令和4(わ)17 恐喝未遂、恐喝、暴行、重過失致死

裁判年月日・裁判所
令和7年3月13日 鹿児島地方裁判所
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判決文本文25,444 文字)

- 1 -令和7年3月13日宣告令和4年第17号、同第37号 主文 被告人を懲役2年6月に処する。 未決勾留日数中250日をその刑に算入する。 理由 (罪となるべき事実)被告人は、第1 鹿児島県出水市(住所省略)の当時の被告人方において、当時交際中であったA及びその長女であるB(当時4歳)と同居していたものであるが、 1 令和元年8月27日、前記被告人方において、前記Bに対し、その左頭部を右拳で1回殴る暴行を加えた。(令和4年3月16日付け起訴状記載の公訴事実第1) 2 令和元年8月28日午後7時40分頃から同日午後9時10分頃までの間、前記被告人方において、前記Bを入浴させるに当たり、同児の身長は約97㎝で、湯を張った最深部約48㎝の浴槽内で同児を長時間にわたり入浴させれば、同児がのぼせるなどして鼻口が水没しない姿勢を維持できずに溺水するおそれがあり、かつ、同日、同児は、高熱等の症状で病院を受診し、貧血の疑いにより精密な血液検査を受け、同病院で投薬を受けてもなお、同日午後6時30分頃から同日午後7時40分頃までの間、被告人方において、ソファ上に横たわるなど著しい体調不良であり、被告人もその旨を認識していたところ、同児を長時間にわたり入浴させれば、高熱等によりその体調が急変して同児が鼻口を水没させない姿勢を維持できなくなるおそれもあったのであるから、長時間にわたり、湯を張った浴槽内で同児を入浴させるに当たっては、その体調に細心の注意を払いその動静を終始注視し、必要に応じて浴槽から引き上げたり、声を掛けたりするなどして、同児が鼻口を水没させない姿勢を維持できなくなっ- 2 -て溺水する事故の発生を未然に防止すべき注意義務があるのにこれを怠り、湯を張った浴槽内で約1時間、同 上げたり、声を掛けたりするなどして、同児が鼻口を水没させない姿勢を維持できなくなっ- 2 -て溺水する事故の発生を未然に防止すべき注意義務があるのにこれを怠り、湯を張った浴槽内で約1時間、同児を入浴させた際、約15分間にわたり、同児の体調に注意を払うことなく漫然と自分の脛毛をそり続けるなどして、前記Bを浴槽内に放置してその動静を注視せず、その間、少なくとも約4分間にわたり、同児の鼻口が水没した状況を看過した重大な過失により、同児に浴槽内の湯を吸引させて溺水状態にさせ、よって、同日午後11時57分頃、同市(住所省略)Cにおいて、同児を溺死させた。(令和4年3月16日付け起訴状記載の公訴事実第2(令和5年6月22日付け訴因変更請求書による変更後のもの))第2 かねてからD(当時22歳)と面識があったところ、 1 分離前の共同被告人Eと共謀の上、Dがインターネット上のウェブサイト旧「ツイッター」に被告人に関する投稿をしたことを口実にするなどし、Dから金銭を脅し取ろうと考え、令和2年4月13日から同月14日までの間、熊本県水俣市(住所省略)のF駐車場において、被告人が、Dに対し、その顔面を右拳で1回殴る暴行を加えた上、同所に停車中の自動車内及び前記の当時の被告人方において、Dに対し、こもごも、「俺のこと悪く言ったよね。何で友達を売るようなことをしたの。」、「俺にはまだ弁護士が就いているんだから、お前なんか名誉棄損で訴える。」、「どうすんだ、けじめを付けるか、はまるか(暴行を受けるか)。」、「俺なら払うけど。」、「昔遊んだときに貸してたお金、今返してくれない。」、「今すぐ返せ。親とか友達に借りてでも返せ。」、「被告人は俺の地元の大事な後輩だから、許せない。どうすんの。」、「俺がやらんと分からんのか。」などと語気鋭く申し向けるなどし 金、今返してくれない。」、「今すぐ返せ。親とか友達に借りてでも返せ。」、「被告人は俺の地元の大事な後輩だから、許せない。どうすんの。」、「俺がやらんと分からんのか。」などと語気鋭く申し向けるなどして金銭の支払を要求し、もしその要求に応じなければ、Dの身体等にいかなる危害を加えるかもしれない気勢を示して脅迫し、同人をその旨畏怖させ、同人から現金を脅し取ろうとしたが、同人が金銭を支払わなかったため、その目的を遂げなかった。(令和4年2月9日付け起訴状記載の公訴事実第1)- 3 - 2 Dが旧ツイッターに被告人に関する投稿をしたことを口実にするなどして、Dの交際相手であるG(当時22歳)から、同人が被告人を畏怖していることに乗じて金銭を脅し取ろうと考え、令和2年4月15日から同月16日までの間、鹿児島県内又はその周辺において、電話で、Gに対し、「払うことになっていた15万円をいつ払えるか。」、「15万円を今日払え。」などと申し向けた上、同日、熊本県葦北郡(住所省略)H駐車場において、同人に対し、「E君は、DにLINEで少し悪口を言われただけで20万ももらって、自分は自分のこともSNS等で悪く言われたり、家族のことも傷つけられたり、ひどい目に遭ったのにEさんより低い15万円というのはおかしい。」などと語気鋭く申し向けて金銭の支払を要求し、もしその要求に応じなければ、G及びDの身体等にいかなる危害を加えるかもしれない気勢を示して脅迫し、Gをその旨畏怖させ、よって、同日、熊本県八代市(住所省略)I駐車場において、同人から現金20万円の交付を受けてこれを脅し取った。(令和4年2月9日付け起訴状記載の公訴事実第3) 3 Dが被告人に対する借金を返済していないとして因縁をつけ、Gから、同人が被告人を畏怖していることに乗じて更に金銭を脅し取ろ これを脅し取った。(令和4年2月9日付け起訴状記載の公訴事実第3) 3 Dが被告人に対する借金を返済していないとして因縁をつけ、Gから、同人が被告人を畏怖していることに乗じて更に金銭を脅し取ろうと考え、令和2年4月下旬頃から同月25日頃までの間、鹿児島県内又はその周辺において、電話で、Gに対し、「Dに昔26万貸したって書いてる紙が見つかって、この26万返してほしいんだけど。」などと申し向けるとともに、「俺の連絡を無視するなよ。」、「26万今日中に払え。」などと語気鋭く申し向けて金銭の支払を要求し、もしその要求に応じなければ、G及びDの身体等にいかなる危害を加えるかもしれない気勢を示して脅迫し、Gをその旨畏怖させ、よって、同日、鹿児島県出水市(住所省略)J駐車場において、Dを介してGから現金26万円の交付を受けてこれを脅し取った。(令和4年2月9日付け起訴状記載の公訴事実第4)(事実認定の補足説明)- 4 -※以下において、証人の証言内容を特に引用する場合はその略称に項番号等を併記し、証言が複数回にわたる場合は公判期日の回数を併記する方法による。 第1 判示第1の1の暴行の点弁護人は、被告人の行為はしつけの範囲内にあり、不法な有形力の行使には当たらないから、暴行罪は成立せず、無罪であるという。 この点、A(以下「母親」という。)の証言(第10回77~91項等)及び被告人の公判供述(第19回62~67項等)によれば、被告人は、B(以下「被害児童」という。当時4歳)が、入浴中に自分の口に指を入れて無理に吐こうとした際に、それは駄目だといって怒って、上げた拳を被害児童の頭部に降り下ろすようにしてたたいたと認められる。被害児童が当時4歳であったこと、成人男性である被告人との体格差に加え、けがを負わせない程度の強さとは れは駄目だといって怒って、上げた拳を被害児童の頭部に降り下ろすようにしてたたいたと認められる。