主文 1 被告は原告に対し、52万1544円及び、うち、(a)37万8340円に対する平成13年10月21日から支払済まで年14.6パーセントの、(b)7万6564円に対する本判決確定の日の翌日から支払済まで年5パーセントの、(c)5万円に対する同年11月22日から支払済まで年5パーセントの、(d)1万6640円に対する同日から支払済まで年6パーセントの各割合による金員を支払え。 2 原告のその余の請求を棄却する。 3 訴訟費用は、これを20分し、その17を原告の、その余を被告の負担とする。 4 この判決第1項は、仮に執行することができる。 事実及び理由 第1 請求被告は原告に対し、346万1507円及び、うち、(a)138万7066円に対する平成13年10月21日から支払済まで年14.6パーセントの、(b)138万7066円に対する本判決確定の日の翌日から支払済まで年5パーセントの、(c)67万円に対する同年11月22日から支払済まで年5パーセントの、(d)1万7375円に対する同年9月11日から支払済まで年6パーセントの各割合による金員を支払え。 第2 事案の概要本件は、原告が下記1(1)②の雇用関係を前提に、(a)後示2(1)①ないし③の歩合給、時間外手当及び研修期間中の賃金等を主張して、これら未払賃金等及びこれと同額の労基法114条所定の付加金の支払を求めるとともに、(b)長時間労働等を理由とする後示2(1)④の安全配慮義務違反を主張して、損害賠償を、(c)後示2(1)⑤の経費立替を主張して、不当利得の返還を、それぞれ被告に請求する事案である。 1 争いのない事実及び証拠により容易に認められる事実(以下、平成13年中の日付は、単に月日のみで表示する)(1) 当事者・関係者等① 被告は、土木・建築工事業等を目的とする会社であり、 ある。 1 争いのない事実及び証拠により容易に認められる事実(以下、平成13年中の日付は、単に月日のみで表示する)(1) 当事者・関係者等① 被告は、土木・建築工事業等を目的とする会社であり、いわゆる一般住宅のリフォーム工事の請負を主な業務内容としている(甲17、乙13)。 ② 原告は、7月25日被告に入社した者で(以下本件入社という)、名古屋支店の営業社員として、各戸を訪問して商談の予約を取り付ける、いわゆるアポインターの業務に従事していたが(以下このような商談の予約をアポイントという)、9月9日被告を退職した(以下本件退職という)。 ③ 上記②当時、Aは、被告東海支社の総務課員であり、またBは、名古屋支店の営業課係長で、一時原告の直属の上司だった。 (2) 原告の健康診断受診被告は、7月23日、原告に病院で健康診断を受診させ、原告は、同費用を支払った(受診日につき甲14、乙19)。 (3) 原告の研修参加(ただし、下記時間が労働時間に該当するか争いがある)原告は、7月23日と24日に、被告の研修(以下本件研修といい、原告が参加した時間を本件研修時間という)に参加した(研修の名称につき甲27)。 (4) 原告の採用面接原告は、7月24日、被告の採用面接(以下本件面接という)を受け、Aが、被告側担当者として同面接を行なった。 (5) 被告の勤務体制被告従業員の所定労働時間は、午前10時始業、午後6時終業、休憩1時間の1日7時間であり、毎週月曜日が、労基法35条1項所定の法定休日だった。(6)原告の給与① 原告を含む被告従業員の給与は、前月末日締切の、毎月20日支払だった(以下これを当月分の給与と表示する)。 ② 原告の固定給には、基本給13万円(月額。給与手当等の金額につき以下同じ)、営業手当2万円、精勤手当1万円、年齢調整給5万円 日締切の、毎月20日支払だった(以下これを当月分の給与と表示する)。 ② 原告の固定給には、基本給13万円(月額。給与手当等の金額につき以下同じ)、営業手当2万円、精勤手当1万円、年齢調整給5万円、住宅手当2万円、通勤手当2万8290円があり、そのほか8月分の給与において、入社配属手当1万円が支払われた(甲32、乙4、27)。 ③ また、原告は、歩合給として、9月分及び10月分の給与において、賞金の名目でそれぞれ4万5000円と1万2000円を受給した。 (7) 原告のアポイント獲得本件入社後、原告は、C、D、E、Fからアポイントを取り付けた(以下、上記顧客に関する契約をC邸分などと略称する)。 2 争点(以下、下記(1)①ないし⑤の請求は、各冒頭掲記の略称で表示する)本件の主な争点は、(ア)原告の歩合給に関する下記(1)①アの合意の成否(歩合給請求及び時間外手当請求の原因)、(イ)原告の時間外労働等の時間数及び、割増賃金等の算定の基礎となる歩合給その他の賃金額(下記(1)②ア、イ。時間外手当請求の原因)、(ウ)本件研修時間が労働時間に該当するか(下記(1)③ア。研修時賃金等請求の原因)、(エ)原告の時間外労働等に関する被告の安全配慮義務違反の成否(下記(1)④ア、イ。慰謝料請求の原因)、(オ)下記(1)⑤の費用支出の有無及びこれと被告の業務命令との因果関係(健康診断費用等請求の原因)である。 (1) 原告の主張① 歩合給請求ア被告における歩合給には、オーダー費、新人賞、キャンペーン、達成給、Eテックス賞があり、原告は、7月24日、本件面接時にAから、上記歩合給は概算で売上額の1割になる旨の説明を受けて、これを了承し、原・被告間にその旨の口頭の合意が成立した(以下本件合意という)。 イその後、原告は、前示1(7)のアポイント4件を獲 にAから、上記歩合給は概算で売上額の1割になる旨の説明を受けて、これを了承し、原・被告間にその旨の口頭の合意が成立した(以下本件合意という)。 イその後、原告は、前示1(7)のアポイント4件を獲得したところ、これらに基づく被告の売上額(税抜額)は、合計833万3332円であるから、原告の歩合給は、1割相当額の83万3333円であるが、前示1(6)③の合計5万7000円を除く77万6333円の支払がない。 