主文 1 被告は、原告a に対し、27万5000円及びこれに対する令和3年6月21日から支払済みまで年3%の割合による金員を支払え。 2 被告は、原告b に対し、27万5000円及びこれに対する令和3年6月21日から支払済みまで年3%の割合による金員を支払え。 3 原告らのその余の請求をいずれも棄却する。 4 訴訟費用は、これを40分し、その39を原告らの負担とし、その余は被告の負担とする。 5 この判決は、第1項及び第2項に限り、仮に執行することができる。 事実及び理由 第1 請求別紙請求の趣旨のとおり第2 事案の概要本件は、被告に雇用され店長として稼働していたcが、被告に対し、未払時間外労働賃金及び付加金等の支払を求めるとともに、上司から指導の域をはるかに 逸脱した暴言を受けるなどしたと主張し、不法行為(民法715条)に基づく損害賠償請求として慰謝料及び弁護士費用の合計220万円等の支払を求める事案である。cが令和4年9月24日に死亡したため、cの父母である原告らが本件訴訟手続を承継した。 1 前提事実(争いのない事実及び後掲各証拠並びに弁論の全趣旨により容易に認 められる事実)(1) c(平成5年生まれ)は、平成29年1月3日、被告との間で雇用契約を締結し、被告が運営する中古自動車販売買取店舗(以下「買取店」という。)において、正社員として勤務していた者である。 (2) 被告は、cが勤務していた当時、自動車及び自動車部品販売業等を主たる目 的とする株式会社であった。なお、被告は、令和6年5月1日、その商号を現 商号に変更するとともに目的を古物売買業等に変更した。(弁論の全趣旨)(3) cは、令和元年6月、被告の買取店である各務原店の店長となっ った。なお、被告は、令和6年5月1日、その商号を現 商号に変更するとともに目的を古物売買業等に変更した。(弁論の全趣旨)(3) cは、令和元年6月、被告の買取店である各務原店の店長となった。 令和元年7月から令和3年6月までの間のcの被告における勤務状況(出退勤時刻)は、甲3号証及び4号証のとおりである。 (4) cは、令和3年6月21日、被告を退職した。 (5) cは、令和4年2月6日、被告を相手方として、本件とおおむね同内容の労働審判の申立てをした(当庁令和4年(労)第1号)。同申立てに係る労働審判事件は、同年5月31日、労働審判法24条1項により終了し、同条2項により同年2月6日に訴えの提起があったものとみなされ、訴訟手続に移行した。 (6) cは、令和4年9月24日に死亡し、原告らが本件訴訟手続を承継した。 2 主な争点(1) cの時間外労働時間(争点(1))(2) 買取店の店長が監理監督者に該当するか(争点(2))(3) パワーハラスメントの有無及び損害(争点(3)) 3 当事者の主張 (1) 争点(1)(cの時間外労働時間)ア原告らの主張cは、令和元年7月1日から令和2年2月29日までの間は別紙Aのとおり、同年3月1日から令和3年4月30日までの間は別紙Bのとおり、同年5月及び6月は前年の同月と同程度、被告において時間外労働を行った。割 増賃金の基礎となる賃金単価は、3450円(〔基本給58万円+LD手当2万円〕÷月所定労働時間173.89時間)であり、これらの未払賃金額は、合計1205万7468円である。 イ被告の主張仮にcが管理監督者に該当しない場合の時間外労働時間は、別紙C及び別 紙Dのとおりであり、未払割増賃金は、高く 、これらの未払賃金額は、合計1205万7468円である。 イ被告の主張仮にcが管理監督者に該当しない場合の時間外労働時間は、別紙C及び別 紙Dのとおりであり、未払割増賃金は、高くとも合計839万8330円で ある。所定労働時間は1日8時間であり、cは1 日2 時間の休憩時間を取得していた。 (2) 争点(2)(買取店の店長が管理監督者に該当するか)ア被告の主張買取店の店長は、次のとおり、被告から、中古車の買取り、経費の利用、 人材の採用等につき大きな裁量を与えられ、各買取店の経営、運営を原則として一任されており、管理監督者に該当する。なお、売上等が上がらない成績不振店を放置していては被告の経営に大きな影響を与えることになるから、成績不振店の店長には、各買取店を統括するエリアマネージャーが改善策の提示を求める等、アドバイスを行っている。 (ア) 中古車買取権限の有無買取店の主業務は車両の買取であるところ、店長は、車両の買取に関する一切の決定権限、すなわち、中古車を買い取るか否か及び買取価格の決定権限が与えられていた。被告本部に相談窓口は設置されているが、買取や買取価格の設定に関し強制は一切なく、店長に一任されている。買取価 格が400万円を超える車両であっても同様である。また、買取店の店長は、顧客への振込の権限も有している。 (イ) 営業方法買取店の営業方法、すなわち、店長自身が積極的に客と交渉するのか、客との交渉は他の従業員に任せるのか等は、店長が自由に決められ、各店 長が営業方法を工夫している。なお、成績不振店の店長に対しては、エリアマネージャーが指導を行い、それでも成績が向上しないときは店長の交代等を行うことになる。エリアマネー 自由に決められ、各店 長が営業方法を工夫している。なお、成績不振店の店長に対しては、エリアマネージャーが指導を行い、それでも成績が向上しないときは店長の交代等を行うことになる。エリアマネージャーによる指導は、極めて一部の成績不振店の店長に対して行われているものであるから、これらの指導をもって店長の権限や責任が限定されたものとは評価できない。 (ウ) 勤務態様 買取店の店長は、出退勤の有無ないし健康管理等の目的でタイムカードを打刻することとなっているが、遅刻、早退をしたとしても減給、降格等、不利益に取り扱われることはなく、労働時間の裁量が認められている。なお、「中部サテライト店長+次席者(55)」と題するグループライン(以下「中部サテライト店長等ライン」という。)で有給休暇の取得に関する 連絡がされている(甲23)のは、店長同士の連絡又は若手店長に対するアドバイスにすぎず、現にcはこれに従っていない。また、開店時刻を指定していたこと及び店長又は次長しか開店させられないことは認めるが、その余は店長に任せていた。 (エ) 人事の権限 買取店の店長は、正社員及びアルバイトの採用権限を有しており、店長による採否の判断が被告の本部に否定されることは基本的にない。cが採用を決めた人物は全員採用されており、他方で不採用と判断した人物は全員不採用となっている。部下従業員の人事考課に関しても、客観的な基準はあるものの、役職者に推薦するか否かは店長に委ねられており、店 長が権限を有している。また、買取店の店長は、他の従業員のシフトを決定し、労務管理も行っている。 (オ) 待遇買取店の店長と他の従業員とでは、給与の額に非常に大きな差がある。 基本給については、 また、買取店の店長は、他の従業員のシフトを決定し、労務管理も行っている。 (オ) 待遇買取店の店長と他の従業員とでは、給与の額に非常に大きな差がある。 基本給については、店長に昇格すれば大幅に昇給する仕組みがとられて おり、各務原店においても、店長であるcの基本給は58万円である一方、他の従業員の基本給は16万円ないし18万円程度と大きな差がある。 