平成23(ネ)216 請求異議控訴事件

裁判年月日・裁判所
平成23年9月8日 広島高等裁判所 その他 広島地方裁判所 尾道支部 平成21(ワ)323
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判決文本文6,428 文字)

- 1 - 主文 1 原判決を取り消す。 2 被控訴人から控訴人に対する広島地方裁判所尾道支部平成18年(ワ)第41号立替金請求事件の第1回口頭弁論調書(認諾)に基づく強制執行は,これを許さない。 3 訴訟費用は,補助参加によって生じた費用を含め,第一,二審とも被控訴人の負担とする。 事実及び理由 第1 控訴の趣旨主文と同旨第2 事案の概要(略称は,特記しない限り,原判決に従う。) 1 本件は,控訴人を債務者(被告),被控訴人を債権者(原告)とする広島地方裁判所尾道支部平成18年(ワ)第41号立替金請求事件(平成18年事件)の第1回口頭弁論調書(認諾)について,控訴人が,控訴人の請求認諾の意思表示がないとして,上記弁論調書に基づく強制執行の不許を求める事案である。 原判決は,控訴人の請求を棄却したので,控訴人が本件控訴をした。 2 前提事実,当事者の主張及び争点次のとおり補正し,後記3に控訴人の当審における主張を加えるほかは,原判決の「事実及び理由」欄の「第2 事案の概要」の「1 前提事実」,「2当事者の主張」及び「3 争点」(原判決2頁2行目から同4頁6行目まで)に記載のとおりであるから,これを引用する。 (1) 原判決2頁12行目から同13行目にかけての「陳述したものとみなされる答弁書」を「民事訴訟法266条2項により,陳述したものとみなされた控訴人名義の同月22日付け答弁書(「請求を認諾する」との記載がある。 乙3)と改め,同14行目の次に行を改めて以下を加える。 「 なお,認諾に係る上記口頭弁論調書記載の請求権(以下「本件請求権」- 2 -という。)は,被控訴人の控訴人に対する立替金368万7200円及びこれに対する平成17 に行を改めて以下を加える。 「 なお,認諾に係る上記口頭弁論調書記載の請求権(以下「本件請求権」- 2 -という。)は,被控訴人の控訴人に対する立替金368万7200円及びこれに対する平成17年12月6日から支払済みまで年6分の割合による遅延損害金の支払請求権である。」(2) 同4頁6行目を以下のとおり改める。 「 控訴人が,答弁書により,裁判所に対し,本件請求権を認諾する旨の意思表示をしたか否か。」 3 控訴人の当審における主張(1) 控訴人は,本件請求権発生の原因となった平成16年4月16日付けオートローン契約(以下「本件立替払契約」という。)を締結したことはない。 したがって,本件請求権を認諾する理由がない。 (2) 控訴人名義の答弁書は,控訴人と同居していた長男Aが控訴人に無断で作成したものであり,控訴人がAにその作成を依頼したことはない。 また,仮に,平成18年8月29日午前11時に開かれた平成18年事件の第1回口頭弁論期日の呼出状等や同口頭弁論期日の認諾調書正本が控訴人に送達され,控訴人が自らこれらを受け取ったとしても,かかる事実から,控訴人に請求認諾の意思を推認することはできない。 そもそも,控訴人は昭和13年**月**日生まれの女性であり,請求認諾の意味を認識してはいなかった。 第3 当裁判所の判断 1 当裁判所は,控訴人の請求は理由があるものと判断する。その理由は,以下のとおりである。 2 本件紛争に至る経緯前記前提事実,関係証拠及び弁論の全趣旨によれば,本件紛争に至る経緯として,次のとおりの事実が認められる。 (1)ア被控訴人は,平成18年5月ころ,尾道簡易裁判所に対し,自己を債権者,控訴人及びAを債務者として,次の内容の支払督促(同簡易裁判所平- 3 -成18年(ロ)第2 りの事実が認められる。 (1)ア被控訴人は,平成18年5月ころ,尾道簡易裁判所に対し,自己を債権者,控訴人及びAを債務者として,次の内容の支払督促(同簡易裁判所平- 3 -成18年(ロ)第254号。以下「本件支払督促」という。)を申し立てた(乙1)。 (請求の趣旨)a 368万7200円b 上記金額に対する平成17年12月6日から完済まで年6%の割合による遅延損害金c 申立手続費用 1万6140円(請求の原因)a 契約の日平成16年4月16日b 契約の内容被控訴人は,控訴人の下記の購入代金を立替払する。控訴人は,被控訴人に対し,立替金に手数料を加えた金額を分割して支払う。 売主参加人商品車両(ベンツ)c 連帯保証人 Ad 債権者が立替払をした日平成16年4月20日e 立替金及び手数料 503万3700円(うち手数料53万3700円)支払済みの額 134万6500円(最後に支払った日平成17年9月26日)残金 368万7200円f 支払催告書面が届いた日(期限の利益喪失の場合)平成17年11月14日イなお,控訴人と被控訴人との間の上記立替払契約と控訴人と参加人との間の上記車両(ベンツ)売買契約は,控訴人の長男 平成17年11月14日イなお,控訴人と被控訴人との間の上記立替払契約と控訴人と参加人との間の上記車両(ベンツ)売買契約は,控訴人の長男であるAの計算,手続により行なわれたものであり,また,控訴人は,Aの母親であるが,年金- 4 -生活(昭和13年**月**日生まれ,当時66歳)を送っており,上記車両に興味や関心がなかった上,上記車両に触れたり,これを使用したこともないばかりか,上記立替金を支払ったこともなかった(甲10,乙12,原審控訴人第1,2回)。 (2)ア尾道簡易裁判所の裁判所書記官は,平成18年5月22日,控訴人に対し,本件支払督促正本を特別送達すべく,本件支払督促に記載された控訴人の住所(広島県尾道市b町c-d)あてに発送手続を行ったところ,同正本は,同月23日,配達担当者から同居者であるEに渡す方法で,控訴人に送達された(乙4)。 なお,控訴人は,当時,上記住所地において,A,その妻Eらと同居して生活していた(原審控訴人第1,2回)。 イ上記裁判所書記官は,同じころ,同様の方法により,Aに対しても本件支払督促正本を送達した。 (3)ア控訴人名義の平成18年5月26日付け異議申立書(本件支払督促正本送達の際同封された異議申立書の用紙が使用された。)が,同日,尾道簡易裁判所に届けられ,これには,本件支払督促の請求金額については間違いない旨及び支払能力がないので分割弁済を求める旨が記載されていた(乙2)。 イ A名義の平成18年5月26日付け異議申立書(Aへの本件支払督促正本送達の際同封された異議申立書の用紙が使用された。)が,同日ころ,尾道簡易裁判所に届けられ,これにも,本件支払督促の請求金額については間違いない旨及び支払能力がないので月額2万円 の本件支払督促正本送達の際同封された異議申立書の用紙が使用された。)が,同日ころ,尾道簡易裁判所に届けられ,これにも,本件支払督促の請求金額については間違いない旨及び支払能力がないので月額2万円の分割弁済を希望する旨が記載されていた(甲3)。 ウ上記控訴人名義の異議申立書とA名義の異議申立書の筆跡は同一であって,同一人により記載されたものであるところ,控訴人の筆跡(原審本人尋問の際の宣誓書2通の筆跡,甲2に表示された筆跡)とは異なるから,- 5 -控訴人が記載したものではなく,A又はその関係者によって記載されたものとうかがわれる。 エ控訴人とAに対する本件支払督促は,上記各異議の申立てにより通常訴訟(平成18年事件)に移行した。 (4)ア広島地方裁判所尾道支部の裁判所書記官は,平成18年事件について,平成18年7月21日,控訴人に対し,訴状に代わる準備書面副本,口頭弁論期日(平成18年8月29日午前11時)呼出状及び答弁書催告状,証拠説明書副本,甲第1号証(本件の甲5)写しを特別送達すべく,控訴人の上記住所あてに発送手続を行ったところ,上記書類は,同月22日,配達担当者から控訴人に直接渡す方法で,控訴人に送達された(乙6,8)。 イ上記裁判所書記官は,同事件について,同じころ,同様の方法により,Aに対しても訴状に代わる準備書面副本,口頭弁論期日(平成18年8月29日午前11時)呼出状及び答弁書催告状,証拠説明書副本,甲第1号証写しを送達した。 (5)ア控訴人名義の平成18年8月22日付け答弁書(控訴人への訴状に代わる準備書面副本等の送達の際同封された答弁書の用紙が使用された。)が,そのころ,広島地方裁判所尾道支部に届けられ,これには,平成18年事件の請求を認諾すること,年金生活なので毎月2万円の分割をお願いする 書面副本等の送達の際同封された答弁書の用紙が使用された。)が,そのころ,広島地方裁判所尾道支部に届けられ,これには,平成18年事件の請求を認諾すること,年金生活なので毎月2万円の分割をお願いすることが記載されていた(乙3)。 イ A名義の平成18年8月22日付け答弁書(Aへの訴状に代わる準備書面副本等の送達の際同封された答弁書の用紙が使用された。)が,同日,広島地方裁判所尾道支部に届けられ,これには,平成18年事件の請求を認諾すること,現在収入がなく毎月2万円の分割を希望することが記載されていた(甲4)。 ウ控訴人名義の答弁書(乙3)の筆跡は,控訴人名義の異議申立書(乙2)の筆跡と異なるものである。また,控訴人名義の答弁書に押印された印影- 6 -(乙3)も,控訴人名義の異議申立書に押印された印影(乙2)と異なる上,これが控訴人の印章によって顕出されたものかどうかは不明であり,その形状から,誰でも購入できる認印によって顕出されたものとうかがわれる。控訴人名義の答弁書(乙3)とA名義の答弁書(甲4)の筆跡を対照すると同一であって,同一人により記載されたものというべきところ,控訴人の筆跡(原審本人尋問の際の宣誓書2通の筆跡,甲2に表示された筆跡)とは異なり,Aの筆跡(甲5に表示された筆跡)に酷似するので,これらはAによって記載されたものということができる。 (6)ア広島地方裁判所尾道支部裁判官佐藤拓は,平成18年8月29日午前11時,平成18年事件の第1回口頭弁論期日を開いたところ,原告である被控訴人の訴訟代理人弁護士及び被告であるAは出頭したが,同じく被告である控訴人は出頭しなかった。Aは,被控訴人訴訟代理人弁護士が訴状に代わる準備書面を陳述した後,平成18年事件の請求を認諾し,また,控訴人名義の答弁書が陳述されたものとみ は出頭したが,同じく被告である控訴人は出頭しなかった。Aは,被控訴人訴訟代理人弁護士が訴状に代わる準備書面を陳述した後,平成18年事件の請求を認諾し,また,控訴人名義の答弁書が陳述されたものとみなされ,これにより控訴人も平成18年事件の請求を認諾したものとされた(甲1)。 (7) 広島地方裁判所尾道支部の裁判所書記官は,平成18年9月8日,控訴人に対し,平成18年事件の第1回口頭弁論調書(認諾)正本を特別送達すべく,控訴人の上記住所あてに発送手続を行ったところ,上記正本は,同月9日,配達担当者から控訴人に直接渡す方法で,控訴人に送達された(乙9)。 (8) 控訴人は,平成21年ころに本件紛争が発生するまで,平成18年事件の第1回口頭弁論調書(認諾)正本について,裁判所や被控訴人に対し異議を述べたことはなかった。 3 ところで,請求の認諾とは,民事訴訟において,訴訟の相手方(被告)が,口頭弁論等の期日において,裁判所に対して,訴え提起者(原告)の請求を認める旨を陳述する訴訟行為である。請求の認諾は,口頭弁論等の期日における当事者の口頭陳述によってなされるのが原則であるが,当事者が認諾をする旨- 7 -記載した書面を提出して口頭弁論等の期日に出頭しないときは,裁判所は,口頭弁論等の期日において,上記書面を陳述したものとみなすことができる(民事訴訟法266条)。