- 1 -事件番号平成16年(ワ)第2685号損害賠償請求事件裁判年月日:平成19年10月18日裁判所名:京都地方裁判所部:第1民事部結果:一部認容登載年月日:判示事項の要旨:排水路に隣接する一団の土地上に建設された11軒の建物に,ひび割れ,傾き等の損傷が生じたのは,同土地上に建物を建設した業者が,必要な軟弱地盤対策を怠ったことによるとして,業者に地盤改良義務違反の過失を認め,また,11軒のうち,9軒の建物については,隣接する場所で市が実施した排水路改良工事において,市が不適切な工法を選択したことにより,建物の損傷が拡大したとして,市に適切な工法選択義務違反の過失を認め,業者と市に共同不法行為が成立するとした事例。 主文 被告らは,原告1ないし9に対し,各自,別表(1)の1ないし9の各認容額欄記載の金員及びこれらに対する平成15年5月30日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 被告業者は,原告10及び11に対し,別表(1)の10及び11の各認容額欄記載の金員及びこれに対する平成15年5月30日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 原告1ないし9の被告らに対するその余の各請求,原告10及び11の被告業者に対するその余の各請求及び被告京都市に対する各請求をいずれも棄却する。 訴訟費用中,原告1ないし9に生じた費用は,いずれもこれを3分し,その2を各原告の負担とし,その余を被告らの負担とし,原告10及び11に生じ- 2 -た費用は,いずれもこれを3分し,その2を各原告の負担とし,その余を被告業者の負担とし,被告京都市に生じた費用は,これを3分し,その2を原告らの負担とし,その余を被告京都市の負担とし,被告業者に生じた費用は,これを3分し,その2を原告らの負担とし,その余を被告 を被告業者の負担とし,被告京都市に生じた費用は,これを3分し,その2を原告らの負担とし,その余を被告京都市の負担とし,被告業者に生じた費用は,これを3分し,その2を原告らの負担とし,その余を被告業者の負担とする。 この判決第1,2項は,仮に執行することができる。 事実及び理由 第1請求被告らは,各自,原告1ないし9に対し,各3212万3916円,原告10に対し3256万3264円,原告11に対し1492万2122円及びそれぞれに対する平成15年5月24日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 第2事案の概要 本件は,被告業者が一団の土地に多数の建売住宅を建築し,平成14年1月から同年3月までの間,各土地建物を,原告らに順次売却したところ,売却後間もないころから各建物に傾きやひび割れ等が発生し,更に,被告京都市によって,平成15年3月から5月にかけて上記各土地建物に隣接する場所で実施された排水路改良工事によって,上記各建物の傾き,ひび割れ等の程度が拡大したこと等について,原告らが,各所有建物に上記各損傷が生じ,建て替えや修補を要する損害を被ったのは,被告業者が建物を建築するに当たって敷地に適切な地盤対策を講じなかったこと及び被告京都市が上記工事において,必要な地盤調査を怠ったうえ,適切な工法を採用しなかったことが原因であるとして,被告業者に対し,不法行為又は瑕疵担保責任に基づき,被告京都市に対し,不法行為に基づき,連帯して,損害賠償金及びこれに対する平成15年5月24日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求めた事案である。 基礎となる事実(争いのない事実並びに末尾記載の証拠及び弁論の全趣旨に- 3 -より容易に認定することのできる事実)(1)原告らが各土地建物を購入するまでの経緯 の支払を求めた事案である。 基礎となる事実(争いのない事実並びに末尾記載の証拠及び弁論の全趣旨に- 3 -より容易に認定することのできる事実)(1)原告らが各土地建物を購入するまでの経緯ア被告業者は,不動産の売買,賃貸借,仲介,管理,一般建築設計・施工及び建売住宅の販売等を目的とする株式会社である。 イ被告業者は,平成12年12月21日京都市長に対し,都市計画法29条に基づき,京都市a区b町c番dほかの4137.44平方メートルを開発区域とし,予定建築物を建売分譲住宅32戸とする開発行為(以下「本件開発」という)の許可申請をし,同月27日,京都市長は,本件。 開発行為を許可した(乙2の2,3の1)。 ウ本件開発区域は,京都盆地の西南,桂川の右岸に位置し,桂川の氾濫性低地にあり,旧河道に当たるとみられ,約5,6メートルの沖積層軟弱地盤が基底をなしている。開発行為前の現況は水田であり,その西側は,南北に通じる水路(e幹線排水路,以下「本件排水路」という)が流れる。 国有水路敷に接していた。本件開発は,水田に約80センチメートルの盛土をして宅地化し,32区画の宅地と1区画の公園及び道路とし,本件排水路との境界部分にはL型の鉄筋コンクリート擁壁(以下「本件L型擁壁」という)を設置するというものであった。本件L型擁壁は,高さが。 約1.7メートルであり,本件各土地側から見ると,大部分が地中に埋め込まれており,上記盛土の厚み分だけ本件各土地よりも低い本件排水路側から見ると,約半分が地表から立ち上がることとなった(甲12,乙3。 の1ないし12,丙4)エ平成13年7月10日,京都市長は被告業者に対し,本件開発に関する工事を検査し,都市計画法29条の規定による開発許可の内容に適合していることを証明する旨の検査済証を交付した(乙 いし12,丙4)エ平成13年7月10日,京都市長は被告業者に対し,本件開発に関する工事を検査し,都市計画法29条の規定による開発許可の内容に適合していることを証明する旨の検査済証を交付した(乙2の1)。 オ被告業者は,開発にかかる土地について,必要な分筆,合筆,地目変更等の手続を行った。別紙物件目録1ないし11の各(1)の土地(以下「本- 4 -件各土地」という)は,このようにして形成された土地である(甲1な。 。 いし11の各1)カ被告業者は,平成13年7月ころ,本件各土地に建築予定の建物について順次建築確認を受けて工事に着工し,平成14年3月ころまでに,別紙物件目録1ないし11の各(1)の土地上に同目録1ないし11の各(2)の建物(以下「本件各建物」という)を順次完成させた。なお,本件各建物。 を建築するに当たり,被告業者は,本件各土地の地盤調査を実施しなかった(甲1ないし11の各1,2,甲13の1ないし11,甲14ないし。 23)キ平成14年1月ないし3月,被告業者から,原告1は別紙物件目録1の(1)(2)記載の土地建物(以下「原告(1)土地「原告(1)建物「原告(1)土」」地建物」等といい,他の土地建物についても同様の表示をする,原告2。)は同目録2の(1)(2)記載の土地建物を,原告3は同目録3の(1)(2)記載の各土地建物を,原告4は同目録4の(1)(2)記載の各土地建物を,原告5は同目録5の(1)(2)記載の各土地建物を,原告6は同目録6の(1)(2)記載の各土地建物を,原告7は同目録7の(1)(2)記載の各土地建物を,原告8は同目録8の(1)(2)記載の各土地建物を,原告9は同目録9の(1)(2)記載の各土地建物を,原告10は同目録10の(1)(2)記載の各土地建物を,原告11は同目録11の( の各土地建物を,原告8は同目録8の(1)(2)記載の各土地建物を,原告9は同目録9の(1)(2)記載の各土地建物を,原告10は同目録10の(1)(2)記載の各土地建物を,原告11は同目録11の(1)(2)記載の各土地建物をそれぞれ購入し,引渡しを受けた(甲1ないし11の各1,2)。 ク本件各土地のうち,原告(1)土地ないし原告(10)土地は,本件開発区域の西端に位置し,その西側で本件排水路が流れる国有水路敷に接しており,その南端が原告(1)土地で,北側方向に,原告(2)土地,原告(3)土地,原告(4)土地の順に並んでおり,最北端が原告(10)土地である。これらの土地の東側に南北に道路が通じており,同道路は,原告(1)土地付近で東方向に約90度曲がっている(以下「本件住宅内道路」といい,南北に通じ- 5 -ている部分を「南北部分」と,東西に通じている部分を「東西部分」とい。),う。原告(1)建物ないし原告(10)建物は,いずれも東面に玄関があるが各建物の西面と西側境界との距離は,50センチメートル内外しかない。 また,原告(11)土地は,原告(1)土地から本件住宅内道路(南北部分)を隔てた東側に位置しており,南側で本件住宅内道路(東西部分)と接している。原告(11)建物の玄関は,本件住宅内道路(南北部分)に面した西面にある。原告(11)建物と本件排水路は,20メートル以上を隔てている。 (丙1の2,12)ケ以上の本件各土地建物の位置は,別紙図面(1)記載のとおりである。 (2)被告京都市が施工した排水路改良工事についてア被告京都市は,宮建工業株式会社(以下「宮建工業」という)に請け。 負わせて,次の内容の本件排水路改良工事を実施した(以下「本件工。 事」という(丙1,3)。)(ア)工事名幹線排水路改良(e町)工 市は,宮建工業株式会社(以下「宮建工業」という)に請け。 負わせて,次の内容の本件排水路改良工事を実施した(以下「本件工。 事」という(丙1,3)。)(ア)工事名幹線排水路改良(e町)工事(イ)工事場所a区b町地内(ウ)工期平成15年1月23日から平成15年5月30日イ本件排水路は,素堀の水路で,e地域の用水路として機能していたが,周辺地域の宅地化の進行にしたがって雨水排水の流入が著しく,浸水の被害が懸念されていた。本件工事は,地元からの要望に応え,浸水の防止と宅地化に伴う環境整備を目的として行われ,具体的には,素堀の本件排水路を,81.3メートルにわたって,コンクリート性の工場製作品(プレキャスト)であるU型水路(幅2メートル,深さ1.5メートル)に改修するというものであった。工事起点は,原告(1)土地の更に約30メートル南の地点であり,工事の終点は,原告(9)土地と原告(10)土地との境界西側付近であり,原告(10)土地の西側は工事区間には入っていなかった。 (丙1の1ないし13,丙20)- 6 -ウ本件工事については,平成12年度に概略設計が行われ,平成13年度に測量設計及び地質調査が実施され,平成14年度に着工されることとなり,具体的には平成15年1月23日から準備工が開始され,3月3日から工事用道路工(工事用道路盛土)が,同月13日から土留・仮締切工が,4月25日から水路工が,同月28日からU型水路工がそれぞれ開始され,同年5月28日完工した。なお,工事用道路は,3本が設けられた。そのうち1本は,原告(11)土地から本件住宅内道路(東西部分)を隔ててその南側に東西方向に設けられ(以下「第1仮設道路」という,同道路の西。)端に本件排水路を西側に渡るための仮桟橋が設置された。2本目は,本件排水路 1)土地から本件住宅内道路(東西部分)を隔ててその南側に東西方向に設けられ(以下「第1仮設道路」という,同道路の西。)端に本件排水路を西側に渡るための仮桟橋が設置された。2本目は,本件排水路の西側に本件排水路に沿って南北に設けられた(以下「第2仮設道路」という。第1仮設道路は,高さ約1ないし1.2メートルの土盛り。)の上に鋼板が敷かれ,幅は下部で7.5ないし7.7メートル,上部で6. 5メートル,長さが約20メートルであり,第2仮設道路は,高さ約0. 5メートルの土盛りの上に鋼板が敷かれ,幅は下部で約9メートル,上部で約8メートル,長さが約81.2メートルであった。これによって,工事用車両は,本件住宅内道路の東西部分を通行して第1仮設道路に入り,仮桟橋を渡って第2仮設道路に進入することとなった(丙1の1ないし。 13,丙2の1ないし9)エ本件工事においては,本件排水路に隣接する本件各建物に影響を与えないことが求められた。そのために,被告京都市は,次の対策をとった。 (ア)平成13年度に日本試錐設計株式会社(以下「日本試錐設計」という)に委託して本件工事現場付近の地質調査をさせた。日本試錐設計。 は,同年8月29日から12月25日までの間,第1工区(本件各土地に隣接する部分が含まれる)及び第2工区について,それぞれ3か所ずつボーリング調査を行った。第1工区の3か所のボーリング地点は,別紙図面(2)に「ボーリングNo1「ボーリングNo2「ボーリングNo3」」」- 7 -と記載した地点であり,そのうち,本件各土地に最も近いのは「ボー,リングNo3」地点で,本件各土地のうち最も南側に位置する原告(1)土地から南方向に約34メートル離れていた。第1工区の3地点のボーリング結果のうち,土質及びN値〔63.5キログラムのハンマー ,リングNo3」地点で,本件各土地のうち最も南側に位置する原告(1)土地から南方向に約34メートル離れていた。