また、買取店の店長に対しては、店舗の経常利益の5%と店長自身が生み出した粗利益の5%が歩合給として支払われている。 このように、店長の給与は、店舗の経常利益とも連動し、他の従業員と 比べても非常に高額であるから、管理監督者にふさわしい待遇である。 イ原告らの主張買取店の店長には、次のとおり、およそ管理監督者に当たると評価されるような程度の権限は一切なく、cは管理監督者に該当しない。 (ア) 中古車買取権限の有無買取店の店長は、被告から、車種ごとに一定の基準に沿った範囲内の金 額での買取りを許可されていたが、基準に沿わない車両については、「中部商品決裁ライン(51)」と題するグループライン(甲27。以下「中部商品決裁ライン」という。)で上司に決裁を打診し、了承を得て買取価格を決めるシステムになっていた。また、レッドブックを超える価格の決定権限もなく、中部商品決裁ラインで買取額を決めることとされ、さらに、 400万円を超える買取りは、全件稟議が必要とされていた。 (イ) 営業方法店長には他の従業員に対する指揮命令の権限がなく、被告は、各店長が被告の決めた営業方法を履践しているかを常に監督している。各店長は、被告の決定した営業方法を遵守すること(乙5のシステムを用 店長には他の従業員に対する指揮命令の権限がなく、被告は、各店長が被告の決めた営業方法を履践しているかを常に監督している。各店長は、被告の決定した営業方法を遵守すること(乙5のシステムを用いること) が当然の前提とされており、営業方法を自由に決めることはできない。 店舗のノルマについても店長が低い数字で出しても被告から高い数字に修正されたから、店長に広範な権限があるとはいえない。 (ウ) 勤務態様店長は、他の従業員より早く出社することが求められ、その裏付けとし て店舗の画像写真をメッセージアプリに投稿することになっていた。 店長は、業務内容及び業務量ゆえに自らの労働時間を大幅に減らせず、事実上出退勤時刻を自由に決められない。なお、cの令和3年1月分給与の遅早控除について、被告は社内処理のミスとするが、信用性を欠く。 年休の取得についても被告側から指示があった。 (エ) 人事の権限 店長が、被告に対し、新規採用者を実際に面接した者として感想や採否の方向性を意見し、店舗スタッフの人事考課に際して感想や意見を述べることは争わないが、最終的な採用の可否や人事評価を下す権限はない。 (オ) 待遇歩合給については、他の社員より低くなることがある。仮に店舗の経常 利益が給与に反映されているとしても、それは、店舗の責任者としていかにうまく店舗の業務を回せられたかという点に対する歩合給にすぎない。 また、店長の給与が高額に設定されているのは、人材集めのための経営方針の結果にすぎない。 (3) 争点(3)(パワーハラスメントの有無及び損害) ア原告らの主張(ア) cは、他店舗の店長及 高額に設定されているのは、人材集めのための経営方針の結果にすぎない。 (3) 争点(3)(パワーハラスメントの有無及び損害) ア原告らの主張(ア) cは、他店舗の店長及びエリアマネージャーのdが参加するラインのやり取りにおいて、dから、営業成績改善に関する会話中に、指導の域をはるかに超えた暴言を受けたり、一定の成果が得られるまで残業を強要されたりするなどのパワーハラスメントを受けた。cは、当時、cの弟に対 し、上記ラインのやり取りの画像を送るとともに「もう死にたい」と発言していた(甲41)。 (イ) cの通院状況(甲30、32)によれば、cは、仕事上の叱責や長時間労働によって、令和3年6月頃に急激に体調の変化を来していることがわかる。この時期は、dのパワーハラスメント行為が存在しており、同行 為がcのうつ病の原因になったことは明らかである。 (ウ) cは、上記の不法行為により、著しい精神的苦痛を受け、うつ病を発症させるに至った。上記精神的苦痛に対する慰謝料は200万円を下らない。また、上記不法行為と相当因果関係のある弁護士費用は、20万円である。よって、cに生じた損害は、合計220万円である。 イ被告の主張 (ア) 原告らは、ラインのやり取りを挙げてパワーハラスメントを主張するが、いずれも各務原店のシフト作成又は売上改善に関する業務についての注意指導であり、店長としての初歩的業務の指導や低業績の店舗の指導という点からすると、指導としても相当な範囲内である。 (イ) 上記ラインのやり取りでのdの言動は、飽くまで、店長として初歩的ミ スを犯していることの指摘や、業績不振店からの脱却を目指して行われたものであり、指導の相当性を逸脱したとしても、その目的 (イ) 上記ラインのやり取りでのdの言動は、飽くまで、店長として初歩的ミ スを犯していることの指摘や、業績不振店からの脱却を目指して行われたものであり、指導の相当性を逸脱したとしても、その目的に照らし、cに強い心理的負荷を与えるものではない。さらに、ライン上で行われたものであること、わずか2回であること、指導の時間も短時間であることから、強い心理的負荷にはならない。 やまやクリニックのカルテ(甲30)によれば、令和2年5月2日の時点でcがうつ病を発症していたことは明らかであるから、上記dの言動とcのうつ病発症との間に因果関係はない。 (ウ) 仮に上記LINE のやり取りでのdの言動がパワーハラスメントに該当するとしても、悪質性は低いから、慰謝料額は低額なものにとどまる。 第3 争点に対する判断事案の性質に鑑み、争点(2)から検討する。 1 争点(2)(買取店の店長が管理監督者に該当するか)について(1) 労働基準法41条2号は、「事業の種類にかかわらず監督若しくは管理の地位にある者」(管理監督者)には、労働時間、休憩及び休日に関する同法の規定 を適用しない旨を定めているところ、行政解釈上、管理監督者とは労働条件の決定その他労務管理について経営者と一体的な立場に在る者の意であるとされていること(昭和22年9月13日発基第17号等)も踏まえれば、上記規定は、同法上の労働時間等に関する規制を超えて活動せざるを得ない重要な職務及び責任を負う者であって、現実の職務内容や勤務態様等に照らしてもこれ らの規制になじまない立場にある者に限り、上記規制の適用を除外したものと 解される。したがって、管理監督者に該当するか否かは、職務内容並びにこれに対応する責任及び権限、勤務態様、人事に らの規制になじまない立場にある者に限り、上記規制の適用を除外したものと 解される。したがって、管理監督者に該当するか否かは、職務内容並びにこれに対応する責任及び権限、勤務態様、人事に関する権限、待遇等の観点から総合的に判断すべきことになる。 そこで、上記各観点から、買取店の店長が管理監督者に該当するか否かについて検討する。 (2) 職務内容並びに責任及び権限についてア甲1号証、乙38号証及び弁論の全趣旨によれば、cが勤務していた当時の被告の事業や買取店に関し、次の事実が認められる。 (ア) cが勤務していた当時の被告は、全国各地に店舗を出店し、各店舗において中古自動車の販売業務、中古自動車の買取業務、損害保険代理業務等 を行っており、また、当時の各務原店は、主に中古車買取業務を行うほか、他店舗等から中古車を取り寄せて販売する業務等も行う店舗(買取店)であった。 (イ) 買取店は、中古車の買取業務を最も重要な業務としている。買取店における買取業務は、主として、インターネット、ホームページ又は直接来店 する方法で車の査定の申込みをした買取希望者に対して買取店の従業員(査定担当者)が車の査定を行い、買取希望者との交渉を経て、商談が成立した場合には、買取店が当該車を引き取り、買取希望者に対し代金の振込を実施するという流れで行われている。 (ウ) 買取店において買取希望者から買い取られた中古車は、中古車の展示販 売を行っている他店舗で展示された後に販売されるか、又はオークション会社が行う中古車のオークションに出品され売却される。 (エ) 買取店で買い取った中古車が売却された場合、オークションでの売却のときは買取価格と売却額との差額の全部が、販売店での売却のときは上記差額の一部 う中古車のオークションに出品され売却される。 (エ) 買取店で買い取った中古車が売却された場合、オークションでの売却のときは買取価格と売却額との差額の全部が、販売店での売却のときは上記差額の一部が買取店の売上げとして計上される。 イ買取店の店長の具体的な職務内容並びにこれに対応する責任及び権限 (ア) 上記ア(エ)のとおり買取店の利益は買取価格と売却額との差額であるから、買取店が売上げ及び利益を上げるには、できるだけ多くの売却可能な中古車をできるだけ適正な低価格で買い取ることが必要かつ重要であるところ、被告は、買取店の店長は買取業務に関する一切の決定権限を有する旨主張する。そして、平成30年12月5日から令和2年3月8日まで の間において被告の買取店(横浜青葉店)の店長であったe は、買取店の店長には、①買取りの営業を誰に行わせるかを決定する権限、②買取りを行うか否か及びこれを行う場合の買取金額を決定する権限、③顧客への代金の振込を承認する権限、④買い取った車の販売方法を決定する権限を有していたと、上記主張に沿う旨を述べる(証人e2頁等)。これに対し、 原告らは、買取店の店長には重要な権限は一切なかったとして被告の上記主張等を争うので、検討する。 (イ) 買取りの営業に関する権限e は、買取店に車の査定の申込みがあった場合、その買取店の店長が、買取希望者(顧客)や査定(買取り)の対象となる車、各従業員の得意とす る顧客や車種、各従業員の予定等を総合的に勘案して、当該車の査定担当者を決めており、この意思決定に、被告の本部やエリアマネージャーが介入することはない旨述べる(乙38・5~7頁、証人e2~3頁)。これに対し、原告らは、cには他の従業員に対する指揮命令の権限が与えられていなか り、この意思決定に、被告の本部やエリアマネージャーが介入することはない旨述べる(乙38・5~7頁、証人e2~3頁)。これに対し、原告らは、cには他の従業員に対する指揮命令の権限が与えられていなかったとし、甲29号証等を根拠に、各店長は会社が決めた営業方 法を履践しているかを常に監視されていた旨主張する。 甲29号証は「サテライト店用、環境整備点検項目」と題する、買取店についての点検項目が列挙された表であり、被告の本部担当者等が同表を用いて定期的に買取店の点検を実施しているものであるが、そこに記載された点検項目の具体的な内容に照らせば、e が述べるとおり(証人e 37~38頁)、基本的には店舗の環境面や入出金の処理状況等に関する 管理状況を確認する目的で行われているものとみるのが相当である。確かに、「すべての商談は戦力順に振り分けられているか?」といった点検項目が挙げられていたり、「毎日予定作り1日1人2件以上」と手書きで書き込まれたりしているなど、営業内容に踏み込んだ点検や指摘もされていることがうかがわれる(甲29)が、店舗の利益が上がる方向で営業 活動が行われているかを概括的に確認したり、本部の立場からその具体的な方策について助言や指導をしたりするものと考えられ、日々の買取りの営業活動において本部の承認や決裁を要するとするものではないから、これらの確認や助言、指導等が併せて実施されているからといって、店長に営業方法に関する裁量がないとはいえない。 また、原告らは、買取店の店長は被告のシステム(乙5〔枝番を含む。〕の画面で表示されるシステム。以下「乙5のシステム」という。)を利用することが当然の前提とされていたことを指摘するが、乙5のシステムは、買受希望者やコールセンターからの情報を (乙5〔枝番を含む。〕の画面で表示されるシステム。以下「乙5のシステム」という。)を利用することが当然の前提とされていたことを指摘するが、乙5のシステムは、買受希望者やコールセンターからの情報を集約し、査定担当者と店長とが査定対象の車に関する情報を共有した上で営業戦略や査定価格等を 検討するためのシステムであると考えられるのであり(乙5、38)、乙5のシステムの利用が前提とされていることをもって営業方法を自由に決める余地がなかったとはいえない。cは、各務原店の店長であった当時、乙5のシステムを利用して、査定担当者から報告がある都度、「金額下がる前にで早期手放し誘致しましょう。特に拡販期今がいい金額ですよ落 とし込みがまだ足りてません!」(乙5の1)、「次の車が新車崩せないとなれば、いつ決めるのか?もう少し時期を明確にして買取臨んでください。」(乙5の2)などと具体的に指示やアドバイスを行っていたのであり、実際、各従業員の仕事ぶりを日常的に見ており各人の営業の傾向や得意不得意の特徴等を把握している店長において具体的な営業方法を検討し 従業員を指揮するのが利益を出す上でも効率的であるといえるから、店 長には、営業方法を決め、他の従業員に対し指揮命令を行う権限があったとみるのが相当である。 なお、成績が不振な買取店の店長に対しては、これらの店長のみをメンバーにした「カド番!今月挽回必須!!!」と題するグループライン(甲9。以下「甲9のライン」という。)を利用したエリアマネージャーによ る指導が行われているが、基本的に、ごく一部の店舗(令和3年6月については、東日本ブロック内の買取店91店舗のうち5店舗〔甲9、乙33〕)の店長に対して行われ、1か月ごとに当該月の営業成績に応じて指導の対象店舗が選定 が、基本的に、ごく一部の店舗(令和3年6月については、東日本ブロック内の買取店91店舗のうち5店舗〔甲9、乙33〕)の店長に対して行われ、1か月ごとに当該月の営業成績に応じて指導の対象店舗が選定されるものであって長期にわたって対象店舗を固定して継続的に行われることが予定されているものとはうかがわれないか ら、甲9のラインでの指導が一部の店舗に対して行われていることをもって、直ちに、買取店の店長の権限や責任が一般的に限定されるものであったとはいえない。 したがって、営業方法等に関する原告らの主張はいずれも採用できない。 (ウ) 買取りを行うか否か及びこれを行う場合の買取金額を決定する権限 原告らは、買取りや買取金額に関する買取店の店長の権限は一定の基準に沿った範囲内のものであり、基準に沿わない場合は、中部商品決裁ライン(甲27)で了承を得て買取金額を決めることになっていた、買取金額が400万円を超える場合は全件稟議が必要とされていた旨主張する。 