平成25年(ワ)第27442号商標権侵害差止等請求事件(甲事件)平成25年(ワ)第34269号商標権侵害差止等請求事件(乙事件)判決東京都中央区〈以下略〉両事件原告株式会社シップス同訴訟代理人弁護士関根修一同板井典子同山田徹同杉本賢太東京都中央区〈以下略〉甲事件被告ダイワボウテックス株式会社名古屋市〈以下略〉乙事件被告株式会社 Y2両名訴訟代理人弁護士飯村佳夫同酒井卓也 主文 1 被告ダイワボウテックス株式会社は,別紙被告標章目録記載の標章を,布地に付してはならない。 2 被告らは,別紙被告標章目録記載の標章を付した別紙被告商品目録記載の布地を販売し,又は販売のために展示してはならない。 3 被告らは,別紙被告標章目録記載の標章を付した別紙被告商品目録記載の布地を廃棄せよ。 4 訴訟費用は,被告らの負担とする。 5 この判決は,第1項及び第2項に限り,仮に執行することができる。 事実及び理由 第1 請求 1 主文第1項ないし第4項と同旨 2 仮執行宣言第2 事案の概要 1 本件は,「SHIPS」の文字を書してなる商標につき商標権を有する両事件原告(以下,単に「原告」という。)が,①「SHIPS」の文字列を含むデザインを有する布地を製造・販売する被告ダイワボウテックス株式会社(以下「被告ダイワボウテックス」という。)に対して,商標 事件原告(以下,単に「原告」という。)が,①「SHIPS」の文字列を含むデザインを有する布地を製造・販売する被告ダイワボウテックス株式会社(以下「被告ダイワボウテックス」という。)に対して,商標法36条1項,2項に基づき,別紙被告標章目録記載の標章(以下「被告標章」という。)を布地に付すこと及び被告標章を付した布地の販売等の差止め並びに同布地の廃棄を求め(甲事件),②被告ダイワボウテックスから購入した上記布地を販売する被告株式会社Y2(以下「被告Y2」という。)に対して,同条項に基づき,同布地の販売等の差止め及び廃棄を求める(乙事件)事案である。 2 前提となる事実(1) 当事者ア原告は,衣料品及び服飾雑貨等の販売を主たる業とする株式会社である。 イ被告ダイワボウテックスは,布地等の製造・販売を主たる業とする株式会社である。 ウ被告Y2は,布地等の衣料品関連製品の販売を主たる業とする株式会社である。 (2) 原告の商標権原告は,以下の商標権(以下「本件商標権」といい,その登録商標を「本件商標」という。)を有している。 登録番号第4862594号出願日平成15年8月25日登録日平成17年5月13日登録商標 商品及び役務の区分第24類指定商品織物,布製身の回り品,かや,敷布,布団,布団カバー,布団側,まくらカバー,毛布,織物製いすカバー,織物製壁掛け,カーテン,テーブル掛け,どん帳,織物製テーブルナプキン,ふきん,シャワーカーテン,のぼり及び旗(紙製のものを除く。),織物製トイレットシートカバーなお,本件商標権の商品及び役務の区分としては,上記のほか,第2類,第3類,第4類,第6類,第 きん,シャワーカーテン,のぼり及び旗(紙製のものを除く。),織物製トイレットシートカバーなお,本件商標権の商品及び役務の区分としては,上記のほか,第2類,第3類,第4類,第6類,第8類,第9類,第11類,第12類,第14類,第15類,第16類,第18類,第19類,第20類,第21類,第22類,第25類,第26類,第27類,第28類,第31類がある。 (3) 被告らの行為ア被告ダイワボウテックスは,被告標章を付した別紙被告商品目録〈略〉記載の布地(以下「被告商品」という。)を製造・販売し,被告Y2は,その店舗において,一般消費者向けに同布地を販売していた。 原告は,被告ダイワボウテックスに対し,平成25年9月頃,被告商品の製造・販売が本件商標権の侵害に当たると主張してその製造・販売の中止を求めたが,被告ダイワボウテックスが,被告商品における被告標章の使用は商標的使用に当たらないと主張して商標権侵害を争ったことから,被告らに対して本件訴訟を提起した。 イ別紙被告商品目録記載のとおり,被告商品の図柄には,「SHIPS」の文字列で構成される被告標章が付されている。