平成18年9月11日判決言渡平成15年(ワ)第202号損害賠償請求事件判決主文 被告は,原告らに対し,各金4077万8429円及びこれに対する平成13年1月1日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 原告らのその余の請求をいずれも棄却する。 訴訟費用は,これを10分し,その1を原告らの負担とし,その余を被告の負担とする。 この判決は,第1項に限り,仮に執行することができる。 事実 及び理由第1請求被告は,原告らに対し,各金4408万6890円及びこれに対する平成13年1月1日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 第2事案の概要本件は,嘔吐等の症状を訴えて被告の開設する病院を受診し,血液吸着療法,輸血等の治療を受けた患者が,受診から約17時間後に死亡したのは,①抗凝固剤の使用方法を誤った過失,②カテーテル挿入の際に,血管を損傷した過失,③ヘパリン5000単位を投与した過失,④出血に対する止血措置を怠った過失,⑤適切な輸血を怠った過失によるものであるなどと主張して,死亡した患者の両親が,被告に対し,不法行為又は債務不履行に基づき,損害賠償を請求した事案である。 前提事実(1)当事者等ア被告は,A病院を開設する医療法人である。 イ原告B及び原告C(以下「原告ら」という。)は,平成13年1月1日にA病院を受診し,治療を受けた後に死亡したD(昭和58年9月17日生,当時17歳。)の両親である。 (2)事実経過(特に断りのない限り,平成13年中の出来事である。)アDは,従前から喘息の治療のためA病院に入通院しており,テオロングの処方を受けていた。 イDは,1月1日午前1時ころ,テオロングを服用した直後に嘔吐等の症状を訴え,同日午前4時30分ころ,A病院を受診して, から喘息の治療のためA病院に入通院しており,テオロングの処方を受けていた。 イDは,1月1日午前1時ころ,テオロングを服用した直後に嘔吐等の症状を訴え,同日午前4時30分ころ,A病院を受診して,E医師の診察を受けた。E医師が血中テオフィリン濃度の検査を実施したところ,103. 50μg/mlとの高値であった。 ウ被告は,Dの症状の原因につき,テオフィリン中毒と判断し,同日午後2時23分ころから,抗凝固剤としてフサンを用いて血液吸着療法を実施したが,約27分後に回路内で血液凝固を起こした。 エ被告は,同日午後3時40分ころ,抗凝固剤をヘパリン1000単位に変更して,血液吸着療法を実施したが,約20分後に再度,回路内で血液凝固を起こした。 オDは,同日午後4時20分ころ及び午後4時40分ころ,全身性硬直痙攣発作を起こした。 カ被告が,同日午後4時45分ころ,中心静脈ラインを確保するために,Dの右鼠径部にカテーテルを挿入したところ,シリンジ内で凝血塊ができた。また,その数分後から,血尿が出現した。 キ被告は,肺塞栓の可能性を考え,同日午後5時10分ころ,Dに対し,ヘパリン5000単位を投与した。 ク被告は,同日午後6時40分ころ,血圧が低下したため,DをICUに収容し,治療と並行して,輸血のためのクロスマッチ(交差適合試験)を行ったが,結論が出なかった。 ケ同日午後8時35分ころ,Dの血液中のヘモグロビン値が2.9に低下したため,被告は,同日午後8時37分ころ,人赤血球濃厚液(MAP)の輸血を開始し,合計24単位を輸血した。 コ被告は,同日午後8時40分ころ,Dの心拍が低下したため,心臓マッサージ,ボスミン,キシロカインの投与等の治療を行ったが,Dは,同日午後9時28分に,死亡が確認された。死亡診断書では,死因は出血性ショ は,同日午後8時40分ころ,Dの心拍が低下したため,心臓マッサージ,ボスミン,キシロカインの投与等の治療を行ったが,Dは,同日午後9時28分に,死亡が確認された。死亡診断書では,死因は出血性ショックによる肺出血とされたが,後の剖検の結果では,テオフィリン中毒による急性左室不全並びに出血性ショックとされた。 争点 本件における争点は,①抗凝固剤の使用方法を誤った過失の有無,②カテーテル挿入の際に,血管を損傷した過失の有無,③ヘパリン5000単位を投与した過失の有無,④出血に対する止血措置を怠った過失の有無,⑤適切な輸血を怠った過失の有無,⑥因果関係の有無及び⑦損害額の7点である。 争点に関する当事者の主張(1)争点1(抗凝固剤の使用方法を誤った過失の有無)について(原告らの主張)本件で行われた血液吸着療法においては,フサンは使用禁忌であるにもかかわらず,被告は,これを使用した。また,ヘパリンを使用する場合は,2000単位ないし3000単位を開始時に使用すべきであるにもかかわらず,1000単位しか使用しなかった。 (被告の主張)フサンは吸着されやすいため,凝固に注意しながら使用する必要があるものの,使用自体が禁忌とされているわけではない。