平成30年3月1日判決言渡平成29年(行ウ)第26号固定資産評価審査決定取消等請求事件主文 1 名古屋市固定資産評価審査委員会が原告に対して平成28年8月22日付けでした別紙1物件目録記載の土地に係る固定資産課税台帳に登録された平成27年度の価格についての審査の申出に対する決定のうち,4016万7900円を超える部分を取り消す。 2 原告のその余の請求を棄却する。 3 訴訟費用は,これを2分し,その1を原告の負担とし,その余は被告の負担とする。 事実 及び理由第1 請求 1 主文第1項と同旨 2 名古屋市長は,原告に対し,別紙2対象事項目録記載の事項(以下「本件対象事項」という。)について,書面により回答せよ。 第2 事案の概要 1 本件は,原告が,(1) 原告の所有する別紙1物件目録記載の土地(以下「本件土地」という。)が併用住宅地区に所在することを前提として定められた固定資産課税台帳登録価格に誤りはないにもかかわらず,本件土地が普通商業地区に所在しているため補正率の計算に誤りがあり地方税法(以下「法」という。)417条1項にいう重大な錯誤が認められるとして上記登録価格の修正がされたことは違法であるから,その修正に関する原告の審査の申出を棄却した名古屋市固定資産評価審査委員会の決定(以下「本件決定」という。)は違法であるとして,本件決定のうち修正前の上記登録価格を超える部分の取消しを求めるとともに,(2) 法433条5項に基づき,被告に対し,名古屋市長において本件対象事項に 関する照会に対する書面による回答を行うことを求める事案である。 2 関係法令の定め等(1) 関係法令の定め別紙3「関係法令の定め」のとおりである。 (2) 固定資産評価基準等の内容法388 る照会に対する書面による回答を行うことを求める事案である。 2 関係法令の定め等(1) 関係法令の定め別紙3「関係法令の定め」のとおりである。 (2) 固定資産評価基準等の内容法388条1項に基づく,平成28年総務省告示第145号による改正前の固定資産評価基準(昭和38年自治省告示第158号。以下「固定資産評価基準」という。乙2)及び固定資産評価基準の適用に当たっての被告の取扱いを定める,平成27基準年度名古屋市土地評価事務取扱要領(平成27年2月23日26財固第71号各市税事務所長宛て税務監名通達。以下「評価要領」という。乙3)の内容などのうち,本件に関連する部分の概略は,以下のとおりである。 ア(ア) 固定資産評価基準によれば,宅地は,周囲の利用状況を基準として,商業地区,住宅地区等に区分される。 さらに,商業地区は,繁華街,高度商業地区,普通商業地区等に区分され,住宅地区は,高級住宅地区,普通住宅地区,併用住宅地区等に区分される。(乙2の7頁,3)(イ) 上記(ア)の区分のうち,普通商業地区及び併用住宅地区について具体的に見ると,これらについては,平成20年8月11日総務省自治税務局資産評価室長通達「固定資産評価基準の一部改正について(通知)」を基にして,評価要領において定義がされている。 その定義によれば,普通商業地区とは,都市計画法で定める商業地域(おおむね容積率が600%未満),近隣商業地域内,あるいは,第1種住居地域,第2種住居地域,準住居地域,準工業地域内の幹線道路(国県道等)沿いに中低層(主として5階建て以下)の店舗・事務所等が連たんする商業地区であって,高度商業地区や繁華街地区と比較して資本投下量が少ない地区を指す。 また,併用住宅地区とは,商業地区の周辺部(主として都市計画法で定める商業 下)の店舗・事務所等が連たんする商業地区であって,高度商業地区や繁華街地区と比較して資本投下量が少ない地区を指す。 また,併用住宅地区とは,商業地区の周辺部(主として都市計画法で定める商業 地域,近隣商業地域内)あるいは第1種中高層住居専用地域,第2種中高層住居専用地域,第1種住居地域,第2種住居地域,準住居地域,準工業地域内の幹線道路(国県道等)沿いにあって,戸建て住宅が混在する小規模の店舗・事務所等の低層利用の建物を中心にマンション等の中層の建物も混在する地区を指す。 そして,用途地区の区分は,街路に沿接する宅地又は街路で囲まれた一団の宅地の利用状況を判断して行うものとされ,また,一の街路に沿接する宅地の一部又はブロック内の宅地の一部に利用状況が異なる宅地が介在している場合,一般的には,その介在している異なる利用状況の宅地についても,その街路又はそのブロック内の宅地の大数観察によって判断できる用途地区に包含するものとされる。