被害児童が当時4歳であったこと、成人男性である被告人との体格差に加え、けがを負わせない程度の強さとはいえ頭部を拳で殴るといった態様を考慮すると、その行為は、社会通念上、被害児童の身体に向けられた不法な有形力の行使に当たるといえる。そのことは、母親や被告人のいう経緯があったとしても変わらない。弁護人の主張は採用できず、被告人の判示行為には暴行罪が成立する。 第2 判示第1の2の重過失致死の点弁護人は、被告人には被害児童の死についての予見可能性及び結果回避義務違反がなく、仮に過失があったにしてもその程度は重くないと主張するところ、当裁判所が被告人には重過失があったと認めた理由は次のとおりである。 1 前提事実関係証拠によれば、以下の事実が認められる(認定に要した主要な証拠を括弧内に掲記する。)。 被害児童は、母親の連れ子であり、本件当時は、母親の交際相手であった被告人と三人で同居していた。 ⑵ 令和元年8月27日の時点では、被害児童の体調に目立った問題はなく、元気な様子であった。例えば、同日午後1時48分頃、母親とともにコンビ- 5 -ニエンスストアに来店した際には、被害児童が自分で車を降りて店内を活発に歩き回ったり、母親や店員に話しかけ、飛び跳ねたりする様子が認められた(甲40、75)。 同月28日深夜2時ないし3時頃、帰宅した母親が、寝ている被害児童の頭をなでたところ熱を感じ、測ってみると約38℃の発熱があった(母親第10回99~106項)。 ⑷ 明けて同日の朝、被害児童は約38.5℃の熱があり、両目を押さえて、目の痛みを訴えていた。被告人は、被害児童が心配だから病院に連れていくように、その結果も教えるよ 第10回99~106項)。 ⑷ 明けて同日の朝、被害児童は約38.5℃の熱があり、両目を押さえて、目の痛みを訴えていた。被告人は、被害児童が心配だから病院に連れていくように、その結果も教えるようにと母親に伝えて、午前7時頃に出勤した。 母親は、同日午前7時10分頃、被害児童が床に横たわって目の辺りを両手で押さえ、唸っている様子を動画(甲85・更新日時2019/08/287:10のデータ)に撮って、スマートフォンの通信アプリケーション「LINE」(以下「LINE」という。)で被告人に送信した。その際、母親は、「被告人いったしゅんかん転げて目がいたいいってる。」とのメッセージを添えた(母親第10回139項)。 ⑸ 母親は、同日午後3時30頃、被害児童を小児科医院(K。以下、単に「小児科」という。)に連れて行き、受診させた(甲42)。自宅から車に乗る際も、小児科に着いてからも、母親が被害児童を抱いて移動した(母親第10回156、157項)。受診時の被害児童の体温は38.5℃であり、母親の求めにより実施された血液検査によれば、血中ヘモグロビンが8.8g/dlという中程度の貧血状態にあった(甲45)。被害児童を診察した医師L(以下「小児科医」という。)は、念のためもう一度採血をして外部に詳細な検査を依頼することにし、その日は、とりあえず、「急性咽頭炎、結膜炎、貧血」と診断して、点眼薬や解熱鎮痛薬を処方した(甲42)。 母親は、小児科を出た後、被告人に対し、LINEで、小児科で被害児童の採血をしたこと、その結果貧血気味であったこと、数値が正常を下回るた- 6 -め詳しい検査が行われること等を伝えた(母親第10回171~183項)。 ⑹ 母親は、小児科を出た後、被害児童を連れてスーパー(M。以下、単に「スーパー」という。)で買い物を るた- 6 -め詳しい検査が行われること等を伝えた(母親第10回171~183項)。 ⑹ 母親は、小児科を出た後、被害児童を連れてスーパー(M。以下、単に「スーパー」という。)で買い物をした。被害児童は、小児科を出て車に乗る際も、スーパーの駐車場から同店内に入る際も、母親に抱かれて移動した(母親第10回191~194項)。また、同店内では、被害児童は専ら母親が押すショッピングカートに乗せられていた(甲84)。 ⑺ 母親と被害児童は、買い物が終わった後、一度帰宅して被告人と合流し、一緒に飲食店(N。以下、単に「飲食店」という。)で食事をした。その際、被害児童は、子ども用のうどんセットを食べたが、完食はしなかった(母親第10回218~221項)。母親らは、同日午後6時10分頃、飲食店を出て帰宅した。自宅と飲食店の間を移動する際は、被告人が被害児童を抱えて自動車に乗せていた(甲38)。 ⑻ 母親は、同日午後7時40分頃、仕事のために家を出た。母親は、出かける際、被告人に、被害児童は風呂から早めに上げるように言って出た。 その頃、被告人が被害児童を風呂に入れ、一緒に入浴した(なお、被告人方の浴槽は最深部が約48㎝で(甲78)、浴槽の縁を10割として7、8割ほどの水位に湯が張られており、身長が当時約97㎝であった被害児童は、浴槽の底に臀部をつけると顔が水に浸かるという状況であった。そのため、被害児童は、湯に浸かる際は中腰の姿勢を取り、浴槽の縁に手をかけていた(被告人・第19回232、234~237項)。)。 被告人は、かねて1、2時間余りをかけて入浴し、被害児童もこれに付き合わせて入浴させる習慣であった。この日も同様に入浴したところ、その入浴中、被害児童は浴槽内で溺死した。 ⑼ 同日午後9時頃、被告人が、被害児童を抱え、Cの をかけて入浴し、被害児童もこれに付き合わせて入浴させる習慣であった。この日も同様に入浴したところ、その入浴中、被害児童は浴槽内で溺死した。 ⑼ 同日午後9時頃、被告人が、被害児童を抱え、Cの救急外来に駆け込み受診した。蘇生措置が施されたが、同日午後11時57分頃、Cにおいて同児の死亡が確認された。(甲51、53)- 7 - 2 被害児童の身体の状態と死に至る機序被害児童を解剖した医師O(以下、「O医師」という。)は、鑑定書(甲74)及び当公判廷において、事故当日の被害児童の身体の状態及び死に至る機序について、おおむね次のとおり供述する(以下、総称して「本件鑑定」ということがある。)。 ア被害児童の死因は、浴槽内で4分以上鼻口が水没したことによる溺死(溺水吸引による窒息)である。 解剖の結果、被害児童には、外傷性クモ膜下出血、肝臓小葉内の限局的な出血及び大網膜の哆開(開いて裂けた)損傷等が認められた。このクモ膜下出血は、それ自体で死因となるものではないが、意識障害を起こす可能性は十分に考えられる。本件においては、長時間の入浴中、クモ膜下出血による意識障害で溺れたという可能性が最も高いと考えられる。それ以外に、肝臓や大網膜からの出血は貧血の原因となり、貧血によって入浴中に意識が危うくなり溺水した可能性も考えられる。健康な児童であっても、1時間浴槽内にいれば脱水状態を起こして意識障害を起こす。被害児童の場合は、健康な児童を入浴させた場合と比較して、より意識消失につながりやすかったという可能性は十分考えられる。 溺死とは、水を吸引したことによる窒息死であり、人は、約4分間脳に酸素がいかなくなることで窒息死する。溺死には、その約4分間水中にいたことにより短時間で死亡する急性の窒息死と、水中にいた時間はそれより短いが、 を吸引したことによる窒息死であり、人は、約4分間脳に酸素がいかなくなることで窒息死する。溺死には、その約4分間水中にいたことにより短時間で死亡する急性の窒息死と、水中にいた時間はそれより短いが、気管に残った水が長期的に作用して死亡に至る遷延性の溺死とがある。