 イ本件発明と甲7発明との一致点 クレアチニン又は30mg/dlより高いBUNによって示される腎機能が低下している患者は除外された患者に投与される,骨粗鬆症治療剤。 イ本件発明と甲7発明との一致点 1回当たり200単位のPTH(1-34)酢酸塩が週1回投与されることを特徴とする,PTH(1-34)酢酸塩を有効成分として含有する,骨粗鬆症治療ないし予防剤であって,特定の骨粗鬆症患者に投与されることを特徴とする,骨粗鬆症治療剤ないし予防剤。 ウ本件発明と甲7発明との相違点 (ア) 相違点1特定の骨粗鬆症患者が,本件発明では「下記(1)~(4)の全ての条件を満たす骨粗鬆症患者(1)年齢が65歳以上である (2)既存の骨折がある(3)骨密度が若年成人平均値の80%未満である,および/または,骨萎縮度が萎縮度I度以上である(4)クレアチニンクリアランスが30以上50未満ml/minである腎機能障害を有する」であるのに対し, 甲7発明では, 「厚生省による委員会が提唱した診断基準で骨粗鬆症と定義された,年齢範囲が45歳から95歳の被験者のうち,複数の因子をスコア化することによって評価して骨粗鬆症を定義し,スコアの合計が4以上の場合の患者であって,2mg/dlより高い血清クレアチニン又は30mg/dlより高いBUNによって示される腎機能が低下している患者は除 外された患者」である点(イ) 相違点2骨粗鬆症治療剤ないし予防剤が,本件発明では,「骨折抑制のための」ものであることが特定されているのに対し,甲7発明では,そのような 特定がない点 点(イ) 相違点2骨粗鬆症治療剤ないし予防剤が,本件発明では,「骨折抑制のための」ものであることが特定されているのに対し,甲7発明では,そのような 特定がない点エ相違点1の容易想到性以下に示すいずれの文献にも,本件発明の「(1)年齢が65歳以上である」,「(2)既存の骨折がある」,「(3)骨密度が若年成人平均値の80%未満である,および/または,骨萎縮度が萎縮度I度以上である」,「(4) クレアチニンクリアランスが30以上50未満ml/minである腎機能障害を有する」との全ての条件(以下「本件4条件」といい,このうち,同(1)ないし(3)の条件を「本件3条件」といい,各条件を番号に従い「本件条件(1)」のようにいい,本件条件(4)の腎機能障害を「中等度腎機能障害」という。)を満たす骨粗鬆症患者に対して投与をすることは 記載も示唆もされておらず,また,本件4条件の全てを満たす患者において,顕著な骨折抑制効果が奏されることを当業者が予測し得たとは認められない。 よって,相違点1に係る,本件4条件の全てを満たす患者に甲7発明の骨粗鬆症治療剤を投与することを,本件基準日において当業者が容易に想 到し得たと認めることはできないから,相違点2の容易想到性について検 討するまでもなく,本件発明に進歩性が認められる。 (ア) 甲7発明では,「2mg/dlより高い血清クレアチニン又は30mg/dlより高いBUNによって示される腎機能が低下している患者」との中等度・高度上昇と評価される者がその投与対象から除外されているが,甲7文献には,甲7発明の骨粗鬆症治療剤を,本件4条件を全て 満たす患者を選んで投与することや,同条件を全て満たす骨粗鬆症患者 の中等度・高度上昇と評価される者がその投与対象から除外されているが,甲7文献には,甲7発明の骨粗鬆症治療剤を,本件4条件を全て 満たす患者を選んで投与することや,同条件を全て満たす骨粗鬆症患者において,顕著な骨折抑制効果が期待されることの記載や示唆が認められない。 (イ) 甲第115号証「PTH(1-34)毎週皮下投与製剤」(ClinicalCalcium,Vol.17,No.1 p.56-62,2007)にも,甲7発明の骨粗鬆 症治療剤を,本件4条件の全てを満たす患者を選んで投与することや,同条件を全て満たす骨粗鬆症患者において,顕著な骨折抑制効果が期待されることをうかがわせる記載や示唆は認められない。 (ウ) 甲第10号証「骨粗鬆症と軽度または中等度の腎機能障害を併発する閉経後女性におけるテリパラチド」(OsteoporosisInternational,V ol.18,p.59-68,2007)(以下「甲10文献」という。訳は乙3。)は,PTH20μg又は40μgを「軽度又は中等度」の腎機能障害者群について連日投与した試験の結果を示すものであって,この甲10文献から,本件条件(4)を満たす中等度腎機能障害を有する患者群へのPTH200単位週1回投与において,本件3条件の全てを満たす患者が, 本件条件(2)又は本件条件(3)を満たさない患者よりも顕著に優れた骨折抑制効果を奏したことを示す別紙5の実験成績証明書E(甲111。以下「甲111証明書」という。)の効果を予測することはできない。 (エ) PTHの体内での分解・排泄が早く,軽度ないし中等度腎機能障害者に投与しても安全性の高い薬物であることを示す文献があるが(甲1 4,15の1,16,17の1,18,44,47),他方 (エ) PTHの体内での分解・排泄が早く,軽度ないし中等度腎機能障害者に投与しても安全性の高い薬物であることを示す文献があるが(甲1 4,15の1,16,17の1,18,44,47),他方,これら文献 には,甲7発明の骨粗鬆症治療剤を,本件4条件を全て満たすものを選んで投与することは記載されておらず,また,顕著な骨折抑制効果が期待されることを当業者は予測し得なかった。 4 取消事由⑴ 明確性要件に関する判断の誤り(取消事由1) ⑵ 実施可能要件に関する判断の誤り(取消事由2)⑶ 進歩性に関する判断の誤り(取消事由3)第3 当事者の主張 1 取消事由1(明確性要件に関する判断の誤り)の有無について⑴ 原告 本件発明のPTHの生物学的活性は甲4方法によって測定されるところ,甲4方法は,①活性が既知であるウシ甲状腺ホルモンから部分的に精製した本件標準品と,本件酵素調製物と,AT32P(32Pは放射標識体)とを混合し,本件標準品中のPTHがアデニルシクラーゼを活性化させ,これによりAT32PがcAM32Pに変換され,反応終了後にcAM32Pの生成量 を測定し,用量反応曲線を作成し,②同様に,活性が未知のPTHであるサンプルと本件酵素調製物とAT32Pとを混合して用量反応曲線を作成し,③次に,サンプルの用量反応曲線と本件標準品の用量反応曲線とを対比して,生物学的活性が既知の標準品に対するサンプルの生物活性の比から,サンプルの生物活性を導くバイオアッセイ法である。 しかし,以下のアないしエの4つの観点からみて,本件発明の「200単位」は明確ではない。 ア明確性要件違反その1甲4方法は,①本件標準品が甲4方法を阻害する不純物を含 しかし,以下のアないしエの4つの観点からみて,本件発明の「200単位」は明確ではない。 ア明確性要件違反その1甲4方法は,①本件標準品が甲4方法を阻害する不純物を含んでいたこと(甲4,36ないし38),②本件酵素調製物中のラット由来の腎皮質細 胞膜によりウシPTHが急速に分解されること(甲40,41),③本件酵 素調製物におけるラットの個体差・酵素の純度の相違に基づく試験間の差を平準化する指標が定められていないことにより,生物学的活性の測定法として再現性・普遍性を欠くものであり,その測定結果には信頼性がない。 イ明確性要件違反その2ヒトPTH(1-34)は,ラット腎皮質細胞膜で分解されるため(甲 40,41),甲4方法において十分な用量反応曲線を得ることができず(甲4,40),甲4方法で生物学的活性の測定を行うことが困難である。 すなわち,ヒトPTHはウシPTHよりも分解速度が速いこと,また,ヒトPTH(1-34)はヒトPTH(1-84)よりも分解速度が速く,ヒトPTH(1-84)に比して約10分の1の生物学的活性しかみられ ない。そうすると,ラット腎皮質を調製したものを酵素調製物として使用した場合,ウシPTHである標準品の用量反応曲線とヒトPTHであるサンプルの用量反応曲線の傾きが異なってしまったり,また,両曲線が平行になったとしてもそれら用量反応曲線の傾きが小さくなりすぎて誤差が大きくなってしまったりする。このようなことから,甲4方法ではヒトP TH(1-34)の生物学的活性の測定が困難であるため,ラット以外の他の種由来の酵素を使用することが提案されていたのである(甲40)。 したがって,本件発明のPTHの1単位量は,薬剤の投与量を定め -34)の生物学的活性の測定が困難であるため,ラット以外の他の種由来の酵素を使用することが提案されていたのである(甲40)。 したがって,本件発明のPTHの1単位量は,薬剤の投与量を定める単位として明確性に欠ける。 ウ明確性要件違反その3 (ア) 本件基準日当時には,国際標準品として別の製品が用いられるようになっていて,本件標準品は入手が不能ないし困難となっており,甲4方法によりPTH1単位量を定めることは,現実に行うことができないか,少なくとも著しく困難になっていた。 (イ) 次のとおり,本件代替品(生物学的活性は,被告の測定によると, テリパラチド酢酸塩として3300単位/mg)を標準品として測定し てPTH1単位量を定めることはできない。 a 本件明細書には,甲4方法と同じ測定結果を再現することができる代替可能な他の方法についての記載も,他の標準品で代替することができる旨の記載もない。 b 被告が本件代替品について行った測定結果は,甲4方法ではなく, これとは異なる甲第100号証に記載の方法(以下「甲100方法」という。)によってされたものである。しかしながら,酵素的分析法では,酵素の精製法や精製段階が違えば,純度や比活性が当然に異なり,酵素反応時の温度・pH等の微妙な変化でも酵素の変性・失活が生じてしまって試験結果に影響することから,試験条件の変化が仮に微妙 であっても注意が必要であることは,本基準日当時の技術常識である(甲42)。したがって,甲4方法と甲100方法の試験方法及び試験条件の相違(甲125)は,技術常識に照らし,生物学的活性の測定結果に看過できない程度の影響を生じさせる。したがって,本件代替品の「3300単位/mg って,甲4方法と甲100方法の試験方法及び試験条件の相違(甲125)は,技術常識に照らし,生物学的活性の測定結果に看過できない程度の影響を生じさせる。したがって,本件代替品の「3300単位/mg」自体が甲4方法とは異なる測定方法によ って定めた値であるから,甲100方法を用いても甲4方法と同一の結果を再現することはできない。 エ明確性要件違反その4ウシPTHとヒトPTHとは,アミノ酸配列を異にする上(甲3),構造的及び立体配座的な相違により生物学的活性が異なるから,ウシPTHの 生物学的活性について規定された単位を,何らの換算方法等の規定もないままにヒトPTHに適用できるという技術常識はない。 ⑵ 被告ア前記⑴ア(明確性要件違反その1)について上記①については,仮に,本件標準品が不純物を含んだりするとしても, 本件標準品の用量反応曲線はそれらの影響も含めて測定されたものであ り,不純物の割合が測定の度に変わるわけではないから,平行線検定法が前提とするサンプルの用量反応曲線との平行性を満たしている限り,測定の信頼性は否定されない。 上記②については,ラット由来の腎皮質細胞膜がウシPTHを急速に分解するとしても,それゆえ,甲4方法が再現性が得られない方法とする文 献はない。仮に,PTHの種類によって分解速度が異なるとしても,本件標準品の用量反応曲線とサンプルの用量反応曲線が平行であることを確認した上で生物活性を測定するのが甲4方法であるから,両者の用量反応曲線が平行にならなければ,その測定結果はただ単に採用されないだけである。 上記③については,当業者であれば,甲4文献に技術常識に関わるような詳細の記載がなくとも,甲4方 量反応曲線が平行にならなければ,その測定結果はただ単に採用されないだけである。 上記③については,当業者であれば,甲4文献に技術常識に関わるような詳細の記載がなくとも,甲4方法における試験間の差の平準化や測定結果の再現性を高めるために通常工夫する実験手法や統計学的手法を適用し,測定結果の開きや誤差を最小限にした測定を行うことができる。 イ前記⑴イ(明確性要件違反その2)について 甲4文献には,ヒトPTHについて甲4方法が使用できないといった記載はない。原告主張の関係文献(甲40等)も,見かけの活性が低いとしているだけであって,ヒトPTH(1-34)を測定できないとの記載はない。甲4方法がPTHの最も代表的な信頼できる測定法であることに変わりはない。 標準品とサンプルの用量反応曲線の勾配が,測定条件間で異なる傾きになる可能性があることに被告も異論はないが,勾配が異なっても,その影響は標準品とサンプルのそれぞれに等しく及ぶのだから,各曲線間の距離,すなわち効力比は変わらない。 ウ前記⑴ウ(明確性要件違反その3)について (ア) 本件明細書の【0034】には,「PTHの1単位量は,自体公知の 活性測定方法により測定可能である(非特許文献9)」と記載され,活性測定方法として非特許文献9(甲4)を引用して公知の「ラット腎アデニルシクラーゼ法」を用いることが記載されている。標準品として,甲4文献では本件標準品が記載されているが,上記【0034】には,標準品に関する格別の記載はなく,本件標準品でもよく,あるいはその後 に提案されたものでもよく,本件出願当時に技術常識となっていれば,他の標準品を使用することを排除するものではない。 4】には,標準品に関する格別の記載はなく,本件標準品でもよく,あるいはその後 に提案されたものでもよく,本件出願当時に技術常識となっていれば,他の標準品を使用することを排除するものではない。そして,本件基準日当時には,本件代替品のように,ラット腎アデニルシクラーゼ法による生物活性が100単位であって,同測定による比活性がテリパラチド酢酸塩として3300単位/mgであるものが流通し,当業界では容易 に入手し得たものである。したがって,本件基準日当時の技術常識に照らせば,活性測定方法は,ラット腎アデニルシクラーゼ法を用いていて,本件標準品に紐付いた測定結果が得られるものであればよく,本件標準品を用いる甲4方法で測定しなければならないと論ずること自体が的外れである。 (イ) 多少の測定条件の差違はあっても,甲4方法も甲100方法もいずれも同一の測定原理に基づく「ラット腎アデニルシクラーゼ法」であり,標準品に対する相対的な活性を平行線検定法で測定するものであるから,測定条件の相違は測定結果に影響を与えない。甲100方法も本件標準品から生物活性を紐付けされた方法であるから,甲4方法と同一の測定 結果が得られるものであり,試験結果に影響を与えない。原告は,測定条件や調製法が同一でなければ看過できない影響が出ると主張するが,何ら具体的な根拠に基づいて主張しているものではなく,単なる憶測にすぎない。 エ前記⑴エ(明確性要件違反その4)に対して ヒトPTHの生物活性を測定する際に,ウシPTHの生物活性から換算 することはしておらず,平行線検定法により相対的に測定したそのままの値をヒトPTHの生物活性(単位)として用いればよく,原告の主張する「換算」は意味不明であり,その主張 物活性から換算 することはしておらず,平行線検定法により相対的に測定したそのままの値をヒトPTHの生物活性(単位)として用いればよく,原告の主張する「換算」は意味不明であり,その主張は失当である。 2 取消事由2(実施可能要件に関する判断の誤り)の有無について⑴ 原告 本件明細書の【0034】には「ここでPTHの1単位量は,自体公知の活性測定方法により測定可能である(非特許文献9)」とだけ記載されており,具体的な測定方法や手順は記載されていない。 前記1⑴のとおり,本件標準品は,本件基準日当時に入手が不能ないし困難となっていて,「非特許文献9」による測定方法,すなわち甲4方法による 生物学的活性の測定は,現実に行うことができないか,著しく困難になっていた。その上,本件明細書には,甲4方法と同じ測定結果を再現することができる代替可能な測定方法について何らの記載もされていない。また,甲100方法は甲4方法とは異なり,その測定方法の相違は,技術常識に照らし,看過することができない程度の試験結果の相違をもたらす。したがって,本 件発明の「200単位」に係るPTH1単位量は,測定すること自体が不能ないし著しく困難であって,当業者は本件発明を実施することができない。 そうすると,本件発明は,発明の詳細な説明の記載が当業者が本件発明を実施することができる程度に明確かつ十分に記載されたものではないから,実施可能要件を欠く。 ⑵ 被告前記1⑵と同旨である。 3 取消事由3(進歩性に関する判断の誤り)の有無について⑴ 原告ア相違点1の容易想到性 (ア) 本件4条件の各条件について a 本件条件(1)に 事由3(進歩性に関する判断の誤り)の有無について⑴ 原告ア相違点1の容易想到性 (ア) 本件4条件の各条件について a 本件条件(1)について骨粗鬆症は加齢とともに有病率が上昇する疾病であること,椎体骨折及び大腿骨頚部骨折発生率が年齢とともに指数関数的に増加すること,高齢であることが骨粗鬆症による骨折の重要な危険因子であること,年齢が骨密度とは独立した骨粗鬆症による骨折の危険因子である ことは,本件基準日当時の技術常識であった(甲8,15の1,116)。そして,「65歳以上」というのは,高齢者の医療の確保に関する法律32条で65歳以上が高齢者とされていることに相応するだけである。したがって,本件条件(1)は,単に,骨粗鬆症の発症率が高いこと及び骨折のリスクが増大した状態の患者群であることの一要 素でしかなく,これ自体,何ら格別の技術上の意義を有するものではない。 b 本件条件(2)について既存骨折の有無は,骨粗鬆症の診断において,重要な診断の要素の一つとされていたものである(甲8,9,15の1,116)。さらに, 男女とも,部位にかかわらず,既存骨折があると将来の骨折リスクは約2倍になり,特に,既存椎体骨折があると将来の椎体骨折リスクは約4倍に高まるとされていた(甲116)。したがって,本件条件(2)は,骨粗鬆症の患者群を特定する条件の一つとして,ごく一般的なものにすぎず,これ自体,何ら格別の技術上の意義を有するようなもの ではない。 c 本件条件(3)について本件条件(3)の骨密度・骨萎縮度に関する条件は,骨粗鬆症の診断基準の一要素とされていたものである(甲9,15の1,11 の ではない。 c 本件条件(3)について本件条件(3)の骨密度・骨萎縮度に関する条件は,骨粗鬆症の診断基準の一要素とされていたものである(甲9,15の1,116)。 したがって,本件条件(3)も,骨粗鬆症の患者群を特定する条件の 一つとして,ごく一般的なものにすぎず,これ自体,何ら格別の技術 上の意義を有するものではない。 d 本件条件(4)について本件条件(4)は,中等度の腎機能障害の程度を定める数値範囲として,一般的に用いられているものであり(甲10,12),単に,中等度の腎機能障害者を対象患者群とするとの意義しかない。したがっ て,本件条件(4)も,何ら格別の技術上の意義を有するものではない。 (イ) 本件4条件の容易想到性についてa(a) 甲7発明における骨粗鬆症患者の年齢範囲は「45歳から95歳」であるが,骨粗鬆症は,加齢とともに有病率が上昇する疾病で あるから,本件条件(1)を満たす患者は,甲7発明が当然に投与対象として予定していたものである。また,甲7発明は,「退行期骨粗鬆症の診断基準(1989年)」(甲8)に記載の診断基準により骨粗鬆症と診断された患者を投与対象とするものであるところ ,本件条件(2)の既存の骨折があることは,スコアの合計において 重要な因子となっているから,本件条件(2)を満たす患者も,甲7発明が当然に投与対象として予定していたものである。さらに,甲7発明が対象とする患者は,上記診断基準(甲8)を改訂した「原発性骨粗鬆症の診断基準(2000年度改訂版)」(甲9)に記載の診断基準に含まれる本件条件(3)も満たしている蓋然性が高いか ら,本件条件(3)を満たす患者も,甲7発明 (甲8)を改訂した「原発性骨粗鬆症の診断基準(2000年度改訂版)」(甲9)に記載の診断基準に含まれる本件条件(3)も満たしている蓋然性が高いか ら,本件条件(3)を満たす患者も,甲7発明が当然に投与対象として予定していたものである。 そして,腎機能障害は,加齢とともに,その有病率が上昇し,骨粗鬆症患者の大半を占める女性の骨粗鬆症患者の85%が軽度ないし中等度の腎機能障害を有しているから(甲10,乙3),甲7発 明の投与対象患者の大多数が,軽度ないし中等度の腎機能障害患者 であった蓋然性が高く,甲7発明は,本件条件(4)を満たす患者を投与対象に含むことを当然に予定している。 以上から,本件4条件は,甲7発明において,その投与対象患者が満たすことを当然に予定していたものである。 ⒝ 甲7発明の対象患者は,「退行期骨粗鬆症の診断基準(1989 年)」(甲8)で「4点(ほぼ確実)以上の患者」である。上記診断基準において,「年齢」のスコアは,「女性55歳未満 -1」及び「男性75歳未満 -1」であるから,本件条件(1)を満たしただけでは,甲7発明の対象患者(骨粗鬆症患者)には選定されない。 他方,本件条件(2)は,スコア+1~+3,本件条件(3)は, スコア+3であるが,本件条件(2)及び本件条件(3)以外でスコアが加点となる因子は,「腰背痛あり 1」及び「血清カルシウム,リン,AL-P値正常 1」しかない。 したがって,甲7発明の対象患者(合計4点(ほぼ確実)以上)と診断されるためには,年齢以外の複数の因子をも満たしている必 要があり,そのなかでも,本件3条件の全てを満たしている患者は,「確実」(合計5点以上)あ の対象患者(合計4点(ほぼ確実)以上)と診断されるためには,年齢以外の複数の因子をも満たしている必 要があり,そのなかでも,本件3条件の全てを満たしている患者は,「確実」(合計5点以上)あるいは「ほぼ確実」(合計4点)に骨粗鬆症と診断される患者の典型といえる。 このように,甲7発明の対象患者は,本件3条件の全てを満たしている蓋然性が高い。 b(a) 前記aのとおり,本件3条件は,骨粗鬆症の発症や骨折の危険因子あるいは骨粗鬆症の一般的な診断要素にすぎないから,骨粗鬆症について特殊な患者群を画する意義は認められない。 甲第116号証「骨粗鬆症の予防と治療ガイドライン2006年版」には,臨床的骨折危険因子として合計8個の因子が確認されて いる中で「低骨密度」,「既存骨折」及び「年齢」に関しては,骨折 の危険因子としてエビデンスがあるが,その他の臨床的骨折危険因子については,相対危険度と,それらの年齢との関係性等のデータが十分ではない旨明記され(51頁),また,本件3条件が骨折の危険因子として筆頭に挙げられていて,「骨折の重要な危険因子である」(女性,高齢),「骨折を強く予測する」(低骨密度),「男女とも 部位にかかわらず既存骨折があると将来の骨折リスクは約2倍になる。特に,既存椎体骨折があると将来の椎体骨折は約4倍に高まる」(既存骨折)との記載がされている(34頁)。また,PTHが骨折の危険性の高い骨粗鬆症患者に有効な薬剤であることは,本件基準日当時,技術常識となっていた。すなわち,効能・効果を「骨 折の危険性の高い骨粗鬆症」(甲15の1)とするPTH製剤であるフォルテオ(一般名テリパラチド)は,年齢,既存骨折,低骨密度の3要素により骨折の危険性の っていた。すなわち,効能・効果を「骨 折の危険性の高い骨粗鬆症」(甲15の1)とするPTH製剤であるフォルテオ(一般名テリパラチド)は,年齢,既存骨折,低骨密度の3要素により骨折の危険性の高い骨粗鬆症患者を定義しており(70頁7行目以下),甲第141号証「骨折抑制のための薬剤選択閉経後女性」」(CLINICALCALCIUM17巻7号86ないし92頁,20 07)の図3(91頁)には,PTHが,年齢が高くなり,より骨折の危険性の高い患者に対し有効な薬剤であることが示されている。 そして,甲7発明は,48週という比較的短期間で腰椎骨密度を8.1%増加させた治療剤であり,骨密度の増加は骨折予防に寄与するものであるところ,中手骨骨密度を減少させることなく腰椎骨 密度を比較的短期間で用量依存的に増加させたことにより,極めて将来有望であると思われる骨粗鬆症治療剤と評価されていた。 したがって,甲7発明に接した当業者は,本件3条件を全て満たす患者に対して甲7発明を適用することを,当然に検討する。 甲7文献には,各サブ群間においてPTHの骨密度への応答が同 程度であった旨記載されているが(300頁左欄11行ないし右欄 6行目),各サブ群で骨密度増加効果が確認されたのであるから,特定の患者群に対する甲7発明の適用を妨げる事情ではない。 ⒝ 加齢に伴い腎機能の低下が生じることから,高齢者(65歳以上)に対する医薬品の開発において,腎機能低下の影響を明らかにして適切な情報を提供することは,ごく一般的にされていることである。 PTH製剤であるフォルテオの各種試験(甲15の1,17の1)でも,PTHについて,腎機能障害の程度に応じた投与試験がされ, て適切な情報を提供することは,ごく一般的にされていることである。 PTH製剤であるフォルテオの各種試験(甲15の1,17の1)でも,PTHについて,腎機能障害の程度に応じた投与試験がされ,軽度又は中等度の腎機能障害患者に対する投与でも,腎機能が正常な患者に対する投与と同等の効果・安全性が認められたとの確認がされている。甲10文献には,40μg(約133単位)投与群に ついて,腎機能が正常な患者群,軽度の腎機能障害患者群及び中等度の腎機能障害患者群の間で,副作用発症率に有意差は認められておらず,「結論として,軽度または中等度の腎障害があり内因性PTH濃度が正常である,テリパラチド投与患者において,有害事象の増加は観察されず」との結論が示されている。 また,PTHは,体内での蓄積性がなく,投与後ごく短時間で生体から消失する薬剤である(甲15の1,16)。したがって,当業者は,週1回投与であれば,前回までに投与された薬物が体内に蓄積することはなく,長期投与の場合でも安全性に問題はないと合理的に考える。 したがって,PTHについて,腎機能障害の程度(正常,軽度の障害,中等度の障害)に応じて投与の効果・安全性の確認をすることは,技術常識に基づき,当業者が当然に検討することでしかない。 c 甲7発明においても,投与された患者に重篤な副作用はみられず,かつ,生じた副作用は一時的なものにとどまっており(甲7の298 頁左欄25行ないし299頁左欄9行目,表5),血清カルシウム値に ついても,異常値に至っていないばかりか,十分に安全な数値の範囲内にある(図2)。したがって,甲7文献には,腎機能障害別の副作用発生率及び血清カルシウム値の結果は示されていないもの に ついても,異常値に至っていないばかりか,十分に安全な数値の範囲内にある(図2)。したがって,甲7文献には,腎機能障害別の副作用発生率及び血清カルシウム値の結果は示されていないものの,中等度の腎機能障害患者に対する200単位週1回投与が安全でないと予測すべき理由はない。 dPTHは,年齢が高くなり,より骨折の危険性の高い患者に対して有効に薬剤であるから(甲15の1,141),高齢者には効きにくいとの技術常識は存在しない。仮にそのような技術常識が存在するとしても,それはPTHを連日投与するからであり,甲7発明の200単位週1回投与については,連日投与と比較して高いBMD(骨密度) の増加作用が確認されているから,当業者は,PTH200単位週1回投与を高齢者に適用することを動機付けられる。 e 以上のとおり,甲7発明に接した当業者において,甲7発明の骨粗鬆症治療剤を本件4条件の全てを満たす患者に適用することは,技術常識に基づき,当業者が当然に検討する事項である。 イ効果について(ア) 本件明細書には,本件3条件を全て満たすことを前提として,腎機能が正常な骨粗鬆症患者群,軽度の腎機能障害を有する骨粗鬆症患者群及び中等度の腎機能障害を有する骨粗鬆症患者群のいずれの群でも,①新規椎体骨折抑制効果(【0126】,【表25】)及び腰椎骨密度増加効 果(【0127】,【表26】)が認められたこと,②これらのすべての群において安全性(血清カルシウム,副作用発現率)が同等であること(【0128】ないし【0130】,【表27】ないし【表33】)が記載されているにすぎない(【0123】ないし【0130】)。 (イ)a 本件明細書は,骨折抑制効果が本件3条件により ること(【0128】ないし【0130】,【表27】ないし【表33】)が記載されているにすぎない(【0123】ないし【0130】)。 (イ)a 本件明細書は,骨折抑制効果が本件3条件により奏するとしなが ら,200単位投与群について,本件3条件を全て満たす患者と本件 3条件の全部又は一部を満たさない患者とを比較した試験結果は何ら示していない。仮に,本件3条件を満たした場合に100単位の投与によってPTHの骨折抑制効果を強く発現させることができるとしても,本件発明のように,用法・用量を限定したところ格別の効果を奏する特殊な患者群を見出したという発明において,当該用法・用量を 変更しても,その特殊な患者群において変更前の用法・用量と同様に格別な効果を奏するなどという技術常識はなく,また,そのような推論ができる根拠はない。実際,本件明細書に記載の実施例1の結果は,100単位投与群では,本件3条件の全てを満たすとする高リスク患者の骨折発生率が6%(=3÷52,【表2】及び【表8】),本件3条 件を満たさないとする低リスク患者の骨折発生率が9%であり(=1÷11,【表3】及び【表9】),高リスク患者の方が低リスク患者よりも骨折発生率が低いが,5単位投与群では,高リスク患者の骨折発生率が28%(=18/64,【表2】及び【表8】),低リスク患者の骨折発生率が10%(=1÷10,【表3】及び【表9】)であり,低リ スク患者の方が高リスク患者よりも骨折発生率が低くなっている。 b 本件発明が対象とする「高リスク患者」とは,本件条件(1)と,「既存骨折がある」(本件条件(2))と,本件条件(3)の全てを満たす者であるところ(【請求項1】),本件明細書の実施例の「高リスク患者(高リスク者)」は,本 高リスク患者」とは,本件条件(1)と,「既存骨折がある」(本件条件(2))と,本件条件(3)の全てを満たす者であるところ(【請求項1】),本件明細書の実施例の「高リスク患者(高リスク者)」は,本件条件(1)と,「既存の椎体骨折がある」 と,本件条件(3)の全てを満たす患者としており(本件明細書【0079】),「既存の椎体骨折がある」は「既存骨折がある」(本件条件(2))に含まれるから,実施例の「高リスク者」は,本件3条件を満たす者である。 他方,実施例では,「高リスク者」以外の者を全て「低リスク者」と しているから(本件明細書【0079】,【0080】),本件条件(1) と,「既存の『非』椎体骨折がある」と,本件条件(3)の全てを満たす患者は,実施例においては「低リスク者」であるが,本件3条件は満たしていることになり,本件発明は実施例にいう「低リスク者」をも含んでいる。そして,骨粗鬆症患者では,男女とも,部位にかかわらず,既存骨折があると将来の骨折リスクは約2倍になり,特に,既 存椎体骨折があると将来の椎体骨折は約4倍に高まるとされていて(甲116),本件条件(2)の「既存の骨折がある」と実施例の「既存の椎体骨折がある」とでは,骨折リスクが約2倍相違する。そうすると,骨折リスクの高い「既存の椎体骨折がある」患者を対象とした実施例1の結果をもってしては,それより骨折のリスクの低い「既存 の『非』椎体骨折がある」患者をも含む本件3条件が特殊な患者群を画することの根拠となり得ない。 また,低リスク患者の類型は7通り(3種の条件を組み合わせた8通りの場合から,全ての条件を満たす場合―すなわち,高リスク患者―を控除する。)存在するが,実施例1の「低リスク患者」かつ「10 また,低リスク患者の類型は7通り(3種の条件を組み合わせた8通りの場合から,全ての条件を満たす場合―すなわち,高リスク患者―を控除する。)存在するが,実施例1の「低リスク患者」かつ「10 0単位投与群」の例数は,わずか11例しかなく,7通りの組合せに対しては少なすぎ,その結果をもってしては,確率の低い事象が偶然生じた可能性を排除することができず,そのような試験結果に信頼性を認めることは困難である。また,実施例1の100単位投与群における低リスク患者の患者背景は,全員が年齢65歳未満で本件条件(1) を満たさないが,本件条件(2)及び本件条件(3)のいずれも満たす者とうかがわれ(本件明細書【表3】),実施例1の「低リスク患者」かつ「100単位投与群」の結果は,本件条件(1)のみを満たさない患者群についての結果であって,ここから低リスク患者全般について客観的な評価を導くことは困難である。 (ウ) 乙25証明書及び甲111証明書について a 別紙4の実験成績証明書(乙25。以下「乙25証明書」という。)及び甲111証明書は,本件3条件の全て満たすことにより特別な骨折抑制効果が認められるとの効果を基礎付けようとするものであるが,本件明細書には,200単位投与群について,本件3条件を全て満たす患者と本件3条件の全部又は一部を満たさない患者とを比較した試 験結果は何ら示されていない。加えて,甲111証明書は,骨折抑制効果について本件3条件を前提とするのではなく,本件条件(4)を加え,「本件3条件及び本件条件(4)を満たす患者(本件4条件を満たす患者)」と「本件3条件の一部を充足せず本件条件(4)を満たす患者」とを比較することによって,「本件3条件を満たす患者」につい て,特 3条件及び本件条件(4)を満たす患者(本件4条件を満たす患者)」と「本件3条件の一部を充足せず本件条件(4)を満たす患者」とを比較することによって,「本件3条件を満たす患者」につい て,特別な骨折抑制効果が認められるとの効果を基礎付けようとしている。 そうすると,乙25証明書及び甲111証明書は,本件明細書に記載されていない発明の効果を,出願後に実験結果等を提出して主張又は立証するものであり,出願人と第三者との公平を害する結果を招来 するものであるから,これを斟酌することは許されない。 b 仮に,乙25証明書及び甲111証明書を参酌することが許されるとしても,以下の理由から,乙25証明書及び甲105証明書は,本件発明の効果の顕著性を基礎付けるものではない。 (a) 乙25証明書及び甲111証明書と本件審決が認定した効果又 は被告が主張していた効果との間に齟齬があること本件発明の効果として,被告は,本件3条件を満たすことによって,骨折抑制効果が認められると主張し,本件審決は,本件4条件の全てを満たす患者において骨折抑制効果が認められると判断した。しかしながら,乙25証明書は,本件3条件の全てを満たす患 者と,本件条件(2)又は本件条件(3)のうち少なくとも1つを 満たさない患者との間で,甲111証明書は,本件4条件の全てを満たす患者と,本件条件(1)及び本件条件(4)を満たすが,本件条件(2)又は本件条件(3)のうち少なくとも1つを満たさない患者との間で骨折発生率を対比しようとしたものである。したがって,本件4条件の全てを満たす患者と,本件条件(4)を満たす が,本件3条件の全部又は一部を満たさない全類型の患者との間で骨折発生率を対比 の間で骨折発生率を対比しようとしたものである。したがって,本件4条件の全てを満たす患者と,本件条件(4)を満たす が,本件3条件の全部又は一部を満たさない全類型の患者との間で骨折発生率を対比したものではなく,また,本件4条件の全てを満たす患者と,本件4条件の全部又は一部を満たさない全類型の患者との間で骨折発生率を対比したものでもない。また,本件条件(4)の充足についてどのように判定したのか,その記載からは不明であ る。 ⒝ 乙25証明書及び甲111証明書は,本件出願後に個別の治療にて処方された患者データや,本件発明とは異なる薬剤に関する臨床試験データを寄せ集めたものにすぎず,結果の信頼性が乏しいこと乙25証明書及び甲111証明書は,被告の販売する製品である PTH製剤であるテリボンの再審査申請用の製造販売後データ(甲114)とテリボン及びエルシトニンの臨床試験におけるプラセボ群を統合したデータから,本件3条件の充足の有無が判定可能であり,骨折抑制率を算出可能なものを抽出して解析したものとされている。このように,乙25証明書及び甲111証明書は,他の骨粗 鬆症治療薬を併用していたり,別の疾患が併発しているために骨粗鬆症治療薬以外の薬を併用している患者を含んでいる可能性を排除できず,投与期間・観察期間も骨折の診断基準も不明な患者についてのデータである製造販売後データと,有効成分,効能効果,用法用量が異なり,しかも試験条件及び試験実施時期の異なる別個の 薬剤に関する臨床試験のプラセボ群を統合したデータとを寄せ集 めたものでしかなく,その結果の信頼性は疑わしい。 ⒞ 甲111証明書と本件明細書の【表25】とは整合していないこと本件審 群を統合したデータとを寄せ集 めたものでしかなく,その結果の信頼性は疑わしい。 ⒞ 甲111証明書と本件明細書の【表25】とは整合していないこと本件審決は,甲111証明書に基づき,本件4条件を満たす患者におけるRRR(骨折相対リスク減少率)が約61.4%(=1-(1 1÷191)÷(10÷67)),本件4条件を満たさない患者におけるRRRが約42.6%(=1-(7÷122)÷(1÷10))であるとし,本件4条件を満たす患者につき顕著な骨折抑制効果が認められる旨判断した。 しかしながら,本件明細書の【表25】によると,腎機能が正常 な患者におけるRRRが100%(=1-(0÷46)÷(4÷48))であるのに対し,軽度又は中等度の腎機能障害患者におけるRRRは約78.6%(1-(6÷202)÷(31÷223))であり,腎機能が正常な患者の方が軽度又は中等度の腎機能障害患者よりもRRRが高いという結果が示されており,整合していない。 逆に,本件明細書の【表25】における程度の差(21.4ポイント)では同等と評価されるのであれば,甲111証明書における程度の差(18.8ポイント)でも同等と評価するべきであって,顕著な効果は示されているとはいえないことになる。 ⒟ 甲111証明書の結果は,見かけ上の数字が出ているだけである ことプラセボとの対比において,骨折の高リスク患者について低リスク患者より骨折の発生が抑制されたように見えることは至極当然のことである。 甲111証明書は,本件4条件の全てを満たす患者群(本件明細 書でいうところの骨折の「高リスク患者」)と本件条件(1)及び本 ように見えることは至極当然のことである。 甲111証明書は,本件4条件の全てを満たす患者群(本件明細 書でいうところの骨折の「高リスク患者」)と本件条件(1)及び本 件条件(4)を満たし,本件条件(2)又は本件条件(3)のうちの少なくとも1つを満たさない患者群(本件明細書でいうところの骨折の「低リスク患者」)において,それぞれ,プラセボ投与群(コントロール群)との対比において骨折抑制効果を比較したものである。そして,骨折の高リスク患者のプラセボ投与群は,骨折リスク が高いにもかかわらずプラセボを投与した患者群であるから骨折発生率が高いことは予測の範囲内である。PTHが,骨折の危険性の高い骨粗鬆症患者に対し有効な治療薬であることは技術常識であるから,「高リスク患者」のPTH投与群において骨折発生率が低くなることも予測の範囲内である。そうすると,骨折の「高リスク 患者」において,相対リスク減少率が,より高い値となることは,当業者において予測の範囲内のことでしかない。一方,骨折の「低リスク患者」では,そもそも骨折発生率が低いため,PTH投与群とプラセボ群とで骨折発生率に有意な差が顕れにくい。そうすると,骨折の「低リスク患者」において,相対リスク減少率が,より低い 値となることも,当業者の予測の範囲内である。 (エ) 予測できない顕著な効果は,本件発明の構成が奏するものとして当業者が予測することができなかったものか否か,当該構成から当業者が予測することができた範囲の効果を超える顕著なものか否かの観点から決せられるから,用法・用量の異なる従来技術とのみ対比して効果が顕 著であるとすることはできない。そうすると,甲7発明と本件発明は,有効成分,用法・用量,骨粗鬆症治療用途と のか否かの観点から決せられるから,用法・用量の異なる従来技術とのみ対比して効果が顕 著であるとすることはできない。そうすると,甲7発明と本件発明は,有効成分,用法・用量,骨粗鬆症治療用途という効果を基礎付ける部分において同一の構成を備えているから,甲7発明の効果を当業者の予測の判断の基礎とすることは許されるべきであるが,体内蓄積に影響する可能性のある投与条件が相違する甲10文献と対比してその効果の顕著 性を主張することは失当である。一方,甲7発明における血清カルシウ ム値(甲7の図2)が十分に安全な数値の範囲内であることに鑑みると,本件発明において中等度の腎機能障害患者への投与について用法用量の調節が必要でないことは,甲7発明に基づき予測される内容を確認したものでしかないといえる。 (オ) 以上からすると,本件発明は予測できない顕著な効果を奏するとい えるものではない。 ウ小括以上のとおり,相違点1は当業者において容易に想到することができるから,本件審決の判断には,誤りがある。 ⑵ 被告 ア相違点1の容易想到性の主張について(ア) 本件4条件の各条件について高齢の骨粗鬆症患者であれば,本件4条件を満たすとの技術常識はない。患者の要件は,一つ一つに分解できるものではなく,それらが有機的に結合して患者の要件を構成するものであるから,本件4条件を一体 として,その技術的意義が判断されなければならない。 (イ) 本件4条件の容易想到性についてa 骨粗鬆症と診断された患者が本件4条件の全てを満たすとは限らないし,本件4条件以外の因子の重要度が低いことを意味しない(甲116)。それゆえ,甲7発明における対象患 易想到性についてa 骨粗鬆症と診断された患者が本件4条件の全てを満たすとは限らないし,本件4条件以外の因子の重要度が低いことを意味しない(甲116)。それゆえ,甲7発明における対象患者の選定においても,複数 の因子をスコア化して評価してそのスコアの合計数で診断したものであって,その対象患者が本件4条件を全て満たすことは予定されていない。甲7文献の臨床試験は,後期第Ⅱ相試験であり,その主な目的は,骨粗鬆症患者を対象として用量反応関係を明らかにし,第Ⅲ相比較試験のための用法・用量を決定することであり,PTH50単位投 与群(L群),100単位投与群(M群),200単位投与群(H群) を比較する試験にすぎず,骨粗鬆症患者の中から特殊な患者群を取り出して薬効を評価するというものではない。仮に,本件4条件の個々の条件自体は甲7発明が対象範囲として予定するものであるとしても,本件4条件全体は一般的な指標ではなく,甲7発明が当然に対象範囲として予定していたものではない。甲7文献には,本件4条件に着目 して患者群をとらえた記載はないし,骨折抑制のための骨粗鬆症治療剤に関し,本件4条件を満たす患者を選択してその対象とすることが一般的であるとの証拠も存在しない。本件4条件の着想を得たのは本件発明が初めてである。 b(a) 本件3条件の個々の条件自体は一般的な指標であったとしても, 本件3条件全体は一般的な指標ではない。「骨折リスクの増大」ということであれば,他にも骨折リスク因子は多数あり(甲116),本件3条件を選択する蓋然性はない。骨折しやすい患者が骨折抑制効果を得られやすい患者という技術常識はないところ,本件3条件は,PTH100単位週1回投与の第Ⅲ層試験の層別解析により初め て 本件3条件を選択する蓋然性はない。骨折しやすい患者が骨折抑制効果を得られやすい患者という技術常識はないところ,本件3条件は,PTH100単位週1回投与の第Ⅲ層試験の層別解析により初め て,本件3条件を組み合わせるとPTHの骨折抑制効果が高いという新規な知見を得られたことに基づいて設定されたものであり,これを甲7文献の開示事項から導くことはできない。むしろ,甲7文献には,サブグループ間で薬物に対する応答は同程度であった旨の記載があり,甲7発明の投与対象患者を区分して投与対象をサブ群 に限定しても効果は変わらないことが推論されるから,甲7発明から本件3条件を選択する動機付けは否定される。 ⒝ 腎機能障害患者において,医薬品の用量調節が必要になったり,副作用が増加する可能性が高いことは,本件基準日当時の技術常識であるが(甲108),加齢に伴い腎機能の低下が生じることゆえに 高齢者(65歳以上)に対する医薬品の開発において腎機能低下の 影響を明らかにして適切な情報を提供することが一般的にされていたということはない。 原告は,甲10文献において,軽度又は中等度の腎機能障害者に対するPTHの投与でも,腎機能が正常な患者に対する投与と同等の有効性・安全性が認められたことが示されていると主張するが, 連日投与のPTH製剤であるフォルテオ(一般名テリパラチド)の審議結果報告書(甲15の1)には,腎機能障害者には慎重投与が必要と記載されている(46頁)。甲10文献に示されているのは,テリパラチドの連日20μg(約67単位)又は連日40μg(約133単位)の投与試験であるところ,投与後4ないし6時間の血 清カルシウム値をみると,テリパラチド連日40μg投与において,中等度腎障害 チドの連日20μg(約67単位)又は連日40μg(約133単位)の投与試験であるところ,投与後4ないし6時間の血 清カルシウム値をみると,テリパラチド連日40μg投与において,中等度腎障害患者の高カルシウム血症(>11.0mg/dl)の発生率は10%以上であり,また,テリパラチド連日20μg投与群と連日40μg投与群とを対比すると,連日40μg投与群の方が桁違いに高い結果が示されている(表5)。また,同一の実験に係 る別の報告書では,高カルシウム血症のために治験から脱落した被験者がいることや用量を半減させた被験者がいたことが示されている(甲106)。これらの結果を総合すると,高カルシウム血症の発生率はPTH投与量に対して用量依存的であり,高カルシウム血症の発生率自体は,たとえ有意差はないとしても,腎障害者の方が 正常者よりも数値的に高い傾向をうかがうことができる。このように高カルシウム血症の発生率がPTH投与量に対して用量依存的であるとすれば,1回当たりの投与量の多いPTH200単位週1回投与を腎機能障害患者へ行うことは安全でないと考えるのが自然である。 なお,PTHは短時間でアミノ酸に分解されるが,血清カルシウ ム濃度は,投与の約2時間後に上がり始め,4ないし6時間後に最大濃度に達するという薬理作用を示しており(甲16),半減期が短いことと副作用の発生とは直接関係しているものではない。したがって,PTHの単回投与の試験における薬物動態(甲15の1,甲16,甲17の1)がPTHを連投した時にも安全であることの根 拠にはならず,少数の健常者に対して単回投与を行う第I相試験の結果で長期投与に伴う安全性の評価をすることはできない(甲101)。薬剤による副作用は,投与初回に発 投した時にも安全であることの根 拠にはならず,少数の健常者に対して単回投与を行う第I相試験の結果で長期投与に伴う安全性の評価をすることはできない(甲101)。薬剤による副作用は,投与初回に発生しなければ,以降,ずっと安全というものではなく,一般に長期投与の経過の中で発生するものだからである(甲107)。 c 甲7文献の試験においては,重度の腎機能障害者を投与対象から除外したことは明らかではあるが,それ以外,投与対象となった患者の腎機能は不明であり,仮に投与対象となった患者の中に中等度の腎機能障害患者が含まれていたとしても,腎機能障害患者であっても正常患者と同様に安全に投与できるかを明らかにはしていない。むしろ, 前記b⒝のとおり,高カルシウム血症の発生率はPTH投与量に対して用量依存的であるから,投与量の多い200単位週1回投与を中等度の腎機能障害患者へ行うことは安全でないと考えるのが自然である。 甲第87号証「治療前及び治療1年後の腸骨梁の組織形態計測及び微細構造解析によって評価される原発性骨粗鬆症患者におけるヒト副甲 状腺ホルモン1-34の毎週間歇投与の効果及び安全性」(JournalofBoneandMineralMetabolismVol.22,p.569-576,2004))でも,甲7文献に接した当業者が,200単位の投与には非常に頻繁な副作用が認められたため,臨床使用には不適当である旨の認識に至ったことが記載されている。甲7発明が将来有望であると思われる骨 粗鬆症治療剤とされていたとの甲7文献の記載は,週1回投与という 新たな用法の可能性に関して述べたものであり,200単位投与という点に特化して将来有望と記載されたものではない。 また,甲7 ていたとの甲7文献の記載は,週1回投与という 新たな用法の可能性に関して述べたものであり,200単位投与という点に特化して将来有望と記載されたものではない。 また,甲7発明では高い頻度(42%)で副作用が発現しており,少なくとも,PTHが短時間でアミノ酸に分解されることと長期投与において観察される副作用面で安全であることとは直接関係するもの とはいえない。 したがって,PTHの腎機能障害者への影響が,事実,存在することが出願当時明白であった以上,より高用量である200単位週1回投与に際し,腎機能障害患者と正常な患者とで安全性が同等であろうなどといったことは予測できるはずのないことである。 d テリパラチド20μg投与群又は40μg投与群のプラセボ群に対する骨折相対リスク減少率は,患者が75歳以上の場合には,65歳以上75歳未満の場合よりも低くなっているなど,PTH製剤が高齢者には効きにくいということは技術常識であり(乙28,29),PTHを高齢者に特に使用しようとする積極的な動機付けは生じないから, 年齢に関する本件条件(1)を含む本件3条件の動機付けは生じない。 e 以上のとおり,本件4条件は,本件発明の発明者が初めて見出した条件であり,甲7文献に開示,示唆されておらず,技術常識を踏まえても着想し得ない。 イ効果について (ア) 本件発明の効果は,本件3条件を満たすことにより高い骨折抑制効果が得られること(本件明細書の【0086】,【0089】,【0092】,【0096】),及び,本件条件(4)を満たす患者に対する副作用発現率と血清カルシウムに関する安全性が,腎機能が正常な患者と同等であることである(本件明細書【012 【0089】,【0092】,【0096】),及び,本件条件(4)を満たす患者に対する副作用発現率と血清カルシウムに関する安全性が,腎機能が正常な患者と同等であることである(本件明細書【0128】ないし【0130】)。また,P THの連日投与から想定されるBMD増加率に対する骨折相対リスクと 対比して,本件発明は,BMD増加率が低くても,より低い骨折相対リスクが得られるという効果も奏する。 本件明細書には,骨折抑制効果に関し,本件3条件についての具体的な対比データ自体は記載されていない。しかしながら,試験データ自体が常に明細書に記載されていることが必要とされるのではなく,明細書 において,効果を認識し,これを推論できる記載がある場合には,出願後に実験成績証明書を提出してその効果を説明することは許容されている。 (イ)a 本件明細書において,PTH週1回投与について,本件3条件の全てを満たす患者(高リスク患者)と,本件3条件の全部又は一部を 満たさない患者(低リスク患者)とを比較した試験結果が,PTH100単位週1回投与の試験で示されている(実施例1)。そして,高リスク患者では,低リスク患者と対比して,骨折抑制効果に優れることの結果も示されている(【表6】,【表7】,【0086】)。本件明細書の実施例2は,この100単位週1回投与の高リスク患者での顕著な骨 折抑制効果を200単位週1回投与について実証したという関係になる。実施例2では,低リスク患者は試験の対象とされていないが,実施例1と実施例2とは,100単位と200単位との用量の相違にすぎないので,実施例2に低リスク患者を対象に含めた試験データの記載がなくとも,実施例1の結果からみて,200単位週1回投与につ い 例1と実施例2とは,100単位と200単位との用量の相違にすぎないので,実施例2に低リスク患者を対象に含めた試験データの記載がなくとも,実施例1の結果からみて,200単位週1回投与につ いても高リスク患者に対して顕著な効果を奏することは十分に推論できる。 なお,本件発明においては,5単位投与群はプラセボ相当の対照群として扱っているから,5単位投与群において,低リスク患者の方が高リスク患者よりも骨折発生率が低くなるのは,骨折をしやすい者を 高リスク患者として定義付けている以上,骨折をしにくい者の骨折発 生率が骨折をしやすい者の骨折発生率よりも低いという当然の結果が示されたにすぎない。 b 本件明細書が定義する「高リスク者」は,「既存骨折がある」であり(【0068】),本件3条件を満たす患者である。「低リスク者」は,高リスク者以外のものであるから,本件3条件を満たさない患者であ る。実施例1及び2では,骨折リスクが高い典型例である既存椎体骨折を有する患者を対象として「高リスク者」と「低リスク者」を区分したが,本件発明が「既存の『非』椎体骨折がある」患者を「高リスク者」から除外しているわけではない。実施例は既存椎体骨折の有無に着目したものであるが,既存骨折を有することにより骨折リスクが 高くなることは,既存骨折の部位・種類に関わらず共通するから,既存骨折が『非』椎体骨折である高リスク患者においても,既存骨折が椎体骨折である高リスク患者と同様にPTHが高い骨折抑制効果を奏すると推定するのが自然である。 実施例1の「低リスク者」かつ「100単位投与群」の例数が11 例であっても,その結果を偶然とする根拠はないし,本件3条件を満たさない類型が種々あり,その全て のが自然である。 実施例1の「低リスク者」かつ「100単位投与群」の例数が11 例であっても,その結果を偶然とする根拠はないし,本件3条件を満たさない類型が種々あり,その全ての類型についての試験結果がないとしても,それら類型には本件3条件を満たさないという共通点はあるし,たとえ本件条件(1)だけの相違しかないとしても,高リスク者と低リスク者として相違するものであることに変わりはない。した がって,比較対象となる低リスク者の例が一つでもあればよく,あらゆる類型の低リスク者と対比した試験結果がなければならないものではない。 (ウ) 乙25証明書及び甲111証明書について乙25証明書は,本件条件(1)を満たすが,本件条件(2)又は 本件条件(3)のいずれかを満たさない患者において,PTH投与群 ではコントロール群よりも骨折の発生が抑制されたものの有意差は認められず,他方,本件3条件の全てを満たす患者においてはPTH投与群ではコントロール群よりも骨折の発生が有意に抑制されていることを,甲11証明書は,乙25証明書の対象患者から中等度腎機能障害患者を抽出して解析したものであり,本件4条件のうち本件条件(1) 及び本件条件(4)を満たすが本件3条件のうち本件条件(2)又は本件条件(3)のいずれかを充足しない患者ではプラセボとの対比で有意差は得られないが,本件4条件の全てを満たす患者は有意な骨折抑制効果が得られることを報告するものである。乙25証明書及び甲111証明書によると,本件発明の顕著な効果が裏付けられる。この 点に関する原告の主張に対する反論は,以下のとおりである。 a 前記⑴イ(ウ)b(a)について乙25証明書及び甲111証明書で示 顕著な効果が裏付けられる。この 点に関する原告の主張に対する反論は,以下のとおりである。 a 前記⑴イ(ウ)b(a)について乙25証明書及び甲111証明書で示した,本件条件(2)又は本件条件(3)の少なくともいずれかを満たさない患者は,本件条件(1)ないし本件条件(3)のいずれかを満たさない患者である から,本件3条件のいずれかを満たさない患者であり,比較としての条件に適合している。乙25証明書及び甲111証明書は,本件条件(4)を満たす患者の中で本件3条件の充足の有無による効果を対比するものであって,患者の腎機能別に対比するものではないから,本件条件(4)の充足の有無による効果を対比する必要はな い。乙25証明書及び甲111証明書は,低リスク患者の全ての類型について確認したものではないが,そこで確認されていない態様は,既に確認された態様よりも更に本件4条件の各条件を満たす数が少ない態様であり,低リスク患者の中でもよりリスクの低い低リスク患者といえ,このような患者に比して,本件発明が高リスク患 者に対して高い骨折抑制効果を示すことは十分に推論できる。 b 前記⑴イ(ウ)b⒝について市販後の調査におけるデータであっても,実際の患者を対象とし,事前に規定した調査項目について調査したものであるから,PTH投与群として扱うことに特に問題ない。この場合,治験のように,患者の選択・除外基準等を設ける等の介入は行われていないが,骨 折評価が可能であること,本件4条件の充足又は非充足を評価可能であること等の調査項目を事前に規定した上で調査を行っている。 また,コントロール群については,テリボンの臨床試験におけるプラセボ群,エ ること,本件4条件の充足又は非充足を評価可能であること等の調査項目を事前に規定した上で調査を行っている。 また,コントロール群については,テリボンの臨床試験におけるプラセボ群,エルシトニンの臨床試験におけるプラセボ群のいずれについても二重盲検下で実薬群と同じ投与経路,投与頻度でプラセ ボ投与されているので,実薬を投与されていない患者として適切に骨折発生を評価できている。したがって,いずれも,実薬を投与されていない患者として共通し,共に適切に骨折発生を評価できているのであるから,両プラセボ群を統合して解析しても何ら問題はない。 仮に,PTH投与群に既存の骨粗鬆症治療薬を併用している患者が含まれ,あるいは,PTH投与群の投与期間・観察期間が患者ごとに開きがあったとしても,それら条件は,本件4条件を満たす患者群と本件4条件を満たさない患者群の両方に同等の割合で発生すると考えるのが自然であり,両者に対する骨折抑制効果を比較検 証する場合に何ら問題となることではない。なお,二重盲検臨床試験であっても,途中に脱落する患者が出てきて投与期間・観察期間も異なることが生じるのであり,投与患者の試験期間・観察期間が異なるのはどのような臨床試験でも同様に生じることである。また,乙25証明書及び甲111証明書は,PTH群,コントロール群と もに臨床骨折のデータを用いて比較評価をしており,統計データを 用いただけなどというものではない。 c 前記⑴イ(ウ)b⒞について甲111証明書は,本件3条件の全てを満たす患者とこれを満たさない患者との骨折抑制効果を対比したものであるが,本件明細書の【0126】及び【表25】は,本件3条件を全て満たすが,腎 機 甲111証明書は,本件3条件の全てを満たす患者とこれを満たさない患者との骨折抑制効果を対比したものであるが,本件明細書の【0126】及び【表25】は,本件3条件を全て満たすが,腎 機能が異なる患者同士の骨折抑制効果を対比したものである。したがって,【表25】のRRRが甲111証明書における本件3条件の全てを満たす患者とこれを満たさない患者とのRRRの対比に対して何らの示唆を与えるものではないから,両者の数値を比較してその整合性を問題にする余地はない。また,明細書には様々な態様 の発明が記載され,その中から特許請求の範囲が定められるものであり,本件発明よりも更にRRRの高い発明が本件明細書に記載されていても何ら不思議とするところではない。 d 前記⑴イ(ウ)b⒟について本件3条件の全てを満たす患者(高リスク者)は骨折しやすい患 者ではあるが,だからといって,治療薬を投与すれば骨折が抑制されやすい患者とは当然にはいえない。骨折の高リスク者に対しては高い骨折抑制効果が期待できるといった技術常識はなく,むしろ,骨折しやすい患者であれば治療薬を投与しても骨折を抑えにくいと予測される。そうすると,本件3条件を満たさない患者と比して, 本件3条件の全てを満たす患者で骨折抑制効果が高くなることは,予測できない効果である。 (エ) 効果の顕著性の検討においては,当該発明の構成から奏するものとして当業者が予測することのできなかったものか否か,当該構成から当業者が予測することのできる範囲の効果を超えるか否かとの観点から検 討すべきである。なお,引用発明と対比するとしても,引用発明の効果 が不明な場合や直接の比較が困難な事情がある場合等もあるから,その場合には,技 効果を超えるか否かとの観点から検 討すべきである。なお,引用発明と対比するとしても,引用発明の効果 が不明な場合や直接の比較が困難な事情がある場合等もあるから,その場合には,技術水準を参酌して当該発明の効果が予測し得たものか,顕著なものかを評価することは許される。 甲10文献には,テリパラチド20μg(約67単位)及び40μg(約133単位)の連日投与試験において,投与量の増加に応じて,ま た,腎障害の程度に応じて,高カルシウム血症の割合及びその重症度が増す状況が生じ,投与量の調節が必要になったり,脱落者が発生していることが記載されており,そうであれば,更に1回あたりの投与量が多いPTH200単位を腎機能障害者に週1回投与すると,投与量の調節が必要になったり,脱落者が増加するであろうとみるのが妥当である。 そうすると,200単位週1回投与に際し,腎機能障害患者と正常な患者とで安全性が同等であろうなどといったことは予測できるはずのないことである。また,甲7発明では,腎機能正常者と腎機能障害者との間での比較は行われておらず,腎機能障害者におけるPTH200単位週1回投与の際の安全性は不明であったこと,甲7発明の副作用発現率は 42%であり,各種の治療剤と比較して桁違いに高いことから,PTH200単位週1回投与において,軽度又は中等度の腎機能障害患者と腎機能が正常な患者とで安全性が同等であるという効果は予測できない。 (オ) 以上からすると,本件発明は予測できない顕著な効果を奏するものといえる。 ウ小括以上のとおり,相違点1は当業者において容易に想到することができないから,本件審決の判断には,誤りはない。 第4 当裁判所の判断 1 本件発明につい える。 ウ小括以上のとおり,相違点1は当業者において容易に想到することができないから,本件審決の判断には,誤りはない。 第4 当裁判所の判断 1 本件発明について 本件明細書(甲136)には別紙1「本件明細書の記載事項(抜粋)」のとお りの記載があり,この記載によると,本件発明について,次のような開示があると認められる。 ⑴ 技術分野本件発明は,PTH(ParathyroidHormone: パラサイロイドホルモン〔副甲状腺ホルモン〕)を有効成分として含有する骨粗鬆症の治療剤ないし予防剤に 関するものであり,また,PTHを有効成分として含有する骨折抑制ないし予防剤に関するものである(【0001】,【0018】)。 ⑵ 背景技術骨粗鬆症は,骨強度の低下を特徴とし,骨折のリスクが増大している疾患であり,治療剤の1つとしてPTH製剤が知られている(【0002】)。 従来技術として,1週間に1回の頻度で26週間の投与期間にわたり,1回の投与当たり「100又は200単位」のPTHを皮下投与する骨粗鬆症の治療方法があるが,この方法が,骨強度を増大させること又は骨折のリスクを軽減させることが可能な治療方法であるか否かについては明示されていない(【0004】,【0005】)。 また,従来技術として,PTHを連日投与するものがあるが,高カルシウム血症の副作用事例等があり,安全性の面から十分ではないことから,安全性が高くかつ効能・効果の面で優れたPTHによる骨粗鬆症治療方法が求められていた(【0006】ないし【0009】)。 ⑶ 発明が解決しようとする課題 本件発明の課題は,安全性が高くかつ効能・効果 効果の面で優れたPTHによる骨粗鬆症治療方法が求められていた(【0006】ないし【0009】)。 ⑶ 発明が解決しようとする課題 本件発明の課題は,安全性が高くかつ効能・効果の面で優れたPTHによる骨粗鬆症治療ないし予防方法を提供すること,さらに,安全性の高いPTHによる骨折抑制ないし予防方法を提供することである(【0012】)。 ⑷ 課題を解決するための手段等前記課題を解決するため,PTHの投与量・投与間隔を限定すること,具 体的には1回当たり「100ないし200単位」のPTHを週1回投与する ことにより,効能・効果及び安全性の両面で優れた骨粗鬆治療ないし予防方法となること並びに安全性の高い骨折抑制又は予防方法となることが見出され,それらの方法において,骨折の高リスク者に対して特に効果を奏することが見出された(【0013】,【0015】,【0018】,【0034】,【0035】)。 骨粗鬆症及び腎障害は,加齢とともにその有病率が上昇するので,腎障害を有する骨粗鬆症患者に対して有効かつ安全な薬剤を提供することは重要であるところ,本件発明においては,血清カルシウムに関する安全性について,腎機能正常(クレアチニンクリアランスが80ml/min以上)の患者群,軽度腎機能障害(50以上80未満ml/min)及び中等度腎機能障害(3 0以上50未満ml/min)を有する患者群のいずれの群も同等であった(【0064】ないし【0067】)。 