- 1 -平成31年2月14日判決言渡平成30年(行コ)第39号保険医療機関指定取消処分取消請求控訴事件(原審大阪地方裁判所平成25年(行ウ)第137号) 主文 1 本件控訴を棄却する。 2 控訴費用は,控訴人の負担とする。 事実及び理由 第1 控訴の趣旨 1 原判決を取り消す。 2 近畿厚生局長が控訴人に対して平成25年6月20日付けでした,控訴人が開設する医療法人A会B病院(旧名称)につき保険医療機関の指定を同年10月1日をもって取り消す旨の処分を取り消す。 3 訴訟費用は,第1,2審とも,被控訴人の負担とする。 第2 事案の概要以下で使用する略称は,特に断らない限り,原判決の例による。 1 控訴人の請求と裁判の経過本件は,医療法人である控訴人(平成29年2月1日に医療法人A会から医療法人C会に名称変更)が,平成25年6月20日付けで,近畿厚生局長から,控訴人が開設する本件病院(医療法人A会B病院。現在の名称は医療法人C会B病院である。)につき,健康保険法(平成25年法律第112号による改正前のもの。以下同じ。)80条1号,2号,3号及び6号に該当することを理由として,保険医療機関の指定を取り消す旨の処分(本件処分)を受けたため,被控訴人を相手に,本件処分の取消しを求めている事案である。 原審は,本件請求を棄却した。 これを不服として,控訴人が控訴を提起した。 2 関係法令等の定め- 2 -原判決「事実及び理由」第2の1(原判決2頁26行目から7頁20行目まで)に記載のとおりであるから,これを引用する。 3 前提となる事実以下の事実は,当事者間に争いがないか,文中に掲記の証拠及び弁論の全趣旨により認められ,本件の争点を判断 目から7頁20行目まで)に記載のとおりであるから,これを引用する。 3 前提となる事実以下の事実は,当事者間に争いがないか,文中に掲記の証拠及び弁論の全趣旨により認められ,本件の争点を判断する前提となるものである。 (1) 控訴人及び本件病院(乙7)控訴人は,平成4年〇月〇日に設立された医療法人社団である。本件病院は,控訴人が開設する奈良県(住所省略)所在の病院であり,平成9年4月1日付けで,奈良県知事から保険医療機関として指定された。 (2) 本件病院による虚偽の届出(乙8,22)ア本件病院は,平成19年11月6日,奈良社会保険事務局長に対し,10対1入院基本料及び15対1障害者施設入院基本料の施設基準に係る届出において,原判決別紙1-1から1-3までのとおり(黄色の部分が事実に反する届出。以下,原判決別紙1-4について同じ。),同年10月の看護職員の夜勤の状況について,虚偽の届出(平成19年11月届出)をした。 イ本件病院は,平成20年10月1日,奈良社会保険事務局長に対し,回リハ入院料1を算定する病棟以外の病棟について10対1入院基本料や15対1障害者施設入院基本料を算定しているとして,回リハ入院料1の施設基準の要件を満たしている旨の虚偽の届出(回リハ届出)をした。 ウ本件病院は,平成20年10月10日,奈良社会保険事務局長に対し,15対1障害者施設入院基本料の施設基準に係る届出において,原判決別紙1-4のとおり,同年9月の看護職員の夜勤の状況について,虚偽の届出(平成20年10月届出)をした。 (3) 本件病院による虚偽の定例報告(乙8)ア本件病院は,平成19年8月9日,奈良社会保険事務局長に対し,10 - 3 -対1入院基本料及び15対1障害者施設入院基本料の施設基準に係る定例報告におい 病院による虚偽の定例報告(乙8)ア本件病院は,平成19年8月9日,奈良社会保険事務局長に対し,10 - 3 -対1入院基本料及び15対1障害者施設入院基本料の施設基準に係る定例報告において,原判決別紙1-5から1-7までのとおり(黄色の部分が事実に反する報告。以下,原判決別紙1-8から1-10までについて同じ。),同年6月の看護職員の夜勤の状況について,虚偽の報告をした。 イ本件病院は,平成20年8月1日,奈良社会保険事務局長に対し,10対1入院基本料及び15対1障害者施設入院基本料の施設基準に係る定例報告において,原判決別紙1-8から1-10までのとおり,同年6月の看護職員の夜勤の状況について,虚偽の報告をした。 (4) 適時調査の実施(乙8)近畿厚生局奈良事務所(奈良事務所)は,奈良社会保険事務局に対する匿名の情報提供を契機として,平成21年10月13日,本件病院に対する施設基準に係る調査を実施した。その際,平成20年10月届出の添付書類のうち,平成20年9月分の看護職員勤務割当表及び病棟勤務割当表の内容が,本件病院の病棟で使用されていた病棟勤務割当表及び病棟管理日誌の内容と整合しないことから,本件病院の管理者及び当時事務長代理であったD事務長に説明を求めたものの,明確な回答が得られなかったことから,奈良事務所は,本件病院に対する施設基準に係る調査を中断した。 (5) 監査の実施(乙8)奈良事務所は,本件病院に対する施設基準に係る調査で収集した資料を精査したところ,虚偽の届出に基づく入院基本料等の不正請求が疑われたため,平成21年12月17日から平成24年7月20日までの間,合計15回,延べ20日間にわたり,奈良県と共同で,本件病院に対する監査(本件監査)を実施した。 (6) 聴聞手続等(甲3,6~8, ため,平成21年12月17日から平成24年7月20日までの間,合計15回,延べ20日間にわたり,奈良県と共同で,本件病院に対する監査(本件監査)を実施した。 (6) 聴聞手続等(甲3,6~8,乙8~13,16~19)ア近畿厚生局長は,平成24年8月24日付けの聴聞通知書(本件聴聞通知書)により,控訴人に対し,保険医療機関の指定の取消処分(保険医療- 4 -機関指定取消処分)が予想されること,根拠法令が健康保険法80条1号,2号,3号及び6号であること,行政手続法に基づく聴聞を同年9月14日に開催すること並びに不利益処分の原因となる事実等を通知した。 