平成12(ワ)2916 古泉閣損害賠償

裁判年月日・裁判所
平成14年10月30日 神戸地方裁判所
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判決文本文11,805 文字)

判決平成14年10月30日神戸地方裁判所平成12年(ワ)第2916号損害賠償請求事件 主文 1 被告は,原告に対し,金115万円及びこれに対する平成13年9月1日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 2 原告のその余の請求を棄却する。 3 訴訟費用は,これを3分し,その1を被告の負担とし,その余は原告の負担とする。 4 この判決の第1項は仮に執行することができる。 事実及び理由 第1 原告の請求被告は,原告に対し,金370万円及びこれに対する平成13年9月1日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 第2 事案の概要 1 請求原因(1) 当事者被告は有馬温泉の老舗旅館「A」を経営する株式会社であり,原告は平成7年12月20日からその従業員仲居として雇用されていたものである。 (2) ボーナスの差別支給被告は,毎年夏と冬,従業員全員に対し,毎回15万円程度の賞与を支給している。 ところが被告は,原告に対し,従業員の中で最低の評価をなし,次のとおりの賞与しか支給しなかった。 ア平成11年冬期賞与 0円イ平成12年夏期賞与 1万円ウ平成12年冬期賞与 3万8100円エ平成13年夏期賞与 3万8100円(3) 差別支給に対する被告の対応原告は,平成12年9月上旬,被告に対し,原告に対する平成11年冬期賞与及び平成12年夏期賞与の支給につき説明を求めたが,被告は,抽象的査定項目が記載された「人事考課の手引書 の対応原告は,平成12年9月上旬,被告に対し,原告に対する平成11年冬期賞与及び平成12年夏期賞与の支給につき説明を求めたが,被告は,抽象的査定項目が記載された「人事考課の手引書」と題する書面を送付し,「規準に従い,業績,能力及び執務態度の各評定を厳正に行ったうえで算定したもので,恣意的な差別評価ではありません。」と回答したのみで,具体的な回答は一切しなかった。 原告は,平成12年10月10日,被告を相手方として,原告に対する最低の評価による平成11年冬期賞与及び平成12年夏期賞与の支給が原告の名誉・信用を著しく傷つけたものであることを理由に,損害賠償を求める調停を神戸簡易裁判所に申し立てた(同簡易裁判所平成12年(ノ)第808号)が,被告は,まったく支払う意思はないと回答するのみであったため,まったく進行せず,第2回期日で不調となった。 (4) 差別支給の違法性及び原告の損労働基準法3条は,使用者が労働者を差別取り扱いすることを禁止しており,上記被告の原告に対する最低の評価による恣意的な差別支給及びこれに続く調停での問答無用の不誠実な態度は,原告に対する不法行為を構成するものであり,原告は,これにより,著しい精神的ショックを受けたばかりか,職場における名誉信用を失墜させられた。原告が被ったそれら精神的苦痛に対する慰謝料は100万円が相当である。 (5) 客室係から厨房洗い場係への違法な配転命令と退職に至る経緯ア旅館業においては,客室係の接客業務と厨房の洗い場業務とでは明らかに業務内容や勤務形態,賃金体系が異なり,従業員募集の段階から職種は明確に区別されており,原告は,被告に入社当初から客室係として職務が特定されていたものであるから,被告が,原告を職種の異な は明らかに業務内容や勤務形態,賃金体系が異なり,従業員募集の段階から職種は明確に区別されており,原告は,被告に入社当初から客室係として職務が特定されていたものであるから,被告が,原告を職種の異なる厨房洗い場係に配置転換を命ずるには原告の承諾を要する。 