また,被告商品は,本件商標権の指定商品である「織物」に該当する。 3 争点(1) 被告標章の使用が商標的使用に当たるか否か (2) 本件商標と被告標章の類否第3 争点に関する当事者らの主張 1 争点(1)(被告標章の使用が商標的使用に当たるか否か)について〔原告の主張〕(1) 被告商品において,被告標章(「SHIPS」の文字列)は,単なる図柄の一部として使用されているのではなく,それに接した者が独立の表示として明確に見て取れるように表示されており,出所表示機能を果たしているから,商標としての使用に当 HIPS」の文字列)は,単なる図柄の一部として使用されているのではなく,それに接した者が独立の表示として明確に見て取れるように表示されており,出所表示機能を果たしているから,商標としての使用に当たる。 (2) 被告商品において,「SHIPS」の文字列は,他の文字列よりも比較的大きい字で,他の文字列から独立して単独で,かつ,全て大文字で,ロゴとして目立つような態様で表示されている。また,「SHIPS」とともに配置されている錨の形を模した図形(以下「錨マーク」という。)の上には,一般に組織・ブランド等の設立年を示すものとして記載される「SINCE1981」の表示も付されており,「SHIPS」が出所を示すような表示態様になっている。 (3) 原告は,「SHIPS」の名で多数の店舗を展開し,本件商標を付した服飾品を販売し,雑誌等にも多く取り上げられるなど,本件商標は,服飾品のブランドとして全国的に広範囲の一般消費者に高い周知性を有している。また,布地を利用する服飾品ブランドとして周知である以上,被告商品(布地)を購入する消費者においても,本件商標は周知といえる。 したがって,被告商品の被告標章を目にした需要者は,本件商標を想起する可能性が極めて高い。 (4) 被告らの主張に対する反論ア被告らは,被告商品において被告標章は単なる装飾,意匠の一部にすぎないと主張する。 しかし,被告商品における被告標章は,いずれも被告商品の図柄のうち の他の文字や船・錨の図形とは独立して,「SHIPS」と表示されていること,被告商品に描かれている船は1艘であるにもかかわらず,「S」を語尾に付して複数形にしていること,アルファベットが全て大文字であることから,単なる装飾的表示とはいえない。 また,仮に被告標章が,他の図柄とともに いる船は1艘であるにもかかわらず,「S」を語尾に付して複数形にしていること,アルファベットが全て大文字であることから,単なる装飾的表示とはいえない。 また,仮に被告標章が,他の図柄とともに美感を高める装飾的機能を有しているとしても,それが商標として識別機能を有する態様で使用されている以上,商標としての使用が否定されることはない。 イ被告は,被告商品の端部分に被告ダイワボウテックスの商品であることを示す商標が付されていると主張する。 しかし,布地の端部分に商標が付されることが一般的ということはできない上,本件においては,布の端部分に目立たないように付された表示よりも,布地に大きな太い文字で明確に表示されている「SHIPS」の文字列に目がいくから,そこから本件商標を想起することは避けられない。 また,一般に同じ商品に商標が二つ以上付され,それぞれが自他識別力及び出所識別機能を有することがあるから,被告商品の端部分に被告ダイワボウテックスの商標が表示されているとしても,その図柄の中の被告標章が商標としての機能を果たしていないことにはならない。 なお,原告は,セレクトショップとして様々なブランドの商品を買い付けて販売する服飾品店として周知であり,しかも,その店舗で販売する商品のほとんどに本件商標を付しているところ,このような業態の特性から,原告が取り扱う商品に「SHIPS」を含めて二つ以上の商標が付されている場合であっても,一般消費者は,それを原告を出所とする商品と認識する。 〔被告らの主張〕(1) 被告商品に付された「SHIPS」の文字列(被告標章)は,単なる意匠を構成するものであり,商標として使用されているものではない。 (2) 被告商品は布地であり,そこに錨マークを中心とする図形が多数配 れた「SHIPS」の文字列(被告標章)は,単なる意匠を構成するものであり,商標として使用されているものではない。 (2) 被告商品は布地であり,そこに錨マークを中心とする図形が多数配置されており,その錨マークの下にはそれぞれ海事を連想させる様々な単語が文字列として記載されているのであり,「SHIPS」はそのうちの一部にすぎない。すなわち,被告商品のデザインのパターンは約30cm 四方の正方形が一単位となっており,その一単位の中に錨マーク8個,スタンプマーク5個,英文二つが含まれるが,「SHIPS」の文字列は,そこに一つしかない。 しかも,全体を見た場合に目立つのは錨マークであり,また,文字サイズも特段大きくなく,5文字で専有面積の小さい「SHIPS」は,赤色で目立つフォントの「ANCHOR」と比べても,目立つものとはいえない。 このデザインの中で,「SHIPS」の文字列は,特に錨マークと分離不能な「単位表示部」を形成しているから,単独で取り出すことはできない。 このように,「SHIPS」の文字列は,海をイメージした美観をより強めて,購買意欲を喚起する機能を有するものであり,装飾的,意匠的な図柄の一部をなすにすぎない。 (3) 「SHIPS」の文字列は,直訳すると「船(主に中・大型船)」であり,最後の「S」は複数形を指す。この「ship」という単語は,平易な英単語であって,一般名詞として広く日本社会に浸透しており,出所識別力は極めて弱い。しかも,被告商品においては,「SHIPS」の文字列が,海や船をイメージさせる多数のマークや文字とともに付されており,「船」を連想させる錨マークの意味するところの説明的な表示の一種ともいえるから,その識別力は極めて弱い。 (4) また,被告商品の端部分には,端のラインに沿って,被告 文字とともに付されており,「船」を連想させる錨マークの意味するところの説明的な表示の一種ともいえるから,その識別力は極めて弱い。 (4) また,被告商品の端部分には,端のラインに沿って,被告ダイワボウテックスの完全親会社であるダイワボウホールディングス株式会社の登録商標であり,洋裁業界で一定の信用を得ている「D’sSELECTION」の商標(以下「ダイワボウ商標」という。)が付されている。 布地においては,そのデザインの中にメーカーの商標を記載することは通 常考えられないから,布地を購入する者は,一般に布地の端部分に記載された商標を見て出所を認識するのであり,被告商品においても,その端部分に記載されたダイワボウ商標を見て,その出所を認識する。また,被告商品のような布地の場合,ロール状に巻かれた状態で販売されているのであるから,生地上にランダム風に付されている被告標章よりも,ダイワボウ商標のほうが確認されやすい。 よって,本件商品の出所表示機能・自他識別機能を有するのは,ダイワボウ商標であり,被告標章はその機能を果たしていない。 (5) 原告の主張に対する反論ア本件商標が周知であることは否認する。原告は「SHIPS」のブランドで布地を販売していないから,特に布地の需要者に対しては,本件商標が周知されていることはない。他方,被告商品に付されたダイワボウ商標は,布地メーカーのものとして広く需要者に浸透している。したがって,布地を購入する一般需要者が,被告標章から本件商標を想起することはない。 また,原告は,主にセレクトショップという販売形態を採用しており,本件商標を付した商品は原告の店舗及びオンラインショップでしか販売されていないから,本件商標の出所表示機能は,その販売形態と また,原告は,主にセレクトショップという販売形態を採用しており,本件商標を付した商品は原告の店舗及びオンラインショップでしか販売されていないから,本件商標の出所表示機能は,その販売形態と切り離して認識されず,その販売店で販売している商品に向けられるものである。そのため,原告の店舗等以外で販売されている商品に「SHIPS」の文字列が付されたとしても,そこから本件商標が想起されることはない。 しかも,本件では,「SHIPS」が一般名詞であり,錨マークと不可分に結合しているから,商標的使用の判断に当たって,本件商標の周知性が考慮される事情はない。 