(乙3の21・22頁,7,8)(ウ) さらに,被告においては,名古屋市財政局税務部固定資産税課作成に係る「名古屋市土地評価事務研修資料集平成27基準年度」において,普通商業地区及び併用住宅地区の区分につき,次のような取扱い(以下「細部取扱い」という。)が定められている。(乙8)a 普通商業地区・・・容積率はおおむね300ないし600%b 併用住宅地区・・・容積率はおおむね200ないし400%・下町的な地域で,住宅兼店舗・事務所等が混在している地区・幹線道路沿いにあって,低層の店舗・事務所等とマンション等の住宅や未利用地が混在している地区・商店街で衰退傾向にある地区(エ) 普通商業地区の定義における「連たん」(前記(イ))をどのように判断するかについては,通達等において明確な ンション等の住宅や未利用地が混在している地区・商店街で衰退傾向にある地区(エ) 普通商業地区の定義における「連たん」(前記(イ))をどのように判断するかについては,通達等において明確な定めはないものの,名古屋市固定資産評価審査委員会(以下「審査委員会」という。)では,運用上,街路沿いの各筆の間口距離や筆数に占める割合を基準として,おおむね5割以上が中低層の店舗・事務所等であれば,「連たん」の要件が満たされるものと判断している。(弁論の全趣旨)イ上記アの用途地区の区分を前提として,標準宅地(その地域の主要な街路に 沿接する宅地のうち,奥行き,間口,形状等の状況が標準的と認められるもの)の適正な時価を基に,その沿接する主要な街路の路線価が付設され,近傍の主要な街路の路線価を基礎として,主要な街路以外のその他の街路の路線価が付設される。 その上で,各宅地については,その沿接する街路に付設された路線価を基に,画地計算法(路線価を基礎として,各宅地の立地条件に基づく価格への影響を考慮して行う評価計算の方法)を適用して評点数が求められ,評点数に評点1点当たりの価額(1円)を乗ずる形で宅地の価格が求められる。 上記の評点数に関し,評価要領によれば,都市高速道路や東名阪自動車道等(以下「都市高速道路等」という。)に沿接又は近接する画地については,騒音,振動,排気ガス等による減価に配慮し,補正率を適用して評点数が補正される。ただし,都市高速道路等から50m超100m以内の地域に所在する画地については,当該画地の所在する用途地区が普通商業地区に当たる場合には,当該補正は適用されない(別表参照)。(乙2の7頁,3の68・77・116頁)ウなお,用途地区の区分の見直しは,実際上は,当該地区を更に細分化した状況類似地域(用途区分に 地区に当たる場合には,当該補正は適用されない(別表参照)。(乙2の7頁,3の68・77・116頁)ウなお,用途地区の区分の見直しは,実際上は,当該地区を更に細分化した状況類似地域(用途区分に従って区分された用途地区を,更に街路の状況,公共施設等の接近の状況,家屋の疎密度その他の宅地の利用上の便等の価格形成要因がおおむね同等と認められる地域ごとの小さな集合に細区分したものを指す。)の単位を調査して行われることもある。(乙3の22頁,弁論の全趣旨) 3 前提事実(当事者間に争いのない事実並びに掲記の証拠及び弁論の全趣旨により容易に認められる事実等)(1) 当事者原告は,本件土地の所有者として登記されている者である。(甲1,2)(2) 固定資産課税台帳登録価格の公示ア本件土地の平成27基準年度の固定資産課税台帳登録価格(以下「台帳価格」という。台帳価格の算定の基準となる時点(以下「基準時」という。)は,平成26年1月1日である。)は,4016万7900円と決定され,その旨が平成27 年4月1日に公示された。なお,本件土地に係る平成24基準年度(基準時は,平成23年1月1日である。)の台帳価格も同額であった。(甲1,2,乙2,3,弁論の全趣旨)イ本件土地の台帳価格の算定は,前記2(2)の固定資産評価基準等に基づき,次のように行われた。(乙1,弁論の全趣旨)(ア) 本件土地の所在する地域における標準宅地(名古屋市α区β〇丁目(住所省略)の土地。以下「本件標準宅地」という。)の1㎡当たりの適正な時価は8万9000円であり,これに基づき,本件標準宅地の沿接する主要な街路の路線価は8万9000点として付設される。 (イ) 上記(ア)の路線価を基礎とし,本件土地の沿接する街路と本件標準宅地の沿接する街路との 円であり,これに基づき,本件標準宅地の沿接する主要な街路の路線価は8万9000点として付設される。 (イ) 上記(ア)の路線価を基礎とし,本件土地の沿接する街路と本件標準宅地の沿接する街路との相違を総合的に考慮すると,本件土地の沿接する街路の路線価は8万7000点として付設される。 (ウ) 上記(イ)を基に画地計算法により計算すると,本件土地に関し,1㎡当たりの評点数は8万7000点であり,これに一画地の地積513㎡を乗ずると,4463万1000点となる。 ただし,本件土地が都市高速道路等から50m超100m以内の地域に所在していることを前提に,補正率0.9が乗じられるため,本件土地の評点数は,4016万7900点となる。 (エ) 最後に,上記(ウ)で求められた評点数に,評点1点当たりの価額(1円)を乗ずると,4016万7900円となる。 ウ名古屋市栄市税事務所長は,その後,法417条1項に基づき,台帳価格を4463万1000円に修正し(以下「本件修正」という。),これを平成27年11月30日付けで原告に通知した。 本件修正の理由は,本件土地の所在する用途地区が,併用住宅地区ではなく普通商業地区であるために,前記イ(ウ)において補正率0.9を乗じた計算が誤りであることのみである。(甲1,乙1,弁論の全趣旨) (3) 審査の申出等ア原告は,平成28年1月29日,上記(2)ウの本件修正に関し,審査委員会に対して審査の申出をした。(甲3)イ原告は,平成28年4月5日,法433条5項に基づき,審査の申出に係る自身の主張に理由があることを明らかにするために必要があるとして,名古屋市長に対し,本件対象事項について10日以内に書面により回答するよう照会した(以下「本件照会」という。)。 これに対し,名 自身の主張に理由があることを明らかにするために必要があるとして,名古屋市長に対し,本件対象事項について10日以内に書面により回答するよう照会した(以下「本件照会」という。)。 これに対し,名古屋市長は,平成28年4月14日付けの「回答書」において,「平成27年度において申出土地の用途地区を普通商業地区と区分したことにつきましては,平成28年3月18日付け弁明書において記載したとおりです。」と回答した。(甲5,6)ウ審査委員会は,平成28年8月22日付けで,原告の審査の申出を棄却する旨の決定(本件決定)をし,これを,同月25日に原告に対して通知した。(甲4)(4) 本件訴えの提起原告は,平成29年2月23日,本件訴えを提起した。(顕著な事実) 4 争点及び当事者の主張本件の争点は,(1)法417条1項の「重大な錯誤」が認められるか否か(争点1),(2)原告が被告に対し,名古屋市長による本件照会に対する回答を求める権利があるといえるか否か(争点2)の2点であり,これらの争点に関する当事者の主張は以下のとおりである。 (1) 争点1(法417条1項の「重大な錯誤」が認められるか否か)ア被告の主張以下に詳述するとおり,(ア)本件土地の所在する用途地区は普通商業地区であり,本来,台帳価格の算定に当たって補正率を乗ずることはできないにもかかわらず,補正率が乗じられていたのであるから,処分行政庁である名古屋市長には錯誤があったといえ,(イ)その錯誤は重大であるから,法417条1項の要件は満たされる。 (ア) 本件土地の所在する用途地区は普通商業地区であり,補正率を乗ずることはできないこと平成28年4月15日に行われた現地調査の結果,本件土地に沿接する街路における各筆の間口距離の割合で見た場合,「店舗・ 地の所在する用途地区は普通商業地区であり,補正率を乗ずることはできないこと平成28年4月15日に行われた現地調査の結果,本件土地に沿接する街路における各筆の間口距離の割合で見た場合,「店舗・事務所」が55.9%,「併用住宅」(家屋の一部が店舗・事務所であるもの)が16.5%,「住宅・その他」が27.7%であり,「店舗・事務所」と「併用住宅」を合わせた「商業施設」の割合は,全体の7割を超えていた。そして,筆数の割合で見ても,「商業施設」の割合が69.1%に上っていた。なお,本件修正の基準とすべき平成26年1月当時と上記調査当時で,状況の有意な差はない。そうすると,本件土地の所在する状況類似地域内の幹線道路沿いにおいては,商業施設が大半を占めており,店舗・事務所等が連たんした状況にある。 また,本件土地の所在する状況類似地域の幹線道路は,片側2車線で比較的交通量の多い道路であり,当該幹線道路沿いには多くの飲食チェーン店やコンビニエンスストアなどが存在しており,下町的な要素や商業の衰退傾向も見られず,また,住宅を兼ねているような比較的小規模な店舗・事務所が目立つ状況でもない。 そして,本件土地は近隣商業地域内に所在するから,本件土地の所在する用途地区は,普通商業地区であるということができる。 