請求の認諾により,訴訟手続は当然に終了し,また,認諾調書の記載は確定判決と同一の効力を有し,請求の内容に従って執行力,形成力等が認められることとなる(同267条)。 そうすると,認諾をする旨記載した書面を陳述したものとみなす方法で,当事者の請求の認諾がされる場合には,裁判所が直接認諾者の意思を確認できない以上,その書面が認諾者の意思に基づいて作成されたものであるかどう と,認諾をする旨記載した書面を陳述したものとみなす方法で,当事者の請求の認諾がされる場合には,裁判所が直接認諾者の意思を確認できない以上,その書面が認諾者の意思に基づいて作成されたものであるかどうかを慎重に検討,判断すべきものである。 以上の見地に立って検討するに,本件においては,上記2のとおり,平成18年事件の請求を認諾する旨記載された控訴人名義の答弁書の筆跡は,控訴人名義の異議申立書の筆跡と異なる上,控訴人がこれを記載したものではなく,Aがこれを記載したものであり,また,押印された印影も,控訴人名義の異議申立書に押印された印影と異なる上,控訴人の印章によって顕出されたものかどうかも明らかでないのである。しかも,上記のような点は,控訴人名義の答弁書とA名義の答弁書,控訴人名義の異議申立書と同答弁書とを比較対照すれば,容易に判明することができたのである。 そうすると,控訴人名義の答弁書に,平成18年事件の請求を認諾する旨の控訴人の意思が表示されていたものと認めることは困難である。控訴人も,平成18年事件の請求を認諾する意思はなく,そのような答弁書の作成をAに依頼したことはない旨供述し(原審控訴人第1回),Aも控訴人の同意を得ずに控訴人名義の答弁書を作成した旨を陳述書(甲10)に記載しているのである。 なお,控訴人は,訴状に代わる準備書面副本等を受領しているところ,これに同封されていた答弁書の用紙を使用して,Aが控訴人名義の答弁書を作成していることからすれば,控訴人が,Aに対し,上記書類をAに交付していたものと推認され,平成18年事件に対する何らかの対応を委託していたことがう- 8 -かがわれるが,この事実から,控訴人に平成18年事件の請求を認諾する意思があったものとまで推認することはできない。また,控訴人は,平成18年9 に対する何らかの対応を委託していたことがう- 8 -かがわれるが,この事実から,控訴人に平成18年事件の請求を認諾する意思があったものとまで推認することはできない。また,控訴人は,平成18年9月8日,平成18年事件の第1回口頭弁論調書(認諾)正本を受領したが,平成21年ころに本件紛争が発生するまで,同弁論調書(認諾)正本について,裁判所や被控訴人に対し異議を述べたことはなかったが,控訴人が平成18年事件の関係書類をAに交付して何らかの対応を委託するような状況がうかがわれることからすれば,上記と同様に,この事実から,控訴人に平成18年事件の請求を認諾する旨の意思があったものとまで推認することはできない。 4 以上の次第で,控訴人が,平成18年事件の口頭弁論期日において,裁判所に対し,同事件の請求を認める旨陳述する訴訟行為をしたものと認めることはできないから,平成18年事件について,控訴人に請求の認諾の効果は発生せず,同事件の第1回口頭弁論調書(認諾)に基づく控訴人への強制執行は許されないものというべきである。 第4 結論よって,原判決は不当であり,本件控訴は理由があるから,原判決を取り消した上,控訴人の請求を認容することとして,主文のとおり判決する。 広島高等裁判所第4部 裁判長裁判官宇田川基 裁判官近下秀明 裁判官松葉佐隆之

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