被害児童の場合は、体内の遺留血液が血塊のない流動血で、これは急性の窒息死の場合に見られる所見であることから、その死因は急性の溺死と判断した。したがって、被害児童は少なくとも溺れてから発見されるまで4分以上は水中にいたと考えられる。なお、被害児童が水没してから、約4分間が経過するよりも早い段階で、被告人がそれに気づいて被害- 8 -児童を引き上げていれば、救命可能性はあったと考えられる。 イ事故前日に行われた血液検査の結果で、血中のヘモグロビンの値が8. 8g/dlという数値が出ているが、4歳女児の正常基準値は11.2g~14.2g/dlであり、これが6を下回ると輸血が必要になる可能性があるので、被害児童の数値はかなり低い。同検査によれば、体内に損傷あるいは感染症による炎症等があったことを示すCRPの値が、基準値が0.3mg/dlであるのに対し、3.6mg/dlと高い値だった。被害児童には感染症の感染を疑わせる所見はなかったので、この数値は損傷によるものと考えられる。そのほかにも、肝損傷を示す値が正常値に対しかなり高い値を示している。 解剖所見において被害児童に認められた肝臓や大網膜の損傷からは出血があるので、先に述べた貧血や肝機能の障害の原因となり得る。これにより被害児童の体調に外見上現れる所見としては、体がふらふらし、全身けん怠感、腹痛やそれに伴う吐き気、発熱等の症状が考えられる。被害児童が小児科を受診した際の体温が38.5℃で、自分で歩けず、母親が抱き抱えて移 体調に外見上現れる所見としては、体がふらふらし、全身けん怠感、腹痛やそれに伴う吐き気、発熱等の症状が考えられる。被害児童が小児科を受診した際の体温が38.5℃で、自分で歩けず、母親が抱き抱えて移動していたというエピソードは、この判断と整合的である。スーパーでの映像も確認したが、被害児童が、ショッピングカートの上で、態勢をずっと変えずに左側を下にしていて、だるそうに見受けられた。肝臓は右の腹部の上の方にあるから、右にもたれかかると痛みがあったので、体を左側に倒して右側をかばっていたものと理解している。 被害児童の発熱は肝臓や大網膜の損傷による炎症によるものであり、感染症によるものではないから、小児科で処方された解熱剤では飛躍的な回復は見込めない。走り回るぐらいに元気になるということは考えられない。 ⑵ O医師は、経験のある法医学者であり、血液検査の結果や、被害児童の解剖を自ら行って得た知見に基づき上記の意見を述べており、鑑定する者としての公正さや能力に疑問を挟むべき事情や前提条件の誤り等、鑑定意見を採- 9 -用し得ないような事情も認められない。その内容も具体的根拠を踏まえた合理的なものであるといえ、本件鑑定には高い信用性が認められる。 しかるところ、本件の証拠関係においては、他の医師も被害児童の体調についての知見を述べている部分があるので、これらの知見が本件鑑定の信用性に影響を与え得るかを念のために検討しておく。 この点、小児科医であり、子供虐待医学等を専門分野とする証人Pは、捜査機関からO医師による解剖所見を含む記録等を提供されて見解を求められた立場から、被害児童の意識消失の原因がクモ膜下出血である可能性は否定できないが、主たる原因は慢性の硬膜下血腫であり、これにクモ膜下出血が合わさることで意識障害が進んだ可能性がある旨 見解を求められた立場から、被害児童の意識消失の原因がクモ膜下出血である可能性は否定できないが、主たる原因は慢性の硬膜下血腫であり、これにクモ膜下出血が合わさることで意識障害が進んだ可能性がある旨供述する。被害児童の意識消失の主たる原因に関する両医師の見解はこのように異なっているが、意識障害を生じさせ得る病変が被害児童の頭部内にあったという点や、その病変が入浴をきっかけにして意識消失を引き起こしたという因果の中核的部分に違いはない。両医師の見解は相反するものではなく、上記因果の中核部分に関する医学的判断の妥当性については、むしろ互いに信用性を補強し合う関係にある。なお、事故当日の昼に被害児童を診察した小児科医は、捜査段階において、診察時の被害児童は重篤な状態ではなく、入浴によって意識消失等を引き起こして溺死した可能性はあり得ないと供述しているが(甲42)、この供述は被害児童の解剖結果を踏まえていないのであるから、前提がそもそも異なっており、これをもって本件鑑定の信用性が損なわれないのは当然のことである。 したがって、事故当日の被害児童の身体内部の状況と、それが外見上の様子としてどのように表れていたかについては、基本的に、本件鑑定に依拠して認定することが相当である。 そこで、以下においては、本件鑑定と前提事実とを踏まえて①事故当日の被害児童の様子についての母親の供述内容を吟味し(後記3)、しかる後に、- 10 -②医学的知見のない一般人から見た被害児童の様子を踏まえた被害児童の死の結果に対する予見可能性(後記4)と、③その結果回避義務違反(後記5)を検討し、④重過失があったといえるか(後記6)を評価することとする。 3 母親の供述事故当日の被害児童の様子がどのように見えたかに関する母親の供述は、おおむね次のとおりであるが 反(後記5)を検討し、④重過失があったといえるか(後記6)を評価することとする。 3 母親の供述事故当日の被害児童の様子がどのように見えたかに関する母親の供述は、おおむね次のとおりであるが、捜査段階から公判にかけてその内容を変遷させている。 ア捜査段階における供述(甲38)事故当日の朝、娘は発熱してぐったりしていた。午後3時頃になっても娘の容態には変化がなく、朝と同じくらい熱があり、目が充血していて、目が痛いと言っていた。自宅を出る際や小児科に入る際、娘は自分で歩くことができなかった。ぐったりした様子で、「ママ、抱っこ。」と言って、歩けそうになかったので、私が抱っこして車に乗せたり、車から降ろしたりした。娘は、これまでに、この日のように自分で歩くことすらできないほど体調不良になったことはなかった。小児科で医師に血液検査をお願いしたのは、今までにないぐらい娘の具合が悪そうで、ぐったりしていて、心配だったからだ。 スーパーで買い物中、娘はショッピングカートに座ったまま、ぐったりしていた。 三人で夕食を食べに行った時、娘は薬が効き始めたのか朝よりは少し体調が良さそうだったが、ぐったりとしてしんどそうであることに変わりはなかった。帰宅後、娘が公園に遊びに行きたいといったので、だめだと言った。そのときは、薬のせいか、少し回復していたが、私が家を出る午後7時40分頃までの間、娘はぐったりした様子でソファに横になっていた。 イ当公判廷(第10回)における供述事故当日、自宅を出る際や小児科に入る際、娘は熱がありつらそうな様- 11 -子で私に甘えてきたので抱っこしたが、歩こうと思えば歩けたと思う。 スーパーで買い物中、娘はショッピングカートに乗って、集中してYouTubeを見ていた。本当にしんどいときは携帯を見る元 11 -子で私に甘えてきたので抱っこしたが、歩こうと思えば歩けたと思う。 スーパーで買い物中、娘はショッピングカートに乗って、集中してYouTubeを見ていた。本当にしんどいときは携帯を見る元気もないと思うので、あまりしんどそうな様子ではなかった。 三人で夕食を食べに行った時、娘ははしゃげるくらいに体調が良くなっていた。帰宅後、娘の体温は平熱に近い37.3℃程度にまで下がっており、公園に遊びに行きたいといって暴れてだだをこねるぐらい元気になっていた。