なお,このような当てはめは,各基準年度において,周辺の地価動向,周辺施設の整備の状況といった観点に加え,変更後の区分に係る基準を満たす状況が当分の間継続する見込みがあるかといった長期的な視点も踏まえて,総合的に判断して決められるものであるところ,本件においても,平成24基準年度と平成27基準年度の両方で普通商業地区の基準を満たしたことから当分継続の見込みがあると判断して,普通商業地区への区分変更をしたものであって,平成24基準年度と平成2 件においても,平成24基準年度と平成27基準年度の両方で普通商業地区の基準を満たしたことから当分継続の見込みがあると判断して,普通商業地区への区分変更をしたものであって,平成24基準年度と平成27基準年度とで,状況の違いが余りなかったとしても,判断の合理性が揺らぐものではない。 (イ) 錯誤の重大性 本件修正に係る誤りは,固定資産評価基準に基づく評価要領を当てはめる過程での補正率の適用の誤りであって,明白なものである。そして,評価要領は,各市町村において,個々の固定資産の実情に即しつつ担当者の恣意を封じ,納税者間の平等を図る目的から,法律の抽象的かつ概括的な規定を具体化する形で作られたものであり,その意味で法律が定めた基準と同視することができるし,騒音や排気ガス等の影響は住宅地区においてこそ生活環境面で意味を持つのであるから,そのような考慮が本来不要な普通商業地区において減価補正をしたという誤りは重大なものである。しかも,本件土地の所在する状況類似地域における本件土地以外の土地については,補正率の適用がされていないのであって,本件土地に対する課税を是正しないことは,大きな不平等をも生じさせる。 さらに,本件修正の前後で,本件土地の価格は446万3100円も異なることからすれば,金額面でも影響は大きい。 したがって,錯誤の重大性も認められる。 (ウ) 原告の主張についてa 幹線道路から少し離れた地域,あるいは本件土地の西側は,別の状況類似地域に所在するのであるから,その地域の状況により,本件土地の所在する状況類似地域の用途区分が左右される余地はない。 b また,原告が,後記イ(ア)において個別に指摘する物件についても,名古屋市α区β〇丁目(住所省略)の物件については,建物の1階を店舗として利用している 地域の用途区分が左右される余地はない。 b また,原告が,後記イ(ア)において個別に指摘する物件についても,名古屋市α区β〇丁目(住所省略)の物件については,建物の1階を店舗として利用している隣接土地と一体として併用住宅と区分したものであるし,その余についても,家屋あるいは郵便受けに屋号などが書かれていたことから併用住宅に区分したものであって,判断に誤りはない。また,仮に誤りがあったにせよ,状況類似地域における商業施設の割合が3%程度下がるのみであるから,結論を左右するような誤りではあり得ない。 イ原告の主張(ア) そもそも,平成24基準年度の評価に係る基準時(平成23年1月1日)か ら平成27基準年度の評価に係る基準時(平成26年1月1日)までに,本件土地周辺の状況には何らの変化もなく,本来,本件土地の所在する用途地区の区分は,併用住宅地区のままであった。 したがって,本件土地が普通商業地区に所在することを前提とする被告の主張は成り立つ余地がない。 なお,被告は,審査委員会が,平成28年4月に,平成26年7月のブルーマップを使用しつつ行った調査の結果を援用するが,このような調査の結果によって,基準時である平成26年1月1日当時の状況が基礎付けられることはあり得ない。 この点をおくとしても,審査委員会の判断の基礎となった資料には多くの誤りがある。すなわち,少なくとも別紙4記載の物件は,いずれも併用住宅に分類されるべきではない(名古屋市α区β〇丁目(住所省略)の物件は,単なる月ぎめ駐車場にとどまるし,その余の物件も,会社名等が表示されるなどしているにとどまり,実態は住居である。)し,幹線道路から少し離れると公園が多くあり明らかに住宅地区が広がっていることも看過されている。さらに,本件土地の西側の沿道状況が全く調査され 表示されるなどしているにとどまり,実態は住居である。)し,幹線道路から少し離れると公園が多くあり明らかに住宅地区が広がっていることも看過されている。さらに,本件土地の西側の沿道状況が全く調査されていない点にも問題がある(西側は,ほとんどが住宅地区である。)。 (イ) 仮に,本件土地が併用住宅地区ではなく普通商業地区に所在するとしても,そのことで法417条1項にいう重大な錯誤が認められることにはならない。 