ところが,被告は,平成13年5月28日,原告に対し,客室係から厨房洗い場係に配置転換する旨を一方的に通告し(以下「本件配転命令」という。),同月31日以降,原告が客室係として待機しても,その仕事をさせず,いわゆる職場八分とした。 イ原告は,被告の上記措置によりノイローゼ状態となり,同年6月26日から有給休暇を取って自宅で休養したが,ノイローゼが高じて先行きに不安を感じた結果,同年7月15日自殺を図るに至った。 原告は,幸いにも命は取りとめたが,これ以上勤務の継続は無理であると判断されたことから,同月23日退職届を提出し,同年8月6日をもって,被告を退職した。 (6) 違法な配転命令による原告の損害原告は,上記のとおり,被告の違法な本件配転命令及び職場八分といった嫌がらせ行為によって,退職せざるを得なくなったものであり,それら被告の行為は原告に対する不法行為を構成するものであり,原告がこれにより被った精神的苦痛は著しく,その慰謝料額は200万円が相当である。 (7) また,原告は,上記各損害の賠償を求めるために,原告訴訟代理人弁護士に依頼して本訴の提起を余儀なくされたものであるから,弁護士費用70万円も被告の上記各不法行為による損害である。 (8) よって,原告は,被告に対し,不法行為に基づく損害賠償として合計370万円及びこれに対する不法行為後であることが明らかな平成13年9月1日から支払済み 記各不法行為による損害である。 (8) よって,原告は,被告に対し,不法行為に基づく損害賠償として合計370万円及びこれに対する不法行為後であることが明らかな平成13年9月1日から支払済みまで民法所定年5分の割合による遅延損害金の支払を求める。 2 請求原因に対する被告の認否(1) 請求原因(1)の事実は認める。 (2) 同(2)の事実のうち,原告に対する平成11年冬期賞与,平成12年夏期賞与,平成12年冬期賞与及び平成13年夏期賞与の各支給額が原告主張の額であったことは認めるが,その余の事実は否認ないし争う。 (3) 同(3)の事実のうち,原告が平成12年9月上旬被告に対し,平成11年冬期賞与及び平成12年夏期賞与の支給につき説明を求め,これに対し,被告が,「人事考課の手引書」と題する書面を原告に送付し,「規準に従い,業績,能力及び執務態度の各評定を厳正に行ったうえで算定したもので,恣意的な差別評価ではありません。」と回答したこと,原告が,平成12年10月10日,被告を相手方として,原告に対する最低の評価による平成11年冬期賞与及び平成12年夏期賞与の支給が原告の名誉・信用を著しく傷つけたものであることを理由に,損害賠償を求める調停を神戸簡易裁判所に申し立てた(同簡易裁判所平成12年(ノ)第808号)が,同調停が第2回期日で不調となったことは認める。 (4) 同(4)の事実は否認ないし争う。 労働基準法3条は,労働者の国籍,信条又は社会的身分を理由とする差別的取扱を禁止しているのであって,労働者の業績,能力及び勤務態度を評定して賃金に差異を設けることを禁止しているものではない。原告に対する平成11年冬期賞与,平成12年夏期賞与,平成12年冬期賞与及び平成13年夏期賞与の各支給額は 労働者の業績,能力及び勤務態度を評定して賃金に差異を設けることを禁止しているものではない。原告に対する平成11年冬期賞与,平成12年夏期賞与,平成12年冬期賞与及び平成13年夏期賞与の各支給額は,いずれも原告に対する人事考課に基づき適正に算定されたものであり,労働基準法3条の差別的取扱には当たらない。また,被告は,前記各賞与の各算定の理由についてその都度原告に説明してもおり,その後の被告の対応にも何ら違法な点は存しない。被告の原告に対する上記各賞与の支給及びその後の被告の対応につき,不法行為であるとか名誉毀損であるとか称して非難されるいわれはない。 (5) 同(5)アの事実のうち,旅館業においては,客室係の接客業務と厨房の洗い場業務とでは明らかに業務内容や勤務形態が異なること,被告が平成13年5月28日原告に対し客室係から厨房洗い場係に配置転換する旨を通告したことは認めるが,その余の事実は否認ないし争う。 