骨粗鬆症における骨折の危険因子としては,年齢,性,低骨密度,骨折既往,喫煙,アルコール飲酒,ステロイド使用,骨折家族歴,運動,転倒に関連する因子,骨代謝マーカー,体重,カルシウム摂取などが挙げられるとこ ろ,本件発明に としては,年齢,性,低骨密度,骨折既往,喫煙,アルコール飲酒,ステロイド使用,骨折家族歴,運動,転倒に関連する因子,骨代謝マーカー,体重,カルシウム摂取などが挙げられるとこ ろ,本件発明においては,(1)年齢が65歳以上である,(2)既存骨折がある,(3)骨密度が若年成人平均値の80%未満である,及び/又は,骨萎縮度が萎縮度I度以上であるとの3条件を満たす骨粗鬆症患者を「高リスク患者」として定義する(【0068】)。 ⑸ 実施例1 退行期骨粗鬆症(閉経後骨粗鬆症及び老人性骨粗鬆症),特発性骨粗鬆症(妊娠後骨粗鬆症,若年性骨粗鬆症など)が例示される原発性骨粗鬆症の男女の患者を,高リスク患者及び低リスク患者(高リスク患者ではない患者)に区分して,それぞれ,「5あるいは100単位」のPTH製剤であるテリパラチド酢酸塩をそれぞれ週に1回間欠的に皮下投与した(【0037】,【00 77】,【0079】)。 高リスク患者においては,「100単位」投与群は,「5単位」投与群に比べ,有意に高い骨密度の増加,有意に低い新規椎体骨折発生,及び,有意に低い椎体以外の骨折発生が認められ,テリパラチド酢酸塩の週1回「100単位」投与は,高リスク患者に対し,有用な骨粗鬆症治療剤及び骨折抑制ないし予防剤となり得ることが確認されたが,低リスク患者においては,骨密 度,新規椎体骨折発生及び椎体以外の骨折発生のいずれについても,「100単位」投与群と「5単位」投与群との間で有意差は認められなかった(【0083】ないし【0094】,【表4】ないし【表11】)。 投与期間中,いずれの投与量においても高カルシウム血症の発症はなかった(【0095】,【図1】)。 ⑹ 実施例2原発性 し【0094】,【表4】ないし【表11】)。 投与期間中,いずれの投与量においても高カルシウム血症の発症はなかった(【0095】,【図1】)。 ⑹ 実施例2原発性骨粗鬆症と診断された男女の高リスク患者に対して,テリパラチド酢酸塩「200単位」(披験薬)又はプラセボ(対照薬)を,72週間,週1回,皮下投与した(【0098】)。 投与72週後における被験薬投与群と対照薬投与群それぞれにおける椎体 多発骨折(新規の2箇所以上の椎体骨折)の発生比率(例数)を比較したところ,対照薬投与群は2.1%(6例),被験薬投与群は0.8%(2例)であり,被験薬は椎体多発骨折に対して抑制ないし予防効果を有することが示された(【0109】,【表12】)。また,増悪骨折に対しても披験薬は有効である(【0118】,【表20】)。 腎機能障害を有する骨粗鬆症患者への有効性及び安全性を試験したところ,腎機能正常の骨粗鬆症患者群及び軽度又は中等度の腎機能障害を有する骨粗鬆症患者群のいずれに対しても,被験薬が新規椎体骨折抑制効果と腰椎骨密度増加効果を有することが明らかになった(【0123】ないし【0127】,【表24】ないし【表26】)。 また,被験薬は,血清カルシウムに関する安全性及び副作用発現率に関す る安全性に関して,腎機能正常の骨粗鬆症患者群及び軽度又は中等度の腎機能障害を有する骨粗鬆症患者群のいずれに対しても,同等であることが明らかとなった(【0128】,【表27】,【0130】,【0134】,【表31】ないし【表33】)。 2 取消事由3(進歩性欠如に関する判断の誤り)の有無について 本件では,本件発明における「PTH1単位量」の測定方法について,明確性 【0134】,【表31】ないし【表33】)。 2 取消事由3(進歩性欠如に関する判断の誤り)の有無について 本件では,本件発明における「PTH1単位量」の測定方法について,明確性要件及び実施可能要件の充足の有無が争われているところではあるが,事案に鑑み,取消事由3から,まず判断する。 ⑴ 甲7発明甲7文献(訳は乙2)には,別紙2「甲7文献の記載事項(抜粋)」のとお りの記載がある。この記載によると,本件審決が認定するとおりの甲7発明を認定することができ,この点は,当事者間にも争いがない。 そうすると,甲7発明の患者の年齢は「45歳から95歳」であり,また,当該患者からは血清クレアチニンが2mg/dlより高いか,又はBUNが30mg/dlより高い重度の腎機能障害患者(甲12の1173ないし1 174頁,甲44の249頁参照)が除かれているから,甲7発明の対象患者は,腎機能正常者又は軽度若しくは中等度腎機能障害を有する者である。 なお,甲7発明の「厚生省による委員会が提唱した診断基準」とは,厚生省シルバーサイエンス骨粗鬆症研究班の定める「退行期骨粗鬆症の診断基準(1989年)」(甲8,93)(以下「1989年診断基準」という。)である (甲92)。 ⑵ 相違点1の容易想到性についてア本件4条件の技術的意義(ア) 前記1のとおり,本件明細書には,本件発明が,従来の骨粗鬆症薬であるPTHについて,安全性が高くかつ効能・効果の面で優れた骨粗 鬆症治療ないし予防方法を提供すること及び安全性の高い骨折抑制ない し予防方法を提供することを課題とすること(【0012】),骨粗鬆症における骨折の危険因子を多く持つ骨粗鬆症患者に対して本件発明の いし予防方法を提供すること及び安全性の高い骨折抑制ない し予防方法を提供することを課題とすること(【0012】),骨粗鬆症における骨折の危険因子を多く持つ骨粗鬆症患者に対して本件発明の骨粗鬆症治療剤ないし予防剤を投与することが望ましいこと及び骨粗鬆症における骨折の危険因子としては,年齢,性,低骨密度,骨折既往,喫煙,アルコール飲酒,ステロイド使用,骨折家族歴,運動,転倒に関連する 因子,骨代謝マーカー,体重,カルシウム摂取等が挙げられることが記載され,その上で,本件3条件を全て満たす骨粗鬆症患者を「高リスク患者」として定義することが記載されている(【0068】)。 また,骨粗鬆症及び腎障害は加齢とともにその有病率が上昇するから,腎障害を有する骨粗鬆症患者に対して有効かつ安全な薬剤を提供するこ とが重要であること(【0064】),クレアチニンクリアランスが30以上50未満ml/minは,中等度腎機能障害と判断できること(【0066】),クレアチニンクリアランスが50以上80未満ml/minは,軽度腎機能障害と判断できることが記載されている。 そして,実施例1においては,本件3条件の全てを満たす高リスク患 者について,PTHの週1回100単位投与群は同5単位投与群に比べ,有意に高い骨密度の増加,有意に低い新規椎体骨折発生及び有意に低い椎体以外の骨折発生が認められたこと,実施例2においては,本件3条件の全てを満たす高リスク患者について,PTHの週1回200単位投与群は対照薬(プラセボ)投与群に比べ,新規椎体多発骨折及び増悪骨 折の抑制効果が認められ,血清カルシウムに関する安全性及び副作用発現率に関する安全性が,腎機能正常の骨粗鬆症患者群と軽度及び中等度の腎機能障害を有する骨粗鬆 比べ,新規椎体多発骨折及び増悪骨 折の抑制効果が認められ,血清カルシウムに関する安全性及び副作用発現率に関する安全性が,腎機能正常の骨粗鬆症患者群と軽度及び中等度の腎機能障害を有する骨粗鬆症患者群で同等であったことが記載されている。 (イ) 前記(ア)によれば,本件3条件は,骨折の危険性の高まった骨粗鬆 症において,骨折の危険因子を多く持つ骨粗鬆症患者に対して治療剤な いし予防剤を投与することが望ましいとの認識の下,当該危険因子を多く持つ骨粗鬆症患者を特定する条件として設定されたものというべきであるが,本件条件(4)は,腎障害を有する骨粗鬆症患者に対しても有効かつ安全な薬剤を提供することは重要であるとの認識の下,腎機能障害が軽度又は中等度であっても腎機能正常者と安全性が同等であるとの 知見を踏まえ,軽度又は中等度の腎機能障害を持つ患者の中から中等度腎機能障害を有する患者を取り出し,当該患者を投与対象とできることとして設定されたものであると認められる。他方で,実施例2においても,本件3条件の全てを満たし,軽度及び中等度の腎機能障害者を有する患者に対して,新規椎体骨折抑制効果及び骨密度増加効果が奏される との記載はあるが(本件明細書【0126】,【表25】,【0127】,【表26】),本件条件(4)を加えたことによって骨折抑制効果が奏されるとの記載はなく,また,本件4条件の全てを満たす者と本件3条件の全部又は一部を満たさないが本件条件(4)を満たす者との間での安全性の対比はしておらず,本件3条件の全てを満たすことによって腎機能正 常者と同等の安全性がもたらされるとの効果を奏するとの記載もなく,被告も,本件発明がこれらの効果を奏するとまで主張するものではないと認められる。したがって,本 てを満たすことによって腎機能正 常者と同等の安全性がもたらされるとの効果を奏するとの記載もなく,被告も,本件発明がこれらの効果を奏するとまで主張するものではないと認められる。したがって,本件3条件と本件条件(4)とはその目的を異にする独立の条件であると理解できる。 被告は,本件4条件が有機的に結合した一体のものである旨主張する が,上記のとおり,その主張を採用することはできない。 イ本件基準日(平成22年9月8日)における骨粗鬆症に関する技術常識について(ア) 下記文献には,以下に引用する記載がある。 a 「退行期骨粗鬆症の診断」(1990年。甲8) ① 「本症の発生頻度は加齢とともに増加するので,本症は骨の生理 的加齢現象にすぎないと考える人もあるがそうではない。加齢に伴い,生理的にも骨のなかの蛋白およびCa,Pが減少するが,このような骨の生理的加齢を基盤に,さまざまな要因が加わって発症し,腰背痛や,病的骨折を伴うものを骨粗鬆症とよぶべきである。」(288頁左欄13ないし18行目) ② 「骨粗鬆症の骨病変は通常胸椎および腰椎に認められるので,退行期骨粗鬆症の診断にさいしてまず必要なことは,胸椎および腰椎の側面X線写真撮影を行うことである。ついでこの胸椎および腰椎の側面X線写真を用いて骨密度の減少あるいは圧迫骨折の有無をチェックする。・・・胸椎・腰椎の骨密度の減少を判定する方法とし ては慈恵大の方式が一般に用いられている。 骨粗鬆症ではまず椎体の密度が減少するために椎体のX線透過度が増大し,ついで縦の骨梁がめだつようになり,さらに進行すると上下面が陥没し・・・ついには椎体が崩れて圧迫骨折の像を呈するに 骨粗鬆症ではまず椎体の密度が減少するために椎体のX線透過度が増大し,ついで縦の骨梁がめだつようになり,さらに進行すると上下面が陥没し・・・ついには椎体が崩れて圧迫骨折の像を呈するに至る。慈恵大方式では,このような骨X線像を基にして骨粗鬆症 の程度をI~Ⅲ度に分類している。・・・最近,厚生省骨粗鬆症研究班では,これをより簡略化したものとして表2に示すような骨萎縮度の基準を提唱しており,今後はこの方法が広く用いられることが期待される。」(288頁右欄7行ないし289頁左欄17行目)③ 「表2 骨萎縮度の基準 Ⅰ度縦の骨梁がめだち,また椎体終板もめだつ。 Ⅱ度縦の骨梁が粗となり,また椎体終板も淡くなる。 Ⅲ度縦の骨梁が不明瞭となり,全体としてぼやけた感じを示す。 」(289頁)④ 「1988年度から,厚生省シルバーサイエンスプロジェクトとして「老人性骨粗鬆症の予防および治療法に関する総合的研究班」 (班長:折茂肇)が結成されたが,この研究班ではこのような立場から本症において認められる自・他覚所見をスコア化し,そのスコアに応じて,①確実,②ほぼ確実,③疑いあり,④否定的,の4つに分類する診断基準を提唱している(表3)」(290頁左欄20ないし26行目) ⑤ 「表3 退行期骨粗鬆症の診断基準1) 骨量の減少(+) 3 確実合計5点以上2) 骨折あり脊椎1個 1≧2個 2ほぼ確実合計4点大腿骨頚部 3橈骨 1疑いあり合計3点 3) 年齢女性55歳未満 -1 ≧2個 2ほぼ確実合計4点大腿骨頚部 3橈骨 1疑いあり合計3点 3) 年齢女性55歳未満 -1否定的合計2点以下男性75歳未満 -1 4) 腰背痛あり 1 除外疾患… 5) 血清カルシウム,リン,AL-P値正常 11項目の異常 02項目以上の異常 -1 …」(289頁)b 「原発性骨粗鬆症の診断基準(2000年度改訂版)」(2001年。 甲9,35) 「表1 原発性骨粗鬆症の診断基準(1996年度改訂版)Ⅰ X線上椎体骨折を認める場合低骨量(骨萎縮度Ⅰ度以上,あるいは骨密度値が若年成人平均値(YAM)の80%以下)で非外傷性椎体骨折のある症例を骨粗鬆症とする。 Ⅱ X線上椎体骨折を認めない場合 脊椎X線像骨密度値正常骨萎縮なし 骨量減少骨萎縮度Ⅰ度YAMの80~70%骨粗鬆症骨萎縮度Ⅱ度以上YAMの70%未満YAM:若年成人平均値(20~44歳)(注)骨密度は原則として腰椎の骨密度値とし,腰椎骨密度値の評価が困難である場合にのみ橈骨,第二中手骨,大腿骨頸部,踵骨の骨密度値を用いる。 骨萎縮とはradiographicosteopenia に相当する。 …」(77頁)c 「骨粗鬆症の予防と治療ガイドライン 2006年版」(2006年。 甲116)① 「骨量測定方法の進歩と普及を背景に,1991年の国際骨粗鬆 症会議において,骨粗鬆症は低骨 c 「骨粗鬆症の予防と治療ガイドライン 2006年版」(2006年。 甲116)① 「骨量測定方法の進歩と普及を背景に,1991年の国際骨粗鬆 症会議において,骨粗鬆症は低骨量と骨組織の微細構造の破綻によって特徴づけられる疾患であり,骨の脆弱性亢進と骨折危険率の増大に結びつく疾患と定義された。この定義に従った診断基準がわが国でも整備され,1996年の日本骨代謝学会診断基準をもとに,2000年に改訂版が作成されて今日に至っている(表21)。」(3 1頁左欄3ないし10行目)② 「表21 原発性骨粗鬆症の診断基準(2000年度改訂版)低骨量をきたす骨粗鬆症以外の疾患または続発性骨粗鬆症を認め ず,骨評価の結果が下記の条件を満たす場合,原発性骨粗鬆症と診断する。 Ⅰ 脆弱性骨折(注1)ありⅡ 脆弱性骨折なし 骨密度値(注2)脊椎エックス線像での骨粗鬆化(注3)正常YAMの80%以上なし骨量減少YAMの70~80%疑いあり骨粗鬆症YAMの70%未満ありYAM:若年成人平均値(20~44 歳)注1 脆弱性骨折:低骨量(骨密度がYAMの80%未満,あるいは脊椎エックス線像で骨粗鬆化がある場合)が原因で,軽微な外力によって発生した非外傷性骨折,骨折部位は脊椎,大腿骨頚部,橈骨遠位端,その他。 注2 骨密度は原則として腰椎骨密度とする。…注3 脊椎エックス線像での骨粗鬆化の評価は,従来の骨萎縮度判定基準を参考にして行う。 脊椎エックス線像での骨粗鬆化従来の骨萎縮度判定基準なし骨萎縮なし疑いあり骨萎縮度Ⅰ度あり骨萎縮度Ⅱ度以上」(31頁)③ 「Ⅲ 骨粗鬆症による骨 エックス線像での骨粗鬆化従来の骨萎縮度判定基準なし骨萎縮なし疑いあり骨萎縮度Ⅰ度あり骨萎縮度Ⅱ度以上」(31頁)③ 「Ⅲ 骨粗鬆症による骨折の危険因子・・・ 骨折の危険因子は,「骨密度低下」「骨質低下」「外力(転倒など)」に影響を与える因子である。骨折高リスク者を判定するには,骨密 度測定に加えて,「骨質」「外力」に関連する危険因子を評価する必要があり,骨密度とは独立した骨折危険因子が何であるかを知っておくことがポイントとなる。 年齢,性・・・低骨密度・・・ 骨折既往・・・・・・」(34頁)。 ④ 「表22 骨折の危険因子(メタアナリシス,システマティック・レビューによる結果〔エビデンスレベルⅠ〕のみ表示)危険因子文献成績低骨密度……骨密度とは独立した危険因子既存骨折*……… …… 」(35頁) ⑤ 「現在,骨粗鬆症治療開始は骨密度を基準に行われているが,同じ骨密度を示していても年齢が高いほど,表22の危険因子*をもつほど,骨折リスクは高くなる。骨密度,年齢,危険因子を総合的に考慮に入れることで,骨折リスクの高い人をより効果的に判別できる。」(35頁) ⑥ 「表30 骨粗鬆症治療についての基本的な考え方1.骨粗鬆症治療は骨折危険性を抑制し,QOLの維持改善をはかることを目的とする。 2.脆弱性骨折予防のための薬物治療開始基準は,骨粗鬆症診断基 的な考え方1.骨粗鬆症治療は骨折危険性を抑制し,QOLの維持改善をはかることを目的とする。 2.脆弱性骨折予防のための薬物治療開始基準は,骨粗鬆症診断基 準とは別に定める。 3.わが国では骨折危険因子として,低骨密度,既存骨折,年齢に関するエビデンスがあり,WHOのメタアナリシスでは過度のアルコール摂取(1日2単位以上),現在の喫煙,大腿骨頸部骨折の家族歴が確定している。 4.骨粗鬆症の薬物治療開始は上記の骨折危険因子を考慮して決定する。」(53頁)d 「骨粗鬆症の予防と治療ガイドライン 2006年版」(2006年。 甲60)「NIHコンセンサス会議では,骨粗鬆症の定義を「骨強度の低下 を特徴とし,骨折のリスクが増大しやすくなる骨格疾患・・・」に修正した。さらに,「骨強度」は骨密度と骨質の二つの要因からなり,BMDは骨強度のほぼ70%を説明するとした。残りの30%の説明要因を“骨質”という用語に集約し,その内容には,構造,骨代謝回転,微細損傷の集積,骨組織のミネラル化などをあげた」(2頁右欄27な いし36行目)(イ) 前記(ア)の各記載によると,本件基準日において,①骨粗鬆症は,骨強度の低下を特徴とし,骨折の危険性が増大した骨疾患であり,その治療の目的は,骨折を予防し,QOLの維持改善を図ることである,②骨粗鬆症は,加齢とともに発生が増加する,③骨粗鬆症による骨折の複 数の危険因子の中で,わが国では,低骨密度,既存骨折,年齢に関するエビデンスがある,④骨粗鬆症の診断基準に関して,1990年当時,厚生省シルバーサイエンスプロジェクト「老人性骨粗鬆症の予防および治療に関する総合的研究班」により ,低骨密度,既存骨折,年齢に関するエビデンスがある,④骨粗鬆症の診断基準に関して,1990年当時,厚生省シルバーサイエンスプロジェクト「老人性骨粗鬆症の予防および治療に関する総合的研究班」により提唱された診断基準(1989年診断基準。甲8,93)があったが,1996年に診断基準が整備され(甲 9,35。以下,この診断基準を「1996年診断基準」という。),そ の後,2000年に改訂版が作成された(甲116。以下,この基準を「2000年診断基準」という。),⑤骨強度は骨密度と骨質の2つの要因からなり,骨密度が骨強度のほぼ70%を,骨質が残りの30%を説明することが当時の技術常識であったことが認められる。 ウ本件基準日(平成22年9月8日)時点の骨粗鬆症と腎機能障害との関 係に関する技術常識について(ア)a 甲10文献(訳は乙3。なお,原告が甲144により翻訳の誤りと指摘した部分には下線を引き,括弧内に原告の訳と原文を併記した。)には,別紙3「甲10文献の記載事項(抜粋)」のとおりの記載がある。 b ①「薬物動態学の基礎と薬物投与設計への応用」(2006年。甲1 4)には,薬物動態は,血中濃度の時間的推移を速度論的に解析するものであり,血中濃度は,薬物の薬理効果や有害反応の発現強度を決定する客観的な指標であることが(47頁左欄19行ないし右欄5行目),②PTH製剤である「フォルテオ皮下注カート600μg」等に関する「審議結果報告書」(平成22年5月6日。甲15の1)には, フォルテオ40μgを腎機能障害者に単回皮下投与したとき(GHAW試験),薬物動態の主要なパラメータである消失半減期が,重度腎機能障害者の平均値は87.4分であったものの,軽度ないし中等度腎機能障害者の テオ40μgを腎機能障害者に単回皮下投与したとき(GHAW試験),薬物動態の主要なパラメータである消失半減期が,重度腎機能障害者の平均値は87.4分であったものの,軽度ないし中等度腎機能障害者の平均値は61.6分,腎機能正常者の平均値は60.7分であり,軽度ないし中等度腎機能障害の消失半減期は腎機能正常者の半 減期とほぼ同じであったことが(42頁4ないし29行目),③同審議結果報告書及び「CLINICALPHARMACOLOGYandBIOPHARMACEUTICSREVIEW(S)」(2001年。甲17の1)には,GHAW試験の評価として,軽度ないし中等度の腎機能障害と腎機能が正常な被験者には,いずれの薬物動態パラメータにおいても有意差はな く,曝露量及び安全性に大きな違いはなかったことが(甲15の1の 46頁3ないし28行目,74頁5ないし17行目,甲17の1の11ないし12頁),④「Forteoteriparatide(rDNAorigin) injection 750 mcg/3mL」(2002年。甲16)には,PTH製剤であるテリパラチドを単回投与した場合,重度の腎不全患者(CrCl<30mL/min)ではAUC(血中濃度-時間曲線下面積)及び半 減期が増加したが,軽度ないし中等度の腎不全患者(クレアチニンクリアランス30~72mL/min)では薬物動態の差が認められなかったことが(2ないし3頁),⑤フォルテオに関する「ForteoMedicalReviews」(2001年。甲18)には,軽度から中程度(中等度)の腎不全患者と健常被験者の間には,あらゆる薬物動態パラメー タに有意な差がないことが(33頁下から7ないし最終行),それぞれ記載されている。 c 「カ ,軽度から中程度(中等度)の腎不全患者と健常被験者の間には,あらゆる薬物動態パラメー タに有意な差がないことが(33頁下から7ないし最終行),それぞれ記載されている。 c 「カルシウム調節ホルモン(副甲状腺ホルモン,カルチトニン,ビタミンD)の作用」(1986年。甲3)には,生体内のカルシウムの恒常性は,PTH等の3種類のカルシウム調節ホルモンが相互に作用 することにより維持されており,血液中のカルシウムレベルは9.5~10.5mg/100mlと恒常的な値に保たれている旨が記載されている(200頁左欄9ないし22行目)。 (イ) 前記(ア)の各記載によると,①軽度又は中等度の腎機能障害者へのPTHの投与においては,腎機能正常者との間で薬物動態パラメータに 有意差がないこと,②甲10文献の試験は,骨粗鬆症と腎機能障害の罹患率はいずれも加齢とともに増加すること,及び,大規模な疫学研究では骨粗鬆症女性の85%が軽度から中等度の腎機能障害を有していたことに鑑み,加齢に関連した軽度又は中等度の腎機能障害を有する女性における,PTHによる有害事象の発生等を検討したものであること(5 9頁左欄1行ないし右欄32行目,60頁左欄1ないし20行目),③甲 10文献の試験中に発生した腎臓に関連する有害事象の発生率は,腎機能正常,軽度障害,中等度障害のサブグループいずれでの治療の割り付けでも一貫していたこと,PTHにより誘導される平均GFRの変化は,ベースラインにおける腎機能の影響を受けなかったこと,テリパラチド20μg又は40μの投与を受けた患者は全ての腎機能区分で,投与4 ないし6時間後の血清カルシウムが10.6mg/dl(正常上限値)を超える発生率がプラセボに対して増加したが(64頁右 パラチド20μg又は40μの投与を受けた患者は全ての腎機能区分で,投与4 ないし6時間後の血清カルシウムが10.6mg/dl(正常上限値)を超える発生率がプラセボに対して増加したが(64頁右欄6行ないし65頁右欄16行目,65頁右欄29行ないし67頁左欄15行目),同試験に先行する試験では,投与4ないし6時間後の血清カルシウムの上昇と有害事象との関連はなく,一時的なものであったこと(65頁右欄2 9行ないし67頁左欄15行目),④甲10文献の試験において,軽度又は中等度の腎機能障害を有する患者が,PTHによる治療を受けた際に有害事象の増加は観察されなかったこと(67頁右欄39行ないし68頁左欄6行目)が認められる。 エ本件4条件について (ア) 本件3条件についてa 甲7発明と本件発明とは,「1回当たり200単位のPTH(1-34)酢酸塩が週1回投与されることを特徴とする」との用量の点において一致するが,その投与の対象となる骨粗鬆症患者の範囲を一応異にする。 b 甲7発明で投与対象とされた患者は,前記⑴のとおり,1989年診断基準で骨粗鬆症と診断された患者であるところ,甲7発明に接した当業者が,甲7発明のPTH200単位週1回投与の骨粗鬆症治療剤を投与する対象患者を選択するのであれば,より新しい基準を参酌しながらその患者を選別することは,当業者がごく普通に行うことで あるから,1989年診断基準とともに,より新しい,1996年診 断基準又は2000年診断基準を参酌するといえる。 そして,前記イ(ア)b及びcのとおり,1996年診断基準で骨粗鬆症と診断される者は,①骨萎縮度I度以上又は骨密度値がYAMの80%以下の低骨量で非外傷性椎 断基準を参酌するといえる。 そして,前記イ(ア)b及びcのとおり,1996年診断基準で骨粗鬆症と診断される者は,①骨萎縮度I度以上又は骨密度値がYAMの80%以下の低骨量で非外傷性椎体骨折を有する者か,②X線上椎体骨折を認めないが,骨萎縮度Ⅱ度以上,又は,骨密度値がYAMの7 0%未満である者であり,2000年診断基準で骨粗鬆症と診断される者は,③骨萎縮度Ⅱ度以上又は骨密度がYAMの80%未満の低骨量で,軽微な外力による非外傷性椎体骨折等(脆弱性骨折)を有する者か,④脆弱性骨折がないものの,骨萎縮度Ⅱ度以上,又は,骨密度値がYAMの70%未満の者である。 本件条件(2)及び本件条件(3)は,上記①と同じであるから(既存の骨折」は「非外傷性骨折」を含む。),当業者が甲7発明の200単位週1回投与の骨粗鬆症治療剤を投与する骨粗鬆症患者を本件条件(2)及び本件条件(3)で選別するのには何ら困難を要しない。 また,前記イ(イ)のとおり,骨粗鬆症は,加齢とともに発生が増加 するとの技術常識があり,高齢者は加齢を重ねた者であるのは明らかであるところ,高齢者として65歳以上の者を選択するのは常識的なことであり,平成5年12月2日薬新薬第104号厚生省薬務局新医薬品課長通知「「高齢者に使用される医薬品の臨床評価法に関するガイドライン」について」(甲13)においても,「高齢者」を「65歳以 上」と定めている。したがって,これらを参酌し,骨粗鬆症による骨折の複数の危険因子として,低骨密度及び既存骨折に並んで年齢が掲げられていることに着目して投与する骨粗鬆症患者を65歳以上として,本件条件(2)及び本件条件(3)に加えて本件条件(1)のように設定することはごく自然な選択であって,何ら困 存骨折に並んで年齢が掲げられていることに着目して投与する骨粗鬆症患者を65歳以上として,本件条件(2)及び本件条件(3)に加えて本件条件(1)のように設定することはごく自然な選択であって,何ら困難を要しない。 そうすると,甲7発明に接した当業者が,投与対象患者を本件3条 件を全て満たす患者と特定することは,当業者に格別の困難を要することではない。 (イ) 本件条件(4)についてa 前記⑴のとおり,甲7発明は,腎機能障害者の中から重症の者を投与対象から除外しているところ,患者の中に重度の腎障害を有する者 と腎機能が正常の者のみの両端しかいないということは不自然であるから,投与対象の患者には腎機能正常者のみならず,軽度又は中等度腎機能障害を有する者も含まれていることを当然の前提にしていると解される。そして,前記ウ(イ)のとおり,骨粗鬆症と腎機能障害の罹患率はいずれも加齢とともに増加することや,大規模な疫学研究では 骨粗鬆症女性の85%が軽度から中等度の腎機能障害を有していたことが知られていたから(甲10文献の61頁右欄下から2行目ないし62頁左欄1行目には「ベースラインにおいて血清クレアチニンを測定した1,621人の患者のうち,736人(45.4%)が軽度,中等度または重度の腎機能障害を有していた。」との記載があるが,甲 10文献においてそのような構成比であったことは上記技術常識の認定を左右しないし,いずれにせよ,この腎機能障害の割合も高いものであることに変わりはない。),重度の腎機能障害患者を除くと明記された甲7文献の記載に接した当業者であれば,甲7発明の投与対象患者に軽度又は中等度の腎機能障害を有する患者が相当程度含まれてい ると認識することは明らか ),重度の腎機能障害患者を除くと明記された甲7文献の記載に接した当業者であれば,甲7発明の投与対象患者に軽度又は中等度の腎機能障害を有する患者が相当程度含まれてい ると認識することは明らかといえる。 さらに,前記ウ(イ)のとおり,骨粗鬆症治療薬についても腎機能障害を有する患者における安全性の確認が求められていたことは明らかであるから,甲7発明に接した当業者が,投与対象患者の腎機能に着目することは,当業者が当然に行うべきこととして格別なものではな い b ここで,クレアチニンクリアランスは,糸球体濾過値(GFR)をクレアチニンをマーカーとして測定したものであるところ(甲44の44頁,68頁),前記ウ(ア)aのとおり,甲10文献では,「中等度」の腎機能障害を有する患者は,「GFR 30~49ml/分」の患者であると定義され,クレアチニンクリアランスが30ないし49ml /分である患者を,中等度機能障害を有する患者としている。また,前記ウ(ア)b②の審議結果報告書(甲15の1)には,腎機能障害の程度を,クレアチニンクリアランスを指標として,この値に沿って,「80以上」,「50以上80未満」,「30以上50未満」及び「30未満」と区分している(98頁,表50,51)。 そして,前記ウ(イ)のとおり,腎機能正常者と腎機能の障害が軽度又は中等度である者との間でPTH製剤の投与によって発生する有害事象の発生割合には差がなかったことが知られていたと認められる。 そうすると,甲7発明の投与対象患者の中から,腎機能障害の程度をクレアチニンクリアランスの値で表して,「30以上50未満ml/ min」の者を「中等度」としてその投与対象とすることは,当業者であれば何ら 7発明の投与対象患者の中から,腎機能障害の程度をクレアチニンクリアランスの値で表して,「30以上50未満ml/ min」の者を「中等度」としてその投与対象とすることは,当業者であれば何ら困難を要しないものである。 c 以上のとおりであるから,甲7発明の骨粗鬆症治療剤の投与対象患者を本件条件(4)を満たす者とすることは,当業者にとって格別困難を要することとはいえない。 (ウ) 被告の主張についてa 被告は,前記第3の3⑵ア(ア)のとおり,本件4条件を一体として,その技術的意義が判断されなければならないとし,同(イ)a及びb(a)のとおり,仮に,本件4条件の個々の条件自体は甲7発明が対象範囲として予定するものであるとしても,本件4条件全体は一般的な指標 ではなく,甲7発明が当然に対象範囲として予定していたものではな いし,本件3条件は,層別解析により初めて,本件条件(1)ないし本件条件(3)を組み合わせるとPTHの骨折抑制効果が高いという新規な知見を得たことに基づくものであり,本件3条件全体といえども一般的な指標ではなく,甲7文献の開示事項からは導かれず,むしろ甲7文献にはサブグループ間で薬物に対する応答は同程度であった 旨の記載があり,甲7発明から本件3条件を選択する動機付けは否定される旨主張する。 しかしながら,前記ア(イ)において判示したとおり,本件3条件と本件条件(4)とはその目的を異にする独立の条件であると理解するのが相当であるし,前記エ(ア)及び(イ)において判示したように,本 件基準日における技術常識に照らせば,甲7発明に接した当業者が投与対象患者をこれらの条件を全て満たす患者とすることに格別の困難はないところ,本件3条件の組み (イ)において判示したように,本 件基準日における技術常識に照らせば,甲7発明に接した当業者が投与対象患者をこれらの条件を全て満たす患者とすることに格別の困難はないところ,本件3条件の組み合わせが客観的観点からその選択において格別なものである,あるいは,他の骨折リスク因子等も含めた様々な組み合わせが想定される中で,本件3条件を組み合わせること 自体に特別の意味合いがあると認めるに足りる証拠はない(被告が主張する層別解析は,後述するように,あくまで本件3条件の全てを満たす患者(高リスク患者)のグループと,本件3条件の全部又は一部を満たさない患者(低リスク患者)のグループのうちごく一部のグループとを比較するものにすぎず,また,その結果自体も被告主張の顕 著な効果が認められると即断できるものではない。)。 また,確かに甲7文献には,別紙2のとおり,「年齢が64歳以下と65歳以上,体重が49㎏以下と50㎏以上,閉経後10年未満,10から20年,20年以上,および脊椎骨折が0,1および2箇所以上を有するサブグループに被験者を分類して比較したところ,サブグ ループ間で薬物に対する応答は同程度であった。」