令和5(ネ)10064 損害賠償等請求控訴事件

裁判年月日・裁判所
令和5年11月8日 知的財産高等裁判所 1部 判決 控訴棄却 大阪地方裁判所 令和2(ワ)7001
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判決文本文9,875 文字)

令和5年11月8日判決言渡 令和5年(ネ)第10064号損害賠償等請求控訴事件(原審・大阪地方裁判所令和2年(ワ)第7001号) 口頭弁論終結日令和5年9月11日判決 控訴人株式会社Xコーポレーション 同訴訟代理人弁護士岩﨑任史 同補助参加人株式会社大林組 同訴訟代理人弁護士矢田次男渡邉 誠村 上 嘉奈子 同補佐人弁理士小林徳夫 被控訴人株式会社祥起 同訴訟代理人弁護士後藤昌弘 大橋厚志鈴木智子 主文 1 本件控訴を棄却する。 2 控訴費用は、控訴人の負担とする。 事実及び理由 用語の略称及び略称の意味は、本判決で付するもののほかは、原判決に従う。原判決中の「別紙」を「原判決別紙」と読み替える。 第1 控訴の趣旨 1 原判決を取り消す。 2 被控訴人は、控訴人に対し、5000万円及びこれに対する平成31年1月11日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 第2 事案の概要 1 事案の要旨本件は、(1)控訴人が、被控訴人に対し、①被控訴人との間で被控訴人の これに対する平成31年1月 11日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 第2 事案の概要 1 事案の要旨本件は、(1)控訴人が、被控訴人に対し、①被控訴人との間で被控訴人の製造する商品の売買に係る基本契約(本件契約)を締結していたところ、当該商品が補助参 加人の有する特許権に抵触し、控訴人が将来にわたって被控訴人から当該商品を購入して第三者に販売することができなくなったとして、本件契約上の第三者の工業所有権との抵触について被控訴人の負担と責任において処理解決する旨の約定(本件特約)の債務不履行又は瑕疵担保責任に基づく損害賠償請求として1億0800万8470円及びこれに対する催告後である平成31年1月11日(訴状送達の日 の翌日である。以下同じ。)から支払済みまで平成29年法律第44号による改正前の民法(改正前民法)所定の年5分の割合による遅延損害金の支払、②被控訴人と南条装備工業株式会社(南条)との取引に関して、被控訴人との間で控訴人に支払う成功報酬を売上額の7~10%とする旨の合意(本件報酬合意)をしたとして、本件報酬合意に基づき、報酬金81万2160円及び経費36万6962円並びに これらに対する催告後である平成31年1月11日から支払済みまで改正前民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求め、また、(2)控訴人の代表者であるX(以下「X」という。)が、被控訴人に対し、①前記のとおり、被控訴人の製造する商品を購入して第三者に販売することができなくなったことにつき、債務不履行又は瑕疵担保責任が成立して被控訴人が損害賠償責任を負うと主張し、控訴人設 立に要した費用1320万円及びこれに対する催告後である平成31年1月11日 から支払済みまで改正前民法所定の年5分の割合による 成立して被控訴人が損害賠償責任を負うと主張し、控訴人設 立に要した費用1320万円及びこれに対する催告後である平成31年1月11日 から支払済みまで改正前民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払、②被控訴人代表者が被控訴人の職務を行うについて、Xに対し精神的苦痛を与える言動をしたとして、会社法350条に基づき、慰謝料100万円及びこれに対する当該言動後である平成31年1月11日から支払済みまで改正前民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求めた事案である。 