平成14年1月31日宣告平成13年(わ)第632号大麻取締法違反,麻薬及び向精神薬取締法違反被告事件平成13年(わ)第751号大麻取締法違反,麻薬及び向精神薬取締法違反(変更後の訴因大麻取締法違反,国際的な協力の下に規制薬物に係る不正行為を助長する行為等の防止を図るための麻薬及び向精神薬取締法等の特例等に関する法律違反,関税法違反)被告事件判決 主文 被告人を懲役11年及び罰金750万円に処する。 未決勾留日数中160日をその懲役刑に算入する。 その罰金を完納することができないときは,金2万円を1日に換算した期間被告人を労役場に留置する。 押収してあるビニール袋入り大麻片2袋(平成13年押第212号の1,4),チャック付きポリ袋入り大麻塊2袋(同押号の2,3),チャック付きポリ袋入り麻薬(MDMA)錠剤19袋(同押号の5ないし19,21ないし24),チャック付きポリ袋入り麻薬(MDMA)粉末1袋(同押号の20)を没収する。 被告人から金1913万2000円を追徴する。 理由 (罪となるべき事実)被告人は,第1 みだりに,営利の目的で,麻薬であるN・α-ジメチル-3・4-(メチレンジオキシ)フェネチルアミン(別名MDMA)あるいはその塩類(以下,「MDMA等」という)を輸入する意思をもって,平成12年3月21日ころから平成13年2月24日ころまでの間,別紙1犯罪事実一覧表記載のとおり,前後10回にわたり,麻薬であるMDMA等として取得した錠剤を所携のバッグ内等に隠匿携帯した上,航空機に搭乗して日本国内の空港に到着し,前記錠剤を隠匿したまま同航空機から降り立つなどして,麻薬であるMDMA等として取得した錠剤を本邦に輸入したほか,大麻及び麻薬を本邦に輸入しようと企て,同年4月2日,ドイツ連 本国内の空港に到着し,前記錠剤を隠匿したまま同航空機から降り立つなどして,麻薬であるMDMA等として取得した錠剤を本邦に輸入したほか,大麻及び麻薬を本邦に輸入しようと企て,同年4月2日,ドイツ連邦共和国ベルリン市内において,大麻880.1グラム(平成13年押第212号の25ないし27,30ないし34,36,37はその鑑定残量)及び麻薬であるN・α-ジメチル-3・4-(メチレンジオキシ)フェネチルアミン(別名MDMA)の塩酸塩を含有する錠剤5121錠(合計1503.688グラム;平成13年押第212号の28,29,35はその鑑定残量)を入れた段ボール箱1箱を航空小包郵便物として同市内の郵便局から福岡県久留米市a町b番地のcde号の当時の被告人方宛に発送し,同月5日午後2時49分ころ,f便で千葉県成田市g字hi番地のjk空港に到着させた上,情を知らない同空港関係業者をして,同航空機内からこれを取り降ろさせて本邦内に持ち込み,大麻及び麻薬を本邦に輸入するとともに,引き続いて前記大麻及び麻薬を福岡市l区mn番o号p郵便局に搬入させ,同月6日午後2時45分ころ,同郵便局特殊郵便課国際郵便係通関検査室において,通関検査を受けるに際し,関税定率法上の輸入禁制品である前記大麻及び麻薬を隠匿したままこれを輸入しようとしたが,q税関支署係官に発見されたためその目的を遂げず,もって,営利の目的で,大麻及び麻薬であるN・α-ジメチル-3・4-(メチレンジオキシ)フェネチルアミンの輸入及び麻薬であるMDMA等として取得した錠剤の輸入を併せてすることを業とした。 第2 平成13年4月13日,前記の当時の被告人方において,大麻3.188グラム(平成13年押第212号の1ないし4はその鑑定残量)並びに麻薬であるN・α-ジメチル-3・4-(メチレンジオキシ)フェネチ 平成13年4月13日,前記の当時の被告人方において,大麻3.188グラム(平成13年押第212号の1ないし4はその鑑定残量)並びに麻薬であるN・α-ジメチル-3・4-(メチレンジオキシ)フェネチルアミン(別名MDMA)の塩酸塩を含有する錠剤435錠及び同様の粉末(合計142.357グラム;平成13年押第212号の5ないし24はその鑑定残量)を,みだりに所持した。 (証拠の標目)(略)(事実認定の補足説明及び弁護人の主張に対する判断)第1 争点判示第1の国際的な協力の下に規制薬物に係る不正行為を助長する行為等の防止を図るための麻薬及び向精神薬取締法等の特例等に関する法律(以下,「麻薬特例法」という。)