ウなお、本件入社当時、被告には就業規則や賃金規程が存在せず、従業員に周知もされていなかったから、歩合給を含む賃金に関する契約内容は、乙7等の被告の内部書面により決まるものではなく、本件面接時に交わされた本件合意によって決定されるべきである。 ② 時間外手当請求(以下、(a)労基法32条1、2項所定の法定労働時間外の労働及び同法35条1項所定の法定休日の労働並びに同法37条3項所定の深夜早朝時間帯の労働を、それぞれ時間外労働、休日労働及び深夜労働といい、一括して法定割増労働という。 そして、(b)同法32条所定の法定労働時間内における所定労働時間外の労働を法定内超過勤務といい、法定割増労働と一括して、単に時間外労働等という。また、(c)同法37条1項、3項所定の割増賃金ないし、これと法定割増労働に対し支払われるべき通常の賃金とを一括していずれも法定割増賃金といい、更に法定内超過勤務賃金と一括して、単に割増賃金等という。そのほか、(d)これらの算定の基礎となる賃金を単に基礎賃金といい、(e)固定給及び歩合給を基礎として算定される割増賃金等を、それぞれ固定給に基づく割増賃金等とか、歩合給に基づく割増賃金等などという)ア原告は、別紙1記載のとおり、7月23日から9月9日までに合計457時間50分勤務したが、うち、(a)法定内超過勤務が3 れぞれ固定給に基づく割増賃金等とか、歩合給に基づく割増賃金等などという)ア原告は、別紙1記載のとおり、7月23日から9月9日までに合計457時間50分勤務したが、うち、(a)法定内超過勤務が30時間、(b)時間外労働が153時間50分(1日8時間を超過する分が149時間50分、1週40時間を超過する分が4時間)、(c)休日労働が47時間あり、また、(d)上記(b)(c)のうち17時間50分が深夜労働だった。 イ他方、(ア)原告の所定労働時間は年間1953時間で、基礎賃金中、固定給は25万2806円であり、これらを基礎に、労基法37条、同法施行規則19条、20条、労働基準法37条の時間外及び休日の割増賃金にかかる率の最低限度を定める政令(以下割増率令という)に従って算定した固定給に基づく割増賃金等は、別紙1記載のとおり46万3983円で、(イ)前示①イの歩合給83万3333円に基づく割増賃金等は、別紙1記載のとおり12万3529円で、合計58万7512円が未払である。 ウなお、(ア)労働基準監督署の指導票が、原告の労働時間を1日12時間30分程度と推定しているのは過少である。原告は、(a)午後10時過ぎまで業務に従事して、午後11時過ぎに帰社したり、(b)オーダー日には、午後11時30分頃までかけて、翌朝一番提出の書類を作成したりしたほか、(c)セールストークの暗唱や出張準備等のために午前7時45分からの早出を強いられている。そのほか、同票は、(イ)8月6日の休日出勤を見落としているし、(ウ)本件研修中の7月23日の休日労働も考慮さるべきである。 ③ 研修時賃金等請求ア原告は、前示1(3)のとおり、7月23日、24日と本件研修を受けたが、これは労働時間に該当するところ、各研修時間は13.5時間と7時間で、相当する賃金2万174 である。 ③ 研修時賃金等請求ア原告は、前示1(3)のとおり、7月23日、24日と本件研修を受けたが、これは労働時間に該当するところ、各研修時間は13.5時間と7時間で、相当する賃金2万1742円が未払である。 イまた、原告は、上記23日分の交通費に1480円を要したが、被告から支払がない。なお、原告は、交通費の請求締切日を知らされておらず、実費である以上、当然に原告に支払われるべきである。 ④ 慰謝料請求ア一般に、使用者には、労働者の労働時間、労働状況、健康状態等を把握し、その健康を害しないようにすべき安全配慮義務があるにもかかわらず、被告は、原告に前示②のような長時間労働を強いており、原告は、過労で8月10日救急車で病院に運び込まれ、3日間治療を受け、以後も精神的肉体的苦痛を被り続けて、結局退職を余儀なくされた。 イ原告の時間外労働等は、労働基準監督署の指導にかかる法定時間外労働だけでも1日4時間30分程度、1か月110時間以上になり、いわゆる過労死労災認定基準で、過労死と業務の関連性が強いとされる限度を超えているが、実際には、原告は、前示②アのとおり、それをはるかに超える異常な長時間労働を強いられ、睡眠時間が十分確保できず、疲労が蓄積していたのであって、被告の安全配慮義務違反は明らかである。 ウ以上による原告の精神的苦痛の慰謝料は、67万円を下らない。 ⑤ 健康診断費用等請求ア 7月23日、被告は、前示1(2)のとおり原告に健康診断を受診させ、原告は、同費用2900円を支払ったが、これは、使用者である被告が負担すべきものである。 イ 8月4日原告が営業中、充電不足で携帯電話が切れたところ、Bは、大変な怒りようで、仕事に差し支えるとして、新しい携帯電話を買うよう原告に強要し、原告は、購入費用5940円を支払った。 ウ原 。 イ 8月4日原告が営業中、充電不足で携帯電話が切れたところ、Bは、大変な怒りようで、仕事に差し支えるとして、新しい携帯電話を買うよう原告に強要し、原告は、購入費用5940円を支払った。 ウ原告は、8月18日、9月9日と深夜まで勤務に従事させられたため、当時自宅のあった岡崎市まで行く最終電車の発車時刻に間に合わなくなり、やむを得ずサウナに宿泊して、宿泊費7800円を支払った。 エ本件退職に当たり、原告は、使用していた作業着を自分で洗濯して返却したところ、被告の担当者からクリーニングに出すように要求され、やむなくクリーニング代735円を負担した。 ⑥ よって、原告は被告に対し、(a)上記①ないし③の未払賃金合計138万7067円の内金138万7066円及び支払期日後である10月21日以降の賃金の支払確保に関する法律(以下賃確法という)6条1項、同法施行令1条所定の割合の遅延損害金、(b)労基法114条による上記(a)と同額の付加金及び本判決確定の日の翌日以降の民法所定の割合の遅延損害金、(c)上記④の安全配慮義務違反による損害賠償67万円及び遅滞後である11月12日以降の民法所定の割合の遅延損害金、(d)上記⑤の立替経費にかかる不当利得1万7375円及び支払期日後である9月11日以降の商事法定利率による遅延損害金の各支払を求める。 ⑦ 後示(2)①イのうち、歩合給の支給要件として、リフォーム代金入金時に在職を要するとの主張は争う。 被告主張の入社誓約書は、Aから、これに拘束されることはないと言われて署名したもので、原告に同書面に沿った契約を結ぶ意思はなかった。 また、アポインターの業務内容と関連のない要因で決まる代金の入金日が、退職日前であるか否かを歩合給の支給要件にかからせることは、歩合給制度の趣旨と矛盾する不当な扱いであって、公序良 意思はなかった。 また、アポインターの業務内容と関連のない要因で決まる代金の入金日が、退職日前であるか否かを歩合給の支給要件にかからせることは、歩合給制度の趣旨と矛盾する不当な扱いであって、公序良俗違反である。 (2) 被告の主張① 歩合給請求についてア前示(1)①アの本件合意は否認する。被告に、歩合給という個別の支給項目はなく、これが契約額の1割に相当するなどという取決めも存在しないのであって、Aが原告主張のような説明をすることはあり得ない。 イ同イのうち、原告によるアポイント取付は認めるが、その全部が歩合給算定の基礎に入ることは否認し、計算は争い、同ウの主張も争う。 なお、被告の歩合給には、オーダー賞、新人賞、キャンペーン、達成給などがあるが、前示1(6)③の原告の歩合給は、9月分がC邸分及びD邸分のオーダー賞と新人賞、10月分がE邸分のオーダー賞である。 他方、キャンペーンと達成給については、(a)そもそも原告は、支給基準を満たしていないし、また、(b)これらは、営業活動にかかるリフォーム代金の入金日に営業社員が在職していることを要件として支給されるもので、原告も入社誓約書(乙1)によって、その旨合意しているところ、原告は、各契約代金の入金時に退職していたから、受給資格がない。 更に、一応Eテックス賞の対象となり得るF邸分は、工事請負後の9月12日、同人から解約されたため、結局同賞の対象にならなかった。 ② 時間外手当請求について(以下、前示1(6)①の締切日に基づく賃金締切期間である毎月1日から末日までの労働時間を、当月分の労働時間として表示する)ア前示(1)②アのうち、原告に時間外労働等があったことは認めるが、時間数は争い、同イの計算も争う。 原告の時間外労働等の状況は、労働基準監督署の指導票のとおりであり、別紙2に記載 して表示する)ア前示(1)②アのうち、原告に時間外労働等があったことは認めるが、時間数は争い、同イの計算も争う。 原告の時間外労働等の状況は、労働基準監督署の指導票のとおりであり、別紙2に記載のように、平均して、(a)法定内超過勤務が1日1時間程度、(b)1日8時間を超過する時間外労働が1日4時間30分程度であり、そのほか、(c)1週6日就労した場合には、労働時間が1週40時間を超過する部分も時間外労働に当たるが、原告は、法定休日以外に8月7日、8日、11日、12日、14ないし17日、31日にも欠勤ないし夏季休暇等を取っている。また、(d)8月20日の休日労働は認めるが、8月6日の法定休日は、9月4日に振り替えられており、同日は休日労働に当たらないし、(e)原告に深夜労働をさせた事実もない。 仮に、原告が上記の程度を超えて事務等をしたとしても、業務上の命令に基づくものではなく、必要性もないから、労働時間に該当しない。 イ同ウ(ア)(イ)は、上記アのとおり否認ないし争う。また、同(ウ)のうち、原告の本件研修参加は認めるが、下記③アのとおり、本件研修時間は、労働時間に該当しないから、休日労働にも当たらない。 ③ 研修時賃金等請求についてア前示(1)③アのうち、原告の本件研修参加は認めるが、賃金請求権の発生は争う。同研修の実質は、任意参加の説明会であり、入社書類等の記載の説明や今後の業務内容を体験してもらうといったものであって、労働時間には該当しないし、あらかじめ原告にも、その旨伝えている。 イ上記アのとおりであり、被告に前示(1)③イの交通費の支払義務はない。また、原告は、締切日(翌月5日)前に適切な領収書で請求をしていない。 ④ 慰謝料請求についてア前示(1)④アのうち、被告が安全配慮義務を負うこと、原告の8月10日の病院受診、 の支払義務はない。また、原告は、締切日(翌月5日)前に適切な領収書で請求をしていない。 ④ 慰謝料請求についてア前示(1)④アのうち、被告が安全配慮義務を負うこと、原告の8月10日の病院受診、同月11日、12日の欠勤及び本件退職は認めるが、被告が長時間労働を強いたためであるとの主張は争う。 イ同イのうち、原告の時間外労働等が1か月110時間以上になることは否認し、安全配慮義務違反の成立は争い、同ウの主張も争う。 前示②ア(c)のとおり、原告は、8月7日以降、相当日数の特別休暇や夏季休暇等を取得しており、残業が1か月以上続く場合を想定して、安全配慮義務違反を論ずるのは失当である。 ⑤ 健康診断費用等請求についてア前示(1)⑤アのうち、原告の健康診断受診は認め、被告の費用支払義務は争う。 被告は、同費用等に充てるため入社配属手当を支給している。 イ同イのうち、携帯電話購入は不知。Bが購入を強制した事実はなく、原告の請求は認められない。 ウ同ウの事実は不知。仮に、サウナ宿泊の事実があったとしても、業務上の必要性はなく、被告が費用を負担すべき筋合いのものではない。 エ同ウの事実も不知。