との記載があること は認められるものの(300頁左欄11行ないし右欄6行目),当該記載は,上記記載中の条件によってサブグループ化されたサブグループ間の薬物効果の比較について述べているにすぎず,当該記載により,甲7発明の投与対象患者をサブグループ化すること全般が阻害されるとはいえない。 したがって,被告の上記主張は,いずれも採用することができない。 b(a) 次に,被告は,前記第3の3⑵ア(イ)b⒝のとおり,フォルテオが腎機能障害者には慎重投与が必要とされていること したがって,被告の上記主張は,いずれも採用することができない。 b(a) 次に,被告は,前記第3の3⑵ア(イ)b⒝のとおり,フォルテオが腎機能障害者には慎重投与が必要とされていること,関係文献において,投与量や腎障害の程度に応じて高カルシウム血症の割合及びその重症度が増す傾向が示され,試験においても血清カルシウム 濃度の上昇や高カルシウム血症を理由に投与量の調節が必要になる患者や脱落する患者が発生しており,その割合はPTH投与量に対して用量依存的であることが示されていること,単回投与で半減期が短いことが確認されただけでは長期治療を必要とする治療剤として安全であるとはいえないことからすれば,当業者は200単 位を腎機能障害者に投与しようとはしない旨主張する。 そこで,これらの点につき検討する。 ⒝ まず,フォルテオについては,下記文献には,以下に引用する記載がある。 ⅰ 「フォルテオ皮下注キット600μg」の添付文書(2018 年。甲142)「【使用上の注意】1.慎重投与(次の患者には慎重に投与すること)(1)腎障害のある患者[外国の臨床薬理試験において,重度の腎障害患者では血中のテリパラチドの消失に遅延が認められて いる。[薬物動態]の項参照]」(1頁右欄10ないし14行目) 「腎障害を有する患者外国人の軽度及び中等度の腎障害を有する患者(クレアチニンクリアランス:31~75mL/min)12例(男性7例,女性5例)にテリパラチド40μgを単回皮下投与した時のCmaxは228.6pg/mL,AUC0-tは326.6pg・hr/ mL及びt1/2は1.18hrであり L/min)12例(男性7例,女性5例)にテリパラチド40μgを単回皮下投与した時のCmaxは228.6pg/mL,AUC0-tは326.6pg・hr/ mL及びt1/2は1.18hrであり,腎機能が正常な被験者(クレアチニンクリアランス:90mL/min以上)9例(男性5例,女性4例)のCmax(222.8pg/mL),AUC0-t(321.7pg・hr/mL)及びt1/2(1.14hr)と同様であった。一方,重度の腎障害を有する患者(クレアチニン クリアランス:30mL/min以下)5例(男性3例,女性2例)にテリパラチド40μgを単回皮下投与したときのCmaxは227.7pg/mL,AUC0-tは555.8pg・hr/mL及びt1/2は2.02hrであり,腎機能が正常な被験者と比べてAUC0-t及びt1/2はそれぞれ73%,77%増加した。」 (3頁左欄。なお,Cmaxは,最高(投与直後)血中濃度を,t1/2は(生物学的)半減期をいう(甲14)。)ⅱ 「フォルテオ皮下注カート600μg」等に関する「審議結果報告書」(平成22年5月6日。甲15の1)「(2) 腎機能障害患者への投与について ・・・GHAW試験において,軽度又は中等度の腎機能障害を有する外国人被験者の曝露量は,腎機能が正常な外国人被験者と同程度であったことから,軽度又は中等度の腎障害を有する日本人患者においても,腎機能が正常な日本人患者と曝露量及び安全性に大きな違いはないと考える。・・・重度の腎機能障 害を有する日本人患者に本剤20μgを投与したときの本薬血 清中濃度は,安全性及び忍容性が確認された本薬血清中濃度の範囲内であると考えられるが,GHAW試験において腎機能障害に 害を有する日本人患者に本剤20μgを投与したときの本薬血 清中濃度は,安全性及び忍容性が確認された本薬血清中濃度の範囲内であると考えられるが,GHAW試験において腎機能障害により本薬の消失に遅延が認められているため,添付文書において,腎機能障害を有する患者には慎重に投与する必要がある旨を記載することとしている。・・・」(46頁3ないし28 行目)上記ⅰには,確かに,使用上の注意として「腎障害のある患者」に対して「慎重投与」と記載されており,この「腎障害のある患者」から軽度又は中等度の腎障害を有する患者を除外する旨の記載まではされていないが,「腎障害のある患者」の説明として,軽度又は 中等度の腎障害を有する患者と腎機能が正常な被験者の数値は同様であり,一方,重度の腎障害を有する患者については数値が増加した旨が明記されており,これに加えて同ⅱの記載を参酌すると,フォルテオの審議結果報告書(甲15の1)の「慎重投与」の記載は,主として,クレアチニンクリアランスが30mL/min以下 の重度の腎障害を有する患者を念頭にしているものであることは明らかというべきである。したがって,「慎重投与」との記載は,PTH200単位を軽度又は中等度の腎障害者に投与することを断念させるようなものとはいえない。 ⒞ 次に,被告主張の関係文献についてみると,「骨粗鬆症の閉経後女 性における骨折と骨密度に対する副甲状腺ホルモン(1-34)の効果」(TheNewEnglandJournalofMedicine, vol.344,No.19, p1434-1441,2001)(甲106。訳は乙18。以下「甲106文献」という。)に記載された骨折予防試験のデータを用いて腎障害を有 ofMedicine, vol.344,No.19, p1434-1441,2001)(甲106。訳は乙18。以下「甲106文献」という。)に記載された骨折予防試験のデータを用いて腎障害を有する場合の調査をした報告が,甲10文献に相当すると 認められるところ,この甲106文献には,次の記載がある。 「高カルシウム血症が持続してみられる女性に対しては,カルシウム摂取を減らした後,恒久的に投薬量を半減する試験プロトコールに変えることを余儀なくされた。このようなケースは,プラセボ群で3名(<1%),20-μg投与群で15名(3%),40-μg投与群で62名(11%)に発生した。血清カルシウム濃度の上 昇がプラセボ群で1名,20-μg投与群で1名,40-μg投与群で9名に繰り返し認められたため,このような患者に対する治療を中止した。」(1439頁左欄27ないし36行目)他方で,前記ウ(ア)aのとおり,甲10文献には別紙3の記載があるところ,その64頁右欄6行ないし65頁左欄16行目,66 頁表5をみると,①40μg投与群について,軽度及び中等度の腎機能障害者における投与後4ないし6時間後の血清カルシウム値が11.0mg/dlを超える(以下「11.0超」という。)高カルシウム血症の発生割合及び同10.6mg/dlを超えるが11. 0mg/dlを超えない(以下「10.6超~11.0」という。) 高カルシウム血症の発生割合は,いずれも,腎機能が正常な者における11.0超の発生割合及び発生割合10.6超~11.0の発生割合と有意差が認められておらず,また,20μg投与群について,中等度の腎機能障害者における10.6超~11.0の発生割合は腎機能が正常な者における同発生割合 及び発生割合10.6超~11.0の発生割合と有意差が認められておらず,また,20μg投与群について,中等度の腎機能障害者における10.6超~11.0の発生割合は腎機能が正常な者における同発生割合よりも有意に高いが,中等度 の腎機能障害者における11.0超の発生割合については腎機能が正常な者における同発生割合と有意差がなく,軽度の腎機能障害者における,11.0超及び10.6超~11.0の発生割合は,いずれも,腎機能が正常なものにおけるものと有意差はなく,②20μg投与群と40μ投与群における11.0超及び10.6超~11. 0の発生割合は,40μg投与群の方が高くなっている。また,甲 10文献における血清カルシウム値は,投与4ないし6時間後の血清カルシウムの値であり,そのような投与4ないし6時間後の血清カルシウムの値の上昇は,一時的なもので,高カルシウム血症と有害事象との関連はないとされ(66頁右欄3行ないし67頁左欄15行目),軽度又は中等度の腎機能障害を有するものの内因性PT Hレベルは正常である患者がテリパラチド治療を受けた際に有害事象の増加は観察されなかったとされている(67頁右欄39ないし43行目)。 以上によれば,PTHの投与量の増加に応じて高カルシウム血症の発生割合が増す傾向は見て取れるとしても,腎障害の程度に応じ て高カルシウム血症の割合及び重症度が増す傾向までをも見て取ることはできない。甲106文献に記載された上記の事象は,「高カルシウム血症が持続してみられ」たことや「繰り返し認められた」ことにより中止したものと解されるのであって,そのような事象と甲10文献に記載された投与後4ないし6時間後の一時的な高カ ルシウム血症との関連については不明であるし,同事 繰り返し認められた」ことにより中止したものと解されるのであって,そのような事象と甲10文献に記載された投与後4ないし6時間後の一時的な高カ ルシウム血症との関連については不明であるし,同事象と腎機能障害との関連についても不明であるから,甲10文献に甲106文献を併せて考えても,腎障害の程度に応じて高カルシウム血症の割合及び重症度が増えると認めることはできない。 したがって,甲10文献及び甲106文献の記載から,当業者が, 200単位を軽度又は中等度の腎機能障害者に対して投与することを断念するとはいえない。 ⒟ また,長期治療を必要とする治療剤としての安全性については,確かに,「致命的でない疾患に対し長期間の投与が想定される新医薬品の治験段階において安全性を評価するために必要な症例数と 投与期間について」(平成7年5月24日薬審第592号厚生省薬 務局審査課長通知。甲107)には,「一般的ではないが,有害事象の中には,投与期間が長くなるにつれて発現頻度または重症度が増すものがあり,また投与開始後6ヶ月以上経って初めて発現する重篤な有害事象もある。」(2枚目6ないし7行目)との記載がある。 しかしながら,上記記載はあくまで例外事象に関する一般論を示 すものにすぎないところ,本件においては,前記⒞のとおり,PTHの投与において,甲10文献の記載から腎障害の程度に応じて高カルシウム血症の割合及びその重症度が増す傾向が見て取れるとはいえず,甲106文献の記載では,高カルシウム血症のため用量を半減させた患者や治療中止となった患者と腎機能障害との関連 は不明であるし,PTHが,投与期間が長くなるにつれて発現頻度又は重症度が増す一般的ではない薬剤に当たること ルシウム血症のため用量を半減させた患者や治療中止となった患者と腎機能障害との関連 は不明であるし,PTHが,投与期間が長くなるにつれて発現頻度又は重症度が増す一般的ではない薬剤に当たることを示す事情は特に見当たらないから,長期間投与の場合の安全性への不安を理由にして,当業者が200単位を軽度又は中等度の腎機能障害者に対して投与することを断念するとはいえない。 (e) 以上のとおりであるから,被告の上記主張は,いずれも採用することができない。 c また,被告は,前記第3の3⑵ア(イ)cのとおり,甲7発明における200単位投与群には,副作用が多発しており,200単位は副作用脱落率が高い用量と認識されているから,当業者はこれを試みない 旨主張する。 確かに,別紙2のとおり,甲7文献には,PTH200単位週1回投与のH群の副作用発生率は42%であり,72人のうち16人(約22%)が副作用により脱落していて,副作用発生率及び副作用による脱落率は,50単位を投与したL群(副作用発生率19%)及び1 00単位を投与したM群(副作用発生率19%)のいずれと比べても 高いことが記載されており(表6),骨粗鬆症の治療は長期間にわたるため,臨床使用において患者の症状や治療継続意思に直接に影響する副作用が起こることは望ましくはないから(甲87ないし89,113),甲7文献の上記記載に接した当業者は,この点に限っていえば,200単位の投与よりも100単位の投与の方がより適当であると認 識することが考えられる。 しかしながら,他方,甲7文献には,重篤な有害事象は認められないと記載されており(301頁左欄1行ないし右欄4行目),さらに,200単位の投与が腰椎骨密度を48週間 識することが考えられる。 しかしながら,他方,甲7文献には,重篤な有害事象は認められないと記載されており(301頁左欄1行ないし右欄4行目),さらに,200単位の投与が腰椎骨密度を48週間後に8.1%増加させたこと,及び,その増加の程度は,100単位投与の3.6%,及び,50 単位投与の0.6%のいずれよりも高いことが記載され,PTHは腰椎骨密度を48週という比較的短期間で用量に依存して増加させる極めて有望なものと評価されている(300頁左欄11行ないし右欄6行目,301頁右欄5行ないし303頁23行目。有望とされた対象から200単位の投与のみが排除されているとは理解し難い。)。そして, 前記イ(イ)のとおり,骨粗鬆症の治療の目的は骨折を予防することであるところ,骨密度が低いことは,既存骨折,年齢とともに,わが国でエビデンスがある骨折危険因子であり,骨密度は骨強度のほぼ70%を説明するとの技術常識がある。 以上によれば,甲7文献に接した当業者は,200単位週1回投与 と100単位週1回投与とを対比した場合に,副作用の面と効果の面を総合考慮して,いずれを選択するか判断するものと考えられ,200単位週1回投与がその選択が排除されるほど劣位したものと見られるとはいえず,これを選択することもまた十分に動機付けられているというべきである。 したがって,被告の上記主張は,採用することができない。 d さらに,被告は,前記第3の3⑵ア(イ)dのとおり,PTH製剤が高齢者には効きにくいということは技術常識であったから,PTHを高齢者に特に使用しようとする積極的な動機付けは生じない旨主張する。 被告は,関係文献(乙28,29)を挙げて,PTH製剤が高齢者 齢者には効きにくいということは技術常識であったから,PTHを高齢者に特に使用しようとする積極的な動機付けは生じない旨主張する。 被告は,関係文献(乙28,29)を挙げて,PTH製剤が高齢者 には効きにくいということは技術常識であるとするが,「TheSkeletalResponsetoTeriparatideIsLargelyIndependentofAge,InitialBoneMineralDensity, andPrevalentVertebralFracturesinPostmenopausalWomenWithOsteoporosis」(Journalofboneandmineralresearch, vol.18, No.1,p18-23,2 003)(乙28)における記載(21頁FIG.2)及び「フォルテオ皮下注キット600μg フォルテオ皮下注カート600μg「2. 7.3臨床的有効性の概要」」(乙29)における記載(213頁)として,プラセボ群,テリパラチド20μg投与群(連日投与)及びテリパラチド40μg投与群(連日投与)に分けてフォルテオを投与を した際の新規椎体骨折発生率の結果が示されているところ,65歳以上75歳未満の患者,及び,75歳以上の患者いずれに対しても,テリパラチド投与群における椎体骨折発生率は,プラセボ群の椎体骨折発生率より低くなっているから,これらの記載をもって,フォルテオが高齢者,すなわち65歳以上の患者に効きにくいなどとはいえない。 また,被告は,20μg投与群又は40μg投与群のプラセボ群に対する骨折相対リスク減少率は,患者が75歳以上の場合には,65歳以上75歳未満の場合よりも低くなっている旨を指摘するが,75 また,被告は,20μg投与群又は40μg投与群のプラセボ群に対する骨折相対リスク減少率は,患者が75歳以上の場合には,65歳以上75歳未満の場合よりも低くなっている旨を指摘するが,75歳以上の患者群の骨折相対リスク減少率が65歳以上75歳未満の患者群の骨折相対リスク減少率よりも低いとしても,それは,投与対象 を75歳以上の高齢者とすることの動機付けの有無の問題にはなると しても,投与対象を65歳以上の高齢者とすることの動機付けには何らの影響を与えない。 したがって,上記各文献をもって,200単位のPTH製剤を65歳以上の高齢者に投与することが妨げられ,動機付けが生じないとはいえない。 e 以上のとおり,前記被告の各主張は,いずれも採用することができず,そのほか被告がるる主張するところも,前記(ア)及び(イ)の認定を左右するものではない。 オ効果について発明の効果が予測できない顕著なものであるかについては,当該発明の 特許要件判断の基準日当時,当該発明の構成が奏するものとして当業者が予測することのできなかったものか否か,当該構成から当業者が予測することのできた範囲の効果を超える顕著なものであるか否かという観点から検討する必要がある(最高裁判所平成30年(行ヒ)第69号令和元年8月27日第三小法廷判決・集民262号51頁参照)。もっとも,当該発 明の構成のみから予測できない顕著な効果が認められるか否かを判断することは困難であるから,当該発明の構成に近い構成を有するものとして選択された引用発明の奏する効果や技術水準において達成されていた同種の効果を参酌することは許されると解される。 前示のとおり,本件発明の構成は容易想到であるが, 近い構成を有するものとして選択された引用発明の奏する効果や技術水準において達成されていた同種の効果を参酌することは許されると解される。 前示のとおり,本件発明の構成は容易想到であるが,これに対し,被告 は,前記第3の3⑵イのとおり,本件発明は,本件3条件を全て満たす患者に対する顕著な骨折抑制効果(以下「効果①」という。),②本件条件(4)を満たす患者に対する副作用発現率と血清カルシウムに関する安全性が腎機能が正常である患者に対する安全性と同等であるという効果(以下「効果②」という。)及び③BMD増加率が低くてもより低い骨折相対リス クが得られるとの効果(以下「効果③」という。)を奏し,これらの効果は, 当業者が予測をすることができなかった顕著な効果を奏するものである旨主張する。 以下,これらの効果について検討する。 (ア) 効果①についてa 前記イ(イ)のとおり,骨粗鬆症は,骨強度の低下を特徴とし,骨折 の危険性が増大した骨疾患であり,骨粗鬆症の治療の目的は骨折を予防することであり,「骨強度」は骨密度と骨質の2つの要因からなり,骨密度は骨強度のほぼ70%を説明するとの技術常識があったから,当業者は,骨密度の増加は,骨折の予防に寄与すると理解するところ,甲7文献には,「ここに挙げた薬剤を投与することによって骨密度(B MD)が増加するため,骨折予防は飛躍的に進歩した」(296頁右欄10行ないし297頁左欄25行目)と骨密度の増加が骨折予防に寄与することが記載され,その上で,48週で骨密度を8.1%増大させたことが開示されている(300頁左欄11行ないし右欄6行目)。そうすると,甲7発明の骨粗鬆症治療剤が骨折を抑制する効果を奏して いることは,当業者 その上で,48週で骨密度を8.1%増大させたことが開示されている(300頁左欄11行ないし右欄6行目)。そうすると,甲7発明の骨粗鬆症治療剤が骨折を抑制する効果を奏して いることは,当業者において容易に理解できる。 b 効果①の骨折抑制効果とは,単なる骨折発生率の低減ではなく,プラセボの骨折発生率と対比した場合の骨折発生率の低下割合を指すものであるが,本件明細書の記載からでは,本件3条件を全て満たす患者と定義付けられる高リスク患者に対する骨折抑制効果が,本件3条 件の全部又は一部を欠く者と定義付けられる低リスク患者に対する骨折抑制効果よりも高いということを理解することはできない。 すなわち,効果①を確認するためには,高リスク患者に対する骨折抑制効果と低リスク患者に対する骨折抑制効果とを対比する必要があるが,前記1のとおり,本件明細書には,実施例1において,高リス ク患者では,100単位週1回投与群における新規椎体骨折及び椎体 以外の部位の骨折発生率は,いずれも実質的なプラセボである5単位週1回投与群における発生率に対して有意差が認められるが,低リスク患者では,100単位週1回投与群における新規椎体骨折及び椎体以外の部位の骨折の発生率は,いずれも,5単位週1回投与群における発生率に対して有意差が認められなかったと記載されているのにと どまる(【0086】ないし【0096】,【表6】ないし【表11】)。 ここで,低リスク患者の新規椎体骨折についていえば,100単位週1回投与群11人と5単位週1回投与群10人(令和3年2月15日付け被告第1準備書面32頁における再解析の数値による。)について,それぞれ,ただ1人の骨折例数があったというものであり,また, 椎 投与群11人と5単位週1回投与群10人(令和3年2月15日付け被告第1準備書面32頁における再解析の数値による。)について,それぞれ,ただ1人の骨折例数があったというものであり,また, 椎体以外の部位の骨折は,上記5単位週1回投与群について,ただ1人の骨折例数があったというものであって,有意差がなかったことが,症例数が不足していることによることを否定できない。このように,低リスク患者において,100単位週1回投与群の新規椎体骨折及び椎体以外の部位の骨折の発生率が5単位週1回投与群のそれらの発生 率に対して有意差がなかったとの結論が,上記のような少ない症例数を基に導かれたことからすると,高リスク患者における骨折発生の抑制の程度を低リスク患者における骨折発生の抑制の程度と比較して,前者が後者よりも優れていると結論付けることはできない。 したがって,実施例1 をみても,高リスク患者に対するPTHの骨 折抑制効果が,低リスク患者に対するPTHの骨折抑制効果よりも高いということを理解することはできず,さらに,本件明細書のその他の部分をみても,高リスク患者に対するPTHの骨折抑制効果が,低リスク患者に対するPTHの骨折抑制効果よりも高いということを理解することはできず,ましてや,200単位週1回投与群に関し,高 リスク患者における骨折発生抑制が,低リスク患者における骨折発生 抑制よりも優れていると結論付けることはできない。 以上によれば,効果①は,本件明細書の記載に基づかないものというべきである。 c 被告は,効果①を明らかにするものとして,乙25証明書及び甲111証明書を提出する。 しかしながら,本件明細書の記載から,高リスク患者に対するPTHの骨折抑制効 c 被告は,効果①を明らかにするものとして,乙25証明書及び甲111証明書を提出する。 しかしながら,本件明細書の記載から,高リスク患者に対するPTHの骨折抑制効果が,低リスク患者に対するPTHの骨折抑制効果よりも高いということを理解することができず,また,これを推認することもできない以上,効果①は対外的に開示されていないものであるから,上記各実験成績証明書を採用して,効果①を認めることは相当 でない。 仮に,上記各実験成績証明書を参酌するにしても,本件3条件の全てを満たす患者(高リスク患者)のグループと,本件3条件の全部又は一部を満たさない患者(低リスク患者)のグループのうちごく一部のグループとを比較しているものにすぎないから,本件3条件の効果 が明らかになっているとはいえない。また,実験成績証明書(乙25)には,本件条件(1)を満たし,本件条件(2)又は本件条件(3)のいずれかを満たさない患者とされる「非3条件充足患者」につき,「非3条件充足患者においてもPTH投与群ではコントロール群よりも骨折の発生が抑制されたが,3条件充足患者においては,PTH投 与群ではコントロール群よりも骨折の発生が『有意に』抑制された。」旨が,甲111証明には,本件条件(1)及び本件条件(4)を満たし,本件条件(2)又は本件条件(3)のいずれかを満たさない患者とされる「非4条件充足患者」につき,「非4条件充足患者においてもPTH投与群では,コントロール群よりも骨折の発生は抑制されたが, 4条件充足患者においてはPTH投与群ではコントロール群よりも骨 折の発生が『有意に』抑制された。」旨が記載されているだけである。 すなわち,本件3条件を満たさない患者については,PTH 4条件充足患者においてはPTH投与群ではコントロール群よりも骨 折の発生が『有意に』抑制された。」旨が記載されているだけである。 すなわち,本件3条件を満たさない患者については,PTH投与群においてコントロール群よりも骨折発生が抑制されたものの有意差がなかったことが理解できるのみであり,それら有意差がなかったとの結論も症例数が少ないことによるものと推認されることからすると,本 件3条件の全てを満たす患者の骨折発生の抑制の程度が本件3条件を満たさない患者に対する骨折発生の抑制の程度より優れていると結論付けることはできない。そうすると,上記各実験成績証明書をみても,本件3条件を全て満たす患者に対するPTHの骨折抑制効果が,本件3条件を満たさない患者に対するPTHの骨折抑制効果よりも高いと いうことを理解することはできない。 d 以上によれば,いずれにしても効果①を認めることはできないから,その他の点について判断するまでもなく,効果①を予測することのできない顕著な効果という余地はない。 (イ) 効果②について 前記ウ(イ)のとおり,甲10文献の記載によると,PTH製剤であるテリパラチドの20μg又は40μgの連日投与について,PTHによる腎臓に関連する有害事象の発生率は,腎機能が正常,軽度障害,中等度障害のサブグループのいずれでも一貫しており,また,軽度から中等度の腎機能障害者と健常被験者の間には,あらゆる薬物動態パラメータ に有意な差がないことが知られており,薬物動態パラメータは,薬物の薬理効果や有害反応の発現強度の指標であるといえるから,PTHに関して軽度又は中等度の腎機能障害を有する者と腎機能が正常である者との間には,薬物の有害反応の発現強度も異ならないものと理 タは,薬物の薬理効果や有害反応の発現強度の指標であるといえるから,PTHに関して軽度又は中等度の腎機能障害を有する者と腎機能が正常である者との間には,薬物の有害反応の発現強度も異ならないものと理解できる。 また,被告は,甲7文献では,腎機能正常者と腎機能障害者との間で の比較は行われておらず,腎機能障害者においてPTH200単位週1 回投与の際の安全性は不明であった旨主張するが,前記エ(イ)aのとおり,当業者であれば,甲7発明の投与対象患者に軽度から中等度の腎機能障害を有する患者が含まれていると認識するといえるところ,甲7文献には,200単位投与群も含めて重篤な有害事象は認められなかったこと(301頁左欄1行ないし右欄4行目),200単位投与群において も投与開始から48週目までの血清カルシウム値の平均値は10.6mg/dlよりも低い値で推移していることが見て取れる(図2)のであるから,当業者は,PTH200単位の投与についても,軽度又は中等度の腎機能障害者における安全性と,腎機能正常者における安全性とは同程度であると予想するものと解され,甲7文献において腎機能正常者 と腎機能障害者での比較が行われていないことは,この予想を何ら左右しない。そうすると,効果②は,甲7発明と用量・用法・有効成分等が同じである本件発明の構成から当業者が予測し得る範囲内のものというべきである。 なお,被告は,甲7発明の副作用発現率は,42%であり,各種の治 療剤と比較して桁違いに高いことから,PTH200単位の投与において,軽度又は中等度の腎機能障害患者と腎機能が正常な患者とで安全性が同等であるという効果は予測ができないとも主張するが,甲7発明の副作用発現率が,仮に,各種の治療剤と比較して桁違 0単位の投与において,軽度又は中等度の腎機能障害患者と腎機能が正常な患者とで安全性が同等であるという効果は予測ができないとも主張するが,甲7発明の副作用発現率が,仮に,各種の治療剤と比較して桁違いに高いとしても,そもそもその副作用が腎機能と関係していないのであれば,PTHの2 00単位週1回投与の安全性が,軽度又は中等度の腎機能障害と腎機能正常者とで同等であることが予測できるか否かということと関連しない。 しかも,前記エ(ウ)cにおいても判示したように,甲7発明において,投与された患者に重篤な副作用はみられず,血清カルシウム値についても,異常値に至っていないばかりか,十分に安全な数値の範囲内にあっ たのである(301頁左欄1行ないし右欄4行目,図2,表5,表6) から,この点に関する被告の主張も採用し得ない。 (ウ) 効果③について被告は,PTHの連日投与から想定されるBMD増加率に対する骨折相対リスクと対比して,BMD増加率が低くてもより低い骨折相対リスクが得られるとの効果が生ずるとして,これを本件発明の予測できない 顕著な効果とするが,本件明細書には,PTHの連日投与から想定されるBMD増加率と骨折相対リスクとの関係を記載した部分は見当たらず,上記主張は,明細書に記載されていない効果を主張するものであって失当というほかない。 (エ) そのほか被告がるる主張するところも,前記(ア)ないし(ウ)の判断 を左右するものではなく,効果の程度等につき更に検討を加えるまでもなく,本件発明が,当業者が予測をすることができなかった顕著な効果を奏するものであると認めることはできない。 カ以上のとおりであるから,相違点1に係る本件発明の構成は当業者が容易に想到し得たもので 件発明が,当業者が予測をすることができなかった顕著な効果を奏するものであると認めることはできない。 カ以上のとおりであるから,相違点1に係る本件発明の構成は当業者が容易に想到し得たものである。 ⑶ 小括前記⑵のとおり,相違点1が容易に想到できないと認定した本件審決の判断には誤りがあるから,相違点1が容易に想到できないことから相違点2について検討するまでもなく本件発明の進歩性を認めた本件審決の判断にも,誤りがあり,取消事由は,理由がある。 3 結論以上のとおり,取消事由3は理由があるから,その他の点について判断するまでもなく,本件審決を取り消すこととして,主文のとおり判決する。 知的財産高等裁判所第4部 裁判長裁判官菅野雅之 裁判官本吉弘行 裁判官中村恭 (別紙1)本件明細書の記載事項(抜粋)(表は末尾に一括して掲記した。) 【発明の詳細な説明】 【技術分野】【0001】本発明はPTHを有効成分として含有する骨粗鬆症の治療剤ないし予防剤に関する。また,本発明はPTHを有効成分として含有する骨折抑制ないし予防剤に関する。特に本発明は,1回当たり100~200単位のPTHが週1回投与されるこ とを特徴とする,前記薬剤に関する。 【背景技術】【0002】 効成分として含有する骨折抑制ないし予防剤に関する。特に本発明は,1回当たり100~200単位のPTHが週1回投与されるこ とを特徴とする,前記薬剤に関する。 【背景技術】【0002】骨粗鬆症は「骨強度の低下を特徴とし,骨折のリスクが増大している疾患」である。現在,骨粗鬆症の治療剤の一つとしてPTH(ParathyroidHo rmone; パラサイロイドホルモン)製剤が知られている。 【0003】PTHは,カルシトニン類やビタミンD類とともに,血中カルシウム濃度の調節に関与するホルモンである。例えば,PTHは,生体内において,腎臓における活性型ビタミン D3生成を増加させることにより,腸管でのカルシウム吸収を促進 する作用を有することも知られている(非特許文献1)。 【0004】特許文献1は,骨粗鬆症患者に対して1週間に1回の頻度で26週間の投与期間にわたり1回の投与あたり100又は200単位のPTHを皮下投与することにより,当該骨粗鬆症患者の海面骨の骨密度を増加させかつ皮質骨の骨密度を減少さ せない骨粗鬆症の治療方法を開示している。 【0005】このように,特許文献1は,これらの治療方法が単に骨密度の増加を誘導することを開示する一方,骨粗鬆症患者の骨強度を増大させること又は骨折のリスクを軽減させることが可能な治療方法であるか否かについて明示していない。また,PTHを単独使用したのみで,カルシウム剤を併用していない。 【0006】非特許文献1は,PTHによる骨粗鬆症治療に関する臨床試験において,患者にPTH(20μg/ay)投与後4~6時間後採血した際に高カルシウム血症がその患者の11%にみられ,持続性の高カルシウム血症はその3%に観察さ PTHによる骨粗鬆症治療に関する臨床試験において,患者にPTH(20μg/ay)投与後4~6時間後採血した際に高カルシウム血症がその患者の11%にみられ,持続性の高カルシウム血症はその3%に観察されたことを開示している。 