イ被告商品のデザインのうち「SINCE1981」の表示は,デザイナーが自らの誕生年を記載したものにすぎず,商標的な使用をする意図は一 切なかった。「SINCE」が付いたからといって必ずしもブランド等の設立年を示すものではなく,本件ではノスタルジックなイメージを付加させるという専らデザイン上の機能しか有しない。また,被告商品では「SINCE1981」と「SHIPS」は,大きな錨マークを挟んで配置され,分断されているから,商品の出所を表すこととは関係がない。 2 争点(2)(本件商標と被告標章の類否)について〔原告の主張〕本件商標と被告標章とを対比すると,いずれもアルファベット大文字による「SHIPS」の文字列から成り,観念及び呼称において同一であり,外観においても字体が若干異なるにすぎないから,被告標章は,本件商標と同一又は少なくとも類似している。 〔被告らの主張〕本件商標と被告標章がいずれもアルファベット大文字による「SHIPS」の文字列から成ることは認めるが,その余は否認ないし争う。 「SHIPS」の文字列は,本件商標では,単純なゴシッ 〕本件商標と被告標章がいずれもアルファベット大文字による「SHIPS」の文字列から成ることは認めるが,その余は否認ないし争う。 「SHIPS」の文字列は,本件商標では,単純なゴシック体を一部変形させ,かつ文字の間隔を詰めることで,細くスマートな印象,ひいてはおしゃれなブランドイメージを与えようと試みているのに対し,被告標章では,一般的なローマン体を用いているにすぎないから,両者の観念は明らかに異なり,同一性又は類似性は認められない。 第4 当裁判所の判断 1 争点(1)(被告標章の使用が商標的使用に当たるか否か)について(1) 本件商標について本件商標は,前記第2,2(2)記載のとおり,「SHIPS」の五つの英文字を横書きしてなるものである。 証拠〈略〉及び弁論の全趣旨によれば,原告の営業及び本件商標に関して,昭和50年に設立された原告(設立当時の商号は「有限会社A」。昭和62 年に現商号「株式会社シップス」に変更。)は,昭和52年に「SHIPS」の名称の店舗をオープンさせ,その後,いわゆるセレクトショップとして,様々なブランドの商品を独自のコンセプトに基づいて直接買い付け,また,「SHIPS」のブランド名の自社商品を開発して,紳士服,婦人服のほか,ネクタイ,ハンカチ,靴下,バッグ,財布等の各種服飾品などの販売を行っていること,原告は,全国に,「SHIPS」又はこれを含む名称の店舗を,昭和60年当時9店,平成3年当時26店,本件訴え提起当時約58店を展開しており,平成25年2月期の原告の売上高が215億4400万円に上ること,原告は,「SHIPS」ブランドの宣伝用カタログを毎年2回発行,頒布し(平成25年度の発行部数は,5種類のカタログの合計で17万1000部。),フリーペーパー 上高が215億4400万円に上ること,原告は,「SHIPS」ブランドの宣伝用カタログを毎年2回発行,頒布し(平成25年度の発行部数は,5種類のカタログの合計で17万1000部。),フリーペーパー「SHIPSMAG」を毎年4回頒布している(同年度の発行部数は,合計24万部。)ほか,雑誌等の多くの媒体に「SHIPS」ブランドの宣伝広告を行っていること,原告の発行するSHIPSメンバーズクラブカードの顧客会員数は,平成25年8月末時点で67万9000名を数えること,原告は,第24類(織物,布製身の回り品など)のほか21の区分にわたる指定商品を有する本件商標権に加えて,同様に「SHIPS」の文字列から成り,第35類,第37類,第44類及び第45類の指定役務を有する商標権(第5185503号)を取得し,その営業において使用していることが,それぞれ認められる。 これらの事実によれば,本件商標は,服飾品のブランドとして広く一般消費者に認識されており,強い識別力を持つ商標であると認められる。 (2) 被告商品について証拠〈略〉及び弁論の全趣旨によれば,被告商品について,以下の事実が認められる。 