詳述すると,市町村長が公示の日以後において随意に台帳価格を修正することができるのでは不穏当であるという考慮から,修正が可能な場合が重大な錯誤のある場合に限られている点に鑑みれば,重大な錯誤は,虚偽の申告による誤算,課税客体の明瞭な誤認など,客観的に価格等の決定に重大な誤りがある場合に限り認められるものと解すべきである。 これを前提としてみると,本件で誤りがあったとされるのは,被告内部の取扱要領である評価要領に記載されている補正率の適用に関してであるところ,このような内部規範の当てはめの誤りは,軽微な誤りにとどまると解すべきである。したがって,仮に錯誤があったとしても,重大なものとはいえない。 (2) 争点2(原告が被告に対し,名古屋市長による本件照会に対する回答を求める権利があるといえるか否か)ア原告の主張(ア) 法433条5項は,市町村長に対し,同項所定の照会に対する法的な回答義務を負わせる趣旨であると解すべきである。審査申出人による資料収集や争点整理の利益をおもんぱかって同項が設けられたことからして,同項が回答するか否かを市町村長の任意の判断に委ねているなどとは考えられないからである(回答するか否かが任意であれば,同項ただし書で除外事由を設ける必要はないはずである。)。 (イ) そして,名古屋市長は,本件 か否かを市町村長の任意の判断に委ねているなどとは考えられないからである(回答するか否かが任意であれば,同項ただし書で除外事由を設ける必要はないはずである。)。 (イ) そして,名古屋市長は,本件照会に対し,既に回答したと称して実質的には何らの回答もしていない以上,原告は,被告に対し,名古屋市長による回答を請求することができると解すべきである。 イ被告の主張法433条5項の照会について,市町村長が回答義務を負う旨の規定はないし,市町村長が回答しなかった場合に回答を強制する手段も設けられていない。また,市町村長の不作為に対する不服申立てや制裁に関する定めもなく,当該不作為が審査を申し出た者に有利にしんしゃくされることに関する定めすらない。 そもそも,上記照会の制度は,審査手続における資料収集や争点整理が迅速かつ円滑に行われるためのものにとどまる。 そうすると,上記照会は,審査手続の一環で認められるにとどまり,照会に対する市町村長の対応自体を,審査手続を離れて別個に民事訴訟で争うことが想定されているとは解し難い。仮に,照会に対する回答を求める裁判上の請求権を観念すると,審査の申出から30日以内に決定をしなければならない旨を定めた法433条1項は,実際上空文化してしまうことにもなる。 したがって,原告の主張は失当である。 なお,念のため,名古屋市長は,本件照会に対して回答済みである。 第3 当裁判所の判断 1 認定事実前記前提事実に,掲記の証拠及び弁論の全趣旨を総合すると,平成28年4月15日に審査委員会により行われた現地調査の結果について,次の各事実が認められる。 すなわち,本件土地の所在する状況類似区域内において,本件土地の沿接する街路の各筆の間口距離(合計2193.8m)に占める割合で見た場合,「店舗 た現地調査の結果について,次の各事実が認められる。 すなわち,本件土地の所在する状況類似区域内において,本件土地の沿接する街路の各筆の間口距離(合計2193.8m)に占める割合で見た場合,「店舗・事務所」が55.9%,「併用住宅」が16.5%(なお,「店舗・事務所」及び「併用住宅」を合わせた「商業施設」の合計割合は72.3%である。),「住宅・その他」が27.7%であった。筆数(合計152筆)に占める割合で見た場合,「店舗・事務所」が53.3%,「併用住宅」が15.8%(「商業施設」の合計割合は69.1%である。),「住宅・その他」が30.9%であった。 なお,平成26年7月当時に「住宅・その他」であったものが上記調査時までに「店舗・事務所」に変更されたと認められるのは1筆のみで,その間口距離は21. 3mであった。(乙4ないし6,9の1,弁論の全趣旨) 2 争点1(法417条1項の「重大な錯誤」が認められるか否か)(1) 法417条1項にいう「重大な錯誤」とは,虚偽の申告又は申請による誤算,固定資産課税台帳に登録する際の誤記,価格等を決定する際の計算単位の誤りや,評価調書における課税客体の明瞭な誤認等,客観的に価格等自体の決定に重大な誤りがあると認められる場合をいうものであって,単なる誤り程度のものは含まれないと解される。 