平成16年8月31日判決言渡同日原本領収裁判所書記官平成14年ワ第70号損害賠償請求事件口頭弁論終結日・平成16年5月25日判決当事者の表示省略 主文 1 被告らは,原告Aに対し,連帯して金4383万3566円及びこれに対する平成11年3月3日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 2 原告Aのその余の請求及び原告B,原告Cの各請求をいずれも棄却する。 3 訴訟費用は,これを5分し,その2を原告らの負担とし,その3を被告らの負担とする。 4 この判決は,第1項に限り,仮に執行することができる。 事実及び理由 第1 請求被告らは,連帯して,原告Aに対し金6843万3688円及びこれに対する平成11年3月3日から支払済みまで年5分の割合による金員を,原告B,原告Cに対し各金165万円及びこれに対する平成11年3月3日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 第2 事案の概要本件は,平成11年3月2日,K村立D小学校(当時の名称。以下同じ。)の4年生であった原告Aが,教室における「帰りの会」の最中,同じクラスの児童の投げた鉛筆を左目に受け,左眼球穿孔,角膜裂傷,外傷性白内障術後無水晶体眼,後発性白内障の傷害を負った事故に関し,原告らが,同事故は担任教諭又はK村立D小学校の安全配慮義務違反によるものであると主張して,原告Aが,被告南アルプス市(K村承継人)に対し,国家賠償法1条又は民法715条に基づく損害賠償請求として,また,加害児童の両親である被告E及び被告Fに対し,民法714条1項に基づく損害賠償請求として,金6843万3688円及びこれに対する平成11年3月3日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の連帯支払を求め,原告Aの両親である原告B及び原告 条1項に基づく損害賠償請求として,金6843万3688円及びこれに対する平成11年3月3日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の連帯支払を求め,原告Aの両親である原告B及び原告Cが,同様に,被告らに対し,それぞれ金165万円及びこれに対する平成11年3月3日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の連帯支払を求める事案である。 1 争いのない事実(1) 当事者ア原告A(昭和63年生まれ。)は,原告B及び原告Cの子であり,その親権に服している。 イ G(昭和63年生まれ。)は,被告E及び被告F(被告E及び同Fを「被告Eら」という。)の子であり,平成11年3月2日当時,その親権に服していた。 ウ原告A及びGは,平成11年3月2日当時,K村が管理運営するK村立D小学校4年生に在学しており,クラスはL組,担任教諭はH教諭で,なお,H教諭は,期間採用の県費負担教職員であった。 (2) 事故の発生原告Aは,平成11年3月2日,4年L組の「帰りの会」の時間中,教室内においてH教諭が児童に裁縫道具を配っている最中に,Gの投げた鉛筆によって左眼球穿孔,角膜裂傷,外傷性白内障術後無水晶体眼,後発性白内障の傷害を負った(以下「本件事故」という。)。 (3) 保険契約の締結被告Eは,平成10年10月2日,補助参加人I株式会社(当時は相互会社)との間で,本件平成11年3月2日発生の事故日を保険期間に含む共済保険契約を結んでいた。 (4) K村は,平成15年4月1日,町村合併により,南アルプス市となった。 2 争点及び当事者の主張(1) H教諭の過失の有無についてア原告らの主張(ア) Gは,日ごろから短気で乱暴なところがあり,だれに対しても手を出し,本 南アルプス市となった。 2 争点及び当事者の主張(1) H教諭の過失の有無についてア原告らの主張(ア) Gは,日ごろから短気で乱暴なところがあり,だれに対しても手を出し,本件事故以前にも原告Aに対しいたずらをしかけたり乱暴したりしたことがあった。原告Aは,Gに乱暴されるたびに,H教諭に対し,そのことを訴えていたが,H教諭は分かったというものの,Gに対する指導や監督をしていなかった。 (イ) H教諭と原告Cは,平成11年2月15日及び同月16日,Gの原告Aに対する言動について相談した。 (ウ) H教諭は,本件事故直前に,原告Cに対し,原告AがGにいじめられており,そのことをGの父兄に話す旨報告していたが,実際はGの父兄には話をしていなかった。 (エ) Gの本件事故当日の授業態度には問題があり,H教諭もGを指導していた。 (オ) 本件事故当時,原告AがGとふざけていたことはなく,Gが自分の席を離れて,持っていた鉛筆で着席していた原告Aに一方的にいたずらをしかけ,「やめろ,やめろ」と周囲に聞こえるような声で制止した原告Aの顔めがけて鉛筆を投げた。 (カ) H教諭は,児童の生命身体の安全について万全を期すべき高度の注意義務を負っていたのであり,日ごろの児童に対する一般的抽象的な注意や指導のみならず,児童一人一人の性格や素行に注目し,特にほかの児童に危害を加えるおそれのある児童について十分な指導と配慮をすべきであり,本件においても,上記の(ア)ないし(オ)の事実を正しく認識し,Gの動静に細心の注意を払っていれば,本件事故を予見し,回避することができたにもかかわらず,これを怠り,Gが原告Aの隣の席(欠席者の席)に移ることを許した上,Gが鉛筆を持って原告Aにいたずらをしかけていることに 心の注意を払っていれば,本件事故を予見し,回避することができたにもかかわらず,これを怠り,Gが原告Aの隣の席(欠席者の席)に移ることを許した上,Gが鉛筆を持って原告Aにいたずらをしかけていることに気が付かなかったか,大したことはない,大事には至らないと軽信して見過ごした。 (キ) H教諭に過失が認められるためには,原告AがGに眼を鉛筆で刺されるという事故の具体的な態様まで予見可能であったことを要するものではなく,このような具体的態様を予見できなかったからといって,安全配慮義務違反がないことにはならない。 イ被告南アルプス市の主張 (ア) Gは,活発な児童で,原告Aを含むほかの児童にいたずらをしかけることがあり,このことはH教諭も認識していたが,活発でほかの児童にいたずらをしかける児童はほかにもおり,小学4年生においては特別なことではない。 また,授業態度に問題がある児童に対し指導することは日常的なことであり,そのような児童について終日注視しなければならないとはいえない。さらに,Gが特別に他害のおそれのある児童であったとか,本件事故当日他害行為に及ぶことが予見可能であったの事情もない。 (イ) H教諭は,平成11年2月15日,原告Aの様子がふだんと異なり元気がなかったため,同日,原告Cに電話を掛けたが,特に変わった様子は窺えなかった。ところが,同月16日,原告Cから連絡帳(教諭と保護者との間で事務連絡をするため児童に持たせるもの。)により面談の申入れがあったことから,H教諭は,同日午後4時30分ころ,D小学校において,原告Cと面談した。この際,原告Cから,原告AとGとの関係がうまくいっていない旨の相談があり,H教諭は原告Cと,学校における二人の様子,家庭での原告Aの様子などを話し合い,今まで仲の良 校において,原告Cと面談した。この際,原告Cから,原告AとGとの関係がうまくいっていない旨の相談があり,H教諭は原告Cと,学校における二人の様子,家庭での原告Aの様子などを話し合い,今まで仲の良かった二人のことなので,親や教師が今すぐ間に入るほどのことではないとの結論に至り,しばらく様子を見ることになった。 (ウ) そもそも,原告AがGにいじめられていたということはなく,H教諭が,原告Cに対し,原告AがGにいじめられており,そのことをGの父兄に話す旨報告したこともない。 (エ) H教諭は,状況に応じて児童を欠席者の席に移動させることがままあり,本件事故当日も欠席者が多く空席が多くあったところ,Gの授業態度に問題があり指導する中で,Gが席が変わればきちんとする旨約束したため欠席者の席への移動を認めた。 (オ) 本件事故当時,「帰りの会」において,H教諭は板書をした上,段ボール箱から裁縫セットを取り出して児童に配っていたのであり,このような状況で特定の児童の動静を注視することは物理的に不可能である。 (カ) H教諭は,Gが原告Aに対し鉛筆を持っていたずらをしかけていることや原告Aが「やめろ,やめろ」と周囲に聞こえるような声で制止したことを認識していない。なお,本件事故当時,Gは着席していた。 (キ) 授業中の事故であっても,授業そのものが危険を伴わない場合は,具体的な事故の危険があり,教師がそれを予見し得たときに,児童に対する監督義務が生ずると解するのが相当であるところ,本件事故は,正規の授業でない「帰りの会」における事故であり,より具体的な予見可能性が要求される。 (2) 被告南アルプス市の責任についてア原告らの主張(ア) H教諭は本件事故当時,K村の公務員であり,その職務を行う 」における事故であり,より具体的な予見可能性が要求される。 (2) 被告南アルプス市の責任についてア原告らの主張(ア) H教諭は本件事故当時,K村の公務員であり,その職務を行うについて過失があったのであるから,国家賠償法1条又は民法715条に基づく損害賠償責任がある。 (イ) K村は,D小学校を設置したものとしてこれを管理運営する立場にあり,就学・通学している児童の安全に配慮する義務を負い,登校から下校までの間,児童らに不測の事故が生ずることがないよう努める責任があるから,天変地異のような不可抗力や文房具の不慮の破損等による事故などの予見可能性・結果回避可能性がない事故以外については,原則として学校設置者に安全配慮義務違反が認められるところ,本件事故は授業中に発生したものであるから,H教諭の過失の有無にかかわらず安全配慮義務違反がある。 イ被告南アルプス市の主張被告南アルプス市の責任については争う。 (3) 被告Eらの責任についてア原告らの主張Gは,本件事故当時,満10歳であり,本件事故における違法行為について自己の責任を弁識するに足る知能を備えていなかったのであるから,Gの親権者であり監督すべき義務を負っていた被告Eらは,原告らに対し,民法714条1項に基づく責任を負う。 イ補助参加人の主張(ア)本件事故は,D小学校の「帰りの会」の最中に発生したものであり,Gは代理監督義務者であるH教諭の監督下にあったのであるから,親権者であった被告Eらは監督義務を怠らなかったものとして民法714条1項の責任は免れる。 (イ)Gはクラスに複数存在する活発でほかの生徒にいたずらをしかける児童の一人にすぎなかったのであり,特別他害のおそれある児童であっ 務を怠らなかったものとして民法714条1項の責任は免れる。 (イ)Gはクラスに複数存在する活発でほかの生徒にいたずらをしかける児童の一人にすぎなかったのであり,特別他害のおそれある児童であったとか,本件事故当日加害行為に出ることが予見可能であったというような事情はないから,親権者であった被告Eらに監督義務違反はない。 (4)損害ア原告らの主張 (ア)原告Aは,本件事故により左目が失明同然となり,これは後遺障害8級に相当する。 (イ) 原告Aは,平成11年3月20日まで入院して治療を受け,その後も断続的にリハビリテーションや精神的ショックの治療のため通院を続けている。 (ウ)原告Aの損害(合計6843万3688円)a 入院付添看護料 11万4000円(6000円×19日)b 入院雑費 2万4700円(1300円×19日)c 後遺症による逸失利益 5390万4988円689万2300円(賃金センサス大卒全年齢平均賃金)×0.45(後遺障害8級の労働能力喪失率)×(26.5952[67歳までのホフマン係数]-9.2151[22歳までのホフマン係数])d 後遺症による慰謝料 819万円e 弁護士費用 620万円(エ)原告B及び原告Cの損害(合計各165万円)a 慰謝料各150万円b 弁護士費用各15万円なお,原告らは,日本体育・学校保険センターから,何ら給付を受けていない。 イ被告らの主張原告ら主張の損害は争う。 第3 当裁判所の判断 1 上記争いのない事実等に証拠(甲6ないし8,乙3,証人Hの証言と各項目掲記のもの)及び弁論の全趣旨を総合すれば,以下の事実が認められる。 原告ら主張の損害は争う。 第3 当裁判所の判断 1 上記争いのない事実等に証拠(甲6ないし8,乙3,証人Hの証言と各項目掲記のもの)及び弁論の全趣旨を総合すれば,以下の事実が認められる。 (1)Gの性格,素行Gは,明るく活発な児童であったが,すぐにかっとしたり,友達に手を出したりするといった性格及び素行上問題のあることが,1,2年生時の担任教諭や,週に3回理科の授業を担当していたJ教諭,そして,本件当時の担任教諭であったH教諭において把握されていた。H教諭は,Gの前担任から,Gについていろいろな事情があって大変な子である旨の申し送りを受けていた上,3年生時にGの担任となった以降,自身においてもGには情緒不安定で短気なところがあり,かっとすると友達に手を出すこともあるといった暴力的素行を有することを認識し,G本人に対して,日頃から注意,指導をしていたほか,その保護者である被告Eらにも授業態度や友達関係について話をすることがあった。