平成24(ワ)29634

裁判年月日・裁判所
平成26年5月16日 東京地方裁判所
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判決文本文22,639 文字)

平成26年5月16日判決言渡同日原本交付裁判所書記官平成24年(ワ)第29634号商標使用差止等請求事件口頭弁論終結日平成26年3月5日判決スイス連邦ヴァンドゥーヴル<以下略>原告A訴訟代理人弁護士佐藤雅巳古木睦美東京都世田谷区<以下略>被告株式会社ヌーヴェルヴァーグジャポン訴訟代理人弁護士田久保尚武高知市<以下略>被告有限会社ジー・オー・シー訴訟代理人弁護士網野精一訴訟復代理人弁護士松本卓也 主文 1 原告の請求をいずれも棄却する。 2 訴訟費用は原告の負担とする。 3 本件につき原告のために控訴の付加期間を30日と定める。 事実及び理由 第1 請求の趣旨 1 被告有限会社ジー・オー・シーは、高知市<以下略>所在の店舗において別紙被告有限会社ジー・オー・シー標章目録記載の標章の使用をしてはならず、同被告のホームページにおいて同標章の使用をしてはならない。 2 被告株式会社ヌーヴェルヴァーグジ 下略>所在の店舗において別紙被告有限会社ジー・オー・シー標章目録記載の標章の使用をしてはならず,同被告のホームページにおいて同標章の使用をしてはならない。 2 被告株式会社ヌーヴェルヴァーグジャポンは,原告に対し,640万円及びこれに対する平成24年11月4日から支払済みまで年5分の割合による金 - 2 -員を支払え。 3 被告有限会社ジー・オー・シーは,原告に対し,640万円及びこれに対する平成24年11月4日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 4 訴訟費用は被告の負担とする。 第2 事案の概要本件は,スイス連邦在住のフランス人であり,登録番号第3046204号の商標権者(以下「本件商標権」といい,その商標を「本件商標」という。)である原告が,被告株式会社ヌーヴェルヴァーグジャポン(以下「被告ヌーヴェルヴァーグジャポン」という。)との間で平成12年12月14日付け契約(原文は英語,表題は「AGREEMENT」。以下「本件契約」という。)を締結し,被告ヌーヴェルヴァーグジャポンは,これに基づき,原告から本件契約中に記載されている「Aノウハウ」につき日本における独占的使用を許諾されて直営サロン及びフランチャイズサロンを経営していたところ,同被告,及びそのフランチャイジーで,高知市においてフランチャイズサロンを運営していた被告有限会社ジー・オー・シー(以下「被告ジー・オー・シー」という。)は,平成22年2月1日に原告と被告ヌーヴェルヴァーグジャポンとの間のライセンス契約が終了した後も,本件商標ないし「Aノウハウ」の使用を継続しているとして,(1) 商標法36条1項に基づき,被告ジー・オー・シーに対し, 高知市<以下略>所在のMPビル内の店舗及び同被告のホームページにおける,本件商標と同一 し「Aノウハウ」の使用を継続しているとして,(1) 商標法36条1項に基づき,被告ジー・オー・シーに対し, 高知市<以下略>所在のMPビル内の店舗及び同被告のホームページにおける,本件商標と同一である別紙被告有限会社ジー・オー・シー標章目録記載の標章(以下「被告標章」という。)の使用の差止め(請求の趣旨第1項)を,(2) 民法709条に基づき,被告ヌーヴェルヴァーグジャポンに対し,原告が,平成22年3月から平成24年10月までの同被告による「Aノウハウ」の不正使用により被った損害の賠償として,640万円及び訴状送達日の翌日である平成24年11月4日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払(請求の趣旨第 - 3 -2項)を,(3) 民法709条に基づき,被告ジー・オー・シーに対し,原告が,平成22年3月から平成24年10月までの間,被告ジー・オー・シーによる本件商標及び「Aノウハウ」の使用により被った損害の賠償として,640万円及び訴状送達日の翌日である平成24年11月4日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払(請求の趣旨第3項)を,それぞれ求めた事案である。 1 前提事実(当事者間に争いがないか,証拠及び弁論の全趣旨より容易に認められる事実)(1) 当事者ら原告は,昭和17年(1942年)3月3日生まれのスイス連邦在住のフランス人であり,「A」の名称で活動していたヘアデザイナーである。 被告ヌーヴェルヴァーグジャポンは,平成7年7月7日に設立され,肩書地に本店を置く,美容室の経営等を目的とする株式会社である。 被告ジー・オー・シーは,美容室の経営等を目的とする,肩書地を本店所在地とする特例有限会社である。 (2) 本件商標権原告は,我が国に を置く,美容室の経営等を目的とする株式会社である。 被告ジー・オー・シーは,美容室の経営等を目的とする,肩書地を本店所在地とする特例有限会社である。 (2) 本件商標権原告は,我が国において,下記内容の本件商標権を有している。〔甲1〕記登録番号第3046204号登録日平成7年5月31日出願日平成4年9月3日更新登録日平成17年6月7日役務の区分 42指定役務美容商標 (省略) - 4 - (3) 本件契約原告と被告ヌーヴェルヴァーグジャポンは,平成12年12月14日付けで,本件契約を締結した。その内容は,以下のとおりである。〔甲8。本件契約においては,原告を「A」,被告ヌーヴェルヴァーグジャポンを「ライセンシー」と表記することとされている。内容は提出された訳文による。なお,訳文の正確性については当事者間に争いがない。〕「前文『A』は,長年にわたりヘアドレッシングビューティーサロンを運営し,貴重なテクニカルノウハウを取得している。 …『ライセンシー』は,『A』から,以下に規定するように日本において自ら及び『フランチャイズサロン』(注.複数)を通じてヘアドレッシングビューティーサロンを運営する目的のため,以下に定義する『Aノウハウ』はもとより『A商標』を使用する権利を『A』から得ることを望んでいる。 両当事者は,『A商標』の下で運営されるサロンが『A』のノウハウ及び品質のスペックを満たすことを保証するため,トレーニングセッションを遂行することが不可欠であると看做している。 両当事者は,本契約は,5年間続いた従前の契約を引継ぐものであり,当該契約に基づき『ライセンシー』がライセンスを活用する るため,トレーニングセッションを遂行することが不可欠であると看做している。 