ヘパリンについても,文 献等では,開始時に2000単位ないし4000単位を投与するとされているものの,上記投与量は患者の状態により異なる上,本件では2回目の実施であったことも考慮すれば,1000単位の投与にとどまったことが不適切であったとはいえない。 (2)争点2(カテーテル挿入の際に,血管を損傷した過失の有無)について(原告らの主張)アDは,抗凝固剤であるヘパリンの投与を受けており,出血すれば止血が困難な状態であったのだから,被告は,Dの鼠径部にカテーテルを挿入するに当たり,挿入 した過失の有無)について(原告らの主張)アDは,抗凝固剤であるヘパリンの投与を受けており,出血すれば止血が困難な状態であったのだから,被告は,Dの鼠径部にカテーテルを挿入するに当たり,挿入操作を慎重に行うべきであったにもかかわらず,これを誤り,血管を損傷して,出血を招いた。 イ仮に痙攣があったのであれば,抗痙攣薬の投与により鎮静してから,カテーテルを挿入すべきであった。 (被告の主張)ア被告が,カテーテル挿入の際に,Dのいずれかの部位の血管を損傷したとの事実はない。仮に,何らかの損傷があったとしても,本件のように間欠的に全身性の痙攣を起こしている状態で大腿静脈にカテーテルを挿入する場合,留置後に,カテーテルの尖端により偶発的に血管を損傷するのはやむを得ないことであるから,被告に過失があったとはいえない。 イカテーテル挿入以前に相当量の抗痙攣薬が投与されていたこと,抗痙攣薬には血圧低下等の副作用があることを考慮すれば,カテーテル挿入時点で,抗痙攣薬を追加投与することは適切ではなかった。 (3)争点3(ヘパリン5000単位を投与した過失の有無)について(原告らの主張)Dは出血が続いている状態であったから,出血傾向を助長する効果を有する抗凝固剤であるヘパリンの投与は避けるべきであったにもかかわらず,被 告は,1月1日午後5時10分ころ,ヘパリン5000単位をワンショット投与した。肺塞栓に対する治療としては,肺血流及び換気スキャンで肺塞栓症に合致する所見が得られるとき,さらに,低血圧,ショックに陥っている例で,低血流スキャンを実施する余裕がない場合には,臨床症状と心エコー検査による右室拡大をもって,内科的治療を開始すべきとされるところ,Dには上記所見はなかったのであるから,肺塞栓の治療のためにヘパリンを投与する必要性はなか る余裕がない場合には,臨床症状と心エコー検査による右室拡大をもって,内科的治療を開始すべきとされるところ,Dには上記所見はなかったのであるから,肺塞栓の治療のためにヘパリンを投与する必要性はなかった。 (被告の主張)Dは,採血の際にシリンジ内で血液の凝固を生じるなど,血管内凝固又は血栓症の発生が疑われる状態であった。さらに,血栓が全身から肺に戻る事態が生じていたのであり,肺動脈本幹に血栓が詰まった場合,心停止や急速な血圧低下を来たし,死亡する可能性が高かったのであるから,このような事態を避けるためにヘパリンを投与したことは適切であった。また,肺血栓塞栓症の治療としてヘパリンを投与する場合,最初に体重×80単位をワンショット投与するとされていることからすれば,本件における投与量(5000単位)も適切であった。 (4)争点4(出血に対する止血措置を怠った過失の有無)について(原告らの主張)アDは,少なくとも2000ccの出血があり,出血性ショックとしては極めて重篤な状態に陥っていたのであるから,被告は,ダグラス穿刺,腹腔穿刺,超音波診断法等による出血部位の特定及び血液凝固因子量の測定による出血原因の特定を行い,出血の原因がカテーテル挿入時の血管損傷及び凝固因子の不足又は欠乏であることを特定すべきであった。 イまた,同日午後4時45分以降,血尿が止まらない状態となり,同日午後6時過ぎに実施された腹部CT検査の結果,骨盤内に造影剤が漏出し,血腫が認められていたのであるから,被告は,遅くとも上記時点で,開腹 による止血措置を行うべきであったにもかかわらず,これを怠った。 (被告の主張)ア被告は,膀胱洗浄,CT撮影,血小板検査等,出血部位及び出血原因の特定のために必要な検査を適切に実施している。当日は元日であったため,外注を要する にもかかわらず,これを怠った。 (被告の主張)ア被告は,膀胱洗浄,CT撮影,血小板検査等,出血部位及び出血原因の特定のために必要な検査を適切に実施している。当日は元日であったため,外注を要する血小板以外の血液凝固因子の検査は不可能であった。 イ被告は,Dに肉眼的血尿が認められた時点で,開腹を含む止血措置の実施を検討したが,循環状態が不安定な場合には手術死亡が高率になることなどを考慮して,開腹を行わなかったのであり,上記判断に誤りはない。 (5)争点5(適切な輸血を怠った過失の有無)について(原告らの主張)ア輸血開始の時期についてDは,ICUに入室した1月1日午後6時40分の時点で,出血量が2000ccに達していたのであるから,被告は,遅くとも上記時点で,輸血を開始すべきであったにもかかわらず,同日午後8時37分に至るまでこれを行わなかった。仮にクロスマッチができていなかったとしても,緊急時にはクロスマッチを省略することも可能であるところ,当時のDの症状からすれば,緊急かつ大量の輸血が必要だったのであるから,直ちに輸血を開始すべきであった。 