さらに,非特許文献1は,次ぎのPTH投与前には血清カルシウ ムが殆ど全ての患者において正常に戻ったものの541人の患者の中で1名については持続性の血清カルシウム上昇が観察された為治療中止に至った旨も開示している。 【0007】非特許文献2は,カルシウム剤を併用下でPTHの連日皮下投与製剤に関して, 本剤投与後の血清カルシウムは臨床的に問題ないと開示するものの,投与後の血清カルシウムが上昇したことも報告している。非特許文献3は,非特許文献2に開示の連日皮下投与製剤の添付文書である。本文書は,臨床試験において,当該製剤投与後の様々な有害事象を開示する中で該製剤投与後の一過性の高カルシウム血症が観察された旨を報告している。さらに,非特許文献3は,当該製剤の市販後調査に おいて,高カルシウム血症の副作用報告があった旨を開示している。 【0008】このように,非特許文献1~3は,PTHの骨粗鬆症治療における高カルシウム血症の副作用事例等を開示しており,これらに開示の治療方法は安全性の面から十分ではないといえる。 【0009】 このような背景の下,安全性が高くかつ効能・効果の面で優れたPTHによる骨粗鬆症治療方法が求められていた。 【先行技術文献】【非特許文献】【0011】 【非特許文献9】Marcus.& Aurbach,G.D,Endocrinology 85,801-810,1969【発明の概要】【発明が解決しようとする課題】 【0011】 【非特許文献9】Marcus.& Aurbach,G.D,Endocrinology 85,801-810,1969【発明の概要】【発明が解決しようとする課題】【0012】 本発明の課題は,安全性が高くかつ効能・効果の面で優れたPTHによる骨粗鬆症治療ないし予防方法を提供することである。さらに,本発明の課題は,安全性の高いPTHによる骨折抑制ないし予防方法を提供することである。 【課題を解決するための手段】【0013】 前記課題を解決するために,本発明者らは鋭意研究開発を重ねた結果,驚くべきことに,PTHの投与量・投与間隔を限定することにより,効能・効果及び安全性の両面で優れた骨粗鬆治療ないし予防方法となることを見出した。また,PTHの投与量・投与間隔を特定することにより,安全性の高い骨折抑制/予防方法となることを見出した。さらに,それらの方法において,高リスク患者に対して特に効果 を奏することも見出した。 【0014】すなわち,本発明は,以下に関するものである。 〔1〕カルシウム剤と併用され,かつ,1回当たり100~200単位のPTHが週1回投与されることを特徴とする,PTHを有効成分として含有する骨粗鬆症治 療ないし予防剤。 〔2〕併用されるカルシウム剤が週1回以上投与されることを特徴とする,前記〔1〕の骨粗鬆症治療ないし予防剤。 〔3〕併用されるカルシウム剤が,カルシウムとして1日あたり200~800mg投与されることを特徴とする,前記〔1〕または〔2〕の骨粗鬆症治療ないし予防剤。 〔4〕前記PTHがヒトPTH(1-34)である,前記〔1〕~〔3〕のいずれかである骨粗鬆症治療ないし予防剤。 〔5〕24週または4 る,前記〔1〕または〔2〕の骨粗鬆症治療ないし予防剤。 〔4〕前記PTHがヒトPTH(1-34)である,前記〔1〕~〔3〕のいずれかである骨粗鬆症治療ないし予防剤。 〔5〕24週または48週を超過する期間にわたり投与するための,前記〔1〕~〔4〕いずれかに記載の骨粗鬆症治療ないし予防剤。 〔6〕下記(1)~(3)の全ての条件を満たす骨粗鬆症患者を治療するための, 前記〔1〕~〔5〕のいずれかである骨粗鬆症治療ないし予防剤;(1)年齢が65歳以上である(2)既存の骨折がある(3)骨密度が若年成人平均値の80%未満である,および/または,骨萎縮度が萎縮度I度以上である。 〔7〕ステロイドを起因とする続発性骨粗鬆症,あるいは,糖尿病性骨粗鬆症を治療ないし予防するための,前記〔1〕~〔6〕のいずれか1に記載の骨粗鬆症治療ないし予防剤 。 〔8〕 下記(1)~(8)の少なくともいずれか1の疾病を合併症として有する骨粗鬆症を治療ないし予防するための,〔1〕~〔6〕のいずれか1に記載の骨粗鬆 症治療ないし予防剤;(1)糖尿病,(2)高血圧,(3)高脂血症,(4)関節痛, (5)変形性脊椎症, (6)変形性腰痛症,(7)変形性股関節症,(8)変形性顎関節症。 〔9〕 下記(1)~(6)の少なくともいずれか1つの骨粗鬆症治療薬の投与歴がある骨粗鬆症患者に投与するための,〔1〕~〔6〕のいずれか1に記載の骨粗 鬆症治療ないし予防剤;(1)L-アスパラギン酸カルシウム(2)アルファカルシドール,(3)エルカトニン,(4)塩酸ラロキシフェン, (5)メナテトレノン,(6)乳酸カルシウム〔10〕 軽度腎障害または中程度腎障害を 酸カルシウム(2)アルファカルシドール,(3)エルカトニン,(4)塩酸ラロキシフェン, (5)メナテトレノン,(6)乳酸カルシウム〔10〕 軽度腎障害または中程度腎障害を有する骨粗鬆症患者に投与するための,〔1〕~〔6〕のいずれか1に記載の骨粗鬆症治療ないし予防剤。 〔11〕前記PTHがヒトPTH(1-34)である,前記〔6〕~〔10〕のい ずれか1の骨粗鬆症治療ないし予防剤。 〔12〕前記PTHを有効成分として含有する骨粗鬆症治療剤が皮下注射剤である,前記〔6〕~〔11〕のいずれかに記載の骨粗鬆症治療ないし予防剤。 〔13〕 前記〔1〕~〔12〕のいずれか1に記載の骨粗鬆症治療ないし予防剤と下記 (1)~(6)の少なくともいずれか1つの薬剤からなる合剤または医療用 キット。 (1)メトクロプラミド,(2)ドンペリドン,(3)ファモチジン,(4)クエン酸モサプリド, (5)ランソプラゾール, (6)六神丸。 〔14〕1回当たり100~200単位のPTHが週1回投与されることを特徴とする, PTHを有効成分として含有する骨粗鬆症治療ないし予防剤であって,下記(1)~(3 )の全ての条件を満たす骨粗鬆症患者を治療するための,骨粗鬆症治療ないし予防剤; (1)年齢が65歳以上である(2)既存の骨折がある(3)骨密度が若年成人平均値の80%未満である,および/または,骨萎縮度が萎縮度 I度以上である。 〔15〕1回当たり100~200単位のPTHが週1回投与されることを特徴と する, PTHを有効成分として含有する,骨折の危険性の高い骨粗鬆症治療ないし予防剤。 〔16〕1回当たり100~200単位のPTHが週1回投与されることを特徴 週1回投与されることを特徴と する, PTHを有効成分として含有する,骨折の危険性の高い骨粗鬆症治療ないし予防剤。 〔16〕1回当たり100~200単位のPTHが週1回投与されることを特徴とする, PTHを有効成分として含有する骨粗鬆症治療ないし予防剤であって,ステロイドを起因とする続発性骨粗鬆症,あるいは,糖尿病性骨粗鬆症を治療ないし予 防するための,骨粗鬆症治療ないし予防剤。 〔17〕1回当たり100~200単位のPTHが週1回投与されることを特徴とする, PTHを有効成分として含有する骨粗鬆症治療ないし予防剤であって,軽度腎障害または中程度腎障害を有する骨粗鬆症患者に投与するための,骨粗鬆症治療ないし予防剤。 〔18〕カルシウム剤と併用され,かつ,1回当たり100~200単位のPTHが週1回投与されることを特徴とする,PTHを有効成分として含有する骨折抑制ないし予防剤 。 〔19〕併用されるカルシウム剤が週1回以上投与されることを特徴とする,前記〔18〕の骨折抑制ないし予防剤。 〔20〕併用されるカルシウム剤が,カルシウムとして1日当たり200~800 mg投与されることを特徴とする,前記〔18〕または〔19〕の骨折抑制ないし予防剤。 〔21〕前記PTHがヒトPTH(1-34)である,前記〔18〕~〔20〕のいずれかである骨折抑制剤。 〔22〕下記(1)~(3)の全ての条件を満たす対象者に投与するための,前記 〔18〕~〔21〕のいずれかである骨折抑制ないし予防剤;(1)年齢が65歳以上である(2)既存の骨折がある(3)骨密度が若年成人平均値の80%未満である,および/または,骨萎縮度が萎縮度I度以上である。 〔23〕前記PTHがヒトPTH( (1)年齢が65歳以上である(2)既存の骨折がある(3)骨密度が若年成人平均値の80%未満である,および/または,骨萎縮度が萎縮度I度以上である。 〔23〕前記PTHがヒトPTH(1-34)である,前記〔22〕の骨折抑制ないし予防剤。 〔24〕前記PTHを有効成分として含有する骨折抑制ないし予防剤が皮下注射剤である,前記〔22〕または〔23〕の骨折抑制ないし予防剤。 〔25〕骨折抑制ないし予防剤が多発骨折抑制ないし多発骨折予防剤である,前記 〔18〕~〔24〕のいずれか1に記載の骨折抑制ないし予防剤。 〔26〕骨折抑制ないし予防剤が増悪骨折抑制ないし増悪骨折予防剤である,前記〔18〕~〔25〕のいずれか1に記載の骨折抑制ないし予防剤。 〔27〕前記〔14〕または〔15〕の骨粗鬆症治療ないし予防剤であって,ステロイドを起因とする続発性骨粗鬆症,あるいは,糖尿病性骨粗鬆症を治療ないし予 防するための,骨粗鬆症治療ないし予防剤。 〔28〕前記〔14〕または〔15〕の骨粗鬆症治療ないし予防剤であって,軽度腎障害または中程度腎障害を有する骨粗鬆症患者に投与するための,骨粗鬆症治療ないし予防剤 。 〔29〕前記〔27〕の骨粗鬆症治療ないし予防剤であって,軽度腎障害または中 程度腎障害を有する骨粗鬆症患者に投与するための,骨粗鬆症治療ないし予防剤。 〔30〕前記〔16〕の骨粗鬆症治療ないし予防剤であって,軽度腎障害または中程度腎障害を有する骨粗鬆症患者に投与するための,骨粗鬆症治療ないし予防剤。 〔31〕上記〔1〕~〔30〕のいずれかに記載の治療剤,予防剤,薬剤,合剤,またはキットを用いる,予防または治療方法。 【発明の効果】 【0015】本発明の骨粗鬆症治療剤 予防剤。 〔31〕上記〔1〕~〔30〕のいずれかに記載の治療剤,予防剤,薬剤,合剤,またはキットを用いる,予防または治療方法。 【発明の効果】 【0015】本発明の骨粗鬆症治療剤は,安全性が高くかつ効能・効果の面で優れている。また,本発明の骨折抑制ないし予防剤は,安全性が高く,有用である。 【図面の簡単な説明】【0016】 【図1】図1は,投与群(高リスク者,低リスク者)別での血清カルシウム濃度推移の結果を示すグラフである。 【図2】新規椎体骨折発生率の経時変化に対する被験薬投与の影響を示す。被験薬投与群を「PTH200群」,対照薬投与群を「P群」と表記した。 【図3】新規椎体骨折発生率の経時変化に対する被験薬投与の影響を示す。被験薬 投与群を「PTH200群」,対照薬投与群を「P群」と表記した。 【図4】被験薬(「PTH200群」)または対照薬(「P群」)を週1回の頻度で72週間患者に投与した際の尿中カルシウム値の変動について試験した結果を示す。 尿中カルシウム値/尿中クレアチン値の比を投与開始前と観察週で比較した。尿中カルシウムの測定は,開始時,12週後,24週後,48週後,72週後に実施し た。標準併用薬(カルシウム 610mg,ビタミンD3 400IU,及びマグネシウム 30mg)を同意取得時から治験終了まで1日1回夕食後服用した。 【図5】被験薬(「PTH200群」)または対照薬(「P群」)を週1回の頻度で72週間患者に投与した際の補正血清カルシウム値の変動について試験した結果を示す。血清カルシウムの測定は,開始時,12週後,24週後,48週後,72週後 に実施した。血清カルシウム基準値:8.4-10.4mg/dL。標準併用薬(カ ルシウム 610m カルシウムの測定は,開始時,12週後,24週後,48週後,72週後 に実施した。血清カルシウム基準値:8.4-10.4mg/dL。標準併用薬(カ ルシウム 610mg,ビタミンD3 400IU,及びマグネシウム 30mg)を同意取得時から治験終了まで1日1回夕食後服用した。 【発明を実施するための形態】【0017】本発明について,具体的に説明する。 【0018】本発明は,1回当たり100~200単位のPTHが週1回(以下,「週1回」を「隔週」と称することもある。)投与されることを特徴とする,PTHによる骨粗鬆症治療ないし予防方法又は骨折抑制ないし予防方法を提供する。また,本発明は,1回当たり100~200単位のPTHが隔週投与されることを特徴とする,PT Hを有効成分とする骨粗鬆症治療ないし予防剤又は骨折抑制ないし予防剤を提供する。さらに,本発明は,前記骨粗鬆症治療ないし予防剤又は前記骨折抑制ないし予防剤の製造のためのPTHの使用を提供する。 【0019】I 有効成分 本発明の有効成分であるPTH(以下,単に「PTH」ということもある。)は,ヒト副甲状腺ホルモンであるヒトPTH(1-84),及び,ヒトPTH(1-84)と同等又は類似の活性を有する分子量約4,000~10,000程度のペプチド類を包含する。 【0020】 PTHは,天然型のPTH,遺伝子工学的手法により製造されたPTH,及び化学合成法により合成されたPTHのいずれをも含む。PTHは,自体公知の遺伝子工学的手法により製造され得る(非特許文献8)。あるいは,PTHは,自体公知のペプチド合成法により合成されることができ(非特許文献11),例えば,不溶性の高分子担体上でペプチド鎖をC末端か の遺伝子工学的手法により製造され得る(非特許文献8)。あるいは,PTHは,自体公知のペプチド合成法により合成されることができ(非特許文献11),例えば,不溶性の高分子担体上でペプチド鎖をC末端から伸長していく固相法(solidpha semethod)によっても合成され得る(非特許文献4)。なお,本発明のP THの由来は,ヒトに限られず, ラット,ウシ,ブタ等であってもよい。 【0021】本願明細書において,ヒトPTH(n-m)というときには,ヒトPTH(1-84)のアミノ酸配列第n番目から第m番目までからなる部分アミノ酸配列で示されるペプチドを意味する。例えば,ヒトPTH(1-34)は,ヒトPTH(1- 84)のアミノ酸配列第1番目から第34番目からなる部分アミノ酸配列で示されるペプチドを意味する。 【0022】本発明の有効成分であるPTHは,1種又は2種以上の揮発性有機酸と形成した塩でもあってもよい。揮発性有機酸として,トリフルオロ酢酸,蟻酸,酢酸などが 例示され,好ましくは酢酸を挙げることができる。フリー体のPTHと揮発性有機酸が塩を形成する際の両者の比率は,当該塩を形成する限りにおいて特に限定されない。例えば,ヒトPTH (1-34)は,その分子中に9分子の塩基性アミノ酸残基と4分子の酸性アミノ酸残基を有するため,それらの分子内における塩形成を考慮に入れると,塩基性アミノ酸5残基を酢酸の化学当量とすることができる。例 えば,酢酸量に酢酸重量×100(%)/ヒトPTH(1-34)のペプチド重量,で表される酢酸含量を用いれば,一つの理論として,フリー体であるヒトPTH(1-34)に対する酢酸の化学当量は約7.3%(重量%)となる。本願明細書において,フリー体である -34)のペプチド重量,で表される酢酸含量を用いれば,一つの理論として,フリー体であるヒトPTH(1-34)に対する酢酸の化学当量は約7.3%(重量%)となる。本願明細書において,フリー体であるヒトPTH(1-34)はテリパラチド ,テリパラチドの酢酸塩はテリパラチド酢酸塩と,それぞれ称されることもある。テリパラチド酢酸塩 における酢酸含量は,テリパラチドと酢酸が塩を形成する限りにおいて特に限定されず,例えば,前記の理論化学等量である7.3%以上であってもよく,0~1%でもよい。より具体的には,テリパラチド酢酸塩における酢酸含量として,1~7%,好ましくは2~6%を例示され得る。これらの塩は自体公知の方法(特許文献4~5)に従って製造可能である。 【0023】 PTHとして,ヒトPTH(1-84),ヒトPTH(1-34),ヒトPTH(1- 38),hPTH(非特許文献5),ヒトPTH(1-34)NH2,〔Nle8, 18 〕ヒトPTH(1-34),〔Nle8,18,Tyr34〕ヒトPTH(1-34), 〔Nle8,18〕ヒトPTH(1-34)NH2 ,〔Nle8,18,Tyr34〕 ヒトPTH(1-34)NH2,ラットPTH(1-84),ラットPTH(1 -34) ,ウシPTH(1-84),ウシPTH(1-34),ウシPTH(1-34)NH2等が例示される。好ましいPTHとして,ヒトPTH(1-84),ヒトPTH(1-38 ),ヒトPTH(1-34),ヒトPTH(1-34)NH2が例示される(特許文献3等)。特に好ましいPTHとして,ヒトPTH(1-34)が挙げられる。さらに好ましいPTHとして,化学合成により得られたヒトPTH(1 -34),最も好ましいPTH として,テリパ (特許文献3等)。特に好ましいPTHとして,ヒトPTH(1-34)が挙げられる。さらに好ましいPTHとして,化学合成により得られたヒトPTH(1 -34),最も好ましいPTH として,テリパラチド酢酸塩(実施例1)が挙げられる。 【0024】II 他の薬剤との併用本発明者らは,カルシウム剤併用下でのPTHに関し,骨折発生を主要評価項目 とした二重盲検比較臨床試験を実施した結果,その効果は24または26週後という早期から発現され,さらに,有害事象として高カルシウム血症が確認されなかった(実施例1~2)。従って,本発明に係る骨粗鬆症治療剤又は骨折抑制/予防剤は,他の薬剤と併用することを一つの特徴とする。ここで,他の薬剤との併用とは,本発明に係る骨粗鬆症治療剤又は骨折抑制/予防剤と本剤とは別のある薬剤(他の 薬剤)を併用することを意味する。 【0025】本発明の他の薬剤としてはカルシウムを好適に例示できる。但し,本発明において他の薬剤との併用というときには,当該他の薬剤以外の別の薬剤のさらなる併用を排除するものでない。従ってカルシウムとの併用として,例えば, カルシウムのみとの併用, カルシウムならびにビタミンD(その誘導体を含む)および/またはマグネシウムのみとの併用,も好ましく例示できる。よって,他の薬剤の具体的様態として,カルシウム剤を例示でき,好ましくは,(1)カルシウムを薬効成分として含むカルシウム剤, (2)カルシウム,ビタミンD(その誘導体を含む)およびマグネシウムをそれぞれ薬効成分として含むカルシウム剤を好ましく例示できる。 【0026】上記の本発明に係る骨粗鬆症治療剤又は骨折抑制/予防剤と他の薬剤との併用の形態(投与頻度,投与経 およびマグネシウムをそれぞれ薬効成分として含むカルシウム剤を好ましく例示できる。 【0026】上記の本発明に係る骨粗鬆症治療剤又は骨折抑制/予防剤と他の薬剤との併用の形態(投与頻度,投与経路,投与部位,投与量等)は,特に限定されず,患者に応 じた医師の処方等により適宜決定することができる。 【0027】たとえば,上記他の薬剤としてカルシウム剤を併用する場合,当該カルシウム剤は,PTHを有効成分とした本発明に係る骨粗鬆症治療剤又は骨折抑制/予防剤と同時に投与されてもよいし(すなわち週1回),それ以上の頻度で投与されても差し 支えはなく,1日1回ないし数回の頻度で投与されてもよい。従って,上記の他の薬剤は,本発明に係る骨粗鬆症治療/予防剤又は骨折抑制/予防剤と組合せてなる合剤としてもよく,本発明に係る骨粗鬆症治療剤/予防又は骨折抑制/予防剤と他の薬剤とが別々の製剤であってもよい。このようなカルシウム剤として,「新カルシチュウ(商標)D3」(販売元:第一三共ヘルスケア,製造販売元:日東薬品工業 株式会社)を例示できる。 【0028】また,他の薬剤は,発明に係る骨粗鬆症治療/予防剤又は骨折抑制/予防剤と一緒に又は逐次に(すなわち別々の時間に),同一の又は異なる投与経路で投与され得る。従って ,他の薬剤の剤形も特に限定されないが,例えば,錠剤,カプセル剤, 細粒剤等を例示できる。他の薬剤がカルシウム剤の場合,単位剤形あたり100~ 400(好ましくは150~350)mgをカルシウムとして含むカルシウム剤であることが好ましい。しかして ,単位剤形あたりカルシウムとして100~400mgを含むカルシウム錠剤を,たとえば本発明の実施例に従って1日あたり2錠投与するとすれば,カ として含むカルシウム剤であることが好ましい。しかして ,単位剤形あたりカルシウムとして100~400mgを含むカルシウム錠剤を,たとえば本発明の実施例に従って1日あたり2錠投与するとすれば,カルシウムとして200~ 800mgが一日あたり投与されることになるが,これに限定されない。 【0029】上記の他の薬剤の具体的な例としては,カルシウム剤の場合,たとえば沈降炭酸カルシウム,乳酸カルシウム,炭酸カルシウム,塩化カルシウム,グルコン酸カルシウム,アスパラギン酸カルシウム,燐酸カルシウム,燐酸水素カルシウム,クエン酸カルシウム等を有効成分とする公知の薬剤が例示できる。沈降炭酸カルシウム を含む薬剤が好ましい。なお,当該他の薬剤には,賦形剤,結合剤,崩壊剤,滑沢剤,制酸剤等が適宜含まれていてもよい。 【0030】PTH投与患者のある一定の割合に,嘔吐,悪心,嘔気,胃もたれ,胃部不快感,胸焼けなどの消化器症状が一過的に観察されることが知られている(特許文献6)。 【0031】本発明者らは,被験薬投与に伴う一過性の悪心・嘔吐に対する様々な制嘔剤の投与時期と有効性について試験した結果,プリンペラン(その薬効成分の一般名はメトクロプラミド),ナウゼリン(その薬効成分の一般名はドンペリドン),ガスターD(その薬効成分の一般名はファモチジン),ガスモチン(その薬効成分の一般名は クエン酸モサプリド),タケプロンOD(その薬効成分の一般名はランソプラゾール)および六神丸がPTH投与に伴う悪心または嘔吐に対して有効であることを確認した(実施例2)。従って,更なる他の薬剤としてこれらの制嘔剤を好ましく,ナウゼリン(その薬効成分の一般名はドンペリドン),ガスモチン(その薬効成分の一般名はクエン酸モサプリド)およ あることを確認した(実施例2)。従って,更なる他の薬剤としてこれらの制嘔剤を好ましく,ナウゼリン(その薬効成分の一般名はドンペリドン),ガスモチン(その薬効成分の一般名はクエン酸モサプリド)および/または六神丸をより好ましく,挙げることができ る。これらの制嘔剤の用法用量は患者の症状等に応じて医師等が適宜設定すること ができる。 【0032】III 投与期間本発明に係る骨粗鬆症治療/予防剤又は骨折抑制/予防剤の投与期間は特に限定されず,患者に応じた医師の処方等により適宜決定することができる。本発明者ら は,投与期間を156または72週間として,骨折発生を主要評価項目とした二重盲検比較臨床試験を実施した。本試験において,当該投与による有意な骨折抑制効果を確認でき,その効果は24または26週後という早期から発現した(実施例1~2)。さらに,投与後48週を超えてからの新規椎体骨折は認められなかった(実施例2)。従って,投与期間として,24週以上,26週以上,48週以上,52週 以上,72週以上,または78週以上を例示することができ,最も好ましくは78週以上である。また,本試験において,有害事象として高カルシウム血症は確認されなかった(実施例1)。 【0033】IV 投与量 本発明者らは,1回当たり100または200単位のPTHを用いた二重盲検比較臨床試験を実施した結果,当該投与による有意な骨折抑制効果と24または26週後という早期からの効果の発現を認め,一方で有害事象としての高カルシウム血症は確認されなかった(実施例1~2)。 【0034】 従って,本発明は,その投与量として,1回当たり100~200単位であることを特徴の一つとする。ここでPTHの1単 の高カルシウム血症は確認されなかった(実施例1~2)。 【0034】 従って,本発明は,その投与量として,1回当たり100~200単位であることを特徴の一つとする。ここでPTHの1単位量は,自体公知の活性測定方法により測定可能である(非特許文献9)。投与量として,好ましく1回当たり100又は200単位,最も好ましく1回当たり200単位が例示される。 【0035】 V 投与間隔 本発明者らは,1週間に1回の頻度でPTH投与する二重盲検比較臨床試験を実施した結果,当該投与による有意な骨折抑制効果と24または26週後という早期からの効果の発現を認め,一方で有害事象としての高カルシウム血症は確認されなかった(実施例1~ 2)。従って,本発明は,その投与間隔を隔週とすることを特徴の一つとする。 【0036】VI 投与経路本発明の骨粗鬆症治療/予防剤・骨折抑制/予防剤は,その製剤形態に応じた適当な投与経路により投与され得る。例えば,本発明の骨粗鬆症治療ないし予防剤或いは骨折抑制ないし予防剤が注射剤の場合には,静脈,動脈,皮下,筋肉内などに 投与され得る。本発明者らは,PTHを皮下注射した結果,優れた効能・効果及び安全性を示すことを立証した(実施例1~2)。従って,本発明は,その投与経路として皮下投与経路を好ましく例示可能である。 【0037】VII 対象疾患 本発明に係る骨粗鬆症は特に限定されず,原発性骨粗鬆症及び続発性骨粗鬆症のいずれをも含む。原発性骨粗鬆症としては,例えば,退行期骨粗鬆症(閉経後骨粗鬆症及び老人性骨粗鬆症),特発性骨粗鬆症(妊娠後骨粗鬆症,若年性骨粗鬆症など)が例示される。 続発性骨粗鬆症は,特定の疾病や特定の薬剤等の原因により誘発 としては,例えば,退行期骨粗鬆症(閉経後骨粗鬆症及び老人性骨粗鬆症),特発性骨粗鬆症(妊娠後骨粗鬆症,若年性骨粗鬆症など)が例示される。 続発性骨粗鬆症は,特定の疾病や特定の薬剤等の原因により誘発される骨粗鬆症であり,例えば,特定の薬剤,関節リウマチ,糖尿病,甲状腺機能亢 進症,性機能異常,不動性,栄養性,その他先天性疾患などが原因として挙げられる。特定の薬剤として,例えば,ステロイドが例示される。本発明に係る骨粗鬆症として骨折の危険性の高い骨粗鬆症を好ましく例示できる。骨折の危険性の高い骨粗鬆症への本発明の適応は下記の高リスク患者への本発明の適応を意味する。 【0038】 本発明者らは,原発性骨粗鬆症の患者を対象とした臨床試験において,本発明の 効果・効能や安全性を確認した(実施例1~2)。従って,本発明に係る骨粗鬆症として好ましく原発性骨粗鬆症を例示でき,最も好ましく退行期骨粗鬆症を例示できる。 【0039】本発明者らは,続発性骨粗鬆症を誘発するステロイドを服用する原発性骨粗鬆症 患者を対象とした臨床試験において,本発明の効果を確認した(実施例2)。従って,本発明に係る原発性骨粗鬆症患者として,続発性骨粗鬆症を誘発するステロイドを服用する原発性骨粗鬆症患者を好ましく例示できる。 【0040】本発明者らは,合併症(糖尿病,高血圧,または高脂血症)を有する原発性骨粗 鬆症患者を対象にした臨床試験において,本発明の効果を確認した(実施例2)。従って,本発明に係る骨粗鬆症患者として,糖尿病,高血圧および高脂血症の少なくともいずれか1の合併症を有する骨粗鬆症患者を好ましく例示でき,糖尿病,高血圧および高脂血症の少なくともいずれか1の合併症を有する原発性骨粗鬆症患者をさらに て,糖尿病,高血圧および高脂血症の少なくともいずれか1の合併症を有する骨粗鬆症患者を好ましく例示でき,糖尿病,高血圧および高脂血症の少なくともいずれか1の合併症を有する原発性骨粗鬆症患者をさらに好ましく例示できる。 【0041】糖尿病は骨粗鬆症性骨折リスク要因である可能性が高いことが知られている(非特許文献16)。 【0042】糖尿病性骨粗鬆症とPTHの関係については動物実験において次の報告が認めら れる。 1) 糖尿病性の骨減少症示すsreptozotocin処理ラットに対してhPTHを投与することによって,cancelousenveropeにおいて『骨量』,『骨梁幅』,『類骨表面』,『石灰化面』,『骨石灰化速度』,『骨形成速度』の増加が見られ,さらに,endocorticalenvelopeでは『類 骨表面』,『石灰化面』,『骨石灰化速度』,『皮質骨厚』の増加が見られたことが報告 されている(非特許文献21)。ただし,本ラットは,他の原因による骨減少症ラットと異なり,吸収面の顕著な減少は見られていない。 2) sreptozotocin処理ラットに対して8週間に渡ってPTHを投与した結果,海面骨量とターンオーバーの回復を認めたことが報告されている(非特許文献22)。 3) 培養細胞における実験では高濃度のグルコースに曝露されるとhPTH(1-34)に対する反応が落ちる(PTHの効きが悪くなる)ことが報告されている(非特許文献20)。 【0043】発明者は,糖尿病性骨粗鬆症ヒト患者へのPTH投与の効果を期待する医師等の多 くの見解が存在している(例:http://www.richbone.com/kotsusoshosho/basic_shi ,糖尿病性骨粗鬆症ヒト患者へのPTH投与の効果を期待する医師等の多 くの見解が存在している(例:http://www.richbone.com/kotsusoshosho/basic_shindan/tonyo.htm)ことを理解している一方で,その効果を実証した論文を見出せなかった。 【0044】従って,本発明の骨粗鬆症治療剤・骨折抑制/予防剤により,原発性骨粗鬆症と 糖尿病の合併症患者に対しての椎体骨折リスクが低減されることを,本願試験で実証したことは重要な知見である。 【0045】本発明に係る骨折は特に限定されず,椎体骨折及び非椎体骨折のいずれをも含み(実施例1),骨粗鬆症・骨形成不全・骨腫瘍などを原因とする病的骨折,交通事故・ 打撲などを原因とする外傷性骨折のいずれをも含む。好ましくは,骨粗鬆症を原因とする骨折,さらに好ましくは骨粗鬆症を原因とする椎体骨折への適用を例示可能である。骨折の部位も特に限定されないが,典型的には,脊椎圧迫骨折,大腿骨頸部骨折,大腿骨転子間部骨折 ,大腿骨骨幹部骨折,上腕骨頸部骨折,橈骨遠位端骨折を挙げることもでき,特に脊椎圧迫骨折が例示され得る。 【0046】 本発明に係る骨折の回数は特に限定されず,単発骨折及び多発骨折のいずれをも含む。単発骨折とは,骨が1箇所だけ折れるまたは亀裂が入る病状を意味し,多発骨折とは,骨が2箇所以上折れるまたは亀裂が入る病状を意味する。多発骨折における骨折数は特に限定されないが,2個~4個へ適用される場合が好ましい。 【0047】 本発明に係る椎体骨折は新規骨折および増悪骨折のいずれをも含む。例えば,椎体全体の形態をみてその変形の程度はGrade分類されることができ,Grade0(正常),G しい。 【0047】 本発明に係る椎体骨折は新規骨折および増悪骨折のいずれをも含む。例えば,椎体全体の形態をみてその変形の程度はGrade分類されることができ,Grade0(正常),Grade1(椎体高約20~25%減少,かつ,椎体面積10~20%減少),Grade2(椎体高約25~40%減少,かつ,椎体面積20~40%減少),Grade3(椎体高約40%以上減少,かつ,椎体面積40%以上減少) とすることが一般的である。新規・増悪の区分はGenantの判定基準に従いGradeの増加パターンに沿って実施可能である。具体的には,Grade0からGrade1,2,または3への変化が認められた場合には新規骨折と診断され,Grade1からGrade2または3,Grade2からGrade3への変化が認められた場合には増悪骨折とみなすことができる。さらにGradeの変化を 正確に判断するために,井上ら(非特許文献35)の方法,および林ら(非特許文献36)の方法に従って,椎体高の計測を行った。 【0048】本発明者らは,既存骨折を有する患者を対象とした臨床試験において,本発明の増悪骨折抑制効果を確認した(実施例2)。従って,本発明においては,骨粗鬆症患 者として, 好ましく既存骨折を有する患者,さらに好ましく既存骨折およびその増悪骨折の可能性を有する患者への適用を例示できる。 【0049】PTHの骨強度増強作用のメカニズムについては未だ不明な点が多い。骨強度は骨密度のみならず骨質の状態を反映するが,これは骨密度のみならず骨微細構造や 石灰化など骨質要因が骨強度を規定することを意味する(非特許文献17)。本発明 者は,骨質は骨強度のみならず骨粗鬆症とは異なる疾病の発症リスクやその らず骨微細構造や 石灰化など骨質要因が骨強度を規定することを意味する(非特許文献17)。本発明 者は,骨質は骨強度のみならず骨粗鬆症とは異なる疾病の発症リスクやその合併症の治癒成績に影響を及ぼす可能性があると考える。本発明の骨粗鬆症治療/予防剤・骨折抑制/予防剤は,従前の治療剤(特許文献2)と比較してこれらの点で優位である可能性が示唆された。 