平成28年7月20日判決言渡同日原本領収裁判所書記官平成25年(ワ)第31158号損害賠償請求事件口頭弁論終結日平成28年4月13日判決原告オーツ― マイクロインコーポレーテッド同訴訟代理人弁護士大野聖二同小林英了同補佐人弁理士大谷寛同村山靖彦同渡邉隆同松尾直樹同坂井康記被告日本テキサス・インスツルメンツ株式会社同訴訟代理人弁護士鈴木修同 岡本義則同 神田雄同佐藤仁同補佐人弁理士上田忠 主文 1 原告の請求を棄却する。 2 訴訟費用は原告の負担とする。 3 この判決に対する控訴のための付加期間を30日と定める。 事実及び理由 第1 請求 1 被告は,原告に対し,1億円及びこれに対する平成25年12月7日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 2 仮執行宣言第2 事案の概要 1 本件は,発明の名称を「電圧モードの高精度電池充電器」とする特許(第3893128号)を有すると主張する原告が,被告の輸入・販売等する別紙被告製品目録記載の各製品が,上記特許の特許請求の範囲請求項1記載にかかる発明の技術的範囲に属するか,又は,同発明の侵害品の「生産にのみ用いる物」に当たると主張して,被告 被告の輸入・販売等する別紙被告製品目録記載の各製品が,上記特許の特許請求の範囲請求項1記載にかかる発明の技術的範囲に属するか,又は,同発明の侵害品の「生産にのみ用いる物」に当たると主張して,被告に対し,特許権侵害の不法行為により,特許法102条3項に基づく損害賠償金1億円及びこれに対する不法行為の後の日である平成25年12月7日(訴状送達の日の翌日)から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める事案である。 2 前提事実(当事者間に争いのない事実又は文中掲記した証拠及び弁論の全趣旨により容易に認定できる事実)(1) 当事者ア原告原告は,ケイマン諸島所在のオーツーマイクロインターナショナルリミテッド(以下「ケイマン法人」という。)の100%子会社であり,電力管理部品を含む集積回路(IC)製品の設計,開発及び販売等を業とする米国法人である。(弁論の全趣旨)イ被告被告は,集積回路(IC)の製造・販売等を業とする株式会社である。 (2) 原告の有する特許権原告は,以下の特許権(請求項の数14。以下「本件特許権」又は「本件特許」といい,特許請求の範囲請求項1にかかる発明を「本件発明」という。 また,本件特許に係る明細書及び図面〔甲2〕を「本件明細書等」という。 なお,本件特許の特許公報を末尾に添付する。)の特許権者として登録されている。(甲1,2,7) 発明の名称電圧モードの高精度電池充電器登録番号特許第3893128号出願日平成14年8月19日登録日平成18年12月15日優先日①平成13年8月17日 (優先日主張国:米国,主張番号:60/313,260)優先日②平成13年9月7日 (優 録日平成18年12月15日優先日①平成13年8月17日 (優先日主張国:米国,主張番号:60/313,260)優先日②平成13年9月7日 (優先日主張国:米国,主張番号:09/948,828)発明者甲ⅰ出願人原告(PCT/US2002/026333,特願2003-522208)(3) 本件発明の特許請求の範囲本件特許の特許請求の範囲請求項1には次のとおり記載されている。 「PWM信号のデューティサイクルを制御するための回路であって,電池充電電流が所定の電池充電電流閾値を超過する量に比例した電流制御信号を生成する電池電流制御部と,電池電圧が所定の電池電圧閾値を超過する量に比例した電圧制御信号を生成する電池電圧制御部と,前記電流制御信号,および/または,前記電圧制御信号の振幅に基づいて,PWM信号を生成する比較器とを具備し,補償キャパシタ,および,該補償キャパシタを充電する電流源をさらに具備し,前記電流源と,前記電流制御信号と,前記電圧制御信号とは,共通のノードにおいて共に合計され,前記PWM信号のデューティサイクルは,前記補償キャパシタ上の電圧に基づき, 前記電流制御信号,および/または,前記電圧制御信号は,前記補償キャパシタ上の電圧を低減させ,これにより,前記PWM信号のデューティサイクルが低減することを特徴とする回路。」(4) 本件発明の構成要件本件発明を構成要件に分説すると,次のとおりである。 APWM信号のデューティサイクルを制御するための回路であって,B 電池充電電流が所定の電池充電電流閾値を超過する量に比例した電流制御信号を生成する電池電流制御部と,C 電池電圧が所定の電池電圧閾値を超過す デューティサイクルを制御するための回路であって,B 電池充電電流が所定の電池充電電流閾値を超過する量に比例した電流制御信号を生成する電池電流制御部と,C 電池電圧が所定の電池電圧閾値を超過する量に比例した電圧制御信号を生成する電池電圧制御部と,D 前記電流制御信号,および/または,前記電圧制御信号の振幅に基づいて,PWM信号を生成する比較器とを具備し,E 補償キャパシタ,および,該補償キャパシタを充電する電流源をさらに具備し,F 前記電流源と,前記電流制御信号と,前記電圧制御信号とは,共通のノードにおいて共に合計され,G 前記PWM信号のデューティサイクルは,前記補償キャパシタ上の電圧に基づき,H 前記電流制御信号,および/または,前記電圧制御信号は,前記補償キャパシタ上の電圧を低減させ,これにより,前記PWM信号のデューティサイクルが低減することを特徴とする回路。 (5) 特許無効審判請求及び訂正請求ア被告は,特許庁に対し,平成26年5月15日,本件特許が無効であると主張して,特許無効審判請求をした。(乙28)イ特許庁は,平成27年9月15日,本件特許権の特許請求の範囲請求項1ないし9,11ないし14に係る発明について特許を無効とする旨の審 決の予告をした。(乙28)ウ原告は,平成27年12月28日,特許庁に対し,訂正請求書(甲27)を提出し,本件特許権の特許請求の範囲請求項1を訂正する旨請求した(以下,同訂正請求書による訂正を「本件訂正」といい,訂正後の本件発明を「本件訂正発明」という。)。 (6) 本件訂正発明の構成要件本件訂正発明を構成要件に分説すると,次のとおりである(本件訂正による訂正部分に下線部を付した。)。 A PWM信号のデューティサイクルを制御するため う。)。 (6) 本件訂正発明の構成要件本件訂正発明を構成要件に分説すると,次のとおりである(本件訂正による訂正部分に下線部を付した。)。 A PWM信号のデューティサイクルを制御するための回路であって,B 電池充電電流が所定の電池充電電流閾値を超過する量に比例した電流制御信号を生成する電池電流制御部と,C 電池電圧が所定の電池電圧閾値を超過する量に比例した電圧制御信号を生成する電池電圧制御部と,I 電源により生成される電流の総量が所定の閾値を超過する量に比例した電力制御信号を生成する電力制御部と,D’ 前記電流制御信号,前記電圧制御信号,および前記電力制御信号の振幅に基づいて,PWM信号を生成する比較器とを具備し,E 補償キャパシタ,および,該補償キャパシタを充電する電流源をさらに具備し,F’ 前記電流源と,前記電流制御信号と,前記電圧制御信号と,前記電力制御信号とは,共通のノードにおいて共に合計され,G 前記PWM信号のデューティサイクルは,前記補償キャパシタ上の電圧に基づき,H’ 前記電流制御信号,前記電圧制御信号,および前記電力制御信号は,前記補償キャパシタ上の電圧を低減させ,これにより,前記PWM信号のデューティサイクルが低減し, J 前記電流制御信号,前記電圧制御信号,および前記電力制御信号がいずれも生成されない場合に前記デューティサイクルが最大となることを特徴とする回路。 (7) 被告の製品被告は,別紙被告製品目録記載1及び2の製品(以下,それぞれ「被告製品1」「被告製品2」といい,これらをあわせて「被告各製品」という。)を輸入,販売している。(甲3,4)(8) 本件特許の優先日前の先行文献の存在本件特許の優先日(平成13年8月17日)の前に 1」「被告製品2」といい,これらをあわせて「被告各製品」という。)を輸入,販売している。(甲3,4)(8) 本件特許の優先日前の先行文献の存在本件特許の優先日(平成13年8月17日)の前には,以下の先行文献が存在する。 ア平成13年(2001年)4月に被告の親会社であるテキサス・インスツルメンツ・インコーポレイテッドによって作成された「bq24700,bq24701 NOTEBOOKPCBATTERYCHARGECONTROLLERANDSELECTORWITHDPM」のデータシート(乙2。以下,同データシートに記載された発明を「乙2発明」といい,同データシートを「乙2文献」という。)。 イ平成10年(1998年)4月に作成された「HighFrequencySwitchModeDualLi-IonBatteryChargersADP3801/ADP3802」のデータシート(乙3。以下,同データシートに記載された発明を「乙3発明」といい,同データシートを「乙3文献」という。)。 (9) 技術的範囲の属否被告各製品は,本件発明の構成要件Aを充足する。 3 争点(1) 被告各製品の構成及び動作(2) 被告各製品が本件発明の技術的範囲に属するか ア構成要件Bの充足性イ構成要件Cの充足性ウ構成要件Dの充足性エ構成要件Eの充足性オ構成要件Fの充足性カ構成要件Gの充足性キ構成要件Hの充足性(3) 間接侵害の成否(4) 本件特許が特許無効審判により無効にされるべきものかア乙2文献に基づく新規性又は進歩性の欠如の有無イ乙3文献に基づく新規性又は進歩性の欠如の有無ウ明確性要件違反及びサポート要件違反 ) 本件特許が特許無効審判により無効にされるべきものかア乙2文献に基づく新規性又は進歩性の欠如の有無イ乙3文献に基づく新規性又は進歩性の欠如の有無ウ明確性要件違反及びサポート要件違反の有無エ冒認出願の成否(5) 本件訂正による再抗弁の成否ア訂正要件違反の有無イ本件訂正により無効理由が解消するかウ被告各製品は本件訂正発明の技術的範囲に属するか(6) 損害発生の有無及びその額第3 争点に関する当事者の主張 1 争点(1)(被告各製品の構成及び動作)について〔原告の主張〕(1) 被告各製品の構成ア被告各製品の機能は,被告製品1である「bq24725A 1-4CellLi+ BatterySMBusChargeControllerwithN-ChannelPowerMOSFETSelectorandAdvancedCircuitP 【甲5、15頁図15の一部】 2’3’ rotection」のデータシート(甲5。以下「甲5文献」という。)の図15「bq24725Aの機能ブロックダイアグラム」に示されるとおりであり,その一部を次の図(以下,単に「図①」という。)に示す。なお,図①は被告製品1に関するものであるが,被告製品2は,本件発明との対比に必要な範囲では被告製品1と同様の構成を採用している。また,下図では,回路2又は回路3とこれに接続された整流用ダイオードを含めたものをそれぞれ回路2’,回路3’と示している(回路は緑色の枠で示されている。)。 ,下図では,回路2又は回路3とこれに接続された整流用ダイオードを含めたものをそれぞれ回路2’,回路3’と示している(回路は緑色の枠で示されている。)。 【図①:原告の主張する被告各製品の構成】イ被告の主張する被告各製品の構成については,g及びpを除いて争わない。構成gについて,被告が二つの抵抗(抵抗A)であると主張する部分は,10μAの電流源(橙枠1)である。構成pについて,被告がトランジスタ4であると主張する部分は(回路6内の素子)は,ダイオードである。 (2) 被告各製品の動作被告各製品の動作は,次の点を除き,後記被告の主張のとおりである。 アなぜ,電圧差0.92Vを減衰してバイアス電圧約800mVを足すと約900mVになるのか不明である。 イダイオードが,ダイオードORの機能を有するという前提に立っているが誤りである。 ウ 「ダイオード2及び3の電流がFBOノードで合計されることもない」とする点が誤りである。回路2に接続されたダイオード及び回路3に接続されたダイオードの双方からの電流が合計されている。 〔被告の主張〕被告各製品の構成及び動作(単体での動作及び第三者装置に部品として用いられた場合の第三者装置の動作例)は次のとおりである。 (1) 被告各製品の構成ア被告各製品は,プログラマブルなICであり,SMBusインターフェースのための端子と,HOSTからプログラムされた値を格納するためのレジスタを有する(SDA,SCL端子がSMBusインターフェースに使われる。)。 aSRP端子およびSRN端子を有し,b 増幅率20倍の増幅回路(回路1)を有する。SRP端子,SRN端子は,回路1に接続される。 c バイアス付差動回路(回路2 フェースに使われる。)。 aSRP端子およびSRN端子を有し,b 増幅率20倍の増幅回路(回路1)を有する。SRP端子,SRN端子は,回路1に接続される。 c バイアス付差動回路(回路2)を有する。回路1の出力が,回路2の第一の入力に接続される。 前記レジスタに値(デジタルデータ)が外部からプログラムされた場合にプログラムされた値に応じて電圧を出力する信号線が,回路2の第二の入力に接続される。 回路2は第一の入力と第二の入力の電圧の差を減衰して約800mV のバイアス電圧を足した電圧を出力する回路となっている。 d バイアス付差動回路(回路3)を有する。前記SRN端子は,抵抗による分圧回路を介して,回路3の第一の入力に接続される。 前記レジスタに値が外部からプログラムされた場合にプログラムされた値に応じて電圧を出力する信号線が第二の入力に接続される。 回路3は第一の入力と第二の入力の電圧の差を減衰し,約800mVのバイアス電圧を足した出力電圧を出力する回路となっている。 eNPNバイポーラトランジスタ(トランジスタ2)を有する。トランジスタ2は前記回路2の出力がベースに,一定電圧を発生させる回路からの信号線がコレクタに,エミッタがFBOノードに接続されている(ダイオード接続)。 fNPNバイポーラトランジスタ(トランジスタ3)を有する。前記回路3の出力がベースに,一定電圧を発生させる回路からの信号線がコレクタに,エミッタが前記FBOノードに接続されている(ダイオード接続)。 g 前記FBOノードの一点であるノードと,アース(接地電位の電圧線)との間に,並列に接続された二つの抵抗(抵抗A)を有する。その抵抗値はそれぞれ40kΩであり,抵抗Aの合成抵抗値は20kΩである。 h 正入力と負入力を備える るノードと,アース(接地電位の電圧線)との間に,並列に接続された二つの抵抗(抵抗A)を有する。その抵抗値はそれぞれ40kΩであり,抵抗Aの合成抵抗値は20kΩである。 h 正入力と負入力を備えるオペアンプに,その出力電圧を0Vから3Vの範囲に制限するリミッタ等の付属回路を備えた,リミッタ付オペアンプ回路(回路5)を有する。 i 前記FBOノードと前記回路5の負入力の間に接続された抵抗(抵抗3)を有する。 抵抗3は,複数の抵抗が直列接続された合成抵抗であり,その抵抗値は約4000kΩである。 j 前記回路5の正入力に接続された200mV の電圧源回路を有する。 kFBOノードとEAIノードの間に接続された抵抗1,キャパシタ1,EAIノードとEAOノードとの間に接続されたキャパシタ2,抵抗2,キャパシタ3を有する。 l 前記回路5の出力ノード(EAOノード)に第一の入力が接続され,ランプ回路に第二の入力が接続された比較回路(回路4)を有する。 m 増幅率20倍の増幅回路(回路6)を有する。ACP端子,ACN端子は,回路6に接続される。 n バイアス付差動回路(回路7)を有する。回路6の出力が,回路7の第一の入力に接続される。 o 前記レジスタに値(デジタルデータ)が外部からプログラムされた場合にプログラムされた値に応じて電圧を出力する信号線が,回路7の第二の入力に接続される。回路7は第一の入力と第二の入力の電圧の差を減衰して約800mVのバイアス電圧を足した電圧を出力する回路となっている。 pNPNバイポーラトランジスタ(トランジスタ4)を有する。トランジスタ4は前記回路7の出力がベースに,一定電圧を発生させる回路からの信号線がコレクタに,エミッタがFBOノードに接続されている(ダイオード接続)。 イ ンジスタ(トランジスタ4)を有する。トランジスタ4は前記回路7の出力がベースに,一定電圧を発生させる回路からの信号線がコレクタに,エミッタがFBOノードに接続されている(ダイオード接続)。 イ以上の被告各製品の構成を図示すると,次の図(以下,単に「図②」という。)のとおりとなる。 なお,増幅器(回路1),バイアス付差動回路(回路2,3),リミッタ付オペアンプ回路(回路5),比較回路(回路4)は,慣用的に同じ記号で書かれているが,それぞれの具体的構成は異なっている(図において回路は緑枠で示されている。)。また,ダイオードは,実際の回路では,トランジスタで構成されている(濃い青枠)。抵抗Aは,実際には二つの並列抵抗であるが,一つの合成抵抗として図示した(抵抗は黄色枠で示さ れている。)。他の抵抗,キャパシタ等の要素の図示も同様であり,実際のICの構成は複雑であるが,議論に必要な範囲で記載している。前記アのg「前記FBOノードの一点であるノード」が赤枠6,同kのEAOノードが赤枠7で示されている。なお,前記レジスタは初期値は0であり,第三者装置がスレーブであるICを動作させ,SMBusインターフェースを通し,HOSTからプログラムされた値を格納しなければ,参照電圧VREF_ICHG,VREF_VREG等は存在しない。 A 【図②:被告の主張する被告各製品の構成】(2) 被告各製品の動作の説明被告各製品は,プログラマブルなICであり,また,SMBusを介して,HOSTからの信号を受けて動作するスレーブであり,単独では動作しない。 (3) 被告各製品が第三者装置に部品として用いられた場合の第三者装置の動 ログラマブルなICであり,また,SMBusを介して,HOSTからの信号を受けて動作するスレーブであり,単独では動作しない。 (3) 被告各製品が第三者装置に部品として用いられた場合の第三者装置の動作例 被告各製品が,第三者装置に部品として用いられた場合,第三者装置内のIC部分の動作は,第三者装置の他の部分の存在・構成・動作に依存することになる。以下,第三者装置内部のIC部分について,動作の一例を説明する。 ア回路2,回路3が動作する場合には,その出力電圧のレンジは第三者装置の構成・動作に依存する。例えば,第三者装置により前記レジスタの値が10Vに対応する値に設定された場合,回路3の第二の入力には1Vが与えられる。一方,SRN端子の電圧が19.2Vの場合,回路3の第一の入力には抵抗により分圧された10分の1の電圧である1.92Vが与えられる。この場合,回路3は電圧差を減衰してバイアス電圧約800mVを足した約900mVの電圧を出力する。