イ輸注成分についてDの血液中の凝固因子はほぼすべて失われていたのであるから,被告は,輸血の際には,凝固因子を含む新鮮血又は新鮮凍結血漿(FFP)を使用すべきであったにもかかわらず,MAPのみを使用したことは不適切であった。 (被告の主張)ア輸血開始の時期について輸血の目的は,循環血液量及び酸素供給の確保にあるところ,本件では, 循環血液量は,プラズマネートカッター,アルブミン,ヘスパンダーの投与により,酸素供給は,人工呼吸器の使用により,それぞれ確保されていたのであるから,輸血の必要性は必ずしも高くはなかった。輸血が望ましかったことは確かであるが,本件では,クロスマッチに必要な ーの投与により,酸素供給は,人工呼吸器の使用により,それぞれ確保されていたのであるから,輸血の必要性は必ずしも高くはなかった。輸血が望ましかったことは確かであるが,本件では,クロスマッチに必要な血清と血球成分を得るための操作過程で,Dの血液が固まらなかった上,テオフィリン中毒がいかなる影響を及ぼすのかについて明らかではなかったこと,検査中にフィブリンの析出が認められたことからすれば,輸血の開始には慎重にならざるを得ない状態であったから,クロスマッチの結果が出るまで輸血を控えようとしたことが不適切であったとはいえない。 イ輸注成分についてDに生じた出血の原因がテオフィリン中毒による血小板凝集抑制であったと仮定すれば,FFPの投与には意味がない。また,出血原因がDIC(汎発性血管内凝固症候群)であった場合,一般的にはFFPの投与に意味があるが,Dは,血液中のフィブリノーゲン濃度が98であったから,本件では,FFPの投与は必要なかった。さらに,FFPによる副作用の危険性も考慮すれば,FFPを投与しなかったことが不適切であったとはいえない。 (6)争点6(因果関係の有無)について(原告らの主張)アDは,血液吸着療法における2度の血液凝固により凝固因子を大量に消費し,凝固障害を引き起こした上,持続的な血尿の流出,カテーテル挿入時の血管損傷及びその他の部位からの出血により,4000ないし5000ccの大量出血を来たし,出血性ショックから心停止に陥り,死亡したのであるから,被告の各過失とDの死亡との間には,因果関係が認められる。 イテオフィリン中毒が,血液凝固作用等を含む人体の生理にいかなる影響 を与えるかは不明であり,出血とテオフィリン中毒とを結びつける論拠はないから,テオフィリン中毒がDの死亡に影響を与えたとは考え難い。そも リン中毒が,血液凝固作用等を含む人体の生理にいかなる影響 を与えるかは不明であり,出血とテオフィリン中毒とを結びつける論拠はないから,テオフィリン中毒がDの死亡に影響を与えたとは考え難い。そもそも,A病院におけるテオフィリン検査の結果は,誤検査としか考えられず,Dがテオフィリン中毒であったか否かも疑わしい。 (被告の主張)アDの体重が53.8kgであったことからすれば,同人の全血液量は約3700ccであるから,4000ないし5000ccの出血が生じることはあり得ない。輸血開始以前にも,アルブミンの投与等により,Dの血圧は70ないし80mmHg程度に維持されていたのであり,この程度の血圧低下により,短時間に多臓器に機能不全が生じることは考え難いから,同人の死因は,出血性ショックではない。 イDは,血中テオフィリン濃度が致死量を超えていた(1回目測定時103.50μg/ml,2回目測定時62.88μg/ml)のであるから,主たる死因は,①テオフィリンによる脳血管の収縮により生じた脳虚血に起因する中枢性ショック,②テオフィリンの心筋毒性により生じた肺水腫に起因する心不全,③テオフィリンによる血管拡張による循環量の減少に起因するショックのいずれか(肺のうっ血が主な病理所見であることからすれば,上記②の可能性が高い。)又はこれらが複合的に発生したことによるものであったと考えられる。したがって,Dに仮に出血性ショックがあったとしても,上記症状と複合的に発生したものであるから,原告の主張する各過失と,Dの死亡との間には因果関係がない。 (7)争点7(損害額)について(原告らの主張)D及び原告らは,本件医療事故により,以下の損害を受けた。(合計8817万3780円)ア逸失利益 4865万7982円(賃金センサス平成11年男子労働者 7(損害額)について(原告らの主張)D及び原告らは,本件医療事故により,以下の損害を受けた。(合計8817万3780円)ア逸失利益 4865万7982円(賃金センサス平成11年男子労働者学歴計562万3900円を基礎収入,就労可能期間を18歳から67歳まで,生活費控除率を50パーセントとして,中間利息をライプニッツ式(係数は17.304)で控除して算定)イ死亡慰謝料2000万円ウ近親者固有慰謝料各500万円エ葬儀費用150万円オ弁護士費用801万5798円(被告の主張)争う。 第3当裁判所の判断 認定事実前記前提事実,後掲各証拠及び弁論の全趣旨によれば,以下の各事実が認められる。 (1)Dは,2歳ころから喘息の持病があり,この治療のためA病院に入通院を繰り返し,本件当時,A病院において処方されたテオロングを服用していた。(甲A2,原告B本人)(2)Dは,1月1日午前1時ころ,嘔吐して悪心等の症状を訴え,同日午前4時30分ころ,A病院を受診した。A病院においてはE医師が診察し,血液検査を行ったところ,同日午前8時ころ,血中テオフィリン濃度が,致死量域を超える103.50μg/mlの高値であることが判明した。(甲A2,A4・2頁,5頁,乙A1・2頁,48頁,乙A21,証人E,原告 B本人)(3)被告は,胃洗浄,活性炭投与を実施した上で,同日午後2時23分ころから,抗凝固剤としてフサンを使用して(投与量は,開始時に50mgをワンショット投与,その後,1時間当たり50mgを持続注入),活性炭による血液吸着療法を開始したが,同日午後2時50分ころ,回路内で血液が凝固したため,これを中止した。(乙A1・2頁,49頁,乙A22,証人E)(4)被告は,同日午後3時40分ころから,抗凝固剤をヘ る血液吸着療法を開始したが,同日午後2時50分ころ,回路内で血液が凝固したため,これを中止した。(乙A1・2頁,49頁,乙A22,証人E)(4)被告は,同日午後3時40分ころから,抗凝固剤をヘパリンに変更し(投与量は,開始時に1000単位をワンショット投与,その後,1時間当たり1000単位を持続注入),再度,血液吸着療法を開始したが,同日午後4時ころ,回路内で血液が凝固したため,これを中止した。(乙A1・2頁,49頁,50頁,乙A22,証人E)(5)血液吸着療法を中止した後に行った血液検査では,血中テオフィリン濃度62.88μg/mlとの結果であった。(甲A4・5頁,乙A1・3頁)(6)Dは,同日午後4時20分ころ,3分間ないし4分間にわたり,全身性硬直痙攣発作を起こした。また,同日午後4時40分ころにも,同様の発作を起こした。(乙A1・2頁,50頁)(7)被告が,同日午後4時45分ころ,中心静脈ラインを確保するために,Dの右鼠径部にカテーテルを挿入したところ,シリンジ内に凝血塊が認められた。また,カテーテル挿入の数分後から,血尿が出現し,以降,止まらなくなった。(乙A1・2頁,51頁)(8)被告は,同日午後5時10分ころ,肺塞栓等の発症を考慮して,心エコー検査を実施したところ,肺塞栓,冠動脈塞栓は否定的であったが,なお,血栓による肺動脈主幹部の閉塞の危険性を考慮して,ヘパリン5000単位をワンショット投与した。また,出血源を精査するためのCT検査をした結 果,骨盤内に血腫が認められた。(乙A1・2頁,証人E)(9)同日午後6時40分ころ,Dの収縮期血圧が70mmHg台となり,血尿も続いていたため,被告は,出血性ショックと判断し,プラズマネートカッターを投与し,ICUに移した上で,右橈骨静脈にラインを確保して 同日午後6時40分ころ,Dの収縮期血圧が70mmHg台となり,血尿も続いていたため,被告は,出血性ショックと判断し,プラズマネートカッターを投与し,ICUに移した上で,右橈骨静脈にラインを確保して,アルブミン,ヘスパンダーを投与した。(乙A1・3頁,10頁,25頁,弁論の全趣旨)(10)Dには,同日午後7時ころから全身性の痙攣が見られたが,セルシンの投与により改善した。また,E医師は,このころ,MAPの準備を指示し,クロスマッチを実施したが,結論が出なかった。(乙A1・3頁,25頁,証人E)(11)同日午後8時35分ころ,Dのヘモグロビンが2.9まで低下したため,被告は,クロスマッチの結果を待たずに,MAPの輸血(最終的な総投与量24単位)を開始した。(乙A1・3頁,10頁,26頁,証人E)(12)同日午後8時40分ころ以降,Dの心拍が低下し,被告は心臓マッサージ,ボスミン,硫酸アトロピン,キシロカインの投与等を実施したが,同日午後9時28分,死亡が確認された。死亡診断書においては,死因は出血性ショックによる肺出血とされた。(乙A1・3頁,10頁,26頁,27頁,52頁)(13)A病院のF医師は,同日から翌2日にかけて,Dの剖検を行い,小骨盤腔内並びに両側腎下極に至る後腹膜腔内出血,小骨盤腔から腹腔内への血液の波及,膀胱壁全層の瀰漫性出血等を認めたが,血管壁破綻を思わす所見は認められず,Dの直接死因につき,テオフィリン中毒による急性左室不全並びに出血性ショックと推定されるが,血液凝固能低下に基づく出血とテオフィリンとの直接の因果関係については,明快な結論が得られていないなどと報告した。(乙A20,乙A24,証人F) 争点1(抗凝固剤の使用方法を誤った過失の有無)について (1)この点についての3名の鑑定人によ 果関係については,明快な結論が得られていないなどと報告した。(乙A20,乙A24,証人F) 争点1(抗凝固剤の使用方法を誤った過失の有無)について (1)この点についての3名の鑑定人による複数鑑定(討議方式)の結果(補充鑑定を含む。以下同じ。)は,以下のとおりである。 