イ第1回聴聞期日は,平成24年9月14日,近畿厚生局福井事務所長の主宰により開催された。その後,同年12月21日に第2回聴聞期日が開催され,平成25年3月11日に第3回聴聞期日が開催された。 ウ控訴人の聴聞を主宰した近畿厚生局指導監査課長(平成25年4月1日付けで近畿厚生局福井事務所長から転任)は,上記聴聞の結果を踏まえ,同月15日付けで,近畿厚生局長に対し,本件病院につき保険医療機関指定取消処分が妥当である旨回答した。 (7) 本件処分等(乙20,21)ア近畿厚生局長は,平成25年6月17日開催のEに対して,本件病院に係る保険医療機関指定取消処分につき諮問を行い,同協議会は,上記諮問のとおり了承する旨の答申を行った。 イ近畿厚生局長は,平成25年6月20日付け通知書(本件通知書)により,同年10月1日をもって,本件病院について保険医療機関指定取消処分(本件処分)をした。 (8) 本件訴えの提起(顕著な事実)控訴人は,平成25年6月27日,本件訴えを提起した。 (9) 控訴人による修正の届出等(甲36,37)控訴人は,本件訴訟係属中の平成27年12月8 (8) 本件訴えの提起(顕著な事実)控訴人は,平成25年6月27日,本件訴えを提起した。 (9) 控訴人による修正の届出等(甲36,37)控訴人は,本件訴訟係属中の平成27年12月8日付けで,奈良事務所に対し,平成19年11月届出及び平成20年10月届出の内容を修正する旨の届出(本件修正届出)をし,本件各定例報告を修正する旨の報告(本件修正報告)をした(ただし,本件修正届出及び本件修正報告による修正の可否については,後記のとおり争いがある。)。 4 被控訴人が主張する本件病院の不正請求等の概要 - 5 -(1) 不正請求ア 10対1入院基本料,15対1障害者施設入院基本料及び回リハ入院料1を請求するのに必要な施設基準を満たしていないにもかかわらず,これを満たしているかのように偽って診療報酬を不正に請求した(原判決別紙2-1から2-3まで。不正請求1)。 イ医療行為の実施に当たっては医師の診察が必要であるにもかかわらず,医師が診察をせず,リハビリや点滴注射を実施し,又は静脈内注射を処方し,診療報酬を不正に請求した(原判決別紙3の番号1から142まで。 不正請求2)。 ウ他の医療機関からの依頼を受けて放射線撮影の設備を提供しただけであるにもかかわらず,診療報酬を不正に請求した(原判決別紙3の番号143及び144。以下「不正請求3」といい,不正請求1及び2と併せて「本件各不正請求」という。)。 (2) その他の療養担当規則違反行為ア患者から不正請求分に係る一部負担金を受領し,また,本件病院の従業者及びその家族に対して一部負担金を免除していた事実(規則違反ア)イ不正請求2に関して,本件病院の事務担当者が,医師の指示によることなく診療録に不実記載していた事実(規則違反イ)ウ定例報告の際,添付書類を 対して一部負担金を免除していた事実(規則違反ア)イ不正請求2に関して,本件病院の事務担当者が,医師の指示によることなく診療録に不実記載していた事実(規則違反イ)ウ定例報告の際,添付書類を施設基準に適合しているように装って虚偽の報告をしていた事実(規則違反ウ)エ本件病院で従事する保険医が,医師による診察が行われていないにもかかわらず,リハビリが実施された患者について,診察をしたものとして診療録に不実記載していた事実(以下「規則違反エ」といい,規則違反アからエまでを併せて「本件各規則違反」という。)(3) 不当請求(原判決別紙4。ただし,番号4を除く。)ア算定要件を満たさない初診料に係る診療報酬を不当に請求した事実- 6 -イ算定要件を満たさない入院基本料,入院基本料等加算の診療報酬を不当に請求した事実ウ算定要件を満たさない医学管理等に係る診療報酬を不当に請求した事実エ算定要件を満たさない在宅医療に係る診療報酬を不当に請求した事実オ算定要件を満たさない検査に係る診療報酬を不当に請求した事実カ所定点数に含まれて別に算定できない処置に係る診療報酬を不当に請求した事実キ算定要件を満たさない麻酔に係る診療報酬を不当に請求した事実 5 主たる争点(1) 故意による不正請求1以外の事由の主張の可否(処分理由の追加)(2) 不正請求1に関する争点ア違反事実の有無(特に本件修正届出の適否)イ故意又は重過失の有無(3) 不正請求2に関する争点ア違反事実の有無(特に無診察治療該当性)イ故意又は重過失の有無(4) 不正請求3に関する争点-故意又は重過失の有無(5) 本件各規則違反に関する争点ア規則違反ア(不正請求に係る一部負担金の受領等)の有無等 イ故意又は重過失の有無(4) 不正請求3に関する争点-故意又は重過失の有無(5) 本件各規則違反に関する争点ア規則違反ア(不正請求に係る一部負担金の受領等)の有無等イ規則違反イ(事務担当者による診療録の不実記載)の有無等ウ規則違反ウ(定例報告における虚偽報告)の有無等エ規則違反エ(保険医による診療録の不実記載)の有無等(6) 不当請求に関する争点-違反行為の有無等(7) 裁量判断の適否ア処分の量定の適否(比例原則違反・平等原則違反)イ指定取消事由及び処分基準に該当しない事実の考慮の適否(他事考慮) - 7 -(8) 手続上の違法ア処分基準の違法(行政手続法12条2項関係)イ処分理由書の理由付記の不備(行政手続法14条関係)ウ聴聞手続の違法エ監査手続の違法 6 当事者の主張次のとおり補正するほか,当審における控訴人の主張を後記7に加えるほか,原判決「事実及び理由」第2の5(原判決13頁3行目から29頁26行目まで)及び原判決別紙5-1,同5-2(原判決113頁から235頁まで)に記載のとおりであるから,これを引用する。 (1) 原判決117頁3行目の「資的差」を「質的差」に改める。 (2) 原判決119頁10行目の「ことにあるとして」を「として」に改める。 (3) 原判決172頁15行目の「ようする」を「要する」に改める。 (4) 原判決190頁3行目の「放棄」を「法規」に改める。 7 当審における控訴人の主張(1) 故意による不正請求1以外の事由の主張の可否(処分理由の追加)について監査要綱に「取消処分」の要件が,処分基準として公表されているのであるから,処分行政庁は,同基準 ける控訴人の主張(1) 故意による不正請求1以外の事由の主張の可否(処分理由の追加)について監査要綱に「取消処分」の要件が,処分基準として公表されているのであるから,処分行政庁は,同基準に羈束されてその裁量権を行使することを対外的に表明したということができる。よって,処分行政庁が,「取消処分」をなすには,当該処分基準によることが相当でないことに合理的理由のない限りは,当該処分基準に従うことを羈束されるのであって,「取消処分」の理由とする事実については全て,当該処分基準に当てはめてこれを適用することを要し,これらのいずれかの要件に該当する必要がある(最高裁平成23年6月7日第三小法廷判決・民集65巻4号2081頁の田原睦夫裁判官の補足意見参照)。 - 8 -本件通知書別紙「第1 判明した事実」に記載の不正請求2,不正請求3,本件各規則違反及び不当請求については,上記のとおり,処分行政庁が監査要綱における上記処分基準に羈束される結果,本来,これらを本件処分の理由とするためには,① 故意に不正又は不当な診療を行ったもの② 故意に不正又は不当な診療報酬の請求を行ったもの③ 重大な過失により,不正又は不当な診療をしばしば行ったもの④ 重大な過失により,不正又は不当な診療報酬の請求をしばしば行ったものという処分基準の各要件に当てはめてこれを適用することを要し,これを行わない場合は,この処分基準に従うことなく不利益処分をなしたものとして,違法の評価を受けるべきものである。 本件通知書別紙では,不正請求2,不正請求3,本件各規則違反及び不当請求の各行為については,監査要綱における処分基準の上記要件①から④までに当てはめてこれを適用した旨の記載がない。 したがって,本件処分における処分理由は,故意による不正請求1の 規則違反及び不当請求の各行為については,監査要綱における処分基準の上記要件①から④までに当てはめてこれを適用した旨の記載がない。 したがって,本件処分における処分理由は,故意による不正請求1のみであるから,被控訴人が,本件訴訟において,不正請求2,不正請求3,本件各規則違反及び不当請求と,これらが重過失によることを主張したことは,理由の追加に該当する。 (2) 不正請求1に関する争点についてア違反事実の有無(本件修正届出の適否)について(ア) 原審は,平成18年度医療課長通知別添2「入院基本料等の施設基準等」(本件施設基準)「第2 病院の入院基本料等に関する施設基準4(2)が,看護要員の数における留意点として「看護補助者の数を算出するに当たっては,看護師,准看護師を看護補助者とみなしても差し支えない」と定めていることの解釈を誤っている。 - 9 -(イ) 入院基本料の施設基準等に係る届出に当たっては,煩雑な計算が必要であることから,公益社団法人日本看護協会は,医療現場の業務量を軽減するため,各医療機関が作成した勤務計画表の内容を入力すれば,自動的に施設基準届出に係る月平均夜勤時間や看護補助者数等が計算できる,様式3の3もしくは様式9の自動計算機能付きエクセル表(以下「本件自動計算機能付き書式」という。)を作成し,この利用手引き(以下「本件手引き」という。)と併せて,公開の上,無料で配布してきた。 原審が判断したように,看護職員の夜勤時間計算においてはみなし看護補助者規定により看護師・准看護師を看護補助者とみなすことが許されないのであれば,勤務計画表の内容を入力すれば自動的に施設基準届出に係る月平均夜勤時間や看護補助者数等が計算できるという本件自動計算機能付き書式の特色からすれば,むしろ「看護師・准看護師を看 許されないのであれば,勤務計画表の内容を入力すれば自動的に施設基準届出に係る月平均夜勤時間や看護補助者数等が計算できるという本件自動計算機能付き書式の特色からすれば,むしろ「看護師・准看護師を看護補助者とみなした場合には,その看護職員は看護職員の勤務計画表に記載しなければならない」もしくは「月平均夜勤時間算出の際と,看護補助者算出の際には,それぞれ別の勤務計画表を作成し,本件自動計算機能付き書式を用いて2種の様式9等を作成しなければならない」と明示する必要がある。しかし,そのような規定は本件自動計算機能付き書式及び本件手引きには一切存在しない。 そして,本件自動計算機能付き書式及び本件手引きは,厚労省保険局医療課に必要事項の確認を行った上で作成されたことが明記されており,本件施設基準の解釈が控訴人主張どおりのものであることを被控訴人も認めていたものである。 したがって,本件施設基準におけるみなし看護補助者の取扱いは,看護職員の月平均夜勤時間算定についても妥当するものであって,控訴人が行った本件修正届出は有効である。 - 10 -イ故意又は重過失の有無について(ア) 判断枠組みについて代表者たる機関は,法人と別個の地位を有せず,その行為そのものが法人の行為と考えられるべき特殊な立場にある。内部的な権限委譲によっても,一従業者に過ぎない者の行為が,機関としての行為と同視されることはない。 (イ) 不正請求1についての故意又は重過失本件病院の歴代の事務長,事務長代理及び総師長が本件各届出の権限を委ねられていたとしても,本件の不正請求1に係る虚偽の届出は,これらの者の独断によるものであった。