両当事者は,本契約は,5年間続いた従前の契約を引継ぐものであり,当該契約に基づき『ライセンシー』がライセンスを活用するための条件について充分な知識を得たことを宣言する。」「第1条定義a.『A商標』とは,(ⅰ) 『A』の名で日本で登録され将来登録される商標及び役務商標をいう。 - 5 -(ⅱ) 『A』のその他の名前又はロゴ(ⅲ) 『A』の名前をいう。 b.『Aノウハウ』とは,(1) 『A』のヘアドレッシングのテクニック及びノウハウを言い,『A』スタジオのノウハウを含むが『A』スタジオのノウハウに限るものではない(2) 『直営サロン』(注.複数)ビジネス及び『フランチャイズサロン』ビジネスを運営するための情報及びノウハウ(3) 『直営サロン』及び『フランチャイズサロン』用のデザインコンセプト(4) 『トレーニングサロン』(注.複数)を運営するためのコンセプト及びノウハウ及び(5) 上記(1)ないし(4)に関する如何なる資料,文書,スペック及びスチール写真(上記(1)ないし(4)に関する如何なるフィルム又はビデオテープも『A』が選任した会社が作成するものとすること,及び,『ライセンシー』は当該会社に直接連絡を取ること,が了解されている)をいう。 c.『直営サロン』とは,『ライセンシー』又は『ライセンシー』が100%所有し支配する会社が直接経営する美容サロンをいう。 d.『フランチャイズサロン』とは,『A』のコンセプト及びスペックに従って資格のある『ライセンシー』のフランチャイズヘアドレッサーにより運営される資格のある美容サロンをいう。 - 6 -e.『ト イズサロン』とは,『A』のコンセプト及びスペックに従って資格のある『ライセンシー』のフランチャイズヘアドレッサーにより運営される資格のある美容サロンをいう。 - 6 -e.『トレーニングサロン』とは,『ライセンシー』により『A』のコンセプトに合致した方法で人員のトレーニングをするために運営するサロンをいう。 f.『広告エージェンシー』とは,ビューティー及びファッションビジネスに通じたエージェンシーをいう。」「第2条独占的ライセンス『A』は,『ライセンシー』に,本契約の条項に従い,『A商標』及び『Aノウハウ』を『直営サロン』,『トレーニングサロン』及び『フランチャイズサロン』を日本で本契約に従い運営する目的のみのため使用する独占的権利を許諾する。」「第3条援助及びノウハウa.『A』は,『Aノウハウ』を独占的に『ライセンシー』に提供し,『ライセンシー』の事前の同意なしに直接又は間接に日本においてヘアサロンで使用するため『Aノウハウ』に関する如何なる資料,文書,スペック,フィルム又は同種のものを出版し又は配布してはならない。 b.『A』は,少なくとも年1回,助言,相談及び『ライセンシー』との協力のため,『A』自身の費用で,日本を訪れることに同意する。但し,『ライセンシー』は『A』の以下の実費を負担する。即ち,パリ-東京-パリの航空運賃(ファーストクラス)並びに『A』が日本滞在中に負担した五ツ星ホテルへの滞在費を含む本契約に関する一切の費用。 毎年1月終り迄に,『A』及び『ライセンシー』は,パリで会議し,『A』の訪日の計画を共に決定する。『ライセンシー』は,当該会議のため,同年の広告キャンペーンの計画書を持参する。 - 7 - 』及び『ライセンシー』は,パリで会議し,『A』の訪日の計画を共に決定する。『ライセンシー』は,当該会議のため,同年の広告キャンペーンの計画書を持参する。 - 7 -c.『A』の訪日の折,『ライセンシー』は,『広告エージェンシー』を含め両当事者が善意で合意する方法で『A』についてのプロフェッショナルデモンストレーションショー(注.複数)をジャーナリスト(注.複数)の出席の下,開催するものとし,『A』は,『直営サロン』及び『フランチャイズサロン』の所有者及びスタッフメンバー(注.複数)に『A』の仕事を開示し,無料で当該所有者及び当該メンバーに助言を与えるものとする。一回の訪日の期間は1週間を超えないものとする。 『A』は上記に関連する事項を直接『広告エージェンシー』と協議するものとする。 『ライセンシー』の求めがあるときは,『A』は一名の経験を積んだ人員を日本に派遣し,『直営サロン』及び『フランチャイズサロン』の人員に『A』の費用で援助,トレーニング及び助言を与えるものとする。但し,…d.事前に『ライセンシー』から通知があったときは,『A』は,『ライセンシー』の『教育指導要員』(第4条に定義する),『広告PR要員』(第8条に定義する),及び,『ヘアスタジオ要員』(第8条に定義する)に,パリの『A』のサロン(注. 複数)における『Aノウハウ』について,かかる要員がファイル,ビデオテープ等を『Aノウハウ』及びサロン運営のシステムの学習のために録音録画することを許諾することを含め,助言し援助する。 e.『ライセンシー』は,『A』とのパリにおける1月の会議でその年度の『ライセンシー』の『トレーニング要員』のリストを『A』に呈示するものとする。 f.『 言し援助する。 e.『ライセンシー』は,『A』とのパリにおける1月の会議でその年度の『ライセンシー』の『トレーニング要員』のリストを『A』に呈示するものとする。 f.『A』は,『直営サロン』及び『フランチャイズサロン』の所有 - 8 -者及びスタッフメンバーがパリの『A』のサロンを訪ね『Aノウハウ』の実務的なトレーニングを第9条b項に定める条件の下に受けることを許諾する。」「第9条料金及びロイヤルティー本契約により『A』が『ライセンシー』に許諾する権利,援助及びノウハウの対価として,『ライセンシー』は,以下の通り,年額ロイヤルティー及び料金を支払う。 a.『直営サロン』及び『フランチャイズサロン』1サロン当たり年間50,000フラン(第7条に規定するサロンの目標数を超えたサロンについては,ロイヤルティーは,当該サロンが開設された月の翌月の初日から支払うものとし,当該サロンが閉鎖される月の前月の末日の後は支払われないものとする)但し,『直営サロン』及び『フランチャイズサロン』について毎年『A』に支払うロイヤルティーの総額は,以下の金額以上とする。 2001年 2,500,000FF(フランスフラン)(50,000FF×50サロン)2002年 2,500,000FF(フランスフラン)(50,000FF×50サロン)2003年 2,500,000FF(フランスフラン)(50,000FF×50サロン)2004年 2,500,000FF(フランスフラン)(50,000FF×50サロン)2005年 2,500,000FF(フランスフラン)(50,000FF×50サロン) - 9 -(ユーロで支払うときは,2,500,000FF=381, 0FF×50サロン)2005年 2,500,000FF(フランスフラン)(50,000FF×50サロン) - 9 -(ユーロで支払うときは,2,500,000FF=381,122EUROとする。)