被告商品は,幅110cmの長尺物の布地であり,そのデザインは,30cm四方が一つの単位となり,それが生地の端部を除く全面にわたってプリ ントされている。この30cm四方の一単位の中には,8個の大きめの錨マークがそれぞれ異なる方向を向いて散らばって配置されており,そのうち一つの錨マークの上下にはそれぞれ「SINCE1981」,「SHIPS」(被告標章)と表記され,他の一つの錨マークの上下にはそれぞれ「ANCHOR」,「Anchorscaneitherbetemporaryorpermanent.」と表記され,他の一つ 」(被告標章)と表記され,他の一つの錨マークの上下にはそれぞれ「ANCHOR」,「Anchorscaneitherbetemporaryorpermanent.」と表記され,他の一つの錨マークの下には「Aportisalocationonacoast.」と表記され,他の一つの錨マークの上には「SOMEANCHORSAREVARIOUS-SHAPED.」と表記され,他の二つの錨マークの下にはそれぞれ「Shipswerekeyinhistory's.」と表記され,他の一つの錨マークは「Humanshavenavigatedtheseassinceantiquity.」との英文に円環状に囲まれており,残りの一つの錨マークは文字列等を伴わずに,単独で表示されている。これらの錨マーク及びそれに伴う各表記以外の部分には,「Theearliestanchorswererocks.」及び「Anchorsachieveholdingpower」との各英文の表示と,錨,ヨット,舵,文字からなる5種類の郵便スタンプマークが配されている(なお,上記の英文字の中には,ところどころかすれており,読み取り難い部分がある。ただし,「SHIPS」の英文字は,容易に読み取れる。)。 また,被告商品の端の余白部分(デザインがプリントされていない部分)には,被告ダイワボウテックスの完全親会社である株式会社ダイワボウホールディングス株式会社の登録商標であるダイワボウ商標(「D’sSELECTION」)が表示されている。 (3) 商標的使用について前記(2)のとおり,被告商品においては,30cm四方のデザインの一単位に一つの被告標章が配されているところ,証拠〈略〉によれば,被告標章は,そのデザイ ている。 (3) 商標的使用について前記(2)のとおり,被告商品においては,30cm四方のデザインの一単位に一つの被告標章が配されているところ,証拠〈略〉によれば,被告標章は,そのデザインの中において,他の文字列から分離して表記されており,その「SHIPS」の文字列は,全て大文字で,かつ,「ANCHOR」の文字列とともに,他の文字列よりもやや大きい文字サイズであり,さらに,他の 文字列がいずれも文又は句を構成しているのに対して,この「SHIPS」及び「ANCHOR」はそれぞれ一単語のみで独立して用いられていることが認められる。そして,「ANCHOR」の文字列は,それが意味するところの「錨」のマークの上に配置され,同マークの下の「Anchorscaneitherbetemporaryorpermanent.」の英文を含めて,一つの固まりとして一体的に表示されているのに対して,被告標章は,それが意味するところの「船」ではなく,「錨」のマークの下に配置され,同マークの上の「SINCE1981」の文字列を含めて,一つの固まりとして一体的に表示されている。 このような被告商品における被告標章の配置,文字の大きさ及び表示態様からすれば,被告標章は,被告商品のデザインの中で,十分に独立して認識可能な標章として表示されているということができる。 このことに加えて,被告標章が,一般に企業や団体の創業年又はブランドの設立年などを表す際に用いられる「SINCE」の表記を伴い,上記のとおり「SINCE1981」の文字列と一体的に表示されていること,及び,前記(1)のとおり,「SHIPS」の文字列からなる本件商標が服飾品のブランドとして広く一般消費者に認識され強い識別力を持つ商標であることを総合すると,被告 字列と一体的に表示されていること,及び,前記(1)のとおり,「SHIPS」の文字列からなる本件商標が服飾品のブランドとして広く一般消費者に認識され強い識別力を持つ商標であることを総合すると,被告商品において被告標章は,その需要者に対して,商品の自他を識別し,出所を表示する態様で用いられていると認めることができる。 