原判決は、上記各請求をいずれも棄却したところ、これに対し、控訴人は、本件契約の債務不履行責任に基づく損害賠償請求(上記(1)①)のうち5000万円の限度で敗訴部分につき不服であるとして、本件控訴をした。なお、1審相原告であったXは、控訴をしておらず、前記のXと被控訴人間の原判決部分は確定した。 2 前提事実 (当事者間に争いがない事実並びに証拠(以下、書証番号は特記し ない限り枝番を含む。)及び弁論の全趣旨から認められる事実。)以下のとおり原判決を訂正するほか、原判決の「事実及び理由」の第2の2記載のとおりであるから、これを引用する。 (1) 原判決4頁6行目の「していたものであった」の次に「。)」を加える。 (2) 原判決5頁7行目の「成立する」の次に「(第2条、第3条)」を加える。 (3) 原判決5頁10行目の「(本件特約)」を「(第9条。本件特約)」と改める。 3 争点(1) ウォールキャッチャー(WC)及びスーパーウォールキャッチャー(SWC)が本件契約の対象であるか否か(争点1)(2) 本件特約上の義務違反の成否 ア補助参加人からの侵害警告への対応義務の有無(ア) SWCが乙1発明の技術的範囲に属 チャー(SWC)が本件契約の対象であるか否か(争点1)(2) 本件特約上の義務違反の成否 ア補助参加人からの侵害警告への対応義務の有無(ア) SWCが乙1発明の技術的範囲に属するか否か(争点2)(イ) 乙1特許権に共同出願違反の無効理由があるか否か(争点3)イ本件特約上の対応義務違反の成否(争点4)(3) 損害の発生及び額(争点5) 4 争点に関する当事者の主張 以下のとおり原判決を訂正し、当審における当事者の補充主張を付加するほか、原判決の「事実及び理由」の第3の1~4及び6記載のとおりであるから、これを引用する。 (1) 原判決の訂正ア原判決7頁17行目、同15頁25行目、同17頁17行目の各「原告らの 主張」をそれぞれ「控訴人の主張」に改める。 イ原判決8頁3頁の「原告らに対し」を「控訴人に対し」に改める。 ウ原判決8頁7行目、同14頁6行目の各「原告ら及び補助参加人の主張」をそれぞれ「控訴人及び補助参加人の主張」に改める。 エ原判決8頁8行目から10行目までを削る。 オ原判決14頁7行目から9行目までを削る。 カ原判決16頁14行目、同頁16行目、同頁17行目、同頁21行目、同17頁6行目、同頁8行目、同頁20行目の各「原告ら」をそれぞれ「控訴人」に改める。 キ原判決17頁18行目冒頭から21行目の「(2)」までを削る。 ク原判決17頁22行目の「ア」を「(1)」に、同18頁1行目の「イ」を「(2)」に、同頁2行目の「ウ」を「(3)」に改める。 ケ原判決18頁5行目から7行目までを削る。 コ原判決18頁22行目の「売掛金債権」を「個別契約による売掛金債権」に改める。 (2) 当審における控訴人の補充主張ア に改める。 ケ原判決18頁5行目から7行目までを削る。 コ原判決18頁22行目の「売掛金債権」を「個別契約による売掛金債権」に改める。 (2) 当審における控訴人の補充主張ア控訴人と被控訴人との間の本件契約における本件特約は、被控訴人が補助参加人に対し乙1特許権の実施権の存在を認めさせるために、被控訴人が主体的に訴訟等によって自らがこの商品の特許権者であると証明することを約した規定と解すべきであって、被控訴人はそのような義務を果たしていない。 イ被控訴人は東レとの間で、平成18年6月23日、東レが被控訴人に対し「ル ープボンド(LB)」「スーパーループボンド(SLB)」の製品製造に必要な金型を無償貸与すること、被控訴人は東レの承諾を得ることなく金型を目的外使用をしてはならないこと等を内容する契約を締結しており(丙14)、同契約によると、被控訴人は、製造委託を受けた業者にすぎない上、同契約に違反して本件対象商品を販売したのであるから、そもそも乙1発明の共同発明者でないことを認識していたと いえる。 (3) 当審における補助参加人の補充主張原判決は、被控訴人代表者の供述につき、信用性が認められることを前提としているが、被控訴人代表者の供述は、客観証拠との不一致、矛盾・変遷及び不合理な内容を含むものであるから信用性を認める余地がなく、原判決は誤りである。 例えば、共同開発者証明書(乙5)につき、Aが令和3年8月28日及び令和4年3月26日の二度にわたり撤回の意思を示したこと(丙17、丙23)からすると、乙5の信用性はなく、また、被控訴人が出願前に作成された文言修正途中の明細書案(乙25)を所持することにつき、乙1特許権の出願前後頃に正当に入手したとはいえず、不明朗な経緯で被控訴人の手元 すると、乙5の信用性はなく、また、被控訴人が出願前に作成された文言修正途中の明細書案(乙25)を所持することにつき、乙1特許権の出願前後頃に正当に入手したとはいえず、不明朗な経緯で被控訴人の手元に渡ったものであって、信用できな いから、これらに裏付けられる被控訴人代表者の供述は裏付けを欠くものであって、信用性がない。 (4) 当審における控訴人の補充主張及び補助参加人の補充主張に対する被控訴人の反論ア上記(2)アの控訴人の主張につき、本件契約における本件特約の文言や契約 解釈により、控訴人が主張するような義務が対象範囲に含まれるものとはいえない。 イ上記(2)イの控訴人の主張につき、丙14の契約書は、東レの定型的な基本契約書であり、被控訴人は、「ループボンド(LB)」「スーパーループボンド(SLB)」の量産製品製造を開発から引き続いて行うため、東レの言うがままに当該契約を締結したものにすぎない。被控訴人代表者は、東レから「スーパーループボンド」の 発明に関して「甲30特許権」とは別に「乙1特許権」が出願されている事実を聞 かされておらず、「スーパーループボンド」の発明に関しては乙29の同意書に記載された甲30特許権が唯一無二であり、自身もその共有者であり、丙14の契約時、東レから「スーパーループボンド」の製造が優先的に発注されるという認識であったから、乙1発明の共同発明者でないことを認識していた事実はない。したがって、丙14の契約と被控訴人の控訴人に対する責任は無関係というべきである。 ウ上記(3)の補助参加人の主張につき、被控訴人代表者の供述は客観証拠と合致し、矛盾・変遷及び不合理な内容を含むものではないから理由がない。そもそも、被控訴人代表者は、現在82歳の高齢であり、本件で問 上記(3)の補助参加人の主張につき、被控訴人代表者の供述は客観証拠と合致し、矛盾・変遷及び不合理な内容を含むものではないから理由がない。そもそも、被控訴人代表者は、現在82歳の高齢であり、本件で問題となっている共同出願時の開発も、既に25年前の話であるから、記憶の薄れや多少の齟齬が生じるのはむしろ当然である。 第3 当裁判所の判断 1 争点1(WC及びSWCが本件契約の対象であるか否か)について原判決第4の1記載のとおりであるからこれを引用する。 2 争点4(本件特約上の対応義務違反の成否)について(1) 認定事実 以下のとおり訂正するほか、原判決第4の2(2)記載のとおりであるからこれを引用する。 ア原判決22頁17行目の「本件に」から同頁19行目「以下のとおりと」までを「以下の事実が」と改める。 イ原判決22頁22行目の「ものであるところ(丙2)、」を「(丙2)。」 に改める。 ウ原判決22頁22行目の「原告会社」の前に「補助参加人は、」を加える。 エ原判決25頁24行目末尾に行を改めて「その後、控訴人は、補助参加人に対して特許侵害のペナルティーとして金銭等を支払ったことはなく、長谷工は控訴人から平成30年1月時点の在庫を同年2月及び3月に従前の取引条件で買い取り 補償した(Xの原審本人尋問の結果)。」を加える。 (2) 対応義務の内容について前提事実及び上記(1)の認定事実によっても、本件契約の締結に当たり本件特約の文言や内容についてXと被告代表者との間で具体的なやり取りがされたものとはいえず、本件全証拠によってもこれを認めることができないところ、本件特約の文言を前提とした一般的な意思解釈を前提にすると、本件特約は、第一義的には、控 訴人が第三者か なやり取りがされたものとはいえず、本件全証拠によってもこれを認めることができないところ、本件特約の文言を前提とした一般的な意思解釈を前提にすると、本件特約は、第一義的には、控 訴人が第三者から特許権等の侵害を理由に訴えを提起されて敗訴して確定するなど、本件契約の対象商品について特許権等の侵害の事実が確定し、控訴人が損害を被ることが確定した場合の被控訴人の損失補償義務を規定したものと解される。もっとも、本件特約の「万一、抵触した場合には、被控訴人の負担と責任において処理解決するものとし」との文言や被控訴人が商品の製造元として控訴人よりも技術的な 知見等の情報を有している立場であったことからすると、本件特約は、単に事後的な金銭補償義務のみならず、被控訴人が、その負担と責任において、紛争を処理解決する積極的な義務をも規定していると解される。そうすると、控訴人が第三者から被控訴人が控訴人に販売した商品が特許権等に抵触することを理由に侵害警告を受けたときには、被控訴人は、本件特約に基づき、控訴人の求めに応じて、控訴人 に商品に係る技術的な知見や特許権等の権利関係その他の必要な情報を提供し、控訴人が必要な情報の不足により敗訴し、または交渉上不当に不利な状況となり、損害が発生することのないよう協力する義務も負うものと解される。 他方で、本件特約上の紛争を処理解決する積極的な対応義務は、損害の発生を防止するために控訴人の求めに応じて被控訴人から技術的な知見や特許権等の権利関 係その他の必要な情報を提供して控訴人が不利な状況とならないようにすべき義務であるから、被控訴人が同侵害の事実を争い、同侵害の事実が確定しておらず、また、被控訴人から技術的な知見や特許権等の権利関係その他の必要な情報の提供が行われていたにもかかわらず、控訴人 にすべき義務であるから、被控訴人が同侵害の事実を争い、同侵害の事実が確定しておらず、また、被控訴人から技術的な知見や特許権等の権利関係その他の必要な情報の提供が行われていたにもかかわらず、控訴人が、その経営判断等により、特許権侵害等を主張する第三者との間で控訴人の不利益を甘受して被控訴人が控訴人に販売した商 品の取り扱いについて合意したような場合において、控訴人の損害の補償義務まで を被控訴人が負うものではなく、また、特許権侵害等を主張する第三者への被控訴人からの対抗手段としては、自らに有利な主張をし、その根拠資料を示して交渉するなどの手段も存在するものであって、そのような場合に、当該第三者からの解決策の提案に必ず応じなければならないものではなく、加えて、特許権侵害等を主張する第三者に訴訟提起や無効審判請求等までの対抗手段を講ずべき義務を被控訴人 が負うものとも解されない。 したがって、上記判断に反する控訴人の本件特約に係る義務の内容についての主張は失当であって採用できない。 (3) 対応義務違反の有無アそこで、本件についてみると、被控訴人の対応として以下の事実が認められ る。 (ア) 被控訴人は、平成28年11月ないし12月頃、控訴人が補助参加人から最初に呼び出しを受けた際、B弁理士に依頼して協力を求めると共に、控訴人がWC及びSWCの取引を継続できるよう、補助参加人に対して、特許権侵害を否定する対応をとったこと (イ) 被控訴人は、被控訴人がLBやSLBの開発過程において重要な発案をし、商品の具体化及び実現に深く関与していたことから、補助参加人の主張に理由がなく、乙1特許権には共同出願違反の無効理由があって、補助参加人の主張には十分対抗できるものと判断し、同年12月14日には、Aから共同 体化及び実現に深く関与していたことから、補助参加人の主張に理由がなく、乙1特許権には共同出願違反の無効理由があって、補助参加人の主張には十分対抗できるものと判断し、同年12月14日には、Aから共同開発者証明書(乙5)を入手し、速やかに被控訴人代表者が乙1発明の発明者であることを裏付ける証拠 の収集を行ったこと(ウ) 被控訴人は、控訴人及びその取引先であった穴吹工務店の依頼したC弁理士にもLB及びSLBの開発経緯を説明し、乙1特許権に係る出願前のFAX等の重要な資料の提供を行って、平成29年4月5日にC弁理士が補助参加人に対し、特許権非侵害や無効の主張をする前提となる情報を提供したことや控訴人の取引先で あった長谷工に対してもLB及びSLBの開発経緯を説明し、資料を提供し、その 結果、平成29年7月頃までに、長谷工は、補助参加人との特許権問題について被控訴人の主張が正しいためSWCを採用する旨の決断に至ったこと(エ) 被控訴人代表者は、接着補助具をコネクター兼用とし、コネクター部と係止部を樹脂で一体成形し、枠状の支持突起を設けることといった乙1発明の主要な構成を全て着想して具体的な構成を創作したと主張し、これを裏付ける資料も存在し ていたこと(乙1発明の共同発明者であるAが被控訴人代表者も共同発明者であるとの陳述(乙5)、出願前に作成された文言修正途中の明細書案(乙25)、東レとのやり取りや東レの内部資料(乙2、4、10、11、14、15、24))からすると、補助参加人から特許権侵害の主張を受けた平成28年11月頃から長谷工が武新を通じての控訴人との取引を中止した平成30年3月までの間において、乙1 特許権が共同出願違反であって無効である旨の被控訴人の主張には、十分な理由及び根拠資料があり、補助参加人 ら長谷工が武新を通じての控訴人との取引を中止した平成30年3月までの間において、乙1 特許権が共同出願違反であって無効である旨の被控訴人の主張には、十分な理由及び根拠資料があり、補助参加人の主張に対抗できる見込みのあるものであったといえること上記の(ア)から(エ)までの各事実によると、被控訴人は、本件特約に基づき、控訴人の求めに応じて、控訴人に商品に係る技術的な知見や特許権等の権利関係その他 の必要な情報を提供し、控訴人が必要な情報の不足により交渉上不当に不利な状況となり、損害が発生することのないよう協力する義務を果たしていたものと評価できる。 イまた、前記認定事実によると、平成29年4月頃までの補助参加人への対応については、控訴人とWCDを共同開発していた穴吹工務店とその依頼を受けたC 弁理士が主導しており、それ以降については、控訴人は、補助参加人の主張を問題とせずにSWCの採用を決断した長谷工の意向に従って、SWCの取引を推進したことが認められる。それにもかかわらず、一旦はSWCの採用を決断した長谷工を始めとする控訴人の取引先が、控訴人や被控訴人を除いた補助参加人との直接交渉により、最終的にWCやSWCの取引継続を中止することを決めたものであること、 さらに、Xの原審本人尋問の結果によると、控訴人は、平成30年に長谷工が補助 参加人との直接交渉の結果、それまでの方針を変更してSWCの販売中止を決めたことから、控訴人のような企業が大企業に抵抗することはできないと判断し、補助参加人からの損害賠償請求を受けないことや長谷工からの在庫の補償が受けられることも考慮し、それ以上の販売事業の継続を断念したといえることからすると、控訴人が本件契約に基づく販売事業を断念したのは控訴人がその経営判断により自ら 受けないことや長谷工からの在庫の補償が受けられることも考慮し、それ以上の販売事業の継続を断念したといえることからすると、控訴人が本件契約に基づく販売事業を断念したのは控訴人がその経営判断により自ら 決定した対応であるといえる。 