『直営サロン』及び『フランチャイズサロン』のロイヤルティーの支払いは,均等額で四半期毎に3月31日,6月30日,9月30日及び12月31日に支払う。 b.パリの『Aサロン』でのトレーニングパリの『Aサロン』で行なうトレーニングのためトレーニー1名1日当り1500フランスフラン上記トレーニングフィーは,マルブフコアヒュール社(社)又は「A」が支配するその他の会社に対し4半期毎に即ち3月31日,6月30日,9月30日,12月31日に支払うものとする。 『A』は,自らが選任した者をして『ライセンシー』の会計を監査させることができる。 『A』への全ての支払いはフランスフランで『A』が指定する『A』の銀行口座に行なうものとする。支払いをユーロで行なうときは,1ユーロ=6.55957フランスフランで換算する。 本契約に基づき『ライセンシー』が支払うべき金額は,『A』又は本契約に規定する他の支払受領者に対して日本で支払うべき源泉税を除き満額支払うものとする。 『ライセンシー』は,『A』に対し日仏租税条約に基づき上記源泉税の還付を受けるに必要な全ての文書を交付するものとする。 『A』はパリの『Aサロン』での人員のトレーニングのためモデル(注.複数)を選任し,『ライセンシー』は『ライセンシ - 10 -ー』の費用でパリの『Aサロン』での最長3日間の人員のトレーニングを担当する者を派遣するものとする。」「第10条期間及び終了a ライセンシー』は『ライセンシ - 10 -ー』の費用でパリの『Aサロン』での最長3日間の人員のトレーニングを担当する者を派遣するものとする。」「第10条期間及び終了a.本契約は,2001年1月1日に効力を生じ,2005年12月31日まで有効とする。 本契約は,少なくとも期間満了日の1年前迄に当事者の一方が文書で相手方から本契約を終了する通知を受領しない限り,自動的に5年間更新する。本契約の更新に際し両当事者は本契約の条項を検討することができる。 b.本契約は,以下の場合には,相手方へ書面により通知することにより,直ちに終了する。 (1) 『ライセンシー』が本契約に従い『A』に支払うべき金員の支払を期限通りにしなかったとき(2) 当事者のいずれかが破産,支払不能又は清算したとき(自ら申立た場合と第三者の申立の場合とを問わない)。 c.当事者の一方が,本契約の条項(上記b.(1)を除く)に違反し,文書により履行の催告を受けて2ヶ月以内に履行しなかったときは,他方当事者は,1ヶ月の期間を定めて文書で通知して本契約を終了させることが出来る。 d.本契約が終了したときは,『ライセンシー』は,『A商標』,『A商標』と混同するおそれのある名前・名称及び商標並びに『Aノウハウ』の使用を停止し,『フランチャイズサロン』,『トレーニングサロン』及び『直営サロン』をして,かかる使用を停止させなければならない。」「第13条通知本契約に基づく一切の通知は書留郵便で確認するファクシミリに - 11 -て送付するものとする。」(4) 本件契約に基づき被告ヌーヴェルヴァーグジャポンが経営するサロン被告ヌーヴェルヴァーグジャポンは,本件契約に基づき るファクシミリに - 11 -て送付するものとする。」(4) 本件契約に基づき被告ヌーヴェルヴァーグジャポンが経営するサロン被告ヌーヴェルヴァーグジャポンは,本件契約に基づき直営サロンないしフランチャイズサロンを経営していた。被告ジー・オー・シーは,そのフランチャイズサロンの一つである。 (5) 被告ジー・オー・シーの経営する美容サロン被告ジー・オー・シーは,高知市<以下略>所在のMPビル内において美容サロン(以下「本件店舗」という。)を経営していた。 (6) 本件契約の解除原告と被告ヌーヴェルヴァーグジャポンとの本件契約は,平成22年2月1日をもって解除された。 (7) 別件訴訟の提起等原告は,平成22年10月21日,当庁に,被告ヌーヴェルヴァーグジャポンに対し,未払ロイヤルティ等を請求する内容の訴訟(平成22年(ワ)第39627号標章使用差止等請求事件。以下「別件訴訟」という。)を提起した。なお,別件訴訟については,当庁において,平成26年3月26日に判決が言い渡された。 (8) 本件訴訟の提起原告は,別件訴訟係属中の平成24年10月19日に,本件訴訟を提起した。 2 争点(1) 被告ジー・オー・シーによる本件商標の使用の有無(2) 被告ヌーヴェルヴァーグジャポンによる「Aノウハウ」の使用の有無(3) 被告ジー・オー・シーによる「Aノウハウ」の使用の有無(4) 原告の損害額第3 争点に関する当事者の主張 - 12 - 1 争点(1)(被告ジー・オー・シーによる本件商標の使用の有無)について〔原告の主張〕被告ジー・オー・シーは,本件店舗の名称に本件商標を使用し(甲22の1),インターネット上の広告に本件商標を使用し(甲22の1,3),原告の本件商標 商標の使用の有無)について〔原告の主張〕被告ジー・オー・シーは,本件店舗の名称に本件商標を使用し(甲22の1),インターネット上の広告に本件商標を使用し(甲22の1,3),原告の本件商標についての権利を侵害している。 なお,被告ジー・オー・シーは,被告ヌーヴェルヴァーグジャポンの元フランチャイジーの一つであり,誓約書(甲23)を被告ヌーヴェルヴァーグジャポンに提出したものであるが,これには本件商標の使用中止日も記入されていない。 このように,被告ジー・オー・シーにおいて,平成22年2月1日以降も継続して本件店舗,ホームページに本件商標を使用し続けていたことは明白である。 〔被告ジー・オー・シーの主張〕(1) 本件店舗において本件商標を使用しているとの原告の主張につき被告ジー・オー・シーは,平成22年1月23日,被告ヌーヴェルヴァーグジャポンの代表取締役から,原告と被告ヌーヴェルヴァーグジャポンとの間の本件契約が終了する可能性があるとの連絡を受けた。 その後,同年2月5日,被告ヌーヴェルヴァーグジャポンから,「ジャンマルク A氏との契約終了のお知らせならびに日本国内における今後の対応について」と題する書面(丙1)が郵送されてきたため,被告ジー・オー・シーは,原告と被告ヌーヴェルヴァーグジャポンとの間の本件契約が終了したことを知り,同月12日には,被告ヌーヴェルヴァーグジャポンの代表取締役から被告ジー・オー・シーに電話で本件商標等の使用を止めるよう指示を受けた。 