- 1 - 主文 1 原判決を次のとおり変更する。 ⑴ 上告人の控訴に基づき、第1審判決中主文第2項から第10項まで(ただし、第10項のうち第1審原告X1、同X2及び同Aの予備的請求並びに上告人の被上告人有限会社那覇総合園芸に対する土地の明渡請求及び賃料相当損害金の支払請求に関する部分を除く。)を次のとおり変更する。 ア上告人は、第1審判決別紙物件目録記載1から7までの各土地につき、平成27年11月11日遺留分減殺を原因として、被上告人X3に対しては持分3358万9076分の328万0665の、被上告人X1に対しては持分252万6688分の19万8525の、被上告人X2に対しては持分505万3376分の19万8525の各所有権一部移転登記手続をせよ。 イ上告人は、第1審判決別紙物件目録記載8から16までの各土地につき、平成27年11月11日遺留分減殺を原因として、被上告人X3に対しては持分1億3435万6304分の3令和6年(オ)第234号遺言無効確認等、貸金返還、建物収去土地明渡等請求事件令和7年12月18日第一小法廷判決- 2 -28万0665の、被上告人X1に対しては持分1010万6752分の19万8525の、被上告人X2に対しては持分2021万3504分の19万8525の各持分一部移転登記手続をせよ。 ウ被上告人X3と上告人との間において、被上告人X3が、第1審判決別紙株式目録記載1の株式のうち80株及び同目録記載2の株式のうち275株につき、それぞれ20分の1の準共有持分を有することを確認する。 エ被上告人X4と上告人との間において、被上告人X4が、第1審判決別紙株式目録記載 うち80株及び同目録記載2の株式のうち275株につき、それぞれ20分の1の準共有持分を有することを確認する。 エ被上告人X4と上告人との間において、被上告人X4が、第1審判決別紙株式目録記載1の株式のうち80株及び同目録記載2の株式のうち275株につき、それぞれ379万0032分の59万5575の準共有持分を有することを確認する。 オ被上告人X3が第1審判決別紙株式目録記載1の株式のうち80株及び同目録記載2の株式のうち275株につき被上告人X3以外の者の準共有持分の確認を求める訴えを却下する。 カ被上告人X4が第1審判決別紙株式目録記載1の株式のうち80株及び同目録記載2の株式のうち275株につき被上告人X4以外の者の準共有持分の確認を求める訴えを却下する。 キ被上告人有限会社那覇総合園芸は、上告人に対し、1億4488万3019円及びこれに対す- 3 -る平成30年5月11日から支払済みまで年6分の割合による金員を支払え。 ク被上告人有限会社那覇総合園芸は、上告人に対し、988万3883円及びこれに対する平成31年4月6日から支払済みまで年6分の割合による金員を支払え。 ケ被上告人X3、同X1、同X2及び同X4のその余の予備的請求並びに上告人のその余の請求をいずれも棄却する。 ⑵ 被上告人有限会社那覇総合園芸の控訴を棄却する。 2 訴訟の総費用(ただし、第1審判決主文第11項において第1審原告X1、同X2及び同Aの負担とされた費用を除く。)中、上告人と被上告人X3、同X1、同X2及び同X4との間で生じた費用は、これを3分し、その1を上告人の負担とし、その余を同被上告人らの負担とし、上告人と被上告人有限会社那覇総 れた費用を除く。)中、上告人と被上告人X3、同X1、同X2及び同X4との間で生じた費用は、これを3分し、その1を上告人の負担とし、その余を同被上告人らの負担とし、上告人と被上告人有限会社那覇総合園芸との間で生じた費用は、これを5分し、その2を上告人の負担とし、その余を同被上告人の負担とする。 理由 上告代理人西村オリエ、同髙橋大地の上告理由について 1 原審の適法に確定した事実関係等の概要は、次のとおりである。 ⑴ 亡Bは、平成26年11月に死亡し、妻である亡C並びに子である上告人、被上告人X3、同X1、同X2及び第1審原告Aが亡Bを相続した。 ⑵ア亡Bは、生前、自身の遺産の一部について、上告人、被上告人X1、同X2及びAにそれぞれ相続させ、又はDに遺贈すること等を定めた公正証書遺言- 4 -(以下「本件遺言」という。)をしていたところ、本件遺言において上記5名が取得することとされた亡Bの遺産及びその亡Bの相続開始時点における評価額は、原判決別紙2の「遺贈」欄記載のとおりである。 イ亡Bの遺産のうち、本件遺言において遺産として記載されなかった財産及び亡Bの相続人らがこれを法定相続分に従って取得した場合における各相続人の取得分の上記時点における評価額は、原判決別紙2の「未処理遺産」欄記載のとおりである。 ウ亡Bは、生前、亡C、被上告人X1及び同X2に対し、自己の財産の一部を贈与していたところ、これによって上記3名が取得した財産及びその相続開始時点における評価額は、原判決別紙2の「生前贈与」欄(ただし、そのうちの番号1の評価額を除く。)