第1工区の3地点のボーリング結果のうち,土質及びN値〔63.5キログラムのハンマー(錐)を75センチメートル落下させて打ち込むサンプラーが地盤を30センチメートル貫入するのに要する打撃回数〕は,別表(2)記載のとおりであり,本件各土地に最も近いNo3地点では,地表から地下1.15メートルまでは盛土であり,その下の地下3.8メートルまではシルト層,その下の地下4.9メートルまではシルト質砂層,その下が砂礫層であり,N値は,盛土,シルト層で3程度,シルト質砂層で8程度で,10を超えるのは砂礫層以下であり,他の2地点のボーリングデータも同様の結果であった(以下「本件工事前ボーリング調査」という。丙4)。 (イ)埋め込む予定のU型水路は,幅(内径)が2メートル,幅(外径)が2.3メートル,深さ(内径)が1.5メートルであり,他方,国有水路敷の幅は,3.6メートルしかなかった。京都市は,掘削部分と本件各土地との離隔を可能な限り大きくとるため,水路敷の西側境界線に沿ってU型水路を埋め込み,水路敷のうち本件各土地と接する部分は約1.3メートル幅の管理用通路とすることとした。 (ウ)U型水路に接して東側に土留め壁をもうけ,これを本件工事終了後も地中に存置することとした。土留め壁の設置は,深さ7メートルの鋼矢板の継ぎ手部をかみ合わせながら,連続して地中に打ち込み設置する工法(鋼矢板工法)を採用した。更に,U型水路の西側にも深さ3メートルの軽量鋼矢板を打ち込み,これとU型水路の東側の上記土留め壁を切梁で繋いで上記土留め壁を支えた。 (エ)有限会社タウン測量設計に委託して,平成15年3月5日から16日までの間,原告1建物ないし原告10 量鋼矢板を打ち込み,これとU型水路の東側の上記土留め壁を切梁で繋いで上記土留め壁を支えた。 (エ)有限会社タウン測量設計に委託して,平成15年3月5日から16日までの間,原告1建物ないし原告10建物について,事前家屋調査を- 8 -実施し(以下「本件事前調査」という,同年5月24日から同年6月。)4日までの間,本件各建物について事後調査を実施した(以下「本件事後調査」という。なお,原告(11)建物については,事前調査はなされず,事後調査のみがなされた。そして,有限会社タウン測量設計の管理技。)術者A(以下「A」という)は,これに関連して,本件L型擁壁に9。 か所の定点をもうけ,事前観測日(同年3月11日,中間観測日(同)年4月4日)及び最終観測日(同年5月27日)にその沈下及び移動の状況を観測した(以下「擁壁定点観測」という。その結果は,別表。)(3)記載のとおりである。 (オ)同年5月28日から同年6月10日までの間,被告京都市は,再びボーリング調査を実施した。ボーリング地点は,原告2土地,原告5土地及び原告9土地の各東端の本件住宅内道路(南北部分)に面した部分(以下「原告2建物玄関前」等という,上記各土地の西側の本件排水。)路の管理用通路の部分(以下「原告2土地裏」等という)及び原告(1。 1)土地の西端の本件住宅内道路(南北部分)に面した部分(以下「原告(11)建物玄関前」という,以上の7か所であった。その結果のうち,。)土質及びN値は別表(4)のとおりであり,とりわけ,原告2土地裏及び原告5土地裏の各表層のN値が,前者が深度1.15メートルで0.75,深度2.15メートルで1,後者が深度1.15メートルで1.71,深度2.15メートルで0.85と,極めて低い値を示した(以。 下「本件工事後ボーリ のN値が,前者が深度1.15メートルで0.75,深度2.15メートルで1,後者が深度1.15メートルで1.71,深度2.15メートルで0.85と,極めて低い値を示した(以。 下「本件工事後ボーリング調査」という。丙5)(3)本件各建物の損傷について本件各建物について,本件事前調査及び本件事後調査で確認された柱の傾,斜,床の傾斜,壁や基礎のクラック等は別表(5)記載のとおりである。なおこのうち,基礎コンクリートひび割れの最大幅欄の数値は,壁の隙間に人が入れず,肉眼でゲージの値を確認できなかったため,Aが事前,事後の各調- 9 -査報告書には記載しなかったが,その際に撮影した写真を後日コンピュータで拡大して幅を測定した結果得られた数値である。これによると,本件事前調査において,原告1ないし10建物はいずれも西方向に相当の傾斜を示していたが,これが僅か2か月半の本件工事期間中に更に拡大したことが見て取れる。 (4)工法についてア地中に設ける土留め壁としては,親杭横矢板壁,鋼矢板壁,鋼管矢板壁,柱列式連続壁,地中連続壁等がある。その中で,鋼矢板壁は,①止水性がある,②たわみ性の壁体であるため,壁体の変形が大きくなる,③打設時及び引抜き時に騒音,振動等が問題になることがあり,その場合,低騒音,低振動工法を採用する必要がある等の特徴がある(丙7)。 イ土留め壁の設置方法としては,次の方法がある(丙7)。 (ア)打撃工法ドロップハンマー,ディーゼルハンマー等の打設機械を使用して打ち込む工法である。 (イ)振動工法バイブロハンマーを用いて上下振動を与えて打ち込む工法である。騒音は比較的少ないが,振動が大きいため,適用場所が限定される。 (ウ)油圧圧入工法油圧ジャッキを用い,油圧によって圧入する工法である。騒音・振動が極め 用いて上下振動を与えて打ち込む工法である。騒音は比較的少ないが,振動が大きいため,適用場所が限定される。 (ウ)油圧圧入工法油圧ジャッキを用い,油圧によって圧入する工法である。騒音・振動が極めて少なく,市街地や住宅地における施工に適している。 (エ)ウォータージェット併用工法ノズルの先から噴出する高圧水で地盤を掘削して,設置する工法である。一般に,他の工法と併用される。 (5)木造建物の不同沈下の障害程度について日本建築学会発行の「小規模建築物基礎設計の手引き」には,木造建物の- 10 -不同沈下の段階と変形角(傾斜の程度)の関係を整理した表が搭載されているが,その内容は,別表(6)記載のとおりである(以下「傾斜基準」という。また,福山大学工学部建築学科教授芳賀保夫執筆にかかる論文「木造。)建物の不同沈下と障害(土と基礎」平成5年11月号所収)中には,芳賀」「が考案した「木造建物の不同沈下障害程度のランク案」が搭載されているが,。)。 その内容は,別表(7)記載のとおりである(以下「芳賀ランク案」という(丙18,弁論の全趣旨)(6)平成18年1月30日,当裁判所は,本件各土地付近で進行協議期日を開催し,原告(1)建物,同(3)建物,同(5)建物及び同(11)建物を見聞した。 これに先立つ同月22日,Aは,これらの建物の調査を実施したところ,次のとおり,上記各建物の損傷は,本件事後調査時と比較しても,更に進行していた(括弧内は,本件事後調査の際の数値である(甲36)。)。 ア原告(1)建物(ア)基礎コンクリートひび割れ(ヘアークラックは除く)a発生数14個(13個)b最大幅0.90ミリメートル(0.85ミリメートル)(イ)最大柱傾斜a東西方向西3.5ミリメートル(西2.5ミリメートル)b南北 ヘアークラックは除く)a発生数14個(13個)b最大幅0.90ミリメートル(0.85ミリメートル)(イ)最大柱傾斜a東西方向西3.5ミリメートル(西2.5ミリメートル)b南北方向南4.0ミリメートル(南2.0ミリメートル)(ウ)最大床傾斜a東西方向西6.5ミリメートル(西5.5ミリメートル)b南北方向なし(南3.0ミリメートル)イ原告(3)建物(ア)基礎コンクリートひび割れ(ヘアークラックは除く)最大幅1.10ミリメートル(0.94ミリメートル)(イ)最大柱傾斜- 11 -a東西方向西5.0ミリメートル(西4.0ミリメートル)b南北方向南0.0ミリメートル(南1.5ミリメートル)(ウ)最大床傾斜a東西方向西3.5ミリメートル(西3.0ミリメートル)b南北方向南2.5ミリメートル(南2.0ミリメートル)ウ原告(5)建物(ア)基礎コンクリートひび割れ(ヘアークラックは除く)a発生数13個(11個)b最大幅1.00ミリメートル(0.90ミリメートル)(イ)最大柱傾斜a東西方向西5.5ミリメートル(西4.0ミリメートル)b南北方向南1.0ミリメートル(南1.5ミリメートル)(ウ)最大床傾斜a東西方向西4.5ミリメートル(西3.0ミリメートル)b南北方向南2.5ミリメートル(南2.0ミリメートル)エ原告(11)建物(ア)基礎コンクリートひび割れ(ヘアークラックは除く)a発生数15個(15個)b最大幅0.70ミリメートル(0.67ミリメートル)(イ)最大柱傾斜a東西方向西2.0ミリメートル(西1.5ミリメートル)b南北方向北0.5ミリメートル(北0.5ミリメートル)(ウ)最大床傾斜a東西方向西3.5ミ ミリメートル)(イ)最大柱傾斜a東西方向西2.0ミリメートル(西1.5ミリメートル)b南北方向北0.5ミリメートル(北0.5ミリメートル)(ウ)最大床傾斜a東西方向西3.5ミリメートル(西3.0ミリメートル)b南北方向南1.5ミリメートル(南1.5ミリメートル) 争点及び当事者の主張- 12 -原告らは,本件各建物が損傷したのは,本件各土地が軟弱地盤であるのに,被告業者が本件各建物を建築するに当たって本件各土地の地盤改良をしなかった不法行為及び京都市が,本件工事を実施するにあたって,本件各土地の地盤の脆弱性を予見できたのに,それを十分調査することなく,且つ適切な対応をとることなく本件工事を施工した不法行為によるものであるとして,被告らに対し損害の賠償を求めるとともに,被告業者に対しては,瑕疵担保責任に基づいても損害の賠償を求めている。 本件の争点及び争点に対する当事者の主張は次のとおりである。 (1)被告京都市は,本件工事でバイブロハンマーを使用したか(被告業者の主張)被告京都市は,本件排水路東側の鋼矢板は,油圧圧入,ウォータージェット併用工法を採用したが,本件排水路西側の軽量鋼矢板は,バイブロハンマーを用いる振動工法を採用した。 (被告京都市の主張)京都市は,本件排水路東側の鋼矢板の設置方法として,ウォータージェット併用油圧圧入工法を採用した。また,本件排水路西側の軽量鋼矢板は,バックホーで押し込んだのであって,バイブロハンマーは使用していない。 (2)本件各土地建物には軟弱地盤,軟弱地盤上の建物という瑕疵があるか(原告らの主張)本件各土地は,本件工事後ボーリング調査によってN値が2以下の地点が多くあり,原告2土地裏の平均N値は1.54であった。このように,本件各土地は,極めて軟弱な地盤であるの があるか(原告らの主張)本件各土地は,本件工事後ボーリング調査によってN値が2以下の地点が多くあり,原告2土地裏の平均N値は1.54であった。このように,本件各土地は,極めて軟弱な地盤であるのに,被告業者は,何らの地盤改良を行うことなくその上に本件各建物を建築し,これらを原告らに売却した。そうすると,本件土地建物には,住居用土地建物として,通常備えているべき品質を備えていないという瑕疵があることが明白である。また,上記瑕疵があることは,原告らが居住を始め,本件各建物にひび割れ,傾き等の不具合が- 13 -生じてから判明することであるから,これは「隠れた瑕疵」である。 (被告業者の主張)被告業者は,地耐力N値3の地盤に,1平方メートル当たり1.67トンの重量の住宅を建築したのであり,安定性には何らの問題がない。原告らは,本件工事後ボーリング調査の結果に基づいて本件各土地のN値が2以下であると主張するが,これは,本件工事によってN値が変動した後の値であって,被告業者が本件各建物を建築したときの値ではない。 被告業者は,本件各建物にベタ基礎を採用したから,仮に本件各土地に沈下がおこったとしても,本件各建物に不同沈下は起こらない。 被告業者は,被告京都市に対し,本件各土地について開発許可を申請し,その許可を得,現地立ち会いを経て検査済証を得た。この間,被告業者の開発行為について被告京都市から不備の指摘は全くなかった。また,被告業者は,本件各土地周辺でも宅地開発を行って建売住宅を販売しているが,本件各土地建物以外には何らの問題が生じていない。 原告ら主張にかかる本件各建物の損傷は,被告京都市による本件工事に起因するものであって,その責任はすべて本件工事を施工した京都市にあり,被告業者が販売した本件土地建物には瑕疵は存在しない。 (3)被告 ら主張にかかる本件各建物の損傷は,被告京都市による本件工事に起因するものであって,その責任はすべて本件工事を施工した京都市にあり,被告業者が販売した本件土地建物には瑕疵は存在しない。 (3)被告業者に地盤改良義務違反の過失があるか(原告の主張)被告業者は,水田であった本件各土地を宅地化した時点において,本件各土地が軟弱地盤であることを容易に認識することができ,何らの地盤対策を採らずに本件各土地の上に建物を建築すれば,その建物が不同沈下を起こし,重篤なひび割れや傾きが生じることが予見できた。したがって,被告業者は,本件各土地の地盤の脆弱性を十分に調査し,その調査結果に応じて,地盤改良工事を行った上で建物建築工事に着手するか,あるいは地盤沈下による建物の傾斜を防止するため,支持杭を打ち込むなどの工法を採る注意義務があ- 14 -った。しかるに,被告業者は,かかる義務を怠り,上記地盤改良工事等を行わないまま,漫然と本件各土地の造成及び本件各建物の建築を行った。 なお,被告業者は,本件排水路との境界部分に本件L型擁壁を設置したが,本件L型擁壁の地盤の支持力が不十分であったため,同擁壁自体が沈下,移動し,地盤の変位を防ぐ役割を果たせなかった。 (被告京都市の主張)アベタ基礎についてベタ基礎は,布基礎に比べ,使用するコンクリートの量が格段に多く,重量も格段に重いため,沈下量がより増大するという特徴がある。ベタ基礎は,建物のバランスに偏りがあったり,軟弱な地盤が傾斜しているなど地耐力が宅地面全体で一様でなかったりすると,不同沈下を引き起こす原因にもなるから,地盤調査をせず,その調査結果を検討しないまま安易にベタ基礎を採用すると,布基礎よりも深刻な不同沈下をもたらす危険がある。 イ地耐力について本件各土地は,水田に1メートル程度の盛土を もなるから,地盤調査をせず,その調査結果を検討しないまま安易にベタ基礎を採用すると,布基礎よりも深刻な不同沈下をもたらす危険がある。 イ地耐力について本件各土地は,水田に1メートル程度の盛土をして宅地化したものであるから,もとの地盤に作用する重量としては,建物の重量約1.67トン/㎡に盛土部分の重量約1.93トン/㎡を加えて考慮すべきであり,合計約3.6トン/㎡となる。本件各土地の地盤にかかる重量が3.6トン/㎡であり,本件各土地にはこれを支える地耐力が必要となる。これをN値に換算した場合,少なくともN値3の地盤ではその地耐力が極めて不十分であることは明らかである。 ウ本件L型擁壁の地盤の地耐力について被告業者の開発申請資料(乙2,3)によると,本件L型擁壁の設計条件として,地盤許容支持力が15tf/㎡として計算されている。地盤のN値と地盤許容支持力はほぼ同じ値である(N値が3であれば,地盤の許容- 15 -支持力は3tf/㎡程度。そうすると,本件L型擁壁の地盤は,到底本件L)型擁壁を支えることができるような支持力を有していないことになる。本件L型擁壁が変位した原因の一つとして,本件L型擁壁の地盤の許容力不足があったことは明らかである。 (被告業者の主張)ア(2)の(被告業者の主張)に記載したとおり,本件各土地建物には何らの瑕疵がなく,被告業者がした本件各土地の造成行為及び本件各建物の建築行為が原告らに対する不法行為にはならない。原告ら主張の被害が生じたのは,京都市が施工した本件工事が原因である。 地耐力について,建物の重量に盛土の重量を加えて考慮すべきとの被告京都市の主張は,独自のものである。 イ本件L型擁壁が沈下,移動した原因も,被告京都市の本件工事にある。 本件L型擁壁の地盤に支持力がなければ,本件L型擁壁は,早期 土の重量を加えて考慮すべきとの被告京都市の主張は,独自のものである。 イ本件L型擁壁が沈下,移動した原因も,被告京都市の本件工事にある。 本件L型擁壁の地盤に支持力がなければ,本件L型擁壁は,早期のうちに回転,滑動,転倒またはその複合現象が起こっていたと考えられるが,本件L型擁壁が完成した後,本件工事が開始されるまでの約1年3か月間,本件L型擁壁にこれらの現象は生じなかった。 (4)本件工事について京都市の過失の有無(原告らの主張)ア被告京都市は,本件工事前,本件各土地がもとの河川の氾濫原であり,軟弱地盤であることを知っていた。更に被告京都市は,本件事前調査において,既に本件各建物に変位が発生していることを把握しており,本件各土地の地盤の脆弱性を具体的に把握していた。そのような場所において,住宅と近接して工事を行うのであるから,被告京都市は,地盤の強度を慎重に調査し,近接する住宅に被害を与えない工法を慎重に選定し,そのような工法が存在しない場合は,工事を実施すること自体の見直しまで含めて検討するべき注意義務があった。しかるに,被告京都市は,次のとおり,- 16 -その注意義務に違反した。 イ(事前調査義務違反)被告京都市は,本件各土地の直近でボーリング調査を実施して本件各土地の地盤を調査すべき注意義務があったのに,これを怠り,最も近い原告1建物からでも約34メートル,最も遠い原告10建物からは約90メートルも離れた地点のボーリング調査結果から,本件各土地のN値が3であると推定し,これを前提に工法を選択した。結果的に,本件各土地のN値は2を下回る地点が多くあり,原告2土地裏では1.54であったから,被告京都市が工法を選択するにあたって前提とした情報は誤っていた。正しい情報を踏まえていれば,結果的に選択した工法も異なっていたは は2を下回る地点が多くあり,原告2土地裏では1.54であったから,被告京都市が工法を選択するにあたって前提とした情報は誤っていた。正しい情報を踏まえていれば,結果的に選択した工法も異なっていたはずである。 ウ(適切な工法選択義務違反)被告京都市は,次のとおり相当でない工法を選択した。本件工事期間中に本件各建物の傾斜やひび割れが急激に拡大,増加したのは,これらが原因である。 (ア)ウォータージェット併用工法を採用した。これが,地盤の移動,沈下及び滑りを招いた。 (イ)本件工事期間中,機械設備等によって,本件排水路付近に1平方メートル当たり1ないし5トンの荷重をかけ続け,圧密による地盤沈下を招いた。 (ウ)原告(1)建物及び原告(11)建物の脇の道路に15トン以上の重量の工事車両を頻繁に通行させた。それが,原告(1)建物及び原告(11)建物の損傷を拡大させた。 エ(工事中止義務違反)如何なる工法を選択しても本件各建物に影響を与えないことが困難なのであれば,被告京都市としては,本件排水路を付け替える等の代替方法を- 17 -検討し,本件工事を予定どおり施工すること自体を見直す義務があったのに,これを怠った。 オなお,本件各建物に影響を与えない工法としては「地盤改良工法と凍,結工法を組み合わせた工法」が考えられる「凍結工法」とは,地盤を凍。 土化して変位を予防する工法をいい,具体的には,地盤中に埋設された凍結管に冷却液を循環させることによって管の周りから年輪状に凍土を成長させ,これを隣接する凍土柱と連結させていくことによって,壁状にし,遮水壁あるいは耐力壁として機能させるものをいう。この場合,凍結時に地盤中の間隙水の体積増加により土が膨脹し,解凍時に地盤の体積減少に伴い土が収縮するという問題点があるので,これを予防する見地か ,遮水壁あるいは耐力壁として機能させるものをいう。この場合,凍結時に地盤中の間隙水の体積増加により土が膨脹し,解凍時に地盤の体積減少に伴い土が収縮するという問題点があるので,これを予防する見地から,地盤の過剰収縮予防のための薬液注入を行う。この工法による場合は,運搬車によって本件工事現場に持ち込む資材等の重量は,現実に本件工事の際に持ち込まれた重量と比較して,4分の1程度で足りる。 (被告業者の主張)ア被告京都市は,本件工事の工法を選択するに当たり,軟弱地盤であることを認識しながら,鋼矢板圧入工法及びウォータージェット工法を採用し,更に,本件排水路の西側に設置した軽量鋼矢板は,バイブロハンマーを用いた振動工法で打ち込み,後日これらを引き抜いた。 イその結果,ウォータージェットによって水が土質内に拡散し,地盤の液状化をもたらし,振動工法による軽量鋼矢板の打ち込み及び引き抜きによって,周辺地盤に振動を及ぼした。これによって,本件各建物の被害が生じた。 ウ被告京都市が採用すべき工法は,本件L型擁壁の下部地盤を薬液注入の方法により改良強化し,本件L型擁壁に影響を与えないようにした上での素堀工法であった。 (被告京都市の主張)- 18 -ア(事前調査義務違反の主張に対し)被告京都市は,本件工事前ボーリング調査を行い,一帯の地盤がN値が3を示す柔らかい粘性土であることを確認し,それを前提に本件土地建物への影響を最小限にとどめる工法を採用した。一般に,ボーリング調査地点の選定は,事業区間の土の状態を総括的に把握するように適切な間隔をおいて行い,その上で,地質,土質条件あるいは地形条件が複雑で変化に富むような結果が生じた場合等は,さらに重点的な調査を実施することとされている。本件工事前ボーリング調査では,第1工区で選定された3か所での ,その上で,地質,土質条件あるいは地形条件が複雑で変化に富むような結果が生じた場合等は,さらに重点的な調査を実施することとされている。本件工事前ボーリング調査では,第1工区で選定された3か所での調査結果に大きな差異が認められず,この区間では同様の土の状態が連続すると判断できたので,それ以上調査地点を増やすことをしなかった。被告京都市の,この判断は相当であって,これ以上地質調査をしなかったことについて,被告京都市に過失はない。 なお,N値が3というのは相当の軟弱地盤であり,仮に,本件住宅地の敷地のN値が1.54であると京都市が把握していたとしても,結果的に選択したであろう工法は,本件工事の工法と同一であった。そうすると,仮に,被告京都市に上記過失が認められるとしても,その過失と本件工事の工法選択との間には因果関係がない。 イ(適切な工法選択義務違反の主張に対し)(ア)被告京都市は,本件工事が本件各建物に影響を与えないため,第2の2の(2)エ(イ)のとおり,U型水路の位置を可能な限り本件各建物から離し,同(ウ)のとおり土留め壁を設け,これを地中に存置した。そして,土留め壁の設置については,低騒音,低振動の油圧圧入工法を採用し,地盤下部の砂礫層にのみウォータージェット工法を採用した。これは,軟弱地盤における工法としては最良の工法であり,この工法を採用したことに過失はない。なお,ウォータージェット工法は,下に向かって水を噴射するものであり,下部の砂礫層にのみ使用したのであるから,- 19 -これによって地盤が緩むということは想定し得ない。 また,被告京都市は,第1仮設道路及び第2仮設道路に鋼板(厚み22ミリメートル,幅約1.5m,長さ約3.0m)を敷き並べることにより,直接水田に与える荷重を可能な限り軽減(分散)させ,周辺地盤への影響 ,被告京都市は,第1仮設道路及び第2仮設道路に鋼板(厚み22ミリメートル,幅約1.5m,長さ約3.0m)を敷き並べることにより,直接水田に与える荷重を可能な限り軽減(分散)させ,周辺地盤への影響を生じさせない手段を講じた。被告京都市のこれらの措置に過失はない。 また,一般に公衆用道路において通過車両の重量制限はないから,本件工事の際に工事車両が原告(1)建物及び原告(11)建物の脇の道路を通行したことに違法はない。 (イ)原告が主張する凍結工法は,次のとおり適切でない。 すなわち,凍結工法は,水分を多く含まず,温度管理の難しい地表面近くの土質では,所定の凍土ができない可能性がある。また,土質が粘性土の場合,凍結時及び解凍時に起こる土の膨脹,収縮により周辺の擁壁及び民家に影響を及ぼす。また,凍結工法においても,ボーリングマシンを用いて凍結管を埋設する際に,本件L型擁壁が動く可能性があるうえ,工期が長期間に及び,費用も高額となる。 (ウ)被告業者が主張する素堀工法は,次のとおり適切でない。 すなわち,本件工事前ボーリング調査結果から明らかなように,本件L型擁壁付近の地盤は極端にN値が低く,このような場所で素掘り工法を行えば,掘削時に本件L型擁壁が西側へすべり,本件各建物に重大な損傷が発生していたと考えられる。仮に本件L型擁壁の下部地盤に薬液を注入しても,当該部分より上部は軟弱地盤のままであるため,本件L型擁壁の移動を防ぐことはできず,結局同擁壁の全面に土留工が必要となるから,素掘工法は適切な工法とはいえない。 ウ(工事中止義務違反の主張に対し)本件排水路は,農業用水の取水及び排水に利用されており,その位置に- 20 -併せて田畑の造成も行われているから,むやみに付け替えることはできず,被告京都市に,本件工事を予定どおり施工すること自 本件排水路は,農業用水の取水及び排水に利用されており,その位置に- 20 -併せて田畑の造成も行われているから,むやみに付け替えることはできず,被告京都市に,本件工事を予定どおり施工すること自体を見直す義務はなかった。 エ(総括的主張)軟弱地盤対策がとられないまま先行工事が行われ,その隣接地において第三者が後行工事を行い,その結果軟弱地盤上の建物等に損害が発生したとしても,その責任は軟弱地盤対策を怠った先行工事者が負担すべきであり,後行工事者は先行工事が行われた地盤が軟弱地盤であることを想定してその対策まで講ずべき注意義務はない。 本件各建物に被害が生じた原因は,被告業者の軟弱地盤対策の欠如であり,被告京都市には,本件工事実施にあたり,本件各土地に軟弱地盤対策が講じられていないことまで予見する義務はなかった。 (5)被告らの不法行為と本件各建物の損傷との因果関係,被告らの責任の範囲(原告らの主張)被告京都市の過失と被告業者の過失とがあいまって,本件各土地建物の損傷が生じたから,被告らは,民法719条により,又はこれに準じて,連帯して原告らが被った損害を賠償する責任がある。 (被告業者の主張)次の事情に照らすと,原告ら主張にかかる本件各建物の損傷は,すべて被告京都市による本件工事に起因するものであって,被告業者の宅地造成,本件各建物の建築工事とは因果関係がない。 ア本件工事開始前,本件各土地に不同沈下等の問題は一切発生していなかった。なお,本件事前調査では,本件各建物(但し,原告(11)建物を除く)に柱や床の傾斜,基礎や壁の亀裂等が確認されているが,本件事前調査が実施された時点では,既に本件工事が開始されていたから,これらの- 21 -損傷は,その影響によるものと考えられる。