違反,関税法違反の事実について,弁護人は,(1)①判示第1の事実にかかる公訴事実において「麻薬様の錠剤」とする点はいかなる麻薬であったかの特定を欠いており,結局,訴因の特定を欠いている,②「麻薬様の錠剤」が麻薬であるとの証拠は被告人の自白以外に補強証拠がない,③被告人は,鞄,雑貨等の輸入販売を業としていたものであり,大麻及び麻薬並びに麻薬としての錠剤の各輸入を併せて業としたとはいえないとの各理由から被告人は無罪である,(2)仮に有罪であったとしても,被告人の供述調書は取調官の誤導によるもので信用性がなく,被告人が輸入した麻薬様の錠剤の数量は公訴事実よりも少ないものである旨主張し,被告人も,(2)については,これに沿うような供述をしているので,以下検討する。 第2 弁護人の主張(1)についてまず,①の点については,弁護人指摘の「麻薬様の錠剤」との部分は,麻薬特例法8条1項にいう「規制薬物として交付を受け,又は取得した薬物その他の物品」を摘示したものであることは明らかであって,訴因の特定に欠けるところはない。 また,②の点についても,麻薬 部分は,麻薬特例法8条1項にいう「規制薬物として交付を受け,又は取得した薬物その他の物品」を摘示したものであることは明らかであって,訴因の特定に欠けるところはない。 また,②の点についても,麻薬特例法8条1項にいう「規制薬物として」とは,規制薬物ではない薬物その他の物品(規制薬物であることの証明のない場合を含む。)の輸入等の行為に及んだ行為者が,その行為時に,当該薬物その他の物品を規制薬物であると認識していることをいうものである上,被告人の供述は,別紙2振込入金並びに荷物配送一覧表(司法警察員A作成の資料作成に関する捜査報告書謄本〔甲79〕添付の振込入金並びに荷物配送一覧表に同じ。以下,「振込入金等一覧表」という。)記載の被告人名義の銀行口座への入金状況,rレールゴーサービスの利用状況,被告人の出入国の状況などの客観的事実によく符合していることに加えて,被告人が平成13年4月2日ドイツ連邦共和国ベルリン市内から被告人方宛に発送した航空小包郵便物から現にMDMAが発見されたことなどからすれば,被告人の供述の真実性は十分保障されているということができるのであって,補強証拠に欠けるところはないというべきである。 さらに,③の点についても,被告人は,判示のとおり,平成12年3月21日ころから平成13年4月5日までの間に,前後11回にわたって,輸入後に譲渡益を得ることを目的として,MDMAとしての錠剤並びにMDMA及び大麻の各輸入を行ったのであるから,前記各輸入を「業とした」ものであることは明らかである。そして,「業とした」といえるか否かは,その行為が客観的にみて営業行為と評価できるものであるか否かが問題となるのであって,被告人に他に収入があったとしても,被告人が前記各輸入を「業とした」ものであるとの前記認定を左右するものではない。 以上の が客観的にみて営業行為と評価できるものであるか否かが問題となるのであって,被告人に他に収入があったとしても,被告人が前記各輸入を「業とした」ものであるとの前記認定を左右するものではない。 以上の次第であって,弁護人の主張(1)は採用できない。 第3 弁護人の主張(2)について 1 被告人は,捜査段階及び第1回公判においては,麻薬として取得した錠剤の輸入量については,判示第1に係る公訴事実のとおりである旨供述していたものの,第3回公判における被告人質問においては,前記輸入量は,被告人名義の銀行口座の入金状況や渡航の日程から輸入量を割り出したものに自己使用分やBへの譲渡分を加えたものであるところ,この自己使用分やBへ譲渡した分については,正確な記憶がない旨供述するに至り,弁護人も,被告人の捜査官に対する供述調書は,誤導によるものであって,信用性がない旨主張する。 2 そこで,検討するに,関係各証拠により認められる被告人名義の銀行口座への入金状況,rレールゴーサービスの利用状況,被告人の出入国の状況などは,別紙2振込入金等一覧表記載のとおりであるところ,別紙1犯罪事実一覧表番号2ないし9の「麻薬として取得した錠剤の数量」欄記載のとおりの輸入量については,別紙2振込入金等一覧表記載の客観的事実から裏付けられているものとみることができる。