記載のとおりである。 ⑶ 上告人は、亡Bの死後、本件遺言に基づき、第1審判決別紙物件目録記載1から7までの土地(以下、併せて「本件土地1」という。) 欄(ただし、そのうちの番号1の評価額を除く。)記載のとおりである。 ⑶ 上告人は、亡Bの死後、本件遺言に基づき、第1審判決別紙物件目録記載1から7までの土地(以下、併せて「本件土地1」という。)について相続を原因とする所有権移転登記を経由するとともに、同目録記載8から16までの土地(以下、併せて「本件土地2」という。)の共有持分4分の1(以下「本件遺言対象持分」という。)について相続を原因とする持分全部移転登記を経由した。 なお、本件土地2のうち本件遺言対象持分以外の共有持分については、亡Bから亡C、被上告人X1及び同X2に対して各4分の1の持分の贈与がされている(以下、上記贈与の対象となった本件土地2の共有持分各4分の1を「本件各生前贈与対象持分」という。)。 ⑷ 本件遺言において上告人が相続することとされた亡Bの被上告人有限会社那覇総合園芸に対する貸金債権(未返済額は1億8537万0100円。以下「本件貸金債権」という。)は、亡Bが平成14年頃に被上告人那覇総合園芸との間で締結した金銭消費貸借契約(以下「本件消費貸借契約」という。)に基づくものであるところ、その弁済期について特段の定めはされていない。 ⑸ア被上告人那覇総合園芸は、平成3年頃、亡Bとの間で、本件土地1を亡B- 5 -から賃借する旨の賃貸借契約(以下「本件賃貸借契約」という。)を締結し、これに基づき自社の所有する建物の敷地として本件土地1を使用しているところ、本件賃貸借契約においては、毎月5日が当月分の賃料の支払期限とされており、遅くとも平成24年頃以降、賃料は月額27万7200円とされている。 イ上告人は、本件土地1を亡Bから相続したことを前提に、令和3年4月、被上告人那覇総合園芸に対し、平成26年12月1日から平成31年3月31日までの期間に対応する本 7万7200円とされている。 イ上告人は、本件土地1を亡Bから相続したことを前提に、令和3年4月、被上告人那覇総合園芸に対し、平成26年12月1日から平成31年3月31日までの期間に対応する本件賃貸借契約に基づく賃料債権を自働債権とし、被上告人那覇総合園芸が上告人に対して有していた同月9日を弁済期とする会社法423条1項に基づく367万5000円の損害賠償債権(那覇地方裁判所平成31年(ワ)第92号損害賠償等請求事件において上記金額の限度で請求を認容する旨の判決が確定している。以下「本件受働債権」という。)を受働債権として、両債権を対当額で相殺する旨の意思表示(以下「本件相殺」という。)をした。 ⑹ 亡C及び被上告人X3は、平成27年11月11日、上告人に対し、本件遺言に基づく亡Bの相続について民法(平成30年法律第72号による改正前のもの。以下「改正前民法」という。)1031条の規定による遺留分減殺請求権を行使する旨の意思表示(以下「本件遺留分減殺請求」という。)をした。 ⑺ 亡Cは、自身が本件遺留分減殺請求によって取得することとなる亡Bの遺産のうち、第1審判決別紙株式目録記載1の株式(以下「本件株式1」という。)及び同目録記載2の株式(以下「本件株式2」という。)の各準共有持分については、被上告人X4にこれを遺贈し、その余の上記遺産については、これを亡Cの相続人である被上告人X3、同X1及び同X2に4分の1、2分の1、4分の1の割合でそれぞれ相続させること等を定める遺言(以下「亡C遺言」という。)をした後、原審係属中に死亡した。 2 本件は、本件遺言において上告人が相続することとされた亡Bの遺産(以下「上告人受遺財産」という。)に関する次の第1事件から第3事件までが併合審理されている事案である(ただし、当審の審理判断の対象と 本件は、本件遺言において上告人が相続することとされた亡Bの遺産(以下「上告人受遺財産」という。)に関する次の第1事件から第3事件までが併合審理されている事案である(ただし、当審の審理判断の対象となっていない請求に関す- 6 -る部分を除く。)。 ⑴ 第1事件は、亡C及び被上告人X3が、本件遺留分減殺請求により上告人受遺財産について共有持分(権利については準共有持分。以下同じ。)を取得したと主張し、上告人に対し、各自の共有持分に基づき、本件土地1についての所有権一部移転登記手続及び本件土地2についての持分一部移転登記手続を求めるとともに、上告人との間で、本件株式1のうち80株及び本件株式2のうち275株(以下、併せて「上告人受遺株式」という。)についての共有持分の確認を求める事案である。なお、亡Cが原審係属中に死亡したため、亡Cの上記請求については、亡C遺言に基づき、被上告人X3、同X1、同X2及び同X4が亡Cの訴訟上の地位をそれぞれ承継している。 ⑵ 第2事件は、上告人が、本件遺言により本件貸金債権を相続したと主張して、被上告人那覇総合園芸に対し、本件消費貸借契約に基づき、本件貸金債権の未返済額及びその遅延損害金の支払を求める事案である。 ⑶ 第3事件は、上告人が、本件土地1を亡Bから相続したことに伴って本件賃貸借契約における亡Bの賃貸人たる地位を承継したと主張して、被上告人那覇総合園芸に対し、本件賃貸借契約に基づき、平成26年12月1日から平成31年4月1日までの期間に対応する未払賃料及びその遅延損害金の支払を求める事案である。 3 原審は、本件土地2の共有持分4分の1の亡Bの相続開始時点における評価額を1284万0892円とした第1審判決の認定には、もともと上記持分の評価額として算出された額(5136万3571円)に更に4 原審は、本件土地2の共有持分4分の1の亡Bの相続開始時点における評価額を1284万0892円とした第1審判決の認定には、もともと上記持分の評価額として算出された額(5136万3571円)に更に4分の1を乗じた誤りがあると指摘した上で、本件遺言対象持分の上記時点における評価額については、これを5136万3571円に是正したが、同じく本件土地2の共有持分4分の1である本件各生前贈与対象持分の上記時点における評価額については、第1審判決の上記認定を是正することなく引用し(原判決別紙2の「生前贈与」欄の番号1参照)、遺留分に係る計算をして原判決主文の結論を導いた。そうすると、原判決の理由には食違いがあるというべきである。論旨は理由がある。 - 7 -4⑴ア上記の事実関係等によれば、本件土地2の共有持分4分の1の亡Bの相続開始時点における評価額については、これを5136万3571円として遺留分に係る計算をすることになるから、その計算に当たって基礎となる財産及びその上記時点における評価額は、原判決別紙2の「生前贈与」欄の番号1記載の金額を亡C、被上告人X1及び同X2のいずれについても5136万3571円と修正するほかは、同別紙記載のとおりとなる。そして、修正後の同別紙記載の数値を基礎とすると、本件遺言による遺留分の侵害額は、亡Cについて7469万6604円、被上告人X3について2912万4035円であり、上告人が本件遺言に基づき亡Bの遺産を相続したことについて減殺を受ける額の合計が上告人受遺財産の評価額に占める割合は、379万0032分の82万7789(以下「合計減殺率」という。)と算出される。 イまた、亡C及び被上告人X3が本件遺留分減殺請求によりそれぞれ取得した上告人受遺財産についての共有持分の割合は、本件遺言による亡Cの遺留分の 789(以下「合計減殺率」という。)と算出される。 イまた、亡C及び被上告人X3が本件遺留分減殺請求によりそれぞれ取得した上告人受遺財産についての共有持分の割合は、本件遺言による亡Cの遺留分の侵害額(7469万6604円)と被上告人X3の遺留分の侵害額(2912万4035円)とで合計減殺率を按分した割合となるから、亡Cのそれは379万0032分の59万5575(以下「亡C減殺率」という。)、被上告人X3のそれは379万0032分の23万2214(以下「X3本人減殺率」という。)とそれぞれ算出される。 ⑵ア以上を前提に、第1事件について検討すると、本件土地1についての請求は、①被上告人X3については持分1516万0128分の152万4431(亡C減殺率に被上告人X3が亡Cの共有持分を承継した割合である4分の1を乗じた割合とX3本人減殺率を合計した割合)、②被上告人X1については持分252万6688分の19万8525(亡C減殺率に被上告人X1が亡Cの共有持分を承継した割合である2分の1を乗じた割合)、③被上告人X2については持分505万3376分の19万8525(亡C減殺率に被上告人X2が亡Cの共有持分を承継した割合である4分の1を乗じた割合)の各所有権一部移転登記手続を求める限度- 8 -で、それぞれ理由がある。 また、本件土地2についての請求は、上記①~③と同じ計算による各割合に本件遺言対象持分の割合である4分の1をそれぞれ乗じ、被上告人X3については持分6064万0512分の152万4431、同X1については持分1010万6752分の19万8525、同X2については持分2021万3504分の19万8525の各持分一部移転登記手続を求める限度で、それぞれ理由がある。 もっとも、被上告人X3についての上記の各結論は、原 52分の19万8525、同X2については持分2021万3504分の19万8525の各持分一部移転登記手続を求める限度で、それぞれ理由がある。 もっとも、被上告人X3についての上記の各結論は、原判決よりも上告人に不利益となるから、被上告人X3の上記各請求については、原判決の結論を維持するにとどめるほかない(民訴法313条、304条)。 