しかし、中部商品決裁ラインは、証拠(甲27)上、その構成員ややり取 りの内容が限定的な範囲でしか明らかでなく、記載内容に照らしても、eが述べる(証人e27頁)とおり、近隣店舗の店長間での相談ないし先輩店長から後輩店長へのアドバイス等を目的とするものにとどまるとみるのが相当であり、それを超えて、一定額以上の買取金額について許可や了承を得るための仕組みであったとは認めるに足りない。 前記(ア)でも述べたとおり買取店が売上げ及び利益を上げるには買取価 格の決定が非常に重要であるところ、査定対象となる車は、メーカー、車種、年式、走行距離、色、設備内容等さまざまであり、これらの車それぞれについて、利益を生み出すことのできる適切な買取価格 格の決定が非常に重要であるところ、査定対象となる車は、メーカー、車種、年式、走行距離、色、設備内容等さまざまであり、これらの車それぞれについて、利益を生み出すことのできる適切な買取価格を決定するには、ユーストカーが提供する相場情報(中古車査定システム)に加え、オークション会場の相場情報やインターネット上の情報のほか、店長自身 の知識等も含めて総合的に判断する必要があるところ(証人e22~24頁)、買取店は東日本エリアだけでも91店舗(令和3年5月21日時点。 乙33)あることにも照らせば、一定額以上は被告の本部等での決裁を要するとした場合には、適時に適切な買取金額を決定することができずかえって商機を逃し利益を失う結果になりかねない。 そして、現に被告のシステム上も、各務原店や横浜青葉店で行われた買取りについてはいずれも決裁者が店長であるcやe となっており(乙3、乙38・図10)、さらに、証拠(乙23、38、証人e4、25頁)によれば、買取金額が400万円を超える場合であっても、被告の本部への確認をとることなく買取店の店長の判断で買取りを行うことができると認 められる。 そうすると、買取店の店長は、e の述べるとおり(証人e2頁等)、買取りを行うか否か及び買取金額についての決定権限を有していたと認めるのが相当であり、この点に関する原告らの上記主張はいずれも採用できない。 (エ) 買取り後の業務の権限証拠(乙28、29、乙38・16~17、18~19頁及び図10、証人e5~7頁)によれば、買取店の店長は、顧客への代金の振込みの承認権限及び買い取った車の販売方法を決定する権限を有していたと認められ、同認定を覆すに足りる証拠はない。 ウ勤務態様 によれば、買取店の店長は、顧客への代金の振込みの承認権限及び買い取った車の販売方法を決定する権限を有していたと認められ、同認定を覆すに足りる証拠はない。 ウ勤務態様 被告は、買取店の店長には遅刻や早退による減給等の不利益はなく、労働時間の裁量が認められている旨主張し、e はこれに沿う旨述べる(証人e15頁)。 買取店の店長も他の従業員と同様に出退勤時にタイムカードを打刻していたことは被告も認めるところであるが、労働時間の規制を受けない者に対 しても出退勤の有無や健康管理等の目的でタイムカードの打刻を求めることは会社の対応として相応の合理性があるといえるから、上記事実をもって労働時間に裁量がないとはいえない。なお、cの令和3年1月分の給与について、9時間33分の遅早控除として3万2556円が控除されているが(甲6のうち「2021年1月分給与明細書」)、これについて、被告は、本 件の労働審判の申立てがされるより前の段階から、システムの登録上のミスである旨の説明をしており(乙37)、上記の遅早控除以外に、cの給与に関し不就労分に応じた賃金控除等がされていたとは認められないことも踏まえれば、店長であるcに、遅刻や早退による減給等の不利益は課されていなかったと認めるのが相当であり、被告による上記説明に信用性がない旨の 原告らの主張は採用できない。 また、原告らは、店長は他の従業員より早く出社し店舗の画像写真を投稿することを義務付けられていた点を指摘する。確かに、店長又は次席者に対して開店時刻の午前9時までに店舗の画像をグループライン等に投稿するよう指示がされていたことは被告も認めるところであり、中部サテライト店 長等ライン(甲24)のやり取りでは、店舗の画像の投稿のほか、「店舗画像 前9時までに店舗の画像をグループライン等に投稿するよう指示がされていたことは被告も認めるところであり、中部サテライト店 長等ライン(甲24)のやり取りでは、店舗の画像の投稿のほか、「店舗画像は9時までに上げてください。」、「基本的に店長、次席者が自分の目で見て確認を!」、「人任せの画像や、転送は無しで!」、「自分の城は自分で守る!」等のメッセージも投稿されているから(甲24)、店長は、基本的に、午前9時の開店時刻前に店舗内を確認した上で店舗の画像を投稿できるように 出勤することが事実上義務付けられていたといえる。しかし、上記の被告に よる指示は、午前9時の開店時刻に顧客が来店した際に適切な対応ができるようにするために、開店準備及びその確認を店長(場合によっては次席者)自ら行うべきとの考えから、被告の店舗での一般的な対応として行われていたものと考えられるから(甲24、証人e34~35頁)、これにより店長が出勤時刻について事実上の拘束を受けることになるとしても、被告において は店長の責務とされているものであって、その考え方にも一定の合理性を認め得るから、この点をもって直ちに労働時間に裁量がないとはいえない。なお、証拠(甲23)によれば、中部サテライト店長等ラインでは有給休暇の取得に関する投稿もされているが、近隣の店舗同士で支障がないように調整する趣旨のものとも考えられ、店長の職責上、事実上の制約が一定程度生ず るのもやむを得ないといえるから、上記判断に影響しない。 さらに、原告らは、業務量の多さやその業務内容等から、店長は、事実上、出勤時刻だけでなく退勤時刻も自由に決めることはできない等と主張する。 この点について、e は、店長として勤務していた当時、遅くまで残業することは基本的になく、就業時間中 内容等から、店長は、事実上、出勤時刻だけでなく退勤時刻も自由に決めることはできない等と主張する。 この点について、e は、店長として勤務していた当時、遅くまで残業することは基本的になく、就業時間中にすべて終えることは可能であった旨述べる (証人e15頁)が、cの場合は、各務原店の店長であった当時、退勤時刻が午後8時過ぎないし午後9時過ぎ頃になることがほとんどであったと認められる(甲3、4)。そうすると、買取店の店長は、退勤についても、cのように業務量が多い又は就業時間内に必要な業務をこなせない場合には、一定程度残業をせざるを得ないため、早めに退勤するなど適宜柔軟に対応する ことは実際にはあまりできなかったと考えられる。しかし、これも、店長の職責や職務内容に起因するものといえるのであって、被告から店長の退勤時刻について指示があるわけではなく、cの場合も自らの判断で直帰する(甲3)などしており、裁量自体は有しているといえる。 以上のとおり、買取店の店長は、出退勤について事実上の制約を一定程度 受けるものの、これらをもって直ちに、労働時間に関する裁量がなく管理監 督者としてふさわしくないと判断することは相当でないというべきである。 エ人事に関する権限被告は、買取店の店長には、正社員及びアルバイトの採用権限及び部下従業員の人事考課に関する権限がある旨主張し、e はこれに沿う旨述べる(証人e12~14頁)。