【0050】 特許文献2は,rhPTH(1-34)を骨粗鬆症患者に投与した結果,骨塩含有量(BMC)や骨塩密度(BMD)のみならず,腰椎や大腿骨等の骨面積を増加させたことを開示する。骨面積の増加は骨が外側に向かって肥厚することを意味する。 【0051】 ところが,本発明の骨粗鬆症治療/予防剤・骨折抑制/予防剤を骨粗鬆症患者に投与した結果,皮質骨厚が骨の外側ではなく骨の内側に増加した。すなわち,骨全体の厚さは殆ど変化が認められなかった。本メカニズムは例えば下記に示される重要な臨床的意義を示すと考えられる。 【0052】 (1)長管骨肥厚による関節破壊がない長管骨(四肢を構成する長形状の骨)の一つである大腿骨は,その骨端が関節軟骨と接触してその他滑膜や半月板とともに膝関節を形成している。その接触面は厚さ数ミリ程度の軟骨に覆われる関節面と称される。膝関節痛の原因となる疾病として例えば変形性膝関節症が例示される。 【0053】一方,プレドニゾン(prednisone)誘発骨粗鬆症と関節痛の合併症患者に対してフォサマック(Fosamax)と比較してフォルテオ(Forteo;毎日投与のPTH)がより強い骨強化作用を示したことが知られている(非特許文献23~24)。 【0054】 し amax)と比較してフォルテオ(Forteo;毎日投与のPTH)がより強い骨強化作用を示したことが知られている(非特許文献23~24)。 【0054】 しかし,このフォルテオ投与は特許文献2に記載のPTH投与と実質的に同等の従来の治療方法であり,先に述べたように本従来方法は骨の外側に肥厚させる治療方法である。 大腿骨の外側への肥厚は関節面の面積増大を意味し,軟骨細胞数は骨の肥厚と比して増加しない為,この従前治療法に起因する大腿骨の外側への肥厚は,関節面の増大で惹起または増悪される軟骨細胞の損傷を介して関節の破壊を促進す る可能性がある。 【0055】ところが,本発明のように大腿骨の内側への肥厚は,関節面増大がなく,軟骨をより安定化させ,結果として,軟骨への負担を増やさずに関節破壊を実質的に促進させない可能性があると発明者は考えている。本剤による骨粗鬆症治療が前記従来 法による骨粗鬆治療と比較して関節に優しい治療である可能性を示唆するものである。 【0056】(2)椎体肥厚による変形性脊椎症の増悪または発症がない加齢等の何らかの原因によって正常な椎体骨量が減少すると椎体が不安定化する。 不安定化は終板の変形によって始まる。椎体の不安定化とは,具体的には,終盤の薄化や終盤孔(ハバース管)の拡大である。その不安定化が進むと,椎間板の終盤孔への進入や椎間板狭小化が見られる。さらに症状が進めば,椎骨同士の衝突による骨棘(こつきょく)生成にいたる。このような脊椎の変性が変形性脊椎症といわれる疾病である。変形性脊椎症になると,椎間が安定化して椎間板の進入に起因す る痛みや周辺の筋肉膨張による痛みなどが生じることになる。 【0057】しかし,特許文献2に記載のよう といわれる疾病である。変形性脊椎症になると,椎間が安定化して椎間板の進入に起因す る痛みや周辺の筋肉膨張による痛みなどが生じることになる。 【0057】しかし,特許文献2に記載のようにPTHを毎日投与して骨の外側に肥厚させる場合, 終盤孔の拡大に対して十分な抑制作用が見られない可能性がある。あるいは,椎体と椎間板の接触面積の増大によって,椎体間の距離が縮小し,椎体の不安定化 が進み,結果として,変形性脊椎症の発症や増悪リスクが高くなる可能性もある。 【0058】一方,本発明の骨粗鬆症治療剤・骨折抑制/予防剤投与により,皮質骨厚が骨の外側ではなく骨の内側に増加していくため,終盤孔の拡大や椎間板の終盤孔への進入に対して十分に抑制できる可能性がある。 【0059】 (3)変形性股関節症・変形性顎関節症を増悪または発症促進させない変形性股関節症は,関節に対する血流不良や極度の加重や酷使を理由として,股関節を形成している臼蓋と大腿骨頭の接触面の関節軟骨が摩耗,変性,不可逆性の変化を起こした状況である。変形性股関節症患者の大腿骨皮質骨面積は健常者のそれと比較して有意に大きい(非特許文献18)。大腿骨皮質骨面積の増大は,大腿骨 の外側への肥大化を意味し,従ってこれが変形性股関節症の発症または増悪に関与している可能性がある。本発明のように大腿骨の内側への肥厚化をさせる場合には,大腿骨の外側への肥大化をさせることはないので,変形性股関節症の発症または増悪リスクを増大させない可能性がある。変形性顎関節症は顎関節の変形を主徴候とするものであるが,皮質骨の肥厚が診断所見の一つとなっている(非特許文献19)。 従って,皮質骨のさらなる外側への肥大化が症状を悪化または発症させる可能性が 性顎関節症は顎関節の変形を主徴候とするものであるが,皮質骨の肥厚が診断所見の一つとなっている(非特許文献19)。 従って,皮質骨のさらなる外側への肥大化が症状を悪化または発症させる可能性がある。本発明のように骨の内側へ肥厚させる場合には,このような変形性顎関節症の発症または増悪リスクを増大させない可能性が推定される。 【0060】以上,(1)~(3)を纏めると,関節痛,変形性脊椎症,変形性腰痛症,変形性 股関節症,および変形性顎関節症の少なくともいずれか1の疾病を合併症として有する骨粗鬆症患者(好ましくはそのうち原発性骨粗鬆症患者)を本発明の骨粗鬆症治療/予防剤・骨折抑制/予防剤の適応患者として好ましく例示できる。 【0061】本発明者らは,1年以内の他の骨粗鬆症治療薬の服薬歴が本剤有効性に与える影 響を評価した。その結果,他の骨粗鬆症治療薬の服薬歴がある原発性骨粗鬆症患者 は服薬歴のない患者よりも被験薬有効性が高いことが明らかになった(実施例2)。 従って,本発明においては,骨粗鬆症患者として,他の骨粗鬆症治療薬の服薬歴がある骨粗鬆症患者への適用を好ましく例示でき,他の骨粗鬆症治療薬の服薬歴がある原発性骨粗鬆症患者への適用をさらに好ましく例示できる。 【0062】 また,他の骨粗鬆症治療薬として,L-アスパラギン酸カルシウム,アルファカルシドール,塩酸ラロキシフェン,エルカトニン,メナテトレノン,乳酸カルシウム,が例示され,好ましくは,L-アスパラギン酸カルシウム,アルファカルシドール,エルカトニンが例示される。他の骨粗鬆症治療薬は単独または併用して投薬実績があってもよい。 【0063】他の骨粗鬆症治療薬の投与歴のある骨粗鬆症患者に対して,本発明の骨粗鬆症 ドール,エルカトニンが例示される。他の骨粗鬆症治療薬は単独または併用して投薬実績があってもよい。 【0063】他の骨粗鬆症治療薬の投与歴のある骨粗鬆症患者に対して,本発明の骨粗鬆症治療剤・骨折抑制/予防剤を24週~72週またはそれ以上にわたり投与することが好ましい。特にそのうち腰椎の骨折リスクの高い患者に対しては24週またはそれ以上にわたり投与することが好ましく,大腿骨頚部または大腿骨近位部の骨折リス クの高い患者に対しては72週またはそれ以上投与することが好ましい。 【0064】骨粗鬆症および腎障害は加齢とともにその有病率が上昇する。女性の骨粗鬆症患者の85%は軽度~中程度の腎障害を有しているという大規模な疫学研究報告もある(非特許文献32)。従って,腎障害を有する骨粗鬆症患者に対して有効かつ安全 な薬剤を提供することは重要である。 【0065】本発明者らは,腎機能正常の骨粗鬆症患者群,軽度腎機能障害を有する骨粗鬆症患者群,中等度腎機能障害を有する骨粗鬆症患者群いずれに対しても本発明の骨粗鬆症治療/予防剤・骨折抑制/予防剤が有効であることを示した(実施例2)。さら に加えて,血清カルシウムに関する安全性において全ての群に対して本発明の骨粗 鬆症治療剤・骨折抑制/予防剤は同等であることが明らかとなった。 【0066】腎機能正常,障害,および障害の程度は,クレアチニンクリアランスに基づき区別可能である。具体的には,クレアチニンクリアランスが80ml/min以上を腎機能正常, 50以上80未満ml/minを軽度腎機能障害,30以上50未満 ml/minを中等度腎機能障害と判定可能である。 【0067】一般的には,血清カルシウムの正常上限濃度は10.6 正常, 50以上80未満ml/minを軽度腎機能障害,30以上50未満 ml/minを中等度腎機能障害と判定可能である。 【0067】一般的には,血清カルシウムの正常上限濃度は10.6mg/mlでありこれを超える11.0mg/mlはやや高値といえる。従前のPTH毎日投与では,中程度腎機能障害を有する骨粗鬆症患者群の11.76%の患者に投与後にやや高値で ある11.0mg/mlを超える血清カルシウムが認められていた(非特許文献32)。ところが,本発明においては,中程度腎機能障害を有する骨粗鬆症患者群に本発明の骨粗鬆症治療/予防剤・骨折抑制/予防剤を投与した結果,11.0mg/mlを超える血清カルシウムが認められる患者は投与開始~最終時まで全ての検査時において一人も見出すことができなかった(実施例2)。すなわち,有効性のみな らず安全性の面でも,本発明の骨粗鬆症治療/予防剤・骨折抑制/予防剤が優れていると考えられる。従って,本発明の適用対象患者として,軽度腎機能障害を有する骨粗鬆症患者および/または中等度腎機能障害を有する骨粗鬆症患者を好ましく例示でき,さらに好ましくは軽度腎機能障害を有する原発性骨粗鬆症患者および/または中等度腎機能障害を有する原発性骨粗鬆症患者を例示できる。 【0068】本発明に係る薬剤投与ないし治療方法が適用されるべき対象者の人種・年齢・性別・身長・体重等は特に限定されないが,当該対象者として,骨粗鬆症患者が例示され,或いは骨粗鬆症における骨折の危険因子を多くもつ骨粗鬆症患者に対して本発明の方法を適用し,或いは本発明の骨粗鬆症治療剤又は骨折抑制ないし予防剤を 投与することが望ましい。骨粗鬆症における骨折の危険因子としては,年齢,性, 低骨密度, 発明の方法を適用し,或いは本発明の骨粗鬆症治療剤又は骨折抑制ないし予防剤を 投与することが望ましい。骨粗鬆症における骨折の危険因子としては,年齢,性, 低骨密度,骨折既往,喫煙,アルコール飲酒,ステロイド使用,骨折家族歴,運動,転倒に関連する因子,骨代謝マーカー,体重,カルシウム摂取などが挙げられている(非特許文献10)。しかして,本発明においては,下記(1)~(3)の全ての条件を満たす骨粗鬆症患者(ないし対象者)を「高リスク患者」として定義する。 (1)年齢が65歳以上である (2)既存骨折がある(3)骨密度が若年成人平均値の80%未満である,および/または,骨萎縮度が萎縮度I度以上である。 【0069】ここで,骨密度とは,典型的には腰椎の骨塩量を指す。但し,腰椎骨塩量の評価 が困難な場合では,橈骨,第二中手骨,大腿骨頸部,踵骨の骨塩量値により当該骨密度を示すことができる。また,若年成人平均値とは20~44歳の骨密度の平均値を意味する。骨密度は,例えば,二重エネルギーX線吸収測定法,photodensitometry法 ,光子吸収測定法,定量的CT法,定量的超音波法など自体公知の方法により測定可能である。また,本発明において骨萎縮度とはX線上 骨量減少度を意味する。骨萎縮度は,骨萎縮なし,骨萎縮度I度,骨萎縮度II度,及び骨萎縮度III度に分類される。当該骨萎縮度における骨萎縮なしとは,正常状態を指し,具体的には,縦・横の骨梁が密であるため骨梁構造を認識することができない状態を意味する。骨萎縮度I度とは,縦の骨梁が目立つ状態を意味し,典型的には,縦の骨梁は細くみえるがいまだ密に配列しており,椎体終板も目立って くる状態を意味する。当該骨萎縮度における骨萎縮度I 態を意味する。骨萎縮度I度とは,縦の骨梁が目立つ状態を意味し,典型的には,縦の骨梁は細くみえるがいまだ密に配列しており,椎体終板も目立って くる状態を意味する。当該骨萎縮度における骨萎縮度II度とは,縦の骨梁が粗となり,縦の骨梁は太くみえ,配列が粗となり,椎体終板も淡くなる状態を意味する。 当該骨萎縮度における骨萎縮度III度とは,縦の骨梁も不明瞭となり,全体として椎体陰影はぼやけた感じを示し,椎間板陰影との差が減少する状態を意味する(骨粗鬆症治療,5/3,2006年7月号,「単純X線写真による骨粗鬆症の診断」)。 骨萎縮度は,例えば,腰椎側面X線像から判定可能である。本発明でいう椎体骨折 数は,例えば ,Genantらの方法(非特許文献14)により容易に計測可能である。椎体以外の部位の骨折は,例えば,レントゲンフィルムを用いて容易に確認され得る。 【0070】本発明においては,特に高リスク患者に対して本発明の方法を適用し,或いは本 発明の骨粗鬆症治療ないし予防剤又は骨折抑制ないし予防剤を投与することが特に好ましい(実施例1)。 【0071】一方,一般的に,下記(1)~(6)の少なくともいずれかに該当する患者(対象者) に対しては本発明の方法を適用すること,及びそれに従う本発明の骨粗鬆症 治療ないし予防剤又は骨折抑制ないし予防剤の投与を避けることも好ましい。 (1)気管支喘息,発疹(紅班,膨疹等)などの過敏症を起こしやすい体質の患者(2)高カルシウム血症患者(3)妊婦または妊娠している可能性のある婦人(4)甲状腺機能低下症または副甲状腺機能亢進症の患者 (5)過去に薬物過敏症を呈したことのある患者(6)心疾患,肝疾患,腎障害など重篤な合併症を有する たは妊娠している可能性のある婦人(4)甲状腺機能低下症または副甲状腺機能亢進症の患者 (5)過去に薬物過敏症を呈したことのある患者(6)心疾患,肝疾患,腎障害など重篤な合併症を有する患者従って,本発明においては,上記高リスク患者であって,かつ,上記(1)~(6)全てに該当しない骨粗鬆症患者等を適用対象とすることが好ましい。 【0072】 VIII 製剤本発明に係る骨粗鬆症治療/予防剤又は骨折抑制/予防剤(以下,単に「本剤」ということもある。)は,種々の製剤形態をとり得る。一般的には,本剤は,PTH単独又は慣用の薬学的に許容される担体とともに注射剤等とされ得る。本剤の剤形として注射剤が好ましい。 【0073】 例えば,本剤が注射剤の場合,PTHを適当な溶剤(滅菌水,緩衝液,生理食塩水等)に溶解した後,フィルター等で濾過および/またはその他適宜の方法にて滅菌して,次いで無菌的な容器に充填することにより調製され得る。その際にPTHとともに必要な添加物(例えば,賦形剤,安定化剤,溶解補助剤,酸化防止剤,無痛化剤,等張化剤,pH調整剤,防腐剤等)を添加しておくことが好ましい。この ような添加物として,例えば,糖類,アミノ酸,又は食塩等を挙げることができる。 添加剤として糖類を用いる場合には, 糖類として,マンニトール,グルコース,ソルビトール,イノシトール,シュークロース ,マルトース,ラクトース,トレハロースをPTH1重量に対して1重量以上(好ましくは50~1000重量)添加することが好ましい。添加剤として糖類及び食塩を用いる場合には,糖類1重量に対 して1/1000~1/5重量(好ましくは1/100~1/10重量)の食塩を添加することが好ましい。 【007 することが好ましい。添加剤として糖類及び食塩を用いる場合には,糖類1重量に対 して1/1000~1/5重量(好ましくは1/100~1/10重量)の食塩を添加することが好ましい。 【0074】例えば,本剤が注射剤の場合,本剤は凍結乾燥等の手段により固形化されたもの(凍結乾燥製剤等)でもよく,用時に適当な溶剤で溶解すればよい。あるいは,本 剤が注射剤の場合,本剤は予め溶解されてなる液剤であってもよい。 【0075】また,好ましくは,本剤は,骨粗鬆症治療剤及び骨折抑制/予防剤として,1回当たり 100~200単位のヒトPTH(1-34)を隔週で投与すべき旨を記載したパッケージに収容されるか,そのような旨を記載した添付文書とともにパッケ ージに収容された薬剤とすることができる。 【0076】なお,本願発明の有用性は,実施例に示される臨床試験の結果を慣用の方法で統計処理等することによっても容易に確認することができる。また,以下,本発明を実施例により本発明をさらに具体的に説明するが,本発明の範囲は以下の実施例に 限定されることはない。 【実施例】【0077】(実施例1)原発性骨粗鬆症と診断された男女の患者(非特許文献12)に対して,Takaiの方法(特許文献4~5,非特許文献11)により調製した,5あるいは100 単位のテリパラチド酢酸塩をそれぞれ週に1回間欠的に皮下投与した(それぞれを5あるいは100単位投与群とする)。なお,テリパラチド酢酸塩の活性測定はMarcusらの論文(非特許文献9)に従った。 【0078】5または100単位投与群は,1バイアル中にテリパラチド酢酸塩を5または 100単位含有する凍結乾燥製剤を生理食塩水1mLに用時溶解 usらの論文(非特許文献9)に従った。 【0078】5または100単位投与群は,1バイアル中にテリパラチド酢酸塩を5または 100単位含有する凍結乾燥製剤を生理食塩水1mLに用時溶解してその溶液全量を投与した。さらに,5または100単位投与群共に,カルシウム剤(1錠中に沈降炭酸カルシウムを500mg[カルシウムとして200mg]含有)を1日1回2錠投与した。 【0079】 骨粗鬆症患者は,非特許文献13に示された,骨折の危険因子の保有状況により,表-1に示す条件で区分して比較した。高リスク患者(以下,単に高リスク者と称することもある)は,年齢,既存の椎体骨折,骨密度あるいは骨萎縮度の3因子をすべて有するものと定義し,低リスク者はそれ以外のものとした。 【0080】 【表1】(後記)患者背景は表-2,3に示す通りであり,両群の背景に統計学的な有意差は認められなかった(p<0.05)。 【0081】【表2】(後記) 【表3】(後記) 【0082】投与期間中はカルシトニン製剤,活性型ビタミンD3製剤,ビタミンK製剤,イプリフラボン製剤,ビスホスホン酸塩製剤,エストロゲン製剤,蛋白同化ホルモン製剤,医師の処方によるカルシウム製剤(ただし,上記の1日1回2錠投与されるカルシウム剤は除く),その他骨代謝に影響を及ぼすと考えられる薬剤の併用は禁 止した。骨評価としては, 腰椎骨密度と骨折の発生の確認を実施した。腰椎骨密度は,二重エネルギーX線吸収測定法(DXA法)を用いて第2~第4腰椎骨密度の測定を開始時と以降6ヶ月毎に実施した。骨折発生頻度は,椎体では,第4胸椎から第5腰椎までの正面,側面のX線撮影を開始時と以降6ヶ月毎に実施し,Genantらの方法 )を用いて第2~第4腰椎骨密度の測定を開始時と以降6ヶ月毎に実施した。骨折発生頻度は,椎体では,第4胸椎から第5腰椎までの正面,側面のX線撮影を開始時と以降6ヶ月毎に実施し,Genantらの方法(非特許文献14)を参考に,開始時と以降の時点のレントゲンフ ィルムを比較して,新規椎体骨折を評価した。また椎体以外の部位では,レントゲンフィルムでの確認で評価した。また,全症例において投与開始時および投与期間中に採血を行い,カルシウム濃度を含む一般臨床検査値を測定した。(DXA,新規椎体骨折は中央で一括判定し,椎体以外の骨折は担当医師がレントゲンフィルムにより判定)高リスク者における投与期間は,5単位投与群で85.1±20.8週, 100単位投与群で83.7±19.8週であり両群間で有意な差は認められなかった(p<0.05)。また低リスク者は,5単位投与群で72.7±19.4週,100単位投与群で88.3±21.3週であり両群間で有意な差は認められなかった(p<0.05)。 【0083】 表-4,5に高リスク者,低リスク者の別での,投与群別の腰椎骨密度の推移を示した 。高リスク者においては,100単位投与群の骨密度は投与開始時に比較し有意に高い骨密度の増加が認められ,5単位投与群と比較しても有意に高い値を示した(p<0.05)。一方低リスク者においては,投与開始時との比較および群間での比較において有意差は認められなかった(p>0.05)。 【0084】 【表4】(後記)【0085】【表5】(後記)【0086】表-6,7に高リスク者,低リスク者の別での,投与群別の新規椎体骨折発生の 結果を示した。高リスク者においては,100単位投与群は5単位投与群に比べ骨 5】【表5】(後記)【0086】表-6,7に高リスク者,低リスク者の別での,投与群別の新規椎体骨折発生の 結果を示した。高リスク者においては,100単位投与群は5単位投与群に比べ骨折発生は有意に低かった(p<0.05)。一方低リスク者においては,群間で有意差は認められなかった(p>0.05)。 【0087】【表6】(後記) 【0088】【表7】(後記)【0089】表-8,9に高リスク者,低リスク者の別での,投与群別の26週毎の新規椎体骨折発生の結果を示した。高リスク者においては,100単位投与群は5単位投与 群に比べ,26週後から骨折発生を抑制した。一方,低リスク者においては群間の差は認められなかった。 【0090】【表8】(後記)【0091】 【表9】(後記)【0092】表-10,11に高リスク者,低リスク者の別での,投与群別の椎体以外の部位での骨折発生の結果を示した。高リスク者においては,100単位投与群は5単位投与群に比べ骨折発生は有意に低かった。一方低リスク者においては,群間で有意差 は認められなかった。 【0093】【表10】(後記)【0094】【表11】(後記)【0095】 図1に高リスク者,低リスク者の別での,投与群別の血清カルシウム濃度推移の結果を示した。実施した採血サンプルを用いた臨床検査値の結果のうち,低リスク者の5単位投与群において薬剤投与開始前より高値であった1症例を除き,全例で高カルシウム血症は認められず,また,血清カルシウムが上昇する傾向も認められなかった。 【0096】以上の表から分かる通り,原発性骨粗鬆症患者のうち,新規骨折の危険因子を有する患者において, ウム血症は認められず,また,血清カルシウムが上昇する傾向も認められなかった。 【0096】以上の表から分かる通り,原発性骨粗鬆症患者のうち,新規骨折の危険因子を有する患者において,テリパラチド酢酸塩を週1回100単位間欠的に皮下投与することによって,有意な腰椎の骨密度の増加が認められ,さらに新規椎体骨折の抑制が認められた。即ち,本発明の新規骨折の高リスク患者に対する,テリパラチド酢 酸塩の週1回100単位投与は,有用な骨粗鬆症治療剤及び骨折抑制ないし予防剤となり得ることが確認された。 【0097】また,投与期間中,本発明テリパラチド酢酸塩の週1回投与では,いずれの投与量においても高カルシウム血症の発症はなく,既に知られているテリパラチド酢酸 塩の連日投与に比較し,有用であるものと考えられた。 【0098】(実施例2)原発性骨粗鬆症と診断された男女の高リスク患者に対して,Takaiの方法(特許文献4~5,非特許文献11)により調製した被験薬(1バイアル;1バイアル にテリパラチド酢酸塩200単位を含む注射用凍結乾燥製剤)または対照薬(1バ イアル;1バイアルにテリパラチド酢酸塩を実質的に含まないプラセボ製剤)をそれぞれ生理的食塩水1mLで用時溶解して72週間にわたり週に1回の頻度で間欠的に皮下投与した。 【0099】上記患者は,併せて,カルシウム剤2錠を1日1回夕食後に服薬した。本カルシ ウム剤は,2錠中にカルシウム610mg,ビタミンD3400IU及びマグネシウム30mgを含有するソフチュアブル製剤であり,成分として,沈降炭酸カルシウム,炭酸マグネシウム,コレカルシフェロール(ビタミンD3)等を含み,「新カルシチュウ(商標)D3」(販売元:第一三共 シウム30mgを含有するソフチュアブル製剤であり,成分として,沈降炭酸カルシウム,炭酸マグネシウム,コレカルシフェロール(ビタミンD3)等を含み,「新カルシチュウ(商標)D3」(販売元:第一三共ヘルスケア,製造販売元:日東薬品工業株式会社)の商品名として市販されているものである。 【0100】なお,上記患者は全て自立歩行可能な外来患者であり,かつ,以下の(1)~(19)いずれの基準にも該当しない患者である。 (1) 所定の原因により続発性骨粗鬆症と診断された患者。ここで所定の原因とは,内分泌性(甲状腺機能亢進症,性腺機能不全,Cushing症候群),栄養性 (壊血病,その他(タンパク質欠乏,ビタミンAまたはD過剰)),薬物(副腎皮質ホルモン,メトトレキサート(MTX),へパリン,アロマターゼ阻害剤,GnRHアゴニスト),不動性(全身性(臥床安静,対麻痺,宇宙飛行),局所性(骨折後等)),先天性(骨形成不全症,Marfan症候群等),その他(関節リウマチ,糖尿病,肝疾患,消化器疾患(胃切除)等)を意味する。 (2)骨粗鬆症以外の骨量減少を呈する所定の疾患を有する患者。ここで所定の疾患とは ,各種の骨軟化症,原発性,続発性副甲状腺機能亢進症,悪性腫瘍の骨転移,多発性骨髄腫,脊椎血管腫,脊椎カリエス,化膿性脊椎炎,その他を意味する。 (3)椎体の強度に影響を及ぼすと考えられる所定のX線所見を有する患者。ここで所定とは6個以上の連続した椎体が架橋を形成している,椎体周辺の靱帯に著し い骨化が認められる,脊椎に著しい脊柱変形を有する,椎体の手術が施行されてい る,ことを意味する。 (4)胸腰椎体全体を覆うコルセットを装着している患者。 (5)同意取得前52週(364日)以内にビ 脊柱変形を有する,椎体の手術が施行されてい る,ことを意味する。 (4)胸腰椎体全体を覆うコルセットを装着している患者。 (5)同意取得前52週(364日)以内にビスホスフォネート製剤の投与を受けた患者。 (6)同意取得日に以下の骨粗鬆症治療薬の投与を受けている患者(ただし,治療 開始までに8週(56日)以上の休薬(ウォッシュアウト)が可能ならば,対象として選択可とする)。カルシトニン製剤,活性型ビタミンD3製剤,ビタミンK製剤,イプリフラボン製剤,エストロゲン製剤,SERM製剤,蛋白同化ホルモン製剤。 (7)気管支喘息,発疹(紅斑,膨疹等)等の過敏症状を起こしやすい体質の患者。 (8)PTH製剤に対して過敏症の既往歴のある患者。 (9)骨バジェット病の患者。 (10)悪性骨腫瘍の既往または過去5年以内に悪性腫瘍の既往のある患者。 (11)多発性外骨腫症の患者。 (12)骨格への放射線外照射療法歴または放射線組織内照射療法歴を有する患者。 (13)血清カルシウム値が11.0mg/dL以上の患者。 (14)アルカリフォスファターゼ値が基準値上限の2倍以上の患者。 (15)重篤な腎疾患,肝疾患または心疾患を有する患者。各疾患の基準は次の通り。 腎疾患:血清クレアチニン値が2mg/dL以上 肝疾患:AST(GOT)またはALT(GPT)値が基準値上限の2.5倍以上または100IU/L以上心疾患:「医薬品の副作用の重篤度分類基準について(平成4年6月29日薬安発第80号)」に示すグレード2を参考に判断する。 (16)問診の信頼性が低いと判断された患者(少なくとも認知症の患者は必ず除 外する )。 (17)他の治験薬を同意取得 )」に示すグレード2を参考に判断する。 (16)問診の信頼性が低いと判断された患者(少なくとも認知症の患者は必ず除 外する )。 (17)他の治験薬を同意取得前26週(182日)以内に投与された患者。 (18)過去に治験でPTH製剤の投与を受けた患者。 (19)その他,治験責任(分担)医師が本治験の実施にあたり不適当と判断した患者。 【0101】 また,上記患者は,治験への同意時から治験終了時までの間,以下の(1)~(6)いずれの薬剤の投与が禁止された。 (1) テリパラチド酢酸塩以外の骨粗鬆症治療薬(具体的には,ビスホスフォネート製剤,カルシトニン製剤,活性型ビタミンD3製剤,カルシウム製剤(ただし,上記の1日1回夕食後に服薬するカルシウム製剤は除く),ビタミンK製剤,イプ リフラボン製剤,エストロゲン製剤,SERM製剤,蛋白同化ホルモン製剤)(2) 副腎皮質ホルモン製剤(ただし,筋注,静注または経口投与,ブレドニゾロン換算で,1週間平均として5mg/日を超える場合,1日投与量として10mg/日を超える場合,または総投与量が450mgを超える場合)(3) アロマターゼ阻害剤 (4) GnRHアゴニスト(5) 他の治験薬【0102】被験薬および対照薬の投与例数は,それぞれ,290例(実施例において被験薬投与群と称することもある)および288例(実施例において対照薬投与群と称す ることもある)であり,投与総症例数は578例であった。ただし,試験の種類に応じてそれぞれの投与群の例数が異なることがあり,例えば(n=**)や評価例数等の表現で示すことがある。 【0103】骨評価としては,骨密度と骨ジオメトリー,骨折の発生の確認を実施した。 てそれぞれの投与群の例数が異なることがあり,例えば(n=**)や評価例数等の表現で示すことがある。 【0103】骨評価としては,骨密度と骨ジオメトリー,骨折の発生の確認を実施した。 【0104】 腰椎骨密度は,二重エネルギーX線吸収測定法(DXA法)を用いて第2~第4腰椎骨密度の測定を開始時と以降24週毎に実施した。 【0105】大腿骨骨密度は,二重エネルギーX線吸収測定法(DXA法)を用いて大腿骨近位部を 20度内旋し,左側のみの測定を開始時と以降24週毎に実施した。 【0106】DXAジオメトリーは担当医が測定した開始時と以降24週毎の大腿骨骨密度データで評価した。 【0107】CTジオメトリーはマルチスライスCTを用いて大腿骨近位部の測定を開始時, 48週後,72週後に実施した。 【0108】骨折発生頻度は,椎体では,第4胸椎から第4腰椎までの正面,側面のX線撮影を開始時と以降24週毎に実施し,Genantらの方法(非特許文献14)を参考に,開始時と以降の時点のレントゲンフィルムを比較して,新規および増悪椎体 骨折を評価した。また椎体以外の部位では,レントゲンフィルムでの確認で評価した(DXA,骨ジオメトリー,新規および増悪椎体骨折は中央で一括判定し,椎体以外の骨折は担当医がレントゲンフィルムにより判定)。 【0109】(A)椎体多発骨折に対する被験薬の有効性 ここで椎体多発骨折を新規の2箇所以上の椎体骨折と定義して,投与72週後における被験薬投与群(n=261)と対照薬投与群(n=281)それぞれにおける椎体多発骨折発生比率(例数)を比較したところ,対照薬投与群は2.1%(6例),被験薬投与群は0.8%(2例)であ 後における被験薬投与群(n=261)と対照薬投与群(n=281)それぞれにおける椎体多発骨折発生比率(例数)を比較したところ,対照薬投与群は2.1%(6例),被験薬投与群は0.8%(2例)であった。すなわち,被験薬は椎体多発骨折に対して抑制ないし予防効果を有することが示された。 骨折発生個数別の症例数を下記表に示す。 【表12】(後記)【0110】(B)ステロイドを服用する原発性骨粗鬆症患者に対する被験薬の有効性ステロイドを服用する原発性骨粗鬆症患者に対する被験薬投与の効果を試験した。 その結果,下記の表のとおり,ステロイドを服用する原発性骨粗鬆症患者に対して 被験薬が有効であることが示された。 【0111】【表13】(後記)【表14】(後記)【0112】 ステロイドは続発性骨粗鬆症の原因となる薬剤であることから,上記の結果は,ステロイドの続発性骨粗鬆症を誘発する薬剤に起因する続発性骨粗鬆症に対して被験薬が効果を奏する可能性を示唆するものであると考えられる。 【0113】(C)大腿骨3部位に対する被験薬の有効性 大腿骨3部位(大腿骨頚部,大腿骨転子間部,大腿骨骨幹部)に対する被験薬の効果を一般的なCT法に準じて試験した。その結果,下記の表のように,大腿骨各部位に対して被験薬は有効であることが示された。 【表15】(後記)【表16】(後記) 【表17】(後記)【0114】(D)被験薬投与に伴う悪心・嘔吐に対する処方検討被験薬投与に伴う悪心・嘔吐に対する様々な処置薬の投与時期と有効性について試験した。 【表18】(省略) 【0115】上記の通り,プリンペラン,ナウゼリン,ガス 与に伴う悪心・嘔吐に対する様々な処置薬の投与時期と有効性について試験した。 【表18】(省略) 【0115】上記の通り,プリンペラン,ナウゼリン,ガスターD,ガスモチン,タケプロンOD, 六神丸が有効であった。特に,ナウゼリン,又はガスモチン,六神丸が好ましかった。 【0116】 (E)合併症の種類またはその有無が被験薬効果に与える影響評価上記患者の中には合併症を有している者もいる。そこで,合併症の種類(糖尿病,高血圧,高脂血症)やその有無が被験薬効果に与える影響を評価した。その結果,下記の表の通り,これら合併症の種類や有無に関わらず,さらに投与後24週時点以降において,被験薬は新規椎体骨折発生を抑制することが明らかになった。 【表19】(後記)【0117】糖尿病を原疾患とする糖尿病性骨粗鬆症は続発性骨粗鬆症の一つであるが,糖尿病を合併症として有する原発性骨粗鬆症患者に被験薬効果が認められたことは,被験薬が糖尿病性骨粗鬆症に対しても治療効果を示す可能性を示唆するものと考えら れる。 