また,別紙1犯罪事実一覧表番号1の「麻薬として取得した錠剤の数量」欄についても,被告人が,平成12年4月下旬と同年5月下旬に,1000錠ずつ自称Cに渡したところ,1錠1500円の単価を値切られ,2回とも140万円を受け取った記憶が鮮明に残っているので,2000錠を自称Cに渡したことは間違いない旨供述しているところ(乙15),その内容は,関係証拠により認められる被告人名義の郵便貯金口座に,平成12年5月1日に1 取った記憶が鮮明に残っているので,2000錠を自称Cに渡したことは間違いない旨供述しているところ(乙15),その内容は,関係証拠により認められる被告人名義の郵便貯金口座に,平成12年5月1日に110万円,同月18日に130万円の入金がされている事実と符合していると判断される。さらに,別紙1犯罪事実一覧表番号10の「麻薬として取得した錠剤の数量」欄については,被告人は,別紙1犯罪事実一覧表8の渡航から3回にわたり1万錠ずつ買い付けた旨供述するとともに,新幹線のダイヤが乱れていたため,普段利用しているrのレールゴーサービスの利用をあきらめ,知人を介して,6000錠を自称Cと現金取引し,残りの4000錠のうち2000錠をBに渡し,2000錠は,今回の事件が発覚して逃走中に,東京で自称Cに渡した旨具体的に譲渡の状況を供述している(いずれも乙15)ことに加えて,前記のとおり,別紙1犯罪事実一覧表番号8及び9の「麻薬として取得した錠剤の数量」欄の各1万錠について客観的事実の裏付けがあることをも併せ考えれば,この点についての被告人の供述は十分信用できると判断される。 3 他方,判示第1に係る公訴事実中別紙1犯罪事実一覧表番号1,3ないし7の各「麻薬として取得した錠剤の数量」欄記載の数量を超える部分については,本件各証拠関係の下で,これを認定することには合理的疑いが残ると言わざるを得ず,結局,別紙1犯罪事実一覧表の限度で認定するのが相当であると判断した。 (法令の適用)罰条第1の行為中大麻及び麻薬並びに麻薬として取得した錠剤の各輸入を併せて業とした点について国際的な協力の下に規制薬物に係る不正行為を助長する行為等の防止を図るための麻薬及び向精神薬取締法等の特例等に関する法律(以下,「麻薬特例法」という。)5条1号,2号,麻薬及び向精神薬 ついて国際的な協力の下に規制薬物に係る不正行為を助長する行為等の防止を図るための麻薬及び向精神薬取締法等の特例等に関する法律(以下,「麻薬特例法」という。)5条1号,2号,麻薬及び向精神薬取締法65条2項,1項1号,2条1号,別表第1第75号,76号,麻薬,向精神薬及び麻薬向精神薬原料を指定する政令1条21号,大麻取締法24条2項,1項関税法上の輸入未遂の点について関税法109条3項,1項,関税定率法21条1項1号第2の行為中大麻所持の点について大麻取締法24条の2第1項麻薬所持の点について麻薬及び向精神薬取締法66条1項科刑上一罪の処理いずれも刑法54条1項前段,10条(それぞれ1罪として重い,第1の行為については大麻及び麻薬並びに麻薬として取得した錠剤の各輸入を併せて業とした罪の刑で,第2の行為については麻薬所持の罪の刑で,各処断)刑種の選択第1の罪有期懲役刑及び罰金刑を選択併合罪加重懲役刑につき,刑法45条前段,47条本文,10条(重い判示第1の罪の懲役刑に刑法14条の制限内で法定の加重)未決勾留日数の算入刑法21条(懲役刑に算入)労役場留置刑法18条没収大麻につき大麻取締法24条の5第1項本文麻薬につき麻薬及び向精神薬取締法69条の3第1項本文追徴麻薬特例法13条1項前段,11条1項1号訴訟費用の不負担刑事訴訟法181条1項ただし書(量刑の理由) 1 本件は,判示のとおり,被告人が,平成12年3月21日ころから平成13年4月5日までの間,前後11回にわたって,営利の目的で, 担刑事訴訟法181条1項ただし書(量刑の理由) 1 本件は,判示のとおり,被告人が,平成12年3月21日ころから平成13年4月5日までの間,前後11回にわたって,営利の目的で,大麻及び麻薬の輸入並びに麻薬として取得した錠剤の輸入を併せてすることを業とするとともに,同年4月6日,関税定率法上の輸入禁制品である大麻及び麻薬を輸入しようとしたが,その目的を遂げず(第1),同年4月13日,当時の被告人方において,大麻及び麻薬を所持した(第2)という,麻薬特例法違反,関税法違反,麻薬及び向精神薬取締法違反,大麻取締法違反の事案である。 