原告が返却しようとした作業着は、周囲に悪臭が漂うようなものであり、仮に被告の担当者がクリーニングを求めたとしても、社会通念上相当なものであって、費用償還の義務はない。 第3 争点に対する判断 1 歩合給請求について(1) まず、本件合意の成否を検討するに、原告は、前示第2の2(1)①アのとおり、7月24日の本件面接時にAから、歩合給は概算で売上額の1割になるとの説明を受け、これを了承して本件合意が成立した旨を主張しており、原告本人の供述中には同主張に沿う部分がある。 しかしながら、(a)本件合意の成立を裏付ける客観的証拠は存在しないうえ、(b)原告は、本訴 明を受け、これを了承して本件合意が成立した旨を主張しており、原告本人の供述中には同主張に沿う部分がある。 しかしながら、(a)本件合意の成立を裏付ける客観的証拠は存在しないうえ、(b)原告は、本訴当初は、要旨、7月25日午前8時40分頃、名古屋支店のG支店長に手当の詳細を尋ねたところ、同支店の女性事務員Hから、「手当は売上の1割程度」と言われた旨を主張していたのに(平成14年7月26日付原告準備書面2頁)、その後、合意の日時、相手方等を変更して、7月24日Aとの間で本件合意が成立したと主張しているのであって(平成14年9月13日付原告準備書面3、4頁)、一貫性を欠くというべきである。 また、甲6、乙7、8、10、22、24、証人Iの証言によれば、(c)被告には、オーダー賞、新人賞、キャンペーン、達成給など歩合給の性質を有する個別の諸手当はあるが、「歩合給」名目の単一の手当は存在せず、原告主張の本件合意の内容は、歩合給の上記実態に合致しないと認められるところ、(d)これに対し、本件面接を担当したAは、名古屋支店の上位の東海支社の総務課に勤務する入社後1年半程度の従業員にすぎなかったのであって、社内の支給基準と異なる内容の歩合給の支払を、新入社員に約束できるような立場にあったとは認められない(なお、以下でも、判示の都合上、上記(c)の各手当を個々に特定せず、単に歩合給と表示することがある)。 したがって、以上(a)ないし(d)の事情に照らし、原告の前示供述は採用できず、Aが原告主張に沿う説明をしたとか、両者間に本件合意が成立したなどとは容易に認められない。結局、原告の歩合給は、争いのない前示第2の1(6)③の合計5万7000円のみで、全額支払済というのが妥当である。 (2) これに対し、原告は、上記甲6及びこれと同時に署名押印した入社誓約書( れない。結局、原告の歩合給は、争いのない前示第2の1(6)③の合計5万7000円のみで、全額支払済というのが妥当である。 (2) これに対し、原告は、上記甲6及びこれと同時に署名押印した入社誓約書(乙1)や他の書類について、乙1は、本件面接時にAから、「記載されている事項は、一応書類上だけの建前上のことであって、実際に適用されることは考えていない。この誓約書に拘束されることはない。」等と説明されて署名押印したもので、甲6の記載内容も説明を受けたことはなく、前示歩合給を定めた乙7、8も知らないなどと主張、供述し、更に前示第2の2(1)①ウのとおり主張して、前示(1)(c)認定の被告内の歩合給の存在・実態や、その支給基準の法的効力を争う趣旨を示している。 しかしながら、乙1の内容を検討するため、これを持ち帰って中小企業診断士に見てもらったという原告が(平成14年9月13日付原告準備書面3頁)、上記程度の説明で、これに効力がないと考えたなどというのは容易に措信できないし、署名押印した甲6の内容を知らなかったといえないのも当然であって、直ちに原告の上記主張等を採用して前示(1)の認定を左右できない。 (3) なお、被告には、本件合意によるもの以外にも、前示(1)(c)のような歩合給の性質を有する諸手当の存在が認められるが、上記(2)及び前示第2の2(1)①ウのとおり、原告は、上記諸手当の根拠となる被告内部の支給基準の法的効力等を否定しているのであって、同支給基準に従った歩合給の支給を求めるものでないことが明らかであるから、上記諸手当の有無・数額について、前示(1)の認定以上に検討することはしない。 2 時間外手当請求及び研修時賃金等請求について(1) 原告の時間外労働等の時間数及び内容等(前示第2の2(1)②ア、ウ及び同③の主張について)① 前示(1)の認定以上に検討することはしない。 2 時間外手当請求及び研修時賃金等請求について(1) 原告の時間外労働等の時間数及び内容等(前示第2の2(1)②ア、ウ及び同③の主張について)① まず、7月23日及び24日の本件研修時間が労働時間に当たるかを検討するに、原告は、本件研修が被告の指揮命令下に行なわれたものであって、本件研修時間が労働時間に該当する旨の主張をしており、甲27には、これと同趣旨の部分がある。 しかしながら、前示第2の1(1)②のとおり、原告の入社は7月25日からであって、それ以前に業務内容や就労条件の説明等が行なわれたとしても、直ちに被告の指揮命令に基づく従属的労働に従事したとは認め難いが、原告から本件研修の内容等に関する具体的立証はないし、本件研修の案内文書(甲27)をみても、参加の強制など格別の事情を認めるだけの記載はない。 したがって、そのほか本件研修時間中の賃金等の未払につき、労働基準監督署から是正勧告や指導がない点も考慮すれば(乙25、26)、本件研修時間が労働時間に該当するとは認められず、原告の前示第2の2(1)③アの主張は採用できない。また、同イの交通費の請求も理由がない。 ② 以上によれば、本件で割増賃金等の対象となり得るのは、本件研修翌日の7月25日から本件退職をした9月9日までの期間(以下本件期間という)中の労働だけであるから、以下、同期間の原告の労働時間につき検討する。 