平成17(わ)125 覚せい剤取締法違反被告事件

裁判年月日・裁判所
平成18年3月2日 青森地方裁判所 弘前支部
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判決文本文5,702 文字)

(主文)被告人を懲役5年6月及び罰金100万円に処する。 未決勾留日数中60日をその懲役刑に算入する。 その罰金を完納することができないときは,金5000円を1日に換算した期間被告人を労役場に留置する。 青森地方検察庁弘前支部で保管中のチャック付きビニール袋入り覚せい剤5袋を没収する。 (罪となるべき事実)被告人は,,,()第1法定の除外事由がないのに平成17年9月12日ころ青森県弘前市略の被告人方において,覚せい剤であるフエニルメチルアミノプロパンの塩類若干量を含有する水溶液を自己の身体に注射し,もって,覚せい剤を使用し第2営利の目的で,みだりに,同月13日,前記第1記載の被告人方において,覚せい剤であるフエニルメチルアミノプロパンの塩酸塩48.264グラムを所持したものである。 (証拠の標目)略(補足説明) 本件において,弁護人は,①平成17年9月13日に被告人方居室でなされた覚せい剤の押収手続は,被告人の承諾なくして開封された荷物の中から覚せい剤が発見されたという点において違法であり,したがって,押収された覚せい剤及び違法に押収された覚せい剤に基づいて獲得された証拠は排除されるべきである,②判示第2の事実につき,被告人には覚せい剤所持の認識はなく,営利目的もないと主張するので,以下,検討する。 覚せい剤の押収手続について(1) 関係各証拠によれば,平成17年9月13日に被告人方居室で覚せい剤が押 収されるまでの経緯につき,以下の事実が認められる。 アB巡査部長ほか6人の警察官は,被告人に対する覚せい剤取締法違反被疑事件につき弘前簡易裁判所裁判官から発付された被告人方居室等を対象とする捜索差押許可状に基づき,平成17年9月13日(以下,同日)午後1時13分ころ,被告人方居室の捜索を開始したところ, 法違反被疑事件につき弘前簡易裁判所裁判官から発付された被告人方居室等を対象とする捜索差押許可状に基づき,平成17年9月13日(以下,同日)午後1時13分ころ,被告人方居室の捜索を開始したところ,被告人方からは,ティッシュペーパーに包まれた注射器4本,チャック付きビニール袋23枚,チャック付きビニール袋が230枚在中しているチャック付きポリ袋1袋,電子計量器1台などが発見された。 イ捜索実施中の午後2時2分ころ,被告人方に,C運輸から,被告人を依頼主兼受取人とする荷物(以下「本件荷物」という)が配達され,被告人,。 は,玄関で,受取伝票に「A」と署名してこれを受け取った。 ウその後,警察官らは,被告人方居室の居間において,被告人に対し,受け取った本件荷物について,その中身を確認したいから自分で開封してほしいと説得した。 これに対し,被告人は,当初,心当たりのない荷物であり,開封したくないと拒んでいたが,約10分間のやりとりが続いた後,最終的には「見る,んなら見ればいいベ」と,発言をした。 エそれを受けて,警察官が,本件荷物を開封したところ,中からチャック付きビニール袋入り覚せい剤5袋が発見されたため,午後2時27分,被告人,,は覚せい剤取締法違反の被疑事実で現行犯人逮捕され前記覚せい剤5袋は逮捕の現場で差し押さえられた。 (2) そうすると,本件においては,令状に基づく捜索において被告人と覚せい剤のつながりを窺わせるような証拠である注射器,チャック付きビニール袋及び電子計量器が発見され,その後,依頼主と受取人がいずれも被告人とされている本件荷物が届き,警察官が説得したにもかかわらず被告人がその開封を頑なに拒んでいたものであり,このような状況においては,届けられた本件荷物の 中に覚せい剤又は覚せい剤取締法違反事件に関連する いる本件荷物が届き,警察官が説得したにもかかわらず被告人がその開封を頑なに拒んでいたものであり,このような状況においては,届けられた本件荷物の 中に覚せい剤又は覚せい剤取締法違反事件に関連する証拠物が在中すると疑うに足りる事情が存在していたといえる。 また,前記のような覚せい剤取締法違反の嫌疑の程度に加え,被告人が,約10分間の説得の後,最終的には「見るんなら見ればいいベ」と開封を承諾するような発言をしたことからすると,警察官による本件荷物の開封は,警察官職務執行法所定の職務質問に付随して行われる所持品検査として,適法であるものと認められる。 (3) なお,被告人は,当公判廷において「警察官から『権限で開けるから』,,ということを言われ,これに対し,権限で開けるのであれば逆らえないのだから好きなようにすればよい,ということを言った」旨,供述する。 しかし,真実,警察官から,権限で開けるというような発言があったとしても,本件荷物は,被告人方居室を捜索の対象とする捜索差押許可状に基づく捜索が続行している間に配達されてきたものであって,先述のとおり,これまでの捜索により,被告人と覚せい剤とのつながりを窺わせるような証拠が発見されていることから,発付済みの捜索差押許可状の効力に基づいて本件荷物を差し押さえることも,新たにこれに対する別個の捜索差押許可状の発付を受けてこれを差し押さえることも,いずれも可能な状況にあったのであるから,警察官が権限で開けると発言したとしても,被告人に対し任意の開封を求めるに当たっての相当な範囲内での説得と認められる。 そうすると,被告人が供述するような発言が警察官からなされていたとしても,荷物の開封が適法な所持品検査の範囲内であるという結論に影響を与えるものではないというべきである。 (4) また,適法な荷物 そうすると,被告人が供述するような発言が警察官からなされていたとしても,荷物の開封が適法な所持品検査の範囲内であるという結論に影響を与えるものではないというべきである。 (4) また,適法な荷物の開封に引き続いて行われた,被告人の逮捕手続及び覚せい剤の押収手続は適法であり,その後に行われた尿の採取及びその鑑定手続も適法であると認められる。 覚せい剤所持の認識及び営利目的について (1) 前記のとおり,被告人が,午後2時2分ころ,被告人方居室に届けられたC運輸の宅急便の伝票に「A」とサインして本件荷物を受け取り,もって,当該荷物を自己の支配下に置いたことは,証拠上明らかである。 (2) また,関係各証拠によれば,被告人が本件荷物を受け取るまでの経緯は,以下のとおりであると認められる。 ア警察による被告人方居室に対する捜索が始まった際,同居室には被告人の知人であるDが在室していた。 警察官が,Dの身体や所持品を調べたところ,覚せい剤との関わりを窺わせるものが見つからなかったことから,同人は,午後1時35分ころ,警察官により自宅に送り届けられることになった。 イ被告人は,Dが居室から出る前に,同人に対し,警察官に聞こえないように,その耳元で「C運輸に電話をかけて,自宅が留守なので関東から到着,する荷物を預かるよう話してほしい」旨依頼した。 ウDは,被告人の依頼により,午後1時55分ころ,C運輸株式会社青森主管支店中津軽エリア弘前営業所に電話をかけ,転送先の同支店コールセンターの担当者に対して,関東から本日荷物が到着するが,自宅が留守なので営業所止めに変更をお願いする旨の電話をした。 エところが,被告人方へ荷物を配達する担当者に,配達を止める連絡が入らなかったため,担当者は,荷物の配達指定時間であった午後2時ころ,被告人方居室に 営業所止めに変更をお願いする旨の電話をした。 エところが,被告人方へ荷物を配達する担当者に,配達を止める連絡が入らなかったため,担当者は,荷物の配達指定時間であった午後2時ころ,被告人方居室に本件荷物を配達し,前記のとおり,被告人は午後2時2分ころ,それを受け取った。 オなお,Dがコールセンターの従業員に話した内容は,同コールセンターのメモによれば「関東から本日到着荷物,自宅留守なので(営)止めに変更お願いします」というものであるところ,Dは,被告人方に到着する荷物の。 詳細を知る立場にないことからすれば,被告人は,Dに対して,到着する荷物が関東から来るものであることをも教えたものと認められる。 (3) このように,被告人が,警察官による捜索中に,Dに対し,関東方面から到着する宅急便の荷物の留め置きの依頼をしたのは,被告人が,事前に,関東から,時間帯指定でC運輸の宅急便により本件荷物が送られてくるのを知っていたためであると推認することができる。 (4) また,到着する荷物が違法な物でなければ,警察官による捜索中に荷物が届いたとしても何ら差し支えなく,あえて,被告人が,捜索中の警察官に聞こえないようにDに対して荷物の留め置きの連絡を依頼する必要はないし,荷物の到着後,警察官による開封の求めを頑なに拒む必要もない。 