理事長に諮ることなく独断でした行為は,本件病院からそれぞれに課された任務に違背した行為であって,権限に基づき法人 としても,本件の不正請求1に係る虚偽の届出は,これらの者の独断によるものであった。理事長に諮ることなく独断でした行為は,本件病院からそれぞれに課された任務に違背した行為であって,権限に基づき法人の業務の一環として行ったものとはいえない。 したがって,不正請求1について控訴人に故意又は重過失があるということはできない。 (3) 不正請求2に関する争点についてア違反事実の有無(リハビリ)について本件病院においては,患者番号7,12,13,18,52の各患者へのリハビリ実施に当たり,継続的治療計画を策定した上で医師が定期的な診察を行っていた。 すなわち,医師が診察を行った上,リハビリが必要であると判断して指示箋を発行するなどし,医師の指示を受けた理学療法士が実施計画書を作成して本人及び家族に説明するなどし,その後も医師が少なくとも1か月に1回程度の診察を行っていたものである。そして,必要に応じて医師が診察を行う体制としていた。 以上によれば,上記各患者に対するリハビリの実施をもって医師法20条に違反するものということはできない。 - 11 -イ違反事実の有無(点滴注射)について(ア) 突発性難聴について本件病院の担当医である酒井医師は,患者番号44の患者が罹患する突発性難聴について高い専門性を有する耳鼻咽喉科医師から具体的治療法の提案を受け,自身でも診察の上,上記提案どおりの治療を実施した。 そして,具体的な投与計画に従い,4日間の点滴注射の後に治療効果の判定を行った上で,その際の症状・所見を踏まえて再度コンサルトを行うなどして検討するという計画であった。 また,ステロイドは,突発性難聴の治療として点滴による場合のみならず経口投与される場合もあり,その副作用はいずれの場合も原則同一であ えて再度コンサルトを行うなどして検討するという計画であった。 また,ステロイドは,突発性難聴の治療として点滴による場合のみならず経口投与される場合もあり,その副作用はいずれの場合も原則同一である。原審の判断によれば,ステロイドを経口で処方する際も,毎日,医師の診察が必要となり不合理である。 以上に加え,患者番号44の患者が本件病院に勤務する看護師であることも考慮すると,同患者に対する点滴注射をもって医師法20条に違反するものということはできない。 (イ) 上顎部膿瘍について抗生剤によるアナフィラキシー等の発生を確実に予見することは困難であり,現在では,初めての薬剤を投与する場合は過去のアナフィラキシーの有無等を問診した上で投与することとされているが,同じ薬剤を近い時点で2回目以降に投与する場合には,前の使用の際にアレルギー反応がみられないことが分かっていれば問診は必要ないとされている。 また,抗生剤の投与を実際に行い,急変が起きないかどうかを観察するのは,医療現場においては看護師である。 抗生剤は,3日程度の投与を行った上で効果を判定し,治療を継続又は終了するか,あるいは変更するかなどを検討するものである。本件の点滴注射は,上顎部膿瘍に対する治療として3日間ロセフィンを投与し- 12 -て効果を判定し,方針を決するという継続的治療計画の下で行ったものである。 以上に加え,患者番号44の患者が本件病院に勤務する看護師であることも考慮すると,同患者に対する点滴注射をもって医師法20条に違反するものということはできない。 ウ故意又は重過失の有無について前記(2)イと同様,不正請求2について控訴人に故意又は重過失があるということはできない。 (4) 不正請求3に関する争点について原審は,不正請求3については 故意又は重過失の有無について前記(2)イと同様,不正請求2について控訴人に故意又は重過失があるということはできない。 (4) 不正請求3に関する争点について原審は,不正請求3については,事務長や医事課長について,具体的にどの程度の事実関係を認識していたのか証拠上認定できないと説示する。 そうであれば,注意義務の発生の前提となる違法な事実関係の認識が証明されていないので,上記の者の過失を認めることはできないはずである。 (5) 本件各規則違反に関する争点について本件各規則違反の行為を本件処分の理由とする場合は,それぞれ,監査要綱第6の1(1)の処分基準の適用を受けるものであり,このうちの診療報酬請求に係る処分基準である②又は④が定める故意又は重過失の峻別の要請に従い,当然に,その主観が認定され,各要件に当てはめられるべきである。 (6) 不当請求に関する争点について上記(5)と同様,不当請求についても,上記②又は④が定める故意又は重過失の峻別の要請に従い,当然に,その主観が認定され,各要件に当てはめられるべきである。 (7) 裁量判断の適否についてア比例原則違反原審は,① 本件病院が夜勤従事者3名体制に戻した目的について,医療安全の確保にあった可能性を認めつつも,これを何ら控訴人に有利に判 - 13 -断せず,② 不正請求1の動機につき,本件監査におけるD事務長の発言をもって,経済的な利益を得ることにあった旨認定し,③ 本件病院が手厚い看護体制を配置し,夜勤従事者に実際の従事時間に見合った夜勤手当を支給していたことを何ら控訴人に有利に判断しなかったが,いずれも誤りである。 また,④ 本件病院が,本件監査に先立って72時間基準の遵守に努め,その後速やかに上記基準を遵守するに至った事実は,重く評 していたことを何ら控訴人に有利に判断しなかったが,いずれも誤りである。 また,④ 本件病院が,本件監査に先立って72時間基準の遵守に努め,その後速やかに上記基準を遵守するに至った事実は,重く評価されるべきである。⑤ 72時間基準は不合理であるにもかかわらず,そのような悪法に基づいて,その使命に基づき医療安全を目指した本件病院に対して,最も厳しい処分(保険医療機関指定取消処分)を下すことは不合理・不相当というべきである。 