これに対し、原告らは、採用や人事考課に際し感想や意 見を述べることはできるが採否等に関する権限はない旨主張する。 被告では、買取店において基本的にアルバイトは雇っておらず、正社員を積極的に採用する方針がとられていたところ(証人e29~30、31~32頁)、証拠(甲20、乙7の1及び2、乙34 主張する。 被告では、買取店において基本的にアルバイトは雇っておらず、正社員を積極的に採用する方針がとられていたところ(証人e29~30、31~32頁)、証拠(甲20、乙7の1及び2、乙34、証人e40~41頁)によれば、cは、各務原店の店長を務めていた際、従業員の採用面接を行い、そ の結果につき、面接内容とともに採用又は不採用の意見及びその理由を付して被告の本部に報告しており、採用の意見を付した入社希望者については全員採用され、不採用の意見を付した者についてはそのまま不採用とされていたことが認められる。このように、積極採用の方針の下でも、店長であるcが不採用と判断した入社希望者については、その判断どおりに不採用とされ ていることからすると、買取店の従業員の採用不採用の判断は、基本的に店長に委ねられていた(証人e12頁)とみるのが相当である。なお、被告の本部が店長による不採用の判断を覆すこともあるが、それは、当該店長の判断の前提となる事実に誤りがあるなど特段の事情がある場合であると認められるから(乙35の1及び2、証人e12~13頁)、上記判断を左右しな い。 また、cは、各務原店の従業員の主任等への昇格について推薦の意見を被告の本部に対して提出しているところ(乙8の1及び2)、これらの意見について、e が、従業員の昇格には一定の基準をクリアするだけでなく、店長の推薦が必須であり、店長の意見が非常に重視される旨述べていること(証 人e14頁)も踏まえれば、店長は、部下従業員の人事考課を実質的に左右 する一定の権限を有しているものと認めるのが相当である。 さらに、買取店の店長は、他の従業員のシフトを決定し、労務管理も行っていると認められる(甲8、25、乙9、証人e16、44頁)。なお、 する一定の権限を有しているものと認めるのが相当である。 さらに、買取店の店長は、他の従業員のシフトを決定し、労務管理も行っていると認められる(甲8、25、乙9、証人e16、44頁)。なお、d及び被告従業員のfのほか、cを含む、愛知、岐阜、静岡、長野及び三重の各買取店の店長で構成される甲8号証のグループライン(以下「甲8のライン」 という。)では、令和3年6月分のシフトについて、各店長がdやfからミス等の指摘を受けて作り直しを指示されるなどしているが、これらの指示は、店長の休みの日に戦力を落とさない人員でシフトが組まれているかなど効果的に利益を生み出せるシフトになっているか否かや、従業員の所定休日が確保されているかなど従業員に不利益のない内容になっているか否かとい った、被告の買取店として最低限守るべき内容が守られているかを確認するものと評価し得るのであり(甲8、証人e44頁)、これらのやり取りがされていることをもって、買取店の店長にシフトの決定権限や労務管理の権限がなかったとまでは認められない。 オ待遇 cが店長であった当時の各務原店の各従業員の給与について、証拠(甲6、乙11~15〔枝番を含む。〕)によれば、基本給は、店長であるcが月額58万円であるのに対し、他の従業員は月額16万円台ないし18万円台と3倍以上の開きがあり、また、諸手当及び歩合給等を含めた令和2年の総支給額は、cが1110万1238円であるのに対し、他の従業員は残業手当を 含めても500万円台ないし600万円台と2倍前後の開きがあることが認められる。 また、買取店の歩合給については、被告においては、店長以外の従業員は、当該従業員が買取り等を担当して生み出した粗利の5%が歩合給として支給されるのみであるのに対し、店長は ことが認められる。 また、買取店の歩合給については、被告においては、店長以外の従業員は、当該従業員が買取り等を担当して生み出した粗利の5%が歩合給として支給されるのみであるのに対し、店長は、上記従業員と同様に店長自身が買取 り等を担当して生み出した粗利の5%が歩合給として支給されるほか、店舗 の経常利益の5%も歩合給として支給されることとされ、店舗全体の利益と連動する仕組みが採用されている(乙21、証人e7~9頁)。なお、原告らは、店長の歩合給が他の従業員の歩合給より低くなることがある旨を指摘するが、各月の従業員の営業成績によっては店長の歩合給の方が低くなることも当然あり得ると考えられ、令和3年3月の買取店の店長の平均歩合給が5 7万8219円であること(乙22、証人e9頁)にも照らせば、原告らの上記指摘は結論を左右しない。 以上によれば、買取店の店長は、基本給及び歩合給を含む総支給額のいずれも、店長以外の店舗の従業員と比べて有意な差が設けられており、労働基準法37条等の適用が除外されても保護に欠けることにはならない程度の 待遇面での手当てがされていると評価するのが相当である。 (3) 小括上記(2)において検討したとおり、買取店の店長は、買取店における中心的な業務である買取業務に関し、一切の権限、すなわち、営業方法を決め、これに応じて店舗の従業員に対し指揮命令を行う権限、買取りを行うか否か及び適 正な買取金額を決定する権限、顧客への代金の振込みを承認する権限並びに買い取った車の販売方法を決定する権限を有しており、勤務態様については、遅刻や早退による減給等の不利益はなく、状況に応じて自らの判断で直帰するなど労働時間に関する裁量を有し、また、人事の関係では、正社員の採用権限及 売方法を決定する権限を有しており、勤務態様については、遅刻や早退による減給等の不利益はなく、状況に応じて自らの判断で直帰するなど労働時間に関する裁量を有し、また、人事の関係では、正社員の採用権限及び部下従業員の人事考課に関与する権限を有している。そうすると、買取店の 店長は、自身が店長を務める買取店という一店舗単位でみれば、当該店舗の実質的な経営者であると評価することができ、利益を生み出す主体である買取店の、被告における重要性に鑑みれば、買取店の店長は、被告の経営者と一体的な立場にあるとも評価することができる。なお、買取店の店長は労働時間に関する裁量が実際には相当程度制限される場合もあるが、前記(2)ウでも述べた とおり、店長の職責や職務内容に照らしやむを得ないと考えられるのであって、 これをもって上記評価が直ちに左右されるものではない。以上に加え、買取店の店長が労働時間、休憩、休日に関する労働基準法の規定を適用しないこととしても保護に欠けることにはならないと評価し得る程度の待遇が設けられていると認められることも踏まえれば、買取店の店長は、労働基準法41条2号の掲げる管理監督者に該当すると認めるのが相当であり、この点に関する原告 らの主張はいずれも採用できない。 したがって、買取店の店長であるcは、管理監督者に該当し、労働基準法37条等の規定の適用はないから、争点(1)について検討するまでもなく、cの被告に対する未払時間外労働賃金支払請求権が存するとは認められない。 2 争点(3)(パワーハラスメントの有無及び損害)について (1) 認定事実前提事実、後掲各証拠及び弁論の全趣旨によれば、次の事実が認められる。 