午後6時30分頃から午後7時30分頃までの間、元気な様子で被告人とおもちゃで遊んでいた。 ⑵ そこで検討するに、母親の捜査段階の供述(前記⑴ア)は、本件鑑定と整合的で、内容も自然であり、その信用性に疑いを挟むべき事情は特に認められない。同供述は十分に信用できる。これに対し、その公判供述(同イ)は、被害児童の発熱は感染症によるものではなく、体内の損傷によるもので、解熱剤の処方によっては飛躍的な体調の回復は見込まれないはずであるのに、小児科を受診後、夕食を食べて帰宅した時点で顕著な回復が見られたとする点で本件鑑定と整合せず、不合理なものである。当日の状況を通じて、被害児童の体調不良がそれほど悪く見えなかったとする部分も、全体として本件鑑定結果からうかがわれる被害児童の実際の体調とは整合しにくい、不自然なものである。同公判供述は、被告人の面前でなされたものであり、そのような状況になかった捜査段階の供述と比べて、夫である被告人をかばおうとする気持ちがより強く働き得る外部的状況があったことも否定しえない。以上の事情からすれば、母親の公判供述の当該部分は、被告人をかばうために意図的に供述を後退させた疑いが強く、信用できない。 以上のとおり、当日の被害児童の様子が母親からどのように見え ない。以上の事情からすれば、母親の公判供述の当該部分は、被告人をかばうために意図的に供述を後退させた疑いが強く、信用できない。 以上のとおり、当日の被害児童の様子が母親からどのように見えたかについては、母親の公判供述は信用できず、捜査段階の供述が信用できるといえる。 - 12 - 4 結果の予見可能性について注意義務発生の根拠となるべき事実以上を踏まえ、前提となる事実経過(前記1)、本件鑑定(同2)及び被害児童の当日の様子についての母親の捜査段階の供述(同3ア)を総合すると、事故前日から当日にかけての被害児童の様子はおおむね次のとおりであり、かつ、これらの様子は、母親が認識している以上、医学的知見のない一般人の目から見ても外形上容易に認識し得るものだったと認められる。 ア事故当日の朝、被害児童には約38.5℃の発熱があり、目を押さえて唸るようにして、目の痛みを訴えていた。 イ被害児童は、当日朝から午後3時30分頃にかけて熱が下がらず、自分では歩くことができない状態だった。その様子は、母親が今までに見たことがないと感じる程度のものだった。また、小児科では被害児童の採血が行われ、更に精密検査も行われた。 ウ被害児童は、母親に連れられてスーパーで買い物をしている間、ショッピングカートに乗せられてぐったりとしていた。 エ被告人が、母親と被害児童と合流して、飲食店に夕食を食べに行った時点では、被害児童の体調は若干回復し、お子様用のうどんを口にすることができたものの、ぐったりしている様子に変わりはなかった。 オ夕食を終えて帰宅した後、被害児童は公園に遊びに行きたいとは言ったものの、暴れることができるような体調ではなく、母親が家を出るまで、ぐったりした様子でソファに横たわっていた。 ⑵ ⑴に対 オ夕食を終えて帰宅した後、被害児童は公園に遊びに行きたいとは言ったものの、暴れることができるような体調ではなく、母親が家を出るまで、ぐったりした様子でソファに横たわっていた。 ⑵ ⑴に対する被告人の認識ア上記各事実を被告人が認識していたかを見ると、被害児童が事故当日の朝から約38.5℃の発熱をしていたこと(4⑴ア)については、被告人は自らその様子を見て母親に被害児童を病院に連れて行くように促したり、更にLINEで動画を見せられたりした(1⑷)のであるから、当然認識- 13 -していたといえる。母親が被害児童を小児科に連れて行った際の様子(4⑴イ)や、スーパーで買い物をしている間の被害児童の様子(同ウ)は、その時点で被告人が直接目にしたものではないが、本件鑑定結果によれば、これらは被害児童の肝臓や大網膜の損傷とそこからの出血に伴うもので、小児科で処方された処方薬によって短時間で軽快することがまず考えられないものであるから、その後に被告人が母親らと合流して以降に(同エ、オの時点)、おおむね同じ様子を被告人が目にしたものといえるし、車に乗せる際には被告人が被害児童を抱き抱えていたこと(1⑺)からすると、体感もしていたといえる。そして、その際に被告人が目にし、かつ感じたところの、被害児童がぐったりしていたという程度は、母親が今までに見たことがないと感じる程度であり、被害児童が自分で歩くことができない程度のものであったといえる。 イこの点について、被告人は、当公判廷において、被害児童の体調は本件事故当日の夕方には回復したように見え、入浴時も普段と変わった様子はなかった旨供述する。しかし、既に検討したとおり、本件鑑定を踏まえると、被害児童の体調が時間の経過や服薬の効果によって、被告人や母親が公判廷で述べる程度に回復す に見え、入浴時も普段と変わった様子はなかった旨供述する。しかし、既に検討したとおり、本件鑑定を踏まえると、被害児童の体調が時間の経過や服薬の効果によって、被告人や母親が公判廷で述べる程度に回復する合理的な可能性は認められない。この被告人の供述は不合理なものであり、信用できない。 結果の予見可能性について以上を踏まえて検討すると、次に述べるとおり、被告人には、被害児童の死の結果についての予見可能性があり、かつ、同結果の予見は、被告人を含む一般人にとって、かなり容易なものであったと認められる。 すなわち、O医師は、被害児童のように貧血であったり38℃以上の発熱がある場合、通常は入浴自体を控えるだろうし、健康な児童であっても、1時間浴槽内にいれば脱水状態を起こして意識障害を起こすといえるが、被害児童の場合は、健康な児童を入浴させた場合と比較して、より意識消失につ- 14 -ながりやすかった可能性は十分考えられるとした上で、被害児童を1時間も風呂に入れるということは非常識としか考えられない旨供述する。この供述に不合理な点はないし、むしろ、医学的知見の引用を待つまでもなく、いわば基本的な社会常識に属するものとして容易に理解できる内容ともいえる。 しかるところ、被告人は、前記⑵で検討したとおり、その日の被害児童が発熱して、日中ぐったりして自身では歩けない程度の著しい体調不良にあったことを認識していたのであるから、そのような被害児童を入浴させれば、健康な児童の場合であっても発生し得る、入浴に伴ういわゆる「のぼせ」等が生じやすいことは、常識的に判断できたといえる。そして、その危険の程度が、被害児童を浴槽内で入浴させる時間が長くなるのに比例して高まるであろうことも、自ずから明らかといえる。そうした事態が起こったときに、更なる体調 常識的に判断できたといえる。そして、その危険の程度が、被害児童を浴槽内で入浴させる時間が長くなるのに比例して高まるであろうことも、自ずから明らかといえる。そうした事態が起こったときに、更なる体調の悪化によって被害児童が姿勢を崩すなどして、その鼻口が湯面に水没することは、ごく容易に予見し得ることであり、その因果の帰結として、被害児童をそのまま浴槽内に放置すれば溺死する危険があることも予見し得る。 なお、被告人は、これまでも日常的に1時間以上入浴し、その間被害児童を入浴に付き合わせていて、これまでには被害児童が溺水する事故は起きていなかったのであるが、本件におけるのと同程度に被害児童の体調が悪いときに同様の入浴をした事実は認められず、これまで事故が起きていなかったからといって、被告人の予見可能性が否定されることにはならない。 ⑷ 弁護人の主張に対する判断これに対し、弁護人は、①スーパーの中で被害児童がぐったりしていたとされる点について、同スーパー内の防犯カメラ映像は不鮮明なものであり、被害児童がスマートフォンを持っていたかどうかが判然とせず、これをもって被害児童の当時の体調の程度を厳密に推認することは不可能である、②本件において予見義務を課すべき因果の基本的部分としては、単に入浴中に体- 15 -調不良でのぼせて溺水したというだけでは足りず、被害児童が意識消失に至る特異事情、すなわち意識消失の主たる原因であるクモ膜下出血の発症を想定できる事情や意識消失が起こり得るほどの重篤な体調不良を認識していなければならないが、被告人にはそのような認識がない、③当日に被害児童を診察した小児科医も、被害児童の当日の体調が重篤なものとは認識しておらず、医学的知見のない被告人には被害児童の死の結果を予見できない、などと主張する。 はそのような認識がない、③当日に被害児童を診察した小児科医も、被害児童の当日の体調が重篤なものとは認識しておらず、医学的知見のない被告人には被害児童の死の結果を予見できない、などと主張する。 ア ①の主張について、確かに、スーパー内の防犯カメラの映像(甲84)に映る被害児童の姿は小さく、その画像のみから、被害児童の手にスマートフォンがあった可能性はなかったと言い切ることは難しい。しかし、同画像に映った被害児童が、その撮影時間を通じて体勢を動かしていないことは比較的明瞭に見て取れるし、その体勢が、O医師が述べるように左側を下にしていることも判別ができる。そうしたところ、O医師は、同画像を見ただけではなく、自身の解剖所見等も踏まえた上で、肝臓が右の腹部の上の方にあるから、右にもたれかかると痛みがあったので、体を左側に倒して右側をかばっていたものと理解していると述べたのであり、その説明は筋が通っている。その上で、本件の事実関係においては、スーパーでの買い物の場面の前後の事情として、当日の朝から被害児童が発熱してぐったりしていて、小児科を受診した際にも自分では歩けなかったとか、飲食店と自宅を移動する際にも自分で歩かずに抱き抱えられていたといった複数の事実が、それぞれ前記画像とは独立して認められる。これらの事実を総合すると、その間の出来事であるスーパーで買い物をしている時間帯においても被害児童はぐったりしていたと推認するのは、自然で合理的なことである。更にそうした事実に加え、母親が、捜査段階において、スーパーで買い物をしている間、被害児童はショッピングカートの上でぐったりとしていたと供述していることも踏まえて検討すると、スーパー内での- 16 -被害児童の様子は、元気ではあったがスマートフォンでYouTubeに見入っておとなし ショッピングカートの上でぐったりとしていたと供述していることも踏まえて検討すると、スーパー内での- 16 -被害児童の様子は、元気ではあったがスマートフォンでYouTubeに見入っておとなしくしていたというわけではなく、ぐったりしていたという事実に合理的な疑いを挟む余地はない。以上の証拠構造は、被害児童の手元を判別できる程度に防犯カメラ映像が鮮明ではないとしても、直ちに揺るがせられる関係にはない。主張は採用できない。 イ ②の主張について、過失犯における結果予見可能性は、人に結果回避行為を動機付けるためのものであり、かつそれで足りる。本件において、被告人が入浴前に認識していた事情は、前記⑵⑶で検討したとおり、母親をしてこれまで見たことがないと言わしめるような、被害児童の重篤な体調不良を認識し得る程度のものである。これらの事実を認識していなかったとする被告人の供述は既に述べたように信用のできないものであり、弁護人の主張は前提を欠いている。その上で、これらの事実を認識している以上、被害児童を入浴させれば、特に自身が日常行っている長時間の入浴に漫然と付き合せればどのような事態が起きるかは容易に予想できるといえ、結果回避行為を動機づけるには既に十分である。解剖所見によって初めて認められたクモ膜下出血の事実はもちろん、その発症を想定させる事情を認識する必要がないことは明らかであり、主張は採用できない。 ウ ③の主張について、確かに、小児科医は、被害児童の体調は重篤なものではなく、入浴することで体調が悪化して意識消失を引き起こし、溺死することはあり得ない旨供述している。しかし、同医師は、「浴槽に30分近く浸かっていたのであれば、のぼせて意識が朦朧とする場合もあると思いますが」とも述べている。そのような供述をしていることからす することはあり得ない旨供述している。しかし、同医師は、「浴槽に30分近く浸かっていたのであれば、のぼせて意識が朦朧とする場合もあると思いますが」とも述べている。そのような供述をしていることからすると、同医師は、前記の供述をするに際し、被告人が当日1時間以上もかけて入浴し、その間ずっと被害児童を入浴に付き合わせる事態まで念頭に置いていたものとは窺えない。そうしたところ、専門家とはいえ、当日に、診察の場という限られた機会に被害児童と接しただけの小児科医とは異なり、- 17 -被告人は、朝出かける前の被害児童の様子も見ていたし、夕方に被害児童らと合流して以降は自ら被害児童の様子を見て、抱いて移動もして、その様子を長時間にわたって感じていただけでなく、その様子を前日までの様子と対比して認識することもでき、自身の入浴が長時間に及び得ることも当然知っていた。このように、小児科医が、被害児童を当日入浴させることの危険を判断するための情報は、被告人が持っていたそれよりもはるかに限られたものであり、同医師の前記供述に依拠して、医師ですら想定できない危険を一般人である被告人は予見できなかった、などということはできない。主張は採用できない。 ⑸ 小括以上の理由により、被告人には、判示の予見可能性があったと認められる。 5 結果回避義務違反について 被害児童が死に至る機序が前記のようなものである以上、その死の結果を避けるためには、入浴中、同児の動静を注視し、その上、状況に応じて引き上げたり、声をかけたりすれば足りる。また、仮に被害児童が溺水したとしても、約4分間が経過するよりも早い段階でそれに気づいていれば救命可能性があったことも、本件鑑定により認められる。 そうしたところ、被告人は、その述べるところによれば、被害児童を浴槽内に置 としても、約4分間が経過するよりも早い段階でそれに気づいていれば救命可能性があったことも、本件鑑定により認められる。 そうしたところ、被告人は、その述べるところによれば、被害児童を浴槽内に置いた状態で、15分間ほど自身の脛毛を剃り、その後1、2分ほどシャワーでトリートメントを流したところ、被害児童が浴槽の縁に手をだらんとかけて、顔が前に倒れて鼻まで水に浸かっていた、というのである。 本件鑑定によれば、被害児童の鼻口は少なくとも約4分間水没していたことが明らかであり、この間のいずれかの時点で被害児童の鼻口が水没している様子を目にしたならば、その時点で被告人は被害児童の身体を直ちに浴槽から引き上げたであろうといえるから、被告人は、トリートメントをシャワーで流している間だけでなく、自身の脛毛を剃っている間も含め、少なくと- 18 -も約4分間は被害児童の様子を見ておらず、声掛け等の注意も払っていなかったと認められる。 ⑵ これに対し、弁護人は、①被害児童の溺水時間が1~2分で、病院で蘇生措置を受けるまでその気道の中に水がある状態だった可能性も十分考えられ、水没時間が4分以上であったと認めることはできない旨主張し、被告人も、②脛毛を剃っている間、被害児童の姿は視界に入っていたが特に異変はなく、その後トリートメントをシャワーで流すために1、2分ほど目を離した間に溺れたと思うなどと、それに沿う供述をする。 しかし、①の主張について、本件鑑定において、O医師は、急性の溺死と遷延性の溺死の区別を意識し、被害児童の体内の遺留血液が血塊のない流動性のもので急性の溺死に見られる所見があったことから、被害児童の死因は約4分気道が水没したことによる急性の溺死である旨述べている(前記2ア)。この点を否定する弁護人の主張は本件鑑定の内容を正解しな 性のもので急性の溺死に見られる所見があったことから、被害児童の死因は約4分気道が水没したことによる急性の溺死である旨述べている(前記2ア)。この点を否定する弁護人の主張は本件鑑定の内容を正解しないものであり、理由がない。②の被告人の供述について、仮に被告人が述べるように被害児童の様子を見ていたのだとすれば、約4分間にわたって被害児童の鼻口が水中に没している様子を看過することは考えられない。被告人が脛毛を剃っている間、その視界の端に被害児童の姿が入っていたことまで否定するものではないが、その「見る」という態様は、少なくとも被害児童の安全に注意を払い、注視するものでなかったことは明らかである。主張は採用できない。 以上によれば、被告人は、判示のとおり、被害児童の死の結果を予見せず、その回避に向けた措置もとらなかったと認められる。 6 重過失について前記4のとおり、事故当日の被害児童は、発熱があり、その日の日中自身で歩けず、入浴直前もソファでぐったりしているなどの著しい体調不良であった。 そのような状態の被害児童を、少しでも姿勢を崩せば鼻口が水没してしまうよ- 19 -うな体勢で入浴させれば、浴槽内での入浴時間が長くなるのに比例して意識消失の危険を高め、溺死という結果に至り得ることは自ずと明らかである。このことは、被害児童の安全に関心を持つ程度の僅かな注意さえ払えば容易に予見できたといえるのに、被告人はその予見をしなかった。 前記5のとおり、被害児童の死の結果を回避するためには、その様子を注視するなど僅かな注意を払えば足り、浴槽から引き上げるなどの結果回避措置も容易であったにもかかわらず、被告人は約4分間にもわたって被害児童の鼻口が水没していることを見落とした。被告人の被害児童の安全に対する注意は余りにも散 ば足り、浴槽から引き上げるなどの結果回避措置も容易であったにもかかわらず、被告人は約4分間にもわたって被害児童の鼻口が水没していることを見落とした。被告人の被害児童の安全に対する注意は余りにも散漫であり、結果回避義務違反の程度が甚だしいといえる。 以上のとおり、被告人は、僅かな注意を払えば予見できる重大な結果を予見せず、履行が容易な回避措置を怠った程度も甚だしかった。被告人による結果予見義務違反と同回避義務違反の程度はそれぞれに重いものであり、かつそれらが重畳的に認められる以上、被告人に、被害児童の死の結果についての重過失があることは明らかである。 第3 判示第2の恐喝未遂、恐喝の点弁護人は、被告人の行為は恐喝に当たらず、その故意も共謀もなかったと主張する。 1 前提事実関係証拠によれば、以下の事実が認められる。 Eは被告人の先輩であり、遊び仲間であった。 Dは、被告人の知人であり、被告人を介してEとも面識があった。 Gは、Dの交際相手であり、被告人ともEとも面識がなかった。 ⑵ Dは、令和元年8月頃に被告人が判示第1の被害児童に対する暴行事件で逮捕されたのを知り、被告人ならそのような事件を起こしかねないなどといった内容を旧ツイッターに書き込んだ(なお、同書き込みはその後Dによって消去された。)。 - 20 -Dは、令和2年4月13日午後11時頃、Eやそのほかの知人らに連れられて、熊本県水俣市内の駐車場(判示第2の1のF)に行った。被告人は、そこに合流し、同所において、Dの顔面を手拳で1回殴打した。Dと行動を共にしていたGも、その様子を目撃した。 その後、被告人は、Dに金員の支払を要求したが、同人は支払ができなかった。 ⑷ Eは、Dの代わりにGが消費者金融から借入れをして支払うよう要求した。 そ 共にしていたGも、その様子を目撃した。 その後、被告人は、Dに金員の支払を要求したが、同人は支払ができなかった。 ⑷ Eは、Dの代わりにGが消費者金融から借入れをして支払うよう要求した。 そこで、Gは、同月14日、消費者金融から50万円を借り入れて(甲3)、うち25万円をEに支払った。 ⑸ 被告人は、同月16日、Gが消費者金融から借り入れた現金の中から20万円を受け取った。 更に、被告人は、同月25日、Gから現金26万円を受け取った。 2 D及びGの供述について⑴ Dの供述の要旨Dは、当公判廷において、おおむね次のとおり供述する。 ア令和2年4月13日より少し前に、怖い先輩であるEからSNSで連絡があったが、無視していた。同日は、被告人ともつながりのある別の後輩から食事に誘われて、警戒しながら出かけたところ、Eが現れた。Eは、私がツイッターで被告人を悪く書いたことについて、自分の大事な後輩に対し許せない、といったことを言っていた。元々、出かけるときに、自分に何かあったら警察に通報するようにGにはお願いしていた。Gに電話すると交番にいたので、Eらに連れられて交番に行った。警察官には、何も問題はなく、食事に行くだけだと言ってGを連れ出した。 イ私とGは、同日午後11時頃、Eらに連れられてFに行った。そうすると、10分くらいして被告人が現れた。ごめんと言って頭を下げると、被告人から鼻の辺りを殴られた。 - 21 -Fの駐車場に停めた自動車内に連れ込まれて、被告人から、お前なんか名誉棄損で訴える、けじめを付けるか、はまるか、などと言われた。お金を求めているなと思ったので、「お金を払います」と言ったら、最終的に、15万円を被告人に支払うことになった。 15万円も支払えなかったが、支払うと言わない 、はまるか、などと言われた。お金を求めているなと思ったので、「お金を払います」と言ったら、最終的に、15万円を被告人に支払うことになった。 15万円も支払えなかったが、支払うと言わないと更に暴行を受けるのではないかと思い、支払うと言った。 ウそのまま被告人方に連れて行かれて、被告人の妻(被害児童の母親)に、Gと一緒に土下座をした。その後、被告人に言われて、Eが持ってきた紙に、15万円を返すこと、警察には言わないこと、Gの給料日に支払うことなどを書いて誓約した。 エ被告人とEはその日中に金が欲しいと言って、Gに消費者金融に行くように言った。この日は被告人にはお金を渡していないが、Gが消費者金融で借り入れた50万円のうち25万円をEに渡した。 ⑵ G供述の要旨Gは、当公判廷において、おおむね次のとおり供述する。 ア令和2年4月13日、Dから、同級生に呼ばれたから出てくるけど、「やばい」って(連絡が)きたら警察を呼んでというメッセージが送られてきた。近くの交番に相談に行っている最中に、E達がDを連れて交番に現れて、一緒に交番から連れ出された。 イその後、午後11時頃にFに連れて行かれて、10分くらいして被告人が現れた。被告人は、Dの顔面を殴っていた。私は、その様子をEの車の中から見ていた。殴った瞬間、すごくどきどきして怖かった。 その後で、Dと一緒に車の中に連れ込まれた。被告人は、Dに、けじめをつけろなどと言っていた。被告人は、昔遊んだときに貸した金を今返すようになどと言い出して、Dに、お前が思っている額を言えと迫っていた。 