本件事故に至るまでの間にも,Gは,他の児童が隣を通ったときに体をつついたり,頭をたたいたりといった行動に出たり,消しゴムや丸めたプリントを投げたりするといった暴力的な行動に出ることも何回かあったため,その都度H教諭は注意をし,校長や教頭に報告をすることもあった(乙4,7)。 (2)原告AとGとの友達関係原告AとGは,4年生の1学期には非常に仲が良く,夏休みには原告AがGの家に泊まりに行くなどしたこともあったが,2学期に入ったころから,次第に一緒に行動することが少なくなっていき,2学期の後半には,原告AはGとの友達関係がうまくいかないといったことで悩んでいる様子もみられたが,原告AがH教諭に対して直接詳しく事情を話すことはなかった。2学期の後半以降は,Gが言葉や態度でちょっか の後半には,原告AはGとの友達関係がうまくいかないといったことで悩んでいる様子もみられたが,原告AがH教諭に対して直接詳しく事情を話すことはなかった。2学期の後半以降は,Gが言葉や態度でちょっかいを出しても,原告Aは,言い返しもやり返しもしないということがみられ,H教諭が間に入って止め,Gに注意をすることもしばしばあった。 平成11年2月の雪合戦においては,Gが原告Aを集中的に狙うようにし,その投げた雪が原告Aの顔面に当たり,ほおを怪我させるといったこともあり,H教諭はその際にもGを注意した。 同年2月15日,H教諭が原告Cと電話で話をした際及び翌16日,原告Cと面談をした際には,原告Cは,原告AがGからいじめられているのではないかとの相談をし,H教諭から,Gの両親に連絡をするということになった。しかし,H教諭は数度電話連絡を試みたものの,Gの両親に連絡を取ることができず,結局話をしないままとなっていた。 (3)本件事故当時の状況平成11年3月2日,インフルエンザが流行していたため,4年L組においても,39人の児童のうち,9人が欠席していた。当時の原告Aの席は前から2列目の真ん中寄りで,黒板に向かって一つ席を挟んで左側にGの席があった。当日,原告Aの右隣の席(約1メートルの通路を隔てる位置にある。)の児童は欠席をしていた(乙1)。「帰りの会」の最中,Gが落ち着かない行動をしていたことから,H教諭は,Gが席を移れば落ち着くことを約束させて,原告Aの右隣の欠席者の席に移動することを許可した。「帰りの会」において,H教諭は,児童に背を向ける態勢で,黒板に連絡事項を板書した後,児童らの注文に応じて配布することとなっていた裁縫道具を各児童に配るため,児童の名前を呼び上げながら,教壇の脇に置いた段ボール箱内から裁縫 諭は,児童に背を向ける態勢で,黒板に連絡事項を板書した後,児童らの注文に応じて配布することとなっていた裁縫道具を各児童に配るため,児童の名前を呼び上げながら,教壇の脇に置いた段ボール箱内から裁縫道具を取り出しては手渡す作業をしていた。 このころ,Gは,鉛筆を持って,原告Aに向かって投げるふりを数回していたが,これに対して原告Aは,席に座ったまま,やめろ,といった返答をしていた。H教諭は,裁縫道具の配布に気を取られて,Gと原告Aの状況を把握していなかった。 その後,本件事故が起こったが,H教諭は,すぐには気付かず,裁縫道具を配布するため原告Aを呼んだ際に,取りに来た原告Aが泣いているのを見て事情を聞き,はじめて本件事故の内容を確認し,帰りの支度を済ませた原告Aに保健室に行くよう伝えた。 (4)本件事故後の状況本件事故後,原告Aは左目の治療のため,K病院において手術を受け,同年3月2日から3月20日までの間,入院し,その後も通院加療を受けた。原告Aは,事案の概要記載のとおりの傷害を負い,左目の視力は0.01とほとんど見えていない状態である(甲1,甲2の1ないし3)。 2 そこで,上記認定事実に基づき,H教諭の過失の有無,被告南アルプス市及び被告E,同Fの責任につき順次検討する。 (1)H教諭の過失の有無についてH教諭は,4年L組の担任教諭として,担当クラスの児童の生命身体の安全について配慮し,各児童に対する一般的抽象的な注意や指導をするのみならず,児童一人一人の性格や素行に注目し,特にほかの児童に危害を加えるおそれのある児童について十分な指導と配慮をすべき注意義務が課せられていたと解される。本件当時,H教諭は,D小学校教育課程や職員会議等に沿い,児童に一般的な安全指導を行っていたほか,消しゴムやプリン それのある児童について十分な指導と配慮をすべき注意義務が課せられていたと解される。