ア cは、大学を卒業した後、被告とは別の中古車販売会社に勤務 及び損害)について (1) 認定事実前提事実、後掲各証拠及び弁論の全趣旨によれば、次の事実が認められる。 ア cは、大学を卒業した後、被告とは別の中古車販売会社に勤務していたが、同会社を辞めて平成29年1月3日に被告の正社員となり、平成30年12月末頃、静岡から岐阜に転勤となった後、令和元年6月、各務原店の店長と なった。(前提事実(1)(3)、甲30・4枚目、原告a 本人13頁)。 イ cは、令和元年6月19日、岐阜市に所在する診療内科・精神科のクリニックである、やまやクリニックでの受診を開始し、以後、継続的に通院していた(甲30)。 ウ cは、令和2年1月16日、岐阜市に所在する内科、診療内科等の医療法 人四つ輪会おざわクリニック(以下「おざわクリニック」という。)での受診を開始し、以後、継続的に通院していた(甲31)。 エやまやクリニックの担当医師は、令和2年5月2日、笠松病院宛てのcに関する診療情報提供書を作成した際、cの傷病名について「うつ病」、「発達障害」と、紹介目的等について「コロナによる不安発作が起こった可能性が あります。」などと記載した。(甲30・13枚目) オ cは、令和2年6月26日、岐阜市所在のしまメンタルクリニックでの受診を開始し、令和3年6月19日まで継続的に通院した(甲32)。 カ令和3年5月31日、甲8のラインで、同ラインのメンバーである愛知、岐阜、三重、静岡及び長野の各買取店の店長が、同年6月の各店舗のシフトを投稿し、d等からシフトの内容や形式等について確認を受けた。この際、 cが、各務原店の従業員の1人について所定休日が本来8日以上であるところ7日しか割り当てていないシフトを上げたところ、dは、そ 投稿し、d等からシフトの内容や形式等について確認を受けた。この際、 cが、各務原店の従業員の1人について所定休日が本来8日以上であるところ7日しか割り当てていないシフトを上げたところ、dは、その点を指摘するとともに、「タコが!!!!!!!!!!!!!!!」、「指摘されてんだから確認しろよ」、「何年店長やってんだよ」、「いい加減にしろよ」、「クソ赤字でやる事全て適当か!!」、「コンバット(店長自ら買取りや販売を行うこ と)も全然しないし」、「何考えてんの?」、「何?MQ(店舗の粗利益)12万って?」、「成約率15%?」、「ふざけてんじゃねーよ」、「危機感もなんも感じないですね!」などと矢継ぎ早に畳みかけ、「大変申し訳ございません」と謝罪の文言を述べるcに対し、「限界なら今すぐ言ってください!」、「謝るんじゃなくて、質問に答えろ」、「謝罪なんか求めてないし、謝られたって なにも解決しません」、「何なのマジで」と向けると、cから「かしこまりました。即改善致します。」との返答があった。これに対し、dが「は>」、「返答になってないけど」、「日本語もまともに喋れないなら店長職務まりませんが」、「何を考えてるの?」、「どうやって改善すんの?」、「具体的に答えろ!!!!!!!!!!!!!」と更に畳みかけたところ、cから「限界で はありません!全量コンバット私が店の数字を作り改善致します!」との回答があり、同回答を受けて、dがさらに「成約率15%でどうやって?」、「??????????????」、「具体的に答えろよ」と指示すると、最終的に、cから「営業全員、自信の査定も全て管理あさり、成約率を改善致し、MQは新規全量即決で適正買取致します。」との回答がされた。dとc との上記のやり取りが行われた時間は約6分間であった。 終的に、cから「営業全員、自信の査定も全て管理あさり、成約率を改善致し、MQは新規全量即決で適正買取致します。」との回答がされた。dとc との上記のやり取りが行われた時間は約6分間であった。(甲8) キ令和3年6月1日、cを含む成績不振店の店長5名がメンバーとされた甲9のラインにおいて、dがcら店長に対し、同年5月の経常利益の不振の原因並びに今月(同年6月)の改善点、戦い方及び経常利益をどう出すかを具体的に報告するよう指示をし、「納得できない返答や抽象的な内容は、まともな内容になるまで何時まででもやり直しさせます。」と告げた。 cが、上記事項について回答したのに対し、dは、「当たり前の事をズラズラ書いてるだけで、今更?って感じですが、肝心の部分が抜けてる、やり直し、根本の部分を確り考えてください」、「自分の店のことをちゃんと考えてない」と指摘してやり直しを指示した。cが改めて販売強化のための具体的な方策等の回答を加えたところ、dが、「販売販売いってるけど、そこじゃ ないから」、「勘違いすんな」と指摘し、「申し訳御座いません。承知致しました。」と返答するcに対し、「返答してる暇あんなら即貼り付けろ」、「収益構造とか一丁前な事ほざいてるけど、そもそも全然自AP取ってないし、査定数少な過ぎるし、異常な程買えてない現状理解してないでしょ?」、「んで、販売販売言ってるけど販売したいなら販売店行けば?」、「コンバットも一切 結果が出てない雑魚営業以下の数字」、「謝罪は要らないからまともに返答して」、「今日の行動量と予約数が一切足りてないけど?何してんの?」、「もちろん今全員で猛AP中よね?」、「先月クソ赤字だから当然レベルですが」などと畳みかけ、cが「自アポ、査定母数の確保を行い、まず て」、「今日の行動量と予約数が一切足りてないけど?何してんの?」、「もちろん今全員で猛AP中よね?」、「先月クソ赤字だから当然レベルですが」などと畳みかけ、cが「自アポ、査定母数の確保を行い、まずは査定台数買取台数を改善致します。」などと答えたのに対し、dが「販売が出来なければ G(経常利益)出ないの?」、「販売店行けよ」、「考え方イカれてない?」、「まだ気づかないの?」等と指摘したところ、cから、「AA適正買取ができていればG(経常利益)が出ます!サテライト(買取店)の意味を確りと理解し、まず買取台数改善し@の確保を行います。」等と答えた。これを受けてdは、「本来であれば既に交代してるので」、「行動と結果変わらなければ即アウト なので、販売店行ってもらいます」、「そこで大好きな販売をしてください」 と告げた。 また、その後、予約が1件しか取れなかった原因やどうすれば予約がとれるようになるかについてdから問われたのに対し、cが、「お客様は金額を知りたくて登録をしているのに、査定を促進してしまっている事だと思います。」、「査定のハードルを下げて誘致し、査定致します!」等と答えたのに 対し、dは、「はい?」、「意味わかんないけど」、「日本語大丈夫?」、「何査定致します!って」、「舐めてんの?」、「予約取る件話してんだろタコが」、「会話すら成立しないなら店長下りろタコが」などとcの回答が全く要領を得ないことを批判した。 ク cは、令和3年6月7日、弟のgとのラインに、「もう死にたい」と記載 し、前記カ及びキのやり取りの画像を一部投稿した。これらの投稿を見たgは、同月8日、cに対し、自身の勤める会社でcを受け入れてもらえる旨等の返信をした。(甲41、甲41の2)ケ令和3年6月2 前記カ及びキのやり取りの画像を一部投稿した。