したがって,被告標章は,被告商品において,商標として使用されていると認めるのが相当である。 (4) 被告らの主張についてアこの点に関して被告らは,被告商品において被告標章は装飾的・意匠的な図柄の一部をなしているにすぎず,商標的使用に当たらないと主張する。 しかし,仮に被告標章が被告商品のデザインの一部であるといえるとしても,そのことによって,直ちに商標としての使用が否定されるものではなく,装飾的・意匠的な図柄の一部をなしている標章であっても,その標 章に装飾的・意匠的な図柄を超える強い識別力が認められるときは,装飾的・意匠的図柄であると同時に自他識別機能・出所表示機能を有する商標としての役割を果たす場合があるというべきである。そして,被告商品のデザインにおいては,約30cm四方の一単位に,被告標章以外にも複数のマークや文字が表示されており,赤色で表示された「ANCHOR」の文字が目立つ態様であることは否めないが,それらの中においても被告標章が十分に独立した標章として認識されて,被告商品において自他識別・出所表示の機能を果たしていると認められることは前記(3)のとおりであるから,被告らの上記主張は採用することができない。 また,被告らは,被告標章が錨マークと一体となって分離不能な「単位表示部」を形成しているから,単独で取り出すことができないと主張する。 この点,確かに被告標 主張は採用することができない。 また,被告らは,被告標章が錨マークと一体となって分離不能な「単位表示部」を形成しているから,単独で取り出すことができないと主張する。 この点,確かに被告標章は,錨マークのすぐ下に記載されているから,同マーク及びそのすぐ上に記載された「SHINCE1981」の表示も合わせて,一つの固まりとして一体的に配置されているといえる。しかし,錨マークは,「錨」の形をした図形であり,一方,被告標章である「SHIPS」の文字列は「船」を意味する英単語であるから,一つの固まりの中でも,それぞれが異なる観念を持つものとして,独立して認識し得ることは明らかである。 したがって,被告標章が錨マークと分離不能であるとの被告らの主張は採用できない。 イ被告らは,「ship(s)」は平易かつ一般的な英単語であり,錨マークの説明的な表示でもあるから,その識別力は極めて弱いと主張する。 しかし,「ship」が「船」を表す平易かつ一般的な英単語であり,「s」がその複数形を表すものであるとしても,被告標章は,「ship」又は「ships」ではなく,本件商標と同じく「SHIPS」の文字列から成るものであり,かつ,その文字列の配置,文字の大きさ及び表示態 様は,前記(3)に記載のとおりであって,しかも,前記(1)のとおり,同じ文字列から成る本件商標が服飾品のブランドとして広く一般消費者に認識され強い識別力を有していることにも照らせば,被告商品のデザインの中にあって被告標章の識別力が弱いということはできない。また,被告標章(「SHIPS」)は「船」を意味するものであるから,「錨」のマークの説明的な表示であるということもできない。 したがって,被告らの上記主張は採用することができない。 ウ被告らは,原 章(「SHIPS」)は「船」を意味するものであるから,「錨」のマークの説明的な表示であるということもできない。 したがって,被告らの上記主張は採用することができない。 ウ被告らは,原告が布地を販売していないため,布地の需要者に対しては,本件商標は周知ではなく,また,本件商標は,セレクトショップである原告の販売形態と切り離せないから,原告の店舗で販売される商品だけに向けられるものであると主張する。 