このように,回路2及び回路3が動作する場合には,その出力電圧は,入力電圧の差を減衰して,約800mVのバイアス電圧を足したものとなる。 イ回路2及び回路3の出力に接続されているのはバイポーラトランジスタであるが,機能としては,ダイオードORの機能を有する。ダイオードORの機能により,回路2及び回路3等の出力電圧のうち最も大きい電圧により,FBOノードの電位が設定される(ただし,約0.6Vの電圧降下がある)。例えば,上記の例で回路3が約900mVを出力している場合に,回路2が約850mVを出力していると,出力電圧の高い方,すなわち回路3の出力約900mVによりFBOノードの電位が約300mVに設定される。 ウダイオードORの機能において,ダイオード2及び3は,両端の電位差が を出力していると,出力電圧の高い方,すなわち回路3の出力約900mVによりFBOノードの電位が約300mVに設定される。 ウダイオードORの機能において,ダイオード2及び3は,両端の電位差が一定値(約600mV)を超えない限り動作しない。ダイオード2ないし3の両端の電位差は,回路2ないし回路3の出力電圧とFBOノードの電位の差により決まる。したがって,ダイオード2及び3は,回路2ないし回路3の出力電圧とFBOノードの電位との差が約600mV以上にな らないと動作せず,また,動作した場合の電流の大きさは,FBOノードの電位に依存するが,電流が流れた結果FBOノードの電位は回路2ないし回路3の出力電圧から約600mV低い電位となる。 FBOノードの電位は,回路2と回路3のうち出力電圧の高い方により決定される。そして,出力電圧の低い方の出力に接続されたダイオードは動作せず,ダイオードに電流が流れることもない。上記の例でいえば,回路2の出力に接続されたダイオード2の両端には850mV-300mV=550mVの電圧しかかからないので,ダイオード2は動作せず,当該ダイオードから電流は出力されない。 結局,ダイオード2及び3は,一方が電流を出力する場合,他方は電流を出力しないことになり,ダイオード2及び3の電流がFBOノードで合計されることもない。 エ回路2ないし回路3等の出力電圧のうち最も大きい電圧により設定されるFBOノードの電位とアース(接地電位の電圧線)の間の電圧によりオームの法則に従って生じる電流が,FBOノードから抵抗Aを介してアースに向かって流れる。この電流の値は,FBOノードの電位に依存するため,一定の値ということはありえない。 オなお,FBOノードの電位は,第三者装置の構成・動作次第であるが,その範 Aを介してアースに向かって流れる。この電流の値は,FBOノードの電位に依存するため,一定の値ということはありえない。 オなお,FBOノードの電位は,第三者装置の構成・動作次第であるが,その範囲は0Vから約400mV以内であり,負の電位にはならない。 よって,アースからFBOノードの方向に電流が流れることはない。抵抗Aに電流が流れる場合には,その向きは,FBOノードからアースの方向である。 カデューティサイクルの制御は次のように行われる。 FBOノードの電位が約200mVより小さい場合,リミッタ付オペアンプ回路(回路5)の動作により,リミッタ付オペアンプ回路(回路5)の出力ノード(EAOノード)の電圧Vは上昇する。このためデューティ サイクルは大きくなる。デューティサイクルの上昇は,抵抗1,抵抗2,抵抗3,キャパシタ1,キャパシタ2,キャパシタ3からなる補償ネットワークにより位相が調整される。EAOノードの電圧は3Vを超えることはできない。なぜなら,リミッタ付オペアンプ回路5の出力に付されたリミッタが働き,EAOノードの電圧を3Vに制限するからである。 一方,FBOノードの電位が約200mVより大きい場合,リミッタ付オペアンプ回路(回路5)の動作により,リミッタ付オペアンプ回路(回路5)の出力ノード(EAOノード)の電圧Vは下降する。このため,デューティサイクルは小さくなる。デューティサイクルの下降は,抵抗1,抵抗2,抵抗3,キャパシタ1,キャパシタ2,キャパシタ3からなる補償ネットワークにより位相が調整される。EAOノードの電圧は0Vを下回ることはできない。なぜなら,リミッタ付オペアンプ回路(回路5)がEAOノードの電圧を0Vに制限するからである。 このようにEAOノードの電圧Vはリミッタ付オペアンプ回路( ノードの電圧は0Vを下回ることはできない。なぜなら,リミッタ付オペアンプ回路(回路5)がEAOノードの電圧を0Vに制限するからである。 このようにEAOノードの電圧Vはリミッタ付オペアンプ回路(回路5)の出力に付された0~3Vのリミッタにより,0~3Vの範囲に制限される。 キなお,FBOノードの電位とリミッタ付オペアンプ回路(回路5)の負端子のノードの電位の大小に応じて,抵抗3にも電流が流れる。抵抗3の合成抵抗値(4000kΩ)が抵抗Aの合成抵抗値(20kΩ)に比べて非常に大きいために,抵抗3を流れる電流は抵抗Aを流れる電流値に比べて非常に小さく,抵抗3を流れる電流がFBOノードの電位に与える影響は無視できる。 ク回路7が動作する場合には,その出力電圧のレンジは第三者装置の構成・動作に依存する。 ケ回路7の出力に接続されているのはバイポーラトランジスタであるが,機能としては,ダイオードORの機能を有する。 2 争点(2)(被告各製品が本件発明の技術的範囲に属するか)について〔原告の主張〕(1) 争点(2)ア(構成要件Bの充足性)についてア被告各製品の回路2は,電池に対する充電電流と関連づけられた信号を,基準となる充電電流と関連づけられた値と比較して,当該基準値を超える量に比例する信号を生成する。被告各製品では,回路2の前段の回路1において,電池に対する充電電流を増幅しているところ,増幅してから閾値ないし基準値と比較することと,増幅前に閾値ないし基準値と比較することは,いずれも電池に対する充電電流が所定の閾値ないし基準値を超える量に比例する信号を生成するものである。 「閾値」とは「ある系に注目する反応をおこさせるとき必要な作用の大きさ・強度の最小値」を意味する。そして,被告各製品では, 所定の閾値ないし基準値を超える量に比例する信号を生成するものである。 「閾値」とは「ある系に注目する反応をおこさせるとき必要な作用の大きさ・強度の最小値」を意味する。そして,被告各製品では,回路2への入力信号が参照電圧VREF_ICHGより大きいと,回路2は,バイアス電圧約800mVよりも大きくなるように出力電圧を増加させ,参照電圧VREF_ICHGより小さいと,バイアス電圧約800mVよりも小さくなるように出力電圧を減少させる。 したがって,参照電圧VREF_ICHGは,回路2という系に,バイアス電圧よりも大きくなるように出力電圧を増加させるときに必要な入力信号の最小値であり,「閾値」に該当する。 以上から,被告各製品は構成要件Bを充足する。 イ被告の主張に対する反論(ア) 被告は回路2の出力が電圧であるから電流制御信号に当たらない旨の主張をしているが,回路2の出力信号は電圧であるものの,この回路に接続された整流用ダイオードを含めた回路2’の出力信号は電流であり,また,当該出力信号は,入力電圧の差に比例的な信号である(この点は回路3及びこれに接続された整流用ダイオードを含む回路3’につ いても同様である。)。 (イ) 被告は,「閾値」について,これを超えた場合に初めて電流制御信号(引き込み電流)が生成されることを意味すると主張しており,これは,電池充電電流が所定の電池充電電流閾値を超過するまでは,電池電流制御部の出力がゼロでなければならないと主張するものと思われるが,クレーム文言上,そのような限定は付されていない。本件明細書等に「電池充電電流が閾値Ich を超過すれば,増幅器28は,比例的な電流制御信号62を生成する。」(段落【0011】)と記載されているように,本件発明の構成要件Bは,電池充 れていない。本件明細書等に「電池充電電流が閾値Ich を超過すれば,増幅器28は,比例的な電流制御信号62を生成する。」(段落【0011】)と記載されているように,本件発明の構成要件Bは,電池充電電流が所定の電池充電電流閾値を超過した場合の動作,すなわち,超過量の増減につれて,出力される電流制御信号も増減するという制御動作を規定しているのであって,それ以上でも以下でもない。 本件発明は,電流制御及び電圧制御の両方を用いた補償キャパシタ上の電圧の制御によるデューティサイクルの制御技術であり,構成要件Bに係る電流制御については,電池電流制御部の出力が共通ノードに連結されていることにより,補償キャパシタ上の電圧を低減させるものである。電池充電電流の超過量の増加(低減)につれて,出力される電流制御信号も増加(低減)すれば,連結されている共通ノードを通じて補償キャパシタ上の電圧が低減(増加)することとなるから,構成要件Bを,被告主張のように限定的に解すべき理由はなく,クレーム文言に基づき,電池充電電流の超過量の増減につれて,出力される電流制御信号も増減するという動作を規定していると合理的に解される。 (ウ) 回路2からの出力が850mV,FBOノードにおける電圧が約300mVである場合を考えてみても,ダイオードは印加電圧が約0.4V近辺から電流を流し始めるのであるから(乙11),回路2に接続されたダイオードに対する印加電圧が約550mVである状態においては既 に電流が流れている。 よって,被告の仮定する条件下においても,FBOノード(赤枠6)において,回路2に接続されたダイオード及び回路3に接続されたダイオードの双方からの電流が合計されていることは,技術的に明らかである。 (2) 争点(2)イ(構成要件Cの充足性) ノード(赤枠6)において,回路2に接続されたダイオード及び回路3に接続されたダイオードの双方からの電流が合計されていることは,技術的に明らかである。 (2) 争点(2)イ(構成要件Cの充足性)について被告各製品の回路3は,電池電圧を参照電圧VREF_VREGと比較して,参照電圧VREF_VREGを超える電圧に比例する信号を出力する。 そして,前記(1)で主張したとおり,回路3に接続された整流用ダイオードを含めた回路3’の出力信号が電流であり,これが入力電圧の差に比例的な信号であることは明らかであり,また,回路3にかかる参照電圧VREF_VREGが「閾値」に当たる。 よって,被告各製品は構成要件Cを充足する。 (3) 争点(2)ウ(構成要件Dの充足性)について本件明細書等に基づいて構成要件Dをみると,「前記電流制御信号,および/または,前記電圧制御信号の振幅に基づいて,PWM信号を生成する比較器とを具備し,」における,「基づ(く)」とは,「広く解釈されるべきであり,かつ,“~の関数として”,または,“~に関連した”を意味する」(段落【0009】)ものであり,「振幅」とは,「Vcomp の値(振幅)は,(信号42-(信号62,信号64,および/または,信号66))の和である。Vcomp の値を下方へ移動させることにより,PWM信号のデューティサイクルは減少する。」(段落【0018】)との記載からすると,端的に「値」を意味することが明らかである。そして,本件明細書等(段落【0011】及び【0014】)によれば,補償キャパシタの充電電圧値に基づいてPWM信号が生成され,補償キャパシタの充電電圧値は,電流制御信号,および/または,電圧制御信号に基づいて増減するものであるから,結局,PWM 信号は,電流制御信号,およ 値に基づいてPWM信号が生成され,補償キャパシタの充電電圧値は,電流制御信号,および/または,電圧制御信号に基づいて増減するものであるから,結局,PWM 信号は,電流制御信号,および/または,電圧制御信号の値(振幅)に関連して生成される。 ところで,被告各製品においては,回路2’および/または回路3’が出力する制御信号が,比較器である回路4(図①緑枠4)に接続されたキャパシタ(図①橙枠2)をディスチャージするから,回路2’および/または回路3’が出力する制御信号の値に基づいてPWM信号が生成される。 よって,被告各製品は構成要件Dを充足する。 (4) 争点(2)エ(構成要件Eの充足性)についてア被告各製品は,10μAの電流源(図①橙枠1)を備え,当該電流源は,回路4に接続されたキャパシタを充電する。 イ被告は,原告の主張する「電流源」について,電流源ではなく並列に接続された二つの抵抗であるなどと主張するが,「電流源」とは仮想的な電源であり,具体的な素子は存在しないものであって,「電流源を具備する」とは,「電流源の機能を実現する回路要素が存在すること」を意味するものであることは,技術的な常識である。 上図で説明すると,被告各製品は,200mVの定電圧源(赤枠)が, オペアンプの正端子に接続され,負端子(緑枠)と出力端子との間にネガティブフィードバック回路が設けられている。オペアンプにネガティブフィードバック回路を設けると,オペアンプの二つの入力端子間の電位差は常に0Vとなる(これは「イマジナリショート」と呼ばれる)。したがって,負端子(緑枠)における電位は,200mVの定電圧源に接続された正端子における電位と常に等しくなるから,負端子(緑枠)に200mVの定電圧が常に与えられることにな ョート」と呼ばれる)。したがって,負端子(緑枠)における電位は,200mVの定電圧源に接続された正端子における電位と常に等しくなるから,負端子(緑枠)に200mVの定電圧が常に与えられることになる。そして,負端子(緑枠)は,直列に抵抗(橙枠)に接続されている。よって,被告各製品は,電圧源に直列に抵抗を接続した回路構成を有し,これは取りも直さず「電流源」を具備することと同義である。 ウそして,下図に示すようにアースに向かって電流が流れると,キャパシタ(橙枠2)のアース側の端子が負(-)に帯電し,回路4側の端子が正(+)に帯電する。 したがって,被告各製品においては,FBOノード(赤枠6)からアースの方向に電流が流れると,デューティ比が増加するようにキャパシタ(橙枠2)の回路4側の端子の電圧が増加するから,構成要件Eの「充電」を明らかに充足している。 +- すなわち,上図のように電流が流れると,レジスタ(橙枠3)を電流が流れることになり,電圧降下が生じる。レジスタ(橙枠3)のキャパシタ(橙枠2)側の端子はイマジナリショートにより約200mVであるから,レジスタ(橙枠3)の電圧降下分だけ低電位のFBOノード(赤枠6)の電位は,約200mVより小さくなる。この場合,デューティサイクルが大きくなるから,キャパシタ(橙枠2)の回路4側の端子の電圧が増加している。 エよって,被告各製品は構成要件Eを充足する。 (5) 争点(2)オ(構成要件Fの充足性)について被告各製品では,電流源と,電池電流制御部である回路2からの出力信号と,電池電圧制御部である回路3からの出力信号が,共通のノードにおいて足されている。 そして,回路2’及び回路3’の出力は電流であるから,前者の出力が「電流制 電流制御部である回路2からの出力信号と,電池電圧制御部である回路3からの出力信号が,共通のノードにおいて足されている。 そして,回路2’及び回路3’の出力は電流であるから,前者の出力が「電流制御信号」に該当し,後者の出力が「電圧制御信号」に該当する。 したがって,被告各製品は構成要件Fを充足する。 (6) 争点(2)カ(構成要件Gの充足性)について ア被告各製品では,回路4に接続されたキャパシタ上の電圧が低減すると,回路4に入力される電圧が低減するため,RAMP信号との比較により回路4から出力されるPWM信号のデューティ比が低減する。 したがって,被告各製品は構成要件Gを充足する。 イ被告は,被告各製品におけるPWM信号のデューティサイクルは,EAOにその出力が接続されたアンプの出力電圧に基づくものであり,キャパシタ(橙枠2)の電極間の電圧に基づくものでもないと主張する。 しかし,本件発明は「前記補償キャパシタ上の.. 電圧に基づき」(構成要件G),デューティサイクルを制御するものであって,補償キャパシタの電極間の電圧に基づくものではない。被告各製品では,EAOにアンプの出力が接続されており,EAOにおける電圧に基づき,デューティサイクルが制御される。そして,キャパシタ(橙枠2)の一方の端子もEAOに接続されており,EAOにおける電圧と同電圧となっている。つまり,キャパシタ(橙枠2)の一方の端子における電圧に基づいてデューティサイクルの制御が行われているのであり,「補償キャパシタ上の電圧」に基づいている。 このことは,本件明細書等記載の実施例において,比較器40の入力が,「補償キャパシタ(Ccomp)38上の電圧,および,発振器44により生成されるノコギリ波信号である。」(段落【0009】) このことは,本件明細書等記載の実施例において,比較器40の入力が,「補償キャパシタ(Ccomp)38上の電圧,および,発振器44により生成されるノコギリ波信号である。」(段落【0009】)とされていることとも整合する。 (7) 争点(2)キ(構成要件Hの充足性)についてア被告各製品では,電池電流制御部である回路2からの出力信号又は電池電圧制御部である回路3からの出力信号があると,共通のノードにおける電流が増し,共通のノードに接続されたレジスタを通る電流が流れる。その結果,補償キャパシタである回路4に接続されたキャパシタがディスチャージされ,当該キャパシタ上の電圧を低減させる。これにより,PWM 信号のデューティ比が低減する。 よって,被告各製品は構成要件Hを充足する。 イこの点に関する被告の主張は,要するに,本件発明の「電流制御信号」及び「電圧制御信号」はともに電流であるところ,回路2及び3の出力が電圧であるというものであるが,回路2’及び回路3’の出力は電流であるから,被告の上記主張は的外れである。 〔被告の主張〕(1) 争点(2)ア(構成要件Bの充足性)についてア本件発明の「電池充電電流閾値」及び「電池電圧閾値」の「閾値」については,本件明細書等の記載に従って解釈をすべきであるが,本件明細書等には次の各記載がある。 「電池充電電流が前記プログラムされた電流値Ich を超過するまで,電流制御信号62はゼロである。」(段落【0010】)「電池充電電流が閾値Ich を超過すれば,増幅器28は,比例的な電流制御信号62を生成する。」(段落【0011】)「前述した電流制御部の場合と同様に,信号64は,電池電圧が加算ブロックにより決定された閾値を超過する場合にはゼロではない。」(段落 ,比例的な電流制御信号62を生成する。」(段落【0011】)「前述した電流制御部の場合と同様に,信号64は,電池電圧が加算ブロックにより決定された閾値を超過する場合にはゼロではない。」(段落【0014】)これらを総合すれば,「閾値」とは,引き込み電流の発生する値,すなわち,閾値の前では引き込み電流が生じず,閾値を超えて初めて引込電流が生じる値を意味することが明らかである。 ちなみに,広辞苑の定義に従うと,閾値の前後で反応がおきていない状態と反応がおきている状態があることになるが,「当該値の前では引き込み電流が生じないが,当該値を超えて初めて引き込み電流が生じる閾値」は,反応をおこさせるとき必要な作用の大きさの最小値であり,広辞苑の意味にも合致する。 