同(5)イの事実のうち,原告が,平成13年6月26日は公休を取得し,同月27日から同年7月28日までは有給休暇を取得したこと,原告が,同月23日に退職届を提出し,同年8月6日をもって被告を退職したことは認めるが,その余の事実は知らない。 (6) 同(6)の事実は,いずれも否認ないし争う。 被告が,原告に対し,客室係から厨房洗い場係への配置転換を命じた経緯は以下のとおりであり,原告の客室係としての執務態度があまりに劣悪であったことから,これにより被告の客室係の業務の適正な遂行を妨げられるのを防ぐため,やむを得ず行った正当な配転命令である。 ア原告は従来から上司の指示に従わないことが多く,自己中心的な言動が多くあり,他の客室係であれば容易にできる業務も原告はできないと言って営業部 やむを得ず行った正当な配転命令である。 ア原告は従来から上司の指示に従わないことが多く,自己中心的な言動が多くあり,他の客室係であれば容易にできる業務も原告はできないと言って営業部のだれかれ構わずに怒鳴り込み,周囲の従業員の迷惑になっていたもので,被告は,原告に対し,従来から再三にわたって,原告の執務態度の劣悪さを指摘してこれを改めるよう注意を繰り返してきた。それにもかかわらず,平成13年4月21日,同年5月27日には次のような事態が生じた。 原告の平成13年4月21日の業務担当は4組14名の接客をする予定であったが,これは工夫次第で1人で処理できるものであった。ところが,原告は,1人では担当できないとして臨時客室係を原告の補助につけてほしいとB副支配人に要求した。そこで,B副支配人は食事専用の部屋を設け,事務職員を応援させるように手配したが,原告はB副支配人の指示に従わず,あくまでも臨時客室係を補助につけてほしいと言い張った。そこで,B副支配人は,やむを得ず,他の宴会係についていた臨時客室係を原告の補助につけた。そのため,他の宴会係は,団体客14名の接客を1人で行った。 B副支配人は,翌日の平成13年4月22日,客室係のミーティングにおいて,原告に対し,前日のような我が侭を言わないように注意し,自分が相手の立場であればどうするのかと問いただしたが,原告は,「人のことは知らない」と答えるのみで,まったく反省がなかった。 イ被告は,平成13年5月27日(日曜日),当日予約の新規の宿泊客を原告が担当するように割り当てたが,原告はこれを拒否した。そのため,被告は,前記新規の宿泊客を他の客室係に担当させた。 (7) 同(7)の事実は争う。 第3 当裁判所の判断 1 請 泊客を原告が担当するように割り当てたが,原告はこれを拒否した。そのため,被告は,前記新規の宿泊客を他の客室係に担当させた。 (7) 同(7)の事実は争う。 第3 当裁判所の判断 1 請求原因(1)の事実(当事者)は,当事者間に争いがない。 2 請求原因(2)ないし(4)(賞与の差別支給の不法行為に基づく損害賠償請求)について(1) 請求原因(2)の事実のうち,原告の被告に対する賞与の支給額が,平成11年冬期賞与につき0円,平成12年夏期賞与につき1万円,平成12年冬期賞与につき3万8100円,平成13年夏期賞与につき3万8100円であったこと,同(3)の事実のうち,原告が平成12年9月上旬被告に対し,平成11年冬期賞与及び平成12年夏期賞与の各支給につき説明を求め,これに対し,被告が,「人事考課の手引書」と題する書面を原告に送付し,「規準に従い,業績,能力及び執務態度の各評定を厳正に行ったうえで算定したもので,恣意的な差別評価ではありません。」と回答したこと,原告が,平成12年10月10日,被告を相手方として,原告に対する最低の評価による平成11年冬期賞与及び平成12年夏期賞与の支給が原告の名誉・信用を著しく傷つけたものであることを理由に,損害賠償を求める調停を神戸簡易裁判所に申し立てた(同簡易裁判所平成12年(ノ)第808号)が,同調停が第2回期日で不調となったことは,当事者間に争いがない。 (2) 前記争いのない事実,証拠(甲1の1ないし7,2,3の1・2,4,15,乙1~3,5~10,12~21,証人C,同D,同E)及び弁論の全趣旨を総合すると,次の事実が認められる。 ア賞与の支給に関する規定とその査定の基準被告は,その賃金規則第26条において「賞与は毎年4月より9月 ,同E)及び弁論の全趣旨を総合すると,次の事実が認められる。 ア賞与の支給に関する規定とその査定の基準被告は,その賃金規則第26条において「賞与は毎年4月より9月まで,及び10月より翌年3月までの各期間における当社の成績及びその期間中における各従業員の勤続・勤怠・勤務成績等を勘案して査定し7月及び12月に支給する。」旨を規定している。そして,被告は,同規定に基づき,業績,能力及び執務態度についての人事考課を行い,これを5段階に分けて査定し,従業員の基本給にその査定に対応した評価率を乗じて算定される賞与を支給してきたところ,被告は,平成11年9月には,その人事考課につき,詳細な評定の方法,評定項目ごとの着眼点,評定要素等をまとめた「人事考課の手引書」を作成し,以後は,同手引書に依拠した査定に基づき,賞与の支給を行ってきた。 イ賞与についての具体的査定原告の平成10年夏期,同年冬期,平成11年夏期の各賞与に関しての人事考課の結果は,いずれもC(普通)評価で,原告は,平成10年夏期賞与については15万2500円,同年冬期賞与については13万7200円,平成11年夏期賞与については9万5300円の各支給を受けた。 原告の平成11年冬期賞与に関しての人事考課は,第1次査定は上司で客室係のチーフであったDが,第2次査定はB副支配人がこれを行ったが,いずれも原告の執務態度についての評価(積極性,協調性,責任感,規律の遵守)が低く,第1次査定の評点49点,第2次査定の評点48点,その平均値48点(小数点以下切り捨て)で,D(やや不足)評価となり(ただし,同期の評価は実質的にはA~Dの4段階の評価になっていた。),客室係従業員の中では最低の評価であった。そして,被告 8点,その平均値48点(小数点以下切り捨て)で,D(やや不足)評価となり(ただし,同期の評価は実質的にはA~Dの4段階の評価になっていた。),客室係従業員の中では最低の評価であった。そして,被告は,評価点54点以下は評価率0としていたため,原告の賞与額は0円であった。なお,同期の賞与につき支給を受けられなかった各室係従業員は他にも2名いた。また,原告に対する査定がD評価で賞与支給額が0であることについては,被告は,平成11年冬期賞与計算書にその旨を明記して原告に告知しており,積極性,協調性,責任感,規律遵守が劣っているとの評価を行ったことについても,同計算書のコメント欄に記載して,被告はこれを原告に告知した。 原告の平成12年夏期賞与に関しての人事考課は,Dチーフの第1次査定の評点が47点,第2次査定のB副支配人の評定が52点,第3次評定のC支配人の評定が55点,その平均値は51点でE(不足であり努力を要する)評価で,前期と同様客室係従業員の中では最低の評価であった。原告の評点では,本来支給額は0であったが,被告は,E評価の従業員に対しては1万円を支給することとしたので,原告は1万円の支給を受けた。客室係従業員の中では,1万円の支給を受けたのは原告のみであった。なお,被告は,原告に交付した平成12年夏期賞与計算書にコメントとして「接遇面で努力を要します。積極性,協調性に欠けます。向上に努めて下さい。」旨を記載し,その努力を促した。 原告の平成12年冬期賞与に関しての人事考課は,第1次査定をB副支配人が,第2次査定をC支配人が行ったが,その評点は,それぞれ60点,59点で,平均値は59点であった。その結果,原告は,D評価により,3万8100円の賞与の支給を受けた。なお,今期の評価では,原告より低い評 2次査定をC支配人が行ったが,その評点は,それぞれ60点,59点で,平均値は59点であった。その結果,原告は,D評価により,3万8100円の賞与の支給を受けた。なお,今期の評価では,原告より低い評価を受けた者が4名いた。