【DRY-RUN】主 文 本件控訴はこれを棄却する。 当審における訴訴費用は全部被告人の負担とする。 理 由 本件控訴の趣意は弁護人服部訓子及び被告人本人提出にかかる
主文 本件控訴はこれを棄却する。 当審における訴訴費用は全部被告人の負担とする。 理由 本件控訴の趣意は弁護人服部訓子及び被告人本人提出にかかる各控訴趣意書記載のとおりであるから、ここにこれらを引用し、これに対し次のとおり判断する。 弁護人の控訴趣意について。 所論は、原判決には法令適用の誤りがあり、破棄を免れないとし、その理由とするところは要するに、自動車の保管場所の確保等に関する法律第五条第二項及び同法施行令第二条は憲法第三十一条に違反し無効である。即ち、憲法第三十一条は罪刑の法定が適正であることを要求しており、従つて刑罰規定を設けるに当つては実質的な処罰の必要とその根拠が十分に明白に認められることが必要である。ところで、自動車の保管場所の確保等に関する法律第五条第二項及び同法施行令第二条によれば、東京都二十三区の道路幅五・五メートル以下の道路はほとんどが夜間駐車を禁ぜられているといつても過言でない。蓋し、同法施行令による除外事由としての駐車可能区域の指定は満足に行われていないからである。この結果、東京都二十三区においては、自動車の保管場所の確保等に関する法律第五条第二項は、具体的に渋滞等の虞れのある道路のみならず、このような具体的可能性がなく、単に「混雑し得る」という抽象的可能性のあるに過ぎない道路についても適用されているのである。現下における東京都区内は経済の巨大化に伴い不夜城と化し、多くの人は、生計を得るため、夜間と雖も、道路に駐車せざるを得ない状況にあり、而も公営の駐車場が完無に等しい現在、右の如く、単に「混雑し得る」という抽象的可能性の存在するに過ぎない区域、即ち、具体的に渋滞の虞れのない区域―道路と名の付く限りどの道路においてもこのような抽象的可能性は存するものであ に等しい現在、右の如く、単に「混雑し得る」という抽象的可能性の存在するに過ぎない区域、即ち、具体的に渋滞の虞れのない区域―道路と名の付く限りどの道路においてもこのような抽象的可能性は存するものであり、本件駐車地点はまさにこれに該当する―における駐車に対してまで刑事罰を規定したことは行き過ぎであり、憲法第三十一条に違反し、無効である、というにある。 よつて案ずるに、一、 自動車の保管場所の確保等に関する法律は第一条において、道路使用の適正化と道路交通の円滑化を企図し道路を自動車の保管場所として使用しないよう義務づけることを目的とするものであることを明らかにしており、同法第三条においては自動車の保有者に道路上の場所以外の場所において当該自動車の保管場所を確保することを要求し、同法第四条においては右保管場所を確保していることを登録の要件、即ち、自動車保有の要件とする(道路運送車両法第四条―但し軽自動車等一部の自動車を除く)と共に、同法第五条第二項において、原則として、自動車を道路上同一場所に引き続き十二時間以上、あるいは夜間に道路上の同一の場所に引き続き八時間以上、駐車することとなるような行為を禁じている。而して同法施行令第二条において、前記自動車の保管場所の確保を要する区域を、東京都においては、特別区の存する区域、八王子市、立川市、武蔵野市、三鷹市、府中市、調布市、町田市を指定(同施行令別表)すると、共に同法施行令第三条第一項本文において前記同法第五条第一、二項の適用区域を同施行令別表(第二条の別表と同じ)のとおり定めた上、同法施行令第三条第一項但書において当該地域を管轄する都道府県公安委員会が同項各号に掲げる基準に該当する区域として当該地域内の区域を指定したときはその指定に係る地域を除外する旨規定している。これによれば、東京都二十 一項但書において当該地域を管轄する都道府県公安委員会が同項各号に掲げる基準に該当する区域として当該地域内の区域を指定したときはその指定に係る地域を除外する旨規定している。これによれば、東京都二十三区においては、幅員五・五メートル以下の道路では、道路上の同一場所に引き続き十二時間以上、あるいは夜間に道路上の同一の場所に引き続き八時間以上、駐車することとなるような行為を禁ぜられていることが明らかである。 