しかし,本件商標が服飾品のブランドとして広く一般消費者に認識されていると認められることは,前記(1)のとおりであるところ,服飾品の多くは布製品であり,また,布地の需要者はその購入した布地で服飾品を作ることも少なくないと解されることからすれば,服飾品と布地の関連性は強いというべきであり,しかも,服飾品は,広く一般消費者が需要者となるべきものであるところ,そのように一般消費者に広く認識されている本件商標が,その中の布地の需要者に限って周知でないと認めるべき事情があることは窺えない。 また,原告が「SHIPS」の名称でセレクトショップを展開し,そこで他社ブランドの商品を販売していることは事実であるが,前記(1)のとおり,原告は,自社の「SHIPS」ブランドの服飾品の販売も行っており,証拠〈略〉によれば,原告が取り扱う商品の多くには,本件商標が,単独で,又はメーカー等の他社の商標とともに,付されていると認められることからすれば,本件商標は,商品自体に付されることでその商品の出所表示として機能していることが明らかであるから,そのような機能が原告の 店舗で販売される商品にしか及ばないものとは認められない。 したがって,被告らの上記主張は採用することができない。 エ被告らは,被告商品の端部分にはダ のような機能が原告の 店舗で販売される商品にしか及ばないものとは認められない。 したがって,被告らの上記主張は採用することができない。 エ被告らは,被告商品の端部分にはダイワボウ商標が付されており,しかも,布地がロール状に巻かれた状態では,被告標章よりもダイワボウ商標のほうが確認されやすいから,ダイワボウ商標のみが被告商品における自他識別・出所表示の機能を有していると主張する。 この点,証拠〈略〉によれば,布地には,その端部分に,布地の製造者の名称やブランド名などが表示されることがあり,被告商品においても,布地の端部分に,被告ダイワボウテックスの親会社の登録商標であるダイワボウ商標が表示されていることが認められる。 しかし,商標は,単に商品の製造者を表すためだけに用いられるものではなく,その販売者や輸入者,使用許諾を与えたライセンサーなどを表すために用いられるものでもあり,さらには,当該商品の商品名やブランド名を表すものとしても用いられるのであって,しかも,それらの複数の商標が一つの商品に同時に付されることも少なくないと考えられることからすれば,商品に付された一つの商標からその製造者が認識されるからといって,同商品に付された他の標章が商標として認識されないということにはならないというべきである。 そして,被告商品においては,そのデザインの全面にわたって,被告標章が30cm四方に一つずつ表示されており,しかも,前記ウのとおり,布地の需要者においても本件商標が広く認識されているといえることからすれば,被告商品において,被告標章が自他識別機能を有する態様で表示されていることを否定することはできない。また,布地がロール状に巻かれた状態で販売されているとしても,需要者が布地を選択して購入する際 れば,被告商品において,被告標章が自他識別機能を有する態様で表示されていることを否定することはできない。また,布地がロール状に巻かれた状態で販売されているとしても,需要者が布地を選択して購入する際には,その生地のデザインを確認することは当然であるから,被告商品の需要者が生地に付された被告標章を認識しないということはできない。 したがって,被告らの上記主張は採用することができない。 オ被告らは,「SINCE1981」の表示は,デザイナーの誕生年を記載したものにすぎないこと,及び,この表示と被告標章とが錨マークを挟んで配置され分断されているから,「SINCE1981」の表示があることをもって被告標章が商標的に使用されている根拠とすることはできない旨主張する。 この点,証拠〈略〉によれば,被告商品に付された「SINCE1981」の表示は,そのデザインの作成者が,自己の誕生年(1981年)に由来して記載したものであることが窺われるが,仮にそうであるとしても,被告商品に接した需要者が,上記表示について,それをデザイン作成者の誕生年の表示であると認識するとは到底認められず,かえって,「SHIPS」という商標が広く一般消費者に認識され強い識別力を持っていること,並びに「SINCE1981」の表示の仕方,被告標章との位置関係及び配置に照らすと,需要者は,上記「SINCE1981」の表示をもって,原告又は「SHIPS」というブランドの設立年を表すものと認識するのが通常と認められるから,デザイン作成者の上記意図は,被告標章が商標的使用に当たるか否かの判断を左右するものとはいえない。 