ア甲30、乙11、25、26、31、証人B及びGの各証言、後示採用できない部分を除く甲24によれば、本件期間は、名古屋支店の立上げ時期で、重点的な営業活動が行なわれたため、営業社員は、長時間の労働に従事しており、午前9時頃の朝礼に備えて、その前から出社し、その後自動車で担当区域に送迎されて営業活動を行ない、大体午後9時30 時期で、重点的な営業活動が行なわれたため、営業社員は、長時間の労働に従事しており、午前9時頃の朝礼に備えて、その前から出社し、その後自動車で担当区域に送迎されて営業活動を行ない、大体午後9時30分頃帰社して、更にチェック式の日報等の整理や、契約受注した場合は工事指示書等の作成等の業務を終了してから退社していたと認められる。 イそうすると、以上及び後示ウ、エ認定の事実並びに乙25、26、32によれば、(a)原告の拘束時間は、後示ウ以下の場合を除き、平均的に午前8時30分から午後10時までの13時間30分(1日当たりの時間数。別記しない場合は、関係時間数につき以下同じ)で、(b)同じく平均して、このうち休憩時間1時間を除く12時間30分が労働時間に該当する結果、(c)前示第2の1(5)の所定労働時間7時間を超える法定内超過勤務が平均1時間程度、(d)労基法32条2項所定の8時間の法定労働時間を超える時間外労働が平均4時間30分程度生じており、更に、(e)法定休日以外に1週6日就労した当該週は、上記(d)の時間外労働を除く労働時間が同法32条1項所定の1週40時間を超過する部分も、別途時間外労働に該当するが、他方、(f)原告は、法定休日以外に8月7日、8日、11日、12日、14ないし17日、31日、9月4日にも欠勤するか夏季休暇等を取っているから、これら欠勤等を含む週の就労は1週5日以下となり、上記(d)の時間外労働を除く労働時間は、1週40時間以下になると認められる。 したがって、以上に基づき本件期間中の時間外労働等の時間数を算定すると、(ア)法定休日以外に1週6日就労した当該週には、就労第1日目から第5日目までの5日間に、法定内超過勤務が合計5時間、時間外労働が同22時間30分発生し、更に就労第6日目の労働時間12時間30分が全部時 法定休日以外に1週6日就労した当該週には、就労第1日目から第5日目までの5日間に、法定内超過勤務が合計5時間、時間外労働が同22時間30分発生し、更に就労第6日目の労働時間12時間30分が全部時間外労働になると認められるところ、労基法32条1項所定の1週は、特段の定めのない限り日曜日から土曜日までの暦週をいうと解されるから、本件期間中の7月28日の土曜日に終わる週を第1週とし、以下9月9日までの毎週を、それぞれ第2週ないし第8週とすると、乙32によれば、本件期間中、上記計算が当てはまるのは、7月29日から始まる第2週と、8月19日からの第5週の2週間であり、結局下記ウ(a)の休日労働を除き、この2週間(就労日数12日間、総労働時間150時間)に、合計10時間の法定内超過勤務と、同70時間の時間外労働をしたと認められる。 他方、(イ)乙32と下記ウ認定の事実によれば、上記2週間以外の、法定休日を除く1週の就労日が5日以下の期間中の法定休日以外の就労日は、本件期間中に合計19日間と認められるところ、これら就労日には1日当たり上記(c)(d)の割合の法定内超過勤務及び時間外労働が発生しているから、上記19日間(総労働時間237時間30分)で、合計19時間の法定内超過勤務と、同85時間30分の時間外労働があったと認められる(なお、上記以外の本件期間中の時間外労働等は、下記ウ以下で検討する)。 ウ次に、原告の休日労働をみるに、乙28、32、後示採用できない部分を除く甲24によれば、(a)原告は、法定休日である8月20日に午前8時30分から午後9時30分まで勤務しており、うち休憩時間1時間を除く12時間が同日の休日労働に該当すると認められる。 また、(b)原告主張の8月6日の休日労働の有無を検討するに、乙30、32には9月4日が同日の振替休日 0分まで勤務しており、うち休憩時間1時間を除く12時間が同日の休日労働に該当すると認められる。 また、(b)原告主張の8月6日の休日労働の有無を検討するに、乙30、32には9月4日が同日の振替休日として処理されたような記載があるが、就業規則や原告の事前の同意などの法的根拠に従って、あらかじめ有効に休日が振り替えられたことを認めるだけの証拠はないから、8月6日は依然として法定休日であり、原告の同日の労働は、休日労働に当たるというべきである。そして、同日の労働時間は、上記イ(b)と同様に12時間30分と認めるのが相当であり、全時間が休日労働に該当する。 エ更に、以上イ、ウ以外の時間外労働と深夜労働をみるに、甲2の1・2、後示採用できない部分を除く原告本人尋問の結果によれば、(a)8月18日、原告は、営業終了後迎えの自動車が来ず、帰社が遅れた結果、午後11時30分頃退社して、午後10時から午後11時30分まで1時間30分、前示イ以外の時間外労働をしており、全時間深夜労働にも該当し、(b)本件退職の日である9月9日は、当日受注のF邸分の関係書類の作成を終了させねばならず、退職に伴う備品の返還等にも時間を要し、翌日午前零時30分頃退社したと認められるから、午後10時から午前零時30分まで2時間30分、前示イ以外の時間外労働をし、同時に深夜労働に当たる。 オ以上イないしエによれば、(一)本件期間中の原告の総労働時間は、前示イ(ア)(イ)、同ウ(a)(b)、同エ(a)(b)の労働時間数を加算した合計416時間となるが、そのうち、(二)法定内超過勤務は、前示イ(ア)(イ)の合計29時間、(三)時間外労働は、前示イ(ア)(イ)、同エ(a)(b)の合計159時間30分、(四)休日労働は、前示ウ(a)(b)の合計24時間30分であり、(五)深夜労働は、前 示イ(ア)(イ)の合計29時間、(三)時間外労働は、前示イ(ア)(イ)、同エ(a)(b)の合計159時間30分、(四)休日労働は、前示ウ(a)(b)の合計24時間30分であり、(五)深夜労働は、前示エ(a)(b)の合計4時間で、全部上記(三)の時間外労働中に生じたと認められる。 