二、 そもそも道路とは一般交通の用に供する道その他の場所をいうのであるが、近来道路の政治、社会、経済、文化等の面でもつ重要性は日毎に増大し、その機能の確保は国民生活上不可欠のものとなつている。従つて道路を常に本来の用途に即して使用できるよう確保することは現下緊要な国民的課題である。而して、わが国においては、近時自動車が急激に増加し、特に大都市の道路交通量は道路容量を遥かに上廻り、甚だしい交通の渋滞を招いていることは周知の事実であり、又、自動車の長時間に亘る路上放置は、さなきだに狭い道路を一層狭降なものとし、交通の混雑に拍車をかけると共に、すべての国民の自由に使用し得る道路を特定の個人が私するものとして、本来の用途に即した道路の適正な使用と認め難いことは、これ又多言を要しないところである。自動車の保管場所の確保等に関する法律(以下法と略称する。)は、右の事態に鑑み、道路交通の円滑化と道路使用の適正化を図るため制定されたもので、立法の必要性と根拠はまことに明白といわねばならない。而して法は、同法第五条第二項の適用区域については、全国一律に適用する方式をとらず、同法第五条第三項、同法施行令第三条第一項本文により当該地域の道路交通状勢等に鑑み道路交通の円滑化を図る必要性の有無等を勘案して必要性のある地域を指定する方式をとると共に、同法第五条第三 式をとらず、同法第五条第三項、同法施行令第三条第一項本文により当該地域の道路交通状勢等に鑑み道路交通の円滑化を図る必要性の有無等を勘案して必要性のある地域を指定する方式をとると共に、同法第五条第三項、同法施行令第三条第一項但書により特別の用務を遂行するため必要がある場合その他につき政令で右適用地域内でも右適用を解除する旨定めており、法自体適用地域については行き過ぎのないよう十分配慮していることが明らかであり、而も、本件犯行の場所である東京都港区は東京都の中心部に位置しており、昭和三十七年本法制定当時より自動車の道路交通量が道路容量を上廻り、道路交通の円滑化と道路使用の適正化を要する地域であることは公知の事実であり、東京都港区が法第五条第二項の適用区域に指定されていることはまことに相当である。捜査報告書によれば、同書面には本件犯行当時犯行場所附近には交通規制はなく、夜間でもあつたため、被告人の長期駐車は他の交通に影響がなかつた旨の記載があり、所論は、右は本件犯行場所附近が法第五条第三項、同法施行令第三条第一項但書により適用を解除すべき地域であること及び所管官庁が怠慢により右の場合右解除区域の指定をなさず、これに因り法が現に単に「混雑し得る」という抽象的可能性の存在するに過ぎない区域にも適用されていることの証左である旨主張するが、本件犯行の場所が本件当時偶右の状況であつたとしても、これを以て同所附近が常時道路交通の円滑に著しい支障を及ぼす虞がない地域とみることは、東京都港区に法第五条第二項が適用されるに至つた前記認定事実等に徴し、相当でない。次に、法第五条第二項は、単なる道路上の駐車を禁じているのではなく、自動車が道路上の同一の場所に引き続き十二時間以上駐車することとなるような行為及び自動車が夜間(日没から日出時までの時間をいう。)に道 、法第五条第二項は、単なる道路上の駐車を禁じているのではなく、自動車が道路上の同一の場所に引き続き十二時間以上駐車することとなるような行為及び自動車が夜間(日没から日出時までの時間をいう。)に道路上の同一の場所に引き続き八時間以上駐車することとなるような行為に限つて禁じているのである。このような長時間駐車は法第五条第一項の保管場所としての使用ともみられ、道路交通の円滑化を著しく阻害するのみならず、道路使用の適正化という観点からみても到底許容できない所為である。以上の諸点に鑑みると、自動車の保有者等は右法条により右の限度に<要旨第一>おいて道路上に駐車をなし得ない結果不利益を受けることは否定できないが、法第五条第二項は、これら個人</要旨第一>の損失と禁止によつて得られる公益、即ち、道路交通の円滑化と道路使用の適正化の確保とを十分比較考量の上制定されたものであつて、而も、両者の調整は、適用区域の面においても、駐車時間の面においても、十分尽されていることは前記説示に徴し明白である。以上によれば、法第五条第二項は憲法第三十一条に違反するものではなく、論旨は理由がない。 被告人の控訴趣意について。 