2 まず,第1についてみると,被告人は,Dと称するアムステルダムの麻薬バイヤーと知り合いであること及びCと称する東京方面に住む外国人から麻薬の輸入の依頼があったことを奇貨として,事業資金として借りた負債の返済などのために,自称Dからの仕入額と自称Cに対する譲渡額との差益を得ることを目的として,麻薬や大麻といった規制薬物の害悪を顧みようともせず,反復継続して行う意思を持って,計画的に,1年以上もの間,前後11回にわたって,犯行を敢行したもので,輸入した大麻が約880グラム,輸入した麻薬が5000錠以上(1500グラム以上),輸入した麻薬として取得した錠剤が5万錠以上にのぼるなど,結果も重大で,犯情は極めて悪質である。 近年,麻薬や大麻を含む規制薬物の蔓延が深刻な社会問題となり,その厳重な取り締まりが社会的要請となっていることからすれば,本件のような営利目的での規制薬物及び規制薬物としての物品を併せて輸入することを業とした事犯に対しては,一般予防の見地からも厳罰をもって臨むのが相当と思料される。 3 また,第2についてみると,被告人は,2,3年くらい前にMDMAを,1年くらい前に大麻を,それぞれ初め ることを業とした事犯に対しては,一般予防の見地からも厳罰をもって臨むのが相当と思料される。 3 また,第2についてみると,被告人は,2,3年くらい前にMDMAを,1年くらい前に大麻を,それぞれ初めて使用して以来,MDMAと大麻の魅力に取り憑かれ,判示第1の犯行の際に併せて自己使用分をも持ち帰るなどする中で,本件犯行に及んだものであって,被告人のMDMAや大麻等に対する親和性には相当根深いものがあるとみられ,再犯のおそれもないとはいえない。 4 そうすると,被告人の刑事責任は相当に重いというべきである。 5 他方,被告人は,第2の事実については,一貫してこれを認め,第1の事実についても,逮捕直後は否認していたものの,その後これを認めるに至ってからは,大筋においては一貫してこれを認めているのであって,事案解明に少なからぬ役割を果たしたものと認められること,被告人に前科はないこと,本件が発覚した後に離婚した被告人の元妻が情状証人として出廷し,被告人の社会復帰後は復縁したいとの意向を示していることなど,被告人のために酌むことのできる事情も認められる。 6 そこで,これら諸般の事情を総合考慮し,被告人を主文の懲役刑に処するとともに,営利目的での薬物等輸入事犯が経済的に引き合わないことを知らしめるため,相応の罰金刑を併科することとした次第である。 7 なお,被告人は,自称Cに譲渡することを予定して第1の輸入に及んだものであるから,自称Cに対する譲渡額6092万2000円(s銀行t支店に開設された被告人名義の普通口座に,平成12年3月21日以降,E及びF名義で入金された5412万2000円〔甲74〕,平成12年4月下旬及び5月中旬に被告人が自称Cから直接受領した各140万円,平成13年3月8日ころ,Gを介して,自称Cから受領した400万円の合計額)と自 金された5412万2000円〔甲74〕,平成12年4月下旬及び5月中旬に被告人が自称Cから直接受領した各140万円,平成13年3月8日ころ,Gを介して,自称Cから受領した400万円の合計額)と自称Dからの仕入額4179万円(1錠700円で,約5万9700錠購入)との差額1913万2000円を,被告人が第1の輸入の報酬として得た財産とみるのが相当であるが,既に費消しており没収することができないので,その価額を追徴することとした。 8 よって,主文のとおり判決する。 (検察官壬生隆明,国選弁護人大原圭次郎各出席)(求刑-懲役15年及び罰金1000万円,没収,追徴5412万2000円)平成14年1月31日福岡地方裁判所第1刑事部裁判長裁判官谷敏行裁判官家令和典裁判官古庄研
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