本件当時,H教諭は,D小学校教育課程や職員会議等に沿い,児童に一般的な安全指導を行っていたほか,消しゴムやプリントを投げるなどの問題行動がみられる児童に対しては,個別にその危険性について話をするなどの指導をしていたことが認められるところ,Gについては,Gの前任の担任教諭から引継ぎを受け,あるいは,自らが3,4年生の担任教諭として接する中で,その有している問題点を把握し,暴力をふるわないことや物を人に向かって投げないなどの事項について日頃から個別に指導をしていたことが認められる。 本件事故の当日は,Gの行動が落ち着かず,席の移動をすることで落ち着くことを約束させてGの席の移動を許可したという経緯が認められ,そのこと自体からも,本件当時のGの行動には十分な注意が必要であったことに加え,H教諭は,9人の児童が欠席し,空席が他にもあったにもかかわらず,友達関係に何らかの問題を有していた原告AとGを,通路を隔てていたとはいえ,あえて隣の席に座らせてもいる。原告AとGは,4年生の前半において仲が良かった事実は認められるものの,2学期に入って以降,本件事故に至るまでのころには,活発なGから,原告Aが一方的にちょっかいを出され,そのことにつき,原告Aが何らかの悩みを有していたことが認められるのであるし,原告Cにおいては,本件事故の約半月前の2月15日,16日に,原告AがGからいじめられているのではないかとの疑いをもってH教諭に相談をし,H教諭もこれに対してはGの両親に話をする旨述べていたのである。上記状況に照らしてみると,「帰りの会」において,Gが原告Aと一緒になってふざけ合っていたとは到底考えられず,Gが,一方的に原告Aに対して,鉛筆を投げるといった行為に及 をする旨述べていたのである。上記状況に照らしてみると,「帰りの会」において,Gが原告Aと一緒になってふざけ合っていたとは到底考えられず,Gが,一方的に原告Aに対して,鉛筆を投げるといった行為に及んだものと認められる。そして,「帰りの会」は,担任教諭が,児童らの面前で連絡事項を行うなどの形態で行われているものであるが,通常授業と比べて,児童が解放的な気分になりやすい状況であるともいえることから,担任教諭には,児童らの動静について,正規授業と同程度かそれ以上に安全に配慮すべき注意義務が要求されていたものと解するのが相当である。 上記認定事実及び諸事情に照らせば,本件事故当時,H教諭は,日頃から問題行動のみられたGが,「帰りの会」の最中,落ち着かない様子であったことを認識していたのであるから,友達関係に問題の生じていた原告Aの近くに座らせれば,何らかの危険を伴う行動に出るかも知れないことは,通常予見し得ることであったといわざるを得ない。しかして,H教諭が,児童らに裁縫道具を配ることに注意を奪われ,Gと原告Aの動静に対する注意を怠り,Gが鉛筆を持って原告Aにいたずらをしかけていることや原告Aがやめろと声を出して抵抗していた様子に気付かずに,本件事故に至った点については,児童の安全について配慮すべき注意義務及び問題行動のみられる児童に対して指導をし,配慮すべき注意義務を怠った過失があったと認められる。 (2)被告南アルプス市の責任K村は,D小学校を設置したものとしてこれを管理運営する立場にあり,H教諭は,本件事故当時,公務員としてK村から服務の監督を受けて教育活動に従事していたのであるから,これは,国家賠償法にいう公権力の行使に当たる。本件事故は,H教諭がその職務を行うについて,前記の注意義務を怠った過失があったこ としてK村から服務の監督を受けて教育活動に従事していたのであるから,これは,国家賠償法にいう公権力の行使に当たる。本件事故は,H教諭がその職務を行うについて,前記の注意義務を怠った過失があったことによるのであるから,K村の承継人である被告南アルプス市には国家賠償法1条に基づく損害賠償責任がある。 (3)被告Eらの責任自己の行為についてその責任を弁識する能力を備えていない児童が不法行為を行った場合,親権者が,その全生活について監督義務を負うというべきである。 本件についてみるに,Gは,本件事故当時,満10歳であり,本件事故における違法行為について自己の責任を弁識する能力を備えていなかったと認められるのであるから,Gの親権者であった被告E,被告Fにおいて,民法714条1項に基づき,損害を賠償すべき義務を負うものと解される。 なお,被告Eら及び補助参加人は,本件事故は,D小学校の「帰りの会」において生じたものであり,担任教諭であるH教諭という代理監督義務者の指導監督の下に置かれていたから,親権者の責任は免除されるなどと主張している。 