平成15(わ)896 殺人,殺人未遂,銃砲刀剣類所持等取締法違反被告事件

裁判年月日・裁判所
平成16年4月19日 神戸地方裁判所
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判決文本文9,958 文字)

主文 被告人を懲役14年に処する。 未決勾留日数中180日をその刑に算入する。 押収してあるサバイバルナイフ1本(平成15年押第138号の1)を没収する。 理由 (犯罪事実)被告人は,第1 平成15年7月15日午前2時50分ころ,兵庫県明石市a町bc番地のd所在のレンタルビデオ店「Ae店」において,顔見知りのB(当時24歳)から,「何笑っとんねん。」「どんな口きいとんねん。」などと言われて詰め寄られたことなどから恐怖にかられ,とっさに殺意をもって,所携のサバイバルナイフ(刃体の長さ約20センチメートル,平成15年押第138号の1)で同人の右前胸部を1回突き刺し,よって,そのころ,同所において,同人を心臓及び肝臓刺創により失血死させて殺害し,第2 上記日時場所において,上記Bと一緒にいたC(当時24歳)に対し,とっさに殺意をもって,上記サバイバルナイフで,同人の右腹部を1回突き刺したが,同人に加療約10日間を要する右腹部刺創等の傷害を負わせたにとどまり,殺害するに至らず,第3 業務その他正当な理由による場合でないのに,上記日時場所において,上記サバイバルナイフ1本を携帯した。 (証拠)省略(事実認定の補足説明)第1 本件の争点弁護人は,判示第1及び第2の事実について,①被告人には,B及びCに対する殺意は認められないから,殺人罪及び殺人未遂罪は成立せず,また,②被告人の行為は,いずれもそれぞれ,BやCによる急迫不正の侵害行為に対し自己の身体を守るために行ったものであり,正当防衛が成立する,③仮に急迫不正の侵害行為がなかったとしても,誤想防衛が成立し,故意が阻却される旨主張し,被告人もお BやCによる急迫不正の侵害行為に対し自己の身体を守るために行ったものであり,正当防衛が成立する,③仮に急迫不正の侵害行為がなかったとしても,誤想防衛が成立し,故意が阻却される旨主張し,被告人もおおむねこれに沿う供述をする。 また,弁護人は,事件後被告人が警察署に出頭した行為は,自首に該当する旨主張する。 そこで,以下,当裁判所の判断を補足して説明する。 第2 犯行に至る経緯及び犯行状況関係証拠によると以下のような事実が認められる。 1 犯行に至る経緯(1) 被告人は,平成15年7月15日午前2時30分ころ,知人のD,E及びF(以下それぞれ「D」「E」「F」という。)とともに,ビデオを借りるため,被告人の運転する普通乗用自動車で,兵庫県明石市a町所在のレンタルビデオ店「Ae店」に赴き,店内でビデオを探すなどしていたところ, B,C及びGが,被告人らより数分遅れて,上記レンタルビデオ店に来店した。 (2) B,C及びGは,店内に被告人とDがいるのを認め,互いに顔見知りであったことから,Bらは,Dと店内正面入り口付近であいさつを交わしたり雑談をするなどしていたが, Bは,被告人に対しても,「久しぶりやのう。」などと声をかけ,被告人は,愛想笑いを浮かべて頭を下げた。 (3) 被告人は,Bらと関わり合いになりたくなかったことから,いったん店外に出ていたが,まだ店内にいるDらを置いて帰ることはできないと思い,店内に戻ることにし,その際,被告人は,もしBらとの間で何かあったら困ると思い,念のため,路上に停めておいた自車に戻り,運転席と助手席の間付近にさやを付けた状態で置いていたサバイバルナイフ1本(平成15年押第138号の1)を取り出し,刃の部分を下にして自己のズボンの右側ポケットに入 め,路上に停めておいた自車に戻り,運転席と助手席の間付近にさやを付けた状態で置いていたサバイバルナイフ1本(平成15年押第138号の1)を取り出し,刃の部分を下にして自己のズボンの右側ポケットに入れ,ズボンの上部からはみ出した持ち手の部分には上着をかぶせて隠した。 (4) 店内に戻った被告人は,D,E及びFと合流し,レジカウンター前付近にいたところ, B,C及びGが近づいてきて,被告人やDらと向かいあった。 (5) この時,Bは,レジカウンターの入り口側前付近に立ち,Bの左側にC,右手やや後方にGがいた。他方,被告人らの位置は,レジカウンターの店内奥側の前付近であり,被告人は,Dの右手後方にやや隠れるようにして立っていた。 (6) Bは,Dに対し,「被告人は,D君の若い衆なんか。」などとと聞いたところ,Dは「そうや。」と答えたことから, Bは,被告人に「おうい。」と呼びかけ,Dの後ろからややBの方に歩み出た被告人に対し,「おまえ,若い衆なんか。」と尋ねたが,「若い衆」という言葉の意味を分かりかねた被告人は,「若い衆っていったって。」「若い衆って若い衆なんかな。」などとあいまいな答えを返し,愛想笑いをした。それに対し,Bは,「何笑っとんねん。」と言い,被告人は,「笑ってない。」などと言ったが,かえってBらから「どんな口きいとんねん。」と言われた。 (7) 被告人は,隣にいたDに「D君。」と呼びかけ,取りなしを求めたが,Dは黙ったままであった。 2 被害者Bに対する犯行状況(判示第1について)(1) Bは,ゆっくり被告人の方に近づき,それに応じるように被告人は,Bの方を向いたまま,後ろに下がった。 (2) 被告人は,Bが1,2歩近づいたところで,ズボンの右ポケットに隠していたサバイバルナイフの っくり被告人の方に近づき,それに応じるように被告人は,Bの方を向いたまま,後ろに下がった。 (2) 被告人は,Bが1,2歩近づいたところで,ズボンの右ポケットに隠していたサバイバルナイフの持ち手を利き手である左手でつかんで取り出し,右手でさやを抜いた。 (3) 被告人がサバイバルナイフを取り出したことに気づいたBは,速度を上げて,後ろに下がる被告人を追いかけ,被告人は,そのまま後ろに下がり,後方にあった販売用のテープ等が置かれた棚に背中をぶつけ,近づいてきたBと一瞬もみ合いになったが,すぐに両者は少しの距離を置いて離れた。 (4) その瞬間,被告人は,曲げた左腕をやや後ろに引き,そのまま左手に持っていたサバイバルナイフを前に突きだし,すぐにこれを引き抜いたが,サバイバルナイフは,被告人と向き合っていたBの前胸部に刺さり,Bは,体をくの字にして,床にしゃがみ込み,そのままの姿勢で横倒しに倒れた。 3 被害者Cに対する犯行状況(判示第2について)(1) Bが床にしゃがみ込んだ際,被告人やBを追いかけてその側まで移動していたDは,近くにいたCが片手を上げ,Dを殴るような気配を示そうとしたことから,先にCを殴りつけた。 (2) Cは,前のめりになり,すぐに体勢を整えたものの,またDから数回殴られ,Dと向き合ったままの状態で,徐々に入り口付近まで後退した。 (3) 被告人は,DとCを追って,入り口付近に駆け寄り,Cと向き合っているDの左後方(Cの右前方)から,左手に持ったサバイバルナイフを,Cめがけて振り回した。 (4) Cは,防御しようと,右腕を出したが,右腕に2か所の切創と右側腹部に1か所の刺創を負わされた。 第3 判示第1の事実について 1 殺意の有無(1) まず,Bに対す した。 (4) Cは,防御しようと,右腕を出したが,右腕に2か所の切創と右側腹部に1か所の刺創を負わされた。 第3 判示第1の事実について 1 殺意の有無(1) まず,Bに対する殺意の有無について検討する。関係証拠によれば,本件犯行に使用された凶器は,刃体の長さ約20センチメートルのサバイバルナイフと称される鋭利な刃物であって,高い殺傷能力を有していること,被告人は,平成15年6月ころにサバイバルナイフを購入して以降,外出時にズボンのポケットに入れたり,車に載せておいたりなどしてサバイバルナイフを持ち歩いており,また,ビニール袋で試し切りするなどしていたことから,サバイバルナイフの上記形状,能力を十分に認識していたこと,被告人は,犯行当時,サバイバルナイフを利き手である左手で持ち,その際持ち手についた穴等にも指を入れるなどして,しっかりと握り,Bと相対し,被告人の方に向かって来たBに対し,腕をやや後ろに引いた上,サバイバルナイフを前に突きだしたこと,このようなBと被告人の位置関係でサバイバルナイフを上記のように動かせば,サバイバルナイフがBの前胸部又は前腹部等の身体の枢要部に刺さる蓋然性が極めて高いこと,現にBは被告人の刺突行為によって,刺創管の深さ約13ないし15センチメートルに及ぶ肋軟骨切断,肝臓及び心臓刺創を伴う右前胸部刺創の傷害を負っていることなどが認められ,このような凶器の形状,性能,これらに対する被告人の認識,凶器の用法,Bの創傷の部位,程度等にかんがみれば,被告人が,サバイバルナイフを突き出す時点で,Bに対する殺意を有していたことは,優に認められる。 (2) これに対し,弁護人は,被告人が,本件以前に,Bに対して殺意又はそれに近い感情を抱くような事情が一切存在せず,また,Bの傷の深さが,サバイバ る殺意を有していたことは,優に認められる。 (2) これに対し,弁護人は,被告人が,本件以前に,Bに対して殺意又はそれに近い感情を抱くような事情が一切存在せず,また,Bの傷の深さが,サバイバルナイフの刃体の長さより短いことからすると被告人が強い力でサバイバルナイフを突きだしたとは認められないなどとして,被告人には,殺意がないと主張し,被告人も,向かってくるBを脅すつもりでサバイバルナイフを取り出したが,Bがさらに掛かってきたため,わき腹を刺してひるませようと思ったので,深く刺すつもりはなかったのであり,Bを殺すつもりはなかったなどと供述している。 しかしながら,本件では,(1)で検討した諸点から,被告人にBに対する殺意,すなわち,Bを死亡させることについての認識・認容があったことが優に認められのであり,上記第2で詳述したことからすると,被告人は犯行現場で恐怖にかられとっさにBに対し殺意をもったものと認められるから,被告人が,本件以前に,Bに対して殺意を抱くような事情がなかったことは,上記の殺意の認定を左右するものとはいえないし,Bの傷の深さが,サバイバルナイフの刃体の長さより短いことも,それでもその傷の深さ自体が約13ないし15センチメートルと相当深いものであって,被告人が刺突行為の際,Bの生命に対し格別の配慮をした形跡もみられないことからすると,上記の殺意の認定を左右するものではない。 2 正当防衛の成否(「急迫不正の侵害」の有無)(1) 弁護人は,被告人は,サバイバルナイフを取り出した時点で,粗暴性等で地域で名を馳せ格闘技を習得していたBから,突然因縁をつけられており,被告人には,Bからつかみかかられ暴行等の危害を加えられる現実的危険性が生じていた,また,被告人は,サバイバルナイフを取り出して以降につ 名を馳せ格闘技を習得していたBから,突然因縁をつけられており,被告人には,Bからつかみかかられ暴行等の危害を加えられる現実的危険性が生じていた,また,被告人は,サバイバルナイフを取り出して以降についても,Bから激しく迫られ,さらに,被告人がその勢いに押されて背中を後ろの棚にぶつけてからもなお,Bにつかみかかられようとしていたのであって,被告人には身体に対する現実的危険性が生じていたなどとして,被告人に「急迫不正の侵害」があった旨主張する。 (2) しかしながら,上記第2の認定によれば,被告人が,サバイバルナイフを取り出した時点では,Bは,被告人に対し,「何笑っとんねん。」などと言って,ゆっくり1,2歩近づいたにすぎないのであって,それ以上に,Bにおいて,被告人に対し,具体的に暴行を加えたり,手を振り上げるといったような危害を加えることを示す言動をしていないのであるから,たとえ被告人がBに対し,恐怖感を抱いたとしても,この時点において,被告人に「急迫不正の侵害」があったものとは認められない。 