イ被告業者は,原告(11)建物付近の道路に側 確認されているが,本件事前調査が実施された時点では,既に本件工事が開始されていたから,これらの- 21 -損傷は,その影響によるものと考えられる。イ被告業者は,原告(11)建物付近の道路に側溝を設置したところ,本件工事中,この道路を10トントラックが多数回通過したのに,これらの側溝に地盤沈下,その他の変化が生じていない。 ウ被告業者は,被告京都市の要請により,本件排水路のうち,本件工事の対象となった区間の前後部分の改修工事を施工したが,被告業者施工部分に隣接する宅地,建物(これらも被告業者が造成,建築したものである)については,現在に至るも何の問題も生じていない。 (被告京都市の主張)ア本件各建物に損傷が生じた原因は,軟弱地盤の圧密沈下である。本件工事は,その原因ではなく,かえって,本件工事は,土留め壁の存置等により,結果的に本件各土地の地盤を強化した。仮に本件工事が実施されていなくとも,本件各建物は現状と同様か,むしろ現状以上の損傷を受けたものと考えられる。 イ仮に,本件各建物の損傷について被告京都市に何らかの責任があるとしても,本件各建物の損傷発生の根本的原因は,被告業者にあるから,被告京都市の責任の範囲は,本件各建物の補修相当額の一部,すなわち受忍限度を超えた損傷のうち,本件事前調査と本件事後調査の各結果を比較し,本件工事の影響が著しいと判断される損傷の補修費用に限られる。 (6)本件各建物の補修方法について(原告の主張)本件各建物に生じた損傷を修復するためには,本件各土地及び本件各建物について,次の工事を行う必要がある。 ア原告(1)ないし原告(9)各土地建物(ア)各土地について地盤改良工事をする必要がある。地盤改良の方法としては,深層・浅層混合処理工法を採用するべきである。 - 22 -被告業者は,薬液 。 ア原告(1)ないし原告(9)各土地建物(ア)各土地について地盤改良工事をする必要がある。地盤改良の方法としては,深層・浅層混合処理工法を採用するべきである。 - 22 -被告業者は,薬液注入による地盤改良で足りる旨主張するが,薬液注入を本件各土地のような軟弱地盤の粘性土において施工すると,改良薬自身が脈状を形成してしまい,混じり合うことなく部分的に固化してしまう欠点があり,(イ)で述べるように,十分な改良効果を得ることができない。また,薬液注入工法には,充填形状や充填箇所が不明であって,改良作業後に改良結果を検証することができないという等の問題点がある。 他方,深層・浅層混合処理工法は,粘性土における地盤改良工法として推奨されており,支持力の確認等地盤改良作業後の検証が確実にできること,工事前に地盤の改良結果についての計算が可能であること,改良効果(増強された強度)が恒久的であること,工事による二次被害がないこと等,他の地盤改良工法よりも優れている点が多い。 (イ)安全な地盤を実現するには,その地盤の一軸圧縮強度〔一方向からの荷重により土が破壊する時の荷重(最大荷重)数値を,荷重と接する土の面積で除した数値〕を安全率で除した値(qa〔許容支持力度〕という)が最低でも50kN/㎡(1平方メートルにつき1キロニュー。 トンの荷重がかかる状態の50倍)はなければならない。 しかし,本件各土地のような粘性土の場合,薬液注入工法のうち,粘性土に最も改良効果があるとされている二重管ダブルパッカー方式(注入孔上下のダブルパッカーにより薬液の逸走を防ぎ,緩結型の注入を行う方式)や二重管ストレーナ複相式(瞬結型注入による1次注入によりグラウトパックし,緩結型注入材にて2次注入する方式)によることとしても,qa値は,前者において40ないし5 を防ぎ,緩結型の注入を行う方式)や二重管ストレーナ複相式(瞬結型注入による1次注入によりグラウトパックし,緩結型注入材にて2次注入する方式)によることとしても,qa値は,前者において40ないし50kN/㎡,後者において35ないし45kN/㎡に止まり,安全な地盤を実現する工法としては不十分である。 (ウ)深層・浅層混合処理工法は建物があっては施工できないから,本件- 23 -各建物を建て替える必要がある。 (エ)被告業者は,薬液注入による地盤改良で足り,本件各建物は,ジャッキアップして修復できると主張するが,本件各建物をジャッキアップすることは不可能である。なぜなら,建物の外側からジャッキアップを実施するためには,建物壁面から50センチメートル幅以上のスペースが必要であるが,上記各建物の壁面から30センチメートル幅の空地しかない部分がある。建物内部からジャッキアップを実施することも考えられるが,その場合,機械を建物内部に持ち込むために建物の一部を破損したり,浴槽を撤去する必要があるため,高額の費用を要する結果となる。更に,上記各建物の基礎コンクリートは,一般住居建物用の基礎であり,ジャッキアップをした場合に,これに耐えることができない。 イ原告(10)土地建物(ア)原告(10)土地建物は,本件排水路に接して並ぶ原告(1)ないし原告(10)建物の最北端に位置し,その北側には第三者の建物がある。深層・浅層混合処理工法は,近接土地に影響を与える危険性があり,原告(10)土地で施工することは不可能である。したがって,原告(10)土地の地盤改良は,次善の策として,薬液注入工法によらざるを得ない。 (イ)原告(10)建物をジャッキアップできないことは,原告(1)ないし(9)建物と同様である。 (ウ)よって,原告(10)土地建物に対し 改良は,次善の策として,薬液注入工法によらざるを得ない。 (イ)原告(10)建物をジャッキアップできないことは,原告(1)ないし(9)建物と同様である。 (ウ)よって,原告(10)土地建物に対しては,薬液注入工法を原告(10)建物を取り壊して施工する必要がある。 ウ原告(11)土地建物(ア)原告(11)土地も第三者の建物と隣接しているので,原告(10)土地と同様に深層・浅層混合処理工法を施工することができず,薬液注入工法によらざるを得ない。 (イ)原告(11)土地は,西側と南側が道路であり,ジャッキ配置場所を確- 24 -保できるから,ジャッキアップ工法の採用が可能である。 (被告業者の主張)ア本件各土地,建物の修復のためには,本件各建物をジャッキアップして傾きを調整し,薬液注入による地盤改良を施工することで足りる。 イ建物と建物との距離が短いところでも,境界ブロックを一部撤去するだけでジャッキセットは可能である。 ウ本件各建物の傾斜や亀裂の拡大傾向が治まっている場合は,現状地盤により建物荷重が支えられているのであるから,建物基礎コンクリートクラックに樹脂注入を行って一体化,防食化を図ったうえで,土台と基礎間に建物修正工を施し,建物矯正(ジャッキアップダウン)を行い,その後,建物内装を補修する方法で足りる。 拡大傾向が続いている場合は,地盤支持力が弱く建物荷重を支えられないのであるから,建物基礎コンクリートクラックに樹脂注入を行って一体化,防食化を図り,その後,建物基礎下及び本件L型擁壁下の地盤に恒久性の薬液注入を実施し,地盤支持力を増加させ,建物周辺及び床下に建物矯正ジャッキを設置し,基礎ごと建物修正工を施し,建物矯正を行い,その後建物内装を補修すればよい。 (被告京都市の主張)本件建物に生じた損傷が,原告主張の程度 持力を増加させ,建物周辺及び床下に建物矯正ジャッキを設置し,基礎ごと建物修正工を施し,建物矯正を行い,その後建物内装を補修すればよい。 (被告京都市の主張)本件建物に生じた損傷が,原告主張の程度であれば,許容範囲内であるから,本件建物の建て替えは必要なく,補修が相当である。 (7)原告らの損害額(原告らの主張)被告らの不法行為,本件各土地建物の瑕疵によって原告らが被った損害は次のとおりである。 ア原告ら建物の補修及び地盤改良費用地盤改良方法として,原告(10)土地及び原告(11)土地に対しては,薬液- 25 -注入工法を実施し,その他の原告ら土地には深層・浅層混合処理工法を実施し,原告(11)建物に対しては,ジャッキアップの上補修を実施し,その他の原告ら建物は建て替える必要があるため,これらに要する次の費用が損害となる。 (ア)原告1ないし9各2557万9470円(内訳)a建物解体処分費各298万4520円b地盤改良費各197万円(試験費15万円及び改良固化費182万円の合計額)c建築費各1881万4950円d設計費,工事監理費等各181万円(イ)原告102597万8878円(内訳)a建物解体処分費各298万4520円b地盤改良費各236万9408円(試験費30万円及び改良固化費206万9408円の合計額)c建築費各1881万4950円d設計費,工事監理費等各181万円(ウ)原告111074万1476円(内訳)a地盤改良費544万7476円(試験費37万9913円及び改良固化費506万7563円の合計額)b建築費438万9000円c設計費・工事管理費等90万5000円イ引越費用(建物解体から再建築までの間の住居確保に必要な費用)(ア)原告1ない 良固化費506万7563円の合計額)b建築費438万9000円c設計費・工事管理費等90万5000円イ引越費用(建物解体から再建築までの間の住居確保に必要な費用)(ア)原告1ないし10各100万円- 26 -(イ)原告1120万円ただし,原告11については,建物1階部分への立ち入りを伴う工事により必要となる2週間程度の引越費用ウ慰謝料各250万円エ本件各土地及び本件各建物の調査に要した費用各12万4090円(調査費用合計136万5000円を原告ら11人で分担した額)オ弁護士費用(ア)原告1ないし9各292万0356円(イ)原告10296万0296円(ウ)原告11135万6556円(ただし,各原告について,アないしエの各金額の合計額の1割に相当する金額)(被告京都市及び被告業者の主張)争う。 第3当裁判所の判断 被告京都市は,本件工事でバイブロハンマーを使用したか(争点(1))(1)証拠(証人B)によると,被告京都市は,本件工事において,本件排水路東側の鋼矢板の設置のためにウォータージェット併用油圧圧入工法を採用し,本件排水路西側の軽量鋼矢板の設置については,バックホーで押さえつける方法を使ったことが認められる。 (2)これに対し,被告業者は,被告京都市は,上記軽量鋼矢板の設置の際,バイブロハンマーを用いる振動工法を採用した旨主張し,一級建築士Cの意見書(乙27)中には,本件工事の施工写真(丙6の⑥)に写っている動力線がバイブロハンマーのそれであるとの部分がある。しかしながら,証人B- 27 -はこれを否定しているところ(尋問調書10,11,34,35頁,本件)工事の施工計画書(丙3)中の使用予定機械欄(54頁)中にはバイブロハンマーの記載がないことにも照らすと, 証人B- 27 -はこれを否定しているところ(尋問調書10,11,34,35頁,本件)工事の施工計画書(丙3)中の使用予定機械欄(54頁)中にはバイブロハンマーの記載がないことにも照らすと,上記証拠(乙27)は,(1)の認定を左右するに足りず,他に(1)の認定を左右するに足る証拠はない。 本件各土地建物には軟弱地盤,軟弱地盤上の建物という隠れた瑕疵があるか(争点(2))(1)本件建物が法令の基準を満たしていないとすれば「瑕疵」があるという,べきであるので,まず,その点を検討する。 ア建築基準法施行令38条1項は「建築物の基礎は,建築物に作用する,荷重及び外力を安全に地盤に伝え,かつ,地盤の沈下又は変形に対して構造耐力上安全なものとしなければならない」と,同条3項は「建築物の,基礎の構造は,建築物の構造,形態及び地盤の状況を考慮して国土交通大臣が定めた構造方法を用いるものとしなければならない」と定め,これを受けて,建設省告示第1347号(平成12年5月23日「建築物の基)礎の構造方法及び構造計算の基準を定める件」は,原則として,地盤の長期に生ずる力に対する許容応力度が20kN/㎡未満の場合にあっては基礎ぐいを用いた構造と,20kN/㎡以上30kN/㎡未満の場合にあっては基礎ぐいを用いた構造又はべた基礎と,30kN/㎡以上の場合にあっては基礎ぐいを用いた構造,べた基礎又は布基礎としなければならない旨定めている。 イそうすると,建築物を建築しようとする者は,地盤調査をして長期許容応力度を把握した上で,基礎の構造を決定する必要がある。ところで,証拠(甲13の8)及び弁論の全趣旨によると,被告業者は,本件各建物の敷地の地耐力を5.0トン/㎡として本件各建物の基礎の設計をしていることが認められる(なお「地耐力」は上記「許 がある。ところで,証拠(甲13の8)及び弁論の全趣旨によると,被告業者は,本件各建物の敷地の地耐力を5.0トン/㎡として本件各建物の基礎の設計をしていることが認められる(なお「地耐力」は上記「許容応力度」とほぼ同一の,概念であるといってよいと思われる。また「5.0トン/㎡」は「約49. ,- 28 -05kN/㎡」である。しかるに,被告業者は,本件各建物を建築するに。)当たり,地盤調査をしていないのであるから,根拠の乏しい数字を使用して建築確認を得たというべきであって,この点において,被告業者は,非難を免れない。もっとも,被告業者は,本件各建物の基礎としてべた基礎を採用したから,本件各建物の建築当時,本件各土地の長期許容応力度が20kN/㎡以上であったのであれば,結果的に法令には違反していないことになる。 