【0118】(F)増悪骨折に対する被験薬の有効性増悪骨折に対する被験薬の有効性を試験した。その結果,下記の表のように,増悪骨折に対して被験薬は有効であることが示された。 【表20】(後記)【0119】(G)他の骨粗鬆症治療薬の服薬歴が被験薬有効性に与える影響の評価前述のように,上記患者に対して,治験への同意時から治験終了時までの間,テリパラチド酢酸塩以外の骨粗鬆症治療薬の投与は原則的に禁止された。しかし,治 験への同意時以前においては,所定の条件の下,他の骨粗鬆症治療薬の服薬を受け ている患者も存在していた。そこ の骨粗鬆症治療薬の投与は原則的に禁止された。しかし,治 験への同意時以前においては,所定の条件の下,他の骨粗鬆症治療薬の服薬を受け ている患者も存在していた。そこで,当該他の骨粗鬆症治療薬の服薬歴が被験薬有効性に与える影響を,新規椎体骨折発生率および骨密度変化率の観点から評価した。 【0120】新規椎体骨折発生率に関する評価結果を下表に示す。該表中,被験薬投与後72週時において,当該他の骨粗鬆症治療薬の服薬歴がある患者について被験薬投与群 の骨折率が2.9%であり対照薬投与群の骨折率が16.1%であったが,服薬歴のない患者について被験薬投与群の骨折率が3.2%であり対照薬投与群の骨折率が12.9%であった。すなわち,他の骨粗鬆症治療薬の服薬歴がある患者は服薬歴のない患者よりも被験薬有効性が高いことが明らかになった。 【表21】(後記) 【0121】次に骨密度変化率についての評価結果を下表に示した。該表中,腰椎骨密度に関しては ,いずれの他の骨粗鬆症治療薬の服薬歴がある患者においても,被験薬投与後48週で当該骨密度の増加が顕著になっており,特に,他の骨粗鬆症治療薬がL-アスパラギン酸カルシウム,エルカトニン,アルファカルシドール,メナテトレノ ン及びカルシトリオールである被験薬投与群においては,投与後24週という早期段階での腰椎骨密度の顕著な増加が見られた。更に注目されるのは,他の骨粗鬆症治療薬がL-アスパラギン酸カルシウム及びエルカトニンの場合,被験薬投与後72週時点の大腿骨頚部及び近位部骨密度の顕著な増加がみられ,特に,他の骨粗鬆症治療薬がエルカトニンの場合では,大腿骨近位部骨密度が被験薬投与後24週 時点から既に大幅に増加している点は特筆に値するであろう。 頚部及び近位部骨密度の顕著な増加がみられ,特に,他の骨粗鬆症治療薬がエルカトニンの場合では,大腿骨近位部骨密度が被験薬投与後24週 時点から既に大幅に増加している点は特筆に値するであろう。 【表22】(後記)【0122】また,他の骨粗鬆症治療薬の服薬歴が被験薬有効性に与える影響を,個別の当該他の骨粗鬆症治療薬について,新規椎体骨折発生率の観点から詳しく評価した結果 を下表に示したが,その表からわかるとおり,カルシトリオール以外の骨粗鬆症治 療薬服用歴のある患者において,被験薬投与による新規骨折の顕著な抑制が見られた。 【表23】(後記)【0123】(H)腎機能障害を有する骨粗鬆症患者への被験薬の有効性及び安全性 腎機能正常の骨粗鬆症患者群,軽度腎機能障害を有する骨粗鬆症患者群,および中等度腎機能障害を有する骨粗鬆症患者群に対する被験薬の有効性及び安全性を試験した。 【0124】(H-1)各患者群の背景因子の分布(詳細) 腎機能正常の骨粗鬆症患者群を「Normal(80≦)」,軽度腎機能障害を有する骨粗鬆症患者群を「Mildimpairment(50≦<80)」,中等度腎機能障害を有する骨粗鬆症患者群を「Moderateimpairment(<50)」 と表記した。また,被験薬投与群を「PTH200群」,対照薬投与群を「P群」と表記した。また,軽度腎機能障害を有する骨粗鬆症患者群と中度腎 機能障害を有する骨粗鬆症患者群を併せて「Abnormal (<80)」と表記することもある。各患者はその患者のクレアチニンクリアランスをもとに上記群に分類した。具体的には,クレアチニンクリアランスが80ml/min以上を腎機能正常,50以上80未満ml 80)」と表記することもある。各患者はその患者のクレアチニンクリアランスをもとに上記群に分類した。具体的には,クレアチニンクリアランスが80ml/min以上を腎機能正常,50以上80未満ml/minを軽度腎機能障害,30以上50未満ml/minを中等度腎機能障害とみなした。 【0125】(H-1)各患者群の背景因子の分布各患者群の背景因子の分布は次のようになる。 【表24】(後記)【0126】 (H-2)各患者群に対する被験薬の有効性(骨折抑制) 腎機能正常の骨粗鬆症患者群および腎機能障害(軽度・中程度)を有する骨粗鬆症患者群いずれに対しても被験薬が新規椎体骨折抑制効果を有することが明らかとなった。 【表25】(後記)【0127】 (H-3)各患者群に対する被験薬の有効性(骨密度増加)腎機能正常の骨粗鬆症患者群,軽度腎機能障害を有する骨粗鬆症患者群,中等度腎機能障害を有する骨粗鬆症患者群いずれに対しても被験薬が腰椎骨密度増加効果を有することが明らかとなった。 【表26】(後記) 【0128】(H-4)各患者群に対する被験薬の安全性(補正血清カルシウム)腎機能正常の骨粗鬆症患者群,軽度腎機能障害を有する骨粗鬆症患者群,中等度腎機能障害を有する骨粗鬆症患者群いずれに対しても被験薬を投与した結果,どの群に対しても被験薬と対照薬間で有意差は認められなかった。すなわち,血清カル シウムに関する安全性において全ての群に対して被験薬は同等であることが明らかとなった。 【表27】【0129】(H-5)各患者群に対する被験薬の安全性(有害事象発現率) 腎機能正常の骨粗鬆症患者群,軽度腎機能障害を有する骨粗鬆症患者群,中等度腎機能 らかとなった。 【表27】【0129】(H-5)各患者群に対する被験薬の安全性(有害事象発現率) 腎機能正常の骨粗鬆症患者群,軽度腎機能障害を有する骨粗鬆症患者群,中等度腎機能障害を有する骨粗鬆症患者群それぞれに被験薬を投与した後の有害事象発現率を試験した。 【表28】(後記)【表29】(後記) 【表30】(後記) 【0130】(H-6)各患者群に対する被験薬の安全性(副作用発現率)腎機能正常の骨粗鬆症患者群,軽度腎機能障害を有する骨粗鬆症患者群,中等度腎機能障害を有する骨粗鬆症患者群いずれに対しても被験薬を投与した結果,どの群に対しても被験薬は対照薬の約2倍の発現率を示した。すなわち,副作用発現率に 関する安全性において全ての群に対して被験薬は同等であることが明らかとなった。 【表31】(後記)【表32】(後記)【表33】(後記)【0131】 (I)新規椎体骨折発生率の経時変化に対する被験薬投与の影響被験薬投与群を「PTH200群」,対照薬投与群を「P群」と表記した。 【表34】(後記)【表35】(後記)【0132】 上記の表が示すように,半年ごとの新規椎体骨折発生率は,P群では,いずれの区間も約5%でほぼ一定であった。それに対して,PTH200群では,投与期間が長くなるにつれて区間毎の発生率が低下しており,48週を超えてからの新規椎体骨折の発生はなかった。また,PTH200群の新規椎体骨折発生率は,24週以内,24週~48週,48週~72週のいずれの区間でもP群より低く,プラセ ボに対する相対リスク減少率(RelativeRiskReduction;RRR)は投与を継続するにつれて増加した。このように,本 ,48週~72週のいずれの区間でもP群より低く,プラセ ボに対する相対リスク減少率(RelativeRiskReduction;RRR)は投与を継続するにつれて増加した。このように,本剤200単位の週1回投与は,新規椎体骨折の発生を早期から抑制し,24週後には既に骨折発生リスクをプラセボに対して53,9%低下させた。また ,本剤による骨折抑制効果は,投与とともに増強する傾向が認められた。 【0133】 その他,骨折試験のFASにおいて,Kaplan-Meier推定法による72週後の椎体骨折(新規+増悪)発生率は,PTH200群3.5%,P群が16. 3%であり,本剤200単位の発生率はプラセボ群より低かった(logrank検定,p<0,0001)。また,本剤200単位は,72週後には,椎体骨折(新規+増悪)の発生リスクをプラセボに比べて78.6%低下させた。半年毎の椎体 骨折(新規増悪)発生率を群間で比較すると,24週以内,24週~48週,48週~72週のいずれの区間でも,PTH200群の発生率はP群より低かつた。 【0134】(J)骨粗鬆症患者の尿中カルシウムおよび血清カルシウムに与える被験薬投与の影響 被験薬投与群を「PTH200群」,対照薬投与群を「P群」と表記した。被験薬あるいは対照薬を週1回の頻度で72週間患者に投与した際の尿中カルシウム値および補正血清カルシウム値の変動について試験した結果を示す(図4~5)。 尿中カルシウム値変化率の平均値(および中央値)は,開始時に比較72週後でPTH200群3.2%(-14.7%),P群23.6%(1.6%)で,P群に 比べPTH 200群で減少傾向が見られた。 補正血清カルシウム値は,両群共に平均9 は,開始時に比較72週後でPTH200群3.2%(-14.7%),P群23.6%(1.6%)で,P群に 比べPTH 200群で減少傾向が見られた。 補正血清カルシウム値は,両群共に平均9.3~9.6mg/dLの範囲で推移した。 PTH200群の投与後の補正血清カルシウムは最小値で8.5mg/dI(48および72週後),最大値で11.6mg/dl(4週後)であり,P群では,最小値で8.5 mg/dL(4週後),最大値で12.lmg/dI(12週後) であつた。両群共に,大きな変動は認められなかつた。 本試験で血清カルシウム上昇および低下の有害事象は認められなかった。 本試験でPTH200群はP群と比較して高Ca血症および高Ca尿症のいずれの発現も認められなかった。 【産業上の利用可能性】 【0135】 本発明の骨粗鬆症治療/予防及び骨折抑制/予防方法は効能・効果及び安全性の両面で優れ,本発明の骨折抑制方法は安全性が高く,いずれも骨粗鬆症等治療や骨折抑制/予防のために大きく貢献する画期的な医療技術である。従って,当該目的のための本発明の骨粗鬆症治療/予防剤及び骨折抑制/予防剤は,医薬品産業において極めて有用である。 (別紙2)甲7文献の記載事項(抜粋)(表及び図は末尾に一括して掲記した。) [296頁左欄1行ないし右欄7行目] 要約ヒト副甲状腺ホルモンのアミノ末端ペプチド1-34(hPTH(1-34))の骨粗鬆症治療に対する効果を検討するために,71施設にて骨粗鬆症患者220名を対象として無作為に二重盲検下にて3群に割り付け,hPTH(1-34)の50単位(L群),100単位(M群)または200単位(H群)を,毎週皮下注射し, 骨形成促進剤としての可能性について検討した。二重エネルギーX線吸収測定法(DXA)で測定したところ,投与後48週目には,腰椎骨密度(BMD)はL,MおよびH群でそれぞれ,0.6%,3.6%および8.1%増加した。また,MとH群での薬物への応答はL群より有意に高かった(p<0.05,マン・ホイットニーのU検定)。腰椎測定の変動係数が1~2.5%に留まることから,3.6%およ ,3.6%および8.1%増加した。また,MとH群での薬物への応答はL群より有意に高かった(p<0.05,マン・ホイットニーのU検定)。腰椎測定の変動係数が1~2.5%に留まることから,3.6%およ び8.1%の増加は有意であると思われる。ラジオグラメトリによる中手骨のBMDと皮層の厚さの測定では,有意な変化はみられなかった。血清カルシウムはそれぞれの群で減少し,血清リンはMとH群で減少した。尿中カルシウム/クレアチニンが,H群では治療後12週目に,MとL群では治療後24と48週目に減少した。 それぞれの群で,血清25(OH)ビタミンDと1,25(OH)2ビタミンDが治 療48週目に減少した(p<0.05)。血清中の骨型アルカリホスファターゼが,HとM群で4週目に増加し,H群では48週目に減少した。尿中のヒドロキシプロリン,ピリジノリンおよびデオキシピリジノリンはそれぞれの群で有意に減少した。 各群の30~40%で,背部痛の改善がみられた。試験期間中を通じて,重篤な副作用はみられなかった。hPTH(1-34)の間欠的毎週投与によって,骨粗鬆 症で腰椎のBMDが増加し,骨粗鬆症治療に有用であることを示唆していた。 [296頁右欄10行ないし297頁左欄25行目]序説閉経後および退行期の骨粗鬆症を治療するためには,主にエストロゲン,ビスホスホネートおよびカルシトニンなどの骨吸収抑制剤に頼っている。ここに挙げた薬 剤を投与することによって骨密度(BMD)が増加するため,骨折予防は飛躍的に進歩したことから,骨形成の刺激によって,幾つかの骨吸収抑制剤の迅速かつ時には一時的な効果が補完されることが考えられ,骨吸収抑制剤の骨同化効果が長期間にわたり,退行期骨粗鬆症,特に低回転型の疾患に対して したことから,骨形成の刺激によって,幾つかの骨吸収抑制剤の迅速かつ時には一時的な効果が補完されることが考えられ,骨吸収抑制剤の骨同化効果が長期間にわたり,退行期骨粗鬆症,特に低回転型の疾患に対して注目すべき有効な治療となり得ることが期待できる。副甲状腺ホルモン(PTH)が骨形成促進作用を有す ることが動物とヒトで示されており,特に間欠的投与でその効果が認められている。 しかし,原発性副甲状腺機能亢進症でみられるように,骨が大量のPTHに持続的に曝されることによって線維性骨炎を発症する懸念がある。ヒトPTHのアミノ末端ペプチド1-34(hPTH(1-34))の100または200単位を皮下注射で単回投与した予備試験の結果によると,血清リンの下降,血清サイクリックAM Pの上昇,尿中のカルシウムとサイクリックAMP排泄の増加をはじめとする重要な代謝系に対する効果が示された。100または200単位を毎週投与すると,治療後26週目で腰椎BMDが有意に増加したが,5単位毎週投与では効果がなかった。 この結果を踏まえて本試験では,骨粗鬆症患者220名を対象として,hPTH (1-34)の50,100または200単位を毎週投与した時の効果をみるために,無作為化,前向き,二重盲検,多施設試験を実施した。主要評価項目は,二重エネルギーX線吸収測定法(DXA)を用いた腰椎BMDの評価とし,ラジオグラメトリによる中手骨皮質のBMD,および骨代謝回転の生化学的マーカーを副次評価項目とした。ここに挙げた濃度のhPTH(1-34)の1週1回投与が―これ までに検討されたことがない低濃度の間欠的投薬計画を意味するものだが―骨粗鬆 症治療に便益性をもたらすかどうかを検討した。 [297頁左欄27行ないし右欄42 までに検討されたことがない低濃度の間欠的投薬計画を意味するものだが―骨粗鬆 症治療に便益性をもたらすかどうかを検討した。 [297頁左欄27行ないし右欄42行目]試験対象71施設が参加した多施設試験を実施した。試験は,厚生省による委員会が提唱 した診断基準で骨粗鬆症と定義された年齢範囲が45から95歳の被験者220名を対象として実施した。このシステムは,単に骨粗鬆症を非外傷性脊椎骨折が存在する,または脊椎骨折が2箇所に存在するものとして定義するのではなく,複数の因子をスコア化することによって評価して骨粗鬆症を定義するものである。スコアの計が4より高い場合(骨粗鬆症と定義)をこの治験への組み入れ基準とした。日 本の大部分で,医療関係者が骨粗鬆症の診断に使用できる方法が未だに脊椎のX線撮影に限られていることから,X線撮影は骨粗鬆症の診断基準として実施せざるを得なかった。X線上の骨減少は,腰椎の側面X線写真で骨梁の菲薄化,つまり(1)横骨梁欠損による縦骨梁の明瞭化,(2)縦骨梁が粗となるおよび(3)縦骨梁の減少が認められた場合とした。X線上の骨減少は,BMDで若年成人の平均値から2 0%または2.5SDの減少に相当する。本試験では,たとえば,腰椎BMDの平均値がLunar社製DPXデンシトメーターで測定した時に0.736g/cm2,Hologic社製QDRデンシトメーターで測定した時に0.694g/cm2,Norland社製XRデンシトメーターで測定した時に0.624g/cm2を示す者を試験対象に含めた。なお,この基準は現在用いられている他の基準 と一致している。X線上の骨減少度がグレード1から3,またはBMDが若年成人の平均値から2.5SD未満の場合はスコア3とした。椎 を試験対象に含めた。なお,この基準は現在用いられている他の基準 と一致している。X線上の骨減少度がグレード1から3,またはBMDが若年成人の平均値から2.5SD未満の場合はスコア3とした。椎体骨折が1箇所の場合はスコア1,骨折が2箇所以上の場合はスコア2とした。大腿骨頸部骨折がある場合はスコア3とし,橈骨遠位端骨折がある場合はスコア1とした。骨量減少の原因となる骨軟化症,原発性副甲状腺機能亢進症および腎性骨異栄養症などを除外するた めに,骨粗鬆症の診断を支持する因子として,正常血清カルシウム,リンおよびア ルカリホスファターゼ値がスコア1であることとした。ただし,ひとつ以上の異常がある場合にスコア1を差し引いた。同様に,被験者が閉経前である場合には,スコア1を差し引いた。 血清クレアチニンが2mg/dlより高いかまたはBUNが30mg/dlより高い値を示し,腎機能の低下が示唆される被験者,過敏症の既往歴がある被験者ま たは自覚症状の自己評価の信頼性が疑われる被験者は除外した。今後の試験参加予定者それぞれに,0.003単位のhPTH(1-34)の皮内試験を実施した。 15分後に紅斑部が直径10mmを超える陽性結果を示した被験者は除外した。 他の薬物の効果とhPTH(1-34)の効果との混同を避けるために,骨代謝および骨粗鬆症の進行に影響すると思われる薬剤は試験開始3ヵ月前から自粛し, 試験期間中も投与をさし控えた。このような薬剤には,エストロゲン,カルシトニン,活性型ビタミンD,ビタミンK2,イプリフラボン,ビスホスホネートおよび同化ステロイドがある。 担当医師の判断によって必要な場合には,鎮痛薬および筋弛緩薬を投与した。理学療法および合併症に対する薬物は,患者の状態が許す限り,試 イプリフラボン,ビスホスホネートおよび同化ステロイドがある。 担当医師の判断によって必要な場合には,鎮痛薬および筋弛緩薬を投与した。理学療法および合併症に対する薬物は,患者の状態が許す限り,試験前も試験後も変 えることなく引き続き投与した。 試験開始に先立ち,hPTH(1-34)製剤の特質と起こりうる副作用を含む試験の重要性を参加予定者に詳細に説明し,口頭または書面にて被験者の同意を得た。本臨床試験は,それぞれの参加施設の施設内治験審査委員会から承認されたものである。 [297頁右欄43行ないし298頁左欄24行目]hPTH(1-34)(テリパラチド酢酸塩)の調製と投与方法旭化成工業株式会社により合成されたhPTH(1-34)の純度と生物学的効果を,国際標準のウシPTH(1-84)に対するラット腎臓の皮質膜によるサイ クリックAMPの生成を指標として評価したところ,3300単位/mgを得た。 各バイアルは50,100および200単位のテリパラチド酢酸塩を含むものとした。なお,これは約15,30および60μgのペプチドに相当した。1回のバッチから3個のロットを調整し,50,100および200単位を含むバイアルを作成した。このようにして調整することで,1種類の濃度を含む5000本のバイアルには,常にひとつのロットから由来するものを用いた。製剤は25℃で3年間安 定であった。バイアルの内容物は,無作為に抽出したサンプルについて中立機関で測定され,コントローラ(清水直容医師と山本浩一医師)によって3バイアルが識別不能であることを確認された。使用直前に,バイアル内容物を生理食塩水1mlで溶解したものを,48週間にわたり1週1回皮下注射した。 本試験のコントローラは,50, 一医師)によって3バイアルが識別不能であることを確認された。使用直前に,バイアル内容物を生理食塩水1mlで溶解したものを,48週間にわたり1週1回皮下注射した。 本試験のコントローラは,50,100および200単位のサンプルを102セ ット準備し,セット内で無作為に割付け(1,2および3と番号を割り付けた),それぞれのセットを参加施設に先着順に送付した。各セットは施設で開かれ,サンプル番号1,2および3を逐次患者に経時的に投与した。試験の二重盲検性を確実にするために,コードは試験終了まで鍵をかけて保管した。 予備試験の結果によると,hPTH(1-34)を100または200単位,2 6週間,1週1回投与したところ腰椎BMDが増加していた。そこで,試験期間を48週間に設定した。この期間は,骨折の危険性と不安が常にある患者を対象として通常の骨測定,血液と尿の採取を行っても脱落率が過度とならずに,十分な制御下で多施設試験を実施できる限界であると思われた。Schwietertらは,ヒトに対するPTH(1-84)5μg/kg投与の安全性についても報告してい る。 [298頁左欄25行ないし299頁左欄9行目]集積データ治療開始前のデータ。年齢,性別,閉経時の年齢,身長,体重,入院の有無また は歩行状況,一般病歴,hPTH(1-34)の抗原性の皮内テストの結果,骨粗 鬆症診断のためのスコア,既往歴,治験前の骨粗鬆症の治療および骨粗鬆症の合併症,試験期間中に投与された試験薬剤以外の薬物,非処方カルシウム製剤および乳製品について記録した。 自覚症状。骨粗鬆症による痛みを休息時の自発性疼痛と運動時の痛みに分類して, 治療後0,2,4,12,24および48週間目または試験終了時 処方カルシウム製剤および乳製品について記録した。 自覚症状。骨粗鬆症による痛みを休息時の自発性疼痛と運動時の痛みに分類して, 治療後0,2,4,12,24および48週間目または試験終了時に以下に示すグレードに従って評価した。休息時の痛みは,以下のとおりのグレードで表示した。 1:痛みなし,2:中等度の痛み,3:無視できないが耐えられる痛み,4:重度の耐え難い痛み。運動時の痛みは以下のとおりのグレードで表示した。1:痛みなし,2:中等度の痛み,3:運動を妨げる無視できない痛み,4:動けないほどの 重度の痛み。患者は,自身の痛みの度合いをアナログ尺度で自己評価した。 骨所見。(a)腰椎BMDの測定。治療後0,12,24および48週目または試験終了時に,骨塩量,腰椎(L2-4)の骨面積およびBMDをDXA(QDR(Hologic社),DPX(Lunar社)またはXR(Norland社))を用 いて前後方向を撮影することによって測定した。多数の参加施設で,適切な精度管理を維持するのが困難であった。各施設では,装置に付随の推奨に従って,BMD測定を日常的に毎日ファントムを用いて実施した。その結果,変動係数(CV)を1%から2.5%の範囲で維持できた。 患者の年齢が高いことから,脊椎BMDの前後方向の測定上,圧迫骨折とそれに 伴う変化に加えて,脊椎の退行性変化が重大な支障となった。この理由から,L2,L3またはL4の骨棘や圧迫変形などの脊椎の退行性変化を有する被験者全員を,薬物の効果の根拠となるデータから除外した。このため,脊椎BMD測定における組み入れ前の脱落率が高くなった。 (b)中手骨BMDの測定。非利き手側の第2中手骨のラジオグラメトリを実施す るために,前後方向の手のX線写真をファントムと一緒に, ,脊椎BMD測定における組み入れ前の脱落率が高くなった。 (b)中手骨BMDの測定。非利き手側の第2中手骨のラジオグラメトリを実施す るために,前後方向の手のX線写真をファントムと一緒に,治療0,12,24お よび48週後または試験終了時に撮影した。試験終了時に,71施設で撮影されたすべてのフィルムをコンピューター化されたデジタル画像処理を用いて,東洋検査センターにて測定した。ひとりの観察者が中手骨BMD(∑GS/D)を同一フィルムを用いて10回連続で測定した場合のデジタル画像処理法の精度は,CVが0. 59であり,同一処理を3人の観察者で実施した場合は1.47であった。同一被 験者の手のフィルムを4枚撮影した場合,測定は個々に実施され,CVは1.72であった。 (c)椎体骨折の評価。腰椎および胸部脊椎の側面X線写真は,それぞれL3とT8に焦点を合わせ,ひとりの放射線科医が椎体の圧迫骨折や変形を評価した。前縁高/後縁高の比率が25%以上減少および中央高/後縁高の比率が20%以上減少 した場合を,有意な変形と定義した。 生化学的パラメーター。治療開始前および治療後2,4,12,24および48週目または試験終了時に,血清中のカルシウム(Ca),リン(P),25(OH)ビタミンD(競合タンパク結合分析による測定),1.25(OH)2ビタミンD(ラ ジオリセプターアッセイによる測定),オステオカルシン,中間部PTH(ラジオイムノアッセイによる測定),総アルカリホスファターゼと骨型アルカリホスファターゼ,アルブミンおよび尿中のCa,P,ヒドロキシプロリン,ピリジノリン,デオキシピリジノリン(HPLCによる測定)とクレアチニンを日本最大の臨床検査会社SRLにて測定した。各施設で治療後0,12 ーゼ,アルブミンおよび尿中のCa,P,ヒドロキシプロリン,ピリジノリン,デオキシピリジノリン(HPLCによる測定)とクレアチニンを日本最大の臨床検査会社SRLにて測定した。各施設で治療後0,12,24,36および48週目ま たは試験終了時に,血球算定(RBC,WBCと血球分画,ヘマトクリット,ヘモグロビンおよび血小板),血清生化学的試験(GOT,GPT,A/G,BUN,クレアチニン,総コレステロール,CPK,Na,K,Clおよびグルコース)および尿検査(潜血,タンパク質,糖,ウロビリノーゲン,ビリルビンおよびpH)を実施した。 副作用と有害事象の調査。試験期間中の有害事象を記録し,詳細を検査した。総合的な経過の評価,重症度,治療および転帰に基づいて,有害事象を以下に示すグレードに分類した。(1)試験薬剤が原因のもの,(2)試験薬剤が原因と考えられるもの,(3)試験薬剤が原因とは考えにくいもの,(4)試験薬剤が原因ではないもの。副作用は暫定的に(1)から(3)を含むものとした。 統計解析患者群の背景は,カイ二乗検定にて,両側検定の危険率10%で評価した。測定値はマン・ホイットニーのU検定およびフィッシャーの直接確率法にて,両側検定の危険率5%で検定した。 [299頁10行ないし300頁左欄3行目]結果表1は,試験への参加が許可された被験者における治験組み入れ基準の詳細をまとめたものである。 試験に当初登録した被験者220名を無作為に二重盲検下で割り付け[50単位投与群(L)に73名,100単位投与群(M)に75名および200単位投与群(H)に72名],そのうち41名は骨粗鬆症の診断基準に適合せず,また試験前に投与されていた薬の休薬期間が不 付け[50単位投与群(L)に73名,100単位投与群(M)に75名および200単位投与群(H)に72名],そのうち41名は骨粗鬆症の診断基準に適合せず,また試験前に投与されていた薬の休薬期間が不十分であったため不適格とした。 正確なBMD測定を阻害する腰椎の退行性変化と圧迫変化を有する患者および指 定時間以外に測定した患者を除外したところ,不適格者にはさらに64名が含まれた。このため,腰椎BMDに及ぼす効果の分析は被験者115名で実施した。内訳はL群で39名,M群で38名およびH群で38名であった(表2)。被験者61名が,副作用,中途での心変わりにより試験を拒絶,合併症の悪化などの理由で試験を完了できなかったが,最初の3ヵ月以内に脱落しない限り,分析グループに含む ものとした。 被験者の治療開始時の特徴を各グループで比較したものを表3に示した。3群とも被験者が一様に分布していることを確認した。 [300頁左欄4ないし10行目]自覚症状 主として背部痛からなる自覚症状は,L群で被験者52名中21名(40%),M群で被験者60名中18名(30%)およびH群で被験者47名中17名(36%)に,中等度またはやや改善がみられた。群間に有意な差は認められなかった(表4)。 [300頁左欄11行ないし右欄6行目] 骨測定試験期間48週間中の腰椎BMDにおける変化を図1に示した。腰椎BMDは,試験開始時と比較して,治療後24と48週目に用量依存的に増加し,L,MおよびH群でそれぞれ0.6%,3.6%および8.1%であった。24週目と48週目でMとH群で増加の程度がL群より大きく,48週目ではM群よりH群の方が大 きかった(p<0.05)。年齢が64歳以下と65歳 れぞれ0.6%,3.6%および8.1%であった。24週目と48週目でMとH群で増加の程度がL群より大きく,48週目ではM群よりH群の方が大 きかった(p<0.05)。年齢が64歳以下と65歳以上,体重が49kg以下と50kg以上,閉経後10年未満,10から20年,20年以上,および脊椎骨折が0,1および2箇所以上を有するサブグループに被験者を分類して比較したところ,サブグループ間で薬物に対する応答は同程度であった。第2中手骨(皮質骨からなる)のX線写真上の骨密度には有意な差は何ら認められず,皮質骨と各群のX 線写真上の骨量減少度が変化せずに一定に保たれていることを示していた。L群で被験者3名,M群で5名およびH群で0名に椎体骨折が発生したが,各群間の差は有意ではなかった。 [301頁左欄1行ないし右欄4行目] 生化学的パラメーター 図2に示すように,血清Caは治療後2週目から減少し始め,4週目以降は治療開始前の基準値より有意に低かった。血清Pも治療後2週目に減少した。尿中Caは2週目から減少し,試験期間中を通じて基準値より低いままであった。尿中Pも減少した。血清25(OH)ビタミンDと1.25(OH)2ビタミンD値は,図3に示すように,各群で48週目に治療開始時よりやや減少した。図4に示すように, 骨型アルカリホスファターゼは,治療開始後4週目で治療開始時の値より高く,24週目と48週目ではH群のみ低かった。尿中へのピリジノリン,デオキシピリジノリンおよびヒドロキシプロリン排泄は,図5に示すようにL群とH群で24週目と48週目に治療開始時の値より減少した。 表5に示すように,各群で試験期間中,異常な試験結果が出現したが,いずれも 明白ではないか一過性のものであり, 図5に示すようにL群とH群で24週目と48週目に治療開始時の値より減少した。 表5に示すように,各群で試験期間中,異常な試験結果が出現したが,いずれも 明白ではないか一過性のものであり,試験薬剤が原因であるとは明示できなかった。 表6は治療中に発生した副作用をまとめたものである。29例で,被験者が幾つかの症状のため試験から脱落した。副作用の総数はhPTH(1-34)の用量が増加するのに合致して増加したものの,重篤な有害事象は認められなかった。 [301頁右欄5行ないし303頁右欄23行目]考察原発性副甲状腺機能亢進症では過剰量のPTHが持続的に分泌され,著明な骨,特に皮質骨の欠損を特徴とするものの,組織形態計測の結果によると海綿骨は比較的,良く保存されている。PTHはおそらく骨芽細胞活性と骨形成も刺激し,骨に 対して同化作用を及ぼすものと思われる。 動物試験で,PTHの同化作用が頻繁に確認されており,骨質の物理的な改善をすることが報告されている。このような同化作用は,N末端からアミノ酸をひとつ除去するだけで効果がほとんど消失することから,PTHのN末端部アミノ酸の全長に依存していると思われる。 海綿骨が増加することについては,一貫して報告されているが,皮質骨の応答は 不良である。間欠投与は,PTHの骨同化作用を生成に対してより効果的であると思われる。これまで,骨粗鬆症の治療には,主にエストロゲン,カルシトニンとビスホスホネートのような骨吸収抑制剤が投与されており,骨吸収を刺激する骨形成促進剤は低回転型骨粗鬆症に有効であると思われている。BMDの増加を予想をはるかに上回る程度に誘導する活性があるにも拘わらず,フッ化物に問題がない訳で はない。つまり,骨折発生 を刺激する骨形成促進剤は低回転型骨粗鬆症に有効であると思われている。BMDの増加を予想をはるかに上回る程度に誘導する活性があるにも拘わらず,フッ化物に問題がない訳で はない。つまり,骨折発生率を減少させることができずに骨痛などの副作用を惹き起こす。しかし,PTHは依然として骨形成促進剤の候補として有望視されている。 PTHを大量に投与すると,ヒトでもBMDの増加がみられたが,ヒトで好ましい効果を奏する間歇投与法は未解決の課題である。Reeveらが,骨粗鬆症患者12名を対象として多施設試験を実施したところ,hPTH(1-34)を7日間投 与し21日間休薬するというサイクルを16回繰り返す間欠投与によって,全身のCaがやや増加したがさまざまな部位のBMDでは有意な増加はみられなかったと報告している。