イまた、上告人受遺株式についての請求は、被上告人X3が379万0032分の23万2214(X3本人減殺率)の割合で共有持分を有すること及び同X4が379万0032分の59万5575(亡C減殺率)の割合で共有持分を有することの確認を求める限度で、それぞれ理由がある。 もっとも、被上告人X3についての上記の結論は、同被上告人が確認を求める共有持分の割合(20分の1)を超えているから、同被上告人の上記請求については、同被上告人が上告人受遺株式について20分の1の割合で共有持分を有していることを確認するにとどめるほかない。 なお、上記の事実関係等の下において、上告人受遺株式の共有持分をめぐる上告人と被上告人X3又は同X4との間の紛争の解決としては、上告人と被上告人X3との間において同被上告人の共有持分を確認し、上告人と被上告人X4との間において同被上告人の共有持分を確認すれば足りるから、上告人受遺株式について被上告人X3及び同X4がそれぞれ自分以外の者の準共有持分の確認を求める訴えは、いずれも確認の利益を欠く不適法なものというほかなく、却下を免れない。 ⑶ 第2事件について検討すると、上告人の請求は、本件貸金債権の未返済額である1億8537万0100円に379万0032分の296万2243(1から合計減殺率を控除して得た割合)を乗じた1億4488万3019円及びこれに対- 9 -する平成30年5月 債権の未返済額である1億8537万0100円に379万0032分の296万2243(1から合計減殺率を控除して得た割合)を乗じた1億4488万3019円及びこれに対- 9 -する平成30年5月11日(上告人が遅延損害金の起算日として主張する訴状送達の日の翌日)から支払済みまで商事法定利率年6分の割合(平成29年法律第45号による改正前の商法514条。以下同じ。)による遅延損害金の支払を求める限度で理由がある。 ⑷ア第3事件について検討すると、本件相殺の相殺適状日である平成31年3月9日の時点において、本件賃貸借契約に基づく賃料債権のうち、本件遺留分減殺請求がされる前の期間に対応するものについては、その全額である月額27万7200円の賃料債権が上告人に帰属していた一方で、本件遺留分減殺請求がされた後の期間に対応するものについては、上記月額に379万0032分の296万2243(1から合計減殺率を控除して得た割合)を乗じた月額21万6656円の賃料債権が上告人に帰属していたことになる(改正前民法1036条参照)。そのため、本件賃貸借契約に基づく賃料債権のうち、平成26年12月1日から平成31年3月31日までの期間に対応するものであり、かつ、同月9日の時点で上告人に帰属していたもの(以下「本件自働債権1」という。)の合計額は、1195万2277円になり、同日の時点における商事法定利率年6分の割合による遅延損害金債権(以下「本件自働債権2」という。)の合計額は、159万9385円になる。 イそうすると、本件相殺においては、まず、本件自働債権2(合計159万9385円)と本件受働債権(367万5000円)とが対当額で相殺され、次に、本件自働債権1(合計1195万2277円)と上記の相殺後の本件受働債権(上記367万5000円から上 権2(合計159万9385円)と本件受働債権(367万5000円)とが対当額で相殺され、次に、本件自働債権1(合計1195万2277円)と上記の相殺後の本件受働債権(上記367万5000円から上記159万9385円を控除して得た額である207万5615円)とが対当額で相殺されることになる結果、本件自働債権1は弁済期が先に到来したものから順に消滅し、その残額は合計987万6662円(上記1195万2277円から上記207万5615円を控除して得た額)になる(民法512条、488条4項3号、489条)。 ウしたがって、上告人の請求は、本件相殺後の本件自働債権1の残額(合計987万6662円)及び平成31年4月1日分の賃料債権として上告人に帰属する- 10 -分(本件遺留分減殺請求後の月額賃料21万6656円を日割計算した7221円)の合計988万3883円及びこれに対する平成31年4月6日(上告人が遅延損害金の起算日として主張する上記請求に係る賃料債務について最も遅く到来する支払期限の翌日)から支払済みまで商事法定利率年6分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で理由がある。 ⑸ 以上の次第で、原判決を主文第1項のとおり変更することとする。 よって、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。 (裁判長裁判官岡正晶裁判官安浪亮介裁判官堺徹裁判官宮川美津子裁判官中村愼)
▼ クリックして全文を表示