しかし,児童が加害行為を行った際,小学校教育のために担任教諭等の指導監督の下に置かれ,代理監督義務者がその責任を負うとしても,そのことによって親権者の責任が当然に免除されることにはならない。また,本件では,Gは,短気な性格で,友達をたたいたり,物を投げつけたりするといった問題行動が日頃からみられたため,H教諭が個別指導を繰り返していたことや,保護者である被告Eらとのやり取りにおいて,授業中の態度や友達関係について話をしていたことも窺われるのであるから,本件事故が学校教育の場において生じたことをもって,被告Eらが自らの監督義務を怠らなかったと認めることは到底できない。 したが の態度や友達関係について話をしていたことも窺われるのであるから,本件事故が学校教育の場において生じたことをもって,被告Eらが自らの監督義務を怠らなかったと認めることは到底できない。 したがって,本件事故につき,被告Eらは,原告Aに対し,民法714条1項に基づく責任を負うものと解するのが相当である。 (4)損害ア上記認定のとおり,原告Aの左目は,視力が0.01であり,ほとんど見えない状態であり,これは,労働者災害補償保険法施行規則別表第1の定める障害(後遺障害)等級の第8級に相当すること,原告Aは,同年3月2日から3月20日までの間,19日間にわたり入院したことが認められる。 イ原告Aの損害原告Aに生じた損害は,以下のとおりと認められる。 (ア)入院付添看護料 11万4000円(1日当たり6000円×19日) (イ)入院雑費 2万4700円(1日当たり1300円×19日) (ウ)後遺症による逸失利益 3152万4866円原告Aは,後遺障害8級の障害を負い,これにより労働能力の45パーセント相当を喪失したと認められる。本件当時,原告Aが10歳の少年であり,18歳から67歳までの就労が可能と見込まれることから,本件事故の前年である平成10年の賃金センサス第1巻第1表・男性労働者学歴計全年齢平均年収額(569万6800円)を基礎収入とし,ライプニッツ係数により年5分の割合による中間利息を控除して以下のとおり算定した上記の金額が相当である。 なお,原告らは,逸失利益の算定につき,大卒全年齢平均賃金を基礎として損害の算定を行うべきものと主張するが,本件事故当時原告Aが10歳の小学生であ おり算定した上記の金額が相当である。 なお,原告らは,逸失利益の算定につき,大卒全年齢平均賃金を基礎として損害の算定を行うべきものと主張するが,本件事故当時原告Aが10歳の小学生であり,大学卒業の蓋然性があることを認めるに足りる証拠はないことに鑑みれば,算定の基礎は,男性全労働者の平均年収によるべきである。 569万6800円×0.45×(18.7605[67歳まで57年のライプニッツ係数]-6.4632[18歳まで8年のライプニッツ係数]) (エ)後遺症による慰謝料 819万円原告Aの負った後遺障害によれば,上記が相当と認められる。 (オ)弁護士費用 398万円上記(ア)ないし(エ)の損害額の合計は3985万3566円であり,その1割に相当する額が,被告らの不法行為と相当因果関係に立つ損害と認められるので,弁護士費用については上記の額が相当である。 (カ)上記(ア)ないし(オ)の総合計は,4383万3566円となる。 ウ原告B,原告Cの損害本件事故により,原告Aは前記のとおり後遺障害8級に相当する障害を負ったことが認められ,これにつき,原告B及び原告Cは,近親者固有の慰謝料が認められる旨主張する。しかし,上記のとおり,原告A本人の慰謝料請求が認められるのは別として,本件事故において,生命侵害の場合にも比肩し得べき精神上の苦痛が生じたとまでは認めがたいから,近親者固有の慰謝料を認めることが相当とはいえない。 3 よって,原告らの請求は,被告らに対し,4383万3566円及びこれに対する平成11年3月3日から支払済みまで年5分の割合による金員の連帯支払を求める限度で理由があるが,その余の請求はいずれも理由がない。 原告らの請求は,被告らに対し,4383万3566円及びこれに対する平成11年3月3日から支払済みまで年5分の割合による金員の連帯支払を求める限度で理由があるが,その余の請求はいずれも理由がない。 甲府地方裁判所民事部裁判長裁判官新堀亮一裁判官倉地康弘裁判官青木美佳
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