ウ以上によると、被控訴人に本件特約上の義務違反があるとはいえず、被控訴人が控訴人に対し、本件契約上の債務不履行責任を負うものとはいえない。 (4) 控訴人の当審における補充主張について控訴人は、被控訴人が東レとの間で、平成18年6月23日、東レが被控訴人に 対し「ループボンド」「スーパーループボンド」の製品製造に必要な金型を無償貸与すること、被控訴人は東レの承諾を得ることなく金型を目的外の使用をしてはならないこと等を内容とする契約を締結していたこと(丙14)をもって、乙1発明の共同発明者でないことを認識していた旨を主張する。しかしながら、被控訴人代表者は、東レから「スーパーループボンド」の発明に関して「甲30特許権」とは別 に「乙1特許権」が出願されている事実を聞かされておらず、「スーパーループボンド」の発明に関しては乙29の同意書に記載された甲30特許権が唯一無二であり、自身もその共有者であり、東レから「スーパーループボンド」の製造が優先的に発注されるという認識であった旨の供述をしているところ、乙29の平成12年1月25日付けの被控訴人代表者と東レのAとの間で締結された同意書の記載によると、 甲30特許権の出願番号の記載とともに、「本件2件の特許出願に係る発明の“ループボンド”を必要とするときは、本件2件の特許出願の有効期間内においては、有限会社祥起金型から優先的に購入するものとする。」との記載があり、被控訴人代表者としては甲30特許権がループボンド及びスーパーループボンドの対象特 ときは、本件2件の特許出願の有効期間内においては、有限会社祥起金型から優先的に購入するものとする。」との記載があり、被控訴人代表者としては甲30特許権がループボンド及びスーパーループボンドの対象特許であると認識していたことを裏付ける証拠があることに加え、前記認定事実の事実経過 も踏まえると、本件契約当時から、被控訴人代表者が乙1発明の共同発明者でない ことを認識していたと認めるに足りる証拠はなく、控訴人の上記主張は理由がない。 (5) 補助参加人の当審における補充主張についてア補助参加人は上記(3)ア(イ)に関し、Aが共同開発者証明書(乙5)につき、令和3年8月28日及び令和4年3月26日の二度にわたり撤回の意思を示したこと(丙17、丙23)をもって、乙5の信用性がない旨を主張するが、上記(3)ア(イ) の事実は、被控訴人につき、補助参加人から特許権侵害の主張を受けた平成28年11月頃から長谷工が武新を通じての控訴人との取引を中止した平成30年3月までの間において、本件特約に係る債務の不履行と考え得る状況にあったかどうかの問題であり、かかる期間においてAが撤回の意思表示をしていた事実は認められないから、補助参加人の上記主張は採用できない。 イ補助参加人は上記(3)ア(エ)に関し、被控訴人が出願前に作成された文言修正途中の明細書案(乙25)を所持することにつき、乙1特許権の出願前後頃に正当に入手したとはいえず、不明朗な経緯で被控訴人の手元に渡ったことを主張するが、被控訴人がかかる不明朗な経緯で乙25を入手したことを裏付ける証拠はなく、補助参加人の主張は採用できない。 ウその他、補助参加人は、るる主張するが、いずれも被控訴人の控訴人に対する債務不履行責任の有無との関係についての上記判断を左 たことを裏付ける証拠はなく、補助参加人の主張は採用できない。 ウその他、補助参加人は、るる主張するが、いずれも被控訴人の控訴人に対する債務不履行責任の有無との関係についての上記判断を左右するものとはいえない。 第4 結論以上のとおり、控訴人の被控訴人に対する本件契約の債務不履行責任に基づく本件請求は理由がなく、その余の点を判断するまでもなく、本件控訴は理由がない。 よって、主文のとおり判決する。 知的財産高等裁判所第1部 裁判長裁判官 本多知成 裁判官 遠山敦士 裁判官 天野研司

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