また,前記(3)のとおり,「SINCE1981」及び「SHIPS」(被告標章)の各文字列並びにこれらに挟まれた錨マークは,被告商品のデ 使用に当たるか否かの判断を左右するものとはいえない。 また,前記(3)のとおり,「SINCE1981」及び「SHIPS」(被告標章)の各文字列並びにこれらに挟まれた錨マークは,被告商品のデザインの中で一つの固まりとして一体的に配置されているところ,このうち錨マークは図形であって,英語である「SINCE1981」及び「SHIPS」の各文字列とは性質の異なるものであるから,これらの二つの文字列は,錨マークを挟んでいても,互いに繋がりのあるものとして認識されるものと認められる。 したがって,被告らの上記主張は採用することができない。 (5) 小括 以上のとおり,被告商品における被告標章の使用は,商標的使用に当たると認められる。 2 争点(2)(本件商標と被告標章の類否)について(1) 商標及び標章の類否は,同一又は類似の商品・役務に使用された商標及び標章が,その外観,観念,称呼等によって取引者,需要者に与える印象,記憶,連想等を総合して全体的に考察し,その取引の実情も考慮して,商品・役務の出所につき誤認混同を生ずるおそれがあるか否かによって決すべきものと解される。 (2) 本件商標と被告標章は,いずれも大文字の「SHIPS」の五つの英文字を横書きしてなるものであり,その外観は似ており,その称呼は「シップス」と同一であり,また,「船」を意味する英単語の複数形であるという点で,その観念も同一といえる。 この点に関して被告らは,本件商標の文字列は,単純なゴシック体を一部変形させ,かつ文字の間隔を詰めているのに対し,被告標章では,一般的なローマン体を用いているから,両者の観念が異なると主張するが,本件商標の字体と被告標章の字体には若干の相違はあるものの,それによる外観上の差異はわずかであ 詰めているのに対し,被告標章では,一般的なローマン体を用いているから,両者の観念が異なると主張するが,本件商標の字体と被告標章の字体には若干の相違はあるものの,それによる外観上の差異はわずかであり,また,その外観上の差異によって両者の観念が相違するものとは認められない。 そうすると,両者の外観,称呼,観念を総合して全体的に考察すれば,本件商標と被告標章がそれぞれ同一又は類似の商品に付された場合には,その商品の出所につき誤認混同を生ずるおそれがあるものと認められ,本件において,これを否定するべき取引の実情の存在は窺われないから,本件商標と被告標章とは,少なくとも類似するものということができる。 3 まとめ前記1及び2によれば,被告ダイワボウテックスが布地に被告標章を付して被告商品を製造し,被告らがこれを販売等する行為は,本件商標権の侵害に当 たる(商標法37条1号)と認められるところ,本件においては,被告らは,被告商品に付された被告標章が商標的使用に当たることを否認し,原告の請求を争っていることから,原告は,被告らに対して,各侵害行為の差止めを求めることができ,また,その侵害行為を組成する被告商品の廃棄を求めることができる(同法36条1項,2項)。 4 結論以上によれば,原告の請求はいずれも理由があるからこれを認容することとし(ただし,被告商品の廃棄については仮執行宣言を付すのが相当でないからこれを付さない。),主文のとおり判決する。 東京地方裁判所民事第40部 裁判長裁判官東海林保 裁判官今井弘晃 裁判官足立拓人 別紙被告標章目録 (1) 保 裁判官今井弘晃 裁判官足立拓人 別紙被告標章目録 (1) (2) (3)
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