カ以上に対し、原告は、前示第2の2(1)②ア、ウのような長時間労働を主張をし、甲24、34、原告本人の供述中には、これに沿う部分がある。 しかしながら、原告が労働時間を随時記録したとされる甲34及びこれに基づく甲24をみるに、(ア)これらは、原告自身が出退勤時に押印して記録した乙32と異なる出勤状況を記載しており(実際は欠勤した8月31日に出勤した旨の記載がある。なお、乙32の押印は、乙3に押捺の印影との対比により原告自身のものと認められる)、作成経過に関する原告の供述もあいまいで、出退勤状況を正確に記録したか疑問の余地があるというべきであるし、(イ)原告自身、1日の労働時間が前示イ(a)ないし(d)認定の程度より短かった日もあることを自認しているのであるから(平成15年5月12日付同準備書面)、本件期間中の平均的な労働時間は、前示イ認定の程度というのが相当である。したがって、直ちに原告に有利な上記証拠を採用して、前示認定を左右することはできない。 反対に、被告は、前示ウ(b)の休日労働や、同エの深夜労働等の発生を争っているが、同主張を認めるだけの証拠はない。 (2) 基礎賃金の額及び割増賃金等の算定(前示第2の2(1)②イの主張について)① まず、法定割増賃金のうち、固定給に基づく割増賃金につき検討する。 ア労基法37条、同法施行規則21条によれば、固定給に基づく法定割増賃金の基礎賃金は、前示第2の1(6)③の固定給のうち、基本給13万円、営業手当2万円、精 固定給に基づく割増賃金につき検討する。 ア労基法37条、同法施行規則21条によれば、固定給に基づく法定割増賃金の基礎賃金は、前示第2の1(6)③の固定給のうち、基本給13万円、営業手当2万円、精勤手当1万円、年齢調整給5万円及び住宅手当2万円の合計23万円になると認められる(これに対し、上記固定給のうち通勤手当と入社配属手当は、それぞれ労基法37条4項及び同施行規則21条4号所定の除外賃金に当たり、基礎賃金に算入されない。他方、乙27、弁論の全趣旨によれば、上記住宅手当は、実際の住居費の額にかかわらず、一定額を支給する内容のものと認められ、労基法施行規則21条3号所定の除外賃金に該当しないというべきである)。 イこれに対し、原告の所定労働時間は、前示第2の1(5)のとおり1日7時間であり、また乙29によれば、本件当時、契約上原告が労働の義務を負わない所定休日が年間90日間あったと認められるから、年間所定労働時間は、以下のとおり1925時間となる。 (365-90)×7=1,925ウしたがって、以上ア、イの基礎賃金及び所定労働時間に基づき、労基法37条1、3項、同法施行規則19条1項4号、20条1項及び割増率令に従って、前示(1)②オ(三)ないし(五)の時間外労働、休日労働及び深夜労働による本件期間中の固定給に基づく法定割増賃金を計算すると、次のとおり、それぞれ28万5857円(円未満切捨。以下同じ)、4万7421円及び1433円であるから、合計33万4711円となる。 (230,000÷1925/12)×1.25×159.5=285,857(230,000÷1925/12)×1.35×24.5=47,421(230,000÷1925/12)×0.25×4=1,433② 次に、法定割増賃金のうち、歩合給に基づく割増賃金について検討す (230,000÷1925/12)×1.35×24.5=47,421(230,000÷1925/12)×0.25×4=1,433② 次に、法定割増賃金のうち、歩合給に基づく割増賃金について検討する。 ア前示(1)①判示のとおり、本件期間中に原告の取得できる歩合給は、前示第2の1(6)③の5万7000円のみであると認められるところ、乙5ないし7によれば、そのうち7月分と8月分の労働によるものが、それぞれ4万2000円と1万5000円あり、全額基礎賃金に該当すると認めることができる。 イそこで、上記歩合給に対応する原告の総労働時間及び法定割増労働の時間数について検討する。 a 労基法施行規則19条1項4号によれば、これらの時間数は、本件の各賃金締切期間である7月分と8月分の労働時間それぞれについて個別に計算すべきものであるところ、前示(1)②イないしエ判示の内容及び乙32によれば、まず7月中に、原告は、同月25日から31日までに合計6日間就労して、前示(1)②イ(b)のとおり1日当たり平均12時間30分労働しており、うち平均4時間30分が時間外労働であるから、上記6日間の就労による7月分の総労働時間は、次のとおり75時間となり、このうち27時間が時間外労働だったと認められる(なお、7月中に、これ以外の休日労働や深夜労働は発生していない)。 12.5×6=75 4.5×6=27b 次に、8月分の総労働時間及び法定割増労働の時間数をみるに、前示(1)②イないしエ判示の内容及び乙32によれば、8月中に、原告は、同月1日から30日までに合計20日就労し、うち同月6日と20日の2日間は、前示(1)②ウ(a)(b)の休日労働であって同認定の12時間と12時間30分就労したが、それ以外の18日間は、1日当たり平均12時間30分就労しており、そのうち同 、うち同月6日と20日の2日間は、前示(1)②ウ(a)(b)の休日労働であって同認定の12時間と12時間30分就労したが、それ以外の18日間は、1日当たり平均12時間30分就労しており、そのうち同月18日には、更に前示エ(a)の1時間30分の深夜労働に従事していると認められる。したがって、上記20日間の就労による8月分の総労働時間は、次のとおり251時間となる。 