そして,さらに,その後,Bが,サバイバルナイフを取り出した被告人に対し,急速に詰め寄り素手でつかみかかろうとしていることは認められるものの,本件サバイバルナイフが刃体の長さだけでも約20センチメートル,全長約38センチメートルもあるかなり大きなものであること,被告人は向かい合ったBの目の前でサバイバルナイフをズボンのポケットから取り出し,自身の体の前方で両手でさやを抜く動作をしていることなどからすると,Bは,先にサバイバルナイフを出した被告人に対し,素手で対抗しようとしたものと認められるのであって,この時点では,むしろ被告人がサバイバルナイフを先に出した行為こそがBに対する急迫不正の侵害といえるから,Bが被告人に対し攻撃した した被告人に対し,素手で対抗しようとしたものと認められるのであって,この時点では,むしろ被告人がサバイバルナイフを先に出した行為こそがBに対する急迫不正の侵害といえるから,Bが被告人に対し攻撃したことをもって,被告人に「急迫不正の侵害」があったものとは認められない。 (3) そうすると,被告人が,サバイバルナイフを出した時点はもとより,それ以後被告人がBをサバイバルナイフで刺突した時点においても,被告人に「急迫不正の侵害」はなかったと認められるから,本件では正当防衛は成立しない。 3 誤想防衛の成否弁護人は,被告人は,事前に知っていたBの情報から,Bの凶器による攻撃をも予想しており,またそのような被告人の認識には,合理性があることから,現実に急迫不正の侵害行為がなかったとしても,誤想防衛が成立すると主張する。 しかしながら,上記認定のとおり,Bは,被告人がサバイバルナイフを出すまでの時点で,ただ1,2歩近づいてきただけであり,また,右手にはビデオ様のものを持ったままであったこと,Bは,サバイバルナイフに気づいた後も,素手で被告人につかみ掛かっていること,被告人自身も,Bがナイフを持っていると思ったのは,事前に聞いていたBについてのうわさなどの影響であり,当日Bがナイフを持っているのではないかと思わせるような事情は特になかったと供述していることなどの事情に照らすと,上記Bの凶器による攻撃というのは,被告人が具体的な事実を誤って認識したというものではなく,被告人の内心においてそのような危惧があったというものに過ぎないから,これをもって誤想防衛ということはできない。 第4 判示第2の事実について 1 殺意の有無(1) 次に,被告人のCに対する殺意の有無を検討する。関係証拠によれば,被告人は,上 いから,これをもって誤想防衛ということはできない。 第4 判示第2の事実について 1 殺意の有無(1) 次に,被告人のCに対する殺意の有無を検討する。関係証拠によれば,被告人は,上記のとおり,サバイバルナイフの形状及び性能を認識した上,Dから殴りかかられているCを追いかけていき,Cの右斜め前方に立ち,利き手である左手に持ったサバイバルナイフをCの体にめがけて振り回していること,このようなCと被告人の位置関係でサバイバルナイフを上記のように動かせば,サバイバルナイフがCの右脇腹や右背部等身体の枢要部に刺さる蓋然性が極めて高いこと,現にCは被告人の振り回したサバイバルナイフによって,深さ約15センチメートル程度に達する右腹部刺創の傷害を負っており,このような腹部の刺創は,少し場所がずれていれば死亡の危険性が高かったことなどが認められ,これらの事情からすると,被告人が犯行当時,Cに対する殺意を有していたことは,優に認められる。 (2) これに対し,弁護人は,被告人には,本件以前に,Cに対して殺意又はそれに近い感情を抱くような事情が一切存在しないことや,被告人がCを殺そうと思っていれば,被告人は,Cの胸部や頸部を狙うはずであること,Cに向けサバイバルナイフを振り回したのは1回だけであることなどから,被告人には殺意がない旨主張し,被告人も,Cを追い払おうとサバイバルナイフを振り回したのであり,殺すつもりはなかったと供述している。 