また,被告は,原告に交付した平成12年冬期賞与計算書のコメントには「自己中心の考えでチームワークを乱す。」旨を記載した。 原告の平成13年夏期賞与に関しての人事考課は,Dに代わってチーフとなったEが第1次査定を,B副支配人が第2次査定を行い,その各評点は,53点,46点であったところ,C支配人において,上記各査定を総合して評点を50点とした。その結果,原告は,E評価により,3万8100円の賞与の支給を受けた。なお,原告は,客室係従業員の中では最低の評価であった。 ウ調停の経緯原告は,原告訴訟代理人弁護士を介し,平成12年9月5日付書面で,被告に対し,原告に対する平成11年年末賞与及び平成12年夏期賞与の支給が原告の名誉人格を傷つける恣意的な差別支給である旨を申し入れた。これに対し,被告は,同月14日付書面で,原告の平成11年年末賞与及び平成12年夏期賞与は,いずれも被告において定めている規準に従い,業績,能力及び執務態度の各評定を厳正に行ったうえで算定したものである旨を回答するとともに,その査定方法等につき作成した前記「人事考課の手引書」を原告訴訟代理人弁護士にあてて送付し,その理解を求めた。 しかし,原告は,これに納得せず,平成12年10月10日,被告を相手方として,原告に対する最低の評価による平成11年冬期賞与及び平成12年夏期賞与の支給が原告の名誉・信用を著しく傷つけたものであることを理由に,損害賠償を求める調停を神戸簡易裁判所に申し立てた( 手方として,原告に対する最低の評価による平成11年冬期賞与及び平成12年夏期賞与の支給が原告の名誉・信用を著しく傷つけたものであることを理由に,損害賠償を求める調停を神戸簡易裁判所に申し立てた(同簡易裁判所平成12年(ノ)第808号)が,被告は,まったく支払う意思はないと回答するのみであったため,同調停は,第2回期日で不調となった。 (3) 原告は,被告の原告に対する賞与支給が恣意的な差別支給で違法であると主張するところ,確かに,原告の賞与は,平成11年冬期賞与を境として,それ以前に比し,明らかな減額となっていることが認められる。 しかし,前記認定のとおり,被告における賞与の支給は,被告の就業規則の定めに従い,各従業員の勤続・勤怠・勤務成績等を勘案した査定に基づいて支給されることになっており,かつ,その査定は,被告がその詳細な評価項目,着眼点等をまとめた「人事考課の手引書」に依拠して,複数の職制によってなされているところ,平成11年冬期賞与以降の原告の賞与が減額となったのは,上記査定の評価が低下したからにほかならず,そのことから直ちに被告のした賞与の支給が労働基準法3条に違反する不当な差別支給であるものと認めるのは困難である。 もっとも,原告の陳述書(甲15,18,20)及び原告本人尋問の結果中には,原告が平成10年に不動産を購入したことに絡んで,Dチーフやその後任のチーフになったEらがこれをねたんで何かにつけ原告をいじめるようになったもので,平成11年冬期賞与以降の賞与が減額等になったのも,そのいじめによる評価の結果にほかならないとの部分があり,元同僚であったFの陳述書(甲12),手紙(甲17)及び同証人の証言中にもこれに沿うかのような部分があるが,D及びEの各陳述書(乙18~20)及び両名の各 る評価の結果にほかならないとの部分があり,元同僚であったFの陳述書(甲12),手紙(甲17)及び同証人の証言中にもこれに沿うかのような部分があるが,D及びEの各陳述書(乙18~20)及び両名の各証言と対比して,にわかには採用できず,他に,被告の職制による原告に対する平成11年冬期賞与以降の人事考課が,いじめ目的で不当に低い評価がなされていたものと認めるに足りる証拠はない。 したがって,原告に対する平成11年冬期,平成12年夏期,同年冬期及び平成13年夏期の各賞与支給につき,違法な差別支給があったとは認められない。 また,原告は,原告が被告にした平成11年冬期及び平成12年夏期賞与に対する説明要求及びその後の調停における被告の応答についても,これが不誠実で違法であると主張するが,それらについての被告の応答につき,違法と評価されるようなものがあったとは認めることができない。 (4) 以上のとおりで,賞与の差別支給の不法行為に基づく原告の請求は,その余について判断するまでもなく,これを認めることはできない。 3 請求原因(5)ないし(7)(違法な配置転換の不法行為に基づく損害賠償請求)について(1) 請求原因(5)アの事実のうち,旅館業においては,客室係の接客業務と厨房の洗い場業務とでは明らかに業務内容や勤務形態が異なること,被告が平成13年5月28日原告に対し客室係から厨房洗い場係に配置転換する旨の本件配転命令を発したことは,当事者間に争いがない。 (2) 本件配転命令の違法性原告は,原告の職種は客室係に特定されていたものであり,被告が,原告を職種の異なる厨房洗い場係に配転を命ずるには原告の承諾を要すると主張するが,原告の職種が客室係に特定されていたことを認めるに 原告は,原告の職種は客室係に特定されていたものであり,被告が,原告を職種の異なる厨房洗い場係に配転を命ずるには原告の承諾を要すると主張するが,原告の職種が客室係に特定されていたことを認めるに足りる証拠はなく,かえって,被告の就業規則(乙4)は,8条において従業員の職場配置につき「従業員の体力,体質,技能,経験,勤務成績等を勘案して適正な配置を行う。」と規定し,かつ,9条において「従業員は会社が業務の都合で転勤を命じ,または職場,職種の変更を命じた場合には,正当な理由のない限りこれに従わなければならない。」と定めていることが認められることからすれば,原告の職種が客室係に特定されていたものではないことは明らかであり,原告の承諾がないことを理由に,本件配転命令が違法であるとする原告の主張は採用できない。 しかし,本件配転命令が,業務上の必要がないにもかかわらず,被告がその有する配転権を濫用して行ったものであったとすれば,本件配転命令は違法無効であって,原告は,これに従う必要はないと解されるから,この点につき,さらに検討する。 この点につき,被告は,本件配転命令は,原告の客室係としての執務態度があまりに劣悪であったことから,被告の客室係の業務の適正な遂行を妨げられるのを防ぐため,やむを得ず行ったものであると主張するところ,確かに,原告は,平成11年冬期賞与以降,賞与支給の基礎となる人事考課において,客室係従業員の中では最低の評価を受けたり等するなど,あまり芳しい評価を受けていなかったことは既に認定したとおりである。 しかし,そのことから,直ちに,被告の客室係業務の適正な遂行を妨げられるほどに,原告の執務態度が劣悪であったというのは,飛躍が過ぎると思われる。また,被告が,原告の執務態度の劣悪さ しかし,そのことから,直ちに,被告の客室係業務の適正な遂行を妨げられるほどに,原告の執務態度が劣悪であったというのは,飛躍が過ぎると思われる。また,被告が,原告の執務態度の劣悪さを示す具体例として主張する,平成13年4月21日及び同年5月27日の出来事についてみても,証拠(乙17,22の1~4,証人B,原告本人)によれば,平成13年4月21日の件に関しては,当日の原告の業務担当は4組14名の接客をすることとされていたところ,原告において1人では担当できないとして臨時客室係を原告の補助につけることを求めた結果,B副支配人は,他の宴会係につける予定をしていた臨時客室係を原告の補助につけたこと,また,同年5月27日の件に関しては,当日の原告の業務担当は2組8名の接客の予定であったところ,当日予約の新規の宿泊客があったことから被告において原告に追加割当をしようとしたが,原告は,それなら補助の臨時客室係をつけてほしいとして追加担当を拒絶したことが,それぞれ認められるが,通常客室係の接客する人数は9名前後で,それを超える多人数を担当する場合には補助がつくようになっていること(乙22の1~4,原告本人)からすれば,平成13年4月21日に関しては,臨時客室係を補助につけることを原告が被告に求めたことには無理からぬ所もあり,それを原告の工夫のなさや我が侭として原告の執務態度の悪さのせいにするのはどうかと思われる。