12.5×18+12×1+(12.5+1.5)×1=251また、このうち時間外労働は、(a)前示(1)②イ(ア)判示の7月29日から始まる第2週の最終就労日である8月4日及び上記休日労働と深夜労働に該当する日及び時間を除く17日間につき、1日当たり平均4時間30分であるが、(b)上記8月4日の時間外労働は、12時間30分で、ほかに、(c)上記深夜労働中の1時間30分も時間外労働に当たるから、結局8月分の時間外労働は、次のとおり合計90時間30分となる。 4.5×17+12.5+1.5=90.5そして、(c)休日労働は、上記のとおり前示(1)②ウ(a)(b)の合計24時間30分であり、(d)深夜労働は、上記のとおり1時間30分である。 ウしたがって、以上ア、イの基礎賃金並びに総労働時間及び法定割増労働の時間数に基づき、労基法37条1、3項、同法施行規則19条1項4号、20条1項及び割増率令に従って、上記ア、イ認定の時間外労働、休日労働及び深夜労働による本件期間中の歩合給に基づく法定割増賃金を計算すると、次のとおり、7月分と8月分が、それぞれ3780円と1886円であるから、合計5666円となる。 (42,000÷75)×0.25×27=3,780(15,000÷251)×(0.25×90.5+0.35×24.5+0.25×1.5)=1,886③ 更に、法定内超過勤務賃金の有無及び となる。 (42,000÷75)×0.25×27=3,780(15,000÷251)×(0.25×90.5+0.35×24.5+0.25×1.5)=1,886③ 更に、法定内超過勤務賃金の有無及び内容について検討する。 アまず、同賃金に関する契約上の合意等をみるに、本件当時、被告名古屋支店には、これに関する労働契約上の明示の取決めや、就業規則その他による有効な個別的基準が存在していたと認めるだけの証拠はない。 したがって、法定内超過勤務によって従業員に賃金請求権が発生するか否か及び同賃金請求権の内容については、契約当事者の合理的意思を推測して認定するのが相当であるところ、前示第2の1(5)(6)の所定労働時間や法定休日の内容及び給料額等を考慮すれば、少なくとも営業社員と被告との間には、法定内超過勤務に対しても通常の労働に対するのと同一の賃金を支払う旨の黙示の合意が成立していたと推認するのが適切である。 イそして、上記通常の労働に対するのと同一の賃金は、特段の事情がない限り、(a)所定内労働に対して支払われる固定給のうちから、労働時間の長短と無関係に支給される諸手当を除外した賃金を基礎賃金として、労基法施行規則19条1項所定の方法と同一の方法による時間割計算をもって算定するのが相当であるが、(b)歩合給は、上記基礎賃金に入らないというのが、当事者意思の合理的解釈として適切である。 すなわち、労働時間の長短と無関係に支給される諸手当は、法定内超過勤務が認められる場合であっても、増額する合理的根拠がないし、また、歩合給は、獲得した売上額の多寡その他の労働時間とは直接無関係な事項に基づいて支払われるものだからである。 ウそこで、本件の場合を検討するに、原告は、前示(1)②オ(二)のとおり本件期間中に合計29時間の法定内超過勤務をしたと認めら の労働時間とは直接無関係な事項に基づいて支払われるものだからである。 ウそこで、本件の場合を検討するに、原告は、前示(1)②オ(二)のとおり本件期間中に合計29時間の法定内超過勤務をしたと認められる。 他方、前示第2の1(6)②③の原告の給与のうち、上記イ(a)(b)に従って、法定内超過勤務賃金の算定基礎となるのは、基本給13万円、営業手当2万円、精勤手当1万円及び年齢調整給5万円の合計21万円となる。これに対し、住宅手当、通勤手当、入社配属手当及び歩合給は、労働時間の長短と無関係に支給される手当であって、上記基礎賃金には算入されないというのが相当である(なお、前示アのとおり、法定内超過勤務賃金の基礎賃金は、契約ないし当事者の合理的意思解釈等に基づき決定されるものであるから、労基法37条1、3、4項及び同法施行規則21条によって定められる通常の労働時間等の賃金と、必ずしも一致するものではない)。 また、上記イ(a)の時間割計算の方法としては、労基法施行規則19条1項4号所定のと同一の方法によるのが相当である。 エしたがって、上記基礎賃金及び前示①イの所定労働時間に基づき計算した本件期間中の法定内超過勤務賃金は、次のとおり3万7963円となる。 (210,000÷1925/12)×29=37,963④ 以上によれば、本件で認められる割増賃金等の総額は、前示①ウの33万4711円、同②ウの5666円、及び同③エの3万7963円を合計した37万8340円となり、被告には、原告に対し、同額及び、これに対する、原告申立のとおり最終の給与である10月分の給与の支払期日の翌日である10月21日から支払済まで賃確法6条1項、同法施行令1条所定の年14.6パーセントの割合の遅延損害金の支払義務があることとなる。 ⑤ また、(ア)前示①ウの33万4711 給与の支払期日の翌日である10月21日から支払済まで賃確法6条1項、同法施行令1条所定の年14.6パーセントの割合の遅延損害金の支払義務があることとなる。 ⑤ また、(ア)前示①ウの33万4711円及び、(イ)同②ウの5666円のうち、労基法37条所定の割増賃金(前示第2の2(1)②冒頭(c)掲記の法定割増労働に対し支払われるべき通常の賃金を含まないもの。この項で以下同じ)の未払については、労基法114条により、これと同額の付加金の支払を命ずるのが相当であるが、(a)前示①ウで判示したところによれば、上記(ア)のうち、労基法37条所定の割増賃金は、以下のとおり計算される、同条1項所定の時間外労働割増賃金5万7171円及び休日労働割増賃金1万2294円と、同条3項所定の深夜労働割増賃金である前示①ウの1433円との合計7万0898円であり、(b)上記(イ)の5666円は、前示②ウ判示のとおり全額同法37条1、3項所定の割増賃金である。 (230,000÷1925/12)×0.25×159.5=57,171(230,000÷1925/12)×0.35×24.5=12,294したがって、被告には、上記(a)(b)の合計7万6564円及びこれに対する本判決確定の日の翌日以降の民法所定の割合の遅延損害金の支払義務がある。 3 慰謝料請求について(1) 前示2(1)②認定の事実、甲2の1・2、5、33の1ないし3、前後示採用できない部分を除く原告本人尋問の結果によれば、原告は、前示2(1)②アないしオのような長時間労働に従事したことを一因として体調を崩し、8月10日病院で診察治療を受け、その後同月11日、12日と欠勤して自宅療養するとともに、医師の治療も受けたが、これら診察治療費に対し、労働基準監督署が労災保険法上の療養補償給付の支給を決定してい 8月10日病院で診察治療を受け、その後同月11日、12日と欠勤して自宅療養するとともに、医師の治療も受けたが、これら診察治療費に対し、労働基準監督署が労災保険法上の療養補償給付の支給を決定しているのが認められる。 (2) 以上の事実によれば、本件では、被告には、従業員である原告の健康を害しないように配慮すべき安全配慮義務の違反があるというのが相当であるところ、これに対する慰謝料は、5万円をもって適切と認められる。 (3) そして、同損害賠償の遅延損害金につき検討するに、原告は、本訴提起前の10月12日、被告を相手方として本訴の慰謝料請求と同趣旨の調停を申し立てたが不調に終わった事実は、当裁判所に顕著であるから、原告申立のとおり、被告には、民事調停法19条に基づく調停申立による付遅滞の効力の発生後であるのが明らかな11月22日(本訴提起の日の翌日に当たる)以降の民法所定の年5パーセントの割合による遅延損害金の支払義務がある。 (4) 以上に対し、原告は、(a)前示第2の2(1)④イのとおり、被告の安全配慮義務違反の程度が極めて高度であって、原告に過労死の危険があった旨や、(b)上司のBから、「やきを入れる。」等々と罵倒されて、精神的損害を被った旨も主張して、相当額の損害賠償を請求しており、甲3、原告本人の供述中には、これに沿うような部分がある。 しかしながら、前示2(1)②オの認定を超える長時間労働の主張は、同カ判示のとおり採用できないし、上記(1)の欠勤後、原告は、前示(1)②イ(f)のとおり、法定休日以外に相当日数の休暇も取っているのであるから、原告の健康状態が上記(a)の主張の程度にまで悪化していたとは認められない。また、上記(b)は、反対趣旨の証人Bの証言に照らし採用できず、他に前示認定を左右する証拠はない。 4 健康診断費用等請求 、原告の健康状態が上記(a)の主張の程度にまで悪化していたとは認められない。また、上記(b)は、反対趣旨の証人Bの証言に照らし採用できず、他に前示認定を左右する証拠はない。 4 健康診断費用等請求について(1) まず、前示第2の2(1)⑤アないしウの主張について検討する。 ① 前示第2の1(2)の事実、前示2(1)②エ認定の事実、甲2の1・2、14、乙19、証人Bの証言、前示採用できない部分を除く原告本人尋問の結果によれば、(a)本件入社に際し、被告は、7月23日、原告に健康診断を受診させ、原告は、同費用2900円を支払った、(b)8月4日、原告が、単独でアポインターとして担当区域で営業活動中、私物である原告の携帯電話が通話不通になったため、上司のBは、仕事に差し支えるとして、新しい携帯電話を買うよう原告に指示し、原告は、購入費用5940円を支払った、(c)原告は、前示2(1)②エのとおり、8月18日、9月9日と深夜まで勤務に従事した結果、当時自宅のあった岡崎市まで帰宅する最終電車の発車時刻に間に合わなくなり、やむを得ずサウナに宿泊して、2泊で宿泊費7800円を支払った、以上の事実が認められる。 ② 以上認定の事実によれば、被告は、法律上の原因なく、自己の営業に必要な上記①(a)ないし(c)の各費用を原告に立て替えさせたものであって、原告の損失において、これら合計1万6640円相当の利益を利得したと認めるのが妥当であるから、これを原告に返還すべきであり、同額及びこれに対する前示3(3)判示と同様に11月22日以降の商事法定利率による遅延損害金の支払義務があるといわねばならない(なお、被告が主張する入社配属手当は、直ちに上記健康診断費用に対する支払とは認め難い)。 (2) 次に、前示第2の2(1)⑤エの主張を検討するに、原告は、本件退職時 支払義務があるといわねばならない(なお、被告が主張する入社配属手当は、直ちに上記健康診断費用に対する支払とは認め難い)。 (2) 次に、前示第2の2(1)⑤エの主張を検討するに、原告は、本件退職時に、被告の担当者の要求でクリーニング代735円を負担させられた証拠としてクリーニング店発行の領収書(甲5)を提出しているが、同号証は、本件退職の1週間以上前の9月1日付のものであって、被告担当者の要求で原告主張のクリーニング代が支出されたことを証するものとは容易にいえない。 したがって、その余の点を検討するまでもなく、上記主張には理由がない。 5 結論以上の次第で、原告の請求は、被告に対し、前示2(2)④の37万8340円、同⑤の7万6564円、前示3(2)の5万円、及び前示4(1)②の1万6640円の合計52万1544円並びに、うち、(a)37万8340円に対する10月21日から支払済まで年14.6パーセントの、(b)7万6564円に対する本判決確定の日の翌日から支払済まで年5パーセントの、(c)5万円に対する11月22日から支払済まで年5パーセントの、(d)1万6640円に対する同日から支払済まで年6パーセントの各割合による金員の支払を求める限度で理由がある。 名古屋地方裁判所民事第1部裁判官夏目明徳別紙省略
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