ウ原告は,本件各土地のN値は,1.54であったと主張するのに対し,被告業者は,3であったと主張する。N値から長期許容応力度を推定するのは複雑な計算を経る必要があり容易ではないが,少なくともN値が3程度の地盤であれば,長期許容応力度が20kN/㎡を下回ることはないし,N値が1.54であったとすれば,長期許容応力度は20kN/㎡を下回る可能性が高いと考えられる。 そこで検討するに,なるほど,本件工事後ボーリング調査の結果(別表(4))によると,原告(2)土地裏,原告(5)土地裏等では,地下5メートル程度までのN値が3以下であり,2や1,深度によっては1を下回る箇所もあって,これらの箇所は,極端に軟弱な地盤であるということができる。 しかしながら,本件工事後ボーリング調査の結果には,本件工事が影響している可能性があり,この調査結果をそのまま本件各建物建築時の地盤の状態と同一であると即断することはできない。そして,原告(2)の建 しかしながら,本件工事後ボーリング調査の結果には,本件工事が影響している可能性があり,この調査結果をそのまま本件各建物建築時の地盤の状態と同一であると即断することはできない。そして,原告(2)の建物玄関前,原告(5)の建物玄関前では軟弱とはいえ,N値が3を超える箇所も多く,他の3か所においても極端に軟弱とまではいえない上に,原告(2)の玄関前と裏,原告(5)の玄関前と裏という近接する場所でN値に相当の違いがあり,いずれも裏,即ち西側の地点のN値が低いから,本件工事によって,本件排水路に近い部分のN値が低下したのではないかと考える余地がある。もっとも,本件事前調査結果によると,原告(1)ないし(10)建- 29 -物のすべての柱及び床が西側に傾斜していた(そして,本件事前調査結果には本件工事の影響は有意にはないと認めるべきことは後記のとおり)から,本件工事前から本件排水路に近い部分は極端に軟弱な地盤であった可能性もある。 エ以上の検討の結果によれば,疑いはあるものの,本件で提出された証拠だけから,本件各建物の建築時に本件各土地の長期許容応力度が20kN/㎡を下回っていて,本件建物が上記法令の基準を満たしていなかったとまで認めるのは困難である。 (2)そうすると,本件各土地建物に瑕疵があったか否かは,本件各建物が建築された後の変位,とりわけ不同沈下が発生したか否かによって判断するしかない。 ア本件事前調査の結果によると,本件各建物(但し,原告(11)建物を除く)には,平成15年3月5日から16日までの時点で,次の各損傷が発生していた。 (ア)基礎コンクリートにヘアークラックではないひび割れ(以下「構造クラック」という)が多数発生し(少ない建物で4か所,多い建物で。 は11か所,その最大幅は,小さい建物では0.39ミリメートルで (ア)基礎コンクリートにヘアークラックではないひび割れ(以下「構造クラック」という)が多数発生し(少ない建物で4か所,多い建物で。 は11か所,その最大幅は,小さい建物では0.39ミリメートルで)あるが,大きい建物では1.28ミリメートルに及んでいた。幅1ミリメートルを超えるクラックは,芳賀ランク案では「障害著しい」の程,度に該当する。 (イ)柱の傾斜は,すべての建物にみられ,東西方向ではすべてが西に傾斜していた。また,高さ1メートル当たりの傾斜は,程度の軽いものでは1ミリメートルであるが,程度の重いものでは3ミリメートルに及び,これは,傾斜基準によると「初期段階」を超え「第1期段階」と評価,,されるものである。 (ウ)床の傾斜は,すべての建物にみられ,東西方向ではすべてが西に傾- 30 -斜していた。距離1メートル当たりの傾斜は,程度の軽いものでは1ミリメートルであるが,程度の重いものでは3ミリメートルに及び,これは,傾斜基準によると「初期段階」を超え「第1期段階」と評価され,,るものである。 イ以上のように,本件事前調査時に原告(1)ないし(10)建物に生じていた損傷の程度が軽視できないものであること,本件事前調査が行われたのが,原告(1)ないし(10)建物が建築されてから僅か1年強しか経過していない時期であること等を総合すると,原告(1)ないし(10)建物は,既にこの時点において不同沈下を起こしていたものというべきであり,被告業者は,原告(1)ないし(10)建物をべた基礎で施工したが,それでも原告(1)ないし(10)土地は,原告(1)ないし(10)建物の築後わずか1年余で不同沈下を生じさせるような軟弱地盤であったというべきである。 ウなお,被告業者は,本件事前調査の時点(平成15年3月5日から同月16日 0)土地は,原告(1)ないし(10)建物の築後わずか1年余で不同沈下を生じさせるような軟弱地盤であったというべきである。 ウなお,被告業者は,本件事前調査の時点(平成15年3月5日から同月16日)では,既に本件工事が開始されていたから,本件事前調査の結果には本件工事の影響も含まれている旨主張するが,証拠(丙2の1ないし4,丙3)によると,本件工事は,平成15年1月23日から準備工が開始され,同年3月3日から工事用道路工が開始され,これが同月13日まで行われ,土留め仮締切工は同月13日から開始されたこと,したがって,本件事前調査の終了前に土留め仮締切工が開始されていたが,その時間は僅かであること,その前に施工された工事用道路工とは,工事用道路として使用するために借り上げた農地の耕作土を撤去し,これに盛土を入れ,転圧し,鋼板を敷く工事であることが認められ,これらの事実によれば,それ以前に行われた準備工も含め,本件事前調査までの本件工事によって,原告(1)ないし(10)建物に有意な損傷を生じたとは考えがたい。 (3)売買の対象である建売住宅の敷地が,築後わずか1年余で不同沈下を起こすような軟弱地盤であることは,建売住宅の買主が通常の注意を用いても- 31 -発見できないというべきであるから,このことは,本件各土地建物(原告(11)土地建物を除く)の隠れた瑕疵というべきである。 (4)これに対し,原告(11)土地建物については本件工事開始前に調査が行われておらず,本件工事開始前にいかなる損傷が生じていたかを直接認め得る証拠がない。もっとも,本件工事後調査は行われているので,本件工事が原告(11)建物に与えた影響を認定判断の上,後に,隠れた瑕疵の有無を判断することとする。 被告業者に地盤改良義務違反の過失があるか(争点(3))2で検 工事後調査は行われているので,本件工事が原告(11)建物に与えた影響を認定判断の上,後に,隠れた瑕疵の有無を判断することとする。 被告業者に地盤改良義務違反の過失があるか(争点(3))2で検討したように,本件事前調査の時点で,本件各土地建物(原告(11)土地建物を除く)には不同沈下が発生していた。被告業者は,原告(1)ないし(10)建物を建築するに当たり,原告(1)ないし(10)土地の地盤調査を実施して地盤の状態を把握し,必要であれば基礎杭を用い,あるいは地盤改良をして,不同沈下を起こさないように配慮する注意義務があったというべきである。しかるに,被告業者は,建物の基礎をべた基礎とすれば不同沈下を防ぐことができるものと軽信し,地盤調査をせず,地盤の状態を把握しないまま原告(1)ないし(10)建物を建築したものであり,この点において,過失があるとの評価を免れず,被告業者は,原告1ないし10に対し,不法行為責任を負うというべきである。 なお,原告11との関係では,後に,隠れた瑕疵の有無を判断した上,被告業者の過失の有無を判断することとする。 本件工事について京都市の過失の有無(争点(4))(1)被告京都市に調査義務違反の過失があるかア証拠(丙8)によると,社団法人日本道路協会発行の「道路土工土質調査指針」には,土質調査について,まず,適切な間隔でサウンディング,ボーリング,サンプリング及び土質・岩石試験を行い,土質・地質状況を概括的に把握し,更に,地質・土質条件あるいは地形条件の複雑な箇所等- 32 -についてはさらに重点的な調査を実施する旨の記載があることが認められる。 イ証拠(丙4,20,証人B)によると,本件工事前ボーリング調査結果では,第1工区の3か所のボーリング地点は,いずれも上部は軟弱な粘性土によって構成 査を実施する旨の記載があることが認められる。 イ証拠(丙4,20,証人B)によると,本件工事前ボーリング調査結果では,第1工区の3か所のボーリング地点は,いずれも上部は軟弱な粘性土によって構成されていて,そのN値は3程度である等,大きな変化がなかったこと,被告京都市は,上記結果から,第1工区の他の地点も同様の土質状態にあるものと推認し,追加のボーリング調査を行う必要がないと判断したこと,以上の事実が認められる。 ウ本件工事は,本件各土地建物の直近を掘削するから,本件各土地建物に影響を与えない工法を慎重に検討するために,本件各土地の直近部分でボーリング調査をする等,より慎重な調査をするのが望ましかったということはできる。しかしながら,被告京都市がした上記イの判断も,アの事実にも鑑みると,一応の根拠のある判断であるというべきであって,これが誤りで,同被告が果たすべき注意義務に違反するとまで認めることはできない。 なお,原告らは,本件各土地のN値は,2を下回る地点が多くあり,被告京都市がそのことを把握していれば,結果的に選択した工法も異なっていた旨主張するところ,なるほど,本件工事後ボーリング調査の結果によると,原告2土地裏及び原告5土地裏の各表層のN値は,極めて低い値を示した(第2の2(2)エ(オ))が,これらのボーリング調査地点は,いずれも管理用通路,即ち国有水路敷であること,本件工事による影響が考えられることから,本件工事前にボーリング調査をしても,被告京都市が同じ数値を把握し得たとまでは認めがたい。 (2)被告京都市に,適切な工法選択義務違反の過失があるかアウォータージェット併用工法を採用したのが過失か(ア)証拠(丙20,21,証人B)によると,被告京都市が本件工事で- 33 -工法を決定した経緯について,次の事実が 択義務違反の過失があるかアウォータージェット併用工法を採用したのが過失か(ア)証拠(丙20,21,証人B)によると,被告京都市が本件工事で- 33 -工法を決定した経緯について,次の事実が認められる。 a被告京都市は,本件工事の詳細設計を拓殖建設計画株式会社に委託し,その報告書(以下「拓殖建設報告書」という)に基づき,被告。 京都市でも検討を加えた上,決定した。 b被告京都市は,本件工事前ボーリング調査の結果,本件工事地の土層が沖積粘土層であり,N値が3程度の柔らかい粘性土であることを把握し,原告ら土地建物への影響を懸念し,第2の2の(2)エの(イ)(ウ)記載のように,掘削部分と本件各土地との離隔を可能な限り大きくとるとともに,本件L型擁壁と本件排水路との間に鋼矢板工法による土留め壁を設けることとした。鋼矢板工法は,掘削底面以下の根入れ部分の連続性が保たれるため,地下水位の高い地盤,軟弱地盤に一般的に用いられる工法であり,被告京都市は,本件現場に最も適した工法であると判断した。またその設置方法は,低騒音,低振動の油圧圧入工法を採用することとしたが,必要とされた7メートル長の鋼矢板を地中に埋入させるためには,固い砂礫層にも圧入する必要があり,そのためにウォータージェット工法を併用することとした。 (イ)証拠(各項末尾記載)によると,ウォータージェット併用工法に関し,次の事実が認められる。 a国土交通省土木工事積算基準によると,油圧式杭圧入機については,最大N値が25を超えて50までの地盤では,ウォータージェット工法を併用することが標準とされている。また,京都市建設局の「土木工事標準積算基準書(共通編)平成14年度」にも,鋼矢板打込み施工法について,無振動施工が必要な場合でN値が25を超えて50までの場合は,ウォータージ が標準とされている。また,京都市建設局の「土木工事標準積算基準書(共通編)平成14年度」にも,鋼矢板打込み施工法について,無振動施工が必要な場合でN値が25を超えて50までの場合は,ウォータージェット併用油圧圧入工法が標準とされている〔丙21(28頁,22〕。 )b拓殖建設報告書によると,鋼矢板の打設方法は,圧入工法とし,下- 34 -部にN値25以上の層があり,ウォータージェット併用圧入工法となる旨記載されている〔丙21(25頁〕。 )c本件工事の工事設計書中の特記仕様書によると,宮建工業は,ウォータージェット併用工法による周辺地盤のゆるみ,沈下等を監視するために,常に圧力メータによる圧力数値を監視し,鋼矢板1枚当たりの最大圧力数値を記録し,管理表を作成し,監督職員に提出することが義務づけられていた〔丙1(31頁,なお,この管理表は本訴に提。 )出されていない〕。 d宮建工業が使用したウォータージェットカッタ-は,トーメン建機株式会社が販売しているウォータージェットカッタST-300E又はSJ300tであり,吐出量は1分当たり400ないし895リットル,吐出圧力は50ないし150kgf/㎠であった〔丙3(28頁,5。 4頁,64頁〕)e宮建工業が作成した本件工事の施工計画書によると,鋼矢板を圧入機にセットし,ウォータージェットカッタ-ノズルをUバンドで溶接した後,圧入開始と同時にウォータージェットカッターを始動させることとされていた〔丙3(21頁,22頁〕。 )f社団法人日本道路協会発行の「道路土工仮設構造物工指針」中には,鋼矢板壁の打設の際,ウォータージェットを併用する場合は,地盤のゆるみに注意する必要がある旨の記載がある〔丙7(179頁〕。 )gウォータージェット併用工法で施工した場合,ジ 物工指針」中には,鋼矢板壁の打設の際,ウォータージェットを併用する場合は,地盤のゆるみに注意する必要がある旨の記載がある〔丙7(179頁〕。 )gウォータージェット併用工法で施工した場合,ジェット水によって細粒分が地上に吹き上げられ,形成された溝に周囲の土砂が崩落し,地盤変形の原因となる可能性がある。また,ジェット水が周囲の水圧を高めることによって地盤を緩ませる等,その安定に悪影響を及ぼすことも考えられる〔乙16(8頁,証人A(25頁,47頁〕。 ))(ウ)以上の事実に基づいて検討する。 - 35 -a被告京都市が,水路敷の西側境界線に沿ってU型水路を埋め込み,掘削部分と本件各土地との離隔を可能な限り大きくとったこと,鋼矢板工法による土留め壁を設け,これを本件工事終了後も地中に存置することとしたこと,鋼矢板の設置方法として油圧圧入工法を採用したことは,本件各土地との関係で,いずれも適切な措置であったというべきである。しかしながら,ウォータージェット工法を併用したことについては,同様には評価できない。ウォータージェット工法については,周辺地盤の緩み,沈下等を発生させるおそれがあるところ,被告京都市は,原告(1)ないし(10)建物と国有水路敷との境界との距離が僅か50センチメートル程度であることを知っていた上に,本件工事前ボーリング調査によって,本件各土地がN値3程度の軟弱地盤であることを知り,本件事前調査によって,建築後間もない原告(1)ないし(10)建物に既に相当の損傷が生じていることを知ったのであるから,ウォータージェット工法によって本件各土地の地盤に僅かでも緩みを生じさせれば,本件(1)ないし(10)建物に更なる損傷を与える危険性があることが予見できたというべきであり,それにもかかわらずウォータージェット工法 ト工法によって本件各土地の地盤に僅かでも緩みを生じさせれば,本件(1)ないし(10)建物に更なる損傷を与える危険性があることが予見できたというべきであり,それにもかかわらずウォータージェット工法を採用したことについては,被告京都市に過失があるとの判断を免れないというべきである。 bなお,ウォータージェット工法を併用しても,ウォータージェットカッターの作動を必要最小限とし,圧力数値を厳密に監視して調整しつつ施工すれば,本件各土地の地盤に悪影響を与えなかった可能性がないとはいえないが,施工状況の立証はなされていないし,本件事前調査の結果と本件事後調査の結果を比較すると,近接した場所でウォータージェット工法が施工された本件(1)ないし(9)建物について損傷の拡大が見られるのに,その並びに位置する本件(10)建物には損傷の拡大が見られないことは,本件(1)ないし(9)建物の損傷の拡大の原因- 36 -がウォータージェット工法であることを推測させるというべきである。 cところで,原告は,ウォータージェット併用工法ではなく「地盤,改良工法と凍結工法を組み合わせた工法」を採用するべきであった旨主張し,被告業者は,ウォータージェット併用工法ではなく「本件,L型擁壁の下部地盤を薬液注入の方法により改良強化し,本件L型擁壁に影響を与えないようにした上での素堀工法」を採用するべきであった旨主張し,被告京都市は,これらの工法にもそれぞれ問題点があることを指摘する。どの工法が最適であったが,最適とされる工法を採用した場合に,本件各建物の損傷の拡大を防ぐことができたかについて,当裁判所はこれを判断することができない。なるほど,接近して居宅が立ち並んでいる軟弱地盤で排水路の改修工事をするに当たって,予算の制約のもと,居宅に影響を与えない工法を選択する ができたかについて,当裁判所はこれを判断することができない。なるほど,接近して居宅が立ち並んでいる軟弱地盤で排水路の改修工事をするに当たって,予算の制約のもと,居宅に影響を与えない工法を選択することは,被告京都市としては困難な作業であったということができる。しかし,被告京都市としては,本件排水路の改修工事をすることが義務づけられていたものではなく,これを施工しないという選択肢もあり得たのであるから,当裁判所としては,被告京都市が採るべき工法を認定できなくとも,実際に採用した工法によって本件各建物の損傷が拡大し,被告京都市においてそのことが予見できたことが認定できれば,被告京都市に過失があるとの判断ができるものと考える。 d更に被告京都市は,本件工事施工に当たり,本件各土地に軟弱地盤対策が講じられていないことまで予見する義務はなく,本件工事によって軟弱地盤上の建物に損害が生じたとしても,その責任は,軟弱地盤対策を怠った先行工事者が負担すべきであると主張する。しかしながら,被告京都市が,本件各土地に軟弱地盤対策が講じられていると認識していたことについては証拠がない。かえって,被告京都市は,本件各土地がN値3程度の軟弱地盤であることを把握していた上に,- 37 -本件事前調査によって,建築後間もない原告(1)ないし(10)建物に相当の損傷を生じていることを知っていたから,本件各土地に軟弱地盤対策がなされていないことを知り得たというべきである。土木工事を施工するに当たっては,これを施工する土地毎の具体的な特性を把握して,周辺土地や周辺建物に損害を与えないよう施工すべきは当然であるから,被告京都市の上記主張は採用できない。 イ工事用車両を通行させたことが過失か後記のように,本件住宅内道路の東西部分及び第1仮設道路を工事車両が通行し 損害を与えないよう施工すべきは当然であるから,被告京都市の上記主張は採用できない。 イ工事用車両を通行させたことが過失か後記のように,本件住宅内道路の東西部分及び第1仮設道路を工事車両が通行したことによって,原告(1)建物及び原告(11)建物に損傷が生じたと認めることができないから,この争点については判断しない。 被告らの不法行為と本件各建物の損傷との因果関係,被告らの責任の範囲(争点(5))(1)被告業者の不法行為と原告(1)ないし(10)建物の損傷との因果関係前記のように,原告(1)ないし(10)建物には,既に本件事前調査の時点で軽視できない損傷が生じていたのであり,これは,被告業者の不法行為によって生じたものである。また,その後拡大した損傷も,被告業者の不法行為が一因となっていることは容易に推認することができる。 (2)被告京都市の不法行為と本件各建物の損傷との因果関係ア原告(1)ないし(10)建物の本件事前調査の結果と本件事後調査の結果を比較すると,次のことが指摘できる。 (ア)原告(1)建物ないし原告(9)建物についてa基礎コンクリートの構造クラックの数が有意に増加し(最も多いのが原告(6)建物の10個,少ないのが原告(7)建物の3個,原告(9)建)物では最大クラック幅も顕著な拡大を示している。 b柱の傾斜は,南北方向は顕著な差がないが,東西方向は,揃って西方向に傾斜が拡大しており,高さ1メートル当たりの拡大幅は,小さ- 38 -い原告(1)建物では0.5ミリメートルであるが,大きい原告(4)建物では3ミリメートルにも及んでいる。 c床の傾斜は,南北方向は顕著な差がないが,東西方向は揃って西方向に傾斜が拡大しており,距離1メートル当たりの拡大幅は,小さい原告(2)建物では0.5ミリメートルであるが,大 トルにも及んでいる。 c床の傾斜は,南北方向は顕著な差がないが,東西方向は揃って西方向に傾斜が拡大しており,距離1メートル当たりの拡大幅は,小さい原告(2)建物では0.5ミリメートルであるが,大きい原告(4)建物では3ミリメートルにも及んでいる。 (イ)原告(10)建物について基礎コンクリートの構造クラックの数に変化なく,最大幅に変化なく,柱の傾斜は東西方向でかえって高さ1メートル当たり0.5ミリメートル改善しており,床傾斜は,拡大しているが距離1メートル当たり,北方向及び西方向に各0.5ミリメートルにすぎない。 (ウ)原告(11)建物について本件事後調査の結果は,基礎コンクリートの構造クラックが15個で,最大クラック幅が0.67ミリメートルであり,芳賀ランク案で「障害あり」に該当する。また,柱傾斜及び床傾斜は,いずれも南北方向は僅かであるが,西方向は,柱傾斜が高さ1メートル当たり1.5ミリメートル,床傾斜が距離1メートル当たり2.5ミリメートルであり,いずれも傾斜基準で「初期段階」ないし「第1期段階」に該当する。 イまた,擁壁定点観測の結果によれば,本件L型擁壁は,僅か2か月余の間に,9か所の観測ポイントのすべてで沈下するとともに,ほぼすべてで西に水平移動し,その程度は,沈下の大きいところで20ミリメートル,水平移動の大きいところで25ミリメートルに及んでいた。 ウ原告(1)建物ないし原告(9)建物について,本件工事がなされた時期を含むわずか2か月余の間に,顕著な損傷の拡大が生じたこと,柱及び床の傾斜が揃って西方向に拡大していること,ほぼ同じ期間に本件L型擁壁が大きく変位したこと,その移動方向も西方向であることに照らすと,上記各- 39 -建物の損傷の拡大の原因は,本件工事のうち,本件排水路付近でなされた工事にあり,具 と,ほぼ同じ期間に本件L型擁壁が大きく変位したこと,その移動方向も西方向であることに照らすと,上記各- 39 -建物の損傷の拡大の原因は,本件工事のうち,本件排水路付近でなされた工事にあり,具体的には被告京都市の不法行為,すなわち,ウォータージェット工法を施工したことにあると認めざるを得ない。もっとも,原告(10)建物については,被告京都市の不法行為が原因で損傷が拡大したとまで認めるのは困難である。 原告1及び同11は,原告(1)建物及び同(11)建物の南側近く(本件住宅内道路の東西部分及び第1仮設道路)を建設資材及び建設機械等の重量物を積載した車両が頻繁に通行したことによって,原告(1)建物及び原告(11)建物の損傷が拡大した旨主張するところ,なるほど証拠(甲24,34,証人B)によると,上記場所を通行した車両の重量は,重いものでは20トン程度あったこと,工事用車両の通行により原告(1)建物も同(11)建物も激しく揺れたこと,原告11は,工事用車両が通行が始まった後,原告(11)建物の屋根の西側先端の側面及び南側2階部分等に亀裂を,3階の壁と床との間に隙間をそれぞれ確認したこと等の事実が認められるから,これによって,原告(1)建物及び同(11)建物が損傷を受けた可能性がないではない。しかしながら,別表(5)によると,原告(1)建物の最大柱傾斜(南北方向)は,本件事前調査では南へ2.5ミリメートルであったのが,本件事後調査では南へ2.0ミリメートルであって,南方向への沈下が進行するどころか,かえって改善していること,最大床傾斜は,南へ2.5ミリメートルであったのが南へ3ミリメートルに拡大しているが,拡大幅は僅かであること,原告(11)建物は事前調査が実施されなかったので本件工事前後での比較はできないが,事後調査では,最大床傾斜こ ミリメートルであったのが南へ3ミリメートルに拡大しているが,拡大幅は僅かであること,原告(11)建物は事前調査が実施されなかったので本件工事前後での比較はできないが,事後調査では,最大床傾斜こそ南方向に1ミリメートルであるが,最大柱傾斜は北方向に0.5ミリメートルであること,原告11が原告(11)建物の損傷を確認したのが工事用車両の通行が始まってからであるとしても,その損傷が発生したのが同時期とは断定できないこと等の事実に照らすと,上記の各事実だけから,本件工事のう- 40 -ち,工事用車両の通行によって原告(1)建物及び原告(11)建物が損傷を受けた事実を認めるのは困難であり,他に,同事実を認めるに足る証拠はない。 (3)原告(11)建物について,隠れた瑕疵の有無,被告らの不法行為との因果関係ア本件事後調査の結果によると,原告(11)建物の最大の柱傾斜は1.5ミリメートル,最大の床傾斜は2.5ミリメートルであって,これは,傾斜基準によると「初期段階」ないし「第1期段階」に該当するものである,が,基礎には15個ものひび割れがあり,その最大幅は0.67ミリメートルであって,これは,芳賀ランク案では「障害あり」に該当するものである。建築後,わずか1年余でこれだけの損傷を生じたことは決して軽視できるものではない。 イ本件工事のうち,工事用車両の通行によって,原告(11)建物が損傷を受けたと認められないのは前記のとおりである。また,本件排水路は原告(11)建物と20メートル以上を隔てているから,被告京都市の上記過失,すなわちウォータージェット工法を採用したことが原告(11)土地の地盤に影響を与えたと認めることも困難である。 ウそうすると,原告(11)建物の本件事後調査の結果は,原告(11)土地が軟弱地盤であったことによって ージェット工法を採用したことが原告(11)土地の地盤に影響を与えたと認めることも困難である。 ウそうすると,原告(11)建物の本件事後調査の結果は,原告(11)土地が軟弱地盤であったことによって生じたものであり,原告(11)土地建物には,軟弱地盤及び同地盤上の建物という隠れた瑕疵があったというべきである。 