しかしながら,本件では,(1)で検討した諸点から,被告人にCに対する殺意,すなわち,Cを死亡させることの認識・認容があったと優に認められるのであって,上記第2で詳述したことからすると,被告人は犯行現場において,Bの仲間であったCに対し,とっさに殺意をもったとしても不自然ではなく,被告 死亡させることの認識・認容があったと優に認められるのであって,上記第2で詳述したことからすると,被告人は犯行現場において,Bの仲間であったCに対し,とっさに殺意をもったとしても不自然ではなく,被告人が,本件以前に,Cに対して殺意を抱くような事情がなかったことは,上記の殺意の認定を左右するものとはいえないし,被告人の本件の刺突行為によって,Cの右脇腹や右背部等の身体の枢要部に相当深い傷を負わせる蓋然性は極めて高かったことからすると,被告人が複数回Cを刺そうとしていないことや,Cの胸部や頸部を狙っていないことも,上記の殺意の認定を左右するものではない。 2 正当防衛の成否(「急迫不正の侵害」の有無)上記第2の認定によれば,Cは,Dに一方的に殴られ逃げている途中で,被告人からサバイバルナイフで刺されているのであるから,「急迫不正の侵害」があったとは到底認められず,正当防衛が成立する余地はない。 3 誤想防衛の成否弁護人は,Cに対する関係でも,被告人が,Cによる被告人への攻撃が差し迫ったものであると考えてもやむを得ないとし,現実に急迫不正の侵害がなかったとしても,誤想防衛が成立すると主張する。 しかしながら,上記認定のとおり,CはDから一方的に殴られ逃げていたのであり,また,被告人自身も,公判廷で,「C君も,絶対僕の邪魔しとうと思った。」「逃げへんかったら,別に当たってもええみたいな感じでおったんです。」などと述べているにとどまり,何ら具体的侵害について供述していないのであるから,これも,被告人が,具体的な事実を誤って認識したというものではなく,被告人の内心においてそのような危惧があったというものにすぎないから,これをもって誤想防衛ということはできない。 第5 自首の成否なお,弁護人は, 実を誤って認識したというものではなく,被告人の内心においてそのような危惧があったというものにすぎないから,これをもって誤想防衛ということはできない。 第5 自首の成否なお,弁護人は,事件後,被告人がH署に出頭した行為は,自首に該当する旨主張する。 しかしながら,関係証拠によれば,Gは,Bが被告人に刺され,DがCを殴っている状況を見て,そのまま店外に出て,直ちに携帯電話でH署に電話をかけ,目撃状況を説明したというのであり,Gは被告人と以前から面識があったことからすれば,この時点で,当然,被告人が犯人であることが捜査機関に発覚していたものと考えられる。 他方,関係証拠に照らすと,被告人は,本件犯行後,D,E及びFの3名を自己の車両に乗車させ,いったん,自宅前まで戻り,上記3名を降車させ,それから,H署に赴いたことからすると,被告人がH署に出頭した時点では,Gの通報によって,捜査機関に被告人が犯人であることが既に発覚していたと推認される。 したがって,被告人のH署への出頭は,捜査機関に発覚する前になされたものとは認められず,自首は成立しない。 (法令の適用)被告人の判示第1の行為は刑法199条に,判示第2の行為は同法203条,199条に,判示第3の行為は銃砲刀剣類所持等取締法32条4号,22条にそれぞれ該当するところ,判示第1及び第2の罪について,所定刑中いずれも有期懲役刑を,判示第3の罪について,所定刑中懲役刑をそれぞれ選択し,以上は,刑法45条前段の併合罪であるから,同法47条本文,10条により,刑及び犯情の最も重い判示第1の罪の刑に同法14条の制限内で法定の加重をした刑期の範囲内で被告人を懲役14年に処し,同法21条を適用して未決勾留日数中180日をその刑に算入し,押収してあるサバイ ,刑及び犯情の最も重い判示第1の罪の刑に同法14条の制限内で法定の加重をした刑期の範囲内で被告人を懲役14年に処し,同法21条を適用して未決勾留日数中180日をその刑に算入し,押収してあるサバイバルナイフ1本(平成15年押第138号の1)は,判示第1の殺人の用に供した物で被告人以外の者に属しないから,同法19条1項2号,2項本文を適用してこれを没収し,訴訟費用は,刑事訴訟法181条1項ただし書を適用して被告人に負担させないこととする。 (量刑の理由)本件は,被告人が,深夜のレンタルビデオ店において,顔見知りであった被害者Bを所持していたサバイバルナイフで刺して死亡させ(判示第1),引き続き,側にいたBの連れである被害者Cを上記サバイバルナイフで刺し,判示の傷害を負わせたが,殺害するには至らず(判示第2),また,その際上記サバイバルナイフを所持していた(判示第3)という,殺人,殺人未遂,銃砲刀剣類所持等取締法違反の各事実からなる事案である。 被告人は,刃体の長さ約20センチメートルの殺傷能力の高いサバイバルナイフを,突然ズボンのポケットから取り出し,BやCの身体の枢要部に刺しており,犯行態様は極めて危険かつ悪質である。被告人は,上記サバイバルナイフを護身用として購入し,携帯していたというが,上記サバイバルナイフの形状からは,使用方法によっては,容易に他人の身体に重大な傷害を与えてしまうことは明らかであって,このような危険性の高いナイフを日ごろから漫然と携帯していたこと自体が非常に危険な行為である。加えて,被告人は,倒れ込んで動かなくなったBの頭部・顔面を数回にわたり蹴りつけており,その行為は非情というほかない。 また,本件各犯行により,1人が死亡し,1人が重傷を負っており,生じた結果は誠に重大である。特に,Bは,本件当時24 たBの頭部・顔面を数回にわたり蹴りつけており,その行為は非情というほかない。 また,本件各犯行により,1人が死亡し,1人が重傷を負っており,生じた結果は誠に重大である。特に,Bは,本件当時24歳とまだ若く,一瞬にしてその命を奪われた無念さは,想像に難くなく,遺族の悲しみも大変深い。また,Cも,腹部に深さ約15センチメートル程度の傷害を負うなど,一歩間違えれば,命を落としかねなかったのであり,同人の味わった苦痛・恐怖感は相当なものであったと思われる。 それにもかかわらず,Bの遺族やCには,何ら慰藉の措置はとられていないばかりか,被告人は,犯行の外形的事実はおおむね認めるに至ったものの,いまだ自己の行為と真しに向き合おうとする姿勢に欠けており,その責任の重さから目を背けようとする態度さえ見られる。 これらの事情に照らすと,被告人の刑事責任は重大である。 他方,本件は,被害者であるBらが,わざわざ被告人らに近づき,「おまえ,若い衆なんか。」など,因縁を付けるかのように被告人を突然問いただし,被告人に詰め寄る姿勢を示したことに端を発しているのであり,被害者側の言動が本件犯行を誘発する一因になった面があることは否定できない上,被告人は,Bらにやられるかもしれないという恐怖感から,とっさに判示第1及び第2の行為に及んでおり,全くの偶発的な犯行であること,BやCを殺してやろうという積極的意欲まではなかったこと,また,被告人は犯行後自ら警察署に出頭していること,被告人は若年で,前科がないこと,家庭に恵まれず不遇な少年時代を過ごしてきたことなど,被告人のために酌むべき情状も認められる。 そこで,以上の諸事情を総合考慮した上,主文の刑を量定した。 (求刑懲役20年サバイバルナイフ1本の没収)平成16年4月19日 被告人のために酌むべき情状も認められる。 そこで,以上の諸事情を総合考慮した上,主文の刑を量定した。 (求刑懲役20年サバイバルナイフ1本の没収)平成16年4月19日神戸地方裁判所第4刑事部裁判長裁判官笹野明義裁判官浦島高広裁判官小山裕子

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