原審は,⑥ 返還金額の確定が必要であることを理由に,不正利得返還申出に対する拒絶は認められないとしたが,その確定手続を怠ったのは本件処分庁(近畿厚生局長)である。 以上によれば,本件処分について比例原則違反が認められる。 イ平等原則違反原審が,平等原則違反についてした判断は,控訴人の主張に対して個別に答えておらず,判断の遺漏である。 ウ他事考慮原審は,本件病院について,不正請求1のみをもって優に取消処分に相当すると説示しながら,実際は,不正請求1のほか,不正請求2,不正請求3,本件各規則違反及び各不当請求の事実を考慮した結果,本件病院につき保険医療機関の指定を取り消すべきでない特段の事情も見当たらないとの矛盾した判断をしている。 (8) 手続上の違法についてア処分基準の違法について- 14 -原審は,監査要綱第6の1は事案の内容に応じ,段階的に処分を定めているから,いかなる場合にどのような行政上の措置がなされるか予測しうると判断する。しかし,過失による不正又は不当な診療報酬の請求の場合,監査要綱によれば,「重大か軽微か」,「しばしばか否か」により処分内容が区分されることになるが,これらの判断基準は極めて規範的,抽象的で,処分を受ける者において予測が極めて困難である。 この ,監査要綱によれば,「重大か軽微か」,「しばしばか否か」により処分内容が区分されることになるが,これらの判断基準は極めて規範的,抽象的で,処分を受ける者において予測が極めて困難である。 このように,取消処分をするかしないかの判断要素等が明示されているとはいえず,行政手続法12条2項に違反するというべきである。 イ処分理由書の理由付記の不備について原審は,被控訴人が,本件通知書別紙第2の2(1)「適用される処分基準に係る事実」に不正請求1に関する事情しか記載しなかったのは,当該要件に該当することについての具体的な理由を示したものにすぎず,他方で,本件処分の処分理由には,不正請求1以外の事実も含まれる旨を説示した。 前記(1)のとおり,処分行政庁が不利益処分をするには,処分基準の適用関係も具体的に示されなければならない。 そうすると,本件では,処分行政庁が,原審の認定したような実体法上の判断を行ったのであれば,少なくとも,不正請求1以外の事実について処分基準該当性を判断しない合理的理由を本件通知書に提示した上,それでも不正請求1以外の事実を本件処分の理由とすることも説明すべきであった。これらの記載を欠く本件通知書は,理由付記の不備があり,行政手続法14条に違反する。 また,原審は,処分基準該当性の認められる事実は,不正請求1及び不正請求2の一部(リハビリに関する部分)であると説示した。この場合,不正請求2の当該一部の処分基準該当性についても,本件通知書の理由の摘示において,その適用関係が具体的に示されるべきところ,本件通知書 - 15 -にはこの記載がないので,理由付記の不備があり,行政手続法14条に違反する。 ウ聴聞手続の違法について聴聞通知書の「不利益処分の原因となる事実」を通知後に差し替える場 書 - 15 -にはこの記載がないので,理由付記の不備があり,行政手続法14条に違反する。 ウ聴聞手続の違法について聴聞通知書の「不利益処分の原因となる事実」を通知後に差し替える場合には,改めて通知からやり直さなければならない。しかし,本件において,近畿厚生局長は,事実の訂正があったにもかかわらず,本件処分の聴聞通知書を改めて発することをしなかった。 原審は,聴聞手続における近畿厚生局長の説明は一貫していて,「不利益処分の原因となる事実」が訂正された事実は認められないと説示したが,これは事実と異なるものである。 以上によれば,本件聴聞通知書について,行政手続法15条1項に違反する。 第3 当裁判所の判断 1 当裁判所も,本件処分について,処分理由の追加がなされたということはできず,不正請求1について故意(又は重過失)があったと認められ,不正請求2のうち,① リハビリに関する部分については控訴人に故意があると認められ,② 静脈内注射に関する部分については少なくとも控訴人に重過失があると認められ,③ 点滴注射に関する部分については少なくとも控訴人に過失があると認められ,不正請求3については控訴人に重過失があると認められ,本件各規則違反について控訴人に少なくとも過失があると認められ,不当請求について控訴人に少なくとも過失があると認められ,本件各不正請求及び本件各規則違反は保険医療機関の指定の取消事由を定める健康保険法80条1号,2号,3号及び6号に該当し,保険医療機関指定取消処分に係る処分基準に該当し,本件病院の保険医療機関の指定を取り消す旨の判断に裁量権の範囲の逸脱又はその濫用があるとは認められず,手続上の違法も認められないので,控訴人の請求は理由がないと判断する。その理由は,次のとおり補正するほか,原- 関の指定を取り消す旨の判断に裁量権の範囲の逸脱又はその濫用があるとは認められず,手続上の違法も認められないので,控訴人の請求は理由がないと判断する。その理由は,次のとおり補正するほか,原- 16 -判決「事実及び理由」第3の1~8(原判決30頁2行目から69頁11行目まで)に記載のとおりであるから,これを引用する。 (1) 原判決39頁25行目の「できるとすれば」を「できることになるが,これによれば」に改める。 (2) 原判決51頁7行目の「ウ(ウ)」を「ウ(エ)」に改める。 (3) 原判決65頁3行目から9行目までを削る。 2 当審における控訴人の主張に対する判断(1) 故意による不正請求1以外の事由の主張の可否(処分理由の追加)についてア控訴人は,本件通知書別紙では,不正請求2,不正請求3,本件各規則違反及び不当請求の各行為については,監査要綱における処分基準の上記要件①から④までに当てはめてこれを適用した旨の記載がないとして,前記各行為については,処分理由の追加に該当する旨主張する。 