【DRY-RUN】主 文 本件上告を棄却する。 上告費用は上告人の負担とする。 理 由 上告代理人中野哲及び上告人の各上告理由について 所論の点に関する原審の事実認
主文 本件上告を棄却する。 上告費用は上告人の負担とする。 理由 上告代理人中野哲及び上告人の各上告理由について所論の点に関する原審の事実認定は、原判決挙示の証拠関係に照らし、正当として是認することができ、その過程に所論の違法はない。 右事実及び原審の適法に確定したその余の事実関係によれば、(1) 上告人(昭和二五年生)と被上告人(昭和二三年生)とは、昭和四七年一月頃知り合い、肉体関係を伴う交際を続け、昭和五〇年一月一四、五日頃から東京のアパートで同棲するに至り、外国航路の船のコツクとして働いていた上告人が同年三月頃乗船して同年一二月末頃下船した後の翌五一年一月二一日結婚式を挙げ、同月二三日婚姻届出をした、(2) 被上告人は、元来酒好きで、上告人と同棲を始めて以後も飲酒することが多かつたが、上告人が同年五月の連休明けに再び乗船していつたところ、同年夏頃、行きつけのおでん屋に客として来ていた訴外Dと知り合い、同年九月からは肉体関係を持つようになり、同年一一月四、五日頃に下船した上告人に対し別れたいと告げ、同月一二日にはアパートを飛び出して姿を隠し、別にアパートを借りて右Dと同棲生活を始めた、(3) 上告人は、昭和五二年一二月二六日、東京家庭裁判所に被上告人との同居を求める調停を申し立てたが不調に終わり、次いで昭和五六年八月三日には同裁判所に離婚調停の申立てをし、いつたんは離婚を考え、被上告人が上告人に六〇〇万円支払うならば離婚に応じてもよいとの提案をしたが、被上告人がこれに応じなかつたため不調に終わり、一方、前記Dに対して右不貞行為を理由とする損害賠償請求訴訟を提起し、昭和五四年九月勝訴判決を得て、Dから損害賠償金二五〇万円のほぼ全額の支払を受けた、(4) 被上告人は、昭和五五- 不調に終わり、一方、前記Dに対して右不貞行為を理由とする損害賠償請求訴訟を提起し、昭和五四年九月勝訴判決を得て、Dから損害賠償金二五〇万円のほぼ全額の支払を受けた、(4) 被上告人は、昭和五五- 1 -年一〇月頃、約三年一一か月の間同棲した前記Dと別れ、以後一人で生活していたが、飲酒の仕方が上告人と結婚式を挙げた頃からしだいにすさんだものになつていたところ、昭和五九年二月頃から精神的な変調を来したことから新潟県村上市の実家に戻り、同年五月二九日から一一月までの間躁鬱病、アルコール依存症の病名で新潟市内の病院に入院し、退院後も昭和六〇年九月頃まで投薬を受け、現在はほぼ寛解状態にあるものの、なお右病院に通院して治療を受けつつ実家の店の手伝いをしている、(5) 被上告人は、内向的な性格で、右症状も本件離婚を巡る紛争と無関係なものとはいえず、かかる状態に重圧を感じて離婚を望み、上告人との関係の修復は全く考えていないのに対し、上告人は、離婚する意思はなく、自分は被上告人を必要としているとして婚姻の継続を望んでいるとはいうものの、その真の理由の大半は、前示のような行動に走つた被上告人から離婚を求められるいわれはないとの確固たる気持ないし被上告人に対する意地あるいは憎悪感という感情的なものにすぎず、被上告人との関係修復を実現可能なものと捉えて真摯かつ具体的な努力をした跡は窺えず、昭和五五年頃以降も被上告人に生活費や治療費を送金したり見舞いその他の音信を寄せたりしたことも全くなく、また、現在も一年の大半は外国航路の船にコツクとして乗船し年に約四〇〇万円の収入を得ていて経済力の点では被上告人に勝り、被上告人からの扶養や相続を期待すべき状況にはなく、被上告人との法律上の婚姻関係を解消されることによつて失うものは少ない、(6) 上告人と被上告人の間に子 入を得ていて経済力の点では被上告人に勝り、被上告人からの扶養や相続を期待すべき状況にはなく、被上告人との法律上の婚姻関係を解消されることによつて失うものは少ない、(6) 上告人と被上告人の間に子はいない、というのである。 ところで、民法七七〇条一項五号所定の事由による離婚請求がその事由につき専ら責任のある一方の当事者(以下「有責配偶者」という。)からされた場合であつても、夫婦の別居が両当事者の年齢及び同居期間との対比において相当の長期間に及び、その間に未成熟の子が存在しない場合には、相手方配偶者が離婚により精神的・社会的・経済的に極めて苛酷な状態におかれる等離婚請求を認容することが著- 2 -しく社会正義に反するといえるような特段の事情の認められない限り、当該請求は、有責配偶者からの請求であるとの一事をもつて許されないとすることはできないというのが当裁判所の判例であり(最高裁昭和六一年(オ)第二六〇号同六二年九月二日大法廷判決・民集四一巻六号一四二三頁)、所論引用の最高裁判例は、右判例によつて変更されたものである。 