主文 被告人を懲役3年に処する。 この裁判が確定した日から5年間その刑の執行を猶予する。 押収してある五千円札ようのもの1枚(平成14年押第8号の1)及び五千円札ようのもの7枚(同号の2)を没収する。 理由 (罪となるべき事実)被告人は,第1 平成13年12月15日午後9時ころから同日午後10時20分ころまでの間,広島県三原市ab丁目c番d号の有限会社A事務所内において,行使の目的をもって,パーソナルコンピューター,カラースキャナー及びカラープリンター等を利用して,通用する金額五千円の日本銀行券8枚(平成14年押第8号の1及び2)を偽造した上,同日午後11時10分ころ,同市e町f番地gの株式会社B生コンプラント材料置場に駐車中の軽四輪乗用自動車内において,C(昭和h年i月j日生,当時15歳)に対し,淫行の対価等として,その偽造に係る金額五千円の日本銀行券8枚を,真正な通貨のように装って交付して行使した第2 同日午後11時15分ころから同日午後11時35分ころまでの間,同所に駐車中の同車内において,前記Cが18歳に満たない児童であることを知りながら,同児童に対し,現金2万円の対償の供与を約束して,同児童の性器にバイブレーターを挿入し,同児童をして口淫させ,自己の陰茎を同児童の性器に押し付けるなどの性交類似行為をし,もって児童買春をしたものである。 (法令の適用)罰条判示第1の行為通貨偽造の点包括して刑法148条1項同行使の点包括して同条2項,1項判示第2の行為児童買春,児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律4条科刑上一罪の処理判示第1の罪について,刑法54条1項後段,10条(一罪として犯情の重 ,1項判示第2の行為児童買春,児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律4条科刑上一罪の処理判示第1の罪について,刑法54条1項後段,10条(一罪として犯情の重い偽造通貨行使の罪の刑で処断)刑種の選択判示第1,第2の罪について,それぞれ所定刑中有期懲役刑を選択併合罪の処理刑法45条前段,47条本文,10条(重い判示第1の偽造通貨行使の罪の刑に刑法14条の制限内で法定の加重)刑の執行猶予刑法25条1項没収刑法19条1項1号,2項本文訴訟費用の不負担刑事訴訟法181条1項ただし書き(量刑の理由)本件は,被告人が,児童買春の対価として用いることを目的に,パーソナルコンピューターを利用して,カラースキャナーを用いて読み込んだ真正な日本銀行券の画像情報をカラープリンターを用いてプリントアウトするという方法によって金額五千円の日本銀行券8枚を偽造し,これを当時15歳の被害児童に交付した上,同児童に対し性交類似行為をしたという通貨偽造,同行使及び児童買春の事案である。 被告人は,勤務先での使い込みが原因で平成13年5月に職を失って以後,失業保険や知人らからの援助で生活をしていた者であるところ,同年12月,しばしば利用していたインターネット上のいわゆる「出会い系サイト」で被害児童と知り合い,淫行の約束を取り付けたものの,所持金がなく,また,暗い場所で渡せば気付かれないと考えて,偽造通貨を淫行の対価に用いることとし,その際,既に同年8月に本件と同様の方法で偽造し保管していた偽造通貨が変色のため使用に耐える状態でなかったことから,新たに判示第1の通貨偽造の行為に及んだものであって,犯行に至る経緯に酌むべきところはない。そして,その犯行態様も,コンピューターに関する知識を悪用し, 色のため使用に耐える状態でなかったことから,新たに判示第1の通貨偽造の行為に及んだものであって,犯行に至る経緯に酌むべきところはない。そして,その犯行態様も,コンピューターに関する知識を悪用し,知人が経営する会社の事務所内において,知人らの眼前で,何らためらうことなく偽造を敢行した上,暗い自動車内において被害児童に偽造通貨を交付したという悪質なものである。本件偽造通貨は,一見したところは真券と見まごうほどのものであって,実際に,情を知らない被害児童によって買物の代金等に使用され,買物店の従業員にも一旦は受領されており,その先さらに流通する危険もあったものである。そして,本件偽造と同様の手法による通貨の偽造は,コンピューター関連機器が普及した現在,模倣される危険性が高く,本件偽造行為が社会に与える影響を看過することはできない。 また,被告人は,被害児童が中学生であることを認識しながら,判示第2の行為に及んだものであり,その動機は,酌量の余地がなく,そして,被告人の犯行が,成長過程にある被害児童の心身に有害な影響を与えたことは明らかである。 そうすると,被告人の刑事責任を軽視することはできず,被告人を実刑に処することも十分に考えられるが,他方,本件偽造にかかる日本銀行券は,合計8枚と比較的少なく,被害児童から交付を受けた店の従業員が直後に偽造通貨であると気付いたことで,結果的にではあるがその後の流通を免れていること,被告人は,本件各犯行により逮捕されて以後現在まで身柄を拘束され,捜査及び公判の中で,本件各犯行の責任を認識し,今後の更生に向けた言葉を述べていること,前科がないこと,本件公判に情状証人として出廷した被告人の母や,被告人の雇用を申し出ている運送会社の支店長など,被告人の今後の更生を支える人も存在していることなど被告人にとって 葉を述べていること,前科がないこと,本件公判に情状証人として出廷した被告人の母や,被告人の雇用を申し出ている運送会社の支店長など,被告人の今後の更生を支える人も存在していることなど被告人にとって有利に斟酌すべき事情も認められる。 したがって,以上の諸事情を総合考慮して,被告人に対しては,今回に限り刑の執行を猶予し,社会内における更生の機会を与えるのが相当であると認め,主文のとおり判決する。 (公判出席検察官脇田純彦,同国選弁護人成田学,求刑懲役4年・没収)平成14年5月29日広島地方裁判所福山支部裁判長裁判官加藤誠裁判官森一岳裁判官日比野幹
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