また,同年5月27日の件に関しても,当日は接客数が10名でも補助がついていた客室係がいたこと(乙22の4)からすれば,原告が接客人数が増えるのなら補助をつけてほしいとして追加担当を拒絶したことも一概に原告の我が侭と決めつけることはできない面があり,これらをもって,原告を客室係としておけないほどに執務態度の劣悪さを示すものとは が増えるのなら補助をつけてほしいとして追加担当を拒絶したことも一概に原告の我が侭と決めつけることはできない面があり,これらをもって,原告を客室係としておけないほどに執務態度の劣悪さを示すものとはにわかには認めがたい。加えて,当時,被告において,客室係に余剰人員があったことや,厨房の洗い場の人手が不足していたことを窺わせる証拠もないことにも照らせば,原告を客室係から厨房の洗い場係に配転しなければならない差し迫った業務上の必要性があったものとは認めがたい。むしろ,職種の特定はされてはいないとしても,被告も認めるとおり,客室係の接客業務と厨房の洗い場業務とは明らかに業務内容や勤務形態が異なっており,原告からすれば,客室係から厨房の洗い場係への配転を命ぜられることは,客室係として失格との烙印を押されたに等しいものと受けとめることは容易に想像できることにも鑑みると,被告のした本件配転命令は,むしろ,原告にそのような精神的なショックを与え,ひいては原告を被告から追放しようとしてこれを行ったものと推認されてもやむを得ないところである。 以上からすれば,被告のした本件配転命令は,その業務上の必要に基づくものとは認めがたく,その配転権を濫用した違法無効な配転命令であったと認めるのが相当である。 (3) 原告の損害そこで,被告のした違法な本件配転命令によって原告が被った損害につき,以下検討する。 ア慰謝料証拠(甲6~8,9の1・2,10~15,17,原告本人)及び弁論の全趣旨によれば,原告は,被告から本件配転命令を受け,以降,客室係として稼働することを拒絶されたため,それが大きなストレスとなってうつ状態(状況因性うつ)となり,挙げ句,平成13年7月15日には自殺を図り,幸い命は取 告は,被告から本件配転命令を受け,以降,客室係として稼働することを拒絶されたため,それが大きなストレスとなってうつ状態(状況因性うつ)となり,挙げ句,平成13年7月15日には自殺を図り,幸い命は取り留めたものの,結局,職場復帰をあきらめ,同月23日に退職届を提出し,同年8月6日をもって被告を退職したこと(原告が同月23日に退職届を提出し,同年8月6日をもって被告を退職したことは当事者間に争いがない。)が認められ,これに本件に現れた一切の事情を総合考慮すると,原告が本件配転命令によって被った精神的苦痛に対する慰謝料は100万円を下らないものと認めるのが相当である。 イ弁護士費用原告は,本件損害賠償を求めるため,原告訴訟代理人弁護士に委任して本件訴訟の提起を余儀なくされたものであるところ,本件事案の内容,その認容額等に照らすと,弁護士費用の損害としては15万円を認めるのが相当である。 (4) 以上の次第で,被告のした違法な本件配転命令の不法行為による原告の損害賠償請求については,上記損害合計115万円とこれに対する不法行為後であることが明らかな平成13年9月1日から支払済みまで民法所定年5分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で理由がある。 4 まとめよって,原告の請求は,金115万円及びこれに対する平成13年9月1日から支払済みまで民法所定年5分の割合による遅延損害金の支払を求める限度でこれを認容し,その余はこれを棄却することとして,主文のとおり判決する。 神戸地方裁判所第4民事部裁判官上田昭典 判所第4民事部裁判官上田昭典

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