本件において,被告の主張によれば,本件土地については普通商業地区に所在するために補正率0.9が乗じられるべきではないにもかかわらず,誤って乗じられた点に錯誤があるということになるところ,補正率を乗ずるか否かは,結局のところ,本件土地が普通商業地区に所在するのか,併用住宅地区に所在するのかによって決まるから,補正率の計算に際して本件土地が普通商業地区に所在するという前提を採らないことについて,重大な錯誤が 局のところ,本件土地が普通商業地区に所在するのか,併用住宅地区に所在するのかによって決まるから,補正率の計算に際して本件土地が普通商業地区に所在するという前提を採らないことについて,重大な錯誤があるといえるかという問題を検討すべき こととなる。 (2) これを前提として見るに,前記1の認定事実に弁論の全趣旨を総合すると,平成24基準年度と平成27基準年度とでは,本件土地の所在する状況類似地域における街路の各筆の間口距離に占める商業施設の割合等が必ずしも大きく変化したわけではなかったものの,周辺の地価動向や長期的な見通し(普通商業地区の定義に当てはまる状態が,ある程度長期にわたって継続するか否か)など種々の要素が勘案された結果,普通商業地区に該当するか否かの当てはめが異なることとなったものと認められるが,そのような総合的な判断は,一義的に明白な形でされるものとは考え難い。また,少なくとも審査委員会は,各筆の間口距離等に占める商業施設の割合(約7割)を主な考慮要素として,店舗・事務所等が「連たん」しているという評価要領の要件が満たされているものと認め,普通商業地区に該当するか否かを判断したものと認められるが,どの程度の割合の場合に普通商業地区に区分するかについては,審査委員会においておおむね5割を目安としているとはいえ,固定資産評価基準や評価要領,あるいは細部取扱いにおいて明確な定めはない。さらに,その他の観点から見ても,固定資産評価基準や評価要領等において,普通商業地区,併用住宅地区の区別につき,一義的に明白な基準が定められているとは評価し難い(例えば,普通商業地区と対比される併用住宅地区の要件についても,細部取扱いにおいて,「下町的」,「衰退傾向」といった,多分に評価的な要素により判断されるものとされている。)。 こ は評価し難い(例えば,普通商業地区と対比される併用住宅地区の要件についても,細部取扱いにおいて,「下町的」,「衰退傾向」といった,多分に評価的な要素により判断されるものとされている。)。 このような事情に照らせば,本件土地(及びその所在する状況類似区域における土地)を普通商業地区,併用住宅地区のいずれに区分するか,ひいては補正率を乗ずるか否かは,一義的に明白に決定されるものとは解し難い。そうすると,仮に前記1の認定事実において示した調査結果が正確であり,本件土地が普通商業地区であるという前提が正しく,それゆえに,補正率を乗じた計算に誤りがあったとしても,その誤りが,誤記や客体・計算単位の誤りに準じるような,一見明白なものであるとはいい難い。 このことに加えて,本件修正の前後で,本件土地の価格の変動は1割にとどまり,課税額への影響も年額1万円に満たない程度と考えられること(証拠(甲2)及び弁論の全趣旨により認められる。)も考慮すれば,本件修正の原因となった補正率の計算に関し,法417条1項の「重大な錯誤」が認められるとは解されない(被告は,課税額の変動をもたらすような誤りは重大な錯誤と見るべきである旨を主張するが,何らかの錯誤があれば課税額にも影響が生ずること自体はむしろ通常想定される範囲内であり,その中であえて「重大な」錯誤でなければ修正が認められないという法の定めとなっている以上,課税額の変動が生ずるというのみでは,「重大な錯誤」は基礎付けられないと解すべきである。)。 (3)ア被告は,名古屋市長において,本件土地が普通商業地区に所在するか否か自体を誤解したものではないため,本件土地が普通商業地区に所在するか否かは本件では問題ではなく,用途地区の区分を所与の前提とした上で,本来乗じてはならない補正率0.9を 普通商業地区に所在するか否か自体を誤解したものではないため,本件土地が普通商業地区に所在するか否かは本件では問題ではなく,用途地区の区分を所与の前提とした上で,本来乗じてはならない補正率0.9を誤って乗じたという単純な計算の誤りに関して,重大な錯誤があるか否かを問題とすべきである旨を主張するものと解される。 