イしかし,本件通知書には,別紙として「不利益処分の原因となる事実」が添付されており(原判決別紙6),「第1 判明した事実」において,不正請求1のほか,不正請求2,不正請求3,本件各規則違反及び不当請求の各行為について,違反事実が具体的に記載されている。 そして,「第2 不利益処分に係る適用条項及び適用される処分基準等」の「1 適用条項」において,「・・・これらのことは,保険医療機関又は保険薬局の指定の取消を定めた健康保険法第80条第1号,第2号,第3号及び第6号に該当する。」として,根拠法令も個別的に明らかにされている。 以上によれば,不正請求1のみならず,被控訴人が主張する上記全ての事実が処分理由とされているという 第1号,第2号,第3号及び第6号に該当する。」として,根拠法令も個別的に明らかにされている。 以上によれば,不正請求1のみならず,被控訴人が主張する上記全ての事実が処分理由とされているというべきである。 ウもっとも,被控訴人が主張する事実のうち不正請求1以外の事実については,処分基準への具体的な当てはめについての記載がされていない。 - 17 -しかし,前記1で引用した原判決「事実及び理由」第3の1(3)に記載のとおり,「控訴人の故意又は過失」に基づく行為であることはその趣旨に照らして明らかであり,「控訴人の重過失」に基づく行為を除外する趣旨とも,当時の控訴人代表者の主観に基づく控訴人の故意又は重過失を除外する趣旨とも解されない。 そうすると,本件においては,処分理由として提示された事実関係と,処分の根拠法条ないし公にされている処分基準の定め(監査要綱第6の1(1)の②,④)とを照らし合わせることにより,処分要件の該当性を容易に判断することができるというべきである。 したがって,本件処分について,不正請求1以外の事実は,処分理由として提示されており,本件訴訟において処分理由の追加がされたということもできない。 エしたがって,控訴人の上記主張は採用することができない。 (2) 不正請求1に関する争点についてア違反事実の有無(本件修正届出の適否)について(ア) 施設基準告示及び医療課長通知(以下「施設基準告示等」という。)における72時間基準及び夜間における勤務についての定めは,大要,以下のとおりである。 a 平成18年施設基準告示等(72時間基準)夜勤を行う看護職員…の1人当たりの月平均夜勤時間数が72時間以下であること等,看護職員及び看護補助者の労働時間が適切なものであること。 a 平成18年施設基準告示等(72時間基準)夜勤を行う看護職員…の1人当たりの月平均夜勤時間数が72時間以下であること等,看護職員及び看護補助者の労働時間が適切なものであること。 (夜間における勤務)夜間における勤務については,次の点について留意する。 ・看護職員の名簿及び勤務計画表により,各病棟ごとに次の要件が- 18 -満たされていること。 ・看護要員は,常時2人以上であること。 ・一般病棟…においては,看護職員を2人以上配置していること。 ・療養病棟においては,看護職員1人と看護補助者1人の計2人以上の配置であっても差し支えない。 ・一般病棟等において,看護職員を2人以上配置している場合にあっては,緊急時等やむを得ないときは,看護補助者が夜勤を行うことができる。 b 平成20年施設基準告示等(72時間基準)夜勤を行う看護職員…又は療養病棟の看護要員…の1人当たりの月平均夜勤時間数が72時間以下であること等,看護職員及び看護補助者の労働時間が適切なものであること。 (夜間における勤務)夜間における勤務…については,次の点について留意する。 ・看護要員の名簿及び勤務計画表により,各病棟…ごとに次の要件が満たされていること。 ・看護要員は,常時2人以上であること。 ・一般病棟…においては,看護職員を2人以上配置していること。 ・療養病棟においては,看護職員1人と看護補助者1人の計2人以上の配置であっても差し支えない。 ・一般病棟…において,看護職員を2人以上配置している場合にあっては,緊急時等やむを得ないときは,看護補助者が夜勤を行うことができる。 (イ) 上記のとおり,72時間基準は,平成18年施 。 ・一般病棟…において,看護職員を2人以上配置している場合にあっては,緊急時等やむを得ないときは,看護補助者が夜勤を行うことができる。 (イ) 上記のとおり,72時間基準は,平成18年施設基準告示等においても,平成20年施設基準告示等においても,看護職員及び看護補助者の - 19 -労働時間が適切なものであることを実現するために定められている。 そして,72時間基準の対象者については,一般病棟では,「看護職員」とされており,看護補助者は含まれていない。もっとも,これは,一般病棟において看護補助者が夜勤を行うことが原則として予定されていないことによるものというべきである。 そうすると,72時間基準は,看護補助者による夜勤が想定される場合(療養病棟の場合)は,看護職員のみならず看護補助者を含む看護要員を対象として,その労働時間の適正確保のために適用されると解するのが相当である(控訴人も,このような考え方自体については異論がないとしている。)。 以上のような労働時間の適正確保の要請を踏まえると,一般病棟で夜勤を行った看護職員を本件みなし規定によって看護補助者とみなし,72時間基準の適用から除外することはできないというべきである。 (ウ) これに対し,控訴人は,本件自動計算機能付き書式と本件手引きの内容が自らの主張の根拠となる旨主張する。 