イこれに対し,原告が「電流制御信号」に当たると主張する回路2の出力信号は,そもそも電圧であって電流ではなく,引き込み性も有していないから,引き込み電流である「電流制御信号」には当たらない。 また,回路2において,参照電圧VREF_ICHGは,その名のとおり単なる参照電圧であって,回路2は入力電圧と参照電圧VREF_ICHGとの大小関係にかかわらず,正の電圧を出力しており,参照電圧VREF_ICHGは出力ゼロの状態と出力を生成する状態の境界を定める閾値ではない。 よって,参照電圧VREF_ICHGは,本件特許の「電池充電電流閾値」にあたらないし,電池充電電流が参照電圧VREF_ICHGを超過する量に比例した電流制御信号(引き込み電流)が生成されるわけではないから,「超過する量に比例した電流制御信号を生成する電池電流制御部」も存在しない。 ウこの点に関して原告は,参照電圧VREF_ICHGは,回路2という系に,バイアス電圧よりも大きくなるよう いから,「超過する量に比例した電流制御信号を生成する電池電流制御部」も存在しない。 ウこの点に関して原告は,参照電圧VREF_ICHGは,回路2という系に,バイアス電圧よりも大きくなるように出力電圧を増加させるときに 必要な入力信号の最小値であり,「閾値」に該当すると主張する。 しかし,回路2は第一の入力と第二の入力の電圧の差を減衰して約800mVのバイアス電圧を足した電圧を出力する回路であり,バイアス電圧付近でも,正の電圧値が連続的に変化するだけであり,回路2に反応がおきていない状態と反応がおきている状態が存在しないから,「閾値」ではない。 以上の点からも,VREF_ICHGは,本件特許の「電池充電電流閾値」にあたらない。 エまた,原告は,ダイオードの立ち上がりの特性について言及し,ダイオードドロップ電圧(0.6V)以下の電圧での電流が電流制御信号ないし電圧制御信号であるかのような主張もしている。 しかし,このような遷移電流は,誤差レベルの微小電流である。そして,「誤差レベル」の微少電流は制御において有意な大きさを持つ信号ではなく,何かを制御することはありえないから,遷移電流が「電流制御信号」にあたらないことは明らかである。そもそも,遷移電流は引き込み電流ではないのであり,この点からも「電流制御信号」にあたるとはいえないし,遷移電流は制御に用いることのできる有意な信号ですらなく,「閾値」は観念できないものである。 オよって,被告各製品は構成要件Bを充足しない。 (2) 争点(2)イ(構成要件Cの充足性)についてア構成要件Cの「電池電圧が所定の電池電圧閾値を超過する量に比例した電圧制御信号を生成する」とは,構成要件Bと同様に,電池電圧が所定の閾値を超過するまでは,電圧制御信号は生成され 性)についてア構成要件Cの「電池電圧が所定の電池電圧閾値を超過する量に比例した電圧制御信号を生成する」とは,構成要件Bと同様に,電池電圧が所定の閾値を超過するまでは,電圧制御信号は生成されず,閾値を超えた場合に初めて電圧制御信号(引き込み電流)が生成されることを意味する。 イ前記(1)で回路2について主張したのと同様に,原告が主張する回路3の出力信号は電圧であり,電流ではなく引き込み性も有していないから,回 路3の出力信号は「電圧制御信号」には当たらない。また,回路3は,入力電圧と参照電圧VREF_VREGとの大小関係にかかわらず,正の電圧が出力されるものであり,参照電圧VREF_VREGは,本件特許の「電池電圧閾値」にあたらないし,「超過する量に比例した電圧制御信号を生成する電池電圧制御部」も存在しない。 ウまた,前記(1)エで主張したのと同様の理由により,遷移電流が「電圧制御信号」にあたらないことは明らかである。 エよって,被告各製品は構成要件Cを充足しない。 (3) 争点(2)ウ(構成要件Dの充足性)についてア本件発明は,①制御信号が電圧ではなく電流であること(制御信号の電流性),②制御信号が電流であるから複数の制御信号の値の合計が可能なこと(合計性),③電流源からの電流により補償キャパシタを充電して基準電圧(最大レベルに充電した電圧)を作り,制御信号の引き込み電流により,その電圧を低減させること(引き込み性)を特徴とする発明である。 よって,電流制御信号及び電圧制御信号は,いずれも電流の信号であり,電流制御信号及び電圧制御信号の振幅は,電流値の波形についてのものである。 ところが,原告の主張における回路2’,回路3’の出力電流が,引き込み電流ではないことは原告も争っていないか であり,電流制御信号及び電圧制御信号の振幅は,電流値の波形についてのものである。 ところが,原告の主張における回路2’,回路3’の出力電流が,引き込み電流ではないことは原告も争っていないから,これらの出力電流は,引き込み電流である「電流制御信号」及び「電圧制御信号」に当たらない。 また,電流値の周期的な信号でもなく,電流値の波形の振幅は存在しない。 さらには,電流値の波形の振幅に基づいてPWM信号を生成する比較器も存在しない。 イこの点に関して原告は,「振幅」は「値」を意味すると主張するが,「振幅」の通常の意味からかけ離れており,解釈として成り立たないというべきである。すなわち,原告は,本件明細書等(段落【0018】)の「V compの値(振幅)」との記載を根拠として「振幅」が「値」を意味すると主張しているが,当該記載はVcompの電圧値が振動することを示すための付記であり,振幅が値であるという趣旨の記載ではない。また,同記載は補償キャパシタ上の電圧についての記載であり,電流制御信号や電圧制御信号の振幅についての記載ではない。そして,原告は,原告の主張する信号が振幅を観念しうる周期的な信号であることについて主張・立証をしていない。原告が争うのは「振幅」が「値」と解釈できるか否かというクレーム解釈論だけであるが,「振幅」が「値」と解釈できないことは明白である。 よって,被告各製品は構成要件Dを充足しない。 (4) 争点(2)エ(構成要件Eの充足性)についてア本件発明は,「電流源からの電流により補償キャパシタを充電して基準電圧(最大レベルに充電した電圧)を作り,制御信号の引き込み電流により,その電圧を低減させること(引き込み性)」を特徴の一つとする発明である。 引き込み電流による電圧の低減を実現 充電して基準電圧(最大レベルに充電した電圧)を作り,制御信号の引き込み電流により,その電圧を低減させること(引き込み性)」を特徴の一つとする発明である。 引き込み電流による電圧の低減を実現するためには,電圧の低減の対象となる基準電圧を作り出す必要がある。そこで,補償キャパシタと該補償キャパシタを基準電圧になるまで充電することができる電流源が必要となるのである。 そして,本件明細書等の記載も考慮すると,本件発明の「補償キャパシタ」は差動補償キャパシタであり,電流源によって常時充電されることにより,基準電圧を作成する機能を有し,電流源の充電電流と制御信号の引き込み電流の差に基づき動作することにより,基準電圧からずれた電圧を比較器に供給するキャパシタである。 これに対し,原告の主張するキャパシタ(図①の橙枠2)は,電流源によって常時充電されるものではなく,基準電圧を作成する機能を有しない。 また,後記のように原告が「電流源」と主張する部分からの充電電流はないし,原告が「制御信号」と主張する回路2,回路3の出力信号は電圧の信号であり,引き込み電流は存在しない。したがって,電流源の充電電流と制御信号の引き込み電流の差に基づく動作により,基準電圧からずれた電圧を出力するキャパシタは存在しない。 よって,原告の主張するキャパシタは,本件発明の「補償キャパシタ」に当たらない。 イ原告主張の「電流源」は,被告各製品においては受動的な素子である抵抗にすぎない。抵抗は,「原告が制御信号と主張する回路2,回路3の出力信号と独立に動作して,原告が主張するキャパシタが基準電圧になるまで,キャパシタに一定の電流を流し続ける主体」ではない。 よって,抵抗は,本件発明の「電流源」ではないし,原告主張のキャパシタを充電するものでもな 作して,原告が主張するキャパシタが基準電圧になるまで,キャパシタに一定の電流を流し続ける主体」ではない。 よって,抵抗は,本件発明の「電流源」ではないし,原告主張のキャパシタを充電するものでもない。 ウこの点に関して原告は,オペアンプのイマジナリショートを持ち出しているが,イマジナリショートは動作の話であり,被告各製品のリミッタ付オペアンプ回路(回路5)の二つの入力端子同士は接続されていない。もし二つの入力端子同士が接続されていたら,オペアンプは意味のある動作をしないことになる。 また,電圧源回路と抵抗Aとの間には,抵抗3などの要素があることからも,抵抗Aが200mVの電圧源と接続されていないことは明らかである。そして,抵抗Aが200mVの電圧源と接続されていると仮定してみても,直列に接続されているものではない。 さらに,原告の主張する「200mVの電圧源と抵抗Aの直列接続による電流源」を前提とした場合,電流は抵抗Aを通ってアースに流れるものしか想定できず,この「電流源」により「充電」されるキャパシタは存在せず,クレーム要件である「該補償キャパシタを充電する電流源」を満た さない。 エよって,被告各製品は構成要件Eを充足しない。 (5) 争点(2)オ(構成要件Fの充足性)についてア本件発明は,「制御信号が電流であるから複数の制御信号の値の合計が可能なこと(合計性)」を特徴の一つとする発明である。「共通のノードにおいて共に合計され」るという合計性を満たすためには,全ての制御信号が,電圧の信号ではなく,電流の信号である必要がある。 本件発明では,「補償キャパシタ」が「電流源」により最大レベルまで充電され,基準電圧が作られる。そして,「電流制御信号」,「電圧制御信号」の引き込み電流により,基準電 の信号である必要がある。 本件発明では,「補償キャパシタ」が「電流源」により最大レベルまで充電され,基準電圧が作られる。そして,「電流制御信号」,「電圧制御信号」の引き込み電流により,基準電圧を下げる動きが生ずる。「電流源」は,「補償キャパシタ」を充電し続け,「補償キャパシタ」は,差動で動作する。 この際に,基準電圧を押し下げようとする「電流制御信号」,「電圧制御信号」の引き込み電流と共に,基準電圧に戻そうとする「電流源」からの電流をも,共通のノードにおいて合計するというのが,本件発明の一つの特徴である。 イしかし,被告各製品は,以下の理由から上記要件を満たさない。 まず,被告各製品には本件発明の「電流源」がない。 原告は,図①の赤枠6のノードが合計されるノードであると主張しているが,回路2の出力,回路3の出力は,当該ノードに直接つながっておらず,共通のノードにおける合計の前提がない。 また,原告の主張する回路2の出力,回路3の出力信号は,それぞれ電圧であり,電圧は仮に同じノードに出力しても,合計することができない。 さらに,原告が指摘するノード(図①の赤枠6)については,原告が指摘する回路2の出力信号と回路3の出力信号の電圧の高い方が,ノードの電圧を決定するのであり,電圧が低い方の出力信号はノードの電圧に影響を 与えない。したがって,回路2および回路3の出力がノードで合計されることはない。 そして,本件発明の「電流源」は,「補償キャパシタ」を充電して基準電圧を作り出す機能を有しているため,制御信号とは独立に電流を生成する電流源である必要がある。構成要件Fの「合計」は,合計される三つの電流がそれぞれ独立のものであることを前提として,それらを合計するものである。しかし,原告が主張する「電 信号とは独立に電流を生成する電流源である必要がある。構成要件Fの「合計」は,合計される三つの電流がそれぞれ独立のものであることを前提として,それらを合計するものである。しかし,原告が主張する「電流源」からの電流は,回路2と回路3の出力のうち高い電圧により決定されたノード(図①の赤枠6)の電圧により抵抗を流れるものにすぎず,原告が制御信号と主張する信号と独立に生成される電流ではなく,この点からも「合計」の前提を欠く。 ウよって,被告各製品は,構成要件Fを充足しない。 (6) 争点(2)カ(構成要件Gの充足性)についてア本件発明は,「電流源からの電流により補償キャパシタを充電して基準電圧(最大レベルに充電した電圧)を作り,制御信号の引き込み電流により,その電圧を低減させること(引き込み性)」を特徴の一つとする発明である。 本件発明では,制御信号の引き込み電流により,補償キャパシタの電極間の電圧は,基準電圧から低下する。この補償キャパシタから出力される電圧に基づいて,PWM信号のデューティサイクルを決めている。 本件発明の「補償キャパシタ」は,電流源により充電されることで基準電圧を作り出す機能を有する必要があるため,最大レベルに充電時の補償キャパシタの電極間の電圧が,出力される基準電圧となる必要がある。 これに対し,原告の主張するキャパシタ(図①の橙枠2)は,本件発明の「補償キャパシタ」ではないことは前記(4)のとおりである。また,PWM信号のデューティサイクルは,EAOにその出力が接続されたアンプの出力電圧に基づくものであり,上記キャパシタの電極間の電圧に基づくも のでもない。 イ原告は,「補償キャパシタ上の電圧」の解釈について,本件明細書等の【図1】のCcomp38の陽極の電位に対応すると主 であり,上記キャパシタの電極間の電圧に基づくも のでもない。 イ原告は,「補償キャパシタ上の電圧」の解釈について,本件明細書等の【図1】のCcomp38の陽極の電位に対応すると主張する。 しかし,クレームは「補償キャパシタ上の電圧」としており,陽極だけの電位とはしていない。また,Ccomp38の陽極の電位は,「共通のノード」の電位にすぎない。「補償キャパシタ上の電圧」は,「共通のノード」とは別の要件であり,「共通のノード」の電位であるCcomp38の陽極の電位が「補償キャパシタ上の電圧」に当たるとするのは要件相互の関係を無視した解釈といわざるを得ない。 本件発明では,PWM信号のデューティサイクルを制御する補償キャパシタ上の電圧の上昇及び低減は充電及び放電によりなされており,「補償キャパシタ上の電圧」は充電電流と引き込み電流との差動補償キャパシタであるCcomp38の電極間の電圧と解釈されるべきである。 ウよって,被告各製品は構成要件Gを充足しない。 (7) 争点(2)キ(構成要件Hの充足性)について本件発明は,「電流源からの電流により補償キャパシタを充電して基準電圧(最大レベルに充電した電圧)を作り,制御信号の引き込み電流により,その電圧を低減させること(引き込み性)」を特徴の一つとする発明である。 かかる引き込み性により,電流制御信号及び電圧制御信号の引き込み電流が,補償キャパシタの電荷を引き抜くことにより,補償キャパシタ上の電圧(基準電圧)を「低減」させることが特徴となっている。 すなわち,構成要件Hの「前記電流制御信号,および/または,前記電圧制御信号は,前記補償キャパシタ上の電圧を低減させ」は,本件発明の特徴の「引き込み性」に応じたものであり,制御信号が引き込み電流の信号であることを示し の「前記電流制御信号,および/または,前記電圧制御信号は,前記補償キャパシタ上の電圧を低減させ」は,本件発明の特徴の「引き込み性」に応じたものであり,制御信号が引き込み電流の信号であることを示している。 これに対し,原告が制御信号であると主張する回路2及び回路3の出力信 号は,電圧の信号であり,引き込み電流の信号ではない。また,原告の主張する補償キャパシタ(図①の橙枠2)に当該信号は入力すらされていない。 よって,引き込み電流の信号が補償キャパシタの電極間の電圧を「低減」させているという関係にはない。 また,PWM信号のデューティサイクルは,EAOにその出力が接続されたアンプの出力電圧に基づくものであり,原告の主張する補償キャパシタの電極間の電圧が,「これにより」,PWM信号のデューティサイクルを低減させているという関係にもない。 そして,第三者装置の構成にかかわらず,被告各製品において,補償キャパシタの電圧の低減により,デューティサイクルの低減が達成される関係にはない。なぜなら,リミッタ付オペアンプ回路(回路5)が0~3Vに制限された範囲で電圧をEAOノードに出力するよう構成されており,仮に第三者装置の被告各製品(IC)内において比較回路(回路4)に入力される電圧,すなわちEAOノードの電圧を決定しデューティサイクルを決めているものがあるとすれば,それは0~3Vのリミッタ付オペアンプ回路(回路5)であり,第三者装置のIC部分内にあるキャパシタではないからである。 よって,被告各製品は構成要件Hを充足しない。 3 争点(3)(間接侵害の成否)について〔原告の主張〕仮に被告各製品のみでは本件発明の機能が実現されるものではないとして直接侵害が認められないとしても,被告各製品は,本件発明の「生産にのみ用いる )(間接侵害の成否)について〔原告の主張〕仮に被告各製品のみでは本件発明の機能が実現されるものではないとして直接侵害が認められないとしても,被告各製品は,本件発明の「生産にのみ用いる物」(特許法第101条1号)に該当するから,少なくとも間接侵害が成立する。 被告も,被告各製品を他の要素と繋いだ場合に,図①に示される機能が実現され,被告各製品が,同図に示される機能を有する物の生産に用いられる物であることは争っていない。被告は,同図が「特定の状態」の「一例」であるな どと主張するが,同図は「bq24725A(被告製品1)の機能ブロックダイアグラム」であって,被告各製品を他の要素と繋いだ場合に同図に示される機能が必ず実現されるのであるから,被告各製品について,社会通念上経済的,商業的ないしは実用的な他の機能・用途は存在しない。 したがって,被告各製品は,本件発明の「生産にのみ用いる物」に該当し,被告は,業として,被告各製品の販売等の行為をしているのであるから,これは,本件特許権の間接侵害を構成する。 〔被告の主張〕原告の主張には根拠がない。 被告各製品は,そもそも,他の要素と接続しても図①の機能を発揮しない。 被告各製品にあるのは抵抗Aであるし(乙4),被告各製品を他の要素と接続しても,被告各製品の抵抗Aは10μAの定電流源の機能を有しない(甲14)。 また,特許法101条1号の「その物の生産」とは,供給を受けた「発明の構成要件を充足しない物」を素材として「発明の構成要件のすべてを充足する物」を新たに作り出す行為を指すが,原告は,この要件を主張・立証していない。すなわち,原告は,「第三者装置が本件発明の技術的範囲に属すること」及び「被告各製品が第三者装置の生産にのみ使用する物であること」を主張・立証 行為を指すが,原告は,この要件を主張・立証していない。すなわち,原告は,「第三者装置が本件発明の技術的範囲に属すること」及び「被告各製品が第三者装置の生産にのみ使用する物であること」を主張・立証する必要があるが,原告は,第三者装置の日本における存在・構成・動作を示しておらず,上記について何ら主張・立証していない。 