この点に関し,課税額の計算過程において,普通商業地区については補正率を乗ずることができず,他方,併用住宅地区については補正率を乗ずるべきであるとされている以上,外形的・客観的にみれば,補正率を乗ずる計算がされたということは,本件土地は普通商業地区には所在しないという前提が採られたということにほかならず,正にその点に錯誤があったということになるのであって,それが,①本来普通商業地区であるところを併用住宅地区であると誤解したか,普通商業地区であることを失念をしたことによるのか,あるいは,②普通商業地区であるという認識は有していたが,補正率を乗じてはならないのを本件土地に関して失念していたのかは,処分行政庁における思考過程の問題にとどまるから,被告が主張するように,そのような思考過程の一部を切り出して,本件において補正率を乗ずるか否かの判断に関する誤りが,単なる計算上の誤りであることを前提にすることは相当でない。このように解さなければ,普通商業地区か併用住宅地区かの区分自体に誤解 などがあった場合には,一見明白な誤りとはいえないために課税額の修正はされず,普通商業地区であることは正しく認識していたが補正率を誤って乗じた場合には,一見明白な誤りとして課税額の修正がされるということが起こり得るところ,このように,対外的に表示されず,納税者側にはおよそ把握できない担当者の内心にとどまる認識によって,法417条1項の適否が異なり得る 明白な誤りとして課税額の修正がされるということが起こり得るところ,このように,対外的に表示されず,納税者側にはおよそ把握できない担当者の内心にとどまる認識によって,法417条1項の適否が異なり得るというのでは,法的安定性が害されることとなる。よって,被告の主張を採用することはできない。 なお,被告は,担当者が,本件土地の所在する状況類似地域の中において,本件土地についてのみ普通商業地区に所在することを失念することは考え難いと主張するが,仮にそのように解するのであれば,同様に,本件土地を含めて,状況類似地域が全体として普通商業地区に所在することを正しく認識し,かつ,本件土地以外の土地については補正率を乗じない処理をしながら,本件土地についてのみ補正率を乗ずる処理をするということも,想定し難い誤りの態様ではあるのであって,被告の主張する点が,判断に影響するとはいえない。 イまた,弁論の全趣旨によれば,平成27基準年度において,本件土地の所在する状況類似地域の中で,本件土地を除く土地については補正率が乗じられていなかったことがうかがわれる。そうすると,本件土地及びその所在する状況類似地域が普通商業地区に区分されるべきことを前提とする限り,本件土地のみが本来より1割低い価格とされていたことになるが,これによって不公平が生じること,あるいは本来あるべき課税とのかい離が生じ,その限度で不合理な事態となっていること自体は,本件土地につき課税上の誤りが生じたことから容易に想定される帰結であって,いわば織り込み済みの事情にとどまるし,普通商業地区か併用住宅地区かの区別が一義的に明白なものとはいえないこと自体は前述のとおりであるから,上記の事情は,本件に関する判断を左右するに足りるものとはいえない。 (4) 以上によれば,本件決定の取消しを求める原告 区かの区別が一義的に明白なものとはいえないこと自体は前述のとおりであるから,上記の事情は,本件に関する判断を左右するに足りるものとはいえない。 (4) 以上によれば,本件決定の取消しを求める原告の請求には理由がある。 3 争点2(原告が被告に対し,名古屋市長による本件照会に対する回答を求める権利があるといえるか否か) (1) 原告は,被告に対して本件照会に対する回答を求める請求に係る訴えの法的性格につき,義務付けの訴え(行政事件訴訟法3条6項)ではない旨を述べているため,上記訴えは,原被告間の公法上の法律関係に関して提起された,いわゆる実質的当事者訴訟(同法4条後段)であると解するほかない。 (2) これを前提として,法433条5項に基づく公法上の請求権が認められるか否かにつき判断する。 ア地方税法は,(ア) 固定資産税の納税者は,その納付すべき当該年度の固定資産税に係る固定資産について固定資産課税台帳に登録された価格に不服がある場合においては,所定の期間内に,固定資産評価審査委員会に審査の申出をすることができ(平成26年法律第69号による改正前の地方税法432条1項),(イ) 固定資産評価審査委員会は,上記審査の申出を受けた場合においては,直ちにその必要と認める調査その他事実審査を行い,その申出を受けた日から30日以内に審査の決定をしなければならない(法433条1項)旨を規定した上,(ウ) 審査申出人は,同条5項ただし書の各号に該当する場合を除き,市町村長に対し,当該申出に係る主張に理由があることを明らかにするために必要な事項について,相当の期間を定めて,書面で回答するよう,書面で照会をすることができる(同項本文)旨を規定している。 