ア本件での血液吸着療法において,フサンを使用しても,回路内の抗凝固作用を示さないから,その使用は必ずしも適切であったとはいえないが,患者の生命予後に影響を及ぼすものでもないから,禁忌であったとはいえない。また,ヘパリンの投与量も不十分であった可能性が高いが,患者の出血傾向,出血性病変の有無が不明な状態では,可能な限り少量から使用したことはやむを得なかった。 イ体外循環維持の回路内血液凝固の際,当初から患者血液自体に過凝固,血栓形成傾向を認めることはあるが,強制的に返血を試みない限り,患者生理に影響することは通常考え難い。 (2)これに対し,G医師作成の意見書(甲B11,以下「G意見書」という。)の意見は,以下のとおりである。 ア活性炭療法においては,フサンはほぼ100パーセント活性炭に吸着され,抗凝固剤としての役割を果たさないから,使用は禁忌とされており,このことは文献(甲B7・8頁)にも明記されている。また,ヘパリンは,開始時に2000ないし3000単位を使用するよう指示されているにもかかわらず,被告は,1000単位しか使用しなかったのであるから,抗凝固剤の使用方法に誤りがあった。 イ前記のとおり,抗凝固剤の使用方法に誤りがあった結果,回路内での血液凝固系の活性化と血栓形成,消費性凝固障害を生じ,出血を招いた。 (3)そこで検討すると,本件において,フサンの使用が,回路内の抗凝固作用の観点からは無意味であったことについては,複数鑑定及びG意見書が一 活性化と血栓形成,消費性凝固障害を生じ,出血を招いた。 (3)そこで検討すると,本件において,フサンの使用が,回路内の抗凝固作用の観点からは無意味であったことについては,複数鑑定及びG意見書が一致して認めている。さらに,G意見書は,文献(甲B7・8頁)の記載からすれば,フサンの使用は禁忌であったとしているが,同文献の記載部分は,活性炭療法においては,フサンはほぼ100パーセント活性炭に吸着される ため,抗凝固剤として効果がないことを示すにとどまり,これにより何らかの悪影響を生じるとの趣旨を含むものとは解されないから,フサンの使用が禁忌であったとまでは認めることができない。また,ヘパリンの使用について,G意見書は,同文献上,血漿交換療法開始時におけるヘパリンの投与量が2000ないし3000単位とされていることを指摘するものの,同文献には,「患者の血液凝固系の状態に応じて投与方法は医師の指示に従って決定して下さい。」との付記がされていることからすれば,上記投与量は絶対的基準ではないものと解される。したがって,患者の出血傾向,出血性病変の有無が不明であったことを理由に,可能な限り少量から使用したことはやむを得なかったとした複数鑑定の結論を覆すものではないというべきであるから,ヘパリンの使用量が不適切であったと認めることもできない。よって,被告に,抗凝固剤の使用方法を誤った過失があったと認めることはできない。 (4)したがって,この点についての原告らの主張は,採用することができない。 争点2(カテーテル挿入の際に,血管を損傷した過失の有無)について(1)この点についての複数鑑定の結果は,以下のとおりである。 ①CT画像及び腹部単純写真において,カテーテルが右大腿静脈及び下大腿静脈内に認められないこと,②CT画像において,カテーテル について(1)この点についての複数鑑定の結果は,以下のとおりである。 ①CT画像及び腹部単純写真において,カテーテルが右大腿静脈及び下大腿静脈内に認められないこと,②CT画像において,カテーテルを中心に血腫の形成が認められること,③造影後のCT画像において,カテーテル周囲の血腫内に造影剤の血管外漏出が認められており,出血が疑われること,④カテーテル挿入後に,肉眼的血尿,ヘモグロビン値の低下,代謝性アシドーシス等が出現していることからすれば,カテーテル挿入時の手技等に不適切な点があったため,穿刺の際に動脈を損傷し,また,穿刺部位より約3cm頭側で静脈を損傷し,静脈外に留置されている可能性が高い。 (2)これに対し,H医師作成の意見書(乙B13,以下「H意見書」という。)の意見は,以下のとおりである。 ①CT画像上,一見すると,カテーテルが静脈外に留置されているかのように見えるものの,パーシャルボリューム効果(単位体積中に吸収値を異にする複数の物質が含まれている場合に,その内容物が占める割合に応じて,CT画像上で表現される吸収値が変化し,その結果,組織の辺縁が不明瞭になる現象)及びビームハードニング(連続X線が物質を通過する際,低エネルギーの方がより多く吸収され,結果的にエネルギーピークが高い方に移動することにより,異常画像が発生する現象)を考慮すれば,直ちに静脈外にあると判断することはできず,仮にカテーテルが静脈外に出ていたのであれば,カテーテルから注入された液体が漏出したはずであるにもかかわらず,剖検の際に,このような事実は確認されていないこと等の事情を考慮すれば,カテーテルの先端は,下大静脈内にあったと考えるほかないこと,②血腫は様々な方向に広がるため,カテーテルを中心に血腫が存在することをもって,当該部位から出血があっ ていないこと等の事情を考慮すれば,カテーテルの先端は,下大静脈内にあったと考えるほかないこと,②血腫は様々な方向に広がるため,カテーテルを中心に血腫が存在することをもって,当該部位から出血があったものと認めることはできず,膀胱周囲の後腹膜付近に,新しい出血に一致する血管外の造影剤の溜まりがあることからすれば,出血部位は上記部位であったと考えられること,③カテーテルから造影剤が直接漏出した場合,原液のまま漏出することになり,この場合,ハレーションを引く程の高信号が認められるはずであることからすれば,本件CT画像で見られた造影剤は,カテーテルから直接漏出したものではなく,肺や心臓を通って希釈されたものであると考えるのが整合的であること等の事情を総合すれば,複数鑑定の示す根拠はいずれも合理性を欠いており,カテーテルによる静脈損傷等があったとは考えられない。 (3)以上のとおり,複数鑑定とH意見書は,CT画像の読影方法に関し,複数の点において一致していないので,以下に検討する。 ア①の点につき,複数鑑定は,CT画像上,カテーテルが右大腿静脈及び下大腿静脈内に認められないことから,カテーテル挿入時に血管損傷が生じたとの結論を導いているのに対し,H意見書は,CT画像上,カテーテ ルが静脈外にあるかのように見えるものの,パーシャルボリューム効果及びビームハードニングを考慮すれば,直ちに静脈外にあるものと断定することはできず,剖検時に,漏出した液体が認められなかったことを考慮すれば,むしろ,静脈内にあったと考えるのが妥当であるとしている。そこで検討すると,CTの構造上,パーシャルボリューム効果,ビームハードニング等による偽像が発生する可能性があるとの一般的知見は認められるものの,これが本件のCT画像について,具体的にいかなる影響を及ぼした すると,CTの構造上,パーシャルボリューム効果,ビームハードニング等による偽像が発生する可能性があるとの一般的知見は認められるものの,これが本件のCT画像について,具体的にいかなる影響を及ぼしたかはH意見書によっても明らかではないこと,複数鑑定は,カテーテルが穿刺部では静脈内にあるが,より頭側のスライスでは大腿静脈の腹側に,さらに頭側のスライスでは大腿静脈の左側に位置しているとするなど具体的かつ説得的であること,このような判断は,ハレーションを考慮してもなお,穿刺部位より約3cm頭側で静脈を損傷し,カテーテルが静脈外に留置されている可能性が高いとするものであって,CTの構造上生じ得る誤差を考慮した上での結論であると解されること等の事情を総合すれば,CT画像上の所見としては,カテーテルが静脈外に留置されている可能性が高いというべきである。また,剖検の際に漏出した液体の存在は確認されていないものの,Dについては,鼠径部のほか,右橈骨静脈にもルート確保がされており,いずれから,どの程度の量の輸注がされたかについては明らかではないこと,剖検時点は,カテーテルからの液体の漏出は特段考慮されていなかったと考えられるから,漏出が存在しなかったと断定することはできないこと等の事情を考慮すれば,上記事実から直ちに,カテーテルが静脈外に出ていたとの事実を覆すことはできないというべきである。 イさらに,H意見書の②の点について,血腫が様々な方向に広がる場合があるとしても,カテーテルの中心に血腫が存在することは,出血部位がその付近であることを推認させる事実であることは否定できないこと,③の 点について,造影剤がいずれの部位から投与されたかは明らかではない上,本件のCT画像が,カテーテルから造影剤が直接漏出した場合の所見と矛盾するものであることを裏 ることは否定できないこと,③の 点について,造影剤がいずれの部位から投与されたかは明らかではない上,本件のCT画像が,カテーテルから造影剤が直接漏出した場合の所見と矛盾するものであることを裏付けるに足りる的確な証拠はないことに加え,カテーテル挿入以前から,Dに凝固異常が生じていたとしても,肉眼的血尿等が生じたのは,カテーテル挿入の直後であったとの時間的経過からすれば,カテーテルによる血管損傷を推認させる事実であることは否定できないこと,研修医として本件診療に関与していたI医師が,剖検時の記録(乙A1・8頁)において,「小骨盤に大きな出血塊があり,右鼠径部からのWルーメン挿入時,血管を損傷したことによる出血であろう」と記載していること(なお,証人Fは,上記記載は,I医師が勝手に書いたものである旨証言するが,研修医が,医療記録に,自己の判断を他の医師に無断で記載することは考え難いから,上記証言は,直ちに信用することができないといわざるを得ない。)等の諸事情を総合すれば,Dの鼠径部に挿入されたカテーテルの先端が,静脈に入った後,血管を損傷して,静脈外に留置されたものと認めるのが相当であって,上記認定を覆すに足りる証拠はない。 (4)そして,一旦はカテーテルを正常に静脈内に留置したにもかかわらず,痙攣等により移動して血管を損傷するということは,通常考え難いというべきであるから(被告は,構造上このような事態もあり得る旨を主張するようであるが,その具体的機序については何ら主張がない上,カテーテル留置後血尿ないし血腫が生じるまでの間に,痙攣が起きたことを認めるに足りる証拠もないから,被告の主張は採用することができない。),被告には,カテーテルを適切に挿入しなかったために血管を損傷するに至った点において,過失があったといわざるを得ない。 たことを認めるに足りる証拠もないから,被告の主張は採用することができない。),被告には,カテーテルを適切に挿入しなかったために血管を損傷するに至った点において,過失があったといわざるを得ない。 (5)したがって,この点についての原告らの主張には理由がある。 争点6(因果関係の有無)について (1)Dの死因についてこの点につき,被告は,①テオフィリンによる脳血管の収縮により生じた脳虚血に起因する中枢性ショック,②テオフィリンの心筋毒性により生じた肺水腫に起因する心不全,③テオフィリンによる血管拡張による循環量の減少に起因するショックのいずれか又はこれらが複合的に発生したことにより心不全に陥ったものであり,仮に出血性ショックがあったとしても,大きな影響はなかった旨を主張する。しかしながら,A病院において剖検を担当した証人Fが,明確に,テオフィリンの心筋毒性により心筋損傷を生じて,急性左室不全に陥ったとの機序を認めるに足りる所見はなく,死因は出血性ショックであった旨証言していること,J医師作成のテオフィリン中毒に関する意見書(乙B14,以下「J意見書」という。)は,本件でDに見られた症状が,いずれもテオフィリン中毒により生じたものであるとの説明が可能であるとするにとどまり,Dが死亡した具体的機序については何ら言及していないこと,Dの出血量は少なくとも2000ccを超えており(証人F,複数鑑定の結果),同人の体重から推定される循環血液量を考慮した場合,出血性ショックを生じ得る程度の出血があったものと考えられること,死亡診断書作成時点では,出血性ショックとの診断がされていたこと(乙A1・56頁)等の事情を総合すれば,Dの死因は,出血性ショックであったと認めるのが相当である。 (2)出血性ショックの原因についてアこの点につい は,出血性ショックとの診断がされていたこと(乙A1・56頁)等の事情を総合すれば,Dの死因は,出血性ショックであったと認めるのが相当である。 (2)出血性ショックの原因についてアこの点についての複数鑑定の結果は,以下のとおりである。 (ア)血管損傷による急性出血があれば,大量の凝固因子,血小板の消費を引き起こし,血液凝固障害に影響を与えるとともに,腹腔内大出血と血尿を生じ,出血性ショック,重症代謝性アシドーシスから,肺出血,多臓器不全へと進展し,死亡した可能性がある。 (イ)文献において,テオフィリン中毒により出血傾向又は血液凝固障 害を生じた例は報告されていないこと,剖検において認められた出血が,後腹膜腔,腹腔内,膀胱周囲に限局していることからすれば,テオフィリン中毒は,出血の原因及び程度に影響を与えていない。 イこれに対し,H意見書及びF証言を総合すると,概要,以下のとおりである。 (ア)仮に血管損傷があったとしても,カテーテルが留置されたままの状態であれば,カテーテルにより穴が塞がれるため,出血性ショックに至る程度の出血を生じることは考え難い。 (イ)(ア)のとおり,血管が破綻したことによる出血が生じていないとすれば,Dの出血の原因は,凝固異常と考えられるところ,その原因は,テオフィリン中毒以外に考え難い。 ウそこで検討すると,前記認定事実によれば,A病院入院中の2回の検査において,Dの血中テオフィリン濃度は,1回目が103.50μg/ml,2回目が62.88μg/mlとの結果であったことが認められるところ(なお,原告らは,上記検査結果は誤りである旨を主張するが,血中テオフィリン濃度が100μg/ml程度まで上昇した後に,回復した例も報告されていること(乙B9・101頁),他に上記測定の正確性を疑うに足り 原告らは,上記検査結果は誤りである旨を主張するが,血中テオフィリン濃度が100μg/ml程度まで上昇した後に,回復した例も報告されていること(乙B9・101頁),他に上記測定の正確性を疑うに足りる事情はないこと(複数鑑定の結果)等を考慮すれば,上記検査結果が誤りであったと認めることはできない。),血中テオフィリン濃度は40ないし60μg/ml程度で,すべての患者の中毒域とされること(乙B8・1195頁)からすれば,Dは,A病院受診時点で,テオフィリン中毒の状態であったと認められる。 エしかしながら,テオフィリン中毒により,出血,血液凝固異常等を生じ,出血性ショックを発症し得るとの医学的知見が存在しないことについては,証人Fも認めるところであり,さらに,Dの血中テオフィリン濃度は,A病院受診時以降,改善傾向にあったことをも考慮すれば,Dの死因となっ た出血性ショックが,テオフィリン中毒により生じたものであることを積極的にうかがわせる事情はないというべきである。 