そして,間接侵害の「生産」の要件については,日本国内の生産を意味するが,原告は,「日本国内の生産」の要件について主張・立証をしていない。原告は,本件特許の侵害行為を誘発する蓋然性が極めて高いことは明らかであると主張するが,侵害行為を誘発する蓋然性がある旨の主張は,「日本国内の生産」の要件の主張・立証にはならない。 以上のように,原告は,間接侵害の要件事実の主張・立証をしていないから,原告の間接侵害の主張は主張自体失当である。 4 争点(4)ア(乙2文献に基づく新規性又は進歩性欠如の有無)について〔被告の主張〕(1) 本件特許は,平成13年(2001年)4月発行の乙2文献の記載に基づき,特許法29条1項3号又は同条2項の規定により特許を受けることができないものである。 (2) 乙2発明の構成乙2文献には次の構成を有する乙2発明が記載されている(以下,乙2発明の各構成をそれぞれ冒頭の記号に従って「構成a2」などという。)。 a2 PWM信号のデューティサイクルを制御するためのPWMコントローラを含むバッテリ充電管理のための回路であって,b2 抵抗R6で感知したバッテリ充電電流ICHが所定の定数α に達したとき電流の引き込みを開始し,前記所定の定数α を超過する量に比例した引き込み電流ISINK(CH)を生成するgmアンプと,c2 抵抗R7,R9で感知したバッテリ電圧VBAT が所定の定数β たとき電流の引き込みを開始し,前記所定の定数α を超過する量に比例した引き込み電流ISINK(CH)を生成するgmアンプと,c2 抵抗R7,R9で感知したバッテリ電圧VBAT が所定の定数β に達したとき電流の引き込みを開始し,前記所定の定数β を超過する量に比例した引き込み電流ISINK(BAT)を生成するgmアンプと,d2 前記引き込み電流ISINK(CH),および/または,前記引き込み電流ISINK(BAT)の電流が,後記100μAの定電流源によって内部的にバイアスアップされるCOMPピンに接続された後記キャパシタにより電圧に変換され,前記キャパシタにより作り出されるCOMPピンの電圧に基づいて前記PWM信号を生成するPWMコンパレータとを具備し,e2 前記COMPピンに接続され,前記PWM信号のデューティサイクルを決定するためのキャパシタ,および,該キャパシタを充電する100μAの定電流源と,f2 前記COMPピンにおいて,前記100μAの定電流源により供給される電流と,前記引き込み電流ISINK(CH),ISINK(BAT)とが共に合計され, g2 前記PWM信号のデューティサイクルは,前記COMPピンに接続された前記キャパシタ上の電圧に基づき,h2 前記引き込み電流ISINK(CH),および/または,前記引き込み電流ISINK(BAT)は,前記COMPピンを介して前記キャパシタ上の電圧を低減させ,これにより,前記PWM信号のデューティサイクルが低減することを特徴とする回路。 (3) 乙2発明と本件発明の対比ア乙2発明が構成要件A,E,Gを備えていることは当事者間に争いがないので,その余の構成要件について対比する。 イ構成要件Bと構成b2構成b2 のバッテリ充電電流ICH は,電 発明の対比ア乙2発明が構成要件A,E,Gを備えていることは当事者間に争いがないので,その余の構成要件について対比する。 イ構成要件Bと構成b2構成b2 のバッテリ充電電流ICH は,電池(バッテリ)を充電している電流であり,「電池充電電流」に相当する。 構成b2 の所定の定数α は,電池充電電流が所定の定数α を超えない場合には,電流制御信号(引き込み電流)は生成されず(ゼロである),その値を超えた場合に初めて電流制御信号(引き込み電流)が生成される閾値であり,「所定の電池充電電流閾値」に相当する。 構成b2 の引き込み電流ISINK (CH)は,「電流制御信号」に相当する。 構成b2 には,電池充電電流を感知する抵抗R6と,感知した電池充電電流に基づいて電流制御信号を生成するgmアンプがあり,「電池電流制御部」が開示されている。 ウ構成要件Cと構成c2構成c2 のバッテリ電圧VBAT は,電池(バッテリ)の両極間の電圧であり,「電池電圧」に相当する。 構成c2 の所定の定数β は,電池電圧が所定の定数β を超えない場合には,電圧制御信号(引き込み電流)は生成されず(ゼロである),その値を超えた場合に初めて電圧制御信号(引き込み電流)が生成される閾値 であり,「所定の電池電圧閾値」に相当する。 構成c2 の引き込み電流ISINK (BAT)は,「電圧制御信号」に相当する。 構成c2 には,電池電圧を感知する抵抗R7,R9と,感知された電池電圧に基づいて電圧制御信号を出力するgmアンプがあり,「電池電圧制御部」が開示されている。 エ構成要件Dと構成d2構成d2 のCOMPピンに接続されたキャパシタは,100μAの定電流源によって内部的にバイアスアップされたCOMPピンに接続されて引き込み 部」が開示されている。 エ構成要件Dと構成d2構成d2 のCOMPピンに接続されたキャパシタは,100μAの定電流源によって内部的にバイアスアップされたCOMPピンに接続されて引き込み電流を電圧に変換するキャパシタであり,電流源からの充電電流と引き込み電流との差に基づき動作し(差動),電流源による充電電流により作られたキャパシタ上の電圧が,引き込み電流により低減されることにより,PWM信号のデューティサイクルを決定するなどの機能を有しており,「補償キャパシタ」に相当する。 構成d2 のPWMコンパレータは,「比較器」に相当する。 以上より,乙2文献には,前記d2 における「COMPピンに接続されたキャパシタ」を「補償キャパシタ」,「PWMコンパレータ」を「比較器」として,前記電流制御信号,および/または,前記電圧制御信号の引き込み電流が,補償キャパシタにより電圧に変換され,補償キャパシタ上の電圧に基づいて前記PWM信号を生成する比較器とを具備することが開示されている。これは,本件特許の実施例として本件明細書等に記載された「前記電流制御信号,および/または,前記電圧制御信号の引き込み電流が,前記電流源からの充電電流との差に基づき動作する,補償キャパシタにより電圧に変換され,該補償キャパシタ上の電圧に基づいて,PWM信号を生成する比較器」の構成に相当し,構成要件Dの構成に含まれるものである。 オ構成要件Fと構成f2 構成f2 では,電流源の電流,電流制御信号及び電圧制御信号の引き込み電流がいずれもCOMPピンに出力されており,COMPピンのノードが,「共通のノード」にあたる。 電流源の電流,電流制御信号,電圧制御信号の引き込み電流の3者は,いずれも電流であるため,共通のノードに出力された電流が合計 ンに出力されており,COMPピンのノードが,「共通のノード」にあたる。 電流源の電流,電流制御信号,電圧制御信号の引き込み電流の3者は,いずれも電流であるため,共通のノードに出力された電流が合計されており,「共に合計され」に相当する。 カ構成要件Hと構成h2構成h2 の引き込み電流ISINK(CH),ISINK(BAT)は,それぞれ,「電流制御信号」,「電圧制御信号」に相当する。 構成h2 の前記キャパシタは,「前記補償キャパシタ」に相当する。 (4) 新規性欠如ア以上を勘案すれば,乙2発明は,本件発明が実質的に同一であるから,本件発明は新規性を欠く。 イ原告の主張に対する反論原告は,乙2発明は構成b2 及びc2 を有していないと主張するが失当である。乙2文献(14頁最終段)には次の記載がある。 「3つの制御ループのいずれか一つがプログラムされた制限に近づくと,gmアンプはCOMPピンから電流を分路し始める。COMPピンの電圧の上昇速度は,このピンから出る電流の合計が減少するために遅くなり,そのため,デューティサイクルの増加速度が小さくなる。このループがプログラムされた制限に達すると,gmアンプがバイアス電流全体(100μA)を分路し,デューティサイクルは固定されたままになる。 制御パラメータのいずれかがプログラムされた制限を超えようとした場合,gmアンプは,さらなる電流をCOMPピンから分路して,制限を超えようとするパラメータの超過が防止されるまでPWMデューティサイクルがさらに減少する。」 上記記載からすれば,乙2文献は,gmアンプの引き込み電流について,①バイアス電流を分路しない場合,②バイアス電流を部分的に分路する場合,③バイアス電流を全部(100μA)分路する場合,④バイアス電流 記記載からすれば,乙2文献は,gmアンプの引き込み電流について,①バイアス電流を分路しない場合,②バイアス電流を部分的に分路する場合,③バイアス電流を全部(100μA)分路する場合,④バイアス電流を超える電流を分路する場合の四つの場合を開示しており,①の場合はデューティサイクルが増加し,②の場合はデューティサイクルの増加速度が小さくなり,③の場合は,デューティサイクルが固定され,④の場合はデューティサイクルが減少する。 ここで,バッテリ充電電流に関して,上記のプログラムされた制限に近づき,電流を分路し始める場合の値をα,プログラムされた制限に達し,100μAの電流を分路する場合の値をrとしてわかりやすく例示すれば,次の図のようになる。 ICH [A]αrバッテリ充電電流引き込み電流ISINK(CH)[μA] 前記の①の場合はバッテリ充電電流(ICH)がα未満の場合,②の場合は バッテリ電流がαを超えr未満の場合,③の場合はバッテリ電流がrの場合,④の場合はバッテリ電流がrを超えた場合である。 上記のように,バッテリ充電電流がプログラムされた制限に近づいた値αは,引き込み電流が出始める所定の値α(1.587[V])であり,引き込み電流の出力ゼロと,ゼロでない値を分ける閾値である。なお,αの具体的な値については,乙2文献の記載から,いくつかの例を挙げることが可能である。 このように,乙2文献の上記記載は,「・・・プログラムされた制限に近づくと,gmアンプはCOMPピンから電流を分路し始める」と記載し,バッテリ充電電流がプログラムされた制限に近づいた値が,電流を分路し始める閾値であることを示している。 よって構成b2 及びc2 にかかる原告の主張は誤りであり,また,乙2発明が構成b2 及 し,バッテリ充電電流がプログラムされた制限に近づいた値が,電流を分路し始める閾値であることを示している。 よって構成b2 及びc2 にかかる原告の主張は誤りであり,また,乙2発明が構成b2 及びc2 を有していないことを前提とした構成d2,f2 及びh2 に係る主張も誤りである。 (5) 進歩性欠如仮に本件発明と乙2発明との間に相違点が存在するとしても,当業者が容易に想到し得る程度のものであり,本件発明は乙2文献の記載により,進歩性を欠く。 (6) 引用適格に関する原告の主張に対する反論被告各製品(IC製品)は,平成13年(2001年)4月にアナウンスされ,同年8月6日及び13日に外国に出荷されたものであるが,これについて原告も争っていない。 そして,製品自体が平成13年(2001年)8月6日及び13日に外国に出荷されていることから,出荷前に,そのデータシート(乙2)がインターネット上で公表され,一般に入手可能であったことが強く推認され,これを否定する事情はない。 原告は,乙2文献が,その改訂版(甲8)の作成後に公開された旨主張するが,改訂版(甲8)では,目立つように,冒頭に「SLUS452B-APRIL 2001-REVISEDNOVEMBER 2002」(訳:SLUS452B-2001年4月-2002年11月改訂)と記載されており,「RevisionA」というような単なるリビジョン記号の記載ではなく,「Revised」との動詞を用いて平成13年(2001年)4月版である乙2文献を「改訂した」ものであることが明確に告知されている。また,データシートの改訂記号も,最初の正式版の公開を示す「A」ではなく,次の公開を示す「B」が用いられている。すなわち,「SLUS452B」と記載することにより,す ることが明確に告知されている。また,データシートの改訂記号も,最初の正式版の公開を示す「A」ではなく,次の公開を示す「B」が用いられている。すなわち,「SLUS452B」と記載することにより,すでに「SLUS452A」(乙2文献)が公開されていることを示す記載となっている。 したがって,乙2文献が公開されていない内部資料であるという原告の主張は理由がない。 〔原告の主張〕(1) 引用適格被告は,乙2文献について「平成13年(2001年)4月発行」であると主張するが,乙2文献は被告の親会社が作成した資料であり,実際にいつどのように発行されたのかについては,乙2文献からは明らかではない。乙2文献が,実際に公衆の用に供されたのは,その改訂版(甲8)が作成された平成14年(2002年)11月以降であると思われる。 乙2文献には「SLUS452A-APRIL 2001」と記載されている一方,1頁目右下には「Copyright Ⓒ 2000」との記載もあり,乙2文献が2001年4月に作成・頒布されたのであれば,著作権が2000年に発生するはずもないから単なる誤記と考えられるが,このような誤記すら訂正されていないのであるから,公衆の用に供されることのなかった,被告親会社の内部資料にとどまるものであったものであると強く推測 される。 したがって,乙2文献は引用適格を欠くので,被告の乙2文献に基づく無効主張は失当である。 (2) 乙2発明の構成ア乙2発明が構成a2,e2 及びg2 を有していることは争わないが,その余は争う。構成b2 及びc2 は,乙2文献に開示されておらず,したがって,構成b2 及びc2 を前提とする構成d2,f2 及びh2 も,乙2文献に開示されていない。 イ構成b2 及びc2 について う。構成b2 及びc2 は,乙2文献に開示されておらず,したがって,構成b2 及びc2 を前提とする構成d2,f2 及びh2 も,乙2文献に開示されていない。 イ構成b2 及びc2 について乙2発明が備える電池充電電流ICH に対するgmアンプ(乙2文献の13頁・図3)は,予め設定された上限値が電池充電電流ICH を超過する量(或いは電池充電電流ICH が予め設定された上限値を下回る量)が大きいほど,COMPピンに対するバイアス電流(100μA)からの分路を減少させ,上限値が電池充電電流ICH を超過する量が小さいほど,COMPピンに対するバイアス電流(100μA)からの分路を増加させるバイアス電流制御部である。 被告は,あたかも乙2文献(14頁)に「引き込み電流ISINK(CH)を流し始める値」,「所定の定数α」なる値が開示されているかのように主張し,構成b2 が乙2文献に開示されているとするが,根拠がない。乙2文献(14頁)には,プログラムされた限度(上限値)を基準として,バイアス電流(100μA)からの分路を制御することが判然と記載されているのであり,その他の基準となり得る値は,一切開示されていない。 被告は,構成c2 についても同様の主張をしている。これについても,無根拠な独自の理解を述べるものというほかない。 仮に,「所定の定数α」及び「所定の定数β」を事後的に観念して,さらにこれらの定数を超過して流れ始める「引き込み電流ISINK(CH)」,「引 き込み電流ISINK(BAT)」がそれぞれ「電流制御信号」,「電圧制御信号」に該当するとしてみても,乙2文献(14頁)には,被告が主張するところの「引き込み電流」は,デューティサイクルを増加させるものであることが記載されている。そうすると, 流制御信号」,「電圧制御信号」に該当するとしてみても,乙2文献(14頁)には,被告が主張するところの「引き込み電流」は,デューティサイクルを増加させるものであることが記載されている。そうすると,「電流制御信号」および/または「電圧制御信号」によって,「前記PWM信号のデューティサイクルが低減する」という構成要件Hが充足されないこととなる。 (3) 乙2発明と本件発明の対比ア乙2発明が,本件発明の構成要件A,E及びGを備えていることについては,争わない。 イ被告は,構成要件Bと構成b2 を対比しているが,前記(2)のとおり,乙2発明は構成b2 を有していないから失当である。 乙2発明が備える電池充電電流ICH に対するgmアンプは,予め設定された上限値が電池充電電流ICH を超過する量(或いは電池充電電流ICH が予め設定された上限値を下回る量)が大きいほど減少し,小さいほど増加するように,COMPピンに対するバイアス電流(100μA)からの分路の量を制御するバイアス電流制御部であり,そもそも,「電池充電電流」が超過すべき「所定の電池充電電流閾値」が存在しない。乙2発明の「プログラムされた限度」は,電池充電電流を,それに向けて増加させていく目標値であり,上限値であって,それを超過しないように制御が行われるのに対し,本件発明においては,「所定の電池充電電流閾値」を「電池充電電流」が超過することを前提として,さらに,それを「超過する量に比例した電流制御信号」を生成する制御を行うものであり,技術的意義においても,根本的に相違する。 被告は,乙2発明においては「所定の定数α」なるものを観念でき,また,事後的に算出も可能であると主張する。しかしながら,仮に「所定の定数α」なるものを事後的に観念できたとしても,本件発明との対比 被告は,乙2発明においては「所定の定数α」なるものを観念でき,また,事後的に算出も可能であると主張する。しかしながら,仮に「所定の定数α」なるものを事後的に観念できたとしても,本件発明との対比にお いては,無意味である。すなわち,構成要件Bの「電池電流制御部」は,①電池充電電流が所定の電池充電電流閾値を超過する量を算出し,②当該算出結果に基づき,超過量に比例した電流制御信号を生成するのであるから,事後的に算出可能な定数αが存在したとしても,これは上記①の処理において超過量算出の基準となる「所定の電池充電電流閾値」に該当する余地はなく,構成要件Bの「電池電流制御部」は乙2文献に開示されていない。仮に,該当すると考えれば,当該定数αを基準とした超過量算出がなされていないことは明らかであるから,上記①の処理が存在せず,やはり,構成要件Bの「電池電流制御部」は乙2文献に開示されていない。 「制御」とは,広辞苑(第5版)によれば「機械や設備が目的通り作動するように操作すること。」を意味し,本件発明の「電池電流制御部」と乙2発明の「バイアス電流制御部」とは,上述のとおり,制御の目的が根本的に異なるのであるから,具体的な構成においても,乙2発明が本件発明と相違することは自明である。 ウ構成要件Cについても,被告は「所定の定数β」なるものを事後的に算出して,縷々述べているが,構成要件Bに関する主張と同様に的外れである。 エ構成要件D,F及びHは,構成要件Bの「電池電流制御部」が生成する「電流制御信号」及び構成要件Cの「電池電圧制御部」が生成する「電圧制御信号」を前提とするものであるが,乙2発明には,本件発明の「電池電流制御部」及び「電池電圧制御部」が存在せず,したがって,本件発明の「電流制御信号」及び「電圧制御信号」が存 部」が生成する「電圧制御信号」を前提とするものであるが,乙2発明には,本件発明の「電池電流制御部」及び「電池電圧制御部」が存在せず,したがって,本件発明の「電流制御信号」及び「電圧制御信号」が存在しない。 (4) 新規性欠如上記のとおり,乙2発明は本件発明と異なるものであるから,新規性欠如の無効理由がないことは明らかである。 (5) 進歩性欠如 被告は,乙2発明において「所定の定数α」「所定の定数β」なるものを観念でき,また,事後的に算出も可能であるなどと主張するが,「定数α」や「定数β」といった値を事後的に算出することは乙2文献に記載された範囲を超えている。 仮に,乙2文献に接した当業者が,事後的に算出することで「定数α」や「定数β」を容易に想到し得たとしても,これらの定数は本件発明との対比上何ら意味を有しない値にすぎないから,乙2文献に基づく進歩性欠如の無効理由が成り立つことはない。 5 争点(4)イ(乙3文献に基づく新規性又は進歩性欠如の有無)について〔被告の主張〕(1) 本件特許は,平成10年(1998年)発行の乙3文献の記載に基づき,特許法29条1項3号又は同条2項の規定により特許を受けることができないものである。 (2) 乙3発明の構成乙3文献には次の構成を有する乙3発明が記載されている(以下,乙3発明の各構成をそれぞれ冒頭の記号に従って「構成a3」などという。)。 a3 バッテリを充電する際にPWM信号のデューティサイクルを決定するための回路であって,b3 抵抗RCSで感知したバッテリ充電電流ICH が所定の定数δ に達したとき電流の引き込みを開始し,前記所定の定数δ を超過する量に比例した引き込み電流ISINK(CH)を生成するgmアンプ(GM2)と,c3 抵抗で感知 テリ充電電流ICH が所定の定数δ に達したとき電流の引き込みを開始し,前記所定の定数δ を超過する量に比例した引き込み電流ISINK(CH)を生成するgmアンプ(GM2)と,c3 抵抗で感知したバッテリ電圧VBAT が所定の定数ε に達したとき電流の引き込みを開始し,前記所定の定数ε を超過する量に比例した引き込み電流ISINK(BAT)を生成するgmアンプ(GM3)と,d3 前記引き込み電流ISINK(CH),および/または,前記引き込み電流ISINK(BAT)の電流は,後記100μAの定電流源の充電電流が出力される COMPノードに接続された後記COMPキャパシタにより電圧に変換され,前記COMPキャパシタにより作り出されるCOMPノードの電圧に基づいて前記PWM信号を生成する比較器とを具備し,e3 COMPノードに接続され,前記PWM信号のデューティサイクルを決定するためのCOMPキャパシタ,および,該COMPキャパシタを充電する100μAの定電流源をさらに具備し,f3 前記100μAの定電流源により供給される電流と,前記引き込み電流ISINK(CH),ISINK(BAT)とは,前記COMPノードにおいて,共に合計され,g3 前記PWM信号のデューティサイクルは,前記COMPキャパシタ上の電圧に基づき,h3 前記引き込み電流ISINK(CH),ISINK(BAT)は,前記COMPノードを介して前記COMPキャパシタ上の電圧を低減させ,これにより,前記PWM信号のデューティサイクルが低減することを特徴とする回路。 (3) 乙3発明と本件発明の対比ア乙3発明が構成要件A,E及びGを備えていることは当事者間に争いがないので,その余の構成要件について対比する。 イ構成要件Bと構成b3構成 る回路。 (3) 乙3発明と本件発明の対比ア乙3発明が構成要件A,E及びGを備えていることは当事者間に争いがないので,その余の構成要件について対比する。 イ構成要件Bと構成b3構成b3 のバッテリ充電電流ICH は,電池(バッテリ)を充電している電流であり,「電池充電電流」に相当する。 構成b3 の所定の定数δ は,電池充電電流が所定の定数δ を超えない場合には,電流制御信号(引き込み電流)は生成されず(ゼロである),その値を超えた場合に初めて電流制御信号(引き込み電流)が生成される閾値であり,「所定の電池充電電流閾値」に相当する。 構成b3 の引き込み電流ISINK(CH)は,「電流制御信号」に相当する。 構成b3 には,電池充電電流を感知する抵抗RCSと,感知した電池充電 電流に基づいて電流制御信号を生成するgmアンプがあり,「電池電流制御部」が開示されている。 ウ構成要件Cと構成c3構成c3 の所定の定数ε は,電池電圧が所定の定数ε を超えない場合には,電圧制御信号(引き込み電流)は生成されず(ゼロである),その値を超えた場合に初めて電圧制御信号(引き込み電流)が生成される閾値であり,「所定の電池電圧閾値」に相当する。 構成c3 の引き込み電流ISINK(BAT)は,「電流制御信号」に相当する。 構成c3 には,電池電圧を感知する抵抗と,感知された電池電圧に基づいて電圧制御信号を出力するgmアンプがあり,「電池電圧制御部」が開示されている。 エ構成要件Dと構成d3構成d3 のCOMPノードに接続されたCOMPキャパシタは,100μAの定電流源の充電電流が流れ込むCOMPノードに接続されて前記引き込み電流を電圧に変換するキャパシタであり,電流源からの充電電流と引き込み電流との差に基 に接続されたCOMPキャパシタは,100μAの定電流源の充電電流が流れ込むCOMPノードに接続されて前記引き込み電流を電圧に変換するキャパシタであり,電流源からの充電電流と引き込み電流との差に基づき動作し(差動),電流源による充電電流により作られたキャパシタ上の電圧が,引き込み電流により低減されることにより,PWM信号のデューティサイクルを決定するなどの機能を有しており,「補償キャパシタ」に相当する。 以上より,乙3文献には,前記d3 における「COMPキャパシタ」を「補償キャパシタ」として,前記電流制御信号,および/または,前記電圧制御信号の引き込み電流が,補償キャパシタにより電圧に変換され,補償キャパシタ上の電圧に基づいて前記PWM信号を生成する比較器とを具備することが開示されている。これは,本件特許の実施例として本件明細書等に記載された「前記電流制御信号,および/または,前記電圧制御信号の引き込み電流が,前記電流源からの充電電流との差に基づき動作する, 補償キャパシタにより電圧に変換され,該補償キャパシタ上の電圧に基づいて,PWM信号を生成する比較器」の構成に相当し,構成要件Dの構成に含まれるものである。 オ構成要件Fと構成f3構成f3 では,電流源の電流,電流制御信号及び電圧制御信号の引き込み電流は,いずれもCOMPノードに出力されており,COMPノードは,「共通のノード」にあたる。 電流源の電流,電流制御信号,電圧制御信号の引き込み電流の3者は,いずれも電流であるため,共通のノードに出力された電流が合計されるのであり,「共に合計され」に相当する。 カ構成要件Hと構成h3構成h3 の引き込み電流ISINK(CH),ISINK(BAT)は,それぞれ,「電流制御信号」,「電圧制御信号」に相当する。 るのであり,「共に合計され」に相当する。 カ構成要件Hと構成h3構成h3 の引き込み電流ISINK(CH),ISINK(BAT)は,それぞれ,「電流制御信号」,「電圧制御信号」に相当する。 構成h3 のCOMPキャパシタは,「前記補償キャパシタ」に相当する。 (4) 新規性欠如ア以上を勘案すれば,乙3発明は,本件発明と実質的に同一であるから,本件発明は新規性を欠く。 イ原告の主張に対する反論(ア) 原告は,乙3発明のISETピンにプログラムされる「外部電流制御電圧」による目標値tが上限値である旨の主張をしているが,たとえば,引き込み電流が200μAになる場合があり,乙3文献(図29)で示されたGM2の入力レンジ(-12.5mVから+12.5mV)に対応した引き込み電流ISINK(CH)の値が0μA~200μAであることからしても,バッテリ充電電流ICH が,目標値tを超えることが想定されているのは明らかである。また,GM2は電流源からの電流(100μA)を超えた電流を引き込むことにより,初めてISET電位とGM2の入 力電位(GM1の出力電位)が等しくなるようにサーボ制御が働くものであり,バッテリ充電電流がISETの設定値により定まる目標値tを超えた場合こそ目標値に向けてバッテリ充電電流を下げるサーボ制御の必要性が高まるのである。これらからすると,原告の主張が,乙3文献に記載されたバッテリ充電電流の制御回路の動作の理解として誤りであることは明らかである。 また,原告は,目標値tは上限であり,次の図の水色の部分にgmアンプであるGM2の動作範囲が及ばないと主張している。 ICH [A]バッテリ充電電流引き込み電流ISINK(CH)[μA]δtしかし,原告の主張によっ 色の部分にgmアンプであるGM2の動作範囲が及ばないと主張している。 ICH [A]バッテリ充電電流引き込み電流ISINK(CH)[μA]δtしかし,原告の主張によっても,閾値δが,引き込み電流の生成が始まる値(引き込み電流が0から0でない値に変わる閾値)であることに変わりはなく,また,バッテリ充電電流が閾値δを超過する量に比例した引き込み電流を出力することも変わりはないから,原告の主張は,閾値δが本件特許の「電池充電電流閾値」にあたることを否定する理由にはならない。 (イ) 原告は,乙3文献には,「電池充電電流が所定の電池充電電流閾値を超過する量」の「算出」が記載されていないと主張するが,当該量を明示的な値として算出することは,本件特許のクレームにも本件明細書等にも記載されていない。 (5) 進歩性欠如仮に本件発明と乙3発明との間に相違点が存在するとしても,当業者が容易に想到し得る程度のものであり,本件発明は乙3文献の記載により,進歩性を欠く。 〔原告の主張〕(1) 乙3発明の構成ア乙3発明が構成a3,e3 及びg3 を有していることは争わないが,その余は争う。構成b3 及びc3 は,乙3文献に開示されておらず,したがって,構成b3 及びc3 を前提とする構成d3,f3 及びh3 も,乙3文献に開示されていない。構成f3 については,乙3文献には相反する記載があり,この意味においても,明らかに開示されていない。 イ構成b3,c3 について乙3文献には,バッテリ充電電流について,ISETピンを介して外部電流制御電圧を目標値として予めプログラムし,バッテリ充電電流が当該目標値と等しくなるように,アンプGM2が自動制御されることが記載されている。さらに,乙3文献 流について,ISETピンを介して外部電流制御電圧を目標値として予めプログラムし,バッテリ充電電流が当該目標値と等しくなるように,アンプGM2が自動制御されることが記載されている。さらに,乙3文献(図20)には,ISETピンがアンプGM2の正端子に接続され,バッテリ充電電流が負端子に入力されることが示されている。したがって,乙3発明が備えるバッテリ充電電流に対するアンプGM2は,予め設定された目標値を上限値として,当該上限値がバッテリ充電電流を超過する量(或いはバッテリ充電電流が当該上限値を下回る量)に比例して,出力信号を生成する出力信号制御部であると理解するのが正しい。 被告は,あたかも乙3文献に「ISETの設定により決まる定数δ(前記引き込み開始条件に対応する電流値)」なる値が開示されているかのような主張をするが,ISETピンのプログラムにより設定されるのは,アンプGM2の正端子に入力される「外部電流制御電圧」であって,被告が主張する「定数δ」なる値ではない。 被告は,構成c3 についても同様の主張をしているが,これについても,独自の理解を述べるものというほかない。 ウ構成f3 について被告は,構成f3 が乙3文献に開示されていると主張するが,次の乙3文献(7頁右欄)の記載に明らかに反する(下線付加)。 「GM2の出力は,電圧ループアンプGM3の出力とアナログORが取られる。いずれか一方のアンプのみが,任意の所与の時点での充電ループを制御する。バッテリー電圧がその最終電圧に近づくと,GM3は平衡状態になる。この状態が生ずると,充電電流が減少してGM2を非平衡状態にし,フィードバックループの制御は自然にGM3に移る。」このように,GM2及びGM3のうちの「いずれか一方のアンプのみ」が制御に寄与する の状態が生ずると,充電電流が減少してGM2を非平衡状態にし,フィードバックループの制御は自然にGM3に移る。」このように,GM2及びGM3のうちの「いずれか一方のアンプのみ」が制御に寄与するのであって,GM2の出力信号とGM3の出力信号が合計されていることの記載はない。 (2) 乙3発明と本件発明の対比ア乙3発明が構成要件A,E及びGを備えていることについては,争わない。 イ被告は,構成要件Bと構成b3 を対比しているが,前記(1)のとおり,乙3発明は構成b3 を有していないから失当である。 乙3発明が備えるバッテリ充電電流に対するアンプGM2は,予め設定された目標値を上限値として,当該上限値がバッテリ充電電流を超過する 量(あるいはバッテリ充電電流が当該上限値を下回る量)に比例して,出力信号を生成する出力信号制御部であり,そもそも,「電池充電電流」が超過すべき「所定の電池充電電流閾値」が存在しない。乙3発明のISETピンにプログラムされる「外部電流制御電圧」は,バッテリ充電電流を,それに向けて増加させていく目標値であり,上限値であって,それを超過しないように制御が行われるのに対し,本件発明においては,「所定の電池充電電流閾値」を「電池充電電流」が超過することを前提として,さらに,それを「超過する量に比例した電流制御信号」を生成する制御を行うものであり,技術的意義においても,根本的に相違する。 被告は,乙3発明においては「所定の定数δ」なるものを観念でき,また,事後的に算出も可能であると主張する。 しかし,仮に「所定の定数δ」なるものを事後的に観念できたとしても,本件発明との対比においては,無意味である。すなわち,構成要件Bの「電池電流制御部」は,①電池充電電流が所定の電池充電電流閾値を超過する ,仮に「所定の定数δ」なるものを事後的に観念できたとしても,本件発明との対比においては,無意味である。すなわち,構成要件Bの「電池電流制御部」は,①電池充電電流が所定の電池充電電流閾値を超過する量を算出し,②当該算出結果に基づき,超過量に比例した電流制御信号を生成するのであるから,事後的に算出可能な定数δが存在したとしても,これは上記①の処理において超過量算出の基準となる「所定の電池充電電流閾値」に該当する余地はない。仮に,該当すると考えれば,当該定数δを基準とした超過量算出がなされていないことは明らかであるから,上記①の処理が存在せず,やはり,構成要件Bの「電池電流制御部」は乙3文献に開示されていない。 また,「制御」とは,「機械や設備が目的通り作動するように操作すること」を意味するところ,本件発明の「電池電流制御部」と乙3発明の「出力信号制御部(GM2)」とは,制御の目的が根本的に異なるのであるから,具体的な構成においても,乙3発明が本件発明と相違することは自明である。 ウ構成要件Cについても,被告は,「所定の定数ε」なるものを事後的に算出して縷々主張するが,構成要件Bに関する主張と同様に的外れである。 エ構成要件D,F及びGに関する被告の主張は,構成要件Bの「電池電流制御部」が生成する「電流制御信号」及び構成要件Cの「電池電圧制御部」が生成する「電圧制御信号」が存在することを前提とするものであるが,乙3発明には,本件発明の「電池電流制御部」及び「電池電圧制御部」が存在せず,したがって,本件発明の「電流制御信号」及び「電圧制御信号」が存在しないのであるから,これらの構成要件を充足しないことは明らかである。 オ構成要件Fについては,乙3文献には「合計」の開示がなく,むしろそれに反する記載があることは前 及び「電圧制御信号」が存在しないのであるから,これらの構成要件を充足しないことは明らかである。 オ構成要件Fについては,乙3文献には「合計」の開示がなく,むしろそれに反する記載があることは前記(1)のとおりであるから,乙3発明は,構成要件Fを充足していない。 被告は,乙3発明では,出力電流が共通のノードに出力されており,「合計」されていると主張するが,そうであれば,被告各製品も,出力電流が共通のノードに出力されており,「合計」(構成要件F)を充足する。 (3) 新規性欠如上記のとおり,乙3発明は本件発明と異なるものであるから,新規性欠如の無効理由がないことは明らかである。 (4) 進歩性欠如被告は,乙3文献には,本件発明が実質的に開示されており,仮に差異が存在するとしても,当業者が容易に想到し得る程度のものであるなどと主張している。 ここで,「実質的に」と述べているように,被告自身,事後的に算出して求めた「定数δ」や「定数ε」などが乙3文献に開示されている旨の主張は,乙3文献に記載された範囲を超えていることを十分に理解しているものと思われる。そして,乙3文献に接した当業者が仮に事後的な計算により「定数 δ」や「定数ε」に容易に想到し得たとしても,結局,これらの定数は本件発明との対比上何ら意味を有しない値にすぎないから,乙3文献に基づく進歩性欠如の無効理由は存在しない。 6 争点(4)ウ(明確性要件違反及びサポート要件違反の有無)について〔被告の主張〕(1) 明確性要件違反について本件発明の構成要件Dには,「前記電流制御信号,および/または,前記電圧制御信号の振幅に基づいて,PWM信号を生成する比較器」との記載がある。 「振幅」とは,専門的には,正弦波について言われることが多いが,少な 要件Dには,「前記電流制御信号,および/または,前記電圧制御信号の振幅に基づいて,PWM信号を生成する比較器」との記載がある。 「振幅」とは,専門的には,正弦波について言われることが多いが,少なくとも振動があることは,「振幅」の必須の要件である。なお,広辞苑(第6版)は,「振幅」について,「振動現象で,振動の中心位置から測った変位の最大値。ふりはば」であるとする。また,デジタル大辞泉によれば,「振幅」とは,一般に振動の中心から最大変位までの距離を意味する。 しかしながら,電流制御信号,電圧制御信号は,引き込み電流の信号であり,引き込み電流の「振幅」の意味するところが不明である。また,電流制御信号,電圧制御信号の振動の中心位置および変位の最大値が何であるかが不明であるとともに,電流制御信号,電圧制御信号の電流値の「振幅」に基づいてどのようにPWM信号が生成されるのかも不明である。 また,この点に関し,本件明細書等をみても,補償キャパシタの充電電圧値に基づいてPWM信号を生成する点が記載されているのみで,電流制御信号,電圧制御信号の電流値の「振幅」に基づいてPWM信号を生成することなどは記載されていないから,本件明細書等の記載を参酌しても,その構成は明確性を欠くといわざるを得ない。 (2) サポート要件違反について構成要件Dには,「前記電流制御信号,および/ または,前記電圧制御信 号の振幅」とあるが,本件明細書等にはCcomp38の充電電圧値に基づいてPWM信号を生成する点が記載されているのみで,比較器に「電流制御信号」,「電圧制御信号」が入力されるという記載はないし,また,PWM信号が「電流制御信号」,「電圧制御信号」の振幅に基づいて生成されるという記載もない。 したがって,サポート要件違反に該当する。 「電圧制御信号」が入力されるという記載はないし,また,PWM信号が「電流制御信号」,「電圧制御信号」の振幅に基づいて生成されるという記載もない。 したがって,サポート要件違反に該当する。 〔原告の主張〕被告は,構成要件Dの「振幅」の意味するところが不明であり,また,サポート要件違反であると主張しているが,本件明細書等の記載によれば,構成要件Dの意義は明らかであり,被告の主張は誤りである。 まず,構成要件Dは,「前記電流制御信号,および/または,前記電圧制御信号の振幅に基づいて,PWM信号を生成する比較器とを具備し,」であり,「基づ(く)」とは,本件明細書等によれば,「広く解釈されるべきであり,かつ,“~の関数として”,または,“~に関連した”を意味する」ものである(段落【0009】)。 そして,被告が主張するように,本件明細書等には,補償キャパシタの充電電圧値に基づいてPWM信号を生成する点が記載されおり,補償キャパシタCcomp の充電電圧値は,電流制御信号に基づいて増減し(段落【0011】),また,電圧制御信号に基づいて増減するものである(段落【0014】)。したがって,PWM信号が,電流制御信号,および/または,電圧制御信号に関連して生成されることは,本件明細書等に記載されている。 次いで,「振幅」についても,本件明細書等における「Vcomp の値(振幅)は,(信号42-(信号62,信号64,および/または,信号66))の和である。Vcomp の値を下方へ移動させることにより,PWM信号のデューティサイクルは減少する。」(段落【0018】。下線は原告による。)との記載からすれば,端的に「値」を意味することが明らかである。このことは,本件 明細書等の原文である国際公開第2003/017413号(甲11) 段落【0018】。下線は原告による。)との記載からすれば,端的に「値」を意味することが明らかである。このことは,本件 明細書等の原文である国際公開第2003/017413号(甲11)において,上記下線箇所の記載が “thevalue (amplitude)” とされ(7頁),「大きさ」,すなわち値を意味する amplitude が用いられていることからも明らかである。 以上のとおり,構成要件Dは,本件明細書等にサポートされており,また,「前記電流制御信号,および/または,前記電圧制御信号の値に関連して,PWM信号を生成する比較器とを具備し,」を意味することが明らかであって不明な点はないから,本件特許について,明確性要件違反ないしサポート要件違反はない。 7 争点(4)エ(冒認出願の成否)について〔原告の主張〕(1) 本件特許の優先権の基礎となる米国仮出願及び米国特許出願に係る発明に関する全ての権利(米国以外の国における特許を受ける権利を含む)は,国際特許出願(PCT出願)がなされる以前に,発明者である甲ⅰ氏(以下,「発明者」という。)より原告の親会社であるケイマン法人に譲渡された(以下「第1譲渡」という。)。 その後,平成14年(2002年)8月16日に,米国特許出願の出願人であるケイマン法人から,発明者に対して,米国を除く全てのWTO加盟国(日本を含む。)における,当該米国出願に基づく優先権を主張する権利を含む全ての権利が譲渡された(以下,当該譲渡を「第2譲渡」といい,第2譲渡を証するものとして原告が提出した発明譲渡証〔甲18〕を「第2譲渡証」という。)。 そして,発明者及び原告は,同月19日,当該米国特許出願に基づく優先権を主張した国際特許出願を共同で行った(甲19)。このとき,原告は,発明 た発明譲渡証〔甲18〕を「第2譲渡証」という。)。 そして,発明者及び原告は,同月19日,当該米国特許出願に基づく優先権を主張した国際特許出願を共同で行った(甲19)。このとき,原告は,発明者より特許を受ける権利の持分の移転を受けていなかったものの,原告と発明者は,平成16年(2004年)1月30日,発明者が保有する全て の特許及び特許出願(日本の本件特許についての出願を含む全ての国における権利)について,原告に譲渡する旨合意した(以下,当該譲渡を「第3譲渡」といい,第3譲渡を証するものとして原告が提出した譲渡証書〔甲20〕を「第3譲渡証」という。)。 (2) したがって,本件特許について特許査定がされた平成18年(2006年)11月7日当時,原告は,本件特許について特許を受ける権利を正当に有していたものであるから,いわゆる冒認出願に該当しないことは明らかである。 (3) 被告の主張に対する反論ア被告は,第2譲渡証(甲18)について,発明者のサインなどがないことを指摘して証明力がないなどと主張するが,発明者のサインや日付の記載は譲渡の効力発生要件ではない。本件発明に関する一連の米国出願については,発明者から原告(ないしケイマン法人)に対する譲渡証書が提出されているのは,米国特許法の下では発明者が出願人となることから,発明者以外の者に承継するためには,譲渡証書の提出が必要となるためにすぎない。 そして,本件において,発明者と原告ないしケイマン法人との間で,本件発明を含む一連の発明の帰属について争いが生じていないこと及びケイマンが条約加盟国ではないことからケイマン法人が国際特許出願の出願人となり得ないことからすれば,本件発明について国際出願をするにあたり,発明者と原告との間で,本件発明について特許を受け こと及びケイマンが条約加盟国ではないことからケイマン法人が国際特許出願の出願人となり得ないことからすれば,本件発明について国際出願をするにあたり,発明者と原告との間で,本件発明について特許を受ける権利が承継された上で,国際特許出願(甲19)がされたと見るのが合理的である。 イ被告は,第3譲渡証(甲20)について,別の米国特許出願に関するものであると主張するが,当該出願は,本件発明を包含するものであるから,第3譲渡証は,本件発明の譲渡を証するものである。 ウ被告は,冒認出願の瑕疵は治癒されないと主張しており,同主張は,冒認出願の基準時が出願時であることを前提とするものと解されるが,特許 法は,冒認出願に関する拒絶理由として「その特許出願人がその発明について特許を受ける権利を有していないとき」(49条7号),無効理由として「その特許がその発明について特許を受ける権利を有しない者の特許出願についてされたとき」(123条1項6号)とだけ規定され,判断時が出願時である旨の規定をしていない。そして,特許を受ける権利の帰属につき瑕疵のある者が出願して特許権を得た場合に,正当権利者が追認したような場合や,同一の特許を受ける権利にもとづいて先願,後願の二個の出願がされた場合でも,いずれかに正当承継人としての地位の承継があったときは無効審判は請求の理由を失うと解すべきである。 被告は,特許法34条4項の観点から,出願後の特許を受ける権利の譲渡により瑕疵が治癒されることはない旨の主張もしているが,同条項は冒認出願について規定したものではなく,特許を受ける権利の譲渡人の名義で特許出願され,当該譲渡人から譲受人に特許を受ける権利が承継された場合において,届出を効力要件としたものであり,譲受人名義で出願されている本件事案に適用される なく,特許を受ける権利の譲渡人の名義で特許出願され,当該譲渡人から譲受人に特許を受ける権利が承継された場合において,届出を効力要件としたものであり,譲受人名義で出願されている本件事案に適用されるものではない。 〔被告の主張〕(1) 譲渡についてア原告は,本件発明の特許を受ける権利は次の三つの譲渡経路を経て原告が取得したと主張している。 第1譲渡発明者 → ケイマン法人第2譲渡ケイマン法人 → 発明者第3譲渡発明者 → 原告しかし,以下に述べるとおり,第2譲渡及び第3譲渡は存在しない。 イ第2譲渡についてそもそも,第2譲渡は,ケイマン法人から発明者に戻すという不自然極まりないものである。 そして,原告は,第2譲渡を証するものとして第2譲渡証(甲18)を提出しているが,これには証拠力がない。 すなわち,PCT出願の出願人は,米国については発明者,その他の指定国については原告となっている(甲19)にもかかわらず,第2譲渡証は,発明者に対し,米国における権利を除いた権利を譲渡する内容となっており,出願人と整合していない。また,第2譲渡証には,発明者による日付及びサインの記入がされておらず,発明者の意思が何ら表示されていないし,ケイマン法人のCEOとされる人物の署名が手書きされているが,同人による日付の書き込みはない。また,1ドルという対価も不自然である。第1譲渡の譲渡書類(乙21),第3譲渡に関する証拠とされる第3譲渡証(甲20)では,ノータリーパブリックによる譲渡の確認の記載があるのにもかかわらず,第2譲渡については,ノータリーパブリックによる譲渡の確認の記載がない。第2譲渡証では,整理番号が「O2M 01. 04」と記載されているが,これは,ほかの出願書類の整理番号とは異な にもかかわらず,第2譲渡については,ノータリーパブリックによる譲渡の確認の記載がない。第2譲渡証では,整理番号が「O2M 01. 04」と記載されているが,これは,ほかの出願書類の整理番号とは異なるもので不自然である。 これらを総合すると,第2譲渡証(甲18)には成立の真正が認められず,また,記載内容も信用できないものであるから証拠力がない。 ウ第3譲渡について原告は,第3譲渡に関する証拠であるとして第3譲渡証(甲20)を提出している。しかし,第3譲渡証の「本発明」の名称は,「PowerManagementCircuit」(電力管理回路)であり,平成16年(2004年)1月15日付けの米国特許出願10/757871に関するものであって,本件特許に関するものではない。 仮に第2譲渡が存在したとしても,米国特許出願10/328466に関する譲渡書類(乙22)によれば,原告が第3譲渡がされたと主張する平成16年(2004年)1月30日の前である平成15年(2003年) 5月29日に,本件発明にかかる全ての権利が,発明者からケイマン法人に譲渡されている。 したがって,第3譲渡は存在しえない。 (2) 冒認出願の治癒についてア原告は,PCT出願の出願日である平成14年(2002年)8月19日においては,米国以外における特許を受ける権利は発明者が,米国における特許を受ける権利はケイマン法人が有していたと主張しているのであるから,原告の主張によっても,PCT出願時においては冒認出願であったことになる。 原告は,本件特許について特許査定がなされた平成18年11月7日には,原告は本件発明についての権利を正当に有していたと主張するが,仮に当該主張が認められたとしても,冒認出願の無効理由が解消されることはない。 許について特許査定がなされた平成18年11月7日には,原告は本件発明についての権利を正当に有していたと主張するが,仮に当該主張が認められたとしても,冒認出願の無効理由が解消されることはない。 イ原告は,出願時の冒認出願の治癒について準拠法を主張していないが,仮に日本法が適用されるとしても,出願時(すなわち,本件の場合,特許法184条の3第1項により出願日とみなされるPCT出願日)における無権利者の冒認出願においては,後で無権利者が権利を譲り受けたとしても,瑕疵は治癒されないと解するべきである。 第三者によって冒認出願が行なわれてしまった場合の権利者の救済については平成23年改正特許法による手当てが行なわれたが,冒認出願をした無権利者自身を救済しなければならないという議論はない上,平成23年改正特許法は平成24年4月1日以降の出願に適用されるものであるから,本件特許には適用がない。 ウ特許法34条4項は,「特許出願後における特許を受ける権利の承継は,相続その他の一般承継の場合を除き,特許庁長官に届け出なければ,その効力を生じない。」と定めており,特許出願後における特許を受ける権利 の特定承継については,特許庁長官への届出が効力発生要件である。 この規定は,特許庁長官への届出を要件とする強行法規であるから,当事者間の譲渡契約の準拠法いかんにかかわらず,特許出願後における日本の特許を受ける権利について適用されると考えられる。 そして,本件では,特許出願後における特許を受ける権利の特定承継について,特許庁長官への届出は行なわれていない。したがって,第3譲渡による特定承継の効力は発生しない。このように,特許法34条4項の観点からも,第3譲渡により,冒認出願の瑕疵は治癒されない。 8 争点(5)ア(訂正要 の届出は行なわれていない。したがって,第3譲渡による特定承継の効力は発生しない。このように,特許法34条4項の観点からも,第3譲渡により,冒認出願の瑕疵は治癒されない。 8 争点(5)ア(訂正要件違反の有無)について〔被告の主張〕原告は,本件訂正により構成要件Iを追加しようとするが,構成要件Iは,電力制御信号を生成する電力制御部の構成に関するものである。 そして,電力制御部の構成について,本件特許請求の範囲請求項2には,電流の総量が「アクティブシステムと電池充電器により必要とされる」ことが明記されている。さらに,本件明細書等(段落【0015】)によれば,電力制御信号を生成する電力制御部は,アクティブシステムへの電力供給と電池充電のための電力供給の総量を監視し,アクティブシステムへの電力供給を増やす場合には,電池充電電流を低減させ,アクティブシステムへの電力供給を優先するものであり,アクティブシステムへの電力供給及びアクティブシステムへの電力供給が電池充電電流に優先することを前提とするものである。本件明細書等にはアクティブシステム及び電池充電電流との関連を持たない「電源により生成される電流の総量」や「電力制御部」に係る記載はない。 したがって,「アクティブシステムと電池充電器により必要とされる」との限定を有しない構成要件Iは,本件明細書等に開示された技術事項ではない。 よって,本件訂正は,新規な事項を付加したものであるとともに,特許請求の範囲の減縮に該当せず,特許請求の範囲の実質拡張・変更に該当する不適法 なものである。 〔原告の主張〕被告は,構成要件Iの「電源により生成される電流の総量」は,アクティブシステム(携帯システム)と電池充電器(電池充電回路)と関連をもたなければ,新規事項の追加等に当たると主張す 〔原告の主張〕被告は,構成要件Iの「電源により生成される電流の総量」は,アクティブシステム(携帯システム)と電池充電器(電池充電回路)と関連をもたなければ,新規事項の追加等に当たると主張する。 しかし,本件明細書等(段落【0016】)には,「アダプター(電源)電流の総量は,システム電流(すなわち,電源14に接続された携帯用システム(図示せず)に供給される電流)と,電池充電回路12により制御される充電電流(バック変換器18のデューティサイクルにより分割される充電電流の算定基準)とを含む」と記載されているから,被告の指摘は当たらない。 したがって,本件訂正は,新規事項の追加等には当たらず,適法である。 9 争点(5)イ(本件訂正により無効理由が解消するか)について〔被告の主張〕(1) 乙2文献による新規性又は進歩性欠如について原告は,本件訂正によって,①電力制御信号に関する事項及び②構成要件Jを加えているが,これらの事項は乙2文献に開示されている。 したがって,本件訂正発明は,乙2文献に基づき新規性及び進歩性を欠く。 (2) 乙3文献に基づく進歩性欠如乙3発明は,引き込み電流の信号が生成されない場合に,電流源がキャパシタをデューティサイクルが最大になるまで充電する点は,構成要件Jと同じである。 もっとも,乙3発明は,電力制御を用いないという点が,本件訂正発明と相違する。 そして,乙3発明に周知技術である電力制御を適用する場合に,乙3発明の電流制御信号,電圧制御信号は,引き込み電流の信号であるから,引き込み電流の信号を電力制御信号として用いて,電流制御信号,電圧制御信号の 場合と同様の処理とするのは,ごく自然なことであり,当業者ならずとも容易に想到することである。 したがって,乙3発明に周知技術を 力制御信号として用いて,電流制御信号,電圧制御信号の 場合と同様の処理とするのは,ごく自然なことであり,当業者ならずとも容易に想到することである。 したがって,乙3発明に周知技術を組み合わせることによって,本件訂正発明を容易に想到することができる。 よって,本件訂正発明は進歩性を欠く。 〔原告の主張〕(1) 乙2文献に基づく新規性又は進歩性欠如について本件訂正発明は,「前記電流制御信号,前記電圧制御信号,および前記電力制御信号がいずれも生成されない場合に前記デューティサイクルが最大となることを特徴とする回路。」(構成要件J)を特徴とするところ,乙2発明は,引き込み電流がデューティサイクルを増加させるものであり,これらがバイアス電流全体を分路させる大きさのときにデューティサイクルが固定される,すなわち,最大となるものであるのに対し,本件訂正発明は,電流制御信号,電圧制御信号,電力制御信号がいずれも生成されない場合にデューティサイクルが最大となるものであるから,本件訂正発明と乙2発明は相違する。 そして,乙2文献には,構成要件Jにかかる新規かつ特徴的な技術思想の記載はおろか示唆等が一切認められないから,乙2文献に基づく進歩性欠如の主張には理由がない。 (2) 乙3文献に基づく進歩性欠如について乙3文献には,そもそも「電力制御部」(構成要件I)の開示がないから,本件訂正発明の進歩性欠如の根拠となり得ない。 争点(5)ウ(被告各製品は本件訂正発明の技術的範囲に属するか)について〔原告の主張〕(1)被告各製品と本件訂正発明の対比本件訂正により訂正された構成要件について検討する。 ア構成要件Iについて被告各製品の回路6は,電源からの入力電流の総量と関連づけられた信号を基 製品と本件訂正発明の対比本件訂正により訂正された構成要件について検討する。 ア構成要件Iについて被告各製品の回路6は,電源からの入力電流の総量と関連づけられた信号を基準値と比較して,当該基準値を超える量に比例する信号を生成する。 被告各製品では,回路6の前段の回路5において,電源からの入力電流を増幅しているところ,増幅してから閾値ないし基準値と比較することと,増幅前に閾値ないし基準値と比較することは,いずれも電源からの入力電流の総量が所定の閾値ないし基準値を超える量に比例する信号を生成することにおいて違いがない。 よって,被告各製品は構成要件Iを充足する。 イ構成要件D’について被告各製品の回路4には,回路2’からの出力信号,回路3’からの出力信号及び回路6からの出力信号が与えられ,回路4は,PWM信号を生成する。 よって,被告各製品は構成要件D’を充足する。 ウ構成要件F’ について被告各製品では,電流源と,電池電流制御部である回路2’からの出力信号と,電池電圧制御部である回路3’からの出力信号と,電力制御部である回路6からの出力信号が共通のノードに出力されている。 