所論は、現在自動車は生活必需品となつているが、都心においては、殊に訪問先においては自動車の保管場所を確保することは不可能な状況である。にも拘らず、法は道路上の駐車を禁止している。右は自動車の使用を業務の一端としている者にとつては生活権の脅威である。而して都内には、国営、都営、区営の駐車場はないので、私設のそれに依存するのほかはないが、この場合一ケ月約二万円以上の出費が必要である。しかし、この出費は税法上必要経費としては認められない。かくては、自分の家業は東京都内では全く不可能となり、それは生活を失なうことを意味する。右の次第で、法第五条第二項は 円以上の出費が必要である。しかし、この出費は税法上必要経費としては認められない。かくては、自分の家業は東京都内では全く不可能となり、それは生活を失なうことを意味する。右の次第で、法第五条第二項は国民の生活権を不当に侵害するから、憲法第二十五条第一項に違反し無効である旨縷々論述する。 よつて按ずるに、憲法は、第二十五条第一項において、すべて国民は健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有することを規定すると共に、第十二条において、国民は、これ―国民に保障する自由及び権利―を濫用してはならないのであつて、常に公共の福祉のためこれを利用する責任を負ふ、と規定し、又、第十三条において、生命、自由、及び幸福追求に対する国民の権利については、公共の福祉に反しない限り、立法その他国政の上で、最大の尊重を必要とする、と規定している。而して法が道路交通の円滑化並びに道路使用の適正化を図るため制定されたもので、立法の必要性と根拠は共に明白であり、而も法第五条第二項は、その適用区域においても、駐車時間においても、これによつて実現を図る公益とこれによつて不利益を蒙むる個人の損失<要旨第二>とを比較考量の上、十分調和をとつていることは、弁護人の控訴趣意に対する判断において説示したとおりで</要旨第二>ある。 そうとすれば、自動車の保有者等に法の適用区域において法所定の長時間駐車が禁止されることは、公共の福祉を図るため、已むを得ないところであり、これを以て憲法第二十五条第一項に違反するものとなす所論は相当でない。 なお、所論は、本件駐車の事情に関し、審理不尽があり、本件は腹痛という不可抗力による旨主張するが、記録によりその主張の現われる経緯をみるに、被告人が本件発覚直後司法巡査に対して駐車事情等について述べた供述調書中には何等この点に関する弁解、即ち、腹痛に関 は腹痛という不可抗力による旨主張するが、記録によりその主張の現われる経緯をみるに、被告人が本件発覚直後司法巡査に対して駐車事情等について述べた供述調書中には何等この点に関する弁解、即ち、腹痛に関する主張はなされていないばかりか、右駐車の事情として、原判示日時、原判示場所附近のA方を訪れたところ、話が長びいて遅くなつたので、そのまま同家に泊つてしまつたためであると述べており、又、原審公判廷における詳細な本人質問においても腹痛に関する供述はいささかもなされていない。而して原審における被告人の最終陳述の際突如として仮定論とも見られる腹痛に関する主張が現われ、原審は判決においてこの主張を排斥したところ、被告人の控訴趣意書においては、事実としての腹痛の主張がなされるに至つている。右経過等に鑑みると、被告人の腹痛に関する主張は、にわかに信を措き難い。のみならず、仮に腹痛は事実としても、当審における被告人の供述によれば、被告人は右当日A方において下痢を伴う腹痛症状を呈したが、医師の手を煩わすこともなくA方において薬を服用したのみであり、而も、右下痢腹痛の程度は、屋外に出て自ら本件自動車を移動させることの不可能な状態ではなかつたにも拘らず、本件路上駐車の違法を知悉していながら、そのまま放置していたというのであるから、被告人が長時間に亘り本件駐車を継続したことは何等不可抗力によるものということはできない。論旨は理由がない。 よつて刑事訴訟法第三百九十六条により本件控訴を棄却し、刑事訴訟法第百八十一条第一項本文により当審における訴訟費用は全部被告人に負担させることとして、主文のとおり判決する。 (裁判長判事八島三郎判事栗田正判事中村憲一郎) 主文 こととして、主文のとおり判決する。 (裁判長判事八島三郎判事栗田正判事中村憲一郎)
▼ クリックして全文を表示