そこで検討するに,本件自動計算機能付き書式と本件手引きは,看護職員を《看護職員表》に,看護補助者を《看護補助者表》にそれぞれ入力し,必要事項が入力されると自動的に月平均1日当たり看護配置数等が算出され,夜勤の有無等を入力すると自動的に月平均夜勤時間数等が算出されるというものである。そうすると,本件みなし規定によって看護職員を看護補助者とみなして看護補助加算を算定しようとすると, 数等が算出され,夜勤の有無等を入力すると自動的に月平均夜勤時間数等が算出されるというものである。そうすると,本件みなし規定によって看護職員を看護補助者とみなして看護補助加算を算定しようとすると,当該看護職員は《看護職員表》には記載されず,《看護補助者表》に記載される。他方,月平均夜勤時間数は《看護職員表》のみに基づいて算定されることになる。 上記の算定方法は,控訴人の主張に符合するかのようにも思われる。 しかし,本件自動計算機能付き書式は,控訴人が主張するような,本件- 20 -みなし規定を適用して看護補助加算をする場合を想定しているわけではない。本件自動計算機能付き書式は,月平均1日当たり看護配置数,看護職員中の看護師の比率や看護要員(看護師,准看護師及び看護補助者)別の月間総勤務時間数等の項目についても算出するものであるが,仮に,控訴人が主張するように,本件みなし規定により看護職員を《看護職員表》に記載せず,《看護補助者表》に振り替えて記載した場合には,それらの項目について正しい算出がされないことになる。月平均1日当たり看護配置数や看護職員中の看護師の比率等は,施設基準適合性を確認する根本的な項目であるところ,それらの項目について正しい算出がされないようなことを本件自動計算機能付き書式が想定しているとは考えられない。 以上によれば,同書式は本件みなし規定の適用を想定していないというべきである。控訴人の上記主張は採用することができない。 イ故意又は重過失の有無について控訴人は,一従業者にすぎない者の行為が機関としての行為と同視されることはない旨,本件の不正請求1に係る虚偽の届出は,事務長,事務長代理及び総師長の独断によるものであった旨を主張する。 しかし,前記1で引用した原判決「事実及び理由」第3の2(2)ア と同視されることはない旨,本件の不正請求1に係る虚偽の届出は,事務長,事務長代理及び総師長の独断によるものであった旨を主張する。 しかし,前記1で引用した原判決「事実及び理由」第3の2(2)アのとおり,法人において,代表者が内部的にその権限を従業者に委譲した場合,当該従業者がその権限に基づいて対外的に行為をしたときは,法人の行為と評価されるというべきである。 また,前同イのとおり,本件病院においては,診療報酬請求事務及びその前提としての看護職員勤務割当表等の作成が事務長,事務長代理又は総師長に委ねられていたのであるから,これらの職員の行為は権限内の行為である。そして,これらの職員において専ら自己の利益を図る目的であったなどの事情も認められないので,独断などということはできない。 - 21 -したがって,控訴人の上記各主張は,いずれも,採用することができない。 (3) 不正請求2に関する争点についてア違反事実の有無(リハビリ)について控訴人は,患者番号7,12,13,18,52の各患者へのリハビリ実施に当たり,継続的治療計画を策定した上で医師が定期的な診察を行っていた旨主張する。 しかし,本件病院においてリハビリを実施する手順は,前記1で引用した原判決「事実及び理由」第3の3(1)ア(ア)に記載のとおりであって,この認定を左右するに足りる証拠はない。これによると,医師の上記各患者に対する診察は,その頻度及び内容に照らし,極めて不十分なものといわざるを得ず,継続的治療計画に基づく定期的な診察と評価することはできない。 イ違反事実の有無(点滴注射)について控訴人は,患者番号44の患者(突発性難聴,上顎部膿瘍)に対する点滴注射は,継続的治療計画のもとに行っていると主張する。 しかし,前記1で引用し い。 イ違反事実の有無(点滴注射)について控訴人は,患者番号44の患者(突発性難聴,上顎部膿瘍)に対する点滴注射は,継続的治療計画のもとに行っていると主張する。 しかし,前記1で引用した原判決「事実及び理由」第3の3(1)ウ(ウ)に記載のとおり,上記各点滴注射に係る薬剤について重篤な副作用が生じる危険性があることに照らし,毎回の医師の診察が必要というべきであって,控訴人の上記主張は採用することができない。 ウ故意又は重過失の有無について故意又は重過失についての判断枠組みは,前記(2)イと同様と解するのが相当である。 (4) 不正請求3に関する争点について控訴人は,事務長や医事課長について事実関係の認識が証拠上認定できないのであるから過失を認めることはできないと主張する。 - 22 -しかし,控訴人において明らかな不正請求であったと自認していることに照らし,控訴人に重過失があったと認められる。控訴人の上記主張は採用することができない。 (5) 本件各規則違反に関する争点について控訴人は,本件各規則違反について,処分基準の定める要件に当てはめられるべきであると主張する。 しかし,前記(1)説示のとおり,事実関係及び根拠法令が具体的に明示されていたこと,処分基準からするとその適用関係も容易に明らかになることに照らし,理由提示に欠けるところはなく,控訴人の上記主張は採用することができない。 (6) 不当請求に関する争点について控訴人は,不当請求について,処分基準の定める要件に当てはめられるべきであると主張する。 しかし,前記(5)と同様の理由で,理由提示に欠けるところはなく,控訴人の上記主張は採用することができない。 (7) 裁量判断の適否についてア比例原則違反(ア)控訴人は, 張する。 しかし,前記(5)と同様の理由で,理由提示に欠けるところはなく,控訴人の上記主張は採用することができない。 (7) 裁量判断の適否についてア比例原則違反(ア)控訴人は,本件病院が夜勤従事者3名体制に戻した目的について,医療安全の確保にあった可能性を認めつつも,控訴人に有利に判断しなかったことを非難する。上記目的が,医療安全の確保につながるものであったとしても,72時間基準を緩和する理由とならないことは明らかというべきである。控訴人は,72時間基準自体が不合理であると主張するが,労働時間の適正確保の要請それ自体が正当なものであることは控訴人においても自認しているところであり,72時間基準のような形で規制を設けることはその要請を実現する上で一定の合理性があるというべきであって,控訴人の上記主張は採用することが - 23 -できない。 (イ)控訴人は,上記以外に比例原則違反の主張をするが,原審において主張したものであり,これを採用できない理由は,原判決「事実及び理由」第3の7(2)に記載のとおりである。 なお,控訴人は,処分行政庁が返還金額の確定作業を行わず,控訴人による返還申出が不当に拒絶されていると主張する。しかし,監査要綱第6の4「経済上の措置」(1)は,監査の結果,不正又は不当な診療報酬の請求が認められ,返還金が生じた場合において,保険者に対し,医療機関等の名称や返還金額などの必要事項を通知することなどを定めたものであって,医療機関との関係において不正又は不当に請求された診療報酬の総額を確定することを定めたものではない。したがって,控訴人による返還申出が不当に拒絶されたと評価することはできない。 イ他事考慮控訴人は,原審が他事考慮について矛盾した判断をしていると批判する。 しかし とを定めたものではない。したがって,控訴人による返還申出が不当に拒絶されたと評価することはできない。 イ他事考慮控訴人は,原審が他事考慮について矛盾した判断をしていると批判する。 しかし,不正請求1のみをもって,本件処分の理由として十分であると判断することは,不正請求2,不正請求3や本件各規則違反,各不当請求の事実を考慮することと矛盾するわけではない(これらの事実が本件処分の理由となっていることは,前記1で引用した原判決「事実及び理由」第3の1に記載のとおりである。)。 ウ上記のほか,処分行政庁の裁量判断に比例原則違反,平等原則違反,他事考慮がないことは引用に係る原判決「事実及び理由」第3の7に記載のとおりである。 (8) 手続上の違法についてア処分基準の違法について控訴人は,監査要綱の定める処分基準は極めて規範的,抽象的であり,- 24 -行政手続法12条2項に違反すると主張する。 しかし,前記1で引用した原判決「事実及び理由」第3の8(1)に記載されているとおり,監査要綱の定める処分基準は,不正又は不当な診療報酬の請求について,その主観的態様と請求の頻度に応じて区分し,それに応じた処分の内容(取消処分,戒告,注意)を定めているところ,多様な事実関係に対応するため,基準が規範的になることには,やむを得ない面があるというべきであって,不利益処分の過程を可能な限り公正・透明にすることを目的とする行政手続法12条2項の趣旨にかなう程度の具体性は備えているというべきである。 したがって,控訴人の上記主張は,採用することができない。 イ処分理由書の理由付記の不備について控訴人は,本件通知書には,不正請求1以外の事実について,処分基準の適用関係が具体的に示されていないので,行政手続法14条に違反すると ことができない。 イ処分理由書の理由付記の不備について控訴人は,本件通知書には,不正請求1以外の事実について,処分基準の適用関係が具体的に示されていないので,行政手続法14条に違反すると主張する。 しかし,本件処分においては,「第1 判明した事実」において,本件各不正請求,本件各規則違反,不当請求を含む内容が具体的に記載され,「第2 不利益処分に係る適用条項及び適用される処分基準等」も具体的に示されている。さらに,前記1で引用した原判決「事実及び理由」第3の1(3)に記載のとおり,「控訴人の故意又は過失」に基づく行為であることはその趣旨に照らして明らかであり,「控訴人の重過失」に基づく行為を除外する趣旨とも,当時の控訴人代表者の主観に基づく控訴人の故意又は重過失を除外する趣旨とも解されない。 そうすると,不正請求1以外の事実に対する処分基準の適用関係についても,自ずと明らかというべきであり,不正請求1以外の事実について,本件通知書に理由付記の不備があるということはできない。 仮に,不正請求1以外の事実を本件処分の理由とすることについて,理 - 25 -由付記の不備があるとしても,不正請求1の事実のみをもって,本件処分の根拠とするに十分であることについては,前記1で引用した原判決「事実及び理由」第3の7(3)に記載したとおりである。 したがって,控訴人の上記主張は,採用することができない。 ウ聴聞手続の違法について控訴人は,本件聴聞通知書は行政手続法15条1項に違反すると主張する。 しかし,本件聴聞通知書の別紙には,本件通知書と同様の記載がされており,前記イと同様のことがいえる。したがって,本件処分に際して行われた聴聞手続が行政手続法15条1項に違反するということはできず,また,上記違反を理由に, 別紙には,本件通知書と同様の記載がされており,前記イと同様のことがいえる。したがって,本件処分に際して行われた聴聞手続が行政手続法15条1項に違反するということはできず,また,上記違反を理由に,本件処分を取り消すべきであるともいえない。 第4 結論以上によれば,控訴人の請求は理由がないから棄却すべきところ,これと同旨の原判決は相当であるから,本件控訴を棄却することとし,主文のとおり判決する。 大阪高等裁判所第8民事部 裁判長裁判官山田陽三 裁判官中尾彰 裁判官三井教匡
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