被告ジー・オー・シーは,これらを受け,同月19日,高知市保険所長に対し,被告ジー・オー・シーが運営する本件店舗の名称を「A・パリ」から - 13 -「美容室bau」に変更する旨の届出をし(丙2),本件店舗の名称における本件商標の使用を中止し 長に対し,被告ジー・オー・シーが運営する本件店舗の名称を「A・パリ」から - 13 -「美容室bau」に変更する旨の届出をし(丙2),本件店舗の名称における本件商標の使用を中止した(丙3)。 また,被告ジー・オー・シーは,本件契約の終了の連絡を受け,同年3月11日に本件店舗看板の改装工事に着手し,同月21日に終了したことによって,本件店舗の看板における本件商標の使用を中止した(丙4,5)。 被告ジー・オー・シーは,同月31日,被告ヌーヴェルヴァーグジャポンに対して,本件商標の使用を中止した旨を記載した誓約書を提出した(丙6)。 被告ジー・オー・シーが被告ヌーヴェルヴァーグジャポンに対して提出した誓約書は丙6のとおりであり,被告ジー・オー・シーがその記載の一部を削除した事実はない。 以上のとおり,被告ジー・オー・シーは,被告ヌーヴェルヴァーグジャポンから書面によりライセンス契約終了の連絡を受けた後,すみやかに本件店舗における本件商標の使用を中止しているものであるから,被告ジー・オー・シーの行為が本件商標権を侵害するものではないことは明らかである。 (2) インターネット上の広告に本件商標を使用しているとの主張につき被告ジー・オー・シーは,平成21年11月頃,訴外有限会社ガルソリューションズ(以下「ガルソリューションズ」という。)に対し,本件店舗のホームページのリニューアルを依頼し(丙7),同社は新たなホームページの制作作業を行なっていた。そうしたところ,被告ジー・オー・シーは,被告ヌーヴェルヴァーグジャポンからの本件契約の終了についての連絡を受けたため,ガルソリューションズに対して,現在制作中の本件店舗のホームページにおいて,本件商標を使用しないよう依頼をした。 被告ジー・オー・シーがガルソリューションズに対 約の終了についての連絡を受けたため,ガルソリューションズに対して,現在制作中の本件店舗のホームページにおいて,本件商標を使用しないよう依頼をした。 被告ジー・オー・シーがガルソリューションズに対して依頼したホームページ(丙8。以下「新ホームページ」という。)は,平成22年3月初旬に完成して開設され,同時に被告ジー・オー・シーの本件商標を使用した従前 - 14 -のホームページ(以下「旧ホームページ」という。)は,サーバ上から削除された。 以上のとおりであるから,被告ジー・オー・シーは,平成22年3月初旬以降,インターネット上の広告に本件商標を使用していない。 (3) 原告が証拠として提出するホームページにつきア被告ジー・オー・シーは,上記のとおり,平成22年3月初旬には,自社のホームページを新ホームページに変更しており,旧ホームページについてはサーバ上から削除していた。 イこの点,原告が,被告ジー・オー・シーが現在も本件商標を使用している旨の証拠として提出する甲22の1ないし3のホームページは,以下の理由により,旧ホームページをプリントアウトしたものであることが明らかである。 ① 甲22の1の「information」の記載の箇所(1頁目)には,店舗の看板を外から撮影した写真が掲載されており,同看板には「maniatis」との記載があるが,上記のとおり,被告ジー・オー・シーは,遅くとも平成22年3月11日には,同看板を撤去している。また,2頁目の最下段の店名及び地図内店舗の名称にも「Aパリ」との記載があるが,上記のとおり,同年2月19日には店舗の名称を変更している。とすれば,本記事が,遅くとも平成22年3月11日までに作成された内容であることがわかる。 ② 甲22の2には,各従業員の顔写真とともに,「 記のとおり,同年2月19日には店舗の名称を変更している。とすれば,本記事が,遅くとも平成22年3月11日までに作成された内容であることがわかる。 ② 甲22の2には,各従業員の顔写真とともに,「B クレアツールネオ 2年目」(1頁目),「C クレアツールネクスト 2年目」(2頁目),「DAパリ 2年目」(3頁目),「EAパリ 2年目」(3頁目),「F クレアツール 2年目」(3頁目),との記載があるが,同人らはいずれも平成19年4月1日に被告ジー・オー・シーの運営する各店舗に入社しており,「2年目」との記載があることからす - 15 -れば,同記事が,平成20年4月1日から平成21年3月31日までに作成された内容であることがわかる。 ③ 甲22の2には,「G ライスカラー店長」との記載があるが,被告ジー・オー・シーの店舗である「ライスカラー」は,平成21年12月31日に閉店しており,本記事が,平成21年12月31日までに掲載された内容であることがわかる。 ④ 甲22の3には,中段の店名及び地図内店舗の名称に「Aパリ」との記載があるが,上記のとおり,平成22年2月19日には店舗の名称を変更している。とすれば,本記事が同年3月11日までに作成された内容であることがわかる。 ウ被告ジー・オー・シーとしては,検索サイトにキャッシュとして古いホームページのデータが残存していたことによりプリントアウトできた可能性もあると考えて,原告に対し,この点を指摘し,甲22の1ないし3として提出しているサイトのURL及び当該URLにアクセスした日時,検索サイトの名称等について釈明を求めたが,原告は,被告ジー・オー・シーの求釈明は,原告が明らかに過去の内容のホームページを提出しているという虚偽の主張に基づくものであり,失当である セスした日時,検索サイトの名称等について釈明を求めたが,原告は,被告ジー・オー・シーの求釈明は,原告が明らかに過去の内容のホームページを提出しているという虚偽の主張に基づくものであり,失当であるなどとするのみで,釈明に応じない。 エ以上のとおり,原告の提出する甲22の1ないし3は,いずれも旧ホームページのものであることが明らかであって,被告ジー・オー・シーは本件商標を使用していないものである。 2 争点(2)(被告ヌーヴェルヴァーグジャポンによる「Aノウハウ」の使用の有無)について〔原告の主張〕(1) 「Aノウハウ」の内容についてア 「Aノウハウ」のうちの原告のヘアドレッシングのテクニックの中核と - 16 -なっていたのが,エフィラージュカットである。エフィラージュカットは,原告が創作し,フランスを中心に日本を含む世界中で発展させた原告の代表的なカットで,被告ヌーヴェルヴァーグジャポン及びフランチャイジーに伝授したAノウハウの中核をなすものである(甲19)。