最終的に15万円を支払うことになったが、そのとき、持ち合わせがなく- 22 -て支払えなかった。Eが、借りてでも金を返せと言い出して、私にも今いくら持っているのか聞いて 額を言えと迫っていた。 最終的に15万円を支払うことになったが、そのとき、持ち合わせがなく- 22 -て支払えなかった。Eが、借りてでも金を返せと言い出して、私にも今いくら持っているのか聞いてきた。Eは私に立て替えるようにと言って、被告人もうなずいていた。お金を支払えないというと怒鳴られたり、暴力を振るわれたりするかもしれないと思って、払えないとは言えなかった。 ウその後、被告人の家に連れて行かれて、Dと一緒に、被告人の妻に土下座をした。Dは、Eが持ってきた紙に、言われたとおりのメモを書いていた。 Eが、私を連れ出した後、Dの代わりにお金を払うように、消費者金融に行けば30万円くらいは借りられるだろうと言っていた。被告人にも払わなければならない分があったので、消費者金融でお金を借りることにした。実際には50万円借りることができたが、正直に言うと全部を取り上げられると思ったので、Eには30万円借りたと言った。Eは、30万円を全部渡せと言ってきたが、私の生活費がなくなってしまうというと、25万円にしてくれた。被告人にこのことが知れると、被告人は自分にも25万円を渡せと言ってくると思ったので、Eには被告人には、20万円を受け取ったと言ってほしいと頼んだ。Eに25万円を渡した後、Dと一緒に解放された。 エ Eに25万円を渡した翌日である同月15日、被告人から電話がかかってきて、警察に言っていないか、金はいつ払えるか、と言われた。更に、その翌日にも電話がかかってきて、15万円を今日中に払うように言われた。いったんDに相談したが、今日中に金を支払えないと言えば、怒鳴られたり、家を訪ねられたり、暴力を振るわれたりするかもしれないと思ったので、被告人には今日中に支払うと言った。被告人には15万円を渡そうと思って持っ 談したが、今日中に金を支払えないと言えば、怒鳴られたり、家を訪ねられたり、暴力を振るわれたりするかもしれないと思ったので、被告人には今日中に支払うと言った。被告人には15万円を渡そうと思って持っていったら、被告人は、Eには20万円渡したと聞いた、自分もそれ以上じゃなければ受け取らないと言い出した。仕方なく、被告人には20万円を渡した。20万円を受け取ったとき、被告人は、「これ- 23 -で終わったと思うなよ。」と言っていた。 オその数日後に、被告人から電話がかかってきて、Dに昔26万円を貸したと書いた紙が見つかったと聞かされた。嘘だと思ったが、「これで終わったと思うなよ」と言われていたのが、さっそく来たなとも思った。 Dもそんな紙があるわけがないと言っていたが、当時は誰にも相談できず、お金を集めて渡して終わらせればよいのではないかと考えて、26万円を支払うことにした。 被告人に支払った26万円は、その前日に振り込まれた私の給料の全額(13万円弱)と、手元にある借入金の残りの5万円に、自分の母から5万円、妹から3万円をそれぞれ借りて用意した。 ⑶ 各供述の信用性これらの供述は、元々被告人ともEとも面識がなく、被告人に対して金銭を交付すべき利害関係など全くないGが、消費者金融で借入れをしてまで、Eに25万円、被告人に合計46万円と多額の現金を渡すことになった理由をそれぞれ自然かつ合理的に説明するものであり、しかもその点が相互に整合しているから、いずれも高い信用性が認められる。 これに対し、弁護人は、Dは被告人に対する負債の有無や賭け麻雀等で負けた回数についての供述を変遷させているとか、GもDと同様信用できない人格の持ち主であるなどと、これらの供述が信用できないとする点を縷々主張するが、いずれも同人らの供述の信用性を支え 賭け麻雀等で負けた回数についての供述を変遷させているとか、GもDと同様信用できない人格の持ち主であるなどと、これらの供述が信用できないとする点を縷々主張するが、いずれも同人らの供述の信用性を支える上記の根本的部分を揺るがすものではなく、採用できない。 以上によれば、D及びGの供述には十分な信用性が認められ、これに沿う事実が認められる。 3 被告人の公判供述一方、被告人は、当公判廷において、おおむね、FでDを殴ったが、DもGも怖がっている様子はなかった、Dに対し、怒りに任せて貸した金を返せとは- 24 -いったが本気ではなかった、ツイッターの件の慰謝料も含め、今日じゃなくていいから50万円くらいは渡すようにDに言ったところ、Dの方からGが支払うことを申し出た、どういった経緯か分からないが、話の流れでGが消費者金融から借入れをして支払うことになった旨供述する。しかし、その供述は、前記のとおり、被告人に現金を支払うべき理由のないGが、消費者金融で借入れをしてまで被告人に多額の現金を渡すことになった理由を合理的に説明できないものであり、不合理で信用できない。 4 まとめ以上のとおり信用できるD及びGの供述に加え前提事実を総合すれば、判示第2の1ないし3の各事実が認められる。そうしたところ、①判示の各行為が恐喝の実行行為に当たること、②被告人に故意があったことはその行為態様から明らかであるし、③判示第2の1の犯行におけるEとの共謀についても、その現場であるFでの暴行・脅迫と金銭要求行為が一連のものとして行われ、これらを被告人とEが共同して実行していることからして、明らかである。 なお、弁護人は、被告人はDに対して貸金や慰謝料の請求権があったから被告人の行為には違法性がないとも主張するが、同請求権の有無にかかわら とEが共同して実行していることからして、明らかである。 なお、弁護人は、被告人はDに対して貸金や慰謝料の請求権があったから被告人の行為には違法性がないとも主張するが、同請求権の有無にかかわらず、暴力を振るったり、義務のない者を脅して借金をさせたりしてまで支払いを求めるという態様が社会通念上正当な権利行使に含まれるはずもなく、その主張は失当である。 5 その余の弁護人の主張についてなお、弁護人は、判示第2の各恐喝等事件について、警察官が別件で被告人方を捜索した際、証人Q(以下「Q警察官」という。)が、その件で差し押さえるべき物には当たらないメモ(Dが前記第3・2ウで作成したと述べた誓約書を指す、以下「誓約書」という。)を、それと認識しつつ、手持ちのノートに書き写した行為は、無令状の検証に当たり、令状主義の精神を没却する重大な違法があるから、この行為を端緒として始まった本件の捜査で得られた一- 25 -切の証拠が違法収集証拠として事実認定から排除されるべきであり、加えて、そのような証拠に基づいた本件公訴の提起は公訴権の濫用に当たり無効であるとも主張する。 この点、Q警察官の公判供述を含む関係証拠によれば、①同警察官らは、令和3年5月19日、被告人の妻に対する傷害事件を被疑事実とする捜索差押許可状を得て、被告人方への捜索を実施したこと、②その際、同警察官は、被告人方の室内のクローゼットにあったレターボックスの中から誓約書を発見したこと、③そのとき、同警察官は、これは別の恐喝事件等に関わる証拠である可能性があり、①の捜索差押許可状では差し押さえできないものであると考えて、手持ちのノートにその内容を書いたこと(弁8)、④同警察官は、同月22日、そのノートの内容を報告する捜査報告書(弁7)を作成したこと、⑤その後、 差押許可状では差し押さえできないものであると考えて、手持ちのノートにその内容を書いたこと(弁8)、④同警察官は、同月22日、そのノートの内容を報告する捜査報告書(弁7)を作成したこと、⑤その後、令和4年1月19日に、被告人方の捜索が改めて実施された際には誓約書が発見できなかったこと、⑥更に後日、①の捜索時に同警察官以外の者が撮影したと思しき、誓約書の1枚目の下半分が写った写真も見つかったことが認められる。 