これらの投稿を見たgは、同月8日、cに対し、自身の勤める会社でcを受け入れてもらえる旨等の返信をした。(甲41、甲41の2)ケ令和3年6月21日、cが被告を退職した(前提事実(4))。雇用保険被保険者離職票(甲2)には、一身上の都合による自己都合退職と記載されてい る(証人e43頁)。 (2) cに対するパワーハラスメントの有無ア原告らは、甲8のライン及び甲9のラインでcに対してされた、前記(1)カ及びキのdの言動の大部分について、指導の域をはるかに超えた暴言であるか、成果が出るまで残業を強要するもので、パワーハラスメントに当たる と主張する。これに対し、被告は、dの上記言動はいずれも店長としての初歩的業務の指導又は低業績の店舗の指導であり、指導としても相当な範囲内である旨主張するので、検討する。 イ甲8のラインの前記(1)カのやり取りに関しては、確かに、cが従業員に所定休日に満たない日数の休日を割り当てるという初歩的なミスをしたこ とについて指導を行うものといい得るが、そうであれば、単に、上記ミスを 指摘して直ちに修正するよう指示し、今後は同様のミスをしないよう注意すれば足りるのであり、「タコが!!!!!!!!!!!!!!!」、「何年店長やってんだよ」、「クソ赤字でやる事全て適当か!!」といった発言(投稿)を加える必要性は皆無であって、このようなc自身を蔑むような発言は指導の域を超えた暴言に当たるといえる。 また、上記のミスの指導から各務原店の成績が不振である点に話題が移り、「具体的に答えろ!!!!!!!!!!!!!」とcに対し強く回答を求めているが、そもそも、上記のミスの指導から2分程度の間にdから矢継ぎ早 記のミスの指導から各務原店の成績が不振である点に話題が移り、「具体的に答えろ!!!!!!!!!!!!!」とcに対し強く回答を求めているが、そもそも、上記のミスの指導から2分程度の間にdから矢継ぎ早に投稿された文言(前記(1)カ、甲8)を見ても、何を質問しているのか必ずしも明確でなく、上記のミスに関してdから暴言を投げかけられて冷静さを 欠く心理状態になっていると思われるcに対し、「何なのマジで」などとなじるような言葉を投げかけながら、高圧的な態様で成績不振の改善方法について回答を求めるのは、指導の方法として相当性を欠くと評価せざるを得ない。 ウ甲9のラインは成績不振店の店長で構成されたグループであるところ、c とdとの具体的なやり取りの内容(前記(1)キ、甲9)に照らせば、これらのやり取りは、各務原店の不振の原因が中古車の買取数及び査定数の少なさにあると考えられるところcが販売を中心にした改善策を検討していたことから、原因分析及びその対策を正しい方向に導くため、dが指導をしていたものと概括的にはいえる。そして、cの当初の回答に対し、dが「当たり 前の事をズラズラ書いてるだけで、今更?って感じですが、肝心の部分が抜けてる。やり直し、根本の部分を確り考えてください」などと指摘してやり直しを指示していることについては、表現は多少きついものの、cの回答が検討不足であると判断した上で再度の指示をするものであり、また、cの2度目の回答に対し、dが「勘違いすんな」、「収益構造とか一丁前の事ほざい てるけど、そもそも全然自AP取ってないし、査定数少な過ぎるし、異常な 程買えてない現状理解してないでしょ?」「販売販売販売言ってるけど販売したいなら販売店行けば?」、「今日の行動量と予約数が一切足りてないけど AP取ってないし、査定数少な過ぎるし、異常な 程買えてない現状理解してないでしょ?」「販売販売販売言ってるけど販売したいなら販売店行けば?」、「今日の行動量と予約数が一切足りてないけど?何してんの?」等と発言していることについても、表現に穏当を欠くところは一部あるものの、各務原店の現状を挙げてcの現状認識が足りないことを指摘するものであり、いずれも指導の域を超えるものとまではいえない。 他方で、「コンバットも一切結果が出てない雑魚営業以下の数字」、「もちろん今全員で猛AP中よね?」「先月クソ赤字だから当然レベルですが」、「販売店行けよ」、「考え方イカれてない?」といったdの発言は、店長であるc自らが行う買取り等の成果が出ていないことや各務原店の成績が不振であること、cが販売を中心にした改善策しか検討できていないことについて、 「雑魚営業以下」、「先月クソ赤字」、「イカれて」るなどの侮蔑的な文言を用いて強く批判等をするものであり、指導としての相当性を欠く言動といえる。 また、予約が取れない原因や対策についてのcの回答に対し、その意味がわからないとして、dが「日本語大丈夫?」、「舐めてんの?」、「予約取る件話してんだろタコが」、「会話すら成立しないなら店長下りろタコが」などと 発言しているのは、これらの発言自体、指導の一環とは評価し難く、指導の域を超える暴言に当たると評価できる。 エ以上検討したところによれば、甲8のライン及び甲9のラインで、dからcに対してされた発言(前記1(1)キ、ク)のうち、前記イ及びウのとおり一部については、指導として相当性を欠き、又は指導の域を超えた暴言と評 価し得るものであり、パワーハラスメントに当たるといえる。また、甲8のライン及び甲9のラインにおけるdの イ及びウのとおり一部については、指導として相当性を欠き、又は指導の域を超えた暴言と評 価し得るものであり、パワーハラスメントに当たるといえる。また、甲8のライン及び甲9のラインにおけるdのcに対する指導は、いずれも、dが上記のとおり暴言等の不相当な文言を交えながら厳しい指摘を畳みかけて高圧的に回答を求めるという態様で行われたものであり、cに対する指導の必要性を肯定し得るとしても、指導の態様として相当性を欠くというべきであ るから、甲8のライン及び甲9のラインでのcに対する指導自体も全体とし てパワーハラスメントに当たると評価するのが相当である。 (3) うつ病発症との因果関係上記のとおり甲8のライン及び甲9のラインにおけるdの言動の一部及びcへの指導自体がパワーハラスメントに当たると認められるところ、原告らは上記パワーハラスメントがcのうつ病発症の原因である旨主張する。 しかし、上記パワーハラスメントは、被告の指摘するとおり、基本的に、cに対し、店長として初歩的ミスを犯していることを認識させ、業績不振店からの脱却のための対策を正しい方向で考えさせるという、飽くまで業務の改善を目的とした指導の中で行われたものであり、合理的な理由なく半ば個人的な嫌がらせ目的等で行われたものではない上、これらの指導は、対面ではなくライ ン上で行われたものであり、その機会も2回であって、いずれも長時間に及ぶものではない。 また、証拠(甲9)によれば、cは、甲9のラインに、令和3年3月28日の時点で「以後カド番にならぬようコンバット継続し数字を引っ張り上げます。 ご指導誠にありがとうございました。」と投稿しており、この投稿によると、同 月にもcが成績不振店の店長として甲9のラインのメンバーとされ ド番にならぬようコンバット継続し数字を引っ張り上げます。 ご指導誠にありがとうございました。」と投稿しており、この投稿によると、同 月にもcが成績不振店の店長として甲9のラインのメンバーとされてd等から同様の指導を受けていたと推認し得るところ、当時、cが通院していたやまやクリニック及びしまメンタルクリニックのカルテ(甲30、32)によっても、同月頃にcが大きく調子を崩していたことをうかがわせるような記載は見当たらない。 