よって,被告各製品は構成要件F’を充足する。 エ構成要件H’ について被告各製品において,電池電流制御部である回路2’からの出力信号,電池電圧制御部である回路3’からの出力信号及び電力制御部である回路6からの出力信号は,共通のノードに接続されたレジスタを通る電流を生成する。その結果,補償キャパシタである回路4に接続されたキャパシタがディスチャージされ,当該キャパシタ上の電圧を低減させる。これにより,PWM信号のデューティ比が低減する。 よって,被告各製品は構成要件H’を充足する。 オ構成要件Jにつ シタがディスチャージされ,当該キャパシタ上の電圧を低減させる。これにより,PWM信号のデューティ比が低減する。 よって,被告各製品は構成要件H’を充足する。 オ構成要件Jについて被告各製品では,回路2’からの出力信号,回路3’からの出力信号及び回路6からの出力信号がいずれも生成されない場合にキャパシタが電流源により最大値まで充電されるから,デューティサイクルが最大となる。 よって,被告各製品は,訂正発明の構成要件Jを充足する。 (2) 間接侵害仮に被告各製品のみでは本件訂正発明の機能が実現されるものではないとして直接侵害が認められないとしても,他の要素と繋いだ場合に本件訂正発明の構成を有することは明らかであり,社会通念上経済的,商業的ないし実用的な他の機能・用途は存在しない。 よって,被告各製品は,本件訂正発明の「生産にのみ用いる物」(特許法101条1号)に該当する。 〔被告の主張〕(1) 被告各製品と本件訂正発明の対比について被告各製品はプログラマブルなICであって単独では動作しないから,構成要件を全て充足しないことが明らかである。 原告の主張は全て否認ないし争うが,訂正の対象となっていない構成要件についての非充足論は,前記2で主張したとおりである。 そして,訂正の対象となっている構成要件も,以下のとおり,すべて非充足である。 ア構成要件Iについて被告各製品において,「電源により生成される電流の総量が所定の閾値を超過する量に比例した電力制御信号を生成する電力制御部」が存在しないことは明らかである。 回路7(図②の緑枠7。原告の主張における回路6から整流用ダイオー ドを除いた部分)の出力信号はそもそも電圧であり,電流ではなく引き込み性も有しておらず,「電力制御信号 らかである。 回路7(図②の緑枠7。原告の主張における回路6から整流用ダイオー ドを除いた部分)の出力信号はそもそも電圧であり,電流ではなく引き込み性も有しておらず,「電力制御信号」(引き込み電流)ではない。さらに,回路7は第一の入力と第二の入力の電圧の差を減衰して約800mVのバイアス電圧を足した電圧を出力する回路であり,バイアス電圧付近でも,正の電圧値が連続的に変化するだけであり,回路7に反応がおきていない状態と反応がおきている状態が存在しないから,「閾値」が存在しない。 また,トランジスタ4(図②の濃い青枠4。原告の主張における回路6の整流用ダイオード)の出力は回路7の入力電圧の差の比例信号ではないから,「比例した電力制御信号」にはあたらない。また,ダイオードORにより,トランジスタ4の出力には出力電流が生成される状態を定める閾値は存在しない。加えて,ダイオードORの出力は一つの電圧であるから,トランジスタ4の出力が電力制御信号にあたらない。 「電力制御信号」及び「電力制御部」などその他の非充足論については,構成要件B及びCについての非充足論と同様である。 したがって,被告各製品は構成要件Iを充足しない。 イ構成要件D’について被告各製品には,「電源により生成される電流の総量が所定の閾値を超過する量に比例した電力制御信号」がないことは前記のとおりである。(電力制御信号が不存在であるために構成要件を充足しないことは,構成要件F’,H’についても同様である。)また,構成要件Dが「および/または」となっていたのに対し,構成要件D’は「および」となっているので,PWM信号の生成が三つの制御信号の全ての振幅に同時に基づいていることが必須の要件となるが,第三者装置ではダイオードORの機能からそのようなことはあ 対し,構成要件D’は「および」となっているので,PWM信号の生成が三つの制御信号の全ての振幅に同時に基づいていることが必須の要件となるが,第三者装置ではダイオードORの機能からそのようなことはありえず,この点も充足しない。 その他の非充足論は,構成要件Dについての非充足論と同様である。 したがって,被告各製品は構成要件D’を充足しない。 ウ構成要件F’について「電力制御信号」以外の構成についての非充足論は,構成要件Fについての非充足論と同様である。そして,回路7の出力に接続されているのはバイポーラトランジスタであるが,機能としては,ダイオードORの機能を有するから,「合計」の要件を欠く。 したがって,被告各製品は構成要件F’を充足しない。 エ構成要件H’について構成要件Hが「および/または」となっていたのに対し,構成要件H’は「および」となっているので,三つの制御信号のいずれもが,補償キャパシタ上の電圧を低減させなければならないが,第三者装置ではダイオードORの機能からそのようなことはありえず,この点でも充足しない。 その他の非充足論は,構成要件Hについての非充足論と同様である。 したがって,被告各製品は構成要件H’を充足しない。 オ構成要件Jについて回路2及び3の出力は電圧であるから,「電流制御信号」,「電圧制御信号」にあたらない。同様に,回路7の出力が電圧であり,この点で「電力制御信号」にあたらない。 そして,回路2,3及び7は,約800mVのバイアス電圧があるので,出力電圧の信号が生成されない場合がない。また,回路2,3及び7に接続されたトランジスタ2,3及び4(NPNバイポーラトランジスタである)に関しては,ダイオードORの機能により選択された一つの電圧がFBOノードに出力されており 合がない。また,回路2,3及び7に接続されたトランジスタ2,3及び4(NPNバイポーラトランジスタである)に関しては,ダイオードORの機能により選択された一つの電圧がFBOノードに出力されており,この点からも「いずれも生成されない場合」が存在しない。 したがって,被告各製品は構成要件Jを充足しない。 (2) 間接侵害について前記3〔被告の主張〕のとおり,原告は,間接侵害の要件事実の主張・立証をしていないから,原告の間接侵害の主張は,主張自体失当である。 11 争点(6)(損害発生の有無及びその額)について〔原告の主張〕被告は,業として被告各製品を輸入・販売等して本件特許権を侵害しており,原告は,被告に対し,本件特許権侵害を理由とする民法709条に基づく損害賠償請求権を有する。 そして,被告が,本件特許権の設定登録日である平成18年12月15日から本件訴え提起の日である平成25年11月26日までに販売した被告各製品に対する特許法102条3項に基づく実施料相当額は1億円を下らない。 〔被告の主張〕否認ないし争う。 第4 当裁判所の判断 1 本件発明の内容(1) 本件明細書等には次の記載がある。 ア技術分野・「本発明は,一つ以上の電池(batteries)を充電するための電池充電回路に関するものである。より詳細には,本発明は,電流制御および電圧制御の両方を用いて,充電サイクルを調整しかつ正確な充電および充電終了をもたらす電圧モード電池充電器に関するものである。」(段落【0001】)イ課題を解決するための手段・「一特徴において,本発明は,PWM信号のデューティサイクルを調整するための回路を提供する。前記回路は,電池充電電流が所定の電池充電電流閾値を超過する量に比例した電流制御信号を生 するための手段・「一特徴において,本発明は,PWM信号のデューティサイクルを調整するための回路を提供する。前記回路は,電池充電電流が所定の電池充電電流閾値を超過する量に比例した電流制御信号を生成する電池電流制 御部を含む。前記回路は,電池電圧が所定の電池電圧閾値を超過する量に比例した電圧制御信号を生成する電池電圧制御部をさらに含む。補償キャパシタ,および,該補償キャパシタを充電する電流源(currentsource) が,さらに設けられる。比較器は,前記補償キャパシタ上の電圧の振幅に基づいて,PWM信号を生成する。前記電流源と,前記電流制御信号と,前記電圧制御信号とは,共通のノードにおいて共に合計され,この結果,前記電流制御信号,および/または,前記電圧制御信号は,前記補償キャパシタ上の電圧を低減させ,これにより,前記PWM信号のデューティサイクルが低減する。」(段落【0003】)・「他の特徴において,本発明は,電池充電電流が所定の電池充電電流閾値を超過する量に比例した電流制御信号を生成する電流制御回路と,電池電圧が所定の電池電圧閾値を超過する量に対する電圧制御信号を生成する電圧制御回路と,前記電池充電電流をDC電源から生成するDC/DC変換回路と,前記DC/DC変換回路のデューティサイクルを制御するためのPWM信号を生成するPWM信号生成回路とを含む電池充電回路を提供する。前記PWM回路は,比較器と,発振器と,補償キャパシタと,該補償キャパシタを充電する電流源とを具備する。前記比較器は,前記補償キャパシタ上の電圧の振幅に基づいて,PWM信号を生成する。前記電流源と,前記電流制御信号と,前記電圧制御信号とは,共通のノードにおいて共に合計され,この結果,前記電流制御信号,および/または,前記電圧制御信号は,前 振幅に基づいて,PWM信号を生成する。前記電流源と,前記電流制御信号と,前記電圧制御信号とは,共通のノードにおいて共に合計され,この結果,前記電流制御信号,および/または,前記電圧制御信号は,前記補償キャパシタ上の電圧を低減させ,これにより,前記PWM信号のデューティサイクルが低減し,これにより,前記DC/DC変換回路により供給される電流が低減する。」(段落【0004】)ウ発明を実施するための最良の形態・「本明細書において用いられる“ ~ に基づく” とは,広く解釈される べきであり,かつ,“ ~ の関数として” ,または,“ ~ に関連した”を意味する。」(段落【0009】)・「電流制御部,電圧制御部,または,電力制御部のいずれによっても何の信号も生成されない場合には,電流源がCcompを最大レベルまで充電し,これにより,PWM は,最大デューティサイクルにあり,かつ,バック変換器は最大充電電流および電圧を電池に供給する。」(段落【0009】)・「〈電流制御〉電流制御部(回路)は,感知増幅器26と,相互コンダクタンス増幅器28とを含む。感知増幅器26は,感知インピーダンスRsch24を横切る電池充電電流を監視し,かつ,電池充電電流に比例した信号を生成する。相互コンダクタンス増幅器28は,感知増幅器26の出力を受け取り,かつ,この信号を,プログラムされた(望ましい)電池電流信号Ichと比較する。概略的に,相互コンダクタンス増幅器28の入力は電圧信号であり,かつ,出力は比例的な電流信号である。相互コンダクタンス増幅器の出力は電流制御信号62であり,該電流制御信号62は,電池充電電流が前記プログラムされたIchを超過する量に比例する。電池充電電流が前記プログラムされた電流値Ichを超過するまで, クタンス増幅器の出力は電流制御信号62であり,該電流制御信号62は,電池充電電流が前記プログラムされたIchを超過する量に比例する。電池充電電流が前記プログラムされた電流値Ichを超過するまで,電流制御信号62はゼロである。プログラムされた値Ichは,特定の電池の型および必要条件(requirements)に従って設定される(例えば,従来技術において十分に理解されているように,従来型のリチウムイオン(LiIon)電池を充電するように設定される)。」(段落【0010】)・「電池充電電流が閾値Ichを超過すれば,増幅器28は,比例的な電流制御信号62を生成する。増幅器28の出力は電流源42の負側(ノード60)に連結されているので,増幅器28により生成されるあらゆる信号は,電源42からの電流をシンクするように作用する。次に,この 信号は,Ccomp38上の電圧を低減させるように動作し,これにより,PWM信号68のデューティサイクルが低減し,かつ,電池に供給される充電電流が低減する。出力される電流制御信号62は入力値に比例するので,デューティサイクルは,電池充電電流の関数として動的に調整される。」(段落【0011】)・「図3は,PWM信号68(下図)と,補償キャパシタ上の電圧Vcompとノコギリ波信号44との交点(上図) とを示すタイミング図70を示す。目下の例示的な実施例において,Vcompは,本質的には,電流源42により上方へ移動する振幅であって,かつ,電流制御信号62,電圧制御信号64,または,電力制御信号66のいずれかにより下方へ移動する振幅を有するDC信号である。換言すれば,Vcompの値(振幅)は,(信号42-(信号62,信号64,および/または,信号66))の和である。Vcompの値を下方へ移動させるこ により下方へ移動する振幅を有するDC信号である。換言すれば,Vcompの値(振幅)は,(信号42-(信号62,信号64,および/または,信号66))の和である。Vcompの値を下方へ移動させることにより,PWM信号のデューティサイクルは減少する。」(段落【0018】)(2) 上記を総合すると,本件発明は,一つ以上の電池(バッテリー)を充電するための電池充電回路に関するものであり,PWM信号のデューティサイクルを調整するための回路を提供し,また,電池充電電流が所定の電池充電電流閾値を超過する量に比例した電流制御信号を生成する電流制御回路と,電池電圧が所定の電池電圧閾値を超過する量に対する電圧制御信号を生成する電圧制御回路と,前記電池充電電流をDC電源から生成するDC/DC変換回路と,前記DC/DC変換回路のデューティサイクルを制御するためのPWM信号を生成するPWM信号生成回路を含む電池充電回路を提供するというものである。 2 争点(2)(本件各製品が本件発明の技術的範囲に属するか)について事案に鑑み,まず,争点(2)ア(構成要件Bの充足性)について検討する。 (1) 構成要件Bは,「電池充電電流が所定の電池充電電流閾値を超過する量に 比例した電流制御信号を生成する電池電流制御部と,」というものである。 (2)ア原告は,被告各製品は次の図(甲5・15頁の図15の一部に各種の色の枠を付したもの)のとおりの構成を有するとした上で,被告各製品では,参照電圧VREF_ICHG(赤枠3)が「電池充電電流閾値」,回路2(緑枠2)が「電池電流制御部」に当たると主張し,電池電流制御部である回路2の入力信号が,閾値である参照電圧VREF_ICHGよりも大きい場合には,回路2はバイアス電圧約800mVよりも大きくなるように出力 が「電池電流制御部」に当たると主張し,電池電流制御部である回路2の入力信号が,閾値である参照電圧VREF_ICHGよりも大きい場合には,回路2はバイアス電圧約800mVよりも大きくなるように出力電圧を増加させるが,参照電圧VREF_ICHGより小さい場合には,バイアス電圧約800mVよりも小さくなるように出力電圧を減少させると主張している。 イそこで検討するに,構成要件Bにおいては,「電池充電電流」が「電池充電電流閾値」よりも小さい場合には,「電池充電電流閾値を超過する量」はゼロであるから,「電池充電電流閾値を超過する量に比例した電流制御信号」は,ゼロに比例することとなり,一定となる。 ところで,被告各製品においては,回路2への入力信号が「電池充電電流」,参照電圧VREF_ICHGが「電池充電電流閾値」に当たるとした場合,回路2への入力信号が参照電圧VREF_ICHGよりも小さいときは, 回路2は,バイアス電圧約800mVよりも小さくなるように出 【甲5、15頁図15の一部】 力電圧を減少させるのであって,出力電圧が一定となるものではないから,電池電流制御部である回路2が生成する電流制御信号は,「電池充電電流閾値を超過する量」に比例しない。 したがって,被告各製品は構成要件Bを充足しない。 ウこの点に関して原告は,構成要件Bは,電池充電電流の超過量の増減につれて,出力される電流制御信号も増減するという動作を規定しているのであって,被告各製品の動作はこれに当たると主張するが,原告の主張する被告各製品の動作が電池充電電流の「超過量」の増減につれて変化するものに当たら る電流制御信号も増減するという動作を規定しているのであって,被告各製品の動作はこれに当たると主張するが,原告の主張する被告各製品の動作が電池充電電流の「超過量」の増減につれて変化するものに当たらないことは上記のとおりである。そして,構成要件Bは,「所定の電池充電電流閾値を超過する量に比例した」電流制御信号とされているのであって,「所定の電池充電電流閾値との差に比例した」電流制御信号であるなどと規定されているものではない。 また,本件明細書等をみても「電池充電電流が前記プログラムされた電流値Ich を超過するまで,電流制御信号62はゼロである。」(段落【0010】),「電池充電電流が閾値Ich を超過すれば,増幅器28は,比例的な電流制御信号62を生成する。」(段落【0011】)との記載があり,これらからすると,電池充電電流が閾値を超えるまでは電流制御信号は生成されず,電池電流制御部の出力はゼロであるものと理解される。 したがって,入力信号が,参照電圧VREF_ICHGよりも大きい場合に出力電圧を増加させ,参照電圧VREF_ICHGより小さい場合に出力電圧を減少させるという動作が,「電池充電電流閾値を超過する量に比例した電流制御信号を生成する」という動作に当たるということはできない。 したがって,原告の上記主張は採用することができない。 (3)ア次に,原告は,被告各製品は下図のとおりの構成を有するとした上で,被告各製品では,参照電圧VREF_ICHG(赤枠3)が「電池充電電 流閾値」,上図の回路2と整流用ダイオードからなる回路2’(緑枠2’)が「電池電流制御部」に当たる旨の主張もしている。 【甲5、15頁図15の一部】 2’3’ からなる回路2’(緑枠2’)が「電池電流制御部」に当たる旨の主張もしている。 【甲5、15頁図15の一部】 2’3’ イそこで検討するに,回路2’が電池電流制御部に当たるとした場合,整流用ダイオードの出力が電流制御信号に当たる。 ところで,ダイオードとは,+の電荷をもった正孔が存在するp形半導体と,-の電荷をもった電子が存在するn形半導体を接合したもので,p形のほうの端子(アノード)からn形のほうの端子(カソード)の方向(順方向)に一定以上の電圧を与えたときに初めて電流が流れるというものであり,ダイオードの順方向の電圧を増加した際の電流特性は,電圧に対し,指数関数で表現することができ,シリコンダイオードの場合,およそ0. 6~0.7V付近で急激に立ち上がる指数曲線になり,ディジタル回路で用いられるスイッチング用のシリコンダイオードでは,この曲線の立ち上がりは鋭く,0.6Vで直線的に立ち上がる(抵抗が0)とモデル化できる(乙11)。 