以上を踏まえて検討すると、まず、令状による捜索に当たり、発見された物が差し押さえるべき物に当たるかどうかは、その内容を見なければ判断ができないから、警察官が発見した物の内容を認識すること自体は、令状によって許容される以上の新たな法益侵害を生じさせるものとはいえない。また、発付済みの令状では差し押さえられないが、別の犯罪の証拠に当たり得る物を発見したという場合は、任意の提出を得られないのであれば、新たな令状に基づいて捜索差押を実施するしかない。したがって、当初の差押えの対象外である物を発見した場合、これを捜査の端緒として、捜査を指揮する者の指示を仰いだり、新しい令状を発付する必要性を疎明したりするために、その発見の経緯や新たに差し押さえるべき物を報告書等にまとめることに、何ら違法とすべき点はないし、その準備として発見した物の内容を警察官が備忘のために記すことも、- 26 -必要かつ相当な範囲で許されるというべきである。これらの点について本件を見ると、③のノート(弁8)については、1枚目は文面の内容を走り書きで書いたもの、2枚目と3枚目は同警察官が見た内容の要旨を記したものであり、その体裁からして、備忘のために急いで内容を控えたとする同警察官の供述(Q92、95項)にも不自然な点はない。③の手続は、報告書作成のための準備行為と は同警察官が見た内容の要旨を記したものであり、その体裁からして、備忘のために急いで内容を控えたとする同警察官の供述(Q92、95項)にも不自然な点はない。③の手続は、報告書作成のための準備行為として必要かつ相当な範囲に止まっているといえ、直ちに違法があるとはいえない。一方で、その後の④同警察官が作成した捜査報告書(弁7)は、特に1枚目の報告部分は誓約書の記載内容をほぼそのまま書き写したものとなっている。そうしたところ、同報告書の作成後、警察官らが速やかに新たな捜索差押許可状の発付を裁判所に求めなかったこととも相まって、少なくともこの部分については、結果として、差し押さえることができなかった物の内容を、警察官の認識を介してそのまま証拠化するものに近くなっている。その意味で、同警察官による③④の一連の行為は、報告書(弁7)作成後の経緯も含めて全体として見ると、無令状の検証に当たり得る嫌いがある。もっとも、当時の捜査機関の立場からすれば、そもそも捜索差押の対象となし得ない誓約書を狙って別件による捜索差押を実施したわけではなく、また、偶然発見された誓約書の内容を証拠として保全するに当たり、敢えてその原本を散逸させ、Q警察官作成の報告書(弁7)をもってこれに代えるべき理由もなかったといえる。結果として遅きに失したとはいえ、後に改めて被告人方への捜索差押が試みられていることからしても、誓約書の差押を目的とした新たな令状を速やかに請求しなかった理由は意図的なものではなく、単に捜査の遅延によると見るべきである。その遅延の理由を見ても、Q警察官は、複数の関係者が県外に住んでいたためであるとか、捜索を先行させることで関係者の逃亡や未発見の証拠を隠滅するおそれがあったなどと説明している(Q142項)。その判断は結果として適切であったか疑問はあるものの、 者が県外に住んでいたためであるとか、捜索を先行させることで関係者の逃亡や未発見の証拠を隠滅するおそれがあったなどと説明している(Q142項)。その判断は結果として適切であったか疑問はあるものの、当初から令状主義を潜脱して無令状の検証を実施する意図があったことを窺わせる内容とまではいえない。また、⑥- 27 -の写真についてみると、同写真が写真撮影報告書等の形式で証拠化されたり、その後の捜査で用いられたりした形跡も特段窺われず、少なくとも、同写真が検証令状の発付を潜脱して違法に収集された証拠に当たるとはいえない。 以上によれば、③のメモ作成と⑥の写真撮影の手続に令状主義の精神を没却するような重大な違法があるとはいえないし、これらを端緒として得られた全ての証拠を事実認定から排除すべきなどとはいえず、公訴の提起自体を無効とならしめるような違法があるともいえない。 (量刑の理由) 1 重過失致死事件等について、被害児童は、当日の朝から発熱し、日中は自分で歩けないほどぐったりしていた。被告人は、その様子を被害児童の母親から聞いていただけではなく、自らも目にして十分に認識していたのに、漫然と長時間の入浴に付き合わせ、その間、被害児童を浴槽内に入れたまま自らは浴槽の外で脛毛の処理や洗髪をし、被害児童の様子を4分以上にわたって注視せず、すぐそばにいる被害児童の鼻口が同じ時間水没している様子に全く気付かずに、同児を溺死させた。被害児童の死の結果の予見と回避はいずれも容易なものであったが、被告人はいずれの義務の履行も著しい態様で怠り、被害児童を死に至らしめたものである。被害児童の死の結果が生じたことは当然の帰結であり、本件は、単なる不注意で僅かな時間、目を離したがために、不幸にして子どもを溺れさせてしまったような事案とは全く異なる。被告人の過失 めたものである。被害児童の死の結果が生じたことは当然の帰結であり、本件は、単なる不注意で僅かな時間、目を離したがために、不幸にして子どもを溺れさせてしまったような事案とは全く異なる。被告人の過失の程度は重過失致死罪の中でも非常に重い部類に入る。 被害児童は、当時未だ4歳で、不調を明確に訴えることもできないまま、体勢を崩して鼻口を水中に没し溺死したものである。その苦しさや、僅か4歳で突然生涯を終えざるを得なかった無念さは、筆舌に尽くしがたい。 また、生前の被害児童に対する暴行も、幼児に対する暴力として看過できない。 2 恐喝事件等については、重過失致死事件に関し知人が被告人のことをSNSで中傷していることを知って怒り、そのことに藉口して、共犯者とともに、暴力を- 28 -ふるって金銭の支払を要求し、知人が要求した金銭を払えないとみるや、何の義務もないその交際相手に金銭の支払を要求し、消費者金融に借入れをさせてまで合計46万円もの多額の金銭を脅し取ったものである。中傷に対し怒ることはあり得るとしても、暴力を用いて金銭を要求したり、ましてや無関係の交際相手を巻き込んだりすることが正当化されるいわれはなく、犯情は悪質である。 3 一般情状について、被告人は、いずれの事件についても不合理な弁解に終始して自らの責任を矮小化しようとしており、反省が認められない。他方で、酌むべき事情としては、令和3年6月に傷害罪で罰金刑に処せられた以外には前科がないこと等があげられる。 4 以上の量刑事情を踏まえ、特に重過失致死の犯情の悪質さを考慮して、被告人に対しては主文の刑が相当であると判断した。 (求刑‐懲役3年6月)令和7年3月18日鹿児島地方裁判所刑事部 裁判長裁判官小泉満理子 裁判官川 主文 しては主文の刑が相当であると判断した。 理由 (求刑‐懲役3年6月)令和7年3月18日鹿児島地方裁判所刑事部 裁判長裁判官小泉満理子 裁判官川口洋平 裁判官髙橋涼香

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