これに,前記のとおり,被告人方から発見された注射器,チャック付きビニール袋及び電子計量器は,いずれも,覚せい剤の小分けや使用に用いることが可能なのものであること,被告人自身も覚せい剤を自己使用するなど,被告人と覚せい剤との親和性が顕著であることを併せ考慮すると,被告人は,本件荷物の中身が覚せい剤であることを知っており,かつ,覚せい剤が在中していることを認識しながら本件荷物を受け取り,自己の支配下に置いたものと推認するこ が顕著であることを併せ考慮すると,被告人は,本件荷物の中身が覚せい剤であることを知っており,かつ,覚せい剤が在中していることを認識しながら本件荷物を受け取り,自己の支配下に置いたものと推認することができる。 (5) この点,被告人は「岐阜のEなる人物から大阪で仕入れたよく分からない,薬が配達されることになっていたが,まだ届いていなかったので,Dを介してC運輸に対し,荷物の留め置きを依頼した」旨弁解するが,前記のとおり,被告人がDに対して,荷物が届くのは関東からであると伝えたことと整合性はなく,その弁解内容も曖昧であって,到底信用することができない。 (6) 覚せい剤所持が営利目的によるものであった点については,所持にかかる覚せい剤の量が48.264グラムと多量であったこと(仮に,1回分の使用量が約0.1グラムであるとしても,その量は約480回分に相当する)や,。 被告人方居室から覚せい剤を小分けする際に用いることができる電子計量器や多数のチャック付きビニール袋が発見されていることからすれば,被告人において,これを処分することにより財産上の利益を得る等の目的があったことは 明らかであるといわざるを得ない。 以上のとおりであるから,弁護人の前記主張はいずれも採用することができない。 (累犯前科)被告人は,平成12年5月11日青森地方裁判所弘前支部で労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の就業条件の整備等に関する法律違反,恐喝罪により懲役3年に処せられ,平成15年4月13日その刑の執行を受け終わったものであるが,この事実は前科調書及び判決書謄本によって認める。 (法令の適用)罰条判示第1の所為覚せい剤取締法41条の3第1項1号,19条判示第2の所為覚せい剤取締法41条の2第2項,1項刑種の選択判示第2の罪につき,情 び判決書謄本によって認める。 (法令の適用)罰条判示第1の所為覚せい剤取締法41条の3第1項1号,19条判示第2の所為覚せい剤取締法41条の2第2項,1項刑種の選択判示第2の罪につき,情状により所定刑中懲役刑及び罰金刑を選択累犯加重判示第1の罪につき,刑法56条1項,57条(前記の前科があるので再犯の加重)判示第2の罪につき,刑法56条1項,57条(前記の前科があるので,刑法14条2項の制限内で再犯の加重)併合罪の処理懲役刑につき,刑法45条前段,47条本文,10条(重い判示第2の罪の刑に刑法14条2項の制限内で法定の加重)宣告刑の決定懲役5年6月及び罰金100万円未決勾留日数の算入刑法21条(懲役刑に60日算入)労役場留置刑法18条(1日を5000円に換算した期間)没収覚せい剤取締法41条の8第1項本文 (チャック付きビニール袋入り覚せい剤5袋は判示第2の罪に係る覚せい剤で犯人の所持するものであるから)訴訟費用の不負担刑事訴訟法181条1項ただし書(量刑の理由)本件は,覚せい剤の自己使用及び営利目的所持の事案である。 ,. ,覚せい剤の営利目的所持の事案については所持量が48264グラムと多くその取引価格は約290万円とされており,極めて悪質であり,また,覚せい剤を自ら使用しているところからして,被告人と覚せい剤との親和性も顕著である。 被告人は,覚せい剤取締法違反4犯及び前記の累犯前科を含む懲役刑前科10犯を有しながら,またしても,本件各犯行に及んだものであって,被告人の遵法精神は極めて鈍麻しているといわざるを得ない。 しかも,覚せい剤の営利目的所持の事案については,捜査段階から一貫して不自然,不合理な弁解に終始し,覚せい剤の自己使用の事案についても公判廷における反省の弁は一言もなく,本件各犯行 わざるを得ない。 しかも,覚せい剤の営利目的所持の事案については,捜査段階から一貫して不自然,不合理な弁解に終始し,覚せい剤の自己使用の事案についても公判廷における反省の弁は一言もなく,本件各犯行に対する反省の態度は全く見られない。 以上によれば,被告人には重い非難が値し,平成2年12月5日に刑執行終了後は,本件に至るまで10年以上も覚せい剤取締法違反事件に問疑されていないことを考慮してもなお,被告人を主文のとおりの刑に処するのが相当である。 (求刑懲役6年及び罰金100万円)平成18年3月2日青森地方裁判所弘前支部裁判長裁判官加藤亮裁判官佐藤英彦裁判官加藤靖

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