連日投与は,持続点滴に比べると間欠的であり,好ましい影響がみられた。Reeveらによると,hPTH(1-34)約250単位を患者21名に6から24ヵ月間,連日投与したところ,重篤な副作用もみられず,血清アルカ リホスファターゼが15%増加し,著明な骨増加がみられた。Lindsayらは,ホルモン補充療法を受けている閉経後の女性17名を対象として,hPTH(1-34)25μgを連日皮下注射投与する3年の無作為化対照試験を実施し,その結果をコントロールとしてホルモン補充療法単独を投与した女性17名と比較した。 脊椎のBMDはPTH投与群で13.0%増加したが,コントロール群では有意な 増加はみられなかった。PTHは他の試験では,エストロゲンと共に投与して効果があった。 ビタミンD誘導体と併用してPTHの効果を増強することも検討されている。実際に,400-500単位のhPTH(1-34)を0.25μgの1,25(OH)2ビタミン と共に投与して効果があった。 ビタミンD誘導体と併用してPTHの効果を増強することも検討されている。実際に,400-500単位のhPTH(1-34)を0.25μgの1,25(OH)2ビタミンD3と一緒に投与すると,海綿骨で増加がみられた。カルシトニンと の併用投与も実施されている。Heschらは,hPTH(1-37)720-7 50単位を8週間連日投与し,同時にカルシトニンを2〜4,6〜8および8〜10日目に鼻腔内投与し,このサイクルを4回繰り返した。Hodsmanらは,800単位のPTHを連日,2ヵ月の間隔を置いて1ヵ月間投与するサイクルを繰り返し,この投薬サイクルを2年間続けたところ,腰椎BMDが8〜10%増加したことを認めている。 hPTH(1-34)の単位体重当たりの生物学的活性は試験間でばらつきがあるようである。Lindsayらの試験では,たとえば,hPTH(1-34)400単位(25μg)が使用されている。試験に用いられている調製法が異なっているため,hPTH(1-34)の投与量について本試験の結果を他の試験のものと比較することは容易ではないが,これまでの試験の多くに比べると,本試験で用 いられた週1回の間欠投与の方が,hPTH(1-34)の総投与量を明らかに少なく抑えられる。hPTH(1-34)が中手骨(ほとんどが皮質骨からなる)の骨密度を減少させることなく,腰椎BMD(主に海綿骨からなる)を,48週という比較的短期間で有意に用量依存性に増加させたことから,hPTH(1-34)による骨粗鬆症治療はきわめて将来有望であると思われる。 表1 本試験の参加者における組み入れ基準の詳細組み入れ基準 L群(50単位)M群 による骨粗鬆症治療はきわめて将来有望であると思われる。 主文 表1 本試験の参加者における組み入れ基準の詳細組み入れ基準 L群(50単位) M群(100単位) H群(200単位) 骨密度減少 骨萎縮 グレード1 グレード2 グレード3 不明 DXA DPX ≥0.831 <0.831 QDR ≥0.711 <0.711 不明 XR ≥0.701 <0.701 不明 椎体骨折数 ≥2 不明 大腿骨骨折数 ≥1 橈骨遠位端骨折数 ≥1 総スコア=<2 ≥5 表2 本試験にお ≥5 表2 本試験における各評価項目別の症例数 群総症例数脱落症状評価腰椎BMD評価中手骨BMD評価(副作用による) L (50単位) 73 12 (3) M (100単位) 75(10) H (200単位) 72 24 (16) 合計 220 61 (29) 表3 各群の治療開始時の背景比較 L 群(50 単位)M 群(100 単位)H 群(200 単位)χ2 検定 年齢(歳)70.2±9.84 (73)70.1±9.64 (75)71.7±10.78 (72) NS体重(kg)47.7±7.49 (73)49.2±7.54 (75)45.8±8.21 (72)NS身長(cm)148.2±8.01 (73) 148.9±7.77 (75) 147.3±6.97 (72) NS閉経後年数19.0±8.52 (73)18.8±8.35 (75)20.6±9.43 (72)NS椎体骨折数1.86±2.65 (62)1.62±1.89 (61)1.82±2.65 (55)NS腰椎BMD (g/cm2)DPX0.746±0.123 (13 椎体骨折数1.86±2.65 (62)1.62±1.89 (61)1.82±2.65 (55)NS腰椎BMD (g/cm2)DPX0.746±0.123 (13) 0.753±0.089 (10) 0.711±0.159 (11) NSQDR0.719±0.103 (19) 0.723±0.140 (17) 0.640±0.132 (19) NSXR0.637±0.115 (7) 0.680±0.130 (11) 0.556±0.064 (8) NS中手骨BMD (∑GS/D)1.875±0.350 (60) 1.917±0.404 (58) 1.850±0.446 (50) NS データは平均値±標準偏差、カッコ内は症例数 表4 自覚症状群 症例数中等度軽度不変悪化 U-検定 Fisher の 以上改善改善検定中等度以上L (50単位) 52 21 (40) 16 (31) 14 (27) 1 (2)M (100単位) 18 (30) 28 (47) 14 (23) 0 (0) NSNSH (200 単位) 47 17 (36) 21 (45) 9 (19) 0 (0)カッコ内の数値はパーセント図1 治療週数と腰椎BMD の変化率(平均±標準偏差)。 □はL 群(50 単位)、●はM 群(100 単位)、○はH 群(200 単位)のデータ。 aL 群の値との比較でp<0.05 の有意 図1 治療週数と腰椎BMDの変化率(平均±標準偏差)。□はL群(50単位)、●はM群(100単位)、○はH群(200単位)のデータ。aL群の値との比較でp<0.05の有意差、bM群の値との比較でp<0.05の有意差、マンホイットニーのU検定による*治療開始時との比較でp<0.05の有意差の有意な増加、マンホイットニーのU検定による 図2 治療週数と血清カルシウム(左)とリン(右)(平均±標準偏差)。□はPTH50単位(L群)、●はPTH100単位(M群)、○はPTH200単位(H群)のデータ。*治療開始時との比較でp<0.05の有意差、マンホイットニーのU検定による 図3 治療週数と血中25(OH)ビタミンD(左)と1,25(OH)2ビタミンD(右)(平均±標準偏差)。シンボルの表記は図2と同様。 図4 治療週数と血中骨型アルカリフォスファターゼ(平均±標準偏差)。シンボルの表記は図2と同様。 表5 被験者における治療期間中の臨床検査値異常L群(50単位)M群(100単位)H群(200単位)総症例数 臨床検査異常例数(%) (11%) (5%) (17%) 異常データ数 赤血球数の低下 分節核球上昇 リンパ球減少 好酸球減少 好塩基球減少 分節核球上昇 リンパ球減少 好酸球減少 好塩基球減少 ヘマトクリット低下 ヘモグロビン低下 血小板数減少 GOT上昇 GPT上昇 A/G低下 BUN上昇 総コレステロール上昇 CPK上昇 Naの下降 Kの上昇 Kの下降 Clの上昇 Clの下降 血糖上昇 尿潜血 尿蛋白 尿ビリルビン 図5 治療週数とクレアチニン補正後の尿中ピリジノリン(a)、デオキシピリジノリン(b)、ヒドロキシプロリン(c)血中骨型アルカリフォスファターゼ(平均±標準偏差)。シンボルの表記は図2と同様。 表6 被験者における治療期間中の副作用 L群(50単位) M群(100単位) H群(200単位) 総症例数 副作用発現例数a(%) 14 (3b) 14 (10b) 30 (16b)(19%) (19%)(42%) 重症度と件数 軽度 中等度 計 副作用発現例数a(%) 14 (3b) 14 (10b) 30 (16b)(19%) (19%)(42%)重症度と件数 軽度中等度計軽度中等度計軽度中等度計 8 6 14 13 10 23 19 18 37皮下出血 1 1全身潮紅 1 1顔面潮紅 1 1湿疹 1 1そう痒 1 1腰痛 1 1 1 1頭痛 1 1 2 3 3 2 2 4めまい 1 1 1 1 2 1 1悪心 3 1 4 5 2 7 9 6 15嘔吐 1 1 2 2 4腹痛 1 1 1 1おくび 1 1あくび 1 1口渇 1 1食欲不振 1 1熱感 口渇 食欲不振 熱感 発熱 脱力感 全身倦怠感 悪寒 眠気 臨床検査値異常を含む副作用による脱落症例数 (別紙3) 甲10文献の記載事項(抜粋)(表は末尾に一括して掲記した。) 要旨緒言骨粗鬆症と腎機能障害の罹患率はいずれも加齢とともに増加する。方法骨折予防試験(Fracture Prevention Trial:FPT)から得られたデータを使用して,骨粗鬆症と腎機能障害を併発する閉経後女性におけるテリパラチド[rh PTH(1-34)]の安全性と有効性を検討した。血清クレアチニン濃度が2.0mg/dl以下かつ血清副甲状腺ホルモン(PTH)濃度が正常であることを患者要件とし,患者はプラセボ,テリパラチド20μg/日または40μg/日を連日皮下注射する群に無作為に割り付けた。糸球体濾過量(GFR)はコッククロフト-ゴールト(Cockcroft-Gault)式を使用して推定した。ベースライン評価 ド20mcg/日または40mcg/日を連日皮下注射する群に無作為に割り付けた。糸球体濾過量(GFR)はコッククロフト-ゴールト(Cockcroft-Gault)式を使用して推定した。ベースライン評価に 基づいて患者の腎機能を,骨密度(BMD)解析およびI型プロコラーゲンアミノ末端伸長ペプチド(PINP)解析では,正常(GFR 80ml/分以上),軽度機能障害(GFR 50~79ml/分),中等度機能障害(GFR 30~49ml/分)と定義し,骨折解析では,正常(GFR 80ml/分以上)または機能障害(GFR 80ml/分未満)と定義した。 結果と結論正常な腎機能を有する患者と比較すると,腎機能障害を有する患者は高齢,低身長かつ低体重で,閉経後期間が長く,ベースラインにおける腰椎および大腿骨頸部のBMDが低かった。プラセボと比較すると,テリパラチドは各腎機能サブグループ内でPINP,腰椎および大腿頸部のBMDを有意に増加させた。これらの増加が腎不全によって変化したエビデンスはなかった(各治療-サブグルー プ交互作用p>0.05)。同様に,テリパラチドによる椎体および非椎体の骨折リ スクの低下は,正常な腎機能を有する患者と腎機能障害を有する患者の間で類似しており,有意差を認めなかった(治療-サブグループ交互作用p>0.05)。治療中に発生した腎臓に関連する有害事象の発生率は,腎機能が正常,軽度障害,中等度障害のサブグループいずれでの治療の割り付けでも一貫していた。テリパラチドにより誘導される平均GFRの変化は,ベースラインにおける腎機能の影響を受け なかった(正常,軽度機能障害または中等度機能障害のサブグループで治療-腎機能交互作用p>0.05)。テリパラチド20mcgまたは40mc GFRの変化は,ベースラインにおける腎機能の影響を受け なかった(正常,軽度機能障害または中等度機能障害のサブグループで治療-腎機能交互作用p>0.05)。テリパラチド20mcgまたは40mcgで治療を受けた患者はすべての腎機能区分で,投与4~6時間後の血清カルシウムが10.6mg/dl(正常上限値)を超える発生率がプラセボに対して増加したが,いずれの腎機能区分でもテリパラチド20mcg/日は,投与4~6時間後の血清カルシウ ムが11mg/dlを超える発生率の有意な増加には関連しなかった。 テリパラチド療法は尿酸上昇の発生率の増加と関連があり,その発生率は中等度の腎機能障害を有する患者およびテリパラチド40mcg/日投与を受けた患者で最も高かった。それでも,有害事象データは,腎機能が正常,軽度障害,中等度障害の患者がテリパラチド治療を受けた際の痛風または関節痛の発生率,腎結石症の 発生率の増加を示唆しなかった。 [60頁左欄1ないし20行目]緒言 骨粗鬆症は低骨量,骨強度の減少および骨の脆弱化を伴う慢性疾患である。米国だけでも約1000万人が罹患している。骨粗鬆症と腎機能障害の罹患率はいずれも加齢とともに増加する。大規模な疫学研究では,骨粗鬆症女性の85%が軽度から中等度の腎機能障害を有していた。それゆえ,腎機能障害を有する患者における骨粗鬆症治療薬の安全性および有効性に関する情報が必要とされている。 テリパラチドは閉経後の骨粗鬆症女性において,腰椎と大腿骨頸部の骨密度(B MD)を増加させ,椎体および非椎体骨折のリスクを低下させる。本稿の解析では,腎機能障害は骨粗鬆症女性の一般的な併存疾患であることを鑑み,加齢に関連した軽度[糸球体濾過量(GFR)50~7 MD)を増加させ,椎体および非椎体骨折のリスクを低下させる。本稿の解析では,腎機能障害は骨粗鬆症女性の一般的な併存疾患であることを鑑み,加齢に関連した軽度[糸球体濾過量(GFR)50~79ml/分]または中等度(GFR~49ml/分)の腎機能障害を有する女性におけるテリパラチドによる有害事象の発生およびテリパラチドに対するBMDと骨折減少の応答を検討した。 [60頁左欄21ないし48行目]方法 研究の被験者 骨折予防試験の方法および結果は既に論文発表されている。その概要を述べると,この二重盲検試験では,42~86歳の歩行可能な閉経後女性1,637人を,カルシウム(1,000mg)とビタミンD(400~1200IU)を連日補充しながら,プラセボ(n=544),テリパラチド20mcg/日(n=541),テ リパラチド40mcg/日(n=552)を皮下注射により連日自己投与する群に無作為に割り付けた。本研究への組み入れには,血清クレアチニンが2mg/dl以下かつその他の検査値が通常値または臨床的に有意な異常値ではないことが求められ,特定の要件として,血清カルシウム,血清内因性副甲状腺ホルモン(PTH)および尿カルシウムが正常範囲内であること,ベースラインにおける血清25-ヒ ドロキシビタミンDが正常下限値から正常上限値の3倍までの間にあることが挙げられた。また,現在または最近(無作為割付前の1年以内),骨代謝に影響を与える副甲状腺機能亢進症や甲状腺機能亢進症などの既往疾患がある患者は除外した。副甲状腺機能亢進症の診断は試験実施医師の判断で行い,正常な甲状腺機能は甲状腺刺激ホルモンの通常スクリーニング,または試験実施医師と本研究に関わる内科医 の見解の中で正常な甲状腺機能を十分 。副甲状腺機能亢進症の診断は試験実施医師の判断で行い,正常な甲状腺機能は甲状腺刺激ホルモンの通常スクリーニング,または試験実施医師と本研究に関わる内科医 の見解の中で正常な甲状腺機能を十分に確証するとした臨床検査パラメーターを組 み合わせて実証した。なお,テリパラチドへの曝露期間の中央値は19カ月,観察期間の中央値は21カ月であった。 [61頁左欄13ないし26行目]有害事象 研究期間中,有害事象およびそのモニタリングを行った。治療中に発生した有害事象は試験薬の投与開始後に初めて発現または悪化した有害事象として定義した。腎臓に関連する有害事象は全有害事象のサブセットとみなし,血尿,水腎症,腎機能異常,尿毒症,多尿症,糸球体炎,腎不全,急性腎不全,乏尿症,腎炎を含めた。 テリパラチドにより誘導されるカルシウムまたは尿酸の変化に起因する潜在的な臨床的影響を調査するため,痛風または関節痛及び腎結石症(腎結石,尿路結石)を示唆する有害事象の解析をさらに行った。 [61頁左欄27ないし38行目] 血清中のクレアチニン,投与4~6時間後のカルシウムおよび尿酸 血清サンプルをベースラインおよび投与開始後1カ月(n=1,492),3カ月(n=1,498),6カ月(n=1,501),12カ月(n=1,397),18カ月(n=1,161)の時点で試験薬の最終投与の約4~6時間後に採取した。スク リーニングにおいて2.0mg/dlを超える血清クレアチニン濃度を除外基準とした。いずれの来院時でも,投与4~6時間後の血清カルシウム濃度が10.6mg/dl超(2.65mmol/l,正常上限値),さらに11.0mg/dl超(2. 75mmol/l)の発生は報告された。また,いずれの来 の来院時でも,投与4~6時間後の血清カルシウム濃度が10.6mg/dl超(2.65mmol/l,正常上限値),さらに11.0mg/dl超(2. 75mmol/l)の発生は報告された。また,いずれの来院時でも,血清尿酸濃度が8.3mg/dl超(0.50mmol/l,正常上限値),さらに9.0mg /dl超(0.54mmol/l)の発生は報告された。 [61頁左欄39行ないし右欄2行目]糸球体濾過量 GFRはコッククロフト-ゴールト式を使用して推定した: 腎機能の区分は正常(GFR 80ml/分以上),軽度機能障害(GFR ~79ml/分),中等度機能障害(GFR 30~49ml/分),重度機能障害(GFR 30ml/分未満)とした。 [61頁右欄3ないし44行目]統計学的解析 ・・・モデル中のサブグループ(正常対腎機能障害)によるロジスティック回帰を使用して,ベースラインの腎機能状態が各治療群での骨折リスクに与える影響の評価も行った。本骨折解析においては,事象数が限られたので,腎機能の定義は正常(GFR 80ml/分以上)または機能障害(GFR 80ml/分未満)とした。 重度の腎機能障害(GFR 30ml/分未満)を有する女性は本解析には含めなかった。骨折リスクの低下は全試験集団において2種類の投与量で類似していたので,テリパラチド治療群は併合した。フィッシャーの正確検定を実施し,各腎機能サブグループ内で投与4~6時間後の血清カルシウム濃度(10.6mg/dl超または11.0mg/dl超)および血清尿酸濃度(8.3mg/dl超または9. 女性のクレアチニンクリアランス(ml/分)(140-年齢)(体重( の血清カルシウム濃度(10.6mg/dl超または11.0mg/dl超)および血清尿酸濃度(8.3mg/dl超または9. 女性のクレアチニンクリアランス(ml/分)(140-年齢)(体重(単位:kg))(0.85)(血清クレアチニン)(72kg) 0mg/dl超)の発生率に対する治療の比較を行った。 [61頁右欄45行ないし62頁左欄17行目]結果 人口統計学 ベースラインにおいて血清クレアチニンを測定した1,621人の患者のうち,736人(45.4%)が軽度,中等度または重度の腎機能障害を有していた。正常,軽度,中等度の腎機能障害と治療により層別化されたベースライン特性を表1に示 す。なお,重度の腎機能障害を有する患者のデータは表2に分けて示す。正常な腎機能を有する患者と比較すると,正常な腎機能を有する患者よりも軽度または中等度の腎機能障害を有する患者は高齢,低身長かつ低体重で,閉経後期間が長く,ベースラインにおける腰椎および大腿骨頸部のBMDが低かった(それぞれp>0. 05)。研究への組み入れ基準により,ベースラインにおける内因性血清PTH濃度 は正常であることが求められ,腎機能群間で有意な差はなかった。いずれの腎機能区分でも治療群間でベースライン特性の有意差は認められなかった。骨折リスクの曝露と観察の平均患者-年数は腎機能状態または治療による有意な差はなかった(p>0.05)。 [62頁左欄18行ないし63頁左欄3行目]骨折への有効性 正常な腎機能を有する患者(GFR 80ml/分以上)における観察の総患者-年数は,プラセボ群で461患者-年,併合したテリパラチド群では918人-年 であった。また,腎機能障害を有する患者(G 常な腎機能を有する患者(GFR 80ml/分以上)における観察の総患者-年数は,プラセボ群で461患者-年,併合したテリパラチド群では918人-年 であった。また,腎機能障害を有する患者(GFR 80ml/分未満)における 観察の総患者-年数は,プラセボ群で384患者-年,併合したテリパラチド群では726患者-年であった。 骨折所見を図1に示す。プラセボ治療を受けた患者間では,腎機能障害を有する患者の椎体骨折の発生率は正常な腎機能を有する患者に対して有意に大きかった(p<0.05)ものの,その増加傾向は非椎体脆弱性骨折ではわずかであった。 正常な腎機能を有する患者間および腎機能障害を有する患者間では,テリパラチド治療を受けた患者の椎体および非椎体骨折の発生率はプラセボ治療を受けた患者に対して低かった。プラセボ治療を受けた患者に対するテリパラチド治療を受けた患者の椎体および非椎体骨折の発生率の低下は,正常な腎機能を有する患者間および腎機能障害を有する患者間で統計学的な一貫性を示した(治療-サブグループ交互 作用p>0.05)。 軽度の腎機能障害を有する女性の椎体骨折の発生率は,テリパラチド治療を受けた患者で13/336(3.9%),プラセボ治療を受けた患者では33/182(18.1%)(p<0.01)であり,非椎体骨折の発生率は,テリパラチド治療を受けた患者で11/422(2.6%),プラセボ治療を受けた患者では15/226 (6.6%)(p<0.01)であった。また,中等度の腎機能障害を有する女性の椎体骨折の発生率は,テリパラチド治療を受けた患者で3/47(6.4%),プラセボ治療を受けた患者では4/17(23.5%)(p=0.05)であり,非椎体骨折はいずれの治療群でも発生しな する女性の椎体骨折の発生率は,テリパラチド治療を受けた患者で3/47(6.4%),プラセボ治療を受けた患者では4/17(23.5%)(p=0.05)であり,非椎体骨折はいずれの治療群でも発生しなかった。 [63頁左欄4行ないし64頁右欄5行目]BMDおよびPINPの応答 正常な腎機能,軽度または中等度の腎機能障害を有する患者における18カ月目での腰椎BMD(平均値)および12カ月目での大腿骨頸部BMD(平均値)のテリ パラチドに対する応答を図2に示す。プラセボと比較すると,テリパラチド20m cg/日,テリパラチド40mcg/日はいずれも正常な腎機能,軽度または中等度の腎機能障害を有する患者において平均腰椎BMDを有意に増加させた。また,テリパラチド20mcg/日,テリパラチド40mcg/日はいずれも正常な腎機能,軽度の腎機能障害を有する患者において平均大腿骨頸部BMDを有意に増加させた。テリパラチドによる腰椎BMDおよび大腿骨頸部BMDの増加は,腎機能サ ブグループ間で統計学的な一貫性を示した(治療-サブグループ交互作用p>0. 05)。 テリパラチドが誘導する骨形成の増加をベースラインから3カ月目までのPINP増加量の中央値によって評価した結果を図3に示す。正常な腎機能を有する患者(プラセボ,n=150;TPTD20,n=149;TPTD40,n=135), 軽度の腎機能障害を有する患者(プラセボ,n=95;TPTD20,n=91;TPTD40,n=98),中等度の腎機能障害を有する患者(プラセボ,n=12;TPTD20,n=12;TPTD40,n=14)でPINP濃度のアッセイを行った。プラセボと比較すると,テリパラチド20mcg/日および40mcg/日は3つの 害を有する患者(プラセボ,n=12;TPTD20,n=12;TPTD40,n=14)でPINP濃度のアッセイを行った。プラセボと比較すると,テリパラチド20mcg/日および40mcg/日は3つの腎機能サブグループすべてでPINP血清濃度を同様に有意に増加させ た(治療-サブグループ交互作用p>0.05)。 [64頁右欄6行ないし65頁右欄16行目]有害事象の発生 正常な腎機能,軽度または中等度の腎機能障害を有する患者の治療中に発生した腎臓に関連する有害事象の発生率を表3に示す。治療中に発生した腎臓に関連する有害事象の発生率は,ベースラインにおける腎機能障害の区分が正常,軽度,中等度の治療群いずれでも一貫していた。テリパラチドにより誘導される平均GFRの変化量はベースラインにおける腎機能の影響を受けなかった(正常,軽度機能障害ま たは中等度機能障害のサブグループで治療-腎機能交互作用p>0.05;表4)。 腎機能障害が,試験薬による治療中に少なくとも1回の高カルシウム血症(投与4~6時間後)または高尿酸血症を発症する頻度に与える影響を表5に示す。データは,正常範囲(血清カルシウムは10.6mg/dl,血清尿酸は8.3mg/dl)および正常範囲よりやや高い濃度(血清カルシウムは11.0mg/dl,血清尿酸は9mg/dl)を上回って上昇した事象のものである。テリパラチド2 0mcg/日で治療を受けた患者はすべての腎機能サブグループで,投与4~6時間後の血清カルシウムが10.6mg/dlを超えるが11mg/dlは超えない発生率がプラセボに対して有意に増加した。投与4~6時間後の血清カルシウムが10.6mg/dlを超えるが11mg/dlは超えない発生率は,テリパラチド治療を受 dlを超えるが11mg/dlは超えない発生率がプラセボに対して有意に増加した。投与4~6時間後の血清カルシウムが10.6mg/dlを超えるが11mg/dlは超えない発生率は,テリパラチド治療を受けた患者では,中等度の腎機能障害を有する患者の方が正常な腎機能を有 する患者に比べて有意に大きかった。投与4~6時間後の血清カルシウムが11mg/dlを超える発生率に有意性が認められないのは,中等度の腎機能障害を有する患者数が少ないためと思われる(少なかったせいかも知れない。maybedueto)。 テリパラチド40mcg/日で治療を受けた患者では,投与4~6時間後の血清カルシウムが10.6mg/dlを超え,さらに11mg/dlも超えて上昇するこ とが比較的一般的であり,この高カルシウム血症の発生率の増加は腎機能が正常,軽度障害,中等度障害の患者間で類似していた(同等であった。wassimilar)。 テリパラチドは用量依存的に高尿酸血症の発生率を増加させるようであった。プラセボと比較すると,テリパラチド20mcg/日で治療を受けた患者では,血清尿酸が8.3mg/dlを超える発生率が増加し,この発生率は中等度の腎機能障 害を有する患者で最大であった。プラセボと比較すると,テリパラチド20mcg/日で治療を受けた正常な腎機能または軽度の腎機能疾患を有する患者で血清尿酸が9mg/dlを上回って上昇する発生率は増加しなかったが,中等度の腎機能障害を有する患者では血清尿酸が9mg/dlを上回って上昇する発生率が有意に増加した。血清尿酸濃度が8.3かつ9mg/dlを上回る発生率は,テリパラチド 40mcg/日で治療を受けた患者の方がプラセボまたはテリパラチド20mcg /日で治療を受けた患者より 濃度が8.3かつ9mg/dlを上回る発生率は,テリパラチド 40mcg/日で治療を受けた患者の方がプラセボまたはテリパラチド20mcg /日で治療を受けた患者よりも比較的高く,この発生率の増加は中等度の腎機能障害を有する患者で最も顕著であった(表5)。高カルシウム血症および高尿酸血症の臨床的有意性を評価するために,痛風または関節痛の発生率および腎結石症の発生率をベースラインにおける腎機能の各区分内の治療群間で比較した。痛風または関節痛の発生率および腎結石症の発生率は治療群間での有意な差が認められなかった (表6)。 [65頁右欄29行ないし67頁左欄15行目]考察 骨粗鬆症患者の無作為サンプルでは85%が腎機能障害を有しているのに比べて,骨折予防試験の患者は45%しか腎機能障害を有していなかった。これは恐らく,血清クレアチニンが2.0mg/dlを超える患者を除外したためと思われる。正常な腎機能を有する患者と比較すると,本研究の腎機能障害を有する患者は高齢,低身長かつ低体重で,閉経後期間が長く,ベースラインにおける腰椎および大腿骨 頸部のBMDが低かった。これらの結果は,加齢が腎機能低下および骨量低下と関連するとしたこれまでの報告と一致する。本稿の研究でプラセボ治療を受けた患者においては,プラセボ治療を受けた正常な腎機能を有する患者と比較して腎機能異常を有する患者の方が,椎体骨折が有意に多く,より多くの非椎体骨折が発生する傾向を認めた。 本解析で取り組んだ基本的な疑問は,テリパラチドの効果が正常な腎機能を有する患者に対して腎機能障害を有する患者で一貫しているかどうかということである。 治療-腎機能交互作用に有意差が認められなかったことは,テリパラチドの効果が腎 は,テリパラチドの効果が正常な腎機能を有する患者に対して腎機能障害を有する患者で一貫しているかどうかということである。 治療-腎機能交互作用に有意差が認められなかったことは,テリパラチドの効果が腎機能区分間で統計学的な一貫性を示すエビデンスとして解釈した。椎体および非椎体脆弱性骨折の発生率を低下させるテリパラチドの効果は,正常な腎機能を有す る患者と腎機能障害を有する患者で統計学的な一貫性を示した。PINPで評価さ れる骨形成,腰椎および大腿骨頸部の骨密度測定により評価されるBMD増加へのテリパラチドの効果は,正常な腎機能を有する患者と軽度または中等度の腎機能障害を有する患者で統計学的な一貫性を示した。治療中に発生した腎臓に関連する有害事象の発生率は,腎機能の正常群,軽度および中等度の腎機能障害の区分いずれでの治療群でも一貫していた。テリパラチドにより誘導される平均GFRの変化量 はベースラインにおける腎機能の影響を受けなかった。 正常な腎機能,軽度または中等度の腎機能障害を有する患者では,プラセボ群よりもテリパラチドで治療した患者の方が投与4~6時間後の血清カルシウム濃度が10.6mg/dlを超える発生率が高かった。全試験集団で,投与4~6時間後の血清カルシウム濃度が少なくとも1回10.6mg/dlを超える発生率はプラ セボ群で2%,テリパラチド20mcg/日群で11%,テリパラチド40mcg/日群で28%であった。テリパラチド20mcg/日で治療を受けた患者では,投与4~6時間後の血清カルシウム濃度が10.6mg/dlを超える発生率は,中等度の腎機能障害を有する患者の方が正常な腎機能を有する患者に対して有意に高かった。テリパラチド20mcg/日で治療を受けた患者では,投与4~6時間 濃度が10.6mg/dlを超える発生率は,中等度の腎機能障害を有する患者の方が正常な腎機能を有する患者に対して有意に高かった。テリパラチド20mcg/日で治療を受けた患者では,投与4~6時間 後の血清カルシウムの軽度(10.6mg/dlを超えるが11mg/dlは超えない)の上昇が最も発生した(投与後4~6時間後の血清カルシウムの上昇が発生したほとんどは,軽度のものであった(10.6mg/dlを超えるが,11mg/dl以下)。Mostoccurrencesofelevated 4-6hpostdoseserumcalciuminpatientstreatedwithteriparatide 20 mcg/daywere mild(>10.6 mg/dlbut≤11.0 mg/dl).)。骨折 予防試験では,投与4~6時間後の血清カルシウムの上昇と有害事象との関連はなく,投与16時間以後に採取したサンプルの血清カルシウム測定で上昇が認められたのはテリパラチド20mcg/日群,プラセボ群それぞれで1人の患者のみであった。テリパラチド注射後に見られる血清カルシウムの一時的な上昇はPTHの腎臓に対する既知の作用と一致している。 [67頁右欄39行ないし68頁左欄6行目]結論として,軽度または中等度の腎機能障害を有するものの内因性PTHレベルは正常である患者がテリパラチド治療を受けた際に有害事象の増加は観察されず,BMDと骨折減少の応答性は類似していることに注目した。ベースラインにおける腎機能に関係なく,テリパラチド治療患者は投与4~6時間後の血清カルシウムが 正常範囲の10.6mg/dlを超える発生率が増加したものの,テリパラチド20mcg/日投与群では,投 ラインにおける腎機能に関係なく,テリパラチド治療患者は投与4~6時間後の血清カルシウムが 正常範囲の10.6mg/dlを超える発生率が増加したものの,テリパラチド20mcg/日投与群では,投与4~6時間後の血清カルシウムの測定値の上昇は通常11mg/dl未満であった。テリパラチド療法は尿酸上昇の発生率の増加と関連があり,その発生率は中等度の腎機能障害を有する患者およびテリパラチド40mcg/日群の患者で最も高かった。いずれの腎機能区分または試験薬群において も,痛風,関節痛,腎結石症のリスク増加のエビデンスは存在しなかった。重度の腎不全患者,急性または慢性の透析を受けている患者,移植腎が機能している患者,腎不全患者で内因性PTHの上昇が認められる患者におけるテリパラチドの安全性と有効性に関するデータは得られていない。 (別紙4) (別紙5)
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