もっとも,同項の照会に関しては,市町村長が適法な照会に回答しなかった場合におい 事項について,相当の期間を定めて,書面で回答するよう,書面で照会をすることができる(同項本文)旨を規定している。 もっとも,同項の照会に関しては,市町村長が適法な照会に回答しなかった場合において,市町村長にその回答を強制したりすることの根拠となる規定が設けられていないのはもとより,回答がされなかったことを審査の決定に当たって審査申出人の有利にしんしゃくすべき旨の規定や,市町村長に刑罰等を科したりする制裁規定もなく,また,回答がされないことに関する不服申立ての規定(抗告訴訟等の争訟に関する規定も含む。)も設けられていない。 イ以上のような法の規定から読み取れる仕組み等に照らせば,法433条5項に基づく審査申出人の市町村長に対する照会は,固定資産評価審査委員会の審査手続の一環として,審査申出人が市町村長から固定資産の評価に必要な資料等を入手 し,固定資産評価審査委員会に判断を求めるべき争点を明らかにするために認められたものにとどまり,法は,市町村長に照会に対する回答義務を課しているとはいい得るものの,固定資産評価審査委員会の審査手続を離れて,市町村長に対し,民事訴訟や行政事件訴訟によりその回答を直接請求する権利を付与したものと解することまではできない。 ウこのように解した場合であっても,仮に市町村長が適法な照会に回答しないなどの対応に及んだときには,審査申出人は,固定資産評価審査委員会の決定に対する取消しの訴え(法434条)に係る手続の中で,裁判長に必要な釈明を求めたり(行政事件訴訟法7条,民訴法149条3項),文書提出命令の申立てをしたり(行政事件訴訟法7条,民訴法221条)するなどの手段で,必要な資料収集が可能であるから,審査申出人に対する救済の機会が確保されないという帰結にはならない。 エ以上に述べたことから 立てをしたり(行政事件訴訟法7条,民訴法221条)するなどの手段で,必要な資料収集が可能であるから,審査申出人に対する救済の機会が確保されないという帰結にはならない。 エ以上に述べたことから明らかなとおり,法433条5項は,審査申出人である原告に対して,照会した事項についての市町村長による回答を訴訟上要求し得る権利を付与したものと解することはできないから,これに反する原告の主張は,独自の解釈というほかなく,採用することはできない。 したがって,本件対象事項に関する回答を求める原告の請求は,その余の点について判断するまでもなく,理由がない。 4 原告のその他の主張について原告は,審査委員会には公正中立性が求められることを考えれば,課税事務を行う名古屋市長が代表する被告の訴訟代理人に平素就いている者と同じ者が,本件の訴訟代理人として訴訟活動を追行することは適切でないと述べるところ,原告の指摘する事情からは,被告と審査委員会とに実体法上あるいは手続法上の利益相反があることは何ら基礎付けられないから,本件における被告訴訟代理人の訴訟活動の効力が否定される余地はない。したがって,原告の上記主張は,本件の判断を左右するものではない。 また,原告は,上記指摘にも関連して,公正中立を旨とすべき審査委員会が自ら現地の調査をしたことに手続上の違法があるとも主張するが,審査委員会が公正中立の立場から判断をすべきことと,自ら調査を行うことは両立しないことではない(法433条11項により準用される行政不服審査法34条,35条等参照。本件において問題となっているのは,課税要件が満たされるか否かであって,課税庁の調査が不十分であったとしても直ちに違法性が認められるわけではない以上,要件の有無を判断するために必要な調査を行うことは,むしろ いて問題となっているのは,課税要件が満たされるか否かであって,課税庁の調査が不十分であったとしても直ちに違法性が認められるわけではない以上,要件の有無を判断するために必要な調査を行うことは,むしろ審査委員会の職責であるといえる。)から,原告の上記主張も採用することができない。なお,仮に,当該調査において被告の職員が関与していたとしても,その調査結果を判断の基礎とすることが直ちに審査委員会の中立性を害するとはいえない。 第4 結論以上の次第で,原告の請求のうち本件決定の取消しを求めるものは理由があるからこれを認容し,その余の請求は理由がないからこれを棄却することとし,訴訟費用の負担につき,行政事件訴訟法7条,民訴法61条,64条本文を適用して,主文のとおり判決する。 名古屋地方裁判所民事第9部 裁判長裁判官市原義孝 裁判官平田晃史 裁判官佐藤政達 (別紙1省略)
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