これに対し,前記認定のとおり,カテーテル挿入時に血管損傷が生じていること,一般的には,カテーテルにより血管が塞がれることにより,大量出血には至らないとしても,本件では,カテーテル挿入時の動脈損傷も疑われる上(複数鑑定の結果),カテーテル挿入以前に2回にわたり血液吸着療法が実施され,その際に,抗凝固剤としてフサン及びヘパリンが投与されたことにより,出血傾向が助長されていた可能性が高いことを考慮すれば,前記動脈及び静脈血管の損傷による出血が,出血性ショックの原因であったと認めるのが相当である。 オなお,証人Fは,剖検において,後腹膜腔,腹膜内,膀胱壁及び膀胱内の4か所に出血が認められたところ,後腹膜腔の出血については,大腿静脈の破綻による出血と考えることが可能であるが,その 当である。 オなお,証人Fは,剖検において,後腹膜腔,腹膜内,膀胱壁及び膀胱内の4か所に出血が認められたところ,後腹膜腔の出血については,大腿静脈の破綻による出血と考えることが可能であるが,その他の部位の出血については,後腹膜腔の出血が逆流して膀胱内等に入ることは考え難いから,上記原因によるものではあり得ないことからすれば,上記出血はいずれも,血管損傷による破綻性の出血ではなく,凝固異常による瀰漫性の出血であったと考えられる旨を証言している。しかしながら,仮に同証言の医学的知見が正当であったとしても,大腿静脈の破綻性出血とは別個に,腹腔内,膀胱壁及び膀胱内の出血を惹起する原因が存在したことも考えられるところ,この点につき同証人は,「膀胱壁がばっと壊れて,血管が破綻してどっと漏れたような漏れ方では全然ない」とするのみで,具体的な説明はしていない上,膀胱壁の出血原因が破綻性出血ではないことから直ちに,大腿静脈に破綻性出血があったことを否定することはできないというべきであるから,この点についてのF証言は,直ちに採用することができないといわざるを得ず,少なくとも後腹膜腔に生じた出血は,血管損傷に起因するものであったと認められる。 そして,仮に腹膜内,膀胱壁及び膀胱内の出血が,血管損傷以外の原因によるものであったとしても,後腹膜腔のみでも,2000ccを超える猛烈な出血があったのであり(証人F),Dの体重から推定される循環血液量を考慮すれば,後腹膜腔からの出血が,出血性ショックの主たる原因であったものと認めるのが相当であるから,結局,前記認定を覆すものではないというべきである。 (3)したがって,被告がDの血管を損傷した過失と,同人の死亡との間には因果関係があるというべきであるから,この点についての原告らの主張には理由がある。 を覆すものではないというべきである。 (3)したがって,被告がDの血管を損傷した過失と,同人の死亡との間には因果関係があるというべきであるから,この点についての原告らの主張には理由がある。 争点7(損害額)についてD及び原告らが本件医療事故により被った損害は,以下のとおりと認められる。 (1)逸失利益Dは,当時17歳の男子であったことが認められるから,逸失利益については,基礎収入を賃金センサス平成11年男性労働者学歴計年収562万3900円,就労可能年数を18歳から67歳までの49年間,生活費控除率を50パーセントとして,中間利息をライプニッツ式(50年間の係数は18.2559,1年間の係数は0.9523)で控除して算定するのが相当である。 (計算式)562万3900円×(1-0.5)×(18.2559-0.9523)=4865万6858円(1円未満切捨て)(2)慰謝料本件事実経過,過失の態様その他本件に現れた一切の事情を考慮すれば,慰謝料は,D本人につき2000万円,原告らにつき各200万が相当である。 (3)葬儀費用Dの死亡にかかる葬儀費用については,150万円を本件と相当因果関係のある損害と認めるのが相当である。 (4)損害賠償額原告らは,上記(1)ないし(3)のうち,Dに生じた損害に係る部分を,相続分に従って相続したものであるから,被告に負担させるのが相当な損害賠償額は,原告ら各自につき,上記(1)ないし(3)の合計額7415万6858円の2分の1である3707万8429円に,弁護士費用370万円を加算した,4077万8429円となる。 第4 結論 よって,原告らの請求は,その余の争点につき判断するまでもなく,被告に対し,各金4077万8429円及びこれに対する平成13年1月1日から支払済みまで した,4077万8429円となる。 第4 結論 よって,原告らの請求は,その余の争点につき判断するまでもなく,被告に対し,各金4077万8429円及びこれに対する平成13年1月1日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で理由があるから,上記限度で認容し,その余の請求は理由がないからこれを棄却することとし,訴訟費用の負担につき民訴法64条,61条,65条を,仮執行宣言につき同法259条1項を適用して,主文のとおり判決する。 千葉地方裁判所民事第2部裁判長裁判官小磯武男裁判官田原美奈子 裁判官阿保賢祐
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