原告は,日本においては平成7年から平成22年まで15年にわたり,被告ヌーヴェルヴァーグジャポン及びそのフランチャイジー(約30社)にエフィラージュカットを中心とするAノウハウを伝授し,Aサロンにて使用させ,発展させた。被告ヌーヴェルヴァーグジャポンは,原告のライセンシーであり,エフィラージュカットは原告から伝授されたものであり,これが原告の創作にかかるもので,「Aノウハウ」の中核を成す技術であり,当該ノウハウが原告から伝授されたものであることを十分認識していた。被告ヌーヴェルヴァーグジャポンは,「Aノウハウ」をその核であるエフィラージュカットを中心として引き続き無断で使用していることが明らかである。 イ被告ヌーヴェルヴァーグジャポンは,「A していた。被告ヌーヴェルヴァーグジャポンは,「Aノウハウ」をその核であるエフィラージュカットを中心として引き続き無断で使用していることが明らかである。 イ被告ヌーヴェルヴァーグジャポンは,「Aノウハウ」の内容が特定されていないと主張するが,「Aノウハウ」は,(1)A美容サロンの運営管理ノウハウと(2)Aヘアカット・ヘアドレッシングの技術ノウハウから成るところ,このAノウハウは,特許ノウハウと全く性格を異にし,それらは特許化できないものであり,特許や特許ノウハウにいう特定は不可能である。原告がいかにこの「Aノウハウ」を被告ヌーヴェルヴァーグジャポンらに伝授してきたか,その成果としてAフランチャイジーが繁栄したか,は原告自身の陳述書(甲30)にあるとおりである。 (2) 秘密管理性について美容のヘアドレッシング・カットの技術ノウハウは発案者が自ら公表するものであり,秘密に管理する性質のものでない。特許及びそのノウハウとは全く異なるものである。世界的に著名な原告が創案したヘアドレッシ - 17 -ング・カットのテクニックは世界中に公表され,全世界でAの創案したカットテクニックとして認知されている。特許の対象となる技術のノウハウは秘密管理が原則で,ライセンス契約に基づきその開示に対しロイヤルティが支払われるものであるが,特許の対象とならないヘアドレッシング・カットのテクニックのノウハウは,その性質を全く異にするものである。 〔被告ヌーヴェルヴァーグジャポンの主張〕(1) 「Aノウハウ」の特定について原告は,「Aノウハウ」などとして主張をしているが,そもそも原告は,技術上の情報の具体的内容について何ら主張・立証していない。原告の主張する「Aノウハウ」とは,原告の感性のこととしか言いようがなく,原告は,技術上の情 」などとして主張をしているが,そもそも原告は,技術上の情報の具体的内容について何ら主張・立証していない。原告の主張する「Aノウハウ」とは,原告の感性のこととしか言いようがなく,原告は,技術上の情報についてのメソッド,マニュアルやカリキュラムなどを持ち合わせていないものである。そうであるからこそ,原告には,「Aノウハウ」の具体的内容を明らかにすることができないのである。「Aノウハウ」の具体的内容が特定できないのであれば,被告ヌーヴェルヴァーグジャポンが「Aノウハウ」を使用したとの認定もできないことは自明の理である。 (2) 秘密として管理されていないことについて原告の陳述書によれば,「Aノウハウ」は,秘密として管理されておらず,また,一般公開され,公然と知られている。原告の陳述書には,「Aノウハウ」についての説明において,「私の考え出した2つ目のカット・テクニックで,これを発表したところ好評を博しました」,「私はすでにいくつかの鋏のカット・テクニックや鋏によるエフィラージュを世に出していました」「このカットはヘアメイク美容界の歴史に刻まれた古典的スタンダード技法のひとつとなりました」(甲30,訳文6頁)との記載があることから,Aのカットテクニックは,秘密として管理されているどころか,むしろ逆に,ヨーロッパやアメリカなどの美容界に積極的に発表し - 18 -ていることが明らかである。 (3) 法的保護の対象とならないことについてノウハウが法的に保護されるのは,秘密として管理されている情報であるからであるが,Aのカットテクニックは,美容界に積極的に発表しており,また,美容界の古典的スタンダード技法の一つとなり,公知の技術であるため,法的保護の対象にはならない。 加えて,原告がノウハウと主張する鋏によるエフィラー クニックは,美容界に積極的に発表しており,また,美容界の古典的スタンダード技法の一つとなり,公知の技術であるため,法的保護の対象にはならない。 加えて,原告がノウハウと主張する鋏によるエフィラージュカットは,原告にとっても流行に後れた過去のカットにすぎず,無価値なものである。 すなわち,原告は,平成12年ないし平成17年,男女両用のアンドロジン・カットに新しいテクニックのレザー・カットを組み合わせたカットテクニックを考案,開発した(甲30,訳文5頁)。そして,原告のレザーカット・テクニックは,レザーを使うことで従来と違うタイプのカットになり,まったく新しいものに進化したが,原告は,誰もがレザーを使っているのに日本のAサロンだけがこれを使っていないとし,また他の日本の美容師が,既にレザーカットを取り入れて男女共用のアンドロジン・カットを実践していたというのに,日本のAのサロンではアンドロジン・カットを鋏を使って行っていた,鋏を使ったカットとはまったく別物である,としている(甲30,訳文11頁)。このように,原告は,陳述書(甲30)において,原告が考案・開発したとするAノウハウ(レザーカット,アンドロジン・カット)につき,「ほかの日本の美容師さんたちが皆,すでにレザーカットを取り入れて男女共用のアンドロジン・カットを実践している」ことを容認しており,これらがノウハウの不正使用であるとは主張していない。 (4) エフィラージュカットについて原告は,エフィラージュカットを「Aノウハウ」として主張するが,以下のとおり,失当である。 - 19 -エフィラージュカットは,1950年代には日本に伝わった技術である。 日本では1950年代にはフランス式カットがフレンチカットという名前で伝承され,エフィラージュカットの特徴である - 19 -エフィラージュカットは,1950年代には日本に伝わった技術である。 日本では1950年代にはフランス式カットがフレンチカットという名前で伝承され,エフィラージュカットの特徴であるハサミを引いて切る方法をプルカットと,押して切る技法をプッシュカットとそれぞれ呼び,それらはストロークカットと名前が変化しているところ,エフィラージュカットはまさにこの引いて切るプルカットである(乙1)。