前記事実関係の下においては、上告人と被上告人との婚姻については同号所定の事由があり、被上告人は有責配偶者というべきであるが、上告人と被上告人との別居期間は、原審の口頭弁論終結時(昭和六二年一月二八日)までで約一〇年三か月であつて、双方の年齢及び同居期間との対比において相当の長期間に及び、しかも、両者の間には子がなく、上告人が離婚により精神的・社会的・経済的に極めて苛酷な状態におかれる等離婚請求を認容することが著しく社会正義に反するといえるような特段の事情が存するとはいえないから、右に説示したところに従い、被上告人の本訴請求は、有責配偶者からの請求であるとの一事をもつて許されないとすべきではなく、これを認容すべきもので するといえるような特段の事情が存するとはいえないから、右に説示したところに従い、被上告人の本訴請求は、有責配偶者からの請求であるとの一事をもつて許されないとすべきではなく、これを認容すべきものである。 以上と同旨に帰する原審の判断は、正当として是認することができる。原判決に所論の違法はなく、論旨は、原審の専権に属する事実の認定を非難するか、又は右と異なる見解に立つて原判決の違法をいうものであつて、採用することができない。 よつて、民訴法四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官佐藤哲郎の意見があるほか、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。 裁判官佐藤哲郎の意見は、次のとおりである。 私は、多数意見の結論には賛成するが、その結論に至る理由には同調することができない。 私は、婚姻関係が破綻した場合においても、その破綻につき専ら又は主として原因を与えた当事者からされた離婚請求は原則として許されないが、右のような有責- 3 -配偶者からされた離婚請求であつても、有責事由が婚姻関係の破綻後に生じたような場合、相手方配偶者側の行為によつて誘発された場合、相手方配偶者に離婚意思がある場合は、もとより許容されるが、更に、有責配偶者が相手方及び子に対して精神的、経済的、社会的に相応の償いをし、又は相応の制裁を受容しているのに、相手方配偶者が報復等のためにのみ離婚を拒絶し、又はそのような意思があるものとみなしうる場合など離婚請求を容認しないことが諸般の事情に照らしてかえつて社会的秩序を歪め、著しく正義衛平、社会的倫理に反する特段の事情のある場合には、有責配偶者の過去の責任が阻却され、当該離婚請求を許容するのが相当であると考える。その理由は、多数意見の引用する前記大法廷判決における意見において詳述したとおりである。 原審の適法に確定した事実 、有責配偶者の過去の責任が阻却され、当該離婚請求を許容するのが相当であると考える。その理由は、多数意見の引用する前記大法廷判決における意見において詳述したとおりである。 原審の適法に確定した事実関係によれば、上告人と被上告人との婚姻関係は破綻し、被上告人はその破綻につき専ら又は主として原因を与えた有責配偶者というべきであるが、上告人と被上告人との別居期間は既に一〇年三か月に及び、その間、被上告人は、上告人との本件離婚を巡る紛争も一因となつて精神的変調を来すなど既に相応の制裁を受容しているともいうことができ、一方、上告人は、婚姻の継続を望んでいるとはいうものの、その真の理由は、前記Dとの不貞行為に走つた被上告人から離婚を求められるいわれはないはずであるとの確固たる気持ないし被上告人に対する意地あるいは憎悪感という感情的なものにすぎず、被上告人との関係修復を実現可能なものと捉えて真摯かつ具体的な努力をした跡は窺えず、昭和五六年には自ら離婚調停の申立てをして離婚の条件を提示するなどいつたんは離婚を考えたこともあるなどの事情も考慮すれば、本件離婚請求が有責配偶者たる被上告人からの請求であるにもかかわらずこれを認容するのを相当とする前示特段の事情があるというべきであり、私の立場においても、被上告人の本訴請求は認容すべきものと考える。したがつて、被上告人の本訴請求を認容した原判決は結論において相当- 4 -であり、本件上告は棄却すべきものである。 最高裁判所第一小法廷裁判長裁判官大堀誠一裁判官角田禮次郎裁判官大内恒夫裁判官佐藤哲郎 裁判官角田禮次郎裁判官大内恒夫裁判官佐藤哲郎裁判官四ツ谷巖- 5 -
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