また,被告業者が,このような地盤でありながら,地盤調査をせず,軟弱地盤対策をしないまま原告(11)建物を建築したことについては,過失があるとの評価を免れず,被告業者は,原告11に対し,不法行為責任を負うというべきである。 (4)以上を総合すると,次のようにいうことができる。 ア原告(1)建物ないし原告(9)建物は,被告業者の不法行為が原因で不同沈- 41 -下を起こし,損傷を受けていたところ,更に被告京都市の不法行為によって損傷が拡大したのであるから,民法719条にしたがい,被告らは,これによって原告1ないし9が被った損害を連帯して賠償する責任がある。 被告京都市は,同被告の責任は,本件事前調査と本件事後調査の各結果を比較し,本件工事によって拡大した損傷の補修費用に限られると主張するが,第2の2の(6)の事実によると,原告(1)(3)(5)(11)建物の損傷は,本件事後調査後も進行しており,その余の本件各建物についても同様であると推測されるところ,本件事後調査後の進行の原因は,被告らの各不法行為であって,その寄与割合を認定することは困難であり,結局,被告京都市の不法行為と事実的因果関係のある損害を確定することができないから,被告京都市の上記主張は採用できない。 イ原告(10)建物及び同(11)建物の各損傷については,被告京都市の不法行為によって拡大したとは認められないから,被告業者は,単独で,原告10及び同11が被った損害を賠 上記主張は採用できない。 イ原告(10)建物及び同(11)建物の各損傷については,被告京都市の不法行為によって拡大したとは認められないから,被告業者は,単独で,原告10及び同11が被った損害を賠償する責任がある。 本件各建物の補修方法について(争点(6))(1)原告(11)建物について同建物については,薬液注入によって地盤改良をした上,ジャッキアップ等によって建物の傾斜を修正し,建物の損傷箇所を補修するのが相当であることについて,原告11と被告業者との間で争いがなく,被告京都市も,これに特段の異論はないものと思われる。なお,同建物の床が他の建物と同様に西側に傾斜しているのは,地盤自体の傾斜によるものであり,したがって,基礎自体も傾斜しているものと考えられるから,ジャッキアップは基礎下から施工するのが相当である。 (2)原告(10)建物についてア同建物については,地盤改良の方法としては薬液注入工法によるのが相当であることについて,原告(10)と被告業者との間で争いがなく,被告京- 42 -都市も,これに特段の異論はないものと思われる。 イ証拠(乙16,19の2,乙29,証人D)によると,同建物の損傷を修正するためには,同建物の基礎のひび割れ部に樹脂を注入して一体化,防食化を図り,基礎下地盤に薬液注入を実施して支持力を増した後,基礎下からジャッキをセットし,ジャッキアップして建物を水平にし,ジャッキに代わる建物支持材を設置し,基礎下端と地盤との空間に無収縮性充填材を圧入して埋め戻し,次いで家屋内を補修する方法を採用するのが相当であると認められる。 これに対し,原告10は,同建物の周囲の空地が狭く,ジャッキをセットできないこと,同建物の基礎が脆弱であること等が理由で,ジャッキアップ工法は採用できない旨主張するが,証拠(乙1 あると認められる。 これに対し,原告10は,同建物の周囲の空地が狭く,ジャッキをセットできないこと,同建物の基礎が脆弱であること等が理由で,ジャッキアップ工法は採用できない旨主張するが,証拠(乙16,19の2,乙29,証人D)によると,互いに接した宅地上の建物のジャッキアップを行う場合,境界壁等を撤去すれば,ジャッキ作業の空間を作ることができること,空間がないためどうしても建物の外からジャッキセットができない場合は,建物の床下に入ってジャッキセットを行うことも可能であること,建物基礎が脆弱である場合でも,これを踏まえて建物基礎を補強したり,ジャッキアップ点を増やしたりして建物の弱点をカバーできること等が認められるから,原告10の上記主張は採用できない。 (3)本件(1)ないし(9)建物についてア証拠(乙16,19の2,乙24,29,証人D)によると,これらの建物について,地盤改良の方法としては,各建物の基礎下及び本件L型擁壁の下部に恒久性薬液注入材を注入するのが相当であると認められる。 イこれに対し,原告1ないし9は,薬液注入工法は相当でないと主張するので,以下検討する。 (ア)原告1ないし9は,原告(1)ないし(9)土地のような粘性土においては,薬液注入工法では十分な改良効果を得ることができない旨主張する- 43 -が,その主張の根拠となっているA作成の意見書(甲40,51)によると,N値が1.7しかないような軟弱地盤で薬液注入工法によって地盤改良をした場合,qa(許容支持力度)は,66.09kN/㎡となるが,改良体ができたとき,建物荷重はこの改良体を介して直下の非常に柔らかい粘土層に伝達されるので,改良地盤の下部地盤の支持力の検討が必要となるところ,改良体を基礎の一部とみなし,基礎の根入れ深さが増大したとみてqaを算定 建物荷重はこの改良体を介して直下の非常に柔らかい粘土層に伝達されるので,改良地盤の下部地盤の支持力の検討が必要となるところ,改良体を基礎の一部とみなし,基礎の根入れ深さが増大したとみてqaを算定すると,46.4kN/㎡となり,50kN/㎡を上回らないとされている。しかし,ここでAが必要としている50kN/㎡は,被告業者が本件各建物の建築確認を申請したときに前提とした地耐力5.0t/㎡(甲13の8)を指していると考えられるところ,被告業者が本件各建物を建築するに当たり地盤調査をしていないことは既に認定したとおりであるから,上記地耐力は根拠のない数字であると考えられ,この数字を,薬液注入工法によって十分な改良効果を得ることができるか否かの基準とすることに合理的な根拠があるとは考えがたい。 かえって,証拠(乙4)及び弁論の全趣旨によると,本件各建物の総重量は平均で約65トンであり,1平方メートル当たりでは約1.6トンであることが認められる。 (イ)原告1ないし9は,粘性土に薬液注入した場合,改良薬自身が脈状を形成してしまい,混じり合うことなく部分的に固化してしまうと主張するところ,なるほど証拠(甲40)によると,薬液注入工法は,一般的に,砂礫層では良好な改良効果が得られるが,粘性土では,脈状注入となって改良効果が小さいと評価されていることが認められる。しかしながら,他方,証拠(乙16)によると,粘性土に対する薬物注入工法は,公共工事を含め,過去に多くの工事実績があることが認められるから,粘性土であることを理由に,薬物注入工法を採り得ないとするのは相当でない。 - 44 -(ウ)原告1ないし9は,薬液注入工法には,充填形状や充填箇所が不明であって,改良作業後に改良結果を検証することができない旨主張するが,仮にそうであっても,上記のと は相当でない。 - 44 -(ウ)原告1ないし9は,薬液注入工法には,充填形状や充填箇所が不明であって,改良作業後に改良結果を検証することができない旨主張するが,仮にそうであっても,上記のとおり,薬物注入工法は過去に多くの工事実績があって,相応の信頼を勝ち得てきているのであるから,このことを理由に,薬物注入工法を採り得ないとするのは相当でない。 ウ薬物注入工法によって地盤を改良した後の原告(1)ないし(9)建物の修復については,原告(10)建物と同様の工法を採用するのが相当である。この点についての原告1ないし9の主張に対する判断は,原告(10)建物について述べたのと同様である。 原告らが被った損害額について(1)損害額算定の証拠について損害額算定の証拠として,次のものがある。 アA作成の意見書(以下「A意見書」という。甲40)(ア)薬液注入工法〔二重管ストレーナ工法(複相方式,注入率28パ)ーセント〕の費用(但し,2軒分(業者利益別,税別))a注入工322万1400円b注入材料207万4800円c消耗品費6万円d機材損料2万円e動力費・用水費10万円(イ)ジャッキアップ及び内装改修調整工事380万円(但し,1軒分,業者利益別,税別,これらを加えると438万9000円となる)。 (ウ)設計及び管理費(設計費,申請費,工事管理,仮設費,境界測量,周辺清掃等)1810万円(但し,11軒分,税別)イ建設サービス株式会社作成の検討書及び見積書(以下「CSC検討書」「CSC見積書」という。乙13の1,乙14)- 45 -(ア)薬液注入工〔二重管ストレーナ工法(単相方式,注入深度はGL)7メートル付近の砂礫層まで,注入間隔は1メートル,充填率40パーセント,注入材は無収縮・恒久グラ の1,乙14)- 45 -(ア)薬液注入工〔二重管ストレーナ工法(単相方式,注入深度はGL)7メートル付近の砂礫層まで,注入間隔は1メートル,充填率40パーセント,注入材は無収縮・恒久グラウト材〕1745万4880円(但し,10軒分の金額)(イ)ジャッキアップ工(但し,基礎と土台の間にジャッキセットする方法)1500万円(同上)(ウ)仮設工事142万8762円(同上)(エ)現場管理費150万円(同上)(オ)一般管理費283万0691円(同上)(カ)合計額3820万円(10万円未満の端数切り捨て)ウ小倉建築作成の本件各建物の内外装補修工事(外周腰立上りコンクリートクラックダイレクトシール打込,外壁クラック入隅隙間アクリルコーク打込,天井廻り縁入隅隙間・巾木入隅隙間・巾木床フローリング取合隙間等ウッドパテ処理,壁クロスジョイント隙間・壁クロス入隅隙間等ボンドコーク充填,建具の建付調整等)の見積書(乙30ないし40,以下「小倉建築見積書」という)。 (ア)原告(1)建物3万5000円(イ)原告(2)建物3万8000円(ウ)原告(3)建物3万4000円(エ)原告(4)建物4万2000円(オ)原告(5)建物3万7000円(カ)原告(6)建物2万9000円(キ)原告(7)建物2万8000円(ク)原告(8)建物3万2000円(ケ)原告(9)建物2万5000円(コ)原告(10)建物2万5000円- 46 -(サ)原告(11)建物2万9000円エ福田総合コンサルタント株式会社作成の報告書(以下「福田報告書」という。丙18)この報告書は,本件各建物について,本件事前調査と本件事後調査の結果を比較し,損傷が芳賀ランク案や傾斜基準に照らして許容値を超える場合 ント株式会社作成の報告書(以下「福田報告書」という。丙18)この報告書は,本件各建物について,本件事前調査と本件事後調査の結果を比較し,損傷が芳賀ランク案や傾斜基準に照らして許容値を超える場合(柱は1000分の7以上の傾き,床は1000分の6以上の傾き,隙間及び基礎の亀裂は間隔が0.5ミリメートル以上)及び拡大した損傷の拡大幅が許容値の概ね2分の1を超える場合(柱の傾きは1000分の4以上,床の傾きは1000分の3.5以上,隙間及び基礎の亀裂は間隔が0.3ミリメートル以上)を要補修箇所として,その費用を算出したものであるが,原告(11)建物については,事前調査が行われていないから,事後調査で認められた損傷を新規に発生した損傷として評価し,補修の要否及びその費用を算定している。 (ア)原告(1)建物64万8533円(イ)原告(2)建物57万5711円(ウ)原告(3)建物42万0532円(エ)原告(4)建物80万2209円(オ)原告(5)建物32万0874円(カ)原告(6)建物78万9356円(キ)原告(7)建物57万9119円(ク)原告(8)建物48万6103円(ケ)原告(9)建物62万6567円(コ)原告(10)建物60万7084円(サ)原告(11)建物14万6166円(2)原告11が被った損害額についてアジャッキアップ及び薬液注入の費用- 47 -(ア)証拠(乙13の2,乙15)によると,建設サービス株式会社は,大阪府吹田市に本社を置く資本金2400万円の株式会社であり,地盤の分野における調査,計画,設計,施工,施工管理を主たる事業範囲としていること,大手ゼネコンを主な取引先とし,地盤対策工事について豊富な施工実績を有していることが認められる。他方,A意見書は,そ の分野における調査,計画,設計,施工,施工管理を主たる事業範囲としていること,大手ゼネコンを主な取引先とし,地盤対策工事について豊富な施工実績を有していることが認められる。他方,A意見書は,その金額算定の根拠が示されていないところ,公共工事の建設単価等から算定したものと推測できなくはないが,その場合,実勢価格からは乖離している可能性がある。そうすると,ジャッキアップ及び薬液注入の費用は,特段の問題が認められない限り,CSC見積書によって認定するのが相当である。 (イ)上記特段の事情として,次の点が指摘できる。即ち,CSC検討書によれば,CSC見積書によるジャッキアップ費用は,基礎と土台の間にジャッキセットをして,土台の傾きを修正する工法である。しかしながら,原告(11)建物の傾きの修正のためには基礎下からジャッキアップして基礎自体の傾きを修正するのが相当である。そして,その場合,CSC検討書による見積額よりも多額の費用を要するものと考えられる。 そして,その金額は,CSC見積書の1.5倍,即ち2250万円をもって相当と認める。 