このエフィラージュカットと同じ技法は,現在アメリカで「ドライカット」と呼ばれ,技法は様々に変化しているが,日本では「エフィラージュカット」,アメリカでは「ドライカット」,フランスでは「エフィレ,またはエフィラージュ」と呼ばれており,日本でも多くの美容師がドライカット,エフィラージュカットと呼んで仕事に使用している(乙2)。このように,エフィラージュカットは,カット技法の一つにすぎない。 また,原告はカリキュラムや美容師教育のメソッドがないために,日本でエフィラージュカットを前面に出してフランチャイズへの営業をしてきた経緯はあるが,一般の美容師にいくら原告の感性が素晴らしいといっても,原告の感性そのものを技術としてそのまま理解できないのは当然である。そこでフランス式カットであるエフィラージュカットを指導してきた。過去も現在もフランスではエフィラージュは普通の美容師が当たり前のように使用している技術で,エフィラージュには決まったセオリーがあるわけでなく個人の感覚で使用しているのが現状である。 このように,エフィラージュカットは,ハサミの切り方であって,原告だけが用いる特殊なカットではなく,いわゆる切り方の呼び名にすぎないのであるから,ノウハウと呼べるようなものではない。 3 争点(3)(被告ジー・オー・シーによる「Aノウハウ」の使用の有 って,原告だけが用いる特殊なカットではなく,いわゆる切り方の呼び名にすぎないのであるから,ノウハウと呼べるようなものではない。 3 争点(3)(被告ジー・オー・シーによる「Aノウハウ」の使用の有無)について〔原告の主張〕 - 20 -被告ジー・オー・シーは,「Aノウハウ」を原告に無断で使用して(甲22の1~3),原告のAノウハウに対する権利を侵害している。エフィラージュカットの使用の継続は,「Aノウハウ」の使用の継続に当たる。被告ジー・オー・シーは,平成22年2月1日以降も引き続き継続して「Aノウハウ」を使用し続けていたことは明白である。 〔被告ジー・オー・シーの主張〕原告は,「Aノウハウ」の内容について,ライセンス契約の定義を引用し,Aのヘアドレッシングのテクニック及びノウハウをいい,Aスタジオのノウハウを含むがAスタジオのノウハウに限るものではない等と主張するが,原告の主張する「Aノウハウ」なるものは具体的に明らかではない。被告ジー・オー・シーは,原告に対し,「Aノウハウ」の具体的な内容,ノウハウを被告ジー・オー・シーがいかなる態様で使用していると主張するのかについて釈明を求めたが,原告は応じない。 原告が主張する「Aノウハウ」は内容が特定されていないばかりか,被告ジー・オー・シーのいかなる行為がその不正使用に該当するかについても何らの主張をしない。 以上によれば,原告の主張に理由がないことは明らかである。 なお,エフィラージュカットについていえば,被告ジー・オー・シーは,被告ヌーヴェルヴァーグジャポンからの電話による連絡を受け,平成22年2月1日以降,本件店舗において,顧客に対し,エフィラージュカットを使用していない。 4 争点(4)(原告の損害額)について〔原告の主張〕(1) 原告 らの電話による連絡を受け,平成22年2月1日以降,本件店舗において,顧客に対し,エフィラージュカットを使用していない。 4 争点(4)(原告の損害額)について〔原告の主張〕(1) 原告は,被告ジー・オー・シーに対し,民法709条により,損害賠償として,以下のア,イの合計640万円の支払を求める。 ア 「Aノウハウ」の不正使用による損害賠償金 - 21 -被告ジー・オー・シーの本件店舗の1か月の売上高100万円×32か月(平成22年3月から平成24年10月まで)×10%(「Aノウハウ」の使用料率)=320万円イ本件商標の不正使用による損害賠償金被告ジー・オー・シーの本件店舗(サロン)の1か月の推定売上高100万円×32か月(平成22年3月から平成24年10月まで)×10%(本件商標の使用料率)=320万円(2) 原告は,被告ヌーヴェルヴァーグジャポンに対し,民法709条により,原告が被告ヌーヴェルヴァーグジャポンの「Aノウハウ」の不正使用により蒙った損害の賠償として,640万円の支払を求める。 被告ヌーヴェルヴァーグジャポンのサロンの1か月の売上高200万円×32か月(平成22年3月から平成24年10月まで)×10%(「Aノウハウ」の使用料率)=640万円〔被告らの主張〕否認し争う。 第4 当裁判所の判断 1 証拠(甲1ないし38の3,乙1ないし6,丙1ないし15)及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認められ,同認定を覆すに足る的確な証拠はない。 (1) 本件で「Aノウハウ」を構成する旨主張されているところのエフィラージュカットについて,一般の美容室のホームページには,「手首を振り引きながら毛先の方向へ向かってカットする。これを連続して行うカット技法。 (根元の ハウ」を構成する旨主張されているところのエフィラージュカットについて,一般の美容室のホームページには,「手首を振り引きながら毛先の方向へ向かってカットする。これを連続して行うカット技法。 (根元の毛量はそのまま,毛先が細くなる。)」と説明されている。〔乙1〕また,エフィラージュカットについては,「髪をナチュラルドライの状態でカットしていきます。いわゆるドライカットの一つです。」,「エフィラ - 22 -ージュカットは『筆先のように・・・』との意味を持ち万人向けのマニュアルはありません。一人一人の髪質,量,骨格などを考慮しパネルではなく毛束でカットします。経験とセンス,力量が問われる所です。」,「当店自慢のエフィラージュカットとは髪をハーフドライの状態で切りはじめ,髪一本一本の流れやクセを確かめながら丁寧にヘアデザインし,ナチュラルドライの状態で仕上げるテクニック」などとして,多数の美容室において,ホームページ等で紹介されている。〔乙2〕アメリカでは,エフィラージュカットと同様の技法は,「ドライカット」と称されている。〔乙5〕(2) 原告は,その陳述書(甲30)における「Aノウハウ」に関する説明において,「一番目のとても重要なカット・テクニックは,鋏カット・テクニックのひとつですが,私は,これをヨーロッパとアメリカで,その後日本でも,最初に取り入れたプロの美容師の一人でした。鋏を使ったエフィラージュカットのテクニックですがそれを私の考案でA特有の日本女性の髪に合ったものにしました。」,「私の考え出した2つ目のカット・テクニックで,これを発表したところ好評を博しました」,「私はすでにいくつかの鋏のカット・テクニックや鋏によるエフィラージュを世に出していました」「このカットはヘアメイク美容界 した2つ目のカット・テクニックで,これを発表したところ好評を博しました」,「私はすでにいくつかの鋏のカット・テクニックや鋏によるエフィラージュを世に出していました」「このカットはヘアメイク美容界の歴史に刻まれた古典的スタンダード技法のひとつとなりました」(訳文5,6頁)としている。 (3) 一方,本件契約の終了に関する事実経過について,被告ジー・オー・シーは,平成22年2月5日,被告ヌーヴェルヴァーグジャポンから,原告との本件契約が終了した旨の通知を受けた。〔丙1〕また,同月12日には,被告ジー・オー・シーは,被告ヌーヴェルヴァーグジャポンの代表者から,電話で本件商標等の使用を止めるよう指示を受けた。 これを受けて,被告ジー・オー・シーは,同月19日,高知市保険所長 - 23 -に対し,被告ジー・オー・シーが運営する美容室である本件店舗の名称を「A・パリ」から「美容室bau」に変更する旨の届出をし,その時点で,本件店舗の名称における本件商標と同一である被告標章の使用を中止した。 〔丙2,3〕また,被告ジー・オー・シーは,同年3月11日には本件店舗看板の改装工事に着手し,同工事は同月21日までに終了した。〔丙4,5〕本件店舗のホームページについて,被告ジー・オー・シーは,これらに先立つ平成21年11月ころ,ガルソリューションズに対し,本件店舗のホームページのリニューアルを依頼しており,同社は新たなホームページの制作作業を行なっていた。被告ジー・オー・シーは,被告ヌーヴェルヴァーグジャポンから本件契約終了の連絡を受けたため,ガルソリューションズに対して,制作中の本件店舗のホームページにおいて,被告標章ないし本件商標を使用しないよう依頼した。そして,被告ジー・オー・シーがガルソリューションズに対して依頼し 受けたため,ガルソリューションズに対して,制作中の本件店舗のホームページにおいて,被告標章ないし本件商標を使用しないよう依頼した。そして,被告ジー・オー・シーがガルソリューションズに対して依頼して完成した新ホームページは,平成22年3月初旬に開設され,被告ジー・オー・シーの被告標章(本件商標)を使用した旧ホームページもサーバ上から削除された。新ホームページには,被告標章(本件商標)は表示されていない。〔丙7,8,15〕なお,高知における店舗情報を掲載するポータルサイトである「ララスタイル」上の本件店舗所在地の店舗(店舗名は既に「bau」と変更されている。)についての情報には,「エフィラージュカット」,「パリの有名ヘアデザイナー『A』。彼独自のエフィラージュカットは・・・」との記載があるが,被告標章(本件商標)は掲載されていない。〔甲31〕上記「ララスタイル」上の店舗情報については,平成22年1月末ないし2月ころ,被告ジー・オー・シーが,その管理を依頼した管理会社である株式会社トランスウェーブ(以下「トランスウェーブ」という。)において,被告ジー・オー・シーからその他のサイトに掲載された店舗情報も含め,エ - 24 -フィラージュカットに関する記載の削除依頼を受けていたところ,トランスウェーブにおいて,上記「ララスタイル」上の情報についてのみ変更を失念していたことがあったものの,上記「ララスタイル」上の店舗情報についても,平成24年11月までに,トランスウェーブにおいてエフィラージュカットに関する記載は削除された。〔丙13〕(4) 原告が,被告ジー・オー・シーのホームページであるとする甲22の2には,被告ジー・オー・シーの従業員の顔写真とともに,「B クレアツールネオ 2年目入社2年目の坂出です。4月から新 3〕(4) 原告が,被告ジー・オー・シーのホームページであるとする甲22の2には,被告ジー・オー・シーの従業員の顔写真とともに,「B クレアツールネオ 2年目入社2年目の坂出です。4月から新人も入社し,教えられる立場から教える立場になりました。」(1~2頁目),「C クレアツールネクスト 2年目僕は入社して2年目になります。」(2頁目),「DAパリ 2年目高校を卒業後入社し,現在2年目です。」(3頁目),「EAパリ 2年目入社して2年目になります。」(3頁目),「Fクレアツール 2年目入社して2年目になります。」(3~4頁目)等の記載があるところ,B,C,D,E,Fは,いずれも平成19年4月1日に被告ジー・オー・シーの運営する各店舗に入社した者であり,これらの者が入社2年目に該当するのは,平成20年4月ないし平成21年3月である。 〔丙14の1~5〕(5) 平成25年2月20日付けで,被告ジー・オー・シーは,高知市保険所長に対して,本件店舗所在地の「美容室bau」についても,同月19日をもって廃止した旨の美容所廃止届を提出した。〔丙12〕, 2 争点(1)(被告ジー・オー・シーによる本件商標の使用の有無)について(1) 前記1で認定した事実によれば,被告ジー・オー・シーは,本件店舗所在地において,「美容室bau」と名称を変更した後の美容室についても既に営業を廃止しており,またホームページ上においても本件商標を使用しているものとは認められない。 そうすると,原告が,被告ジー・オー・シーに対し,本件店舗及びホー - 25 -ムページ上において本件商標と同一である被告標章の使用の差止めを求める請求は理由がないというべきである。 (2) 原告は,被告ジー・オー・シーが本件商標を使用している旨の証拠 - 25 -ムページ上において本件商標と同一である被告標章の使用の差止めを求める請求は理由がないというべきである。 (2) 原告は,被告ジー・オー・シーが本件商標を使用している旨の証拠として,甲22の1ないし3を提出する。 しかし,前記1のとおり,これらはいずれも被告ジー・オー・シーにおける平成21年頃までの情報であり,被告ジー・オー・シーは本件店舗に関して平成22年3月に新ホームページを開設している。加えて,原告が甲22の1ないし3の情報を入手したとする平成24年4月16日ないし同年10月12日の時点において,被告ジー・オー・シーは,甲22の1ないし3にある「A・パリ」との店舗名を用いていないことは,上記1で認定した美容所確認証(丙3)の記載からも明らかである。 また,原告は,被告ジー・オー・シーからキャッシュに保存されている可能性等の指摘を受けて,甲22の1ないし3のURLや,検索サイトを使用したのであればその名称等について釈明を求められたにもかかわらず,応答しないとしている。 以上によれば,甲22の1ないし3については,現在も被告ジー・オー・シーが本件商標を使用している旨の証拠と認めることはできないというべきである。 この点に関して原告は,被告ジー・オー・シーの新ホームページ(丙8)に記載された「(省略)」のドメインの登録開始(使用開始)は平成23年11月10日であり,また「(省略)」については存在しないとし,被告ジー・オー・シーが新ホームページを開設したのは平成22年3月ではないと主張し,それに沿う証拠として甲26,27を提出する。 