そして、甲8のライン及び甲9のラインにおける前記の指導についても、これらの指導がされた後に、病名をうつ病とし、令和3年6月15日から1か月間の自宅療養を要する旨のやまやクリニックの同日付け診断書(甲10)が作成されているが、同時期のやまやクリニック及びしまメンタルクリニックのカルテには、「休職したいと思います。」「めまいでたおれて救急搬送されました。」 「20連勤で1日14h労働」(令和3年6月15日受診。甲30・18枚目、 甲30の2・3枚目)、「調子はちょっと悪くなってしまって。」「メニエール病で職場で倒れてしまったんです。」(同月19日。甲32・8ページ)などと、メニエール病(めまい)や連続勤務で調子が少し悪くなった旨の主訴の記載がある程度であり、上司の指導(パワーハラスメント)によってcが体調を大きく崩したことをうかがわせるような記載は見当たらない。なお、被告の就業週 報・月報(甲4)には、令和3年6月頃にcが20日連続で勤務した旨や1日の労働時間が連日14時間であった旨の記載はない。 これらの事情に照らせば、甲8のライン及び甲9のラインでの上記パワーハラスメントが、cに相当な精神的苦痛を与えるものであったとは認め得るものの、cにうつ病を発症させ、又は既に 記載はない。 これらの事情に照らせば、甲8のライン及び甲9のラインでの上記パワーハラスメントが、cに相当な精神的苦痛を与えるものであったとは認め得るものの、cにうつ病を発症させ、又は既に発症していたうつ病を有意に悪化させる ほど強い心理的負荷を与えるものであったとまでは評価し難いというべきである。なお、cは、弟とのラインに上記指導のやり取りの一部を投稿し「もう死にたい」と述べているが、やまやクリニックやしまメンタルクリニックのカルテにもcに希死念慮をうかがわせるような記載はなく、上記発言のみをもって、cが上記パワーハラスメントによって強い心理的負荷を受けたと認定する ことはできず、他に、これを認めるに足りる的確な証拠はない。また、原告aは、cが被告を退職して実家に戻ってきたときには、食事もほとんど取らず、栄養補助職やゼリーのようなものを食べていた旨述べるが(原告a 本人調書9~10頁)、通院先のクリニックでのcの主訴(甲30・16枚目、甲32・2、5ページ等)によれば、令和2年頃から下痢が続いて食欲がなかったり、専ら おかゆやゼリーであったりしたことがうかがわれるから、原告a が述べる上記のcの体調も、上記パワーハラスメントが原因であるとは直ちにいえない。 そして、cが令和元年6月から令和2年6月までの間に3つの診療内科等のクリニックで通院を開始していること(認定事実イ、ウ、オ)、やまやクリニックの初診時のカルテ(甲30・3~4枚目)には、「仕事の能率低下(+)」、「仕 事のやる気(-)」、「hobby(趣味)をやる気(-)」、「人とつきあう気(-)」 などと主訴の記載があるほか、「最初の会社も気分おちこんで、仕事が手につかなくて、三か月間休む。」等の記載があること、令和2年5月の時 y(趣味)をやる気(-)」、「人とつきあう気(-)」 などと主訴の記載があるほか、「最初の会社も気分おちこんで、仕事が手につかなくて、三か月間休む。」等の記載があること、令和2年5月の時点ではcについて既に「うつ病」との診断がされていたこと(認定事実エ)、ひだまりこころクリニック金山院の初診問診票(初診は令和3年12月1日。甲33・29~30枚目)には、「2、3年前~ うつ病、ADHD」、「うつ病は思うように 良くならず、仕事がうまくいかず困っていた。」などの記載があること等を総合すれば、cは、平成30年ないし令和元年頃、遅くとも令和2年5月までにはうつ病を発症し、その前後を通じて継続的に治療を受けていたものと合理的に推認できる。 以上の事情を踏まえれば、甲8のライン及び甲9のラインでの上記パワーハ ラスメントが原因で、cにうつ病が発症したとも、既に発症していたうつ病が有意に悪化したとも認め難いというべきであり、他にこれを認めるに足りる証拠はない。したがって、この点に関する原告らの主張は採用できない。 (4) 損害前記(1)及び(2)で検討したとおり、甲8のライン及び甲9のラインにおける dのcに対する言動の一部及びcに対する指導自体がパワーハラスメントに当たると評価することができ、その具体的な言動や当時の状況等を踏まえれば、上記パワーハラスメントによりcは相当な精神的苦痛を受けたと認められる一方、上記(3)で検討したとおり、上記パワーハラスメントによる心理的負荷の程度が強いとまでは認められず、cのうつ病発症の原因になったともcのうつ 病を有意に悪化させたとも認めるに足りない。 そして、cが被告において店長として稼働していた間、甲8のライン及び甲9のラインにおける上記 ず、cのうつ病発症の原因になったともcのうつ 病を有意に悪化させたとも認めるに足りない。 そして、cが被告において店長として稼働していた間、甲8のライン及び甲9のラインにおける上記の指導以外にもパワーハラスメントに当たり得る厳しい指導等を受けたことがあった可能性は否定し切れないものの、この点について特に具体的な主張立証がないことも踏まえれば、上記の可能性を考慮して も、cが前記(2)のパワーハラスメントにより受けた精神的苦痛に対する慰謝 料としては、50万を認めるのが相当である。 また、上記パワーハラスメント(不法行為)と相当因果関係のある弁護士費用としては5万円を認めるのが相当である。 3 小括前記1及び2において検討したところによれば、cの被告に対する未払時間外 労働賃金支払請求権が存するものとは認められないから、原告らの被告に対する未払時間外労働賃金の支払請求は理由がないが、cの被告に対する民法715条に基づく損害賠償請求については、55万円及びこれに対する不法行為後の日である令和3年6月21日(cが被告を退職した日)から支払済みまで民法所定の年3%の割合による遅延損害金の支払を求める限度で理由があり、原告らは、c の死亡により、cの有する上記損害賠償請求権を法定相続分(各2分の1)の割合で承継取得したと認められる。 第4 結論よって、本件各請求は、原告a が被告に対し27万5000円及びこれに対する令和3年6月21日から支払済みまで年3%の割合による遅延損害金の支払 を求め、原告b が被告に対し27万5000円及びこれに対する上記同日から支払済みまで年3%の割合による遅延損害金の支払を求める限度でそれぞれ理由があるからこれらを認容し、その余の請求はいずれ を求め、原告b が被告に対し27万5000円及びこれに対する上記同日から支払済みまで年3%の割合による遅延損害金の支払を求める限度でそれぞれ理由があるからこれらを認容し、その余の請求はいずれも理由がないからこれらを棄却することとし、訴訟費用の負担につき民訴法61条、64条本文を適用し、仮執行の宣言について同法259条1項を適用して、主文のとおり判決する。 岐阜地方裁判所民事第2部 裁判官松田敦子
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