そうすると,(1)イの費用合計3820万円を修正した4570万円を10で除した457万円をもって,ジャッキアップ及び薬液注入の費用と認めるのが相当である。 イ建物補修費用A意見書では,ジャッキアップの費用を含めて438万9000円との結論が示されているのみで,その具体的内容は示されていない。小倉建設見積書も,工事内容及び工事項目毎の金額が結論として示されているのみで,如何なる箇所を工事するのかが全く示されておらず,いずれも依拠す- 48 -ることができない。福田報告書は,工事箇所,工事方法が示されており,工事箇所の選定,工事方法についても特に不当とする点はないから,これに依拠するのが相当である。 よ ず,いずれも依拠す- 48 -ることができない。福田報告書は,工事箇所,工事方法が示されており,工事箇所の選定,工事方法についても特に不当とする点はないから,これに依拠するのが相当である。 よって,原告(11)建物の補修費用は,14万6166円と認める。 ウ設計及び管理費A意見書では,設計及び管理費として,11軒分で1810万円(税別)が計上されているが,CSC見積書は,これら工事に付帯する費用を含めた見積りであると考えられるから,これを独立の損害項目とは認めない。 エ工事期間中の住居費用工事期間中,原告11は,家族と共に他所で居住する必要があるので,その費用として20万円を認める。 オ慰謝料証拠(甲34,49)によると,原告11は,原告(11)建物に妻及び2子と4人で生活していること,平成14年3月に原告(11)建物に入居したが,同年夏には柱と壁との間に隙間が発生し,同年秋には基礎に亀裂が生じ,本件工事期間中は,工事用車両の通行によって相当の揺れを体感し,折から新たな壁面の亀裂等を発見し,本件提訴後も亀裂の拡大や新たな発生等が見られるため,不安な思いを抱いて日常生活を送ってきたことが認められる。そうすると,上記の地盤改良工事及び家屋補修工事がなされても,それまでに被った精神的苦痛は回復しないから,工事費用とは別途,慰謝料の支払いを命じるのが相当である。そして,その金額は,上記事実に照らし,50万円をもって相当と認める。 カ調査費用証拠(甲52)によると,原告らは,Aに対して本件各土地建物に被害原因の調査及び意見書の作成を依頼したこと,Aからその報酬として13- 49 -6万5000円の請求を受けていることが認められる。本件の事案に鑑み,原告らが侵害された権利を回復するためには,専門家の助力を得ることが必須であった したこと,Aからその報酬として13- 49 -6万5000円の請求を受けていることが認められる。本件の事案に鑑み,原告らが侵害された権利を回復するためには,専門家の助力を得ることが必須であったというべきであるから,上記金額は,被告らの不法行為と相当因果関係のある損害というべきところ,その1人当たりの金額は,12万4090円となる(1円未満切り捨て。 )キ弁護士費用本件事案の性質,本件訴訟の経過,認容額等に照らし,被告らの不法行為と相当因果関係のある弁護士費用としては,55万円をもって相当と認める。 ク合計以上の合計額は,609万0256円となる。 (3)原告1ないし10が被った損害額についてアジャッキアップ及び薬液注入の費用ジャッキアップ及び薬液注入の費用については,原告11について説示したのと同様,457万円を認めるのが相当である。 イ建物補修費用(ア)建物補修費用については,原告11について説示したのと同様,基本的に福田報告書に依拠するべきである。但し,次の点の修正が必要である。 a原告(1)ないし(10)建物は,周囲の空地が狭く,ジャッキアップが容易でなく,場合によれば,建物の床下に入ってジャッキセットを行う必要が生じることは既に説示したとおりである。その場合,建物内部からその一部を破壊したり,システムバスを取り外す等の工事が新たに必要となる可能性がある。 b基礎コンクリートのひび割れ幅について,本件事前調査及び本件事後調査の各調査報告書の数値に基づいて補修の要否を判断しているが,- 50 -既に説示したとおり(第2の2の(3) ,Aがクラック幅を肉眼で確認)できなかったため,正確な数値が記載されていない。したがって,補修を必要とする基礎コンクリートのクラックの数が,現実には,福田報告書よりも多い り(第2の2の(3) ,Aがクラック幅を肉眼で確認)できなかったため,正確な数値が記載されていない。したがって,補修を必要とする基礎コンクリートのクラックの数が,現実には,福田報告書よりも多い可能性がある。 (イ)上記修正要素は,確定した金額で評価することができない。よって,建物補修費用としては,福田報告書の金額を採用した上で,上記修正要素を慰謝料金額に反映させるのが相当であると考える。 ウ設計及び管理費設計及び管理費は独立の損害項目とは認めない。その理由は,原告11について説示したのと同様である。 エ工事期間中の住居費用工事期間中の住居費用は,原告11と同様,各20万円を認める。 オ慰謝料(ア)証拠(甲24ないし33,41ないし48)によると,次の事実が認められる。 a原告1は,原告(1)建物に,妻,2子及び妻の父母の6人で暮らしている。原告1は,平成14年2月に原告(1)建物に入居したが,本件工事中の振動,騒音に苦痛を感じ,その後も,地震や強風の時の揺れが大きく,不安な気持ちで生活を続けている。 b原告2は,原告(2)建物に両親と暮らしている。原告2は,平成14年3月ころ,同建物に入居したが,同年12月ころ,壁の亀裂,壁面と床面の隙間等を発見し,被告業者がその修理方法を検討している段階で本件工事が始まった。本件工事が開始された後,同建物の各所で隙間が発生し,玄関ホール側の外壁面が地面から浮き上がった。その後,地震や台風が来るたびに,恐怖を抱きながら生活している。 c原告3は,平成14年2月ころ,原告(3)建物に入居した。平成1- 51 -4年中から,巾木の下の隙間や台所の壁の隙間等が目につき,被告業者に修理を求める等していたところ,本件工事が始まった。本件事前調査によって多くの損傷があることが判り,更に工事中 平成1- 51 -4年中から,巾木の下の隙間や台所の壁の隙間等が目につき,被告業者に修理を求める等していたところ,本件工事が始まった。本件事前調査によって多くの損傷があることが判り,更に工事中の振動等によって,基礎コンクリートのひび割れの増加,家の傾きの激化,内壁のひび割れの発生等が起こり,時に平衡感覚を失う感覚が生じ,苦痛と不安を抱いて生活している。 。 d原告4は,結婚と同時に原告(4)建物を購入し,同建物に入居した建具の建付の悪さや,キッチンの壁とガスコンロとの間のコーティング部分に隙間があることに気付いていたものの,さほど深刻に考えていなかったが,本件工事が開始された後,家がきしむ音が聞こえるようになり,亀裂,隙間,床の傾斜等に気づき,悔しい思いをするとともに,将来の台風や地震の際にどうなるのか,不安を持って生活している。 e原告5は,原告(5)建物で,妻及び1子と生活している。入居後,巾木と床の間の隙間,壁紙の歪み,システムキッチンと壁との間の隙間,2階天井の梁のズレ,床の傾斜,基礎の亀裂等に気づき,これらに対する被告業者の対応の不誠実さに悔しい思いをしていたところ,更に本件工事が始まり,新たに外壁の亀裂,タイルのヒビ,駐車場コンクリートの亀裂等が生じ,壁紙のズレや歪みは酷くなる一方であり,自宅で安心して生活できないことに苛立ちを感じている。一時期,妻はノイローゼのようになり,原告5も,自宅にいて心休まる日がなく,ストレスが蓄積している。 f原告6は,原告(6)建物に単身で居住している。入居後,クロスの隙間やフローリングのきしみが気になる程度であったが,本件事前調査によって,家全体が傾いていることを知らされ,本件工事中に,クロスの隙間が拡大し,キッチンと壁との隙間が拡大し,本件事後調査- 52 -によって, グのきしみが気になる程度であったが,本件事前調査によって,家全体が傾いていることを知らされ,本件工事中に,クロスの隙間が拡大し,キッチンと壁との隙間が拡大し,本件事後調査- 52 -によって,更に同建物の損傷が拡大していることを知った。その後の被告らの対応に納得がいかず,焦燥感を抱いている。 g原告7は,原告(7)建物で,妻と3子の5人で生活している。原告7は,平成14年3月に同建物に入居した後,クロスの捻れ等に気付いてはいたが,さほど重視していなかったところ,本件工事が始まり,工事中の振動,騒音に悩まされたのみならず,工事後,建具の建付が悪くなり,壁とシステムキッチンとの間の隙間,玄関ポーチの隙間やクラック,クロスの歪み,壁と床との間の隙間等が生じ,強風時の揺れに怯え,地震のニュースに不安になり,建具の建付の悪さにイライラする等,ストレスが高じている。 h原告8は,原告(8)建物で,妻及び2子と4人で生活している。購入時,被告業者の担当者から,地盤はケミカルコンクリートで改良しているとの説明を受け,安心し,平成14年3月に入居した。特段の不満なく暮らしていたが,本件工事が始まり,鋼矢板の打込作業が始まってから,家の音鳴りがし,柱や壁の繋ぎ目に隙間ができる等,問題が生じるようになった。地震等を不安に感じながら生活している。 。 i原告9は,平成14年2月ころ,妻と共に原告(9)建物に入居したすぐに,階段の隙間に気付いていたが,本件事前調査によって,同建物に気付いていなかった多数の損傷があることを知り,更に,本件事後調査によってこれが更に悪化したことを知り,大変な衝撃を受けた。 妻は,そのころから体調不良が続いたが,原因は,同建物の損傷によるストレスであると考えている。床の傾斜,床のきしみ,家の揺れ等に心を痛め,台風,強風,地 更に悪化したことを知り,大変な衝撃を受けた。 妻は,そのころから体調不良が続いたが,原因は,同建物の損傷によるストレスであると考えている。床の傾斜,床のきしみ,家の揺れ等に心を痛め,台風,強風,地震などに不安を抱いて生活している。 j原告10は,土木関係の仕事に従事しており,本件各土地付近が軟弱土地であることを知っていた。そこで,原告(10)土地建物を購入するに当たり,被告業者の担当者に,本件各土地を地盤改良してあるの- 53 -かと質問したところ,担当者は,地盤改良してあると答えたので,これを信用して,原告(10)土地建物を購入し,平成14年2月ころ,原告(10)建物に入居した。本件事前調査で,多数の損傷があることを知り,その後の被告らの対応が誠意がないとして,不信を抱いている。 また,原告10の妻は,本件工事が施工された当時,妊娠中で,その直後に出産したが,ストレスが高じ,難産だった。 (イ)以上の事実によって認められる原告1ないし10が被った精神的苦痛の程度,内容及びイのa,bの修正要素に鑑み,被告らが原告1ないし10に支払うべき慰謝料の金額は,いずれの原告についても,少なくとも150万円を下回らないというべきである。 カ調査費用調査費用は,原告11と同様,それぞれ12万4090円を被告らの不法行為と相当因果関係のある損害と認めるべきである。 キ弁護士費用本件事案の性質,本件訴訟の経過,認容額等に照らし,被告らの不法行為と相当因果関係のある弁護士費用としては,各70万円をもって相当と認める。 ク合計以上の合計額は,原告1について,774万2623円,原告2について,766万9801円,原告3について,751万4622円,原告4について,789万6299円,原告5について,741万4964円,原告6について,788万 いて,774万2623円,原告2について,766万9801円,原告3について,751万4622円,原告4について,789万6299円,原告5について,741万4964円,原告6について,788万3446円,原告7について,767万3209円,原告8について,758万0193円,原告9について,772万0657円,原告10について,770万1174円となる。 結論 以上の検討の結果によれば,原告1ないし9の本訴各請求は,被告らに対し,- 54 -連帯して,別表(1)の1ないし9の各認容額欄記載の金員及びこれらに対する各不法行為の日,即ち本件工事が終了した日である平成15年5月30日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で正当として認容すべきであり,その余は失当として棄却すべきであり,原告10及び11の本訴各請求は,被告業者に対し,別表(1)の10及び11の各認容額欄記載の金員及びこれらに対する上記平成15年5月30日から支払済みまで前同様の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で正当として認容すべきであり,同被告に対するその余の請求及び被告京都市に対する請求は失当として棄却すべきである。 京都地方裁判所第1民事部裁判長裁判官井戸謙一裁判官土井文美裁判官大川潤子(別紙物件目録,別紙図面( )( )省略) - 55 -- 56 -- 57 -- 58 -- 59 -- 60 -
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