しかし,「(省略)」のドメインの登録開始の日付けが平成23年11月10日とされているのは,同日,被告ジー・オー・シーがレンタルサーバーサービスをガルソリューションズの管理する ,27を提出する。 しかし,「(省略)」のドメインの登録開始の日付けが平成23年11月10日とされているのは,同日,被告ジー・オー・シーがレンタルサーバーサービスをガルソリューションズの管理するサーバーに移転したことに伴 - 26 -うものであり(丙10,11),新ホームページの開設とは直接の関係がないものと認められる。また,「(省略)」についても,サブドメインを含むものであり,ドメイン名である「(省略)」での登録を行っていることが認められる。 したがって,原告の上記主張はその前提を欠き,採用することができない。 (3) 原告は,被告ジー・オー・シーに対し,民法709条に基づき,本件商標の使用に対する損害賠償を求めるものであるところ,前記1で認定したとおり,被告ジー・オー・シーは,平成22年2月19日には本件店舗の名称を「美容室bau」に変更し,本件店舗での本件商標(被告標章)の使用を中止したとしており,本件店舗における被告標章の付された看板の工事の開始は同年3月11日ではあるものの,美容室名が「bau」と変更されたもとで,同日まで被告標章が付された看板が本件店舗前に表示されていたものと認めるに足る証拠もない。また,旧ホームページにおける被告標章の使用についても,旧ホームページは新ホームページが同年3月上旬にアップされて削除されたとしているところ,同年3月に至っても,旧ホームページにおいて被告標章が表示されていたと認めるに足る証拠もない。その他,原告が被告ジー・オー・シーにおける本件商標の使用により損害を被った旨の主張立証もないから,原告の請求には理由がないというべきである。 3 争点(2)(被告ヌーヴェルヴァーグジャポンによる「Aノウハウ」の使用の有無)について(1) 原告は,原告の「Aノウハウ」を 証もないから,原告の請求には理由がないというべきである。 3 争点(2)(被告ヌーヴェルヴァーグジャポンによる「Aノウハウ」の使用の有無)について(1) 原告は,原告の「Aノウハウ」を被告ヌーヴェルヴァーグジャポンが不正に使用していると主張して,民法709条に基づき損害賠償請求をするので,以下,この点について検討する。 技術上ないし営業上有用であり,秘密として管理されている非公知の情報につき,一定の場合にノウハウとして法的保護に値するものとして,その不 - 27 -正使用について不法行為責任を問うことが可能な場合があるとしても,原告の主張する「Aノウハウ」については,まず,その内容自体が明らかでない。 原告の主張内容は,「Aノウハウ」はエフィラージュカットにより体現される,エフィラージュカットが「Aノウハウ」であることは周知の事実である,エフィラージュカットの使用の継続は,「Aノウハウ」の使用の継続であるなどと主張した(原告第3準備書面〔平成25年7月2日付け〕)ところ,被告ヌーヴェルヴァーグジャポンがエフィラージュカットは美容業界において一般に使用されている用語である旨の書証を提出した後は,原告はエフィラージュカットのみが「Aノウハウ」であると主張しているのではない,「Aノウハウ」は,A美容サロンの運営管理ノウハウとAヘアカット・ヘアドレッシングの技術ノウハウから成るなどとする(原告第5準備書面〔平成25年9月30日付け〕)が,そこにおいても,A美容サロンの運営管理ノウハウとAヘアカット・ヘアドレッシングの技術ノウハウの具体的内容を明らかにしていない。原告は,被告ヌーヴェルヴァーグジャポンから,「Aノウハウ」として主張する具体的内容を明らかにするよう釈明を求められたにもかかわらず,これを明確にせず,ま ノウハウの具体的内容を明らかにしていない。原告は,被告ヌーヴェルヴァーグジャポンから,「Aノウハウ」として主張する具体的内容を明らかにするよう釈明を求められたにもかかわらず,これを明確にせず,また,被告ヌーヴェルヴァーグジャポンからの,原告の主張する「Aノウハウ」は,原告の感性のことであるから具体的内容が明らかにできないとする主張に対しても,有効な反論がされていない。 また,個々的に原告の主張する内容についてみても,まず,エフィラージュカットについては,前記1で認定したとおり,それ自体カット技法の一つとして一般に紹介されているものであり,公知の内容であるというほかない。 さらに,A美容サロンの運営管理ノウハウ,Aヘアカット・ヘアドレッシングの技術ノウハウとする内容についても,具体的内容が明らかにされていない。 以上によれば,原告主張の「Aノウハウ」については,請求の前提となる - 28 -具体的内容の特定を欠くものといわざるを得ない。 原告は,被告ヌーヴェルヴァーグジャポンのいかなる行為が「Aノウハウ」の不正使用に当たるのかについても具体的な主張をせず,上記1認定事実記載の内容を含む原告の陳述書(甲30)のほかには,証拠も提出しない。 (2) その他,法的保護に値する原告のノウハウの具体的内容,そしてそのノウハウが有用かつ非公知であり,秘密として管理されてきたこと等について,原告による主張立証がされているとは到底いえないというほかない。 (3) 以上の検討によれば,原告の被告ヌーヴェルヴァーグジャポンに対する「Aノウハウ」に係る請求については,理由がないというべきである。 4 争点(3)(被告ジー・オー・シーによる「Aノウハウ」の使用の有無)について原告主張の「Aノウハウ」については,その内容が特定されて 請求については,理由がないというべきである。 4 争点(3)(被告ジー・オー・シーによる「Aノウハウ」の使用の有無)について原告主張の「Aノウハウ」については,その内容が特定されておらず,その他,法的保護に値するノウハウについての主張立証がされているといえないことについては,前記3で検討したとおりである。そうすると,原告の被告ジー・オー・シーに対する「Aノウハウ」の使用に基づく損害賠償請求についても,同様に理由がないこととなる。 5 結論以上のとおりであり,その余の点について判断するまでもなく,原告の請求はいずれも理由がないからこれを棄却することとし,主文のとおり判決する。 東京地方裁判所民事第40部 裁判長裁判官 東海林保 裁判官 今井弘晃 裁判官 足立拓人

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