以上からすると,回路2’のダイオードは,回路2からの出力電圧が,FBOの電位よりも600mV以上高いときに出力を生じ,回路2からの出力電圧とFBO電位の差がそれ以下である場合(回路2の出力電圧の方が,FBOの電位よりも低い場合を含む。)には,出力が生じないものであると認められる。 ところで,前記(2)のとおり,被告各製品においては,回路2は,入力信号が閾値である参照電圧VREF_ICHGよりも大きい場合,バイアス電圧約800mVよりも大きくなるように出力電圧を増加させるが,入力信号が参照電圧VREF_ICHGより小さい場合には,バイアス電圧約800mV 参照電圧VREF_ICHGよりも大きい場合,バイアス電圧約800mVよりも大きくなるように出力電圧を増加させるが,入力信号が参照電圧VREF_ICHGより小さい場合には,バイアス電圧約800mVよりも小さくなるように出力電圧を減少させるというのであるから,回路2’のダイオードへの入力は,回路2の入力信号の大きさに応じて増減する。 そして,ダイオードの特性により,回路2’の出力は,FOBノードの電位と比べて600mV高くなったときに出力を生じるものであるが,回路2’の入力信号が参照電圧VREF_ICHGを超えたときに,回路2’が出力を生じ始めると認めるべき理由はない。仮に,FOBノードの電位が200mVに固定されているのであれば,回路2は,入力信号が参照電圧VREF_ICHGより大きい場合にはバイアス電圧約800mVよりも大きくなるように出力電圧を増加させ,入力電圧がそれ以下の場合には電流がほとんど流れないことになるから,回路2’からの入力が,参照電圧VREF_ICHGよりも大きい時に出力を生じ,小さい時に出力を生じないということができる。しかし,被告各製品においてFOBノードの電位が200mVに固定されていると認めるに足りる証拠はない。 そうすると,回路2’が電池電流制御部に当たると考えた場合であっても,被告各製品は,構成要件Bを充足しない。 (4) したがって,被告各製品は,その余の点について判断するまでもなく,本 件発明の技術的範囲に属しない。 3 争点(3)(間接侵害の成否)についてこの点に関して原告は,仮に被告各製品のみでは本件発明の機能が実現されるものではないとして直接侵害が認められないとしても,被告各製品を他の要素と繋いだ場合に,図①に示される機能が実現され,被告各製品が,同図に示される機 仮に被告各製品のみでは本件発明の機能が実現されるものではないとして直接侵害が認められないとしても,被告各製品を他の要素と繋いだ場合に,図①に示される機能が実現され,被告各製品が,同図に示される機能を有する物の生産に用いられる物であることは被告も争っていないから,被告各製品は,本件発明の「生産にのみ用いる物」(特許法101条1号)に該当し,少なくとも間接侵害が成立すると主張する。 しかし,原告は,本件発明の技術的範囲に属するものである直接侵害品が何であり,その直接侵害品と被告各製品との関係,すなわち,被告各製品が直接侵害品の「生産にのみ使用する物であること」を何ら具体的に主張・立証していない。 また,原告の間接侵害の主張は,被告各製品が本件発明の構成要件を全て充足することを前提としての主張であると思われ,そうであるとすれば,前記2のとおり,被告各製品はそもそも構成要件Bを充足しないから,間接侵害も成立しないというほかない。 以上の通り,いずれにしても,原告の間接侵害の主張は理由がない。 4 争点(4)ア(乙2文献に基づく新規性又は進歩性欠如の有無)について(1) 乙2文献の引用適格原告は,乙2文献が本件発明の優先日当時公開されていたか不明であり,引用適格がないと主張する。 そこで検討するに,乙2文献は,被告の親会社であるテキサス・インスツルメンツ・インコーポレイテッドが作成した被告の製品に関するデータシートであるが,同製品は平成13年(2001年)8月6日にはドイツ連邦共和国所在の企業に向けて出荷されているから(乙8の1),遅くとも出荷時には顧客が乙2文献を利用可能な状況にあったことが推認される。また,乙 2文献の改訂版(甲8)には,「SLUS452B-APRIL 2001-REVISEDN の1),遅くとも出荷時には顧客が乙2文献を利用可能な状況にあったことが推認される。また,乙 2文献の改訂版(甲8)には,「SLUS452B-APRIL 2001-REVISEDNOVEMBER 2002」(訳:SLUS452B-2001年4月-2002年11月改訂)と表示されているところ,この表示は,改訂版「SLUS452B」の改定前の版である「SLUS452A」すなわち乙2文献が,平成13年(2001年)4月に公開されたことを示唆するものと考えられる。そして,インターネットアーカイブのオフィスマネジャーである乙ⅰの2014年7月23日付け宣誓供述書(乙7)によれば,乙2文献が,平成13年(2001年)6月21日にインターネットサイトに公開されていたことが認められる。 これらからすると,乙2文献は,本件発明の優先日である平成13年8月17日よりも前に,電気通信回線を通じて公衆に利用可能であったと認められるから,引用適格があるというべきである。 (2) 乙2発明と本件発明の対比ア乙2発明が,構成要件A,E及びGを備えていることは当事者間に争いがない。そして,原告は,乙2発明は構成b2 及びc2 を有していないから構成要件B及びCを充足せず,したがって,構成要件D,F及びHを充足しないと主張するので,構成b2 及びc2 に相当する乙2発明の構成について検討する。 イ構成b2 に相当する構成について乙2文献(14頁最終段落)には,次の記載がある(訳は乙2添付の抄訳による。)。 「3つの制御ループのいずれか一つがプログラムされた制限に近づくと,gmアンプはCOMPピンから電流を分路し始める。COMPピンの電圧の上昇速度は,このピンから出る電流の合計が減少するために遅くなり,そのため,デューティサイクルの増加 グラムされた制限に近づくと,gmアンプはCOMPピンから電流を分路し始める。COMPピンの電圧の上昇速度は,このピンから出る電流の合計が減少するために遅くなり,そのため,デューティサイクルの増加速度が小さくなる。このループがプログラムされた制限に達すると,gmアンプがバイアス 電流全体(100μA)を分路し,デューティサイクルは固定されたままになる。制御パラメータのいずれかがプログラムされた制限を超えようとした場合,gmアンプは,さらなる電流をCOMPピンから分路して,制限を超えようとするパラメータの超過が防止されるまでPWMデューティサイクルがさらに減少する。」そして,乙2文献の13頁・図3(Figure3)などにみられるように,上記記載における三つの制御ループとは,バッテリ電圧(VBAT),バッテリ充電電流(ICH)及びアダプタ電流(IADPT)を意味するから,上記記載には,バッテリ充電電流(ICH)がプログラミングされた制限に近づくと,gmアンプがCOMPピンから電流を分路し始めることが示されている。そして,バッテリ充電電流(ICH)の大きさに応じて分路された電流を,引き込み電流(ISINK(CH))と呼ぶものとすると,上記記載には,バッテリ充電電流(ICH)がプログラミングされた制限に近づいた時に引き込み電流(ISINK(CH))を流し始め,バッテリ充電電流(ICH)がプログラミングされた制限を超えようとすると,さらに引き込み電流(ISINK(CH))を大きく流すgmアンプが示されているといえる。 ウ構成c2 に相当する構成についてバッテリ電圧(VBAT)の大きさに応じて分路された電流を,引き込み電流(ISINK(BAT))と呼ぶものとすると,乙2文献の上記イの記載部分には,バッテリ電圧(VBA に相当する構成についてバッテリ電圧(VBAT)の大きさに応じて分路された電流を,引き込み電流(ISINK(BAT))と呼ぶものとすると,乙2文献の上記イの記載部分には,バッテリ電圧(VBAT)がプログラミングされた制限に近づいた時に引き込み電流(ISINK(BAT))を流し始め,バッテリ電圧(VBAT)がプログラミングされた制限を超えようとすると,さらに引き込み電流(ISINK(BAT))を大きく流すgmアンプが示されているといえる。 エ乙2発明と本件発明の対比以上から,乙2発明と本件発明は次の2点において相違しているといえる。 ① 本件発明は,「電池充電電流が所定の電池充電電流閾値を超過する量に比例した電流制御信号を生成する電池電流制御部」(構成要件B)を有しているのに対し,乙2発明は,「バッテリ充電電流(ICH)がプログラミングされた制限に近づいた時に引き込み電流(ISINK(CH))を流し始め,バッテリ充電電流(ICH)がプログラミングされた制限を超えようとすると,さらに引き込み電流(ISINK(CH))を大きく流すgmアンプ」を有している点(以下「相違点①」という。)② 本件発明は,「電池電圧が所定の電池電圧閾値を超過する量に比例した電圧制御信号を生成する電池電圧制御部」(構成要件C)を有しているのに対し,乙2発明は,「バッテリ電圧(VBAT)がプログラミングされた制限に近づいた時に引き込み電流(ISINK(BAT))を流し始め,バッテリ電圧(VBAT)がプログラミングされた制限を超えると,さらに引き込み電流(ISINK(BAT))を大きく流すgmアンプ」を有している点(以下「相違点②」という。)(3) 本件発明の新規性欠如上記を前提に,本件発明について,乙2文献に基づく新規性欠 引き込み電流(ISINK(BAT))を大きく流すgmアンプ」を有している点(以下「相違点②」という。)(3) 本件発明の新規性欠如上記を前提に,本件発明について,乙2文献に基づく新規性欠如が認められるか検討する。 ア相違点①について乙2発明における引き込み電流(ISINK(CH))は,バッテリ充電電流(ICH)がプログラミングされた制限に近づいたときに流れ始め,バッテリ充電電流(ICH)が上記制限を超えようとすると,さらに大きく流れるものであるが,これは,すなわち,バッテリ充電電流(ICH)を大きくしていったとき,上記制限に近づいたある値において引き込み電流(ISINK(CH))が流れ始め,その後,バッテリ充電電流(ICH)が大きくなるにつれて,引き込み電流(ISINK(CH))がより大きくなるものであるといえる。そして,引き込み電流(ISINK(CH))が流れ始めるバッテリ充電電流(ICH)の値をαとすると, バッテリ充電電流(ICH)がαよりも小さい場合には引き込み電流(ISINK(CH)が流れず,αよりも大きくなるにつれて引き込み電流(ISINK(CH)が大きくなるのであるから,αは閾値に当たるといえる。 そして,バッテリ充電電流(ICH)が電池充電電流に,引き込み電流(ISINK(CH))が電流制御信号に,gmアンプが電池電流制御部にそれぞれ該当し,電池電流制御部であるgmアンプによって,電流制御信号である引き込み電流(ISINK(CH))は,電池充電電流であるバッテリ充電電流(ICH)が所定の電池充電電流閾値である「α」を超過する量に比例した電流制御信号である引き込み電流(ISINK(CH))が生成されているといえる。 以上からすると,乙2発明は,実質的に構成要件Bを充足する。 イ相違点② 電流閾値である「α」を超過する量に比例した電流制御信号である引き込み電流(ISINK(CH))が生成されているといえる。 以上からすると,乙2発明は,実質的に構成要件Bを充足する。 イ相違点②について上記アと同様に,乙2発明におけるバッテリ電圧(VBAT)が電池電圧に,引き込み電流(ISINK(BAT))が電圧制御信号に,gmアンプが電池電圧制御部にそれぞれ該当し,引き込み電流(ISINK(BAT))を流れ始めるバッテリ電圧(VBAT)の値を「β」とするとこれが「電池電圧閾値」に当たるから,乙2発明では,電池電圧制御部であるgmアンプによって,電池電圧であるバッテリ電圧(VBAT)が所定の電池電圧閾値である「β」を超過する量に比例した電圧制御信号である引き込み電流(ISINK(BAT))が生成されているといえる。 以上からすると,乙2発明は,実質的に構成要件Cを充足する。 ウなお,原告は,「α」又は「β」を超過して流れ始める「引き込み電流ISINK(CH)」,「引き込み電流ISINK(BAT)」がそれぞれ「電流制御信号」,「電圧制御信号」に該当するとした場合,乙2文献(14頁)には「引き込み電流」は,デューティサイクルを増加させるものと記載されているから,「電流制御信号」および/または「電圧制御信号」によって,「前記PWM信号のデューティサイクルが低減する」という構成要件Hが充足されな いと主張するが,前記(2)のとおり,乙2文献(14頁最終段落)には「gmアンプは,さらなる電流をCOMPピンから分路して,制限を超えようとするパラメータの超過が防止されるまでPWMデューティサイクルがさらに減少する」と記載されており,引き込み電流の増加によりデューティサイクルが減少されるものとされているから,乙2発明が構成要件 うとするパラメータの超過が防止されるまでPWMデューティサイクルがさらに減少する」と記載されており,引き込み電流の増加によりデューティサイクルが減少されるものとされているから,乙2発明が構成要件Hを充足することは明らかである。 エしたがって,本件発明は,乙2発明と実質的に同一であるから,乙2文献に基づき新規性を欠くというべきである。 そうすると,本件発明は,特許無効審判により無効にされるべきものである。 5 争点(5)(本件訂正による再抗弁の成否)について(1) 訂正による再抗弁の要件特許法104条の3の抗弁に対する訂正の再抗弁が成立するためには,①特許庁に対し適法な訂正審判の請求又は訂正の請求を行っていること,②当該訂正が訂正要件を充たしていること,③当該訂正によって被告が主張している無効理由が解消されること,④被告製品等が訂正後の特許発明の技術的範囲に属すること,以上の各要件を充たすことを要するというべきである。 (2) そこで,まず,上記④の要件を検討するに,本件訂正発明の構成要件は,前記第2,2(6)記載のとおりであり,本件訂正は,本件発明とは構成要件I,D’,F’,H’及びJの点で異なるものであるところ,前記2で説示した通り,被告各製品は,そもそも構成要件Bを充足しないから,本件訂正発明の技術的範囲に属せず,したがって,上記④の要件を充たさない。 (3) 次に,本件訂正が,上記③の要件を充足するか否か,すなわち,本件訂正発明が新規性又は進歩性を欠如しているか否かを検討する。 この点に関して原告は,乙2文献には,本件訂正により追加された構成要件J(前記電流制御信号,前記電圧制御信号,および前記電力制御信号がい ずれも生成されない場合に前記デューティサイクルが最大となることを特徴と 文献には,本件訂正により追加された構成要件J(前記電流制御信号,前記電圧制御信号,および前記電力制御信号がい ずれも生成されない場合に前記デューティサイクルが最大となることを特徴とする回路)に係る記載はなく,また,示唆等もないから,本件訂正発明には,乙2文献に基づく新規性欠如及び進歩性欠如の無効理由はないと主張している。 そこで検討するに,乙2文献(14頁最終段落)には,「3つの制御ループのいずれか一つがプログラムされた制限に近づくと,gmアンプはCOMPピンから電流を分路し始める。COMPピンの電圧の上昇速度は,このピンから出る電流の合計が減少するために遅くなり,そのため,デューティサイクルの増加速度が小さくなる。」という記載があり,これによれば,ピンから電流が出ないとき,すなわち,三つの制御ループのいずれもがプログラムされた制限に近づいていないときには,デューティサイクルの増加速度が大きいこと,すなわち,ディーティサイクルが上昇していることが示されている。そして,三つの制御ループとは,バッテリ電圧(VBAT),バッテリ充電電流(ICH),アダプタ電流(IADPT)の制御ループを意味し,乙2発明は,バッテリ電圧(VBAT),バッテリ充電電流(ICH),アダプタ電流(IADPT)をデューティサイクルの制御に用いている。 そして,乙2文献を見ると,「図1.典型的なノートブック充電管理アプリケーション」(11頁)には,アダプタ(電源)からの電流(ADAPTERSUPPLY)が,抵抗R5を流れ,その前後の電圧が,ACN及びACPという端子に入力されることが示されており,「ブロック図」(3頁)によれば,ACN及びACPからの入力が「acCURRENTERRORAMPLIFIER」に入力され,「acCURRE ACPという端子に入力されることが示されており,「ブロック図」(3頁)によれば,ACN及びACPからの入力が「acCURRENTERRORAMPLIFIER」に入力され,「acCURRENTERRORAMPLIFIER」からの出力がCOMP10に接続されている。 そして,前記のとおり,アダプタ電流(IADPT)がプログラムされた制限に近づくと,gmアンプはCOMPピンから電流を分路し始める。以上からすると,乙2文献には,電源からの電流が閾値(プログラムされた制限に近づい た値)を超えると電流を発生させるという動作が記載されており,このときのCOMPピンから分路する電流が電力制御信号に当たるといえる。 他方,前記4のとおり,「引き込み電流ISINK(CH)」又は「引き込み電流ISINK(BAT)」がそれぞれ「電流制御信号」又は「電圧制御信号」に当たり,これらは,閾値「α」又は「β」を超過すると流れ始める。 そうすると,乙2発明においては,前記電流制御信号,前記電圧制御信号,および前記電力制御信号のいずれもが生成されない場合に,デューティサイクルが上昇し,これらが生成されるとデューティサイクルが減少するから,「前記電流制御信号,前記電圧制御信号,および前記電力制御信号がいずれも生成されない場合に前記デューティサイクルが最大となる」ものといえる。 したがって,乙2発明は実質的に構成要件Jを充足しており,本件訂正発明と同一であるといえる。 したがって,本件訂正発明は,乙2発明と実質的に同一であるから,新規性を欠くものである。 (4) 以上の通り,いずれにしても,原告の訂正の再抗弁は理由がない。 6 結論以上によれば,被告各製品は,本件発明の技術的範囲に属せず,また,本件特許は特許無効審判により無効 主文 以上の通り,いずれにしても,原告の訂正の再抗弁は理由がない。 結論以上によれば,被告各製品は,本件発明の技術的範囲に属せず,また,本件特許は特許無効審判により無効にされるべきものであるところ,本件訂正による再抗弁は成り立たない。 したがって,その余の点につき判断するまでもなく,原告の請求は理由がないから,これを棄却することとし,主文のとおり判決する。 東京地方裁判所民事第40部 裁判長裁判官